タイトル: | 特許公報(B2)_リン酸セリウム−リン酸チタン系紫外線遮断剤とその製造方法 |
出願番号: | 2001319100 |
年次: | 2007 |
IPC分類: | C09K 3/00,A61K 8/24,A61K 8/29,A61K 8/19,A61Q 17/04,C01B 25/37,C01B 25/45 |
足立 吟也 今中 信人 増井 敏行 JP 3866076 特許公報(B2) 20061013 2001319100 20011017 リン酸セリウム−リン酸チタン系紫外線遮断剤とその製造方法 ロディア エレクトロニクス アンド カタリシス 503124252 倉内 基弘 100067817 風間 弘志 100085774 足立 吟也 今中 信人 増井 敏行 20070110 C09K 3/00 20060101AFI20061214BHJP A61K 8/24 20060101ALI20061214BHJP A61K 8/29 20060101ALI20061214BHJP A61K 8/19 20060101ALI20061214BHJP A61Q 17/04 20060101ALI20061214BHJP C01B 25/37 20060101ALI20061214BHJP C01B 25/45 20060101ALI20061214BHJP JPC09K3/00 104ZA61K8/24A61K8/29A61K8/19A61Q17/04C01B25/37 JC01B25/37 ZC01B25/45 H C09K3/00、 C01B25/42、 A61K8/24、 A61K8/29、 A61Q17/04 特開平11−209111(JP,A) 特開平11−209109(JP,A) 特開平11−209110(JP,A) 特開平08−231324(JP,A) 6 2003119452 20030423 12 20041007 中野 孝一 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、透明性が非常に高く、安定性、安全性に優れたリン酸セリウム−リン酸チタン系紫外線遮断剤、およびその製造方法に関する。【0002】【従来の技術】紫外線はプラスチック等の有機材料を劣化させるのみならず、生体に対して悪影響を及ぼす作用が強く、波長280〜320nmのUV−B領域の紫外線は皮膚の炎症を引き起こし、また波長320〜400nmのUV−A領域の紫外線は皮膚を褐色にすることが知られている。その防止法の一つとして、種々の有機系紫外線吸収剤や無機系紫外線散乱剤が開発されてきた。【0003】有機系紫外線吸収剤はプラスチックや化粧料に配合した場合に無色かつ透明であるため汎用されていたが、近年になり耐熱性、耐候性の不足や、分解生成物の毒性による安全性の面で問題が多く使用が制限されている。一方、無機紫外線遮断剤としては、酸化チタンおよび酸化亜鉛が一般的に使用されており、その他にも、酸化セリウムも一部応用されてきている。しかしながら、これらの化合物は紫外線遮断特性、透明性、そして光や熱による触媒活性などの面において一長一短があり、実際の使用に当たっては表面をシリカ、アルミナ、窒化ホウ素等で被覆したものが用いられている。しかし、微粒子になればなるほど表面処理による粒子の凝集も起こってしまうため、粒子の分散性が悪くなり、紫外線吸収能を維持したまま高い透明性と低い触媒活性を同時に達成すること不可能であった。【0004】以上の問題点に対して、たとえば、特開平11−189766号や特開平10−204288号に見られるように、リン酸セリウム、リン酸チタン又はリン酸ジルコニウムなどの紫外線遮断剤が提案されているが、リン酸セリウムは黄色の着色が強く、とりわけ化粧料においては配合が制限されたり、リン酸チタンやリン酸ジルコニウムはUV−A領域において充分な紫外線遮断効果が得られないなど、依然として致命的な問題点を抱えている。