生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_透析用剤およびその製造方法
出願番号:2001299407
年次:2013
IPC分類:A61K 9/08,A61K 47/02,A61K 47/12,A61K 47/26,A61M 1/14,A61P 7/08


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岩品 広敏 加藤 純 JP 5204359 特許公報(B2) 20130222 2001299407 20010928 透析用剤およびその製造方法 味の素株式会社 000000066 結田 純次 100127926 竹林 則幸 100140132 岩品 広敏 加藤 純 20130605 A61K 9/08 20060101AFI20130520BHJP A61K 47/02 20060101ALI20130520BHJP A61K 47/12 20060101ALI20130520BHJP A61K 47/26 20060101ALI20130520BHJP A61M 1/14 20060101ALI20130520BHJP A61P 7/08 20060101ALI20130520BHJP JPA61K9/08A61K47/02A61K47/12A61K47/26A61M1/14 523A61P7/08 A61K9/00-9/72 A61K47/00-47/48 A61M1/00-1/36 国際公開第00/23086(WO,A1) 4 2003104869 20030409 7 20070622 2010019144 20100825 内田 淳子 穴吹 智子 岩下 直人 本発明は、透析用剤およびその製造方法に関する。 慢性腎不全患者等に行われる、血液浄化療法の最も一般的な療法に血液透析療法(人工透析療法)がある。血液透析治療法では、老廃物の除去、除水を行うほかに、血清電解質濃度の改善、酸塩基平衡の是正等を行うことを目的としている。このために使用する透析液中には大量のアルカリ化剤が必要となるが、これは、生体内のアルカリ化剤である重炭酸イオンが小分子であることから、透析によって除去され、重篤な低HCO3−血症を来すことを予防するためである。したがって、アルカリ化剤として重炭酸塩が最適であることは当然だが、重炭酸透析液では、重炭酸イオンがカルシウムイオンおよびマグネシウムイオンと反応して、不溶性化合物(炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどの炭酸金属塩)を生成し、不安定であること、また細菌が繁殖しやすいことから、長期間の保存が困難であること等の問題があった。 そこで、酢酸が肝臓で代謝され重炭酸に変換されることを利用して、アルカリ補充を図る手法が確立され、安定した透析液を供給できることから、アルカリ化剤として酢酸塩を用いる酢酸透析が行われるようになった。この結果、高いアルカリ濃度が設定できるようになり、充分な重炭酸の補充が可能となったが、一方、酢酸には血管拡張や心機能の抑制作用がみられ、酢酸の代謝の遅い酢酸不耐症例には、酢酸に起因する透析不均衡症候群の悪化や透析中血中のCO2が大量に透析液中に失われることで、呼吸抑制が生じる等の問題点が出現した。 その後、透析患者の増加や糖尿病などの対象患者の拡大に伴い、透析不均衡症候群の頻度と重症度が高まり、また通常の透析患者でも透析中の不快感が軽微な無症候透析への要求が増えてきたこと、これらの症状の原因として、酢酸の関与が強く疑われたことから、現在では、アルカリ化剤として酢酸塩を用いる酢酸透析から、炭酸水素ナトリウムを用いる重炭酸透析が主流となっている。発明が解決しようとする課題 この重炭酸透析では、一般的にはカルシウムイオンおよびマグネシウムイオン等を含む電解質成分、PH調整剤および/またはブドウ糖を含む「A剤」と、重炭酸イオンの炭酸水素ナトリウムからなる「B剤」の2剤構成となっている。これは、重炭酸イオンがカルシウムイオンおよびマグネシウムイオンと反応して不溶性化合物である炭酸金属塩を生成するためである。しかし、重炭酸透析とは言っても、pH調整剤としての酢酸や酢酸ナトリウム等、以前の酢酸透析ほどではないが、8〜12mEq/Lの酢酸が入っている。当初は、この程度の酢酸の添加は問題ないと考えられていたが、酢酸は元来生体内にほとんど存在しないものであるため(0.1mEq/L以下)、最近では透析の長期化に伴い、酢酸に起因すると思われる透析中の頭痛や血圧低下等の臨床症状の発現が問題となっている。また、ダイアライザーの性能の向上等により、酢酸が過度に負荷され循環器に悪い影響を与えるようになり、酢酸不耐症等、酢酸の毒作用は予想以上に強いということが認識されるようになってきた。