タイトル: | 特許公報(B2)_OX40L遺伝子を導入した自己免疫疾患モデル非ヒト哺乳動物 |
出願番号: | 2001304645 |
年次: | 2007 |
IPC分類: | A01K 67/027,A61K 45/00,A61P 3/10,A61P 37/06,C12N 15/09 |
菅村 和夫 村田 和子 JP 3926596 特許公報(B2) 20070309 2001304645 20010928 OX40L遺伝子を導入した自己免疫疾患モデル非ヒト哺乳動物 独立行政法人科学技術振興機構 503360115 廣田 雅紀 100107984 菅村 和夫 村田 和子 20070606 A01K 67/027 20060101AFI20070517BHJP A61K 45/00 20060101ALN20070517BHJP A61P 3/10 20060101ALN20070517BHJP A61P 37/06 20060101ALN20070517BHJP C12N 15/09 20060101ALN20070517BHJP JPA01K67/027A61K45/00A61P3/10A61P37/06C12N15/00 A A01K 67/027 C12N 15/00-15/90 A61K 45/00 A61P 3/10 A61P 37/06 JSTPlus(JDream2) PubMed BIOSIS/WPI(DIALOG) 医学・薬学予稿集全文データベース GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq 特開平11−180893(JP,A) J. Immunol.,2001年 9月 1日,Vol. 167,2991-2999 実験医学,2001年 3月25日,Vol. 19,596-601 日本皮膚科学会雑誌,2000年,Vol. 110,1811-1812 FASEB J.,2001年 3月 7日,Vol. 15,A344 (Abstract 275.16) Mol. Med.,2000年,Vol. 37 臨時増刊号 免疫2000-01,172-182 日本免疫学会総会・学術集会記録,2000年,Vol. 30,49, 127, 293 Eur. J. Immunol.,1999年,Vol. 29,1610-1616 J. Exp. Med.,2000年,Vol. 191,365-374 4 2003102330 20030408 17 20030128 特許法第30条第1項適用 平成13年8月1日刊行の「第55回日本細菌学会東北支部総会 講演要旨集」の第23頁に「OX40リガンド トランスジェニックマウスの解析」(村田和子 他著)として掲載された。 中村 正展 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、自己免疫疾患モデル非ヒト哺乳動物、詳しくはOX40L遺伝子を導入した自己免疫疾患モデルトランスジェニック非ヒト哺乳動物、及びその自己免疫疾患治療薬のスクリーニングへの利用に関する。【0002】【従来の技術】OX40(CD134)は、TNF受容体ファミリーに属する分子で、活性化T細胞に一過性に発現する。一方、OX40L(OX40リガンド)は、活性化B細胞、活性化樹状細胞などのAPC(抗原提示細胞)に発現する。T−APC細胞の相互作用を通じて共刺激を加える場合のTNFファミリーメンバーの影響については、多くの報告がなされており、その因果関係として、自己免疫疾患の原因という点において、それらが果たす役割が重要視されている。これらの報告では、OX40L遺伝子欠損マウスや限定的に発現するOX40Lトランスジェニックマウスが作製されている。以下に、T−APC相互作用を通じて共刺激を加える場合のTNFファミリーメンバーの影響に関する従来の報告について詳述する。【0003】ナイーブT細胞を充分に活性化するには、TCR(T cell receptor)のペプチド/MHC(主要組織適合遺伝子)複合体との相互作用だけではなく、APC(抗原提示細胞)上で発現する付随分子による共刺激も必要である。CD80及びCD86という、ともにT細胞上のCD28に結合する周知のアクセサリー分子以外に、OX40L(OX40リガンド)、CD70、4−1BBL及びRRANCEを含む、数種の腫瘍壊死因子(TNF)ファミリーメンバーが、T細胞上の同系のレセプターとの結合の際に共刺激シグナルを誘導することが知られており、また、T細胞上に発現する別のメンバーであるCD40Lも、APC上でレセプターに結合する際のAPCの活性化に不可欠であることが知られている(Grewal and Flavell, 1998, Annu.Rev.Immunol.,16,111)。【0004】こうした観察結果は、T−APC相互作用においてTNF/TNFレセプターファミリーメンバーが共刺激を与える役割を果たしていることを示唆している。当初、その発現がヒトT細胞白血病ウィルスタイプI(HTLV−I)のTaxにより誘導されるヒトgp34と同定されていた分子であるOX40L(Miura et al., 1991, Mol.Cell. Biol., 11,1313)は、B細胞、樹状細胞、及び内皮細胞中で発現し(Ohshima et al., J Immunol. 1997 Oct 15;159(8):3838-48; Kawamata et al., 1998; Murata et al.,2000, J.Exp.Med., 191, 365)、そのレセプターであるOX40は、元来、活性化されたT細胞マーカーであるとされていた(Paterson et al., 1987; Mallet et al., 1990)。T細胞とAPCとの間のOX40L/OX40相互作用が、最適のCD4+T細胞反応に大きく係わっていることを示す証拠が次々と現れている。【0005】本発明者らは他者と協力してOX40L欠損マウスを作製した。かかるマウスは抗原を与えられた際にAPC機能のかなりの欠損を示し、そうした欠損によりTh1及びTh2サイトカインの双方について、その産生及び増殖におけるT細胞反応が減少していた(Chen et al., 1999, Immunity, 11,689; Pippig et al., 1999, J.Immunol., 163,652; Murata et al.,2000, J.Exp.Med., 191, 365)。同様のAPC機能の欠損は、抗OX40L mAbs(モノクロナール抗体)を用いてインビボでOX40L/OX40相互作用を妨害することでも誘導される(Murata et al.,2000, J.Exp.Med., 191, 365)。OX40L及びそのレセプターであるOX40を欠損したマウスは、CD4+T細胞反応が低下していることも知られている(Kopf et al., Immunity. 