【0005】【発明が解決しようという課題】それ故、本発明の課題は、従来の技術ならびに製造方法では成し得なかった、透明性に優れ、UV−AおよびUV−Bの紫外線遮断能に優れ、かつ光・熱触媒活性が極めて低い紫外線遮断剤およびその製造方法を提供することである。【0006】【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するために、本発明の紫外線遮断剤は、リン酸セリウムとリン酸チタンを複合化したことを特徴とする。この構成とすることにより、リン酸セリウムのすぐれたUV−A遮断特性と、リン酸チタンの優れたUV−B遮断特性を併せ持つ、優れた紫外線遮断効果が得られる。また、互いに化学的に安定な物質の組み合わせであるので、耐候性及び耐熱性に優れた複合粒子が得られ、例えば厳しい環境にさらされる用途においても紫外線遮断剤として好適に使用できる。【0007】【発明の実施の形態】 本発明のリン酸セリウム−リン酸チタン系紫外線遮断剤は、一般式:CexTi1-xP2O7・nH2O(0<x<1)で表され、平均粒径が0.003〜1μmである。【0008】さらに本発明の複合粒子は、溶液中において+4価のセリウムイオンと+4価のチタンイオンをリン酸イオンにて共沈させ、原子レベルで均一に複合化させ、ピロリン酸塩とすることを特徴とする。従って、本発明で得られるリン酸セリウム−リン酸チタン系紫外線遮断剤におけるセリウムは+4価として存在する。【0009】また、本発明で得られる複合リン酸塩の屈折率は、酸化物系と比較して小さく、組成にもよるがおよそ1.8〜2.0となる。屈折率が低いことによって、可視光に対する粉体の光散乱性が低下し、とりわけ化粧品、塗料等に配合した場合、従来の酸化物に比べ透明性が向上する。さらに複合リン酸塩とすることにより、従来の無機系紫外線遮断剤の大きな問題のひとつであった光および熱触媒活性が著しく抑制される。【0010】リン酸塩としてはピロリン酸塩の他にもオルトリン酸塩、ポリリン酸塩などが知られており、なかでも一般式:MPO4・nH2O(Mは金属イオン)で表されるオルトリン酸塩は化学的安定性に優れることが知られている。しかしながら、オルトリン酸塩における金属イオンの価数は、+3価であるため、充分な紫外線遮断効果が得られない。これに対し本発明の紫外線遮断剤を構成するピロリン酸塩では、上述のように金属イオンの価数がいずれも+4価であるため、良好な紫外線遮断剤を示す。【0011】 本発明の複合リン酸塩の一般式:CexTi1-xP2O7・nH2O(0<x<1)において、xは全率にわたり自由に選択することができ、さらにxの値により紫外線遮断効果ならびに黄色の着色度を任意に制御することができる。従って用途に応じてxの値を自由に選ぶことができ、特に限定されないが、例えば日焼け止め化粧料としての応用を考えた場合、紫外線遮断効果を保ちつつ、粉末の黄色への着色を減少させる観点から、好ましいxの値は0.001〜0.5であり、より好ましくは0.01〜0.2である。【0012】 また、一般式:CexTi1-xP2O7・nH2O(0<x<1)において、nは水和水分子の数を示し、化合物を形成する上で必然的に水和水分子が結合するため、0より大きくなる。水に対する溶解性を抑制する観点および撥水処理の困難性を回避する観点から、5以下、好ましくは3以下、より好ましくは2以下である。【0013】上記xおよびnの値は、本発明のリン酸セリウム−リン酸チタン系紫外線遮断剤の乾燥粉末におけるCe、Ti等の元素分析、ならびに熱重量分析を行うことによって求めることができる.本発明のリン酸セリウム−リン酸チタン系紫外線遮断剤は、以上説明したような組成を有する。【0014】本発明のリン酸セリウム−リン酸チタン系紫外線遮断剤は微粒子状の形態を有しており、その大きさは、平均粒径0.003〜1μmである。