生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_無菌カルシトニン製剤及びその製造方法
出願番号:2001309735
年次:2011
IPC分類:A61K 38/23,A61K 9/08,A61P 3/14,A61P 5/22,A61P 19/08,A61P 19/10,A61P 29/00


特許情報キャッシュ

人見 耕二 前島 卓治 JP 4680454 特許公報(B2) 20110210 2001309735 20011005 無菌カルシトニン製剤及びその製造方法 旭化成ファーマ株式会社 303046299 特許業務法人 もえぎ特許事務所 110000774 藤野 清也 100090941 人見 耕二 前島 卓治 20110511 A61K 38/23 20060101AFI20110414BHJP A61K 9/08 20060101ALI20110414BHJP A61P 3/14 20060101ALI20110414BHJP A61P 5/22 20060101ALI20110414BHJP A61P 19/08 20060101ALI20110414BHJP A61P 19/10 20060101ALI20110414BHJP A61P 29/00 20060101ALI20110414BHJP JPA61K37/30A61K9/08A61P3/14A61P5/22A61P19/08A61P19/10A61P29/00 A61K37/00 A61K9/00 特開2000−290195(JP,A) 特開平6−340547(JP,A) 国際公開第01/17542(WO,A1) 特開平9−234236(JP,A) 特開2000−34223(JP,A) 特開平10−77228(JP,A) 13 2003113112 20030418 8 20040519 2007019418 20070712 川上 美秀 伊藤 幸司 内藤 伸一 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、カルシトニン類を有効成分とする安定性の改善された無菌カルシトニン類製剤及びその製造方法に関する。【0002】【従来の技術】カルシトニン類は、血中カルシウム濃度に関与するポリペプチドホルモンであり、高カルシウム血症、骨ページェット病、骨粗鬆症の治療あるいは骨粗鬆症における疼痛の改善に用いられる医薬である。このカルシトニン類には、天然型カルシトニン類とその類似体が知られている。【0003】天然型カルシトニン類の例としては、ウナギカルシトニン、サケカルシトニン、ブタカルシトニン、ヒトカルシトニン、ニワトリカルシトニン等が挙げられ、内分泌細胞から分泌されてカルシウム調節ホルモンとしての機能を果たしている。また類似体としては、天然型カルシトニンのS-S 結合をアミノスベリン酸によってCH2-CH2 結合に置換した類似体、例えばエルカトニン([Asu1.7]ウナギカルシトニン)、[Asu1.7]ニワトリカルシトニン、[Asu1.7]サケカルシトニン、[Asu1.7]ヒトカルシトニンなどが知られている。【0004】エルカトニンは、化学名1−ブチル酸-7-(L-2-アミノブチル酸)-26-L-アスパラギン酸-27-L-バリン-29-L-アラニンカルシトニン(サケ)[1-[butyric acid-7-(L-2-aminobutyric acid)-26-L-aspartic acid-27-L-valine-29-L-alanine calcitonin(salmon)] で、高カルシウム血症,骨ぺージェット病、骨粗鬆の治療あるいは骨粗鬆症における疼痛改善に用いられる医薬である。また、エルカトニンを有効成分とする水溶液組成物はペプタイド類水溶液であり、従来から、ガラス容器中での注射剤としての熱安定性、振盪に対する安定性を十分確保する為に、種々の研究がなされてきた。【0005】現在は、カルシトニン類の製剤の大部分がガラス容器に入れられて保管、流通、使用されているが、ガラスは、重量があり輸送に不便である上、製造中、輸送中あるいは使用時に破損するおそれがある。