タイトル: | 特許公報(B2)_対象物質導入用組成物 |
出願番号: | 2001271809 |
年次: | 2012 |
IPC分類: | A61K 48/00,A61K 47/36,A61K 9/06,A61K 31/7088,A61P 17/00 |
錦織 千佳子 宮地 良樹 有馬 八重野 大津 吉朗 JP 4906202 特許公報(B2) 20120120 2001271809 20010907 対象物質導入用組成物 錦織 千佳子 501354163 有馬 八重野 501354185 細田 芳徳 100095832 錦織 千佳子 宮地 良樹 有馬 八重野 大津 吉朗 20120328 A61K 48/00 20060101AFI20120308BHJP A61K 47/36 20060101ALI20120308BHJP A61K 9/06 20060101ALI20120308BHJP A61K 31/7088 20060101ALI20120308BHJP A61P 17/00 20060101ALI20120308BHJP JPA61K48/00A61K47/36A61K9/06A61K31/7088A61P17/00 A61K 48/00 A61K 47/00-48 A61K 9/00-72 A61P 17/00 CA/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) PubMed 特開平09−071542(JP,A) Mol. Med. Today,1999年,Vol.5,pp.298-303 4 2003081864 20030319 13 20080807 特許法第30条第1項適用 平成13年7月25日 発行の「Journal of Dermatological Science Vol.27 No.1 September 2001」に発表 特許法第30条第1項適用 平成13年8月3日 発行の「日本研究皮膚科学会 第26回年次学術大会・総会 プログラム・抄録集」に発表 宮坂 隆 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、タンパク質、核酸などの対象物質を導入するための対象物質導入用組成物及びそれを用いる遺伝子導入法に関する。詳しくは、皮膚疾患などの広範囲にわたり発症する疾患などの治療、症状改善、疾患の機構の研究などに用いうる対象物質導入用組成物並びに広範囲の導入対象部位に対して、効率よく遺伝子を導入することが可能な遺伝子導入方法に関する。【0002】【従来の技術】色素性乾皮症(XP)は、ヌクレオチド除去修復酵素の機能欠損などを特徴とする常染色体性劣性遺伝性疾患であり、日光過敏、色素斑・脱色班の増加、萎縮性病変、多発性日光角化症などをもたらす場合がある。また、前記色素性乾皮症においては、露光部位に悪性腫瘍が発生する場合がある。【0003】現在、前記色素性乾皮症の治療として、理論的には、欠損遺伝子を補充するのが最適であるが、現在は、かかる治療に適した方法の開発は進んでおらず、根本的な治療法といえるものはなく、遮光、生じた皮膚癌の切除など対症療法しか行なえていないのが現状である。【0004】一方、前記色素性乾皮症などの広範囲に病変が見られる疾患においては、例えば、色素乾皮症における皮下注射のように、病変部全てに局所投与を行なうことが困難であるのが現状である。【0005】【発明が解決しようとする課題】本発明は、広範囲の領域に核酸、酵素などを効率よく導入するための手段を提供することを目的とする。また、本発明は、皮膚疾患などの広範囲にわたり発症する疾患などの治療、症状改善、疾患の機構の研究を可能にする手段を提供することを目的とする。具体的には、本発明の第1の目的は、皮膚疾患などの広範囲にわたり発症する疾患などの治療、症状改善、疾患の機構の研究に用いうる対象物質導入用組成物を提供することを目的とする。かかる発明の態様の1つの例としては、広範囲の導入対象部位に対して、効率よく遺伝子を導入することが可能な対象物質導入用組成物、具体的には、遺伝子導入用組成物が挙げられる。また、本発明の第2の目的は、広範囲の導入対象部位に対して、簡便に、効率よく遺伝子を導入することができる遺伝子導入方法を提供することにある。【0006】【課題を解決するための手段】 本発明の要旨は、〔1〕 a)導入対象の核酸若しくは該核酸の誘導体を保持したHVJ−リポソームからなる対象物質と、b)増粘剤、ゲル化剤及びゲルからなる群より選ばれた少なくとも1種を含有し、かつ該対象物質を皮膚上に保持しうる貯留性を有する生体適合性組成物とを含有してなる、皮膚及び/又は粘膜塗布用対象物質導入用組成物であって、増粘剤、ゲル化剤及びゲルからなる群より選ばれた少なくとも1種がヒアルロン酸又はその塩であり、生体適合性組成物が少なくとも0.5Pa・sの粘度を有するゲル状組成物である、皮膚及び/又は粘膜塗布用対象物質導入用組成物、〔2〕 生体適合性組成物が、pH6〜9.0である、前記〔1〕記載の皮膚及び/又は粘膜塗布用対象物質導入用組成物、〔3〕 核酸若しくは該核酸の誘導体が、DNA、RNA、ペプチド核酸及びヌクレオチドアナログ含有核酸からなる群より選ばれた1種である、前記〔1〕又は〔2〕記載の皮膚及び/又は粘膜塗布用対象物質導入用組成物、並びに〔4〕 前記〔3〕記載の皮膚及び/又は粘膜塗布用対象物質導入用組成物をヒトを除く動物の皮膚及び/又は粘膜に塗布し、それにより、導入対象の遺伝子を含有した核酸若しくは該核酸の誘導体を細胞に導入することを特徴とする、遺伝子導入方法、に関する。