粒子の凝集の激化による分散の困難性を回避する観点から、0.003μm以上、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.03μm以上であり、紫外線吸収能、ならびに可視光領域における透明性を効果的に発揮させる観点から、1μm以下、好ましくは0.1μm以下、より好ましくは0.05μm以下である。平均粒径は電子顕微鏡写真から求められる。【0015】また、リン酸セリウム−リン酸チタン系紫外線遮断剤の結晶構造は、製造、乾燥後に高温熱処理あるいは水熱処理を加えない限り不定形(非晶質、アモルファス)となる。水熱処理や加熱処理等により結晶化しても、ピロリン酸塩の構造を保っていれば、本発明の紫外線遮断剤としての性能を損なうことはないが、例えば650℃以上で加熱したときのように、オルトリン酸塩に変化すると、紫外線遮断効果が著しく低下すること、また粒子の凝集や成長をできるだけ抑制する観点から、好ましくは不定形のまま用いられる。【0016】本発明のリン酸セリウム−リン酸チタン系紫外線遮断剤は透明性に優れ、光及び熱触媒活性が極めて低く、微粒子状形態をとることから特に紫外線遮断能に優れるという性質を有する。【0017】次に、本発明のリン酸セリウム−リン酸チタン系紫外線遮断剤の製造方法について説明する。【0018】本発明のリン酸セリウム−リン酸チタン系紫外線遮断剤の製造方法は、リン酸イオンを含む塩基性水溶液と、+4価のセリウムイオンと+4価のチタンイオンを含む水溶液とを、混合後の分散液のpHが1〜11となるように混合し、80℃で熟成することからなる。【0019】前記リン酸イオンを含む塩基性水溶液としては、リン酸アルカリ金属塩、リン酸アンモニウム塩等の水溶液を用いてもよいし、あらかじめリン酸水溶液を調製したのち、アルカリ水溶液を添加して塩基性にしたものを用いてもよい。リン酸アルカリ金属塩を用いる場合は、例えばピロリン酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、ピロリン酸カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸三カリウム、ピロリン酸リチウム、リン酸二水素リチウム、リン酸水素二リチウム、リン酸三リチウム等があげられ、ピロリン酸塩を効率よく生成させる観点から、ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム、ピロリン酸リチウムが好ましく用いられる。また、試料中へのアルカリ金属の混入を極力抑える必要がある場合には、リン酸一アンモニウム、リン酸二アンモニウム、リン酸三アンモニウム三水和物等が好ましく用いられる。【0020】リン酸イオンを含む塩基性水溶液中のリン酸イオンの量は、過剰のリン酸および過剰のアルカリを水洗によって除去する手間を少なくする観点から、チタンイオンとセリウムイオンの総モル数に対してモル比で10以下、好ましくは6.0以下、より好ましくは4.0以下が望ましく、反応を完全に行う観点から、チタンイオンとセリウムイオンの総モル数に対してモル比で1.0以上、好ましくは1.5以上、より好ましくは2.0以上が望ましい。【0021】+4価のセリウムイオンを含む溶液のセリウムイオン源としては、水溶性または酸溶解性+4価セリウム化合物であれば特に限定がなく、例えば、硝酸二アンモニウムセリウム(IV)(Ce(NH4 )2 (NO3 )6 )、硫酸四アンモニウムセリウム(IV)二水和物(Ce(NH4 )4 (SO4 )4 ・2H2 O)、硫酸セリウム(IV)四水和物(Ce(SO4 )4 ・4H2 O)等が好適であり、好ましくは硫酸セリウム(IV)四水和物が用いられる。【0022】+4価のチタンイオンを含む溶液のチタンイオン源としては、水溶性または酸溶解性+4価チタン化合物であれば特に限定がなく、例えば、塩化チタン(TiCl4)、硫酸チタン(IV)(Ti (SO4 )4)、ヨウ化チタン(TiI4)等が好適である。さらに、市販の塩化チタン(IV)や硫酸チタン(IV)の溶液等は、その取り扱いの容易さから好ましく用いられる。