さらに、ガラス容器の場合は、サルファー処理等の表面処理を行わないと、充填された薬物が液状である場合、アルカリが溶出し、pHを変化させて薬物の安定性を損なうという欠点がある。これらを防ぐ方法として、容器の素材を樹脂製に変更することが考えられる。しかし、樹脂はガラスと違い、耐熱性が悪い為に、高温では変形や溶解を起こし、無菌性確保の為の乾熱滅菌ができないという欠点がある。その為に一般に樹脂製品にはEOG滅菌、γ線滅菌等の高温を避けた滅菌方法がとられている。【0006】【発明が解決しようとする課題】本発明は、樹脂製容器にカルシトニン類またはその類似体 (以下、これらをカルシトニン類という) を充填し、カルシトニン類製剤の輸送を容易とし、製造、輸送あるいは使用時の製剤の破損を防止するとともに、カルシトニン類の安定性を向上するようにしたカルシトニン製剤及びその製造方法を提供することを目的とする。【0007】【課題を解決するための手段】注射剤の容器として、樹脂はガラスに比し、保管、流通、使用において軽量であり、破損しにくいといった点で有利なものであるが、ガラスとは違い、高温では変形や溶解を起こし、無菌性確保の為の乾熱滅菌ができない。その為にEOG 滅菌、γ線滅菌の滅菌方法がとられているが、本発明者らはγ線滅菌したプラスチック容器中に充填したカルシトニン類の安定性が低下する傾向にあることを初めて発見した。そしてカルシトニン類の安定性が確保され、かつ無菌性が保証された、樹脂製容器に充填されたカルシトニン類製剤の製造を鋭意検討した結果、蒸気滅菌、特に80℃〜130 ℃、5分〜180 分の条件で蒸気滅菌した樹脂製容器に無菌カルシトニン類を充填した場合に、充填されたカルシトニン類が安定であることを初めて明らかにし、本発明を完成した。【0008】本発明は、蒸気滅菌した樹脂製容器に無菌カルシトニン類が充填されている安定性の改善された無菌カルシトニン類製剤に関する。また、本発明は、蒸気滅菌した樹脂製容器に、無菌カルシトニン類を充填することによりなる安定性の改善された無菌カルシトニン類製剤の製造方法に関する。【0009】本発明における蒸気滅菌条件は、80℃〜130 ℃で5分〜180 分行うことが望ましい。さらに望ましくは、121 ℃、20分〜40分である。80℃より低温であると、滅菌が充分にできない場合が考えられ、また、130 ℃高い温度では、滅菌効果は得られても、樹脂に変形が生じる場合があり、このような変形は、特に容量が重要であるシリンジの場合は製品として使用できない。さらに時間は、滅菌効果を得るため5分以上が好ましく、作業効率を高める観点から180 分以下が好ましい。また、樹脂としては、好ましくは環状ポリオレフィンを用い、容器の形態としては、自動瓶、管瓶、アンプル、シリンジ、カプセル、バイアル、ソフトパックなどが用いられる。カルシトニン類は、カルシトニン水溶液の形で用いることが好ましく、カルシトニンを用いることが望ましい。【0010】【発明の実施の形態】本発明における容器の樹脂としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、環状ポリオレフィン、環状ポリオレフィンとα−オレフィンの共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリメチルペンテン、6フッ化樹脂、ポリメチルメタアクリレート、ポリカーボネイトなどのプラスチック類中から選択することができるが、これらに限定されない。この中で、環状ポリオレフィンは、非常に高い透明性があり、内容物の視認性に優れ、さらに吸湿性、透湿性が低いことから、望ましい。環状ポリオレフィン製のシリンジは例えば、大協精工のCZシリンジ、ティコナ社のトーパス製シリンジ等を使用することができる。【0011】蒸気滅菌を行う機械としては、例えば平山製作所高圧蒸気滅菌器 HV-110/V 、サクラ精機株式会社高圧蒸気減菌器YLC 等が挙げられる。しかし、これらに限定されない。【0012】本発明において、樹脂製容器に充填されるカルシトニン類は、固形物(例えば粉状)、あるいは水溶液状等が考えられるがこれらに限定されない。