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タイトル:特許公報(B2)_易重合性物質の蒸留方法およびこれに使用する蒸留装置。
出願番号:2001304588
年次:2011
IPC分類:B01D 3/32,B01D 3/14,C07C 51/44,C07C 57/07


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河崎 恭輔 馬場 勝男 鈴木 良節 JP 4741767 特許公報(B2) 20110513 2001304588 20010928 易重合性物質の蒸留方法およびこれに使用する蒸留装置。 住友化学株式会社 000002093 深井 敏和 100104318 河崎 恭輔 馬場 勝男 鈴木 良節 20110810 B01D 3/32 20060101AFI20110721BHJP B01D 3/14 20060101ALI20110721BHJP C07C 51/44 20060101ALI20110721BHJP C07C 57/07 20060101ALI20110721BHJP JPB01D3/32 AB01D3/14 AC07C51/44C07C57/07 B01D 3/00 C07C C07B 特開昭60−175536(JP,A) 実開昭55−107202(JP,U) 実開昭51−120343(JP,U) 特開昭50−115675(JP,A) 実開昭61−075836(JP,U) 4 2003103104 20030408 7 20080811 山本 吾一 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、分子中に二重結合を有するアクリル酸等のビニル化合物で代表される易重合性物質の蒸留方法およびこれに使用する蒸留装置に関する。【従来の技術】【0002】ビニル化合物の一種であるアクリル酸は、一般にプロピレンまたはアクロレインの接触気相酸化反応により製造される。この接触気相酸化反応では、得られた反応生成ガスを冷却し水で捕集して、アクリル酸(易重合性物質)の他、酢酸やアルデヒド等の副生成物を含む蒸留原料(易重合性物質含有液)を得、この原料からアクリル酸を蒸留により分離、濃縮、精製する。【0003】アクリル酸の蒸留には、通常、内部に充填層が設けられた蒸留塔、排出された蒸気を凝縮し還流液(易重合性物質含有液)とするためのコンデンサー等を備えた蒸留装置が用いられる。前記蒸留塔の塔頂部からは還流液が供給され、原料供給口からは前記原料が供給され、ともに充填層内を流下する。この充填層の上部には、還流液および原料を均一に充填層に供給するための液分配器が設けられている。この液分配器としては、通常、オリフィス型液分配器やパイプオリフィス型液分配器等が使用されている。これらの液分配器は、還流液や原料を分散させるための多数の小さな孔が設けられているものである。一方、蒸留塔下部の蒸気入口からは蒸気が供給され、蒸留塔内を上昇し、前記還流液および原料と、前記蒸気とが充填層内で向流接触することによりアクリル酸の蒸留が行われる。【0004】ところが、易重合性物質であるアクリル酸は、光や熱等によって重合しやすい性質を有するため、蒸留工程のような高温雰囲気下での処理ではきわめて重合しやすくなる。蒸留塔内でアクリル酸が重合しやすい個所は、通常、アクリル酸が凝縮しやすい部位である。このように重合物が蓄積しやすい部位としては、蒸留塔の塔頂部に還流液を供給するための還流パイプや充填物抜き出し等のために設けられたマンホール等が挙げられる。【0005】これらの部位で蓄積した重合物の一部は、蒸留塔内を流下する前記還流液や原料に混入することがある。このような重合物を含む易重合性物質含有液(還流液および原料)が前記液分配器に供給されると、液分配器に形成された孔の一部が塞がれてしまうため、充填層へ易重合性物質含有液を均一に流下させることができなくなる。これにより、充填層内では、易重合性物質含有液が流下して来ない部分、すなわち液濡れ性のわるい部分が生じるため、ここで重合物が生成する。【0006】一旦充填層内で重合物が生成すると、それらが核となって次第に成長蓄積して、塔内の圧力、すなわち充填層の差圧を上昇させ、遂には塔内が閉塞されてしまうことになる。これが蒸留装置の連続運転を妨げる大きな要因になっている。また、生成した重合物を除去するのは非常に困難であり、除去費用は多大となっている。【0007】【発明が解決しようとする課題】本発明の主たる目的は、アクリル酸等のビニル化合物に代表される易重合性物質の蒸留を行うに際して、充填層内において重合物の生成を低減し、蒸留装置の連続運転を可能にする蒸留方法を提供することである。本発明の他の目的は、充填層内において重合物の生成を低減し、蒸留装置の連続運転を可能にする蒸留装置を提供することである。