【0023】+4価のセリウムイオンおよび+4価のチタンイオンを含む溶液中の金属イオン量、すなわちセリウムイオンとチタンイオンの総量は、合成の効率の観点から、リン酸イオンを含む塩基性水溶液と金属イオンを含む水溶液とを混合した反応液中の濃度が、0.01mol/L以上、好ましくは0.05mol/L以上、より好ましくは0.1mol/L以上となるような量が望ましく、一方、反応液の粘度が高くなることによる撹拌操作の困難性を回避する観点から、その上限は0.5mol/L以下、好ましくは0.3mol/L以下、より好ましくは0.2mol/L以下となるような量が望ましい。【0024】リン酸イオンを含む塩基性水溶液と+4価のセリウムイオンおよび+4価のチタンイオンを含む溶液とを混合した後の分散液のpHは、粒径が大きくなり、紫外線吸収能が低下するのを防ぐ観点から、1以上、好ましくは2以上、より好ましくは3以上であり、得られる紫外線遮断剤粉末の水に対する溶解性が高くなるのを防ぐ観点から、11以下、好ましくは7以下、より好ましくは6以下である。【0025】リン酸イオンを含む塩基性水溶液と+4価のセリウムイオンおよび+4価のチタンイオンを含む溶液とを混合する方法としては、例えば、0〜50℃で、リン酸イオンを含む塩基性水溶液を攪拌下、+4価のセリウムイオンおよび+4価のチタンイオンを含む溶液を5秒〜1時間程度かけて添加しながら混合する方法等があげられる。このように混合することにより、非晶質のゲルが生成する。【0026】次に、生成したゲルを80℃の温度で熟成する。熟成の時間は、均質性の観点から、30分以上、好ましくは1時間以上が望ましく、製造上の効率性の観点から、5時間以下、好ましくは3時間以下が望ましい。【0027】また、必要に応じ、生成したゲルを120℃〜200℃の温度で水熱処理、あるいは焼成処理して結晶化させてもよい。ただしこのときオルトリン酸塩に変化させてはならない。【0028】結晶化する条件としては、水熱温度または焼成温度が、結晶性の観点から、120℃以上、好ましくは130℃以上、より好ましくは140℃以上であり、凝集及び粒成長を防ぐ観点から、200℃以下、好ましくは190℃以下、より好ましくは185℃以下である。【0029】水熱処理または焼成処理の時間は、結晶性の観点から、1時間以上、好ましくは1.5時間以上が望ましく、製造上の効率性の観点から、10時間以下、好ましくは5時間以下が望ましい。【0030】以上説明したようにして、本発明のリン酸セリウム−リン酸チタン系紫外線遮断剤を得ることができる。【0031】熟成後は、本発明のリン酸セリウム−リン酸チタン系紫外線遮断剤を濾過、遠心分離等で回収、洗浄し、必要があれば水をエタノール等の水溶性有機溶剤で置換したのち乾燥する。洗浄手段は遠心分離、濾別、デカンテーションを繰り返すか、セラミックフィルターや限外ろ過膜を使った微粉洗浄装置でもよい。洗浄が終わった粒子は、室温による自然乾燥、あるいはオーブン等を用いた加熱乾燥により乾燥する。このときに真空乾燥機やスプレードライヤーなどを用いても良い。乾燥させる際の温度は80〜200℃とすることが好ましい。【0032】また、本発明のリン酸セリウム−リン酸チタン系を水分散系で使用する際には、水洗の最終段階で回収せず、分散液としたまま使用することができる。さらに、本発明の紫外線遮断剤の製造方法は、高温での熱処理が不要であり、80℃の乾燥でも充分高い紫外線遮断能を有するため、製造上好都合である。【0033】本発明による紫外線遮断剤の用途は、特に制限されるものではなく、紫外線の遮断を必要とするいずれの用途でも使用できるが、例えば、日焼け止めを目的とした紫外線カット化粧品、紫外線防止フィルム、耐紫外線用プラスチック、耐紫外線用塗料等に好ましく使用することができる。なかでも日焼け止め化粧料や紫外線劣化防止用フィルムに特に好適に使用される。【0034】本発明の紫外線遮断剤のうち少なくとも1種類以上を、例えば、化粧料、フィルム、プラスチック、塗料等に配合すれば、可視領域の透明性を損なうことなく、UV−BからUV−A領域のほぼ全域にわたり優れた紫外線遮断効果を示し、また、触媒活性が抑制されるので安定性及び安全性が高い。