1999 Dec;11(6):699-708)。Th1及びTh2反応の両方に強い共刺激をもたらす以外に、OX40L/OX40相互作用は、ある種の実験条件下(Flynn et al., J Exp Med. 1998 Jul 20;188(2):297-304; Oshima et al., 1998; Jember et al., J Exp Med. 2001 Feb 5;193(3):387-92)、抗体反応を変化させる場合(Chen et al., 1999, Immunity, 11,689; Pippig et al., 1999, J.Immunol., 163,652; Murata et al.,2000, J.Exp.Med., 191, 365; Morimoto et al., J Immunol. 2000 Apr 15;164(8):4097-104)、及びT細胞の遊走時(Higgins et al., 1999, J.Immunol.,162, 486; Nohara et al., J Immunol. 2001 Feb 1;166(3):2108-15)において、Th2に偏った反応を制御することも示されている。【0006】OX40/OX40Lが用いるのは、記憶T細胞の発生と生存の調節という、直接的かつ重要な手段である(Gramaglia et al.,1998, J.Immunol.,161,6510及び 2000, J.Immunol.,165,3043)。脳炎誘発性野生型T細胞をOX40L欠損マウスに養子移入すると、それらのマウスでは病状の持続的進行が不可能になるらしいことが、最近、本発明者らにより示された(Ndhlovu et al.,2001, J.Immunol.,167,2991)。さらに、OX40の刺激が寛容誘導を妨げるとの報告もなされており(Pakala et al., Nat Med. 2001 Aug;7(8):907-12)、これは、OX40L/OX40システムが自己免疫疾患の制御に関与している可能性を示している。確かに、OX40及びOX40Lは、実験的アレルギー性脳炎(EAE)、同種異系の宿主対移植片病(GVH病:GVHD)、増殖性狼瘡性腎炎及び関節炎など、数種の炎症性障害の組織中に検出される(Weinberg et al., 1999, J.Immunol.,162, 1818; Tittle et al., 1997, Blood, 89,4652; Stuber et al., 1998, Gastroenterology, 115, 1205; Nakajima et al., J Immunol. 2001 Feb 1;166(3):2108-15)。【0007】OX40を発現する自己反応性T細胞は、EAE(実験的アレルギー性脳脊髄炎)に罹患したラットから検出され、OX40抗毒素を投与すると、EAEの症状が改善された。加えて、OX40Lのアンタゴニストである可溶性OX40融合蛋白質も、進行中のEAE(Weinberg et al., 1999, J.Immunol.,162, 1818)及びGVHD(Stuber et al., 1998, Gastroenterology, 115, 1205)を抑制するだけでなく、炎症性腸炎(IBD)のモデルマウスにおける進行中の大腸炎(Higgins et al., 1999, J.Immunol.,162, 486)、喘息(Jember et al., J Exp Med. 2001 Feb 5;193(3):387-92)、コラーゲン誘導性関節炎(CIA)(Nakajima et al., J Immunol. 2001 Feb 1;166(3):2108-15)の症状を改善させるとされている。こうしたデータから、各種自己免疫疾患の免疫制御にOX40L−OX40相互作用が重要な役割を果たしていることが示唆される。【0008】APC上のOX40Lの発現とは無関係の過剰なOX40Lシグナリングにより、本発明者らは免疫制御に対するOX40Lの影響の重大性をよりくわしく評価する手段を得た。LaneらはCD11cプロモーターのもとでOX40Lトランスジェニック(OX40L−Tg)マウスを作製したが、OX40Lの発現が限定的だったため、T細胞の機能におけるOX40刺激の機能的重要性をはっきり示すことはできなかった。OX40Lの発現は、通常の活性化T細胞上で必ずしもすぐに検出できるわけではない(Murata et al.,2000, J.Exp.Med., 191, 365)。長期間培養された通常ヒトT細胞クローンが、免疫染色で検出されたとおり、OX40Lを発現することが、本発明者らによって最近明らかにされた(Takasawa et al., 2001, Jpn.J.Cancer Res., 92,377)。さらに、OX40欠損マウス由来の活性化T細胞が細胞表面上のOX40Lにより検出可能であることも明らかにされており(Kopf et al., Immunity. 1999 Dec;11(6):699-708)、これはT細胞がOX40Lを発現している可能性があることを示している。【0009】【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、自己免疫疾患モデル非ヒト哺乳動物及びその利用、詳しくはOX40L遺伝子を導入した自己免疫疾患モデルトランスジェニック非ヒト哺乳動物、及びその自己免疫疾患治療薬のスクリーニングへの利用方法を提供することにある。【0010】【課題を解決するための手段】本発明者は、T−APC細胞の相互作用を通じて共刺激を加える場合のTNFファミリーメンバーの影響についての研究において、TNFファミリー分子の1つであるOX40L(OX40リガンド)を、T細胞で恒常的に発現するトランスジェニックマウスを作成したところ、これらのマウスが自己免疫疾患を発症し、自己免疫疾患モデルとして有用であることを見い出し本発明をなした。本発明の自己免疫疾患を発症するトランスジェニック非ヒト哺乳動物は、OX40L遺伝子を、T細胞特異的lckプロモーター制御下のOX40LcDNAで構成されている発現プラスミドDNAを用いて非ヒト哺乳動物の受精卵に導入することによって作製することが出来る。本発明のトランスジェニック非ヒト哺乳動物は、間質性肺炎、炎症性腸炎、巨脾症若しくはリンパ腺症、又は高免疫グロブリン血症等の自己免疫疾患を発症し、これらの自己免疫疾患治療薬のスクリーニングに有効に利用することができる。【0011】 すなわち本発明は、(1)OX40L遺伝子をT細胞特異的lckプロモーターの下流に組み込んだOX40L発現ベクターを、マウスの受精卵に導入し、該マウスをC57BL/6系マウスに戻し交配した、OX40LをT細胞で恒常的に発現している、間質性肺炎及び炎症性腸炎を自然発症するトランスジェニックマウスの間質性肺炎又は炎症性腸炎のモデル動物としての使用方法からなる。