【0008】【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、重合物は易重合性物質含有液中において容易に沈降するという点に着目し、アクリル酸等の易重合性物質を蒸留する際には、液溜まり部を有した液分配器を用いて、この液分配器に易重合性物質含有液を供給し、易重合性物質含有液をオーバーフローさせることによって、たとえ易重合性物質含有液中に重合物が含まれていても、易重合性物質含有液を充填層に均一に流下させることができ、しかも前記液分配器において重合物が沈降するので、重合物が充填層に流下するのを防止することができるという新たな事実を見出し、本発明を完成させるに至った。【0009】すなわち、本発明の易重合性物質の蒸留方法は、充填層と、易重合性物質含有液を前記充填層に均一に流下させるための液分配器とを備えた蒸留塔内において、前記液分配器の液溜まり部から前記易重合性物質含有液をオーバーフローさせることを特徴とする。また、本発明で使用する液分配器の好ましい形態としては、ウェアー型液分配器が挙げられる。なお、本発明において、易重合性物質含有液とは、アクリル酸等の易重合性物質を含んだ還流液や原料のことをいう。【0010】本発明の蒸留装置は、充填層と、易重合性物質含有液を前記充填層に均一に流下させるための液分配器とを備えた蒸留装置であって、前記液分配器が前記易重合性物質含有液を溜めるための液溜まり部が形成された複数の樋からなり、この樋に前記易重合性物質含有液をオーバーフローさせるための複数のノッチが形成されていることを特徴とし、前記蒸留方法において好適に使用することができる。【0011】【発明の実施の形態】本発明の一実施形態を図1に示す。図1は、本発明において、易重合性物質を蒸留するための蒸留装置を示す概略図である。【0012】この蒸留装置は、内部にラシヒリング等を充填した充填層30、31、32を備える蒸留塔、排出された蒸気を凝縮するためのコンデンサー40等からなる。前記蒸留塔において、原料は原料供給口33、33から塔内に供給される。一方、下部の蒸気入口34からは蒸気が導入され、原料と向流接触しながら上昇し、上部の塔頂部35から排出される。【0013】排出された蒸気は配管39を通じてコンデンサー40に送られ、冷却水により冷却されて凝縮液となる。この凝縮液の一部はポンプ41により配管42を通じて還流液入口36から還流液として塔内へ供給され、前記した原料と同様に、蒸留塔内を流下して蒸気と向流接触する。凝縮液の残りは配管43を通じて留出液として回収される。還流液と留出液との比率は調整弁44、45により調整される。なお、37は缶出液を排出する缶出液出口で、38はマンホールである。【0014】充填層30、31、32の上部には、還流液や原料を前記充填層30、31、32に均一に流下させるためのウェアー型液分配器1が設置されている。このウェアー型液分配器1は、易重合性物質の蒸留において好適に使用することができる。図2は、ウェアー型液分配器1を示す斜視図である。図2に示すように、ウェアー型液分配器1は、複数の樋2と、これらの樋2に易重合性物質含有液を均一に分配するために樋2の上部に設けられた樋3とを備えている。樋2および樋3は、易重合性物質含有液を溜めるための液溜まり部2b、3bをそれぞれ有している。樋2および樋3の上部には、易重合性物質含有液をオーバーフローさせるための複数のV字型ノッチ2a、3aがそれぞれ設けられている。【0015】図3は、前記蒸留装置における塔頂部35周辺の蒸留塔内部を示す概略図である。図3に示すように前記ウェアー型液分配器1は、充填層30の上部に設置されている。配管42を通じて還流液入口36から塔内へ導入された還流液は、還流パイプ46の下面に設けられた開口部46aからウェアー型液分配器1の樋3に供給される。供給された還流液は、ノッチ3aからオーバーフローして、その下部に設置されている複数の樋2へ供給される。樋2へ供給された還流液は、ノッチ2aからオーバーフローして、矢印48で示すように、充填物押さえ50を経て充填層30に均一に流下する。【0016】前記したように、アクリル酸等の易重合性物質は、重合物を生成しやすい性質を有しているため、還流パイプ46やマンホール38等で生成した重合物が還流液中に混入することがある。このような重合物を含んだ還流液がウェアー型液分配器1の樋3に供給されると、樋3において重合物は容易に沈降するため、ノッチ3aから還流液をオーバーフローさせることで、重合物と還流液とを分離することができる。また、樋3において還流液から重合物を完全に除去できなかった場合でも、樋3の下部に設置されている樋2において、樋3と同様に重合物の沈降を利用して、重合物と還流液とを分離することができるので、還流液を充填層30に均一に流下させることができ、しかも重合物が充填層30に流下するのを防止することができる。これにより、充填層30において、液濡れ性のわるい部分が生じないので、重合物の生成を防止することができる。なお、ウェアー型液分配器1の樋2、3に沈降した重合物は、その沈降量に応じて、定期的に除去すればよい。【0017】前記ウェアー型液分配器1の樋2、3に設けるノッチ2a、3aの長さ、幅、個数等は、充填層30へ還流液がほぼ均一に流下するように設定するのが好ましく、還流量、樋2、3の容積等を考慮して決定すればよい。【0018】また、前記ウェアー型液分配器1の蒸留塔内における設置場所は特に限定されず、必要に応じて設置場所、個数を決定すればよい。