生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_錠剤フィルムコーティング用組成物
出願番号:2001300712
年次:2012
IPC分類:A61K 9/36,A61K 31/192,A61K 47/26,A61K 47/38,A61P 29/00


特許情報キャッシュ

井本 聡一郎 且元 仁 前田 孝行 JP 4969747 特許公報(B2) 20120413 2001300712 20010928 錠剤フィルムコーティング用組成物 武田薬品工業株式会社 000002934 青山 葆 100062144 田中 光雄 100081422 井本 聡一郎 且元 仁 前田 孝行 JP 2001011776 20010119 20120704 A61K 9/36 20060101AFI20120614BHJP A61K 31/192 20060101ALI20120614BHJP A61K 47/26 20060101ALI20120614BHJP A61K 47/38 20060101ALI20120614BHJP A61P 29/00 20060101ALI20120614BHJP JPA61K9/36A61K31/192A61K47/26A61K47/38A61P29/00 A61K 9/00- 9/72 A61K47/00-47/48 国際公開第00/045794(WO,A1) 特開平01−135716(JP,A) 特開平02−067214(JP,A) 特公昭40−026918(JP,B1) 特開平06−070688(JP,A) 特開平09−291027(JP,A) 特開平10−259131(JP,A) 特開2001−039862(JP,A) 特開2002−504124(JP,A) 特表2003−527335(JP,A) 12 2002284674 20021003 8 20080716 辰己 雅夫 【0001】【産業上の利用分野】本発明は錠剤フィルムコーティング用組成物に関する。【0002】【従来の技術】フィルムコーティングは味、臭いのマスキング、光安定性の向上、ウィスカー防止等の目的で医薬品錠剤等で汎用されている技術である。かかる錠剤のフィルムコーティングにおいて頻繁に発生する問題としてフィルム膜の剥離がある。フィルム膜の剥離により錠剤面の被膜形成が不十分となると、味や臭いのマスキング効果および光に対する隠蔽の効果や錠剤の外観品質などが低下して、錠剤の品質に影響を及ぼす場合がある。このようなフィルム膜の剥離は以下のような場合に特に発生し易い。例えば、素錠に刻印が施されている場合、フィルムコーティング時のスプレー液の刻印部への集中が原因となり刻印近辺のフィルム膜が剥離する現象が観察される。また、素錠に低融点物質を含む錠剤ではフィルムコーティング中の給気の熱風のために錠剤が軟化し、その結果フィルムコーティングしたフィルム膜の剥離が発生し易い。同様に、スプレー液の溶媒に易溶性の成分を含んだ素錠では、スプレー液により錠剤が軟化しフィルム剥離が発生し易い。また、錠剤の形状によってもフィルム膜が剥離しやすくなる。例えば、オブロング等の異型錠の場合、エッジ部の剥離が激しい。特に、これらの剥離現象は機械的破壊力の大きい大量スケールでのフィルムコーティング時にその傾向が顕著となる。医薬品等のフィルムコーティングに関し、特公平3−4577号公報には、セルロース系フィルム形成剤、α−セルロースおよび可塑剤からなるフィルム形成性組成物が記載されている。しかし、医薬活性成分はポリエチレングリコールなどの可塑剤により分解するものが多く、このような医薬活性成分を含んでいる素錠のコーティングには適用できない。また、特開昭49−133515号公報には、このような配合禁忌によってコーティング用組成物に可塑剤を配合できない場合において、フィルムに柔軟性を持たせ、強度を改善するため、コーティング剤に糖類を配合する技術が記載されている。しかし、このような方法を用いても得られるフィルム膜の強度は不十分であり、フィルム剥離の発生を十分に抑制することはできない。なお、従来はフィルムコーティング用の溶媒としてエタノール等の有機溶媒が用いられていたが、環境への影響に対する配慮や危険性の問題から近年では溶媒に水を用いた水系フィルムコーティングが主流である。【0003】【発明が解決しようとする課題】上記の問題に鑑み、本発明の目的は、可塑剤を含有させなくても十分なフィルム膜強度が得られ、フィルム膜の剥離が発生し易い場合においても剥離の発生を十分に抑制でき、かつ水系で使用できるフィルムコーティング用組成物、それによる錠剤のコーティング方法およびそれによりコーティングした錠剤を提供することにある。