【0007】【発明の実施の形態】本発明の対象物質導入用組成物は、a)導入対象のタンパク質、導入対象の核酸若しくは該核酸の誘導体を保持した担体、導入対象の核酸及び該核酸の誘導体からなる群より選ばれた1種の対象物質と、b)増粘剤、ゲル化剤及びゲルからなる群より選ばれた少なくとも1種を含有し、かつ該対象物質を皮膚上に保持しうる貯留性を有する生体適合性組成物とを含有することに1つの特徴がある。本発明によれば、細胞への導入の対象となる物質を、広範囲の部位に、簡便かつ効率よく導入することができるという優れた効果を発揮する。【0008】本発明は、XPA遺伝子を封入したHVJ−リポソームを含有したヒアルロン酸ナトリウム溶液を、XPAマウスの皮膚に塗布することにより、前記XPA遺伝子がマウスの細胞に導入され、該遺伝子が発現する、すなわち、UVB照射下においても、サンバーン細胞の発生が抑制され、かつDNA修復能を回復するという本発明者らの驚くべき知見に基づく。【0009】本発明の対象物質導入用組成物に用いられるa)対象物質としては、導入対象のタンパク質、導入対象の核酸若しくは該核酸の誘導体を保持した担体、導入対象の核酸、該核酸の誘導体などが挙げられる。前記対象物質は、適切な緩衝液などの溶液に溶解されていてもよい。【0010】前記「導入対象のタンパク質」としては、特に限定されないが、例えば、XPA遺伝子産物、スーパーオキシドディスムターゼ、カタラーゼ、グルタチオン、ペルオキシダーゼ、ペルオキシレドキシン、抗体、単鎖抗体などが挙げられる。【0011】また、前記「導入対象の核酸」としては、特に限定されないが、前記「導入対象のタンパク質」をコードする核酸、リボザイム、p53、Rb、PTCなどの癌抑制遺伝子、遺伝子欠損性疾患若しくは遺伝子変異を原因とする疾患の原因遺伝子、IFN−α、IFN−γ、IFN−β、IL−2などのサイトカイン遺伝子などが挙げられる。前記「遺伝子欠損性疾患若しくは遺伝子変異を原因とする疾患」及び原因遺伝子として、例えば、栄養障害型表皮水疱症(Dystrophic EB): COL7A1 など、接合部型表皮水疱症(Junctional EB): LAMA3, LAMB3, LAMC2 など、全身性萎縮性良性表皮水疱症(GABEB): COL17A1など、表皮水疱症−幽門閉鎖症(EB-PA): ITGA6, ITGB4 など、表皮水疱症−筋ジストロフィー(EB-MD): PLEC1など、単純型表皮水疱症(EB-simplex): KRT5, KRT14 など、外胚葉性形成異常/皮膚脆弱症(EDA/skin fragility): PLP1など、表皮剥離性角質増加症(Epidermolytic hyperkeratosis): KRT1, KRT10 など、表皮剥離性掌蹠角皮症(Epidermolytic PPK): KRT9 など、非表皮剥離性掌蹠角皮症(Nonepidermolytic PPK): KRT16 など、ボーヴィンケル症候群(Vohwinkel's syndrome): LOR, GJB2 など、魚鱗癬中毒水疱症(Ichthyosis bullosa Siemens): KRT2e など、1型及び2型先天性硬爪症(Pachonychia congenita type 1 and 2): KRT6a, 16, 17 など、伴性魚鱗癬(X-linked ichthyosis): STS など、葉状魚鱗癬(Lamellar ichthyosis): TGM1 など、難聴併発掌蹠角皮症(PPK with deafness): GJB2 など、変異性紅斑角皮症(Erythrokeratoderma variabilis): GJB3 など、ダリエー病(Darier's disease): ATP2A2など、横紋掌蹠角皮症(Striate PPK): DSPなど、横紋角皮症(Striate keratoderma): DSG1 など、先天性無毛症(Congenital atrichia): HR など、連珠毛(Monilethrix): hHB1, hHB6 など、ワールデンブルグ症候群(Waardenburg syndrome): PAX3、白皮症[Albinism (different forms)]: TYR, TYRP-1, OCA2, OA1、ティーツェ症候群(Tierz syndrome): MITEなど、ヘルマンスキー−パドラック症候群(Hermansky-Pudlak syndrome): HPSなど、骨髄性プロトポルフィリン症(Erythropoietic protoporphyria): FECH など、先天性骨髄性ポルフィリン症(Congenital erythropoietic porphyria): UROS など、家族性晩発性皮膚ポルフィリン症(Familial porphyria cutanea tarda): URO-D など、異型ポルフィリン症(Variegate porphyria): PPOなど、色素性乾皮症(Xeroderma pigmentosum): XPA, XPB, XPC, XPD, XPE, XPG, XPF, CSB など、基底細胞母斑症候群(Basal cell nevus syndrome): PTCなど、ポイツ−シュガーズ症候群(Peutz-Jeghers syndrome): STK11/LKB1など、コーデン症候群(Cowden syndrome): PTEN など、バナナヤン−ゾーナン症候群(Bannayan-Zonan syndrome): PTEN など、裂毛症(Trichothiodystrophy): XPB, XPD など、ファブリー病(Fabry's disease): GLAなど、毛細管拡張性運動失調(Ataxia telangiectasia): ATMなど、遺伝性出血性毛細管拡張症(Hereditary hemorrhagic telangiectasia): ENG, ALK-1 などが挙げられる。