すなわち、上記のように塔頂部35に設置する以外に、充填層31、32の上部(原料供給口33、33の下部)のみに設置したり、塔頂部35および充填層31、32の上部すべてに設置することもできる。これにより、重合物が生じやすい箇所において、重合物の生成を防止することができる。【0019】また、蒸留操作においては、重合防止剤を還流液に添加してもよい。重合防止剤としては、例えばジブチルジチオカルバミン酸金属塩(銅、マンガン等)、フェノチアジン、メトキノン、ハイドロキノン等の1種または2種以上が挙げられる。重合防止剤の添加量は、還流液100重量部に対して約0.005〜0.1重量部であるのがよい。【0020】前記易重合性物質としては、アクリル酸の他、メタクリル酸等の共役酸またはそのエステル、アミド、ニトリル等の誘導体(アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリルアミド、アクリロニトリル等)、共役アルデヒドおよびケトン(アクロレイン、メタクロレイン、メチルビニルケトン等)、ハロゲン化ビニル(塩化ビニル等)、ビニル基置換芳香族化合物(スチレン等)、カルボン酸ビニル(酢酸ビニル等)、ビニルエーテル(メチルビニルエーテル等)、1,3―ジオレフィン(ブタジエン、イソプレン等)、エチレンおよびアルキル置換エチレン(プロピレン等)が挙げられる。【0021】なお、本発明で使用する液分配器としては、上記の一実施形態で示したウェアー型液分配器1に限定されることはなく、前記液分配器が前記易重合性物質含有液を溜めるための液溜まり部が形成された複数の樋からなり、この樋に前記易重合性物質含有液をオーバーフローさせるための複数のノッチが形成されているものであれば使用することができる。【0022】【実施例】以下、実施例および比較例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。【0023】実施例アクリル酸を蒸留により精製するために、理論段数6段の蒸留装置を用いて長期連続運転を行った。この蒸留装置における充填層の上部には、図2に示すウェアー型液分配器1を設置した。原料供給口からの原料供給量は6t/時とし、還流量は4.4t/時とした。また、重合防止剤として少量のフェノチアジンおよびメトキノンを還流液に添加した。運転時の缶温(蒸留塔下部の液温)は83℃、塔頂圧力は50Torrであった。連続運転の間、定期的に各充填層の差圧上昇傾向と、充填層内の充填物への重合物付着状況とを調べた。【0024】比較例理論段数13段の蒸留装置を用い、液分配器として、オリフィス型液分配器(還流液および原料を分散させるための多数の小さな孔が設けられた液分配器)を使用し、原料供給量を7.1t/時とし、還流量を3.9t/時とした他は、実施例と同様にして長期連続運転を行った。運転時の缶温は78℃、塔頂圧力は40Torrであった。連続運転の間、定期的に充填層の差圧上昇傾向と、充填層内の充填物への重合物付着状況とを調べた。【0025】実施例および比較例の長期連続運転結果を表1に示す。【表1】【0026】【発明の効果】本発明によれば、液溜まり部を有した液分配器を用いて、この液分配器に易重合性物質含有液を供給し、易重合性物質含有液をオーバーフローさせることによって、たとえ易重合性物質含有液中に重合物が含まれていても、易重合性物質含有液を充填層に均一に流下させることができ、しかも前記液分配器において重合物が沈降するので、重合物が充填層に流下するのを防止することができる。これにより、充填層において重合物の生成を防止することができ、蒸留装置の長期連続運転が可能になるという効果がある。【図面の簡単な説明】【図1】本発明の一実施形態である蒸留装置を示す概略図である。【図2】本発明の一実施形態で使用するウェアー型液分配器を示す斜視図である。【図3】本発明の一実施形態である蒸留装置における塔頂部周辺の蒸留塔内部を示す概略図である。【符号の説明】1 ウェアー型液分配器2 樋2a ノッチ2b 液溜まり部3 樋3a ノッチ3b 液溜まり部 充填層と、易重合性物質含有液を前記充填層に均一に流下させるための液分配器とを備えた蒸留塔内において、前記液分配器の液溜まり部から前記易重合性物質含有液をオーバーフローさせることを特徴とする易重合性物質の蒸留方法。 前記液分配器がウェアー型液分配器である請求項1記載の易重合性物質の蒸留方法。 前記易重合性物質がビニル化合物である請求項1または2記載の易重合性物質の蒸留方法。 充填層と、易重合性物質含有液を前記充填層に均一に流下させるための液分配器とを備えた蒸留装置であって、前記液分配器が前記易重合性物質含有液を溜めるための液溜まり部が形成された複数の樋からなり、この樋に前記易重合性物質含有液をオーバーフローさせるための複数のノッチが形成されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の蒸留方法に使用する蒸留装置。


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