タイトル: | 特許公報(B2)_アルカリ成分と過酸化水素を含む溶液の濃度測定方法 |
出願番号: | 2001321860 |
年次: | 2006 |
IPC分類: | G01N 21/33 |
小島 淳二 JP 3824904 特許公報(B2) 20060707 2001321860 20011019 アルカリ成分と過酸化水素を含む溶液の濃度測定方法 株式会社堀場製作所 000155023 鈴木 崇生 100092266 梶崎 弘一 100104422 尾崎 雄三 100105717 谷口 俊彦 100104101 今木 隆雄 100113147 小島 淳二 20060920 G01N 21/33 20060101AFI20060831BHJP JPG01N21/33 G01N21/00-21/61 JOIS WPI EPAT PATOLIS 特開平03−175341(JP,A) 特開平03−231139(JP,A) 特開2000−171394(JP,A) 国際公開第01/023868(WO,A1) 特開平10−030982(JP,A) 特表2003−510601(JP,A) 特開平04−249748(JP,A) 2 2003121352 20030423 8 20040401 ▲高▼場 正光 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、アルカリ成分と過酸化水素と水との混合溶液の濃度測定方法に係り、詳しくは、混合溶液中のアルカリ成分と過酸化水素夫々の濃度を精度良く測定できる方法に関するものである。【0002】【従来の技術】従来、アルカリ成分と過酸化水素と水との混合溶液の濃度測定方法は、水の吸収スペクトルを基準として、近赤外線波長領域である(1)900〜1300nm付近或いは、(2)1400〜1750nm付近において、溶質の溶解によって生じた水のスペクトル変化を測定し、ケモメトリクスによる多変量解析の中でも、主にPCR(PrinCipal Component Regression)を適用して、そこから、溶質の濃度を推定するという間接的な濃度測定方法であった。【0003】ここで、ケモメトリクスについて簡単に説明しておくと、ケモメトリクスとは「計量化学」と訳されることが多く、分析化学の一分野であり、その目的は、数学的・統計学的手法を適用することにより、(a)測定方法や実験条件の最適化を設計または選択する(b)化学的データを分析することにより最良の化学的情報を得るというものである。分析化学が化学の全ての領域(有機・無機化学、生化学、物理化学)に関わりを持つことから、ケモメトリクスも必然的にその関わる範囲が広いものであり、(a)の例としては、スペクトロメトリーやクロマトグラフィー等における実験条件最適化の手法、(b)の例としては、検量線、定量限界、測定精度等が挙げられる。【0004】【発明が解決しようとする課題】しかし、従来技術による濃度測定方法は、図4に示した純水および各濃度の過酸化水素溶液中の水の近赤外吸収スペクトルの変化のグラフに見られるように、溶質である過酸化水素の溶解によって生じる僅かな水の吸収スペクトルの変化量を測定するため、特に溶質の濃度が1%以下の低濃度である場合、分光器に高いS/N比が要求され、これが測定精度の検出限界をもたらす要因となっていた。図4において、測定は室温25.5℃、液温25.7℃、セルの光路長10mmの条件下で行った。【0005】また、従来技術による濃度測定方法では、上記のような僅かな水の吸収スペクトルの変化から、水に溶解している2種類以上の溶質の濃度を推定することになり、濃度推定に用いる計算方法を含め、その濃度測定方法の精度には限界があった。【0006】更に、水の吸収スペクトルが基準となるため、(1)の波長領域では、セルの光路長が20〜30mm、(2)の波長領域では、セルの光路長が1〜1.5mm、と使用する波長領域とそれに対応するセルの光路長はほぼ決まっており、測定対象の濃度範囲に応じて波長領域およびセルの光路長を変更することは不可能であった。