【0012】さらに本発明においては、前記「導入対象の核酸」は、ペプチド核酸(PNA)、ヌクレオチドアナログ含有核酸などに代表される核酸の誘導体であってもよい。【0013】前記核酸は、慣用のベクターに組み込まれたものであってもよい。前記ベクターとしては、導入対象の部位などに応じて適宜選択することができ、例えば、pCAGGS、pcDNA3、大腸菌用プラスミド〔例えば、pUC18、pUC19、pBR322、pBluescript II(登録商標;ストラタジーン社製)、pET、pCAL、pBluescript Amp(登録商標;ストラタジーン社製)〕、真核細胞用ベクター(pCMV−Script(登録商標;ストラタジーン社製)、pCMV−Tag、pBK−CMV、pBK−RSV、pl−RED1、pESP、pESC)、大腸菌用ファージ〔M13mp18/19、ZAPII(登録商標;ストラタジーン社製)、ZAP Express(登録商標;ストラタジーン社製)、ZAP−CMV(登録商標;ストラタジーン社製)、FIX II(登録商標;ストラタジーン社製)、DASH II(登録商標;ストラタジーン社製)、EMBL3/4、gt11、gt10〕、コスミド(pAT5、pWE15)などが挙げられる。【0014】前記担体としては、例えば、HVJ−リポソームに代表されるリポソームなどが挙げられる。【0015】本発明の対象物質導入用組成物における前記対象物質の含有量は、導入部位において、該対象物質の機能を発揮しうる範囲であればよく、例えば、対象物質が、核酸又は該核酸の誘導体を保持した担体、導入対象の核酸又は核酸誘導体である場合、例えば、前記含有量としては、全組成物量中、1.0×10-9重量%〜99.9重量%、好ましくは、1.0×10-6重量%〜99重量%などが挙げられる。また、対象物質が、タンパク質である場合、前記含有量としては、全組成物量中、1.0×10-9重量%〜99.9重量%、好ましくは、1.0×10-6重量%〜99重量%などが挙げられる。また、対象物質の含有量は、前記対象物質の機能を発揮する場合、上記に例示された範囲に限定されるものではない。なお、本発明の対象物質導入用組成物は、使用時に希釈して用いてもよい。【0016】本発明の対象物質導入用組成物に用いられるb)生体適合性組成物としては、前記a)の対象物質を皮膚上に保持しうる貯留性を有する生体適合性組成物であればよく、例えば、増粘剤、ゲル化剤、ゲルなどを含有した生体適合性組成物が挙げられる。【0017】なお、本明細書において、前記「生体適合性」とは、長期間にわたって生体に悪影響も強い刺激も与えず、前記対象物質の本来の機能及び該対象物質を皮膚上に保持しうる貯留性を発揮しながら、生体と共存できる材料の属性を意味する。【0018】本明細書においては、前記「対象物質を皮膚上に保持しうる貯留性」は、皮膚上に本発明の対象物質導入用組成物を塗布した場合に、該対象物質が皮膚から流れ落ちないような性質を意味し、例えば、対象物質を皮膚上に保持しうる粘度により表されうる。【0019】前記「対象物質を皮膚上に保持しうる粘度」は、例えば、粘度計〔例えば、ブルックフィールド エンジニアリング ラボラトリー(Brookfield Engineering Laboratories)社製、モデル名:RV DV−III〕を用い、測定温度20℃、回転数2.5rpm、スピンドルCP52の測定条件下において測定した場合に、少なくとも0.5Pa・s、すなわち、0.5Pa・s以上であり、塗布に適した上限粘度以下であればよい。なお前記上限粘度としては、例えば、前記粘度計により測定可能な上限である1000Pa・s以下が挙げられるが、かかる値よりも大きい数値であても、塗布に適した粘度であればよい。なお、前記測定条件は、用いる粘度計、測定対象となる物質などに応じて、適宜至適化されうる。具体的には、例えば、ヒアルロン酸ナトリウム溶液の粘度は、粘度計〔例えば、ブルックフィールド エンジニアリング ラボラトリー(Brookfield Engineering Laboratories)社製、モデル名:RV DV−III〕を用い、測定温度20℃、回転数2.5rpm、スピンドルCP52の条件下での測定されうる。【0020】前記生体適合性組成物としては、例えば、対象物質を皮膚上に保持しうる粘度を有するゲル状組成物などが挙げられる。【0021】具体的には、前記生体適合性組成物としては、水溶性高分子化合物を含有した組成物〔水溶性高分子化合物含有組成物〕が挙げられる。【0022】前記水溶性高分子化合物としては、天然高分子化合物(例えば、植物、微生物、動物由来の化合物など)、半合成高分子化合物(セルロース系化合物、デンプン系化合物、アルギン酸系化合物など)、合成高分子化合物(例えば、ビニル系化合物、アクリル酸系化合物など)などが挙げられる。