カルシトニン類を注射投与する際、カルシトニン類が固形物であると、溶解液を調整したり、完全に溶解したりする作業が必要となる。そこで、カルシトニン類は、カルシトニン水溶液の状態で充填されることが望ましい。カルシトニン類を有効成分とする水溶液は、有効量のカルシトニン類を含有すればよいが、例えば、適当なpHが確保された水溶液であることが好ましい。溶媒として、公知の緩衝液、例えば、クエン酸緩衝液、酢酸緩衝液が使用でき、pHは5〜7が好ましく、pH5〜6.5 がさらに好ましい。これらの濃度は、例えば 0.05mmol 以上が好ましく、さらに好ましくは0.1mmol 以上の濃度が例示される。上限は特に限定されないが、通常20mmol濃度以下、好ましくは1mmol濃度以下が挙げられる。【0013】カルシトニン類を溶解する溶媒としては、具体的には、酢酸、乳酸、L-ヒスチジンなどのモノカルボン類及びその水可溶性塩からなる群より選ばれた1種又は2種以上の化合物を含みその濃度を0.05〜20mmol濃度に、pHを 5.0〜6.5 に且つイオン強度をμ=0.01〜0.5 に調整した溶媒(特開平2-174726号公報) 、コハク酸、酒石酸、クエン酸などの多価カルボン類及びその水可溶性塩からなる群より選ばれた1種又は2種以上の化合物を含みその濃度を0.05〜20mmol濃度に、pHを 5.0〜6.5 に且つイオン強度をμ=0.01`0.5に調整した溶媒が挙げられる。またpHの調整には必要に応じて水酸化ナトリウム、塩酸等を用いることができる。その他に、必要に応じてゼラチンを0.01〜20w/v %含有させることや、等張化剤、塩酸プロカイン、塩酸キシロカイン、ベンジルアルコール、フェノール等の無痛化剤、安定化剤、吸収促進剤、防腐剤、ポリソルベート、ポリオキシエチレン、グリセリン、マクロゴール等の界面活性剤を加えることができる。またエルカトニンの濃度としては例えば10単位〜80単位/mL のものを用いることができる。【0014】樹脂製容器の形態としては、自動瓶、管瓶、アンプル、シリンジ、カプセル、バイアル、ソフトバッグ等が挙げられるがこれらに限定されない。【0015】【実施例】以下に実施例及び実験例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。【実施例1】0.01mMの酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)にエルカトニンを溶解して40単位/mL 濃度のエルカトニン水溶液組成物をえる。次にこのエルカトニン水溶液組成物を孔径0.22μm のメンブランフィルターで無菌濾過後、121 ℃で20分蒸気滅菌した環状ポリオレフィン製注射筒(大協精工製:CZシリンジ、以下同じ) に1.0mL ずつ分注した後、ピストンを挿入し、プレフィルドシリンジ製剤を得た。ピストンと密閉栓はクロロブチルにテトラフルオロエチレンをラミネートしたものを用いた。【0016】【実施例2】実施例1と同様にして得られたエルカトニン水溶液組成物を孔径0.22μm のメンブランフィルターで無菌濾過後、121 ℃で40分蒸気滅菌した環状ポリオレフィン製注射筒に1.0mL ずつ分注した後、ピストンを挿入し、プレフィルドシリンジ製剤を得た。ピストンと密閉栓はクロロブチルにテトラフルオロエチレンをラミネートしたものを用いた。【0017】【実施例3】実施例1と同様にして得られたエルカトニン水溶液組成物を孔径0.22μm のメンブランフィルターで無菌濾過後、80℃で180 分蒸気滅菌した環状ポリオレフィン製注射筒に1.0mL ずつ分注した後、ピストンを挿入し、プレフィルドシリンジ製剤を得た。ピストンと密閉栓はクロロブチルにテトラフルオロエチレンをラミネートしたものを用いた。【0018】【実施例4】実施例1と同様にして得られたエルカトニン水溶液組成物を孔径0.22μm のメンブランフィルターで無菌濾過後、130 ℃で50分蒸気滅菌した環状ポリオレフィン製注射筒に1.0mL ずつ分注した後、ピストンを挿入し、プレフィルドシリンジ製剤を得た。ピストンと密閉栓はクロロブチルにテトラフルオロエチレンをラミネートしたものを用いた。