【0012】 また本発明は、(2)OX40L遺伝子が、配列番号1に示されるDNA配列からなることを特徴とする上記(1)記載の使用方法からなる。【0013】 さらに、本発明は、(3)炎症性腸炎が、腸基底膜における中程度から重度のリンパ系組織の過形成、基底膜における粘膜上皮の過形成、リンパ球の浸潤又は粘膜下リンパ濾胞の増生を発症していることを特徴とする上記(1)又は(2)記載の使用方法や、(4)戻し交配を、少なくても12世代行うことを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれか記載の使用方法からなる。【0014】【発明の実施の形態】本発明において、OX40L(OX40リガンド)を、T細胞で恒常的に発現するトランスジェニック非ヒト哺乳動物を作製するためには、適宜の非ヒト哺乳動物を用いることができるが、自己免疫疾患治療薬のスクリーニング等に有効に利用するためには、マウスを用いるのが好ましい。トランスジェニック非ヒト哺乳動物を作製するためのマウスとしては、種々のものが利用できるが、例えばC57BL/6、DBA/2などが挙げられる。OX40LcDNAで構成された発現ベクターを、例えば、(C57BL/6×DBA/2)F1受精卵に導入することにより、トランスジェニックマウスを作製することができる。OX40L遺伝子が導入されたトランスジェニックマウスは、遺伝子が導入されていることが確認されたF1マウスを親のマウスと戻し交配し、導入された遺伝子の純化を図る。本発明においては、例えば親のマウスのC57BL/6を背景に少なくとも12世代の戻し交配が行われる。【0015】本発明で用いるOX40L遺伝子は、公知のものであり、例えば、GenBank登録番号U12763として登録されている。OX40L遺伝子の導入に用いる発現ベクターとしては、公知の発現ベクターを用いることができる。発現ベクターに用いるプロモーターとしては、OX40LをT細胞において恒常的に発現する機能を有するベクターであれば、適宜のプロモーターを用いることができるが、好適なプロモーターとして、T細胞特異的lckプロモーターを例示することができる。【0016】本発明のOX40L遺伝子を導入した自己免疫疾患モデルトランスジェニック非ヒト哺乳動物は、自己免疫疾患治療薬のスクリーニングに利用することができる。かかるスクリーニング方法としては、例えば、自己免疫疾患を発生したモデルマウスに被検物質を投与し、該モデルマウスにおける自己免疫疾患の病徴を評価・測定することにより行うことができる。自己免疫疾患の病徴を評価・測定する方法としては、被検物質を投与されたマウスから病理組織を採取し、該組織像を解析・評価する方法を例示することができる。又、自己免疫疾患の病徴の発生及び/又は進行の程度を測定・評価するに際しては、自己免疫疾患発生のモデルマウスと同種の野生型マウスを同時に用いることが、個体レベルで正確な比較実験をすることができることから好ましい。【0017】本発明のスクリーニング方法により得られる自己免疫疾患の治療剤は、自己免疫疾患として発症する、間質性肺炎、炎症性腸炎、巨脾症若しくはリンパ腺症、又は高免疫グロブリン血症等の治療に有効に適用することができる。【0018】【実施例】以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。実施例1(OX40Lトランスジェニックマウスの作製)OX40Lトランスジェニック(OX40L−Tg)マウスを、マウスOX40リガンドをコードする発現プラスミドDNAの前核注入により作製した。かかるマウスOX40L発現ベクターの構築物は、T細胞特異的lckプロモーターの制御下にマウスOX40L cDNAが構成されていた(図1A)。OX40L発現プラスミドDNAを注入したF1受精卵(C57BL/6×DBA/2)を用いて3匹の初代マウスを作製し、それらをC57BL/6マウスと交配した。フローサイトメトリー分析により、3匹のOX40L−Tg系統マウス由来の胸腺細胞群にはOX40Lの発現が同様に見られたが、野生型マウス由来のものではかかる発現が見られないことがわかった(図1B)。3匹のOX40L−Tg系統マウスのうち2匹のOX40L−Tg(OX40L−Tg1及びOX40L−Tg2)マウスでは、脾臓細胞においてかなりのOX40Lを発現していたが、残りの1匹のマウス(OX40L−Tg3)においては、OX40Lの弱い発現が見られるにとどまっていた(図1B)。そこで、これら3系統のトランスジェニックマウスを、C57BL/6系統マウスと少なくとも12回戻し交配した。【0019】実施例2(OX40LトランスジェニックマウスにおけるT細胞の自発的活性化)まず、OX40L導入遺伝子が結果として、胸腺、脾臓、及びリンパ節におけるリンパ球細胞群のすべてにおいて、なんらかの内因性変化をもたらすかどうかをフローサイトメトリーを用いて調べてみた。CD4+及びCD8+発現により調査した、胸腺T細胞数及び部分母群については、3匹のOX40L−Tg系統は見たところ異常を示さなかった。しかし、脾臓及びリンパ節における全リンパ球の数は、OX40L−Tg1マウス及びOX40L−Tg2マウスにおいてのみ、かなりの増加が示された。特にCD4+T細胞は二倍に増加したが、CD8+T細胞では、これら2匹のOX40L−Tg系統においても検出されなかった(図2A)。OX40L−Tg3の脾臓あるいはリンパ節におけるリンパ球の数的変化は、ごくわずか認められたに過ぎなかった。OX40L−Tg1マウスにおけるCD4+T細胞群の増加を考慮して、次にマウスが活性化表現型を持つT細胞を保持しているかどうかを調べた。活性化T細胞マーカーであるCD25やCD69を発現する細胞群は、野生型マウスとは対照的にOX40L−Tg1マウス由来の脾臓CD4+T細胞においてはかなり増加していた(図2B)。OX40L−Tg2マウスを用いた場合でも、同様の結果が得られた。これらのことから、OX40L−Tgマウスでは多くのCD4+T細胞が自発的に活性化されていることがわかった。B細胞群では、脾臓におけるIgM+又はB220+B細胞数が、導入遺伝子OX40Lによって増加することはほとんどなかった。【0020】OX40L/OX40システムは記憶T細胞の生存及び維持に関与しているとの報告があるため(Gramaglia et al.,1998, J.Immunol.,161,6510及び 2000, J.Immunol.,165,3043)、OX40L−Tg1マウス中の記憶T細胞群を評価し、野生型マウス及びOX40L欠損マウス(Murata et al.,2000, J.Exp.Med., 191, 365)の場合と比較した。その結果、OX40L−Tgマウス由来の記憶T細胞では、CD44の発現が増加し、CD62L及びCD45RBの発現が減少していた。