【0035】さらに、本発明の紫外線遮断剤は粒子そのままの形態で、例えば、化粧品、フィルム、プラスチック、及び塗料等に配合することが出来るだけでなく、ペースト状、分散液状、分散液状などの各種形態で配合することが出来る。【0036】次に本発明により得られたリン酸セリウム−リン酸チタン系紫外線遮断剤を配合したプラスチックについて述べる。一般に、プラスチックは太陽光線に含まれる紫外線を吸収すると劣化をおこすことが知られている。その対策として本発明のリン酸セリウム−リン酸チタン系紫外線遮断剤を配合することで光劣化を防止あるいは低減できる。【0037】また、リン酸セリウム−リン酸チタン系紫外線遮断剤のプラスチックに対する配合比率は任意に設定することができるが、好ましくは0.5〜50重量%の範囲に調整する。配合率が0.5重量%以下では少なすぎて十分な紫外線遮断効果を得られず、一方、50重量%以上では分散性が低下する。また、配合の際に分散剤等の添加剤を加えても良い。【0038】さらに、本発明による紫外線遮断剤をフィルムに配合し、これを表面保護用途に使用することにより、フィルムより下層にある接着剤、プラスチック板、木板、鋼板及び染料、願料等の着色剤等は、紫外線から保護されるため長期間に亘って、使用することができる資材となる。【0039】一方、本発明の紫外線遮断剤を配合する塗料とは、特に規定するものではなく、いずれの塗料でも良いが、塗装法による分類のうち、常温乾燥塗料及び焼付け塗料が好ましく使用される。【0040】本発明による紫外線遮断剤を配合したプラスチックやフィルム、塗料としては、例えば、照明用カバー、電子基板及びEL等の電気・電子材料、自動車用内装パネル等の自動車部品、機械部品、食品および薬品等の包装や容器、繊維、看板、鋼板、プラスチック板、シート、農業用被覆資材、屋根、テント及び屋外倉庫等の屋外構築物、自動車、車両、船舶、航空機、家庭用電化製品、機械類、建築物外壁、橋梁、事務用品、眼鏡用レンズ、玩具、雑貨等が例示されるが、紫外線遮断性が必要とされるものであれば、いかなるフィルム、プラスチック、塗料等にも使用可能である。【0041】上記プラスチックやフィルム、および塗料の原料となる樹脂としては、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂が用いられる。熱可塑性樹脂としては、例えば含フッ素樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリカーボネイト樹脂、オレフィン系樹脂、エポキシ樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルスルホン酸樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、ABS樹脂、酢酸ビニル樹脂、およびポリエチレン樹脂等があり、なかでも比較的高温で加熱成形できる含フッ素樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネイト樹脂、ポリエステル樹脂が好ましい。【0042】さらに熱硬化性樹脂としては、例えば、メラミン樹脂、フエノール樹脂、ユリア樹脂、フラン樹脂、アルキッド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、エポキシ樹脂、ケイ素樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリパラバン酸樹脂等が用いられ、なかでもエポキシ樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリイミド樹脂が好ましい。【0043】次に本発明により得られた紫外線遮断剤を配合した化粧料について述べる。