タイトル: | 特許公報(B2)_エラグ酸分散物及び外用剤組成物 |
出願番号: | 2001269568 |
年次: | 2012 |
IPC分類: | A61K 8/49,A61K 8/24,A61K 8/72,A61Q 19/02,A61K 31/366,A61K 47/24,A61K 47/30,A61P 17/00 |
中本 理和子 安江 良司 JP 5010077 特許公報(B2) 20120608 2001269568 20010905 エラグ酸分散物及び外用剤組成物 ライオン株式会社 000006769 廣田 浩一 100107515 流 良広 100107733 中本 理和子 安江 良司 20120829 A61K 8/49 20060101AFI20120809BHJP A61K 8/24 20060101ALI20120809BHJP A61K 8/72 20060101ALI20120809BHJP A61Q 19/02 20060101ALI20120809BHJP A61K 31/366 20060101ALN20120809BHJP A61K 47/24 20060101ALN20120809BHJP A61K 47/30 20060101ALN20120809BHJP A61P 17/00 20060101ALN20120809BHJP JPA61K8/49A61K8/24A61K8/72A61Q19/02A61K31/366A61K47/24A61K47/30A61P17/00 A61K 31/366 A61K 8/00- 8/99 A61K 9/00- 9/72 A61K 47/00-47/48 CA/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) 特開昭64−010985(JP,A) 特開平10−029913(JP,A) 特開平10−081618(JP,A) 特開2001−170465(JP,A) 4 2003081826 20030319 19 20080905 高橋 樹理 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、難分散性のエラグ酸化合物の微粒子を高濃度で長期間安定に含有するエラグ酸分散物、及び該エラグ酸分散物を含有し、経皮吸収性に優れ、美白作用等を示し、化粧料、医薬品、医薬部外品等に好適な外用剤組成物に関する。【0002】【従来の技術】エラグ酸は、一般に化粧品や医薬部外品等の皮膚外用剤に配合され、特開平10−81618号公報に記載されているように、微粒化して平均粒子径を50μm以下にすると、優れた経皮吸収性を発揮することが知られている。このエラグ酸は、通常、原料時には凝集塊を形成しているため、実装置で微粒子化することが困難である。また、たとえ一旦微粒子化して分散させたとしても、長期保存後には、50μm以上の粗大粒子に成長したり凝集したりし、エラグ酸の有する本来の効果が十分発揮されないという問題があった。このため、エラグ酸を組成物中で安定に微粒子化して分散させる技術が望まれていた。そこで、前記問題を改善する目的で、例えば、特開2001−170465号公報には、高速剪断型分散機で処理して粗分散液を調製した後、高圧ホモジナイザーで処理してエラグ酸微粒子を安定に分散させる方法が提案されている。しかしながら、この方法の場合でも、長期保存後においてはエラグ酸の沈降分離が生じ、所望の結果が得られないという問題があった。【0003】【発明が解決しようとする課題】本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、難分散性のエラグ酸化合物の微粒子を高濃度で長期間安定に含有するエラグ酸分散物、及び該エラグ酸分散物を含有し、経皮吸収性に優れ、美白作用等を示し、化粧料、医薬品、医薬部外品等に好適な外用剤組成物を提供することを目的とする。【0004】【課題を解決するための手段】前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、<1> エラグ酸化合物と結晶成長抑制剤と水溶性高分子とを含有することを特徴とするエラグ酸分散物である。<2> 前記<1>に記載のエラグ酸分散物を含有することを特徴とする外用剤組成物である。【0005】本発明においては、更に以下の手段も好ましい。<3> 水溶性高分子を0.001〜20質量%含有する前記<1>に記載のエラグ酸分散物である。<4> 結晶成長抑制剤をエラグ酸の質量に対し0.1〜20質量%含有する前記<1>又は<3>に記載のエラグ酸分散物である。<5> 結晶成長抑制剤が、リン酸類及びリン酸塩類から選択される少なくとも1種である前記<1>及び<3>から<4>のいずれかに記載のエラグ酸分散物である。