CD62LlowCD44high及びCD45RBlowの記憶T細胞の割合(%)及び数は、野生型マウスと比較して、OX40L−Tg1マウスの脾臓CD4+T細胞でかなり増加していたが、OX40L欠損マウスでは減少していることがわかった(図3A及びB)。野生型マウスに認められた年齢依存的なT細胞の増加は、OX40L−Tg1マウスでは見られなかった。記憶T細胞の数的増加は、これらのマウスにおいて早くも4週齢で認められ、この持続的な増加は年齢依存的なものではないことが示された(図3A)。これらのことから、OX40L−Tgマウスにおける記憶細胞の出現促進が明らかになった。次に、抗原投与後のこれらマウスにおけるサイトカイン産生量を測定してみた。その結果、ナイーブT細胞及び記憶T細胞の機能解析を行った。OX40L−Tg1マウス又は野生型マウス由来のナイーブ(CD62LhighCD44low)CD4+T細胞若しくは(CD62LlowCD44high)CD4+T細胞を、PMA及びイオノマイシンで刺激した。その後、免疫染色により、細胞質IL−2、IFNγ及びIL−4を検出した。OX40L−Tg1マウス由来のものは、IL−2陽性細胞群、IFNγ陽性細胞群及びIL−4陽性細胞群のすべてに関して、記憶T細胞及びナイーブT細胞の両方で、野生型マウス由来のものよりも大きな増加を示しており(図3C)、これは、OX40陽性CD4+T細胞が、インビボでも表現型を活性化する傾向にあることを示している。脾臓T細胞のVβを使用してさらに解析することで、かかる記憶T細胞の増加を確認した。これらの結果により、OX40L−Tgの末梢T細胞の大半が活性化状態及び記憶状態にあることがわかった。【0021】実施例3(OX40LトランスジェニックマウスにおけるT細胞活性化の増大)OX40Lトランスジェニックマウスにおける記憶T細胞の機能的能力を調べるため、T細胞の、各種刺激に反応した増殖能力及びサイトカイン産生能を測定するいくつかの実験を行った。まず、免疫していない野生型マウス及びOX40L−Tg1マウス由来の脾臓T細胞に関して、抗CD3抗体、コンカナバリンA(ConA)、又はイオノマイシンを加えたホルボールミリステートアセテート(PMA)による増殖反応について調べてみた。これらの刺激のすべてに対して、OX40L−Tg1のT細胞は、野生型T細胞よりもかなり高い増殖性反応を示した(図4A)。抗CD3抗体で刺激されたT細胞のサイトカイン産生能も、免疫染色で確認することができた。IL−2、IFNγ、IL−4、IL−5及びIL−10をそれぞれ産生するT細胞群は、野生型マウスよりOX40Lトランスジェニックマウスにおいてかなり増加していることが示された(図4B)。【0022】次に、OX40L−Tg1マウス及び野生型マウス由来のT細胞について、抗原特異的リコール増殖アッセイを行った。上記T細胞はどちらもインビボにおいて、完全フロイントアジュバントによるスカシガイヘモシアニン(KLH)で処理した。OX40L−Tg1マウスのT細胞は、野生型マウスよりもかなり大きな増殖反応を示した(図4C)。OX40L−Tg1マウスのT細胞からのIL−2、IFNγ、IL−4、IL−5及びIL−10等のすべてのサイトカイン産生も、野生型マウスと比較してかなり増大していることがわかった(図4D)。これらの結果は、MOG刺激による、本発明者らの以前の報告(Ndhlovu et al.,2001, J.Immunol.,167,2991)と一致するものであり、OX40L−TgマウスのT細胞が野生型マウスのものよりも効率的に抗原と反応することを示している。OX40L−Tgマウスにおける記憶T細胞の増加についてさらに調べるため、OX40L−Tg1マウス及び野生型マウスのT細胞について、インビボでの生存能を比較した。T細胞のインビボでの生存能を、Vβ3を発現するT細胞を活性化するSEAと細胞死誘導活性阻害物質として知られるLPSとを接種したマウスを用いて分析した(Maxwell et al.,2000, J.Immunol.,164,107)。Vβ3を発現するCD4+T細胞の減少は、野生型と比較してOX40L−Tg1マウスではかなり少なく(図4E)、これは、T細胞上のOX40Lの発現が、インビボにおけるT細胞死誘導活性の抑制に関わっていることを示している。【0023】実施例4(OX40LトランスジェニックマウスにおけるポリクローナルB細胞活性化)OX40LトランスジェニックマウスにおいてB細胞数の増加は認められなかったが、B細胞がインビボにおいて活性化されているかどうかを調べるために、血清免疫グロブリンアイソタイプの濃度を測定した。OX40L−Tg1マウスは野生型マウスと比較してIgG1は10倍、IgEは22倍、IgAは25倍というレベルの上昇を示したが、その一方、IgM、IgG2a、及びIgG2bの増加は少なく、それぞれOX40L−Tg1マウスの血清中で3倍、4倍、4倍であった。また、IgG3のレベルについては、野生型マウスよりもOX40L−Tg1マウスの血清のほうが高いということはなかった(図5A)。OX40L−Tg1マウスに見られるこのような偏ったIgアイソタイプの産生は、上述したようにそのT細胞のサイトカイン分泌レベルの上昇により説明ができる。また、ssDNA及びdsDNAに対する血清抗DNA抗体レベルがかなり増大したことが、OX40L−Tg1マウスの血清において確認された(図5C)。以上の結果から、OX40L−Tg1マウスがB細胞のポリクローナル抗体を活性化し、自己免疫の産生につながったことがわかる。さらに、マウスにおける各種サイトカインの血清レベルを分析した。IL−5とIL−13のレベルは、OX40L−Tg1マウスの血清では、野生型マウスと比較してかなり上昇していたが、IL−2、IL−4、IL−10、及びIFNγなどその他のサイトカインは、OX40Lトランスジェニックマウスと野生型マウスのどちらにおいても検出できなかった(図5B)。IL−5は、本発明者らが観察したOX40Lトランスジェニックマウスにおける血清IgAレベルの上昇に関与し、その原因となっていると思われる。【0024】実施例5(OX40Lトランスジェニックマウスにおける自己免疫炎症性疾患の発生)組織学的測定により、OX40Lトランスジェニックマウスの各器官に自己免疫的徴候が現れていることがわかった。月齢9ヶ月のOX40L−Tg1マウスの肺において、気管支及び血管周縁部にはリンパ球の著しい浸潤が、肺胞には多数の好酸性泡沫細胞を含んだコレステリン様結晶が認められ、重度の間質性肺炎を起こしていた(図6A;参考写真1参照)。間質性肺炎は、生後3ヶ月という早い時期にOX40L−Tg1マウスとOX40L−Tg2マウスの双方で認められ(表1)、間質性肺炎の発生が年齢依存的である可能性を示唆された。【0025】【表1】【0026】腸組織の分析により、OX40Lトランスジェニックマウスの炎症性腸炎が明らかになった。