【0019】【比較例1】実施例1と同様にして得られたエルカトニン水溶液組成物を孔径0.22μm のメンブランフィルターで無菌濾過後、γ線を10kGy 照射した環状ポレオレフィン製注射筒に1.0mL ずつ分注した後、ピストンを挿入し、プレフィルドシリンジ製剤を得た。ピストンと密閉栓はクロロブチルにテトラフルオロエチレンをラミネートしたものを用いた。【0020】【比較例2】実施例1と同様にして得られたエルカトニン水溶液組成物を孔径0.22μm のメンブランフィルターで無菌濾過後、γ線を20kGy照射した環状ポレオレフィン製注射筒に1.0mL ずつ分注した後、ピストンを挿入し、プレフィルドシリンジ製剤を得た。ピストンと密閉栓はクロロブチルにテトラフルオロエチレンをラミネートしたものを用いた。【0021】【比較例3】実施例1と同様にして得られたエルカトニン水溶液組成物を孔径0.22μm のメンブランフィルターで無菌濾過後、γ線を30kGy照射した環状ポレオレフィン製注射筒に1.0mL ずつ分注した後、ピストンを挿入し、プレフィルドシリンジ製剤を得た。ピストンと密閉栓はクロロブチルにテトラフルオロエチレンをラミネートしたものを用いた。【0022】【試験例】実施例1〜4で得られた本発明のエルカトニンプレフィルドシリンジ製剤と比較例1〜3で得られたエルカトニンプレフィルドシリンジ製剤を紙箱に入れ、恒温機中にて、40℃、50℃、および60℃の一定温度で保存し、そのエルカトニン含量を高速液体クロマトグラフィーにて測定し、残存率を求めた。その結果を表1、表2、および表3に示す。高速液体クロマトグラフィー測定条件;カラム:ODS カラム 4.6×150mm検出:UV225nm移動相:CH3CN-0.1%TFA(33:67)【0023】【表1】【0024】【表2】【0025】【表3】【0026】以上の結果から、本発明の蒸気滅菌した樹脂製シリンジに充填したエルカトニン製剤の熱安定性は極めて高かった。【0027】【発明の効果】本発明によれば、蒸気滅菌した樹脂製容器に充填された無菌カルシトニン類は、熱安定性が十分確保される。そして、この製剤は輸送が容易であり、製造、輸送あるいは使用時の製剤の破損を防止することができる。 蒸気滅菌した樹脂製シリンジに無菌カルシトニン類水溶液が充填されていることを特徴とする安定性の改善された無菌カルシトニン類製剤。 樹脂製シリンジが80℃〜130 ℃、5 分〜180 分で蒸気滅菌した樹脂製シリンジである請求項1に記載の無菌カルシトニン類製剤。 樹脂製シリンジが環状ポリオレフィン製である請求項1又は2に記載の無菌カルシトニン類製剤。 カルシトニン類が、エルカトニンである請求項1〜3のいずれかに記載の無菌カルシトニン類製剤。 無菌カルシトニン類水溶液が、pH5〜7である請求項1〜4のいずれかに記載の無菌カルシトニン類製剤。 以下の工程を含んでなる安定性の改善された無菌カルシトニン類製剤の製造方法。1)樹脂製シリンジを蒸気滅菌する工程2)無菌カルシトニン類水溶液を1)で得られた樹脂製シリンジに充填する工程 蒸気滅菌の条件が、80℃〜130 ℃、 5分〜180 分である請求項6に記載の無菌カルシトニン類製剤の製造方法。 樹脂製シリンジが環状ポリオレフィン製である請求項6又は7に記載の無菌カルシトニン類製剤の製造方法。 カルシトニン類が、エルカトニンである請求項6〜8のいずれかに記載の無菌カルシトニン類製剤の製造方法。 無菌カルシトニン類水溶液が、pH5〜7である請求項6〜9のいずれかに記載の無菌カルシトニン類製剤の製造方法。 蒸気滅菌した樹脂製シリンジに無菌カルシトニン類水溶液を充填することを特徴とする無菌カルシトニン類製剤の安定化方法。 蒸気滅菌の条件が80℃〜130 ℃、5 分〜180 分であり、樹脂製シリンジが環状ポリオレフィン製であり、カルシトニン類が無菌エルカトニンである請求項11記載の無菌カルシトニン類製剤の安定化方法。 無菌カルシトニン類水溶液が、pH5〜7である請求項11又は12に記載の無菌カルシトニン類製剤の安定化方法。


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