<6> エラグ酸化合物を0.5〜60質量%含有する前記<1>及び<3>から<5>のいずれかに記載のエラグ酸分散物である。<7> 平均粒径が50μm以下であるエラグ酸化合物の微粒子を含有する前記<1>及び<3>から<6>のいずれかに記載のエラグ酸分散物である。<8> エラグ酸化合物を結晶成長抑制剤の存在下で分散させ、微粒子化した後で水溶性高分子を添加してなる前記<1>及び<3>から<7>のいずれかに記載のエラグ酸分散物である。<9> エラグ酸化合物を結晶成長抑制剤の存在下で高速せん断型分散機を用いて分散させ、微粒子化した後で水溶性高分子を添加することを特徴とするエラグ酸分散物の製造方法である。<10> エラグ酸化合物をpH12〜14のアルカリ金属水酸化物水溶液に溶解させた後、撹拌しながら酸でpH2〜8にすることを特徴とするエラグ酸分散物の製造方法である。<11> 美白化粧料として用いられる前記<2>に記載の外用剤組成物である。【0006】本発明のエラグ酸分散物においては、エラグ酸化合物と結晶成長抑制剤と水溶性高分子とを含有することによって、保存中にエラグ酸化合物の微粒子が凝集したり結晶成長したりすることが抑えられ、高濃度のエラグ酸化合物の微粒子が長期間安定な状態で含有される。また、該エラグ酸分散物は、再分散性が良好であるため、化粧料、医薬品、医薬部外品等として用いた場合、バランス水の制限が緩和される。本発明の外用剤組成物は、化粧料、医薬品、医薬部外品等として好適に用いられ、微粒子のエラグ酸化合物を含有するので、経皮吸収性に優れ、美白効果を示す。【0007】【発明の実施の形態】(エラグ酸分散物)本発明のエラグ酸分散物は、エラグ酸化合物と結晶成長抑制剤と水溶性高分子とを含有してなり、更に分散溶媒、その他の成分等を含有してなる。【0008】−エラグ酸化合物−前記エラグ酸化合物としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、特開平10−81618号公報に記載のエラグ酸又はそのアルカリ金属塩などが好適に挙げられるが、エラグ酸が好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。【0009】前記エラグ酸化合物は、例えば、以下のようにして容易に得られる。即ち、特公昭53−14605号公報に記載のように、イチゴ、タラ(Caesalupinia Spinosa)、ユーカリ材(Eucalyptus)、リンゴ、毒ウツギ(コリアリア ヤポニカ)、ラジアタ松、クマコケモモ、ザクロ、アンマロク、ウキュウヨウ、エンフヨウ、ガイジチャ、カコウジュヨウ、カシ、キジュ、ケンジン、コウナカ、サンウキュウコン、サンウキュウヨウ、シュウフウボク、センクツサイ、ソウゲンロウカンソウ、ダイヒヨウソウ、ドウモウアンヨウ、ハオウべン、バンセキリュウカン、バンセキリュウヒ、ボウカ、モッショクシ、ヤトウセイカ、ヤトウセイヒ、ユカンコン、ユカンボクヒ、ユカンヨウ、リュウガソウコン、バンセキリュウヨウ、ウキュウボクコンピ、シドコン、チンシュソウ、ゲンノショウコなどの、エラグ酸化合物を含有する天然物の乾燥粉砕品を、通常の酸性亜硫酸塩法によって蒸解後、水酸化ナトリウムや炭酸ナトリウム等のアルカリ水溶液(pH10〜13)に浸漬し、浸漬液を分取後、該浸漬液に、硫酸や酢酸等の酸を加えてpHを2〜8に調整し、エラグ酸化合物を主成分とする沈殿物を得た後、該沈殿物を遠心分離等によって補集し、水洗して不純物を除くことにより、純度の高いエラグ酸化合物が得られる。【0010】前記エラグ酸化合物の微粒子の前記エラグ酸分散物における含有量としては、例えば、0.5〜60質量%が好ましく、10〜50質量%がより好ましい。前記エラグ酸化合物の微粒子の前記エラグ酸分散物における含有量が、0.5質量%未満であると、該エラグ酸分散物を薬用製品等に配合等した時に該エラグ酸化合物の薬効等が発揮され難くなることがあり、60質量%を超えると、該エラグ酸分散物の粘度が高くなり流動性を失なう等、取扱いが困難になることがある。一方、前記好ましい数値範囲内にあるとそのようなことがなく、前記より好ましい数値範囲内にあると、配合調製時のバランス水の自由度が高く、輸送コスト等の点で有利である。【0011】前記エラグ酸化合物の微粒子の平均粒径としては、50μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましい。前記エラグ酸化合物の微粒子の平均粒径が、50μm以下であると、該エラグ酸分散物を外用剤組成物として用いた場合、該エラグ酸化合物の微粒子の表面積が増大し、溶解度、溶解速度が増大し、皮膚との接触面積が増大し、皮膚との浸透速度と単位時間当たりの浸透量とが増大し、経皮吸収性が増大し、皮膚外用組成物の長期安定性が向上する点で有利である。