【0004】【課題を解決するための手段】本発明者らは上記目的を達成するために鋭意検討した結果、意外にも、コーティング剤、糖類、および直接打錠法における賦形剤として汎用されている結晶セルロースを配合した組成物を用いると、上記のようなフィルム剥離が発生し易い場合においてもフィルム膜の剥離を高度に抑制できることを見出し本発明を完成した。すなわち本発明は、コーティング剤、糖類および結晶セルロースを含有する錠剤フィルムコーティング用組成物、コーティング用溶媒として水を使用し、該組成物でコーティングすることを特徴とする錠剤のフィルムコーティング方法、ならびに該方法でコーティングした錠剤を提供するものである。【0005】【発明の実施の形態】上記コーティング剤としては、セルロース系フィルム形成剤が好適に用いられる。該セルロース系フィルム形成剤は、セルロースの水酸基に疎水性基(例、メチル基、ヒドロキシプロピル基等)や親水基を所定の割合で導入したセルロース誘導体である。水系フィルムコーティングを行う観点から、水に溶解または分散可能なセルロース系フィルム形成剤が好ましい。好適なセルロース系フィルム形成剤の具体例としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2910、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2208、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2906、ヒドロキシプロピルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースなどが挙げられる。なかでも、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2910が特に好適に用いられる。これらは単独で用いても2種以上を併用してもよい。本発明で用いられるコーティング剤の配合量は、フィルムコーティング用組成物全量に対して通常30〜80重量%、好ましくは40〜65重量%である。【0006】本発明で用いられる糖類としては乳糖、白糖、蔗糖、葡萄糖、麦芽糖、果糖、ラクチュロース、ラクチトール、マンニトール、マルチトール、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、粉末還元麦芽糖水飴などが挙げられる。これらは単独で用いても2種以上を併用してもよい。好適には乳糖が用いられる。本発明で用いられる糖類の配合量はフィルムコーティング用組成物全量に対して通常15〜50重量%、好ましくは25〜40重量%である。【0007】本発明で用いられる結晶セルロースの粒径は特に限定されないが、好ましくは100μm以下、さらに好ましくは50μm以下である。本発明で用いられる結晶セルロースの配合量はフィルムコーティング用組成物全量に対して通常1〜30重量%、好ましくは3〜15%重量である。【0008】本発明のフィルムコーティング用組成物には、上記成分の他に着色剤や流動性を改善する滑沢剤等を配合してもよい。着色剤としては酸化チタン、三二酸化鉄および黄色三二酸化鉄などが挙げられる。滑沢剤としては、タルクなどが挙げられる。【0009】本発明のフィルムコーティング用組成物を溶媒に溶解または懸濁させてコーティング液を調製し、錠剤のフィルムコーティングに慣用の方法を用いて従来のフィルムコーティング用組成物と同様にして素錠をコーティングすることができる。該溶媒としては例えば水を用いることができる。【0010】かくして、従来の組成物を用いた場合であれば錠剤のコーティング膜の剥離が起こり易かったような場合においても、本発明の組成物を用いればコーティング膜が剥離し難い錠剤を製造することができる。コーティング膜の剥離が起こり易い場合としては上記したような場合が挙げられるが、なかでも、本発明のフィルムコーティング用組成物は、イブプロフェンのような低融点の物質(具体的には例えば融点80℃以下の物質)を含有している素錠のコーティングに好適に用いられる。【0011】上記フィルムコーティング後、自体公知の方法により慣用の光沢化剤で艶出しを行なってもよい。光沢化剤としてはカルナウバロウ、ハクロウ、ミツロウ、セラックおよびヒマシ油などが挙げられる。【0012】【実施例】以下に、実施例、比較例および試験例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。【0013】実施例1表1に示す成分(1)〜(16)の配合処方を用いて素錠を得た。まず成分(7)を精製水60.7kgに溶解して結合液を調製した。次に成分(1)〜(6)を流動層造粒乾燥機(NFLO−120、フロイント産業)で前記結合液を噴霧することにより造粒した。その後整粒機(パワーミル、昭和化学機械)にて整粒し整粒末を得た。成分(15)を精製水46.8kgに溶解して結合液を調製し、上記と同様に成分(8)〜(14)を流動層造粒、整粒することにより整粒末を得た。