本発明のリン酸セリウム−リン酸チタン系紫外線遮断剤を配合した化粧料は透明性が高く、優れた紫外線遮断効果を発揮する。化粧料の剤型としては、例えば、乳液、クリーム、ローション、ファンデーション、コンパクトパウダー、マニキュア、口紅、アイシャドウ、化粧水、整髪料等に用いることができ、日焼け止め化粧料として用いるのが好ましい。配合率は特に限定されないが、0.1〜70重量%に調節するのが望ましい。配合率が0.5重量%以下であると十分な紫外線遮断効果を得にくくなる場合があり、他方、70重量%以上配合すると分散性、透明性が低下する場合がある。【0044】さらに、本発明のリン酸セリウム−リン酸チタン系紫外線遮断剤を化粧料に用いる場合、例えば、分散剤、界面活性剤、油剤、ゲル化剤、高分子、保湿剤、美容成分、色素、防腐剤、粉体、香料等の添加剤を本発明の効果を妨げない範囲で使用することができる。【0045】また、本発明のリン酸セリウム−リン酸チタン系紫外線遮断剤を上記各製品に配合する場合、本発明の紫外線遮断剤をさらに表面処理したものを用いても良い。表面処理としては、アミノ酸処理、コラーゲン処理、レシチン処理、トリグリセライド処理、シリコーン処理、金属石鹸処理、キチン・キトサン処理等が挙げられる。【0046】加えて、本発明のリン酸セリウム−リン酸チタン系紫外線遮断剤を上記各製品に配合する場合、異なる組成のものを2種類以上組み合わせて用いても良い。【0047】さらに、本発明の紫外線遮断剤に加えて、有機系紫外線吸収剤や無機系紫外線遮断剤を少なくとも1種類以上、製品や環境の汚染等、その使用に起因する問題点を生じない範囲で微量添加し、本発明の紫外線遮断剤と併用することにより両者の利点を同時利用できるようにしてもよい。この場合の有機系紫外線吸収剤としては、例えば、サリチル酸系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系あるいはシアノアクリレート系、4−ターシャリブチル−4'−メトキシベンゾイルメタン等の各種紫外線遮断剤などがあげられる。具体例として、サリチル酸系紫外線遮断剤としては、サリチル酸オクチル、サリチル酸ホモメンチル、サリチル酸メチル等がある。ベンゾフェノン系紫外線遮断剤としては、ヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、ヒドロキシメトキシベンゾフェノンスルホン酸、ヒドロキシメトキシベンゾフェノンスルホン酸ナトリウム、ヒドロキシメトキシベンゾフェノン、オキシベンゾン等がある。ベンゾトリアゾール系紫外線遮断剤としては、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−ターシャリブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−5−ジターシャリブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール等がある。シアノアクリレート系紫外線遮断剤としては、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート等がある。一方、無機系紫外線遮断剤としては酸化チタン、酸化亜鉛、あるいは酸化セリウム等の少なくとも1種類以上が好ましく、より好ましくは平均粒径50nm以下の酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウムが用いられる。【0048】【物性の測定法】各紫外線遮断剤について、粉末X線回折測定(マックサイエンス社製、M18XHF−SHA型)により生成相を同定し、また透過型電子顕微鏡(日立製作所製 H−800型)観察により、試料粉末の粒子形状および平均粒径を測定した。【0049】紫外線遮断性および可視光透明性は紫外可視分光光度計(島津製作所製、UV−2550型、積分球付き)を用いて測定した。