【0007】更にまた、図5に示すように、水の吸収スペクトルは液温が変化することによって影響を受けるため、正確な測定を行うには、液温を一定に保つ必要があった。図5において、測定は室温25.8℃、セルの光路長10mmの条件下で行った。【0008】また、特開昭61−281532号には、アルカリ溶液中の過酸化水素濃度について、過酸化水素の紫外吸収スペクトルを直接測定する発明が記載されている。過酸化水素は、アルカリ溶液中で、H2O2⇔HO2−+H+のように解離し、このとき生成するHO2−の紫外光の吸収は、H2O2に比べて4〜50倍大きい。この濃度測定方法では、この解離を回避して、H2O2のみによる紫外吸収スペクトルを測定するために、アルカリ性の溶液を酸性であるpH4以下にpH調整する操作が必要であった。【0009】以上のように、従来の濃度測定方法では、測定精度をより向上させるのが困難であり、また、pH調整などの予備処理を不要にするために改善の余地が残されているものであった。【0010】本発明の目的は、上述したような課題を解決したものであり、アルカリ成分と過酸化水素と水との混合溶液中のアルカリ成分と過酸化水素との濃度を精度良く簡便に測定できるようにし、又、測定対象溶液の濃度に応じて、波長範囲、セルの光路長を自由に選択することによって、濃度の測定範囲を広範囲に設定することが可能となるようにすることである。【0011】なお、本明細書において、濃度の単位の「%」とは「重量%」を意味する。【0012】【課題を解決するための手段】上記目的を達成すべく本発明による混合溶液の濃度測定方法は、過酸化水素と水との混合溶液およびアルカリ成分と過酸化水素と水との混合溶液についての紫外領域における波長305〜350nmの過酸化水素の吸光度を基準として、アルカリ成分と過酸化水素のそれぞれについて混合割合を変化させた複数種類の既知濃度の混合溶液の紫外領域における波長305〜350nmの過酸化水素の吸光度を、各混合溶液について複数点の波長に対して測定する工程と、ケモメトリクスによる多変量解析の手法により、各波長における重み係数をアルカリ成分、過酸化水素および水のそれぞれについて予め求める工程と、前記重み係数と、アルカリ成分と過酸化水素とを含む測定対象混合溶液の紫外領域の前記と同じ波長における過酸化水素の吸光度とから、前記測定対象混合溶液におけるアルカリ成分、過酸化水素および水の濃度を算出する工程と、を有するアルカリ成分と過酸化水素を含む溶液の濃度測定方法であることを特徴とするものである。【0013】以下、本発明について図を用いて説明する。図1は、過酸化水素と水との混合溶液およびアルカリ成分と過酸化水素と水との混合溶液について、過酸化水素の吸光度を基準として、アルカリ成分と過酸化水素のそれぞれについて混合割合を変化させた複数種類の既知濃度の混合溶液の紫外領域における波長305〜350nmの吸光度を、各混合溶液について複数点の波長に対して測定する工程として、1%過酸化水素溶液、2%過酸化水素溶液、3%過酸化水素溶液、0.1%アンモニア−1%過酸化水素混合溶液、0.3%アンモニア−1%過酸化水素混合溶液、および0.5%アンモニア−1%過酸化水素混合溶液中の、波長305〜350nm、セルの光路長10mmにおけるそれぞれの溶液の過酸化水素の吸収スペクトルの変化を示す。【0014】予め、校正用サンプルとして、測定対象とする濃度に合わせて、過酸化水素と水との混合溶液およびアルカリ成分と過酸化水素のそれぞれについて混合割合を変化させた複数種類の既知濃度の混合溶液を用意し、複数種類の既知濃度の混合溶液のそれぞれについて、各混合溶液のある波長iにおける過酸化水素の吸光度xiを図1に示すように、複数点の波長について測定する。【0015】測定対象混合溶液の各溶質の濃度C(S)は、上記の様にして得られた校正用サンプルのデータをもとにして、ケモメトリクスの解析手法に従って計算された、n点の複数の前記と同じ波長に対するある波長iにおける各成分の重み係数ai(S)と、該波長における測定対象混合溶液中の過酸化水素の吸光度xiとから求めることが出来る。