月齢9ヶ月のOX40L−Tg1マウスにおいて、腸基底膜における中〜重度のリンパ組織の過形成、基底膜における粘膜上皮の過形成、リンパ球の浸潤及び粘膜下リンパ濾胞の増殖が認められた(図6A)。こうした炎症性腸炎は、生後わずか3ヶ月でOX40L−Tg1マウスとOX40L−Tg2マウスの双方で観察された(表1)。【0027】巨脾症及びリンパ腺症がOX40Lトランスジェニックマウスに認められた。そのリンパ節では形質細胞の増加とラッセル小体の形成が見られた。ラッセル小体は形質細胞における好酸性細胞内沈着物、及び抗体の産生異常を反映しており、よく高免疫グロブリン血症を併発する(図6A)。心臓、腎臓、肝臓などのOX40Lトランスジェニックマウスのその他の組織は、組織学的に正常であり、尿中にはブドウ糖及び蛋白質が存在せず、腎臓あるいは膵臓の機能不全を示す証拠は見られなかった。【0028】実施例6(OX40LトランスジェニックマウスのCD4+T細胞の導入による、RAG−2欠損マウスにおける自己免疫疾患の誘導)OX40L−Tgマウスの間質性肺炎が感染性物質によるものではないことを確認するため、かかるマウスのSPF状況を確認する多くの実験を行った。マウスの肺炎や腸炎が伝染性の微生物によってもたらされたという証拠は発見できなかった。OX40L−Tgマウスにおいて病原性自己反応性T細胞が発生しているかどうかを調べるため、T細胞及びB細胞を欠損したC57BL/6 RAG−2欠損マウスにTgマウス由来のCD4+T細胞及びCD8+T細胞の移入を行った。RAG−2欠損マウスは、CD4+T細胞においては、接種の三週間後にまず体重減少及び下痢様症状を示したが、CD8+T細胞においては何も示されなかった(表1)。CD4+T細胞移入の2週間後から4週間後の組織学的分析で、重度のリンパ球性間質性肺炎及び大腸の炎症性腸炎が認められた(図7A;参考写真2参照)。野生型マウス由来のCD4+T細胞とCD8+T細胞のどちらを接種した場合でも、RAG−2欠損マウスにおいては自己免疫は発生していなかった。これらの結果により、OX40Lトランスジェニックマウス由来のCD4+T細胞は、RAG−2欠損マウスにおける自己免疫疾患の誘導に関する重要なエフェクター細胞であることがわかる。かかる細胞を移入されたRAG−2欠損マウスのCD4+T細胞は、OX40L−TgマウスのCD4+T細胞と同様に高レベルのIL−5及びIL−13を分泌していた。マウスOX40Lに対して特異的に阻害するモノクローナル抗体であるMGP34の投与、及びOX40L−TgマウスからRAG−2欠損マウスへのCD4+T細胞移入により、肺及び大腸での自己免疫疾患の誘導が阻害された(図7B;参考写真2参照)。これらの結果から、リンパ球性間質性肺炎及び大腸の炎症性腸炎の発生には、T細胞におけるOX40/OX40L相互作用が必要とされることがわかった。【0029】評価数種のTNFファミリーメンバー間での発現の変化によりリンパ球の反応が変化することは立証されている。Fas又はそのリガンドであるFasリガンドが存在していない場合には重篤な自己免疫疾患が発生する(Watanabe-Fukunaga et al.,1992, Nature, 356,314;Takahashi et al., 1994, Cell, 76,969)。また、CD30リガンドは自己免疫性糖尿病を予防する働きがあると考えられている。逆に、BAFF又はCD40リガンドの発現増加はそれぞれ、顕著な自己免疫や炎症の発生につながる(Mackaw et al.,1999, J.Exp.Med., 190,1697; Mehling et al., 2001, J.Exp.Med., 194,615)。本実施例により示された結果から、OX40の刺激が自己免疫抗体を分泌させ、肺及び大腸に炎症性の浸潤を発生させることが、OX40/OX40L相互作用によって明らかになった。【0030】本発明者らは、当初OX40L(ヒトgp34)がヒトT細胞白血病ウィルスタイプI(HTLV−I)のTax遺伝子により誘導される分子として同定しているが(Miura et al., 1991, Mol.Cell. Biol., 11,1313)、培養された正常ヒトT細胞クローンがOX40Lを発現することから、同様にOX40シグナリングに関与する、T細胞上で過剰発現しているOX40Lの免疫的因果関係の調査に着手した。本発明者らは、OX40Lトランスジェニックマウスの脾臓T細胞及びリンパ節T細胞が高レベルでCD69及びCD25を発現し、60%を超えるCD4+T細胞がCD62Llow、CD44high及びCD45RBlowであることを見い出した。このことから、これらのT細胞群が活性化記憶表現型であることを示唆される。これらT細胞をさらに分析した結果、興味深いことに、T細胞の記憶表現型への転換が年齢依存性ではないことを見い出し、また、OX40L−Tgマウス由来の記憶T細胞が、野生型マウスの場合と比較すると、刺激後リコールサイトカイン反応の増大とともに抗原依存型反応を増強させることがわかった。こうした初期の知見は、エフェクター記憶T細胞反応(EAEその他)の持続によるOX40/OX40Lの役割を明確にする上での以前の疑問点と一致するものであった。また、スーパー抗原に刺激された末梢T細胞の長い生存期間は、OX40L−Tgマウスにおいてさらに長くなることがわかった(図4E)。OX40による刺激は、SEAとLPSによる刺激の後で初期増加と持続性の増強を引き起こす(Maxwell et al., 2000. J.Immunol., 164,107)。一次的なポリクローナル拡張の調節により、OX40の自発的な刺激がT細胞の記憶の抗原依存的形成を増強することが明らかになった。本実施例による結果から、OX40/OX40Lシグナリングが記憶T細胞群のインビボでの保全と生存に関与していることが明らかになった。【0031】OX40は、リウマチ性関節炎、GVHD、ループス腎炎などの自己免疫疾患患者及び多発性硬化症やEAEのモデルマウスの自己反応性T細胞に発現すると報告されている(Weinberg et al., 1999, J.Immunol.,162, 1818; Tittle et al., 1997, Blood, 89,4652; Stuber et al., 1998, Gastroenterology, 115, 1205; Higgins et al., 1999, J.Immunol.,162, 486)。加えて、OX40/OX40Lシグナリングを消滅させる可溶性OX40融合蛋白質(OX40Lのアンタゴニスト)は、進行中のEAE(Weinberg et al., 1999, J.Immunol.,162, 1818;Ndhlovu et al., 2001, J.Immunol.,167, 2991)、半同種異系の宿主対移植片病(GVHD)(Stuber et al., 1998, Gastroenterology, 115, 1205)を抑制し、炎症性腸炎モデルマウスにおいて進行中の大腸炎(IBD)(Higgins et al., 1999, J.Immunol.,162, 486)を改善することが記されている。