試料の紫外線遮断能を判断するための評価として、硫酸バリウム粉末(和光純薬製、試薬特級)を参照試料とし、上記分光光度計を用いて反射スペクトルを測定した。この反射スペクトルにおける320〜400nm(UV−A)、および250〜320nm(UV−B)の反射率の値が可視光域の反射率に比べて小さいほど、選択的に紫外線を吸収していることを表す。【0050】各紫外線遮断剤粉末の色相(L*, a*, b* )を、ミノルタ製CR−300型色彩色彩計を用いて測定した。【0051】一定量の紫外線遮断剤粉末を、濃塩酸(35%)に少量の過酸化水素(30%)を加えて溶解させ、この溶液について、ICP発光分析法(島津製作所製ICP−S1000IV型)によりTi、CeおよびPの定量分析を行った。【0052】紫外線遮断剤の熱触媒活性は、例えば、粧技誌、第31巻(1997年)第329〜332頁に記載されている方法に準じ、ひまし油5.0g中に紫外線遮断剤0.3gを混合し、1時間あたり15リットルの空気流通下、130℃で加熱しながら流通後の空気を50ミリリットルの脱イオン水中へ導いて分解生成物を捕集し、3時間後の水の導電率変化を測定することで評価した。さらに、光触媒活性については130℃で3時間加熱するかわりに、ソーラシミュレータ(山下電装(株)製、YSS−80型)で9時間光照射した後の水の導電率変化を測定することで評価した。【0053】【実施例】以下に実施例をあげて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。【0054】(実施例1)リン酸水素二ナトリウムを500℃で5時間加熱して得られたピロリン酸ナトリウム2.66gを100mlの水に溶解させ水溶液を得た。これに市販の硫酸セリウム4水和物3.84gと30%硫酸チタン溶液0.40gを脱イオン水に溶解させた水溶液100mlを撹拌下、室温で混合すると、直ちに沈殿ゲルが生成した。このゲル分散液のpHは2であった。このゲルを80℃で30分熟成した後、析出物を遠心分離およびイオン交換水への再分散を繰り返すことにより水洗し、80℃で24時間乾燥することにより淡黄色の紫外線遮断剤粉末を得た。【0055】得られた粉末について、前記の測定および評価を行った。結果を表1、図1および図2に示す。図2には、後に述べる実施例2から5の結果も併せて示されているが、この図より明らかなように、本発明の紫外線遮断剤においては、セリウムとチタンの比を変えることによりスペクトルを自在に変化させ、紫外線遮断効果を任意に制御することができる。【0056】【表1】【0057】表1における触媒活性抑制の評価項目と評価基準は以下の通りである。○:触媒活性が全くみられない。△:わずかに触媒活性がみられ、実用上好ましくない。×:触媒活性があり、実用的には使用できない。【0058】図1に示すこの試料のX線回折パターンより明らかなように、アモルファス物質に一般的に見られるハロパターンが観察された。ICP発光分析により組成の分析を行ったところ、その組成はTi0.05Ce0.95P2O7であった。さらに、透過型電子顕微鏡観察を行ったところ、この試料は平均粒径0.010μm(10nm)の超微粒子の粉末であることがわかった。紫外線遮断能は図2および表1に示すように優れており、透明性にも優れるものであった。また、熱・光触媒活性についても全く見られなかった。【0059】(実施例2)リン酸水素二ナトリウムを500℃で5時間加熱して得られたピロリン酸ナトリウム2.66gを100mlの水に溶解させて得た水溶液に、市販の硫酸セリウム4水和物2.02gと30%硫酸チタン溶液4.00gを脱イオン水に溶解させた水溶液100mlを撹拌下、室温で混合し、アモルファスの沈殿ゲルを得た。以後の操作を実施例1と同様に行って、粉末を得た。得られた粉末について、前記の測定および評価を行った。結果を表1に示す。【0060】(実施例3)リン酸水素二ナトリウムを500℃で5時間加熱して得られたピロリン酸ナトリウム2.66gを100mlの水に溶解させて得た水溶液に、市販の硫酸セリウム4水和物0.40gと30%硫酸チタン溶液7.20gを脱イオン水に溶解させた水溶液100mlを撹拌下、室温で混合し、アモルファスの沈殿ゲルを得た。