【0012】前記エラグ酸化合物の微粒子の粒径が70μm以下のものの前記エラグ酸分散物における含有量が、70質量%以上であるのが好ましく、80質量%以上であるのがより好ましい。前記エラグ酸化合物の微粒子の粒径が70μm以下のものの前記エラグ酸分散物における含有量が70質量%以上であると、該エラグ酸分散物を外用剤組成物として用いた場合、該エラグ酸化合物の微粒子の表面積が増大し、溶解度、溶解速度が増大し、皮膚との接触面積が増大し、皮膚との浸透速度と単位時間当たりの浸透量とが増大し、経皮吸収性が増大し、皮膚外用組成物の長期安定性が向上する点で有利である。【0013】−結晶成長抑制剤−前記結晶成長抑制剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、リン酸類、リン酸塩類などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。【0014】前記リン酸類としては、例えば、リン酸、メタリン酸、ピロリン酸、トリポリリン酸、テトラポリリン酸、ヘキサメタリン酸などが挙げられる。【0015】前記リン酸塩類としては、例えば、リン酸ナトリウム塩類、リン酸カリウム塩類、リン酸アンモニウム塩類、リン酸カルシウム塩類などが挙げられる。【0016】前記リン酸ナトリウム塩類としては、例えば、第一リン酸ナトリウム(無水)、第一リン酸ナトリウム(結晶)、第二リン酸ナトリウム(無水)、第二リン酸ナトリウム(結晶)、第三リン酸ナトリウム(無水)、第三リン酸ナトリウム(結晶)、ピロリン酸ナトリウム(無水)、ピロリン酸ナトリウム(結晶)、酸性ピロリン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、テトラポリリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、酸性ヘキサメタリン酸ナトリウム、などが挙げられる。前記リン酸カリウム塩類としては、例えば、第一リン酸カリウム、第二リン酸カリウム、第三リン酸カリウム、ピロリン酸カリウム 、ポリリン酸カリウム、メタリン酸カリウム、などが挙げられる。前記リン酸アンモニウム塩類としては、例えば、第一リン酸アンモニウム、第二リン酸アンモニウム、などが挙げられる。前記リン酸カルシウム塩類としては、例えば、第一リン酸カルシウム、第二リン酸カルシウム、第三リン酸カルシウム、などが挙げられる。【0017】これらの中でも、エラグ酸に吸着し易く凝集や結晶成長を抑制する効果が高い等の理由により、第一リン酸ナトリウム、第二リン酸ナトリウム、第三リン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム等のリン酸アルカリ金属塩などが好ましい。【0018】前記結晶成長抑制剤の前記エラグ酸分散物における含有量としては、前記エラグ酸化合物の質量に対し、0.1〜20質量%が好ましく、0.5〜10質量%がより好ましい。即ち、換言すれば、前記エラグ酸化合物100質量部に対し、0.1〜20質量部が好ましく、0.5〜10質量部がより好ましい。前記結晶成長抑制剤の前記エラグ酸分散物における含有量が、0.1質量%未満であると、結晶成長抑制剤としての効果が得られないことがあり、20質量%を超えてもそれに見合う効果が得られないことがあり、一方、前記好ましい数値範囲内にあると、分散性、粘度、安定性等の良好なエラグ酸分散物が得られる。【0019】前記結晶成長抑制剤の前記エラグ酸分散物における最適な含有量は、該エラグ酸化合物の微粒子の製法、該結晶成長抑制剤の種類等によっても異なり一概に規定することはできないが、一般に前記エラグ酸化合物の微粒子の比表面積が大きいほど多くなる。【0020】−水溶性高分子−前記水溶性高分子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、寒天、カラギーナン、ファーセレラン、タマリンド種子多糖類、ペクチン、スクレログルカン、カードラン、ゼラチン、アルブミン、ガラクタン、クインスシード、アラビアガム、トラガカント、マンナン、デンプン、脱アシル型ジェランガム、ネイティブジェランガム、キサンタンガム、改質キサンタンガム、ウェランガム、グアーガム、カチオン化グアガム、ローストビーンガム、ヒアルロン酸ナトリウム、デキストリン、サクシノグルカン、プルランデキストラン、コラーゲン、ケラチン、カゼイン、コンドロイチン硫酸、キチン、カルボキシメチルキチン、カチオン化セルロース、カルボキシビニルポリマー、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルトリメチルアンニウムクロリドエーテル、デキストラン硫酸、可溶性デンプン、カルボキシメチルデンプン、アルギン