【0023】前記生体適合性組成物において、pHは、対象物質を安定に保持できる、すなわち、対象物質の生理機能を発揮しうる範囲であればよく、かかる観点から、例えば、6以上であり、好ましくは、6.5以上であり、9.0以下であり、好ましくは8.5以下であり、より好ましくは、8.0以下であることが望ましい。さらに、前記生体適合性組成物のpHは、生体に適した範囲であってもよい。【0024】前記ゲル状組成物としては、前記貯留性などを発揮しうるものであればよく、例えば、ムコ多糖、結晶セルロース(例えば、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースなど)、カラギーナン、ロカストビーンガム〔Locust bean(Ceratonia siliqua) gum〕、クインスシード、トラガントゴム、カラヤゴム、ペクチン、アカシヤゴム、キサンタンガム、カゼイン、アルギン酸ナトリウム、アクリル酸ナトリウムグラフトデンプン、ヒドロキシプロキシガラクトマンナン(グアール)、カルボキシルビニルポリマー〔カルボマー 940(商品名:Carbopol 940、BFGoodrich社製)、カルボマーカリウム、カルボマーAMP、カルボマーアルギニンなど〕、(エイコセン/ビニルピロリドン)コポリマー、PVM/MAデカジエンクロスポリマー、PVP/VAポリマー、PVP/PAコポリマー、ポリビニルアルコール、ポリグリセリルメタクリレート、アクリレート/アルキル(化合物中、アルキル基は、例えば、炭素数1〜50、好ましくは10〜30など)アクリレートクロスポリマー、アクリル酸アルキルコポリマーアンモニウム、(アクリル酸アルキル/ジアセトンアクリルアミド)コポリマーAMP(化合物中、アルキル基は、例えば、炭素数1〜50、好ましくは10〜30のアルキル基)、(アクリル酸アルキル・オクチルアクリルアミド)コポリマー(化合物中、アルキル基は、例えば、炭素数1〜50、好ましくは10〜30のアルキル基など)、アクリル酸・メタクリル酸アクリル共重合体、(アクリル酸/アクリル酸アルキル(例えば、炭素数1〜50、好ましくは10〜30のアルキル基など)コポリマーカリウム、(アクリル酸/アクリル酸アルキル(化合物中、アルキル基は、例えば、炭素数1〜50、好ましくは10〜30のアルキル基など)コポリマーテトラヒドロキシプロピルエチレンジアミン、(アクリル酸/アクリル酸アルキル)コポリマーAMP(化合物中、アルキル基は、例えば、炭素数1〜50、好ましくは10〜30のアルキル基など)、アクリル酸コポリマー、アクリル酸/ステアレス−20メタクリル酸コポリマー、アクリル酸/ヒドロクスエステルアクリル酸コポリマー、ポリアクリル酸ナトリウム、(イソブチレン/マレイン酸ナトリウム)コポリマー、クオータニウム−18ヘクトライトなどから選ばれた化合物を構成成分とする組成物などが挙げられる。また、ゲル状組成物としては、例えば、流動パラフィンと、グリセロールトリ−2−エチルヘキサンエステルと、ソルビトールと、ポリエチレングリコール400と、アシルメチルタウリン、ポリオキシエチレンオクチルドデシルアルコールエーテル(オキシエチレン基の平均付加モル数約10〜100、より好ましくは、約40)とから得られるゲル;ポリオキシプロピレンブチルエーテル(オキシプロピレン基の平均付加モル数約10〜100、より好ましくは、約40)とポリオキシプロピレンブチルエーテルリン酸(オキシプロピレン基の平均付加モル数約10〜100、より好ましくは、約40)とジイソプロパノールアミンとから得られるゲルなどが挙げられる。なお、前記構成成分が塩を形成する場合、前記貯留性を発揮しうるものであれば、薬学上許容されうる塩であってもよい。かかる塩としては、アルカリ金属塩;アルカリ土類金属塩;アンモニウム塩のような無機塩;t−オクチルアミン塩、ジペンジルアミン塩、、グルコサミン塩、フエニルグリシンアルキルエステル塩、エチレンジアミン塩、N−メチルグルカミン塩、グアニジン塩、ジエチルアミン塩、トリエチルアミン塩、ジシクロヘキシルアミン塩、N,N’−ジペンジルエチレンジアミン塩、クロロプロカイン塩、ジエタノールアミン塩、ピベラジン塩、テトラメチルアンモニウム塩、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩に代表される有機塩等のアミン塩;ハロゲン化水素酸塩、硝酸塩、過塩素酸塩、硫酸塩、燐酸塩等の無機酸塩;メタンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩のような低級アルカンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩のようなアリールスルホン酸塩、酢酸、リンゴ酸、フマール酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、マレイン酸塩等の有機酸塩;及び、グリシン塩、リジン塩、アルギニン塩、オルニチン塩、グルタミン酸塩、アスパラギン酸塩のようなアミノ酸塩を挙げられる。【0025】前記ムコ多糖としては、具体的には、例えば、ヒアルロン酸、キチン、コロミン酸、コンドロイチン、コンドロイチン 4−硫酸、デルマタン硫酸、コンドロイチン 6−硫酸、ヘパリン、ケラタン硫酸、ヘパラン硫酸、タイクロン酸などが挙げられる。