上記結果から、各種自己免疫疾患の免疫調節にOX40/OX40L相互作用が非常に重要な役割を果たしていることが考えられる。かかるトランスジェニックマウスの組織学的測定において予想外の発見だったのは、肺及び大腸において炎症性疾患の発生であった。Tgマウスの肺の間質性組織及び腸基底膜において、CD4+T細胞については著しい浸潤が観察されたが、CD8+T細胞については観察されなかった(図6B;参考写真1参照)。これらマウスの自己免疫疾患の発生原因因子について調査した。OX40L−TgマウスからRAG−2欠損マウスへのCD4+T細胞の再構築によって間質性肺炎及び炎症性腸炎が発生しており、これはCD4+T細胞が重要なエフェクター細胞であることを示している。OX40L−TgマウスからRAG−2欠損マウスへのCD4+T細胞移入に伴い、マウスOX40L対して特異的に阻害するモノクローナル抗体MGP34を投与し、以前肺に認められた組織学的変化を予防した(図7B)。OX40L−Tgマウスにおける間質性肺炎の症状は、ヒトのリンパ性間質性肺炎(LIP)の組織学的特徴と同様である。興味深いことに、肺の異常は、ヒトT細胞白血病ウィルスタイプ1(HTLV−1)関連ミエロパシー(HAM/TSP)やHTLV−1関連ぶどう膜炎の患者や、HTLV−1患者において認められた(Sugimoto et al., 1987, Lancet, 2,1220; Maruyama et al., 1989, Medical Immunil., 18,763; Setoguchi et al., 1991, Am. Rev.Res.Dis. 144, 1361; Sugimoto et al., 1997, 日本胸部臨床, 35,184; Sugisaki et al.,1998, Am. J. Trop. Med. Hyg, 58,721)。OX40Lの発現に関しては、当初HTLV−1感染ヒトT細胞株に関するものが記載され(Tanaka et al., 1985,Int.J.Cancer,36,549; Miura et al., 1991, Mol.Cell.Biol.11,1313)、最近、EBウイルス感染B細胞株に特異的な細胞傷害性Tリンパ球クローンに関するものが発見されている(Takasawa et al., 2001, Jpn.J.Cancer Res., 92,377)。OX40Lの発現は、OX40/OX40Lにおける役割をT細胞間の相互作用を介して示唆するものであり、これら患者に見られる肺疾患の発生に関与している。そのためこれらのマウスは間質性肺炎のモデルマウスとして有用である。【0032】炎症性腸炎(クローン病及び潰瘍性大腸炎)患者の大腸及び空腸におけるOX40/OX40Lの発現はすでに知られている。Higginsらは、OX40LをOX40−IgG融合蛋白質で阻害すると、ハプテン誘導性大腸炎の症状あるいは特発性大腸炎を患ったIL−2ノックアウトマウスの症状が改善することを示した。ハプテン誘導性大腸炎は、ヒト炎症性大腸炎のモデルとしてよく使用される。大腸炎の誘導についてのハプテンの直接的影響を否定することはできないが、このモデルではヒトの炎症性腸炎の病原を示すのは不可能である。【0033】IL−2-/-マウス、IL−2Rα-/-マウス、IL−10-/-マウス、TGFβ1-/-マウス、TCRα-/-マウス、Gαi2-/-マウス、ヒトCD3ε遺伝子に対してトランスジェニックであるT細胞再構築tgε26マウス、IL−7TgマウスC.B−17scidマウスなどその他のモデルマウスには、炎症性腸炎が発生する(Sadlack B. et al., 1993、Cell, 75, 253; Kuhn R. et al., 1993,Cell, 75,263; Mombaerts P et al., 1993, Cell, 75,275; Rudolph U et al., 1995, Nat. Genet. 10,143; Hollander GA et al.,1995Immunity, 3,27; Watanabe et al., 1998, J.Exp.Med.,187,389; Sundberg JP., 1994, Gastroenterology, 107,1726; Powrie F et al., 1993, Int. Immunol.,5,1461)。炎症性腸炎は免疫制御の不良による結果であり、かかる疾患は主にCD4+T細胞の活性化により仲介される。マウスの自然発症性大腸炎の発生にCD4+T細胞が重要な役割を果たすことが、本発明者らが今回得た結果によって確認されている。OX40L−Tgマウスにおける炎症性腸炎の自発的発生によって、OX40/OX40L相互作用が炎症性腸炎の病因に関与している可能性が明らかになり、胃腸管疾患の免疫療法における実現可能な目標がもたらされることとなった。【0034】Tgマウスに見られる自己免疫の基礎的機構と考えられるものは、アゴニストのOX40抗体がT細胞の寛容を破壊できると示した近年の研究によって説明がつくだろうが、サイトカインの役割は、未だに解明されていない。自然発症性肺炎や腸炎を患ったOX40L−Tgマウスは、血清中のTh−2サイトカイン、IL−5及びIL−13のレベルが上昇していた(図5C)。OX40L−Tgマウス由来のCD4+T細胞を再構築したRag−2欠損マウスにも、同様のサイトカインの上昇が認められた。OX40L−TgマウスはTh−2ドミナントであることがわかった。Th−1/Th−2サイトカインの間質性肺炎の発生への関与が示唆されている。IL−4トランスジェニックマウス及びIL−13トランスジェニックマウスは、肺の単核細胞、気道上皮の肥厚、粘液分泌過多及び杯状細胞の過形成を特徴とする炎症性の反応を引き起こす(Zhu et al.,1999, J. Clin. Inv. 103, 779)。気管支肺胞洗浄液中のIL−5は、肺炎患者において高いレベルを示した(Taniguchi et al., 2000, Eur. Respir.J., 16, 959)。IL−13及びIL−5マウスの高い産生は、OX40L−Tgマウスの間質性肺炎の発生に直接関与している場合がある。CD4TgTリンパ球をRag−2欠損マウスに移入することにより、リンパ球性間質性肺炎及び大腸の炎症性腸炎を誘導することが可能になり、これがCD4+T細胞依存物質に仲介された疾患であることを示している。【0035】近年、OX40はT細胞を活性化できる主要な共刺激分子として強調されている。