酸塩、アルギン酸プロピレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸塩、ポリビニルメチルエーテル、ポリエチレングリコール、メチルデンプン、カチオン化デンプン、アルキル付加カルボキシビニルポリマー、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、脱アシル型ジェランガム、ネイティブ型ジェランガム、カラギーナン、キサンタンガム、改質キサンタンガム、カチオン化セルロース、アルギン酸塩、カルボキシビニルポリマー、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体、ポリアクリル酸塩、アルキル付加カルボキシビニルポリマーが好ましい。【0021】前記水溶性高分子の前記エラグ酸分散物における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、0.001〜20質量%が好ましく、0.01〜10質量%がより好ましい。前記水溶性高分子の前記エラグ酸分散物における含有量が、0.001質量%未満であると、良好な分散安定性が得られなくなることがあり、20質量%を超えると、高粘度になりすぎて取扱いが困難になることがある。【0022】−分散溶媒−前記分散溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水、アルコール、多価アルコール、これらの混合物、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。【0023】−その他の成分−前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、油類(油脂、脂肪酸、炭化水素、エステル等)、界面活性剤、高分子、防腐剤、抗菌剤、pH調整剤、などが挙げられる。これらは、1種単独でしてもよいし、2種以上を併用してもよい。【0024】−エラグ酸分散物の製造方法−本発明のエラグ酸分散物は、種々の方法によって製造することができるが、例えば、前記エラグ酸化合物と、前記結晶成長抑制剤と、前記分散溶媒と、前記水溶性高分子と、前記その他の成分とを混合すること等により製造することができ、前記エラグ酸化合物と前記結晶成長抑制剤とを混合して該エラグ酸化合物を微粒子化させた後、前記水溶性高分子と、必要に応じて選択した前記その他の成分を更に添加し冷却混合することにより好適に製造することができる。【0025】前記微粒子化の方法としては、先ず前記分散溶媒に前記結晶成長抑制剤を溶解し、次いで前記エラグ酸化合物を投入し微粒子分散させる湿式方法、予め前記結晶成長抑制剤と前記エラグ酸化合物とを乾式混合させる乾式方法、あるいは、前記エラグ酸化合物をpH12〜14のアルカリ金属水酸化物の特定濃度の水溶液に溶解させた後、酸(無機酸又は有機酸のいずれでもよいが、処理後の関係で硫酸が好ましい)でpHを2〜8に調整する晶析方法、などが挙げられる。【0026】前記微粒子化の具体的な方法としては、例えば、微粒子化機の種類、微粒子化メディアの選定、最適微粒子化条件の設定等に応じて適宜選択することができるが、例えば、前記結晶成長抑制剤を前記分散溶媒(例えば、水(水溶液)又は常温で液体の溶媒(特定の溶質を含んでもよい))に溶解させた溶液中に前記エラグ酸化合物を分散させ、微粒子化機等を用いて一定時間微粒子化処理を行う方法などが好適に挙げられる。【0027】前記微粒子化機としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、一般に使用される微粒化粉砕、晶析等の際に用いられる装置が挙げられるが、前記乾式方法の場合には、例えば、ボールミル、ジェットミル等の粉砕機などが好適に挙げられ、前記湿式方法の場合には、例えば、超音波粉砕機、ホモミキサー、コロイドミル、クレアミックス(エム・テクニック株式会社製)、マイルダー(荏原製作所製)等の高速剪断装置などが好適に挙げられ、これらの中でも特にクレアミックス(エム・テクニック株式会社製)が好適に挙げられ、前記晶析方法の場合には、例えば、公知の攪拌機付混合槽などが好適に挙げられる。【0028】前記微粒子化機による処理の条件(時間等)としては、処理量、前記エラグ酸化合物の濃度・粒径、該微粒子化機の種類等により異なり、一概に規定することはできず適宜選択すればよいが、該条件を適宜選択することにより、所望の粒径のエラグ酸化合物の微粒子の分散液を調製することができる。【0029】該処理の条件の具体例としては、前記高速剪断装置を用いる場合には該高速剪断装置における羽根先端速度が5m/s以上であるのが好ましく、10〜35m/sであるのがより好ましい。