得られた両整粒末と成分(16)をタンブラー混合機(重伸鉄工所)で混合し、得られた混合末をロータリー式打錠機(コレクトD55HUK、菊水製作所)で13.5×6.2mm、曲率半径3.8mm、3.1mm、上杵および下杵に刻印の入ったオブロングの杵にて、1錠あたりの重量400mg、厚さ5.4mmとなるように製錠し、素錠を得た。【0014】【0015】上記の素錠264kgに、表2に示すコーティング成分(17)〜(20)を精製水48.6kgに溶解、懸濁したフィルムコーティング液を用い、コーティング機(ハイコーターHCP−170、フロイント産業)にて素錠1錠400mgに対して10mgコーティングを行ないフィルムコーティング錠を得た。なお、コーティング液の粘度が低いため、水の量を減らすことができ、コーティング時間を短縮することができた。【0016】【0017】実施例2表3に示す成分(1)〜(16)の配合処方を用いて素錠を得た。まず成分(7)を精製水59.5kgに溶解して結合液を調製した。次に成分(1)〜(6)を流動層造粒乾燥機(NFLO−120、フロイント産業)で前記結合液を噴霧することにより造粒した。その後整粒機(パワーミル、昭和化学機械)にて整粒し整粒末を得た。成分(15)を精製水46.8kgに溶解して結合液を調製し、上記と同様に成分(8)〜(14)を流動層造粒、整粒することにより整粒末を得た。得られた両整粒末と成分(16)をタンブラー混合機(重伸鉄工所)で混合し、得られた混合末をロータリー式打錠機(コレクトD55HUK、菊水製作所)で13.5×6.2mm、曲率半径3.8mm、3.1mm、上杵および下杵に刻印の入ったオブロングの杵にて、1錠あたりの重量405mg、厚さ5.4mmとなるように製錠し、素錠を得た。【0018】【0019】上記の素錠267.3kgに、表4に示すコーティング成分(17)〜(20)を精製水45.1kgに溶解、懸濁したフィルムコーティング液を用い、コーティング機(ハイコーターHCP−170、フロイント産業)にて素錠1錠405mgに対して13mgコーティングを行ないフィルムコーティング錠を得た。【0020】【0021】比較例1表5に示すように、結晶セルロースに代えて同量の乳糖を加えた以外は実施例1と同様のコーティング成分でフィルムコーティングを行なった。【0022】【0023】試験例1実施例1、実施例2および比較例1で製造した錠剤からのそれぞれ10万錠の抜取調査によりフィルム剥離の発生数を調査した。その結果を表6に示した。これから明らかなように、本発明のフィルムコーティング用組成物を用いた場合はフィルム剥離が観察されず、比較例と比べてフィルム剥離の発生が有意に少なかった。【0024】表6(フィルム剥離の発生数)実施例1 0錠/10万錠実施例2 0錠/10万錠比較例1 53錠/10万錠【0025】【発明の効果】以上から明らかなように、本発明のフィルムコーティング用組成物により、フィルム剥離の発生しやすい素錠、たとえば刻印錠、異型錠、軟化しやすい素錠、フィルムコーティング組成物に可塑剤を配合できない素錠のフィルムコーティングにおいても、フィルム膜の剥離の防止が可能となり、外観品質と安定性が改善された。本発明の組成物はフィルム膜の剥離を防止するだけでなく、コーティング液の粘度が低いので水系コーティングにおける水の量を減らし、コーティング時間を短縮でき、水分で分解しやすい薬物を含んだ素錠でも薬物の分解を防止することが可能となった。 コーティング剤、乳糖および結晶セルロースを含有する錠剤フィルムコーティング用組成物。 コーティング剤がセルロース系フィルム形成剤である請求項1記載の組成物。 コーティング剤がヒドロキシプロピルメチルセルロース2910である請求項1記載の組成物。 錠剤が融点80℃以下の低融点物質を含有している錠剤である請求項1記載の組成物。 低融点物質がイブプロフェンである請求項4記載の組成物。 結晶セルロースの粒径が100μm以下である請求項1記載の組成物。 結晶セルロースの粒径が50μm以下である請求項1記載の組成物。 コーティング剤の配合量が、フィルムコーティング用組成物全量に対して30〜80重量%である請求項1記載の組成物。 乳糖の配合量が、フィルムコーティング用組成物全量に対して15〜50重量%である請求項1記載の組成物。 結晶セルロースの配合量が、フィルムコーティング用組成物全量に対して1〜30重量%である請求項1記載の組成物。 コーティング用溶媒として水を用いて請求項1〜10いずれか1項記載の組成物で素錠をコーティングすることを特徴とする錠剤のフィルムコーティング方法。 コーティング用溶媒として水を用いて請求項1〜10いずれか1項記載の組成物で素錠をコーティングしたことを特徴とする錠剤。


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