OX40欠損マウスあるいはOX40L欠損マウスは、インビボでの強いCD4+T細胞反応をサポートできなかった(Chen et al., 1999, Immunity, 11,689; Pippig et al., 1999, J.Immunol., 163,652; Murata et al.,2000, J.Exp.Med., 191, 365)。また、OX40L欠損マウスに抗原を与えたところ、抗原提示細胞機能が欠失しているのが認められた(Murata et al., 2000, J.Exp.Med., 191, 365)。これらのデータから、インビボにおけるT−APC相互作用にOX40/OX40L相互作用が不可欠であることがわかった。本発明者らは、T細胞上にOX40Lの構成性発現を示すマウスを作製してOX40を恒常的に刺激し、最終的には器官特異的自己免疫疾患となる一連の事象に至る、T細胞の記憶発生におけるOX40Lのさらなる重要性を明らかにした。【0036】方法1(OX40L−Tgマウスの作製)T細胞系特異的ベクターp1017(lckプロモーターにヒト成長ホルモン遺伝子由来のポリAシグナルが組み込まれたベクター;Perlmuttaerから供与された)に、マウスOX40リガンドをコードするcDNAを導入した。かかる導入遺伝子をF1受精卵(C57BL/6×DBA/2)の前核にマイクロインジェクションし、得られた卵細胞を培養した後、仮親のマウスの輸卵管に移植することによって仔マウスを産生させた。得られた仔マウスの中から、上記導入遺伝子を有する初代マウスをPCRにより同定し、さらなる実験のため、かかる初代マウスをC57BL/6系統マウスと少なくとも12回戻し交配した。なお、マウス受精卵の注入に先立ち、マウスの培養細胞に上記遺伝子を導入することにより能力を確認した。エレクトロポレーション法を用いてかかる導入遺伝子をT細胞系に導入したところ、高いレベルの表面OX40リガンド蛋白質が検出された。【0037】方法2(FACS分析)Fcレセプターに結合するものを含む細胞群の中から、標識モノクローナル抗体に非特異的に会合する細胞を取り除くために正常ラット血清を用いてプレインキュベーションした後、標識モノクローナル抗体を用いて4℃で30分間インキュベーションした。インキュベーション後、試料を洗浄してFACSCaliburフローサイトメーター(Becton Dickinson社製)で分析した。分析には、CELLquest(Becton Dickinson社製)分析ソフトウェアを使用した。CD3、CD8、CD4、CD5、CD25、CD69、B220、IgM、CD44、CD45RB、IL−2、IL−4、及びIFNγは、Pharmingen社から購入した。上記により確立された細胞におけるマウスOX40Lに特異的なMGP34(IgG2c)、及びマウスOX40に特異的なMOX40(IgG1)を、NHS−LC−ビオチン(Pierce Chemical Co.社製)と結合させた。ビオチン化モノクローナル抗体で標識した細胞をストレプトアビジン−APC(Pharmingen社製)で視覚化し、フローサイトメトリー分析にかけた。OX40L又はOX40のネガティブコントロールに対しては、標識されていないMGP34及びMOX40をそれぞれ用いて上記細胞をプレインキュベーションし、ビオチン化抗体により特異的に染色したものを無効にした。【0038】細胞内サイトカイン染色のため、脾臓あるいはリンパ節細胞の単細胞懸濁液を50ng/mlのPMA(Sigma社製)及び1μMのイオノマイシン(Sigma社製)で2時間刺激した後、Gorgi Stop(Pharmingen社製)を添加してさらに2時間培養した。刺激後、細胞をAPC標識CD4又はCD8で染色し、続いてかかる細胞を固定し、Cytofix/Cytoperm kit(Pharmingen社製)で浸透処理した後、製造者のプロトコールに従ってPE標識抗IL−2抗体、抗IL−4抗体あるいは抗IFN−γ抗体を用いて、製造者が推奨する方法で染色した。【0039】方法3(細胞の精製及び培養)磁気ビーズで濃縮した、又はAuto MACS(Miltenyi Biotec社製)で分別した脾臓細胞若しくはリンパ節細胞から、CD4+T細胞あるいはCD8+T細胞を濃縮した。6週齢の野生型マウス又はOX40L−Tgマウスから得られたT細胞(1x105)を培地のみで、又はT細胞を増殖させるために、ConA(10μg/ml)、イオノマイシン(1μg/ml)を添加したPMA(10ng/ml)、又は固定化抗CD3モノクローナル抗体(10μg/ml)を添加した培地にてそれぞれ48時間培養し、各3Hチミジンの摂取量を分析した。【0040】方法4(インビボにおける蛋白質抗原刺激によるT細胞のプライミング反応及びリコール反応)OX40Lトランスジェニックマウス又は同腹子の野生型マウスに対して、100μgのKLHを完全フロイントアジュバントとともに、それぞれの後肢の肉趾に注射して免疫した。9日後、リンパ節細胞を図に記載の濃度のKLHとともに37℃で3日間インキュベーションした。一方、リンパ節から精製したCD4+T細胞を、KLHを用いてAPCの存在下で同様に刺激した。かかるAPCは、野生型同腹子の脾臓から単離し、放射線(3,000rad)で処理したものを用いた。上記培養した細胞を、文献(Takeshita et al., 1989. J.Exp.Med., 169, 1323; Nagata et al., 1999, J.Immunol.,162,1278)記載の方法と同様に、インビトロでKLHに対する反応における3Hチミジンの取り込みやサイトカイン産生について分析した。サイトカイン産生においては、2度目のKLHの添加から、IL−2又はIL−4に関しては48時間後に、IL−5、IL−10又はIFNγに関しては96時間後に培養液の上澄を回収した。かかる上澄をELISAにそれぞれかけ、サイトカイン産生を測定した。【0041】方法5(ELISA)組織培養の上澄液又はマウス血清中のサイトカインレベルを、製造者のプロトコールに基づき、IL−2、IL−4、IL−5、IL−10、IL−13、又はIFNγ(Pharmingen社製)に対する抗体を用いて、ELISAにより分析した。【0042】方法6(免疫グロブリンの分泌)マウス血清中の各種免疫グロブリンサブクラスのレベルを分析した。10μg/mlのヤギ抗マウス免疫グロブリン抗体を含んだ炭酸緩衝液で、ELISAマイクロプレートの各ウェルを4℃で1晩インキュベーションすることによりコートした。プレートを洗浄した後、1%のBSAを含むPBSでヤギ抗マウス免疫グロブリン抗体を37℃で1時間ブロックした。1%のBSAを含むPBSで希釈した、OX40L−Tgマウス由来又は野生型マウス由来の血清をウェルに添加し、室温で2時間インキュベーションした。