そこで、酢酸を含まない透析製剤の開発が求められている。課題を解決するための手段 本発明はこのような問題点を解決するために鋭意検討した結果、完成されたものであって、血液透析に使用する重炭酸透析用人工灌流液を調製するための、電解質成分、pH調整剤および/またはブドウ糖を含む透析用剤において、酢酸および酢酸塩を含有しないことを特徴とする透析用剤を提供するものである。 すなわち、本発明は、1. 重炭酸透析用人工灌流液を調製するための、電解質成分、pH調整剤および/またはブドウ糖を含む透析用剤において、クエン酸およびクエン酸ナトリウムを含有し、pH2.2〜2.9に調整したことを特徴とする透析用剤、2. 重炭酸透析用人工灌流液を調製するための、電解質成分、pH調整剤および/またはブドウ糖を含む透析用剤において、クエン酸およびクエン酸ナトリウムを含有し、クエン酸およびクエン酸ナトリウムの配合割合を変えることにより、pH2.2〜2.9に調整したことを特徴とする、請求項1に記載の透析用剤、3. pHが2.3〜2.7に調整されていることを特徴とする、請求項1〜2に記載の透析用剤、4. 請求項1〜3に記載の透析用剤を、炭酸水素ナトリウムの水溶液と希釈混合することによって、重炭酸透析用人工灌流液に調製されることを特徴とする透析用剤、5. 重炭酸透析用人工灌流液を調製するための、電解質成分、pH調整剤および/またはブドウ糖を含む透析用剤において、クエン酸およびクエン酸ナトリウムを含有し、pH2.2〜2.9に調整したことを特徴とする透析用剤の製造方法、を提供するものである。 本発明では、重炭酸透析用人工灌流液を調製するための、電解質成分、pH調整剤および/またはブドウ糖を含む透析用剤において、酢酸および酢酸塩の代わりとして、生体内にも存在する酸であるクエン酸およびクエン酸ナトリウムを使用することに特徴がある。これにより、酢酸フリーの重炭酸透析用人工灌流液とすることができるものである。 本発明における透析用剤とは、炭酸水素ナトリウム液と希釈混合して、重炭酸透析用人工灌流液を調製するための濃縮液剤である。 この透析用剤は電解質成分、pH調整剤および/またはブドウ糖を含んでおり、電解質成分としては、クエン酸ナトリウム等のクエン酸塩の他、たとえば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、乳酸ナトリウム、乳酸カリウム、乳酸カルシウム等が用いられる。好ましい電解質組成物としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マケネシウム、クエン酸ナトリウムである。 透析剤の各成分の配合量は、適切な濃度に希釈、混合した場合、重炭酸透析用人工灌流液として、下記の濃度であることが好ましい。 なお、本発明では、pH調整剤としては、クエン酸の他、乳酸、塩酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、酒石酸、水酸化ナトリウム等を使用することもできる。 クエン酸およびクエン酸ナトリウムを使用する場合、電解質成分として含まれるカルシウムイオンと不溶性化合物を生成するが、クエン酸により、pHを2.9以下、より好ましくはpH2.7以下に調整することによって、不溶性化合物の生成を防止することができる。 また、クエン酸により、pHを2.2以上、より好ましくはpH2.3以上とすることにより、ブドウ糖の分解を防止することができる。 さらに、クエン酸を使用することにより、沈殿抑制効果も期待できる。電解質成分、pH調整剤および/またはブドウ糖を含むいわゆる「A剤」と、重炭酸イオンの炭酸水素ナトリウムからなる「B剤」の2剤は、重炭酸イオンがカルシウムイオンおよびマグネシウムイオンと反応して不溶性化合物である炭酸金属塩を生成するため、用時、希釈混合後、人工灌流液とする。この際、クエン酸の沈殿抑制効果によって、安定性が長く保たれる、という利点もある。 本発明では、クエン酸の使用量はpH2.2〜2.9に調整できれば良く、通常、クエン酸は約0.02〜5mEq/L、より望ましくは0.5〜3mEq/Lである。 従来のいわゆる「A剤」においては、酢酸塩が含まれていたのに対し、本発明では酢酸は一切含まれず、炭酸水素ナトリウムのみをアルカリ化剤として用いるので、より生理的な処方であるという利点もある。 次に、実施例をあげて、本発明をさらに詳細に説明する。(実施例1) 重炭酸透析用人工灌流液を調製するための電解質成分、pH調整剤およびブドウ糖を含む透析用剤について、pHが異なる次の4処方を調製する。