【0026】なお、前記生体適合性組成物における構成成分に繰返し単位が存在する場合、かかる繰り返し単位の数は、前記貯留性などに応じて適宜選択される。【0027】前記生体適合性組成物は、例えば、用途、使用時の条件などに応じて、選択してもよい。例えば、本発明の対象物質導入用組成物は、疾患などの治療における治療剤としても用いられうるが、この場合、投与対象(塗布対象)の個体における使用感などの観点から、前記生体適合性組成物を選択してもよい。【0028】本発明の対象物質導入用組成物中における前記生体適合性組成物の含有量は、用いる生体適合性組成物により異なるが、対象物質を皮膚上に保持しうる貯留性を発揮しうる範囲であればよい。例えば、本発明の対象物質導入用組成物中における前記生体適合性組成物の含有量としては、0.1重量%以上であり、好ましくは、0.5重量%以上であり、より好ましくは、1重量%以上であり、99.99重量%以下であり、好ましくは、99.9重量%以下であり、より好ましくは、99.7重量%である範囲で含有量などが挙げられる。【0029】本発明の対象物質導入用組成物には、前記対象物質を安定に保持するための殺菌剤、金属封鎖剤、防腐剤、抗酸化剤、保湿剤、油性成分、安定化剤、慣用の緩衝剤、水などを適宜含有してもよい。例えば、前記対象物質が、核酸若しくは該核酸の誘導体を保持した担体、該核酸又は該核酸の誘導体である場合、本発明の対象物質導入用組成物には、核酸の分解を抑制するための薬学的に許容されうる物質を含有してもよい。本発明の対象物質導入用組成物において、前記対象物質と生体適合性組成物との残部は、前記殺菌剤、金属封鎖剤、防腐剤、抗酸化剤、保湿剤、油性成分、安定化剤、慣用の緩衝剤、水などであればよい。【0030】本発明の対象物質導入用組成物の導入対象部位としては、例えば、皮膚、粘膜などが挙げられる。【0031】本発明の対象物質導入用組成物の用途としては、例えば、広範囲にわたり発症する疾患などの治療又は症状改善、該疾患の機構の研究(例えば、疾患モデル動物などの作製など)などが挙げられる。【0032】本発明の対象物質導入用組成物を適用しうる疾患としては、例えば、栄養障害型表皮水疱症(Dystrophic EB) 、接合部型表皮水疱症(Junctional EB) 、全身性萎縮性良性表皮水疱症(GABEB) 、表皮水疱症−幽門閉鎖症(EB-PA) 、表皮水疱症−筋ジストロフィー(EB-MD) 、単純型表皮水疱症(EB-simplex)、外胚葉性形成異常/皮膚脆弱症(EDA/skin fragility)、表皮剥離性角質増加症(Epidermolytic hyperkeratosis)、表皮剥離性掌蹠角皮症(Epidermolytic PPK) 、非表皮剥離性掌蹠角皮症(Nonepidermolytic PPK)、ボーヴィンケル症候群(Vohwinkel's syndrome)、魚鱗癬中毒水疱症(Ichthyosis bullosa Siemens)、1型及び2型先天性硬爪症(Pachonychia congenita type 1 and 2)、伴性魚鱗癬(X-linked ichthyosis) 、葉状魚鱗癬(Lamellar ichthyosis) 、難聴併発掌蹠角皮症(PPK with deafness) 、変異性紅斑角皮症(Erythrokeratoderma variabilis) 、ダリエー病(Darier's disease)、横紋掌蹠角皮症(Striate PPK) 、横紋角皮症(Striate keratoderma) 先天性無毛症(Congenital atrichia) 、連珠毛(Monilethrix) 、ワールデンブルグ症候群(Waardenburg syndrome)、白皮症[Albinism (different forms)]、ティーツェ症候群(Tierz syndrome)、ヘルマンスキー−パドラック症候群(Hermansky-Pudlak syndrome) 、骨髄性プロトポルフィリン症(Erythropoietic protoporphyria) 、先天性骨髄性ポルフィリン症(Congenital erythropoietic porphyria) 、家族性晩発性皮膚ポルフィリン症(Familial porphyria cutanea tarda)、異型ポルフィリン症(Variegate porphyria) 、色素性乾皮症(Xeroderma pigmentosum) 、基底細胞母斑症候群(Basal cell nevus syndrome) 、ポイツ−シュガーズ症候群(Peutz-Jeghers syndrome)、コーデン症候群(Cowden syndrome) 、バナナヤン−ゾーナン症候群(Bannayan-Zonan syndrome) 、裂毛症(Trichothiodystrophy) 、ファブリー病(Fabry's disease) 、毛細管拡張性運動失調(Ataxia telangiectasia) 、遺伝性出血性毛細管拡張症(Hereditary hemorrhagic telangiectasia) などの遺伝子疾患と悪性黒色腫、悪性血管内皮細胞腫などの悪性腫瘍などが挙げられる。【0033】本発明の対象物質導入用組成物は、塗布、散布、貼布などにより使用されうる。