その後プレートを洗浄した後、インキュベーションにより検出された抗体を、アルカリフォスファターゼ(AP)(Southern Biotechnology Associates社製)が結合したヤギ抗マウスIgM抗体、IgG1抗体、IgG2a抗体、IgG2b抗体、IgG3抗体、又はIgA抗体と結合させ、1時間インキュベーションした。インキュベーション後、AP基質(Sigma Chemical社製)を含むジエタノールアミン緩衝液を用いて染色し、3MのNaOHにより反応を停止させて、かかる溶液をOD405nmで評価した。【0043】方法7(組織学的及び免疫組織化学的分析)動物から得られた組織を10%の緩衝ホルマリン(Sigma社製)で固定し、パラフィン包埋し、常法により、5マイクロメーター切片をヘマトキシリン及びエオシンで染色した。かかる組織サンプルを、OCTコンパウンドで包埋して凍結し、又は液体窒素により凍結し、−80℃で保管した。その後、製造者のプロトコールに従って、抗マウスCD4抗体(H129.19、Becton Dickinson社製)及び抗マウスCD8抗体(53-6.7、Becton Dickinson社製)ならびにFITC 標識抗ラットIgG抗体(生化学工業社製)を用いて免疫組織化学染色を行った。【0044】【発明の効果】本発明のトランスジェニック非ヒト哺乳動物は、OX40リガンドをT細胞で恒常的に発現し、自己免疫疾患を発症するので、自己免疫疾患モデルとして有用である。該トランスジェニック非ヒト哺乳動物は、自己免疫疾患治療薬のスクリーニングに有効に利用することができる。【図面の簡単な説明】【図1】本発明のOX40LトランスジェニックマウスにおけるOX40Lの構築物とその発現を示す図である。A.マウスOX40Lの発現ベクターの構築物は、T細胞特異的lckプロモーターによって制御されるマウスOX40LのcDNAとして構成されている。B.作製した3匹の独立した初代マウス又は野生型マウスの胸腺又は脾臓におけるOX40Lの発現をフローサイトメトリック分析により調べた結果を示す図である。小さい点線は野生型マウス由来のものを、太線はOX40L−Tg1マウス由来のものを、細線はOX40L−Tg2マウス由来のものを、大きい点線はOX40L−Tg3マウス由来のものをそれぞれ示す。【図2】本発明のOX40Lトランスジェニックマウスの表現型を示す図である。A.野生型マウス(□)及びOX40LTgマウス(■)の脾臓における全細胞数、CD4+T細胞数及びCD8+T細胞数をそれぞれ示す。B.脾臓のCD4+T細胞におけるCD25又はCD69の発現を示す。【図3】本発明のOX40Lトランスジェニックマウスにおける記憶T細胞群及び細胞質サイトカインを示す図である。A及びB.記憶T細胞には、CD44の発現増大並びにCD62L及びCD45RBの発現減少という特徴があった。C.ナイーブ(CD62LhighCD44low)CD4+T細胞及び記憶(CD62LlowCD44high)CD4+T細胞をPMA及びイオノマイシンで刺激し、その後、染色により、細胞質IL−2、IFNγ及びIL−4を検出した。【図4】本発明のOX40Lトランスジェニックマウスにおける増殖T細胞の活性化を示す図である。A.抗CD3抗体、コンカナバリンA(ConA)、及びイオノマイシンを添加したホルボールミリステートアセテート(PMA)に対する野生型マウス由来の脾臓T細胞(□)及びOX40Lトランスジェニックマウス(■)の増殖反応を調べた結果を示す。B.抗CD3抗体を用いて刺激したT細胞のサイトカイン産生量を調べた結果を示す。C.野生型マウス(□)又はOX40Lトランスジェニックマウス(■)の脾臓T細胞を抗原(KLH)特異的リコール増殖結果を示す。D.KLHでT細胞を刺激した際のサイトカイン産生能を示す。E.SEA及び/又はLPSを注入したマウスを用いて、インビボにおいてT細胞が生存できるか否かを調べた結果を示す。SEAを野生型(○)及びOX40Lトランスジェニックマウス(●)に注入し、LPSとSEAを野生型マウス(□)及びOX40LTランスジェニックマウス(■)に注入した。【図5】本発明のOX40LトランスジェニックマウスにおけるポリクローナルなB細胞活性化を示す図である。A.図中の「○」は野生型マウスにおける血清イムノグロブリンアイソタイプの濃度を、「●」はOX40Lトランスジェニックマウスにおける血清免疫イムノグロブリンアイソタイプの濃度をそれぞれ示す。B.図中の「○」は野生型マウスにおけるssDNA又はdsDNAに対する血清抗DNA抗体のレベルを、「●」はOX40LトランスジェニックマウスにおけるssDNA又はdsDNAに対する血清抗DNA抗体のレベルをそれぞれ示す。C.図中の「○」は野生型マウスにおける血清IL−5又はIL−13のレベルを、「●」はOX40Lトランスジェニックマウスにおける血清IL−5又はIL−13のレベルを示す図である。【図6】本発明のOX40Lトランスジェニックマウス及び野生型マウスの肺、大腸、及びリンパ節をヘマトキシリン及びエオシンで染色した結果(A)、及び本発明のOX40Lトランスジェニックマウスの肺及び大腸におけるCD4+細胞又はCD8+細胞を蛍光顕微鏡により視覚化した結果(B)を示す図である。A.図上は肺の切片を200倍に、図中は大腸の切片を100倍に、図下はリンパ腺の切片を1000倍にそれぞれ拡大したものである。B.図上は肺を400倍に、図下は大腸を200倍にそれぞれ拡大したものである。【図7】本発明のOX40Lトランスジェニックマウス由来のCD4+T細胞又はCD8+T細胞を移入したrag−2欠損マウスにおける肺切片及び大腸切片をヘマトキシリン及びエオシンで染色した結果(A)、及び本発明のOX40Lトランスジェニックマウスをラット免疫グロブリン又はMGP34モノクローナル抗体で処理した後、かかるマウス由来のCD4+T細胞を移入したrag−2欠損マウスにおける肺切片及び大腸切片をヘマトキシリン及びエオシンで染色した結果(B)を示す図である。A.図中の肺切片は200倍に、大腸切片は100倍にそれぞれ拡大したものである。B.図中の肺切片は200倍に、大腸切片は100倍にそれぞれ拡大したものである。 OX40L遺伝子をT細胞特異的lckプロモーターの下流に組み込んだOX40L発現ベクターを、マウスの受精卵に導入し、該マウスをC57BL/6系マウスに戻し交配した、OX40LをT細胞で恒常的に発現している、間質性肺炎及び炎症性腸炎を自然発症するトランスジェニックマウスの間質性肺炎又は炎症性腸炎のモデル動物としての使用方法。 OX40L遺伝子が、配列番号1に示されるDNA配列からなることを特徴とする請求項1記載の使用方法。 炎症性腸炎が、腸基底膜における中程度から重度のリンパ系組織の過形成、基底膜における粘膜上皮の過形成、リンパ球の浸潤又は粘膜下リンパ濾胞の増生を発症していることを特徴とする請求項1又は2記載の使用方法。 戻し交配を、少なくても12世代行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の使用方法。配列表