【0016】【数1】ここでC(S):測定対象溶液の各成分の濃度であり、S=Xの場合は、アルカリ成分(X)の濃度を、S=Yの場合は過酸化水素(Y)濃度を、S=Zの場合は水(Z)濃度を示す。ai(S):ある波長iに対する各成分の重み係数であり、S=Xの場合は、アルカリ成分(X)の重み係数を、S=Yの場合は過酸化水素(Y)の重み係数を、S=Zの場合は水(Z)の重み係数を示す。xi:ある波長iにおける測定対象混合溶液中の過酸化水素の吸光度を示す。c(S):S=Xの場合は、アルカリ成分(X)の定数を、S=Yの場合は過酸化水素(Y)の定数を、S=Zの場合は水(Z)の定数を示す。【0017】吸光度を測定する装置は、過酸化水素の吸収スペクトルを測定する装置であれば、特に制限は無く、また、該測定装置に設置されるセルも一般的に使用されるものを使用出来る。また、校正用サンプルから得た重み係数を演算手段として組み込んだ演算装置を、吸光度測定装置に接続することにより、測定対象溶液中の過酸化水素の吸光度から直接濃度をモニタリングすることが可能である。【0018】本発明のケモメトリクスの解析手法としては、目的の精度で各成分に対する重み係数が得られる方法であれば、特に制限されるものではないが、具体的には、PCR(PrinCipal Component Regression)やPLSR(Partial Least Square Regression)の解析手法の適用が挙げられ、特に好ましくはPLSRが挙げられる。PLSRはPCRを改良したものであり、濃度に関係するファクターが順番に算出されるので、PCRにおけるファクターの選択という作業が不要となる。これらの解析手法はコンピュータソフトとして市販されているものを使用出来る。また、校正用サンプルとして予め測定する混合割合を変えた既知濃度の混合溶液の種類は、統計学的に信頼性の高い数値を得るには、30〜50種類であることが望ましい。【0019】本発明において、過酸化水素と組み合わせられるべきアルカリ成分は、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等、アルカリ性を示す成分であれば測定可能である。また、水の濃度に関しても、上記の方法で水の重み係数をもとに水の濃度を算出することが可能である。【0020】本発明は、過酸化水素の吸収スペクトルを基準とすることによって、アルカリ成分、過酸化水素および水の各濃度を直接的に求めることができるので、水の吸収スペクトルを介して濃度を求めるという、いわば間接的方法による従来手段に比べて、濃度測定精度を向上させることができ、波長とセルの光路長を自由に組み合わせることが可能であるため、測定範囲濃度を広範囲で設定することが出来る。【0021】本発明ではアルカリ溶液であっても、過酸化水素の濃度を酸性に調整することなく測定でき、また過酸化水素の吸収スペクトルは液温による変化はほとんどないので、液温の管理をする必要はない。【0022】【実施例】以下に、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下に記載する方法及び装置に限定されるものではない。【0023】校正用サンプルとして、アルカリ成分(X)、過酸化水素(Y)及び水(Z)のそれぞれに対して、表1に示す過酸化水素と水との混合溶液およびアルカリ成分と過酸化水素と水との31種類の各混合割合の混合溶液について、波長305〜350nm、セルの光路長10mmにおけるそれぞれの溶液の吸光度の変化を、島津製作所製、商品名UV−PC3100PCの測定装置および大興製作所製石英セルを用いて、測定する波長の間隔を約1.25nmとして、それぞれ吸光度を測定した。各サンプルの温度はおよそ22〜25℃であり、測定時の室温は25℃、湿度は40%であった。