使用時の簡便性、効率などの観点から、特に、塗布による使用が好適である。容器や製剤の形態は特に限定するものではなく、乳剤、ゲル剤、パック剤、パップ剤、泡状エアゾール剤、座剤などが挙げられる。【0034】本発明の対象物質導入用組成物のなかで、特に、導入対象の核酸若しくは該核酸の誘導体を保持した担体、導入対象の核酸及び該核酸の誘導体からなる群より選ばれた1種と、該担体又は核酸若しくは該核酸の誘導体を皮膚上に保持しうる生体適合性のゲル状組成物とを含有した対象物質導入用組成物(以下、遺伝子導入用組成物とも称す)は、遺伝子を、広範囲の部位に、簡便、かつ効率よく導入することができる。前記核酸若しくは該核酸の誘導体としては、DNA、RNA、PNA、ヌクレオチドアナログ含有核酸などが挙げられる。【0035】前記遺伝子導入用組成物によれば、簡便、かつ効率のよい遺伝子導入方法が提供されうる。かかる遺伝子導入方法も本発明の範囲に含まれる。【0036】本発明の対象物質導入用組成物は、例えば、以下のように製造されうる。すなわち、対象物質が核酸の場合、慣用の方法により導入対象の核酸又は該核酸の誘導体を慣用のベクターに組み込み組換えベクターを得る。なお、導入により、導入対象部位で発現可能なものであれば、前記組換えベクターのかわりに、前記核酸又は該核酸の誘導体そのままの状態、いわゆる、naked−DNAとして用いてもよい。得られた組換えベクター又はnaked−DNAは、慣用の手法により、例えば、HVJ−リポソームなどに封入して、組換えベクター含有リポソーム若しくはnaked−DNA含有リポソームとしてもよく、そのままの状態でもよい。また、生体適合性組成物として、例えば、ヒアルロン酸ナトリウムを、ダルベッコPBS(−)溶液100mlに5重量%濃度となるように膨潤させることにより、5重量% ヒアルロン酸ナトリウム溶液(pH7.4)を得る。なお、前記ダルベッコPBS(−)溶液は、例えば、市販のダルベッコPBS(−)粉末9.6gを蒸留水に溶解させて容量を1リットルに調整し、得られた溶液を121℃で15分間高圧蒸気滅菌することにより得られる。得られた組換えベクター含有リポソーム、naked−DNA含有リポソーム、組換えベクター及びnaked−DNAからなる群より選ばれた1種と、前記ヒアルロン酸ナトリウム溶液とを、混合し、対象物質導入用組成物を得る。【0037】本発明の遺伝子導入方法は、導入対象の核酸若しくは該核酸の誘導体を保持した担体、導入対象の核酸及び該核酸の誘導体からなる群より選ばれた1種と、該担体又は核酸若しくは該核酸の誘導体を皮膚上に保持しうる生体適合性のゲル状組成物とを含有した対象物質導入用組成物(すなわち、遺伝子導入用組成物ともいう)を皮膚に塗布し、それにより、導入対象の遺伝子を含有した核酸若しくは該核酸の誘導体を細胞に導入することを特徴とする。【0038】前記遺伝子導入用組成物の皮膚への塗布量としては、特に限定されないが、例えば、核酸若しくは該核酸の誘導体の量として、単位面積、例えば、1cm2 あたり、1ng〜1000μg、好ましくは、1μg〜100μgであればよい。【0039】前記遺伝子導入用組成物の皮膚への塗布面積は、導入対象の核酸若しくは該核酸の誘導体を保持した担体、導入対象の核酸及び該核酸の誘導体からなる群より選ばれた1種の発現による効果を要する部位を含む面積であればよい。【0040】前記遺伝子導入用組成物の皮膚への塗布回数、タイミングなどは、用途に応じて適宜選択されうる。【0041】以下、疾患の治療剤としての利用について、色素性乾皮症への適用について、例示する。前記核酸として、例えば、XPA遺伝子からなる核酸が用いられうる。かかる核酸は、そのまま生体適合性組成物、例えば、ヒアルロン酸と混合してもよい。また、前記核酸を、例えば、慣用のベクター、例えば、pCAGGS、pcDNA3などに連結した後、得られた組換えベクターをHVJ−リポソームに封入して得られたXPA遺伝子含有HVJ−リポソームを、ヒアルロン酸と混合してもよい。さらに、前記組換えベクターをそのままヒアルロン酸と混合してもよい。例えば、遺伝子導入用組成物として、組成:終濃度1重量%のヒアルロン酸、XPA遺伝子(核酸量として50μg)含有HVJ−リポソームの組成物が用いられうる。前記遺伝子導入用組成物を、前記核酸が生体内に導入され、発現するに十分な時間、例えば、外出により日光を浴びる24時間前などに皮膚全体に投与する。これにより、DNA修復能の回復、表皮の傷害の抑制、サンバーン細胞の形成の抑制が期待されうる。【0042】【実施例】以下、本発明を実施例などにより、説明するが、本発明はかかる実施例に限定されるものではない。【0043】実施例1 遺伝子導入用組成物の調製(1) XPA遺伝子導入用HVJ−リポソームの調製サイトメガロウイルスのエンハンサーとβ−アクチンのプロモーターとを有するpCAGGS〔田中亀代次博士(大阪大学細胞生体工学センター)より供与された〕に、ヒトXPA遺伝子(ジーンバンクアクセッション番号:D14533;田中亀代次博士より供与)を組込み、pCAGGS−XPAを構築した。また、pcDNA3(InVitrogen社製)のEcoRI認識部位に、前記ヒトXPA遺伝子を組み込み、タグとして、ヘマグルチニンのエピトープをコードするDNAを付加して、pcHA−XPAを構築した。得られたpCAGGS−XPA及びpcHA−XPAのそれぞれをHVJ−リポソームに封入した。