以後の操作を実施例1と同様に行って、粉末を得た。得られた粉末について、前記の測定および評価を行ったところ、図3に見られるように、この試料は平均粒径0.010μm(10nm)の超微粒子の粉末であることがわかった。その他の結果を表1に示す。【0061】(実施例4)リン酸水素二ナトリウムを500℃で5時間加熱して得られたピロリン酸ナトリウム3.99gを150mlの水に溶解させて得た水溶液に、市販の硫酸セリウム4水和物0.42gと30%硫酸チタン溶液11.18gを脱イオン水に溶解させた水溶液150mlを撹拌下、室温で混合し、アモルファスの沈殿ゲルを得た。以後の操作を実施例1と同様に行って、粉末を得た。得られた粉末について、前記の測定および評価を行った。結果を表1に示す。【0062】(実施例5)リン酸水素二ナトリウムを500℃で5時間加熱して得られたピロリン酸ナトリウム2.66gを100mlの水に溶解させて得た水溶液に、市販の硫酸セリウム4水和物0.20gと30%硫酸チタン溶液7.60gを脱イオン水に溶解させた水溶液100mlを撹拌下、室温で混合し、アモルファスの沈殿ゲルを得た。以後の操作を実施例1と同様に行って、粉末を得た。得られた粉末について、前記の測定および評価を行った。結果を表1に示す。【0063】【比較例】(比較例1)市販のルチル型超微粒子酸化チタンを用い、上記記載の方法により、組成、平均粒子径、紫外線遮断性、可視光透明性、熱および光触媒活性、色相についてそれぞれ評価した。結果を表1に示す。【0064】(比較例2)市販の超微粒子酸化亜鉛を用い、上記記載の方法により、組成、平均粒子径、紫外線遮断性、可視光透明性、熱および光触媒活性、色相についてそれぞれ評価した。結果を表1に示す。【0065】実施例1〜5で製造した紫外線遮断剤、並びに比較例1〜2の紫外線遮断剤の物性測定結果から、例えば図4と表1に見られるように、本発明の紫外線遮断剤の紫外線遮断効果は優れており、さらに熱、光触媒活性のいずれも示さないことがわかる。【0066】【発明の効果】以上より、本発明の紫外線遮断剤は、透明性、分散性、耐候性、耐熱性に優れ、また組成により紫外線遮断効果ならびに黄色の着色度を任意に制御可能であり、化粧料、フィルム、プラスチックおよび塗料等、各種製品に配合することにより、紫外線による劣化や変質の防止に極めて有効に作用する。【図面の簡単な説明】【図1】実施例1で製造したリン酸セリウム−リン酸チタン系紫外線遮断剤のX線回折図である。【図2】実施例1〜5で製造したリン酸セリウム−リン酸チタン系紫外線遮断剤の紫外可視反射スペクトルである。【図3】実施例3で製造したリン酸セリウム−リン酸チタン系紫外線遮断剤の透過型電子顕微鏡写真である。【図4】実施例2で製造したリン酸セリウム−リン酸チタン系紫外線遮断剤、および比較例1〜2のルチル型超微粒子酸化チタン、超微粒子酸化亜鉛の紫外可視反射スペクトルである。 一般式:CexTi1-xP2O7・nH2O(0<x<1)で表され、リン酸セリウムとリン酸チタンを複合化して得られることを特徴とするリン酸セリウム−リン酸チタン系紫外線遮断剤。 平均粒径が0.003〜1μmである請求項1記載の紫外線遮断剤。 セリウム塩とチタン塩の混合溶液にリン酸塩溶液を加えて得られる複合化物ゲルを水洗、ろ過した後、乾燥又は焼成することを特徴とする、請求項1又は2に記載のリン酸セリウム−リン酸チタン系紫外線遮断剤の製造方法。 請求項1又は2に記載のリン酸セリウム−リン酸チタン系紫外線遮断剤のうち少なくとも1種類を含有することを特徴とする樹脂組成物。 請求項1又は2に記載のリン酸セリウム−リン酸チタン系紫外線遮断剤のうち少なくとも1種類を含有することを特徴とする化粧料。 結晶構造が不定形(非晶質、アモルファス)である請求項1に記載のリン酸セリウム−リン酸チタン系紫外線遮断剤。