すなわち、塩化ナトリウム(NaCl)214.8g、塩化カリウム(KCl)5.22g、塩化カルシウム(CaCl2・2H2O)7.72g、塩化マグネシウム(MgCl2・6H2O)3.56g、ブドウ糖52.5gおよびpH調整剤としてクエン酸(C6H8O7)5.38gを水に溶かして1Lとしたものを処方▲1▼(pHl.6)、この処方▲1▼のpH調整剤をクエン酸4.48gおよびクエン酸ナトリウム(C6H5Na3O7)1.20gに変更して調製したものを処方▲2▼(pH2.2)、クエン酸3.36gおよびクエン酸ナトリウム2.71gに変更して調製したものを処方▲3▼(pH2.9)、クエン酸2.02gおよびクエン酸ナトリウム4.52gに変更して調製したものを処方▲4▼(pH3.6)とする。 これらの液について、40℃/75%RHの条件下で保存し、性状、ブドウ糖の分解物である5−ヒドロキシメチルフルフラール類(5−HMF)およびレブリン酸の変化について観察した。性状は目視にて観察し、5−HMFおよびレブリン酸は、各処方10mLを正確に量り、水11mLを正確に加えた液について、紫外・可視分光光度計(UV−2200型(株)島津製作所製)を使用し、波長284nm(5−HMF)および波長263nm(レブリン酸)における吸光度を測定する。 まず、性状では、表1に示したように、pHが最も高い処方▲4▼において、1週間保存時に白色沈殿が認められたが、その他の処方では、4週間保存時でも変化は認められなかった。 ブドウ糖の分解物である、5−HMFおよびレブリン酸の結果を表2に示す。5−HMFやレブリン酸の生成量はpHが最も低い処方▲1▼ほど多かった。これらの結果から、クエン酸とクエン酸ナトリウムによりpHが2.2に調整された処方▲2▼とpH2.9に調整された処方▲3▼が、製剤的に安定であると判断される。(実施例2) まず、塩化ナトリウム(NaCl)214.8g、塩化カリウム(KCl)5.22g、塩化カルシウム(CaCl2・2H2O)7・72g、塩化マグネシウム(MgCl2・6H2O)3.56g、ブドウ糖52.59及びpH調整剤としてクエン酸(C6H8O7)4.03g及びクエン酸ナトリウム(C6H5Na3O7)1.81gを水に溶かして1Lとし、処方▲5▼(pH2.4)とする。次に、炭酸水素ナトリウム29.4gを水に溶かして1Lとする。この水溶液35mLに水を加え約300mLとし、ここに処方▲5▼を10mL加え、水を加えて350mLとし、処方▲5▼による酢酸フリーの重炭酸透析用人工灌流液を調製する。 また、塩化ナトリウム(NaCl)214.8g、塩化カリウム(KCl)5.22g、塩化カルシウム(CaCl2・2H22O)7.72g、塩化マグネシウム(MgCl2・6H22O)3.56g、酢酸ナトリウム(C2H3NaO2)28.7g、ブドウ糖35g及びpH調整剤として塩酸(HCl)適量を水に溶かして1Lとし、処方▲6▼(pH4.9)とする。次に、炭酸水素ナトリウム21.0gを水に溶かして1Lとする。この液35mLに水を加え、約300mLとし、ここに処方▲6▼を10mL加え、水を加えて350mLとし、処方▲6▼による重炭酸透析用人工灌流液を調製する。 これらを室温下で保存し、性状を観察する。 結果を表3に示した。処方▲6▼による重炭酸透析用人工灌流液では3日後には沈殿が生成したのに対し、処方▲5▼による重炭酸透析用人工灌流液では5日後においても沈殿は生成しなかった。このことから、処方▲5▼による酢酸フリーの重炭酸透析用人工灌流液は安定であると判断される。発明の効果 以上説明したように、本発明では、重炭酸透析用人工灌流液を調製するための電解質成分、pH調整剤および/またはブドウ糖を含む透析用剤において、クエン酸およびクエン酸ナトリウムを含有し、pH2.2〜2.9に調整することによって、製剤的にも安定、かつ酢酸フリーの生理的な透析用剤が提供できる。 重炭酸血液透析用人工灌流液を調製するための、電解質成分、pH調整剤およびブドウ糖を含む血液透析用A剤において、クエン酸およびクエン酸ナトリウムを含有し、酢酸および酢酸塩を含有せず、クエン酸およびクエン酸ナトリウムの配合割合を変えることにより、pH2.2〜2.9に調整したことを特徴とする血液透析用A剤。 pHが2.3〜2.7に調整されていることを特徴とする、請求項1に記載の血液透析用A剤。 請求項1または2に記載の血液透析用A剤を、炭酸水素ナトリウムの水溶液と希釈混合することによって、重炭酸透析用人工灌流液に調製されることを特徴とする重炭酸血液透析用剤。 重炭酸透析用人工灌流液を調製するための、電解質成分、pH調整剤およびブドウ糖を含む血液透析用A剤において、クエン酸およびクエン酸ナトリウムを含有し、クエン酸およびクエン酸ナトリウムの配合割合を変えることにより、pH2.2〜2.9に調整したことを特徴とする血液透析用A剤の製造方法。


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