これにより、XPA遺伝子導入用HVJ−リポソームを得た。ここで、各XPA遺伝子導入用HVJ−リポソームにおけるDNA量は、50μg/匹とした。【0044】(2)ヒアルロン酸ナトリウム溶液の調製ヒアルロン酸ナトリウムを、ダルベッコPBS(−)溶液100mlに5重量%濃度となるように膨潤させることにより、5重量% ヒアルロン酸ナトリウム溶液(pH7.4)を得た。なお、前記ダルベッコPBS(−)溶液は、例えば、和光純薬工業株式会社製のダルベッコPBS(−)粉末9.6gを蒸留水に溶解させて容量を1リットルに調整し、得られた溶液を121℃で15分間高圧蒸気滅菌することにより得た。【0045】(3)遺伝子導入用組成物の調製前記(1)で得られたXPA遺伝子導入用HVJ−リポソーム 300μlと前記(2)で得られた5重量% ヒアルロン酸ナトリウム溶液 75μlとを混合して遺伝子導入用組成物を得た。なお、前記遺伝子導入用組成物におけるヒアルロン酸の濃度は、1重量%である。【0046】なお、前記遺伝子導入用組成物〔1重量%ヒアルロン酸ナトリウム/ダルベッコPBS(−)溶液/XPA遺伝子導入用HVJ−リポソーム〕の粘度は、粘度計〔ブルックフィールド エンジニアリング ラボラトリー(Brookfield Engineering Laboratories)社製、モデル名:RV DV−III〕を用い、測定温度20℃、回転数2.5rpm、トルク5.1%、スピンドルCP52の条件下での測定により、2.005Pa・sであった。【0047】比較例1 注射用組成物の調製前記実施例1における(1)で得られたXPA遺伝子導入用HVJ−リポソームを、最終DNA濃度が、50μg DNA/125μl、50μg DNA/50〜60μl、100μg DNA/80〜90μlとなるように各々に懸濁し、注射用組成物を得た。【0048】試験例1 XPAマウスへのXPA遺伝子の導入による効果(1)遺伝子導入用組成物の皮膚塗布群前記実施例1で得られた遺伝子導入用組成物を、DNA量として、50μg/マウス(量375μl:ヒアルロン酸ナトリウム 75μl+リポソーム溶液 300μl)となるように、XPAモデルマウスの背部(約4.5cm2 )に塗布した。24時間後又は48時間後、Nembutalを用いて腹腔内注射で麻酔し、XPAモデルマウスの背部に、TOSHIBA fluorescentSunlamp FL20SEを用いて、UVB(ピーク波長305nm、280−360nm)を4kJ/m2 照射した。なお、紫外線量は、UVR−305/365D紫外線線量計で測定した。対照として、XPA遺伝子導入用HVJ−リポソームの代わりに、XPA遺伝子をコードする核酸を含有しないpCAGGS又はpcDNA3を封入したHVJ−リポソームを用いた対照遺伝子導入用組成物を塗布して、以下、同様の操作を行なった。【0049】(2)注射用組成物の投与群前記比較例1で得られた注射用組成物を、ツベルクリン反応用シリンジで、XPAモデルマウスの背部に数カ所皮下注射若しくは皮内注射した。投与量は、50μg/マウス(125μl/マウス)、50μg/マウス(50〜60μl/マウス)、100μg/マウス(80〜90μl/マウス)の3種とした。24時間後又は48時間後、Nembutalを用いて腹腔内注射で麻酔し、XPAモデルマウスの背部に、前記Toshiba fluorescent Sunlamp FL20SEを用いて、UVBを4kJ/m2 照射した。なお、対照として、XPA遺伝子導入用HVJ−リポソームの代わりに、XPA遺伝子をコードする核酸を含有しないpCAGGS又はpcDNA3を封入したHVJ−リポソームを用いた対照注射用組成物をXPAモデルマウスの背部に数カ所皮下注射若しくは皮内注射して、以下、同様の操作を行なった。【0050】(3)不定期DNA合成の検出前記(1)又は(2)のマウスにおけるUVB照射部位を舌鉗子ではさみ、メチル3 H−dThd(100μCi/ml)含有生理的食塩水溶液0.5mlを、該照射部位に皮下注射した。マウスを35℃60分間インキュベータに入れた後、舌鉗子をはずした。さらに、3時間経過後、マウスを屠殺した。【0051】UVB照射部の皮膚(4.5cm2 )を切除し、切除された皮膚を10% 中性ホルマリン溶液で一晩固定した。固定後の皮膚をパラフィン包埋し、パラフィン包埋試料を4〜5μmの厚さに薄切し、得られた試料を脱パラフィン処理し、5% 冷却TCAで洗浄した。ついで、得られた試料を、銀粒子を含むエマルジョン(写真乳剤)に浸漬し、暗室中4℃で保存した。【0052】1週間後、前記試料について、現像、定着、水洗を行ない、ギムザ染色した。染色後の試料について、顕微鏡下、細胞上の黒化粒子数を数えた。【0053】その結果、前記(1)のマウスにおいて、表皮細胞でのUDSを測定したところ、対照遺伝子導入用組成物の皮膚塗布群では、ほとんどの細胞の黒化粒子数(グレイン数)は0であったのに対し、遺伝子導入用組成物の皮膚塗布群では、皮膚全体にわたって、核当たりのグレイン数が10〜20の細胞が多く見られ、修復能が回復していることがわかった。すなわち、驚くべきことに、導入対象の核酸が、皮膚から細胞に導入されていることが示された。また、皮膚全体にわたって、導入対象の核酸中の遺伝子が発現することがわかった。