上記の31種類の混合溶液について得られた36点の各波長における過酸化水素の吸光度を自作の統計ソフトにおけるPLSRによる多変量解析に従って、アルカリ成分(X)、過酸化水素(Y)及び水(Z)のそれぞれに対して、ある波長iに対する重み係数ai(X)、ai(Y)及びai(Z)をそれぞれ算出した。【表1】【0024】測定対象溶液についても、36点の上記と同じ波長について吸光度を測定し、予め得られた各波長における重み係数と該吸光度を式1に従い計算することによって、測定対象溶液の各成分の濃度を算出した。【0025】図2に、模擬サンプルとして既知の濃度の混合溶液について、上記方法によって濃度を算出した際の測定濃度と、実際の濃度との相関関係を示す。模擬サンプルの温度はおよそ22〜25℃であり、測定時の室温は25℃、湿度は40%であった。図2(a)はアンモニア、図2(b)は過酸化水素、図2(c)は水に関する。それぞれの物質は約99%の相関関係で測定濃度と実際の濃度が一致した。特に、アンモニアに関しては、0.1%濃度のオーダーで精度の高い直線性が得られた。【0026】図3に、模擬サンプルとして0.1%アンモニア−2%過酸化水素の混合溶液を測定した際の時間経過による測定値の変化を示す。模擬サンプルの温度は24.9〜25.5℃であり、測定時の室温は25℃、湿度は40%であった。アンモニア濃度も過酸化水素濃度も時間が経過しても、測定値は0.1%のオーダーで安定していた。【0027】【発明の効果】以上説明したように、本発明による混合溶液の濃度測定方法では、以下のような効果が得られた。(i) 過酸化水素の吸収スペクトルの変化を、アルカリ溶液中で直接測定できるので、過酸化水素の解離を防ぐために溶液を酸性にする操作が不要となり、アルカリ溶液の状態で、オンライン分析のための装置や方法に使用することが可能となる。(ii) 過酸化水素の吸収スペクトルは、紫外部全域に広がっているので、目的とする濃度の測定範囲に応じて波長領域及びセルの光路長を自由に選択することができるので、測定に際して最適な条件設定が可能であり、広範囲の濃度を測定することが出来る。(iii) 過酸化水素の吸収スペクトルは、液温によって殆ど変化しないので、液温に対する処理が不要となり、より精度良く濃度測定を行うことができる。【図面の簡単な説明】【図1】過酸化水素溶液及びアンモニア−過酸化水素混合溶液の過酸化水素の紫外吸収スペクトルの変化を示すグラフである。【図2】既知の濃度の混合溶液を本発明の濃度測定法によって濃度測定した際の測定値と実際の濃度との相関関係を示したグラフであり、同図(a)はアンモニア濃度の相関関係、同図(b)は過酸化水素濃度の相関関係、同図(c)は水濃度の相関関係を示したグラフである。【図3】アンモニア−過酸化水素混合溶液の模擬サンプル測定時の時間経過による測定値の変化を示すグラフである。【図4】過酸化水素の溶液における、水の近赤外吸収スペクトルの変化を示すグラフである。【図5】液温の変化に対する水の近赤外吸収スペクトルの変化を示すグラフである。 過酸化水素と水との混合溶液およびアルカリ成分と過酸化水素と水との混合溶液についての紫外領域における波長305〜350nmの過酸化水素の吸光度を基準として、アルカリ成分と過酸化水素のそれぞれについて混合割合を変化させた複数種類の既知濃度の混合溶液の紫外領域における波長305〜350nmの過酸化水素の吸光度を、各混合溶液について複数点の波長に対して測定する工程と、ケモメトリクスによる多変量解析の手法により、各波長における重み係数をアルカリ成分、過酸化水素および水のそれぞれについて予め求める工程と、前記重み係数と、アルカリ成分と過酸化水素とを含む測定対象混合溶液の紫外領域の前記と同じ波長における過酸化水素の吸光度とから、前記測定対象混合溶液におけるアルカリ成分、過酸化水素および水の濃度を算出する工程と、を有するアルカリ成分と過酸化水素を含む溶液の濃度測定方法。 前記ケモメトリクスによる多変量解析手法が、PLSRである請求項1に記載のアルカリ成分と過酸化水素を含む溶液の濃度測定方法。