【0054】一方、前記(2)のマウスにおいては、表皮細胞でのUDSを測定したところ、対照注射用組成物投与群では、ほとんどの細胞の黒化粒子数(グレイン数)は0であったのに対し、注射用組成物投与群は、核当たりのグレイン数が10〜20の細胞が多く見られ、修復能が回復していることがわかった。しかしながら、前記(2)の注射組成物投与群においては、前記修復能の回復は、注射部位周辺に局所的に見られるのみであった。【0055】(4)UVB照射部の形態学的変化前記(1)又は(2)のそれぞれマウスにおける皮膚を切除し、各皮膚片を得た。【0056】得られた各皮膚片を10% 中性ホルマリン溶液で固定した。得られた試料をヘマトキシリン・エオシン(HE)染色し、HE染色標本を得た。前記HE染色標本について、形態を観察し、核濃縮、表皮壊死を起こしたサンバーン細胞について、前記(1)及び(2)のマウス間における差異を求めた。なお、前記サンバーン細胞の観察は、切片中の全表皮細胞数におけるサンバーン細胞数の比を指標とした。また、pcHA−XPAを導入した前記(1)及び(2)のそれぞれのマウスの皮膚片を凍結し、HA−tagを染色し、染色強度により、導入された遺伝子の局在を観察した。【0057】その結果、HE染色標本の観察結果より、UV照射24時間後、HE染色標本で表皮の傷害、サンバーン細胞の形成がおさえられていることが明らかになった。【0058】実施例2 遺伝子導入用組成物の調製(1)導入用核酸の調製サイトメガロウイルスのエンハンサーとβ−アクチンのプロモーターとを有するpCAGGS(田中亀代次博士より供与された)に、ヒトXPA遺伝子(ジーンバンクアクセッション番号:D14533;田中亀代次博士より供与)を組込み、pCAGGS−XPAを構築する。また、pcDNA3(InVitrogen社製)のEcoRI認識部位に、前記ヒトXPA遺伝子を組み込み、タグとして、ヘマグルチニンのエピトープをコードするDNAを付加して、pcHA−XPAを構築する。【0059】(2)ヒアルロン酸ナトリウム溶液の調製前記実施例1の(2)と同様にして、ヒアルロン酸ナトリウムを、ダルベッコPBS(−)溶液100mlに5重量%濃度となるように膨潤させることにより、粘度2.005Pa・s(前記実施例1において用いた粘度計を用い、同じ条件下で測定)の5重量% ヒアルロン酸ナトリウム溶液(pH7.4)を得る。なお、前記ダルベッコPBS(−)溶液は、例えば、和光純薬工業株式会社製のダルベッコPBS(−)粉末9.6gを蒸留水に溶解させて容量を1リットルに調整し、得られた溶液を121℃で15分間高圧蒸気滅菌することにより得る。【0060】(3)遺伝子導入用組成物の調製前記(1)で得られた導入用核酸 300μl(50μg DNA)と前記(2)で得られた5重量% ヒアルロン酸ナトリウム溶液 75μlとを混合して遺伝子導入用組成物を得る。なお、前記遺伝子導入用組成物におけるヒアルロン酸の濃度は、1重量%である。【0061】試験例2 XPAマウスへのXPA遺伝子の導入による効果(1)遺伝子導入用組成物の皮膚塗布群前記実施例2で得られた遺伝子導入用組成物を、前記試験例1の(1)と同様に、XPAモデルマウスの背部に塗布し、該背部にUVBを4kJ/m2 照射する。対照として、遺伝子導入用組成物の代わりに、XPA遺伝子をコードする核酸を含有しないpCAGGS又はpcDNA3を用いた対照遺伝子導入用組成物を塗布して、以下、同様の操作を行なう。【0062】(2)不定期DNA合成の検出試験例1の(3)と同様にマウスにおけるUVB照射部位について表皮細胞でのUDSを測定し、DNA修復能の回復により評価する。【0063】(3)UVB照射部の形態学的変化前記(1)のマウスにおける皮膚を切除し、各皮膚片を得、該皮膚片よりHE染色標本を得る。前記試験例1の(4)と同様に、HE染色標本について、形態を観察し、表皮の傷害の形成、サンバーン細胞の形成の抑制を評価する。【0064】【発明の効果】本発明の対象物質導入用組成物によれば、皮膚疾患などの広範囲にわたり発症する疾患などの治療、症状改善、疾患の機構の研究に際し、効率よく、対象物質を導入することができるという優れた効果を奏する。また、本発明の広範囲の遺伝子導入方法によれば、広範囲の導入対象部位に対して、簡便に、効率よく遺伝子を導入することができるという優れた効果を奏する。 a)導入対象の核酸若しくは該核酸の誘導体を保持したHVJ−リポソームからなる対象物質と、b)増粘剤、ゲル化剤及びゲルからなる群より選ばれた少なくとも1種を含有し、かつ該対象物質を皮膚上に保持しうる貯留性を有する生体適合性組成物とを含有してなる、皮膚及び/又は粘膜塗布用対象物質導入用組成物であって、増粘剤、ゲル化剤及びゲルからなる群より選ばれた少なくとも1種がヒアルロン酸又はその塩であり、生体適合性組成物が少なくとも0.5Pa・sの粘度を有するゲル状組成物である、皮膚及び/又は粘膜塗布用対象物質導入用組成物。 生体適合性組成物が、pH6〜9.0である、請求項1記載の皮膚及び/又は粘膜塗布用対象物質導入用組成物。 核酸若しくは該核酸の誘導体が、DNA、RNA、ペプチド核酸及びヌクレオチドアナログ含有核酸からなる群より選ばれた1種である、請求項1又は2記載の皮膚及び/又は粘膜塗布用対象物質導入用組成物。 請求項3記載の皮膚及び/又は粘膜塗布用対象物質導入用組成物をヒトを除く動物の皮膚及び/又は粘膜に塗布し、それにより、導入対象の遺伝子を含有した核酸若しくは該核酸の誘導体を細胞に導入することを特徴とする、遺伝子導入方法。