また、例えば、2.5重量%のエラグ酸分散物において、前記エラグ酸化合物の微粒子の平均粒子径が50μm以下であり、かつ該微粒子の粒子径が70μm以下のものが70重量%以上であるようにするためには、コロイドミルで1〜5分間処理をするのが好ましく、前記エラグ酸化合物の微粒子の平均粒子径が10μmであり、かつ該微粒子の粒子径が30μm以下のものが70重量%以上であるようにするためには、超音波発振で5〜10分間処理するのが好ましく、前記エラグ酸化合物の微粒子の平均粒子径が1μmであり、かつ該微粒子の粒子径が3μm以下のものが70重量%以上であるようにするためには、クレアミックスにて20〜30分間処理するのが好ましい。【0030】なお、前記微粒子化機による処理の際、分散液には大きなエネルギーが加えられるため、該分散液の温度が上昇するので、必要に応じて該分散液を冷却してもよい。【0031】また、前記水溶性高分子や前記その他の成分を混合するタイミングとしては、特に制限はないが、前記エラグ酸化合物の微粒化効率の観点からは、前記エラグ酸化合物を微粒子化させた後の分散液に該水溶性高分子や前記その他の成分を混合するのが好ましい。【0032】前記冷却混合の際における剪断力としては、通常の均一冷却を目的とした弱い剪断力ではなく強い剪断力が好ましく、具体的には4m/s以上が好ましく、6m/s以上がより好ましく、8m/s以上が特に好ましい。前記冷却混合の際における剪断力が、4m/s未満であると、得られるエラグ酸分散液が離水する現象が観られることがあり、一方、あまり大きすぎてもそれに見合う効果が得られない。【0033】前記剪断力を加える方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ホモミキサー、ディスパー翼、パドル翼などを用いた方法が挙げられる。【0034】前記冷却混合の際における冷却速度としては、0.05℃/min以上が好ましく、0.1℃/min以上がより好ましい。前記冷却速度が、0.05℃/min未満であると、冷却に時間がかかりすぎて生産効率が悪くなることがある。該冷却速度の上限値については特に制限はなく、冷却速度が大きくても剪断力を加えながらの冷却であれば得られるエラグ酸分散物の品質に影響はない。【0035】以上のようにして得られた本発明のエラグ酸分散物は、エラグ酸化合物の微粒子を高濃度に含有し、かつ長期間にわたって優れた分散安定性を示すので、添加量の範囲を拡大し易い点で有利であり、化粧料、医薬品、医薬部外品等の分野をはじめとする各種分野において好適に使用することができ、特に本発明の外用剤組成物に好適に使用することができる。【0036】(外用剤組成物)本発明の外用剤組成物は、本発明のエラグ酸分散物を含有していること以外には特に制限はなく、本発明のエラグ酸分散物をそのまま外用剤組成物として使用してもよいし、更に、目的や用途に応じて適宜選択したその他の成分を含有していてもよく、例えば、美白化粧料として利用する場合には、本発明のエラグ酸分散物と、油性成分、保湿剤、界面活性剤、顔料、香料、防腐剤、水、アルコ−ル類、増粘剤等とを配合してなり、ロ−ション状、クリ−ム状、ペ−スト状、スティック状、乳液状などの各種の形態とすることができる。【0037】本発明の外用剤組成物は、化粧料、医薬品、医薬部外品等として好適に用いられ、微粒子のエラグ酸化合物を含有するので、該エラグ酸化合物の微粒子の表面積、溶解度、溶解速度、皮膚との接触面積、皮膚との浸透速度、単位時間当たりの皮膚への浸透量等が大きく、その結果、経皮吸収性に優れ、該エラグ酸化合物の薬効である美白効果が効果的に発揮される。【0038】【実施例】以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれら実施例によって何ら限定されるものではない。【0039】(調製例1)前記高速剪断装置としてクレアミックス(エム・テクニック(株)製、CLM−0.8S型)を用いて、温度25℃、回転速度20,000rpmの条件で、精製水と、前記エラグ酸化合物としてのエラグ酸と、前記結晶成長抑制剤としてのリン酸第一水素ナトリウムとを、該エラグ酸の濃度が20質量%となるように、かつ該リン酸第一水素ナトリウムの濃度が0.6質量%(該エラグ酸に対して3質量%)となるようにして、15分間分散させることにより、エラグ酸の微粒子分散液を調製した。次に、前記水溶性高分子として、ネイティブ型ジェランガム((株)三晶製、ケルコゲルLT−100)及びウルトラキサンタンガム((株)日清製油製、ノムコートZ)の70℃混合溶液を用い、この混合溶液と、前記エラグ酸の微粒子分酸液とを、ホモミキサー(特殊機化工業(株)製)を用いて7,000rpmの条件で15分間混合し、冷却することにより、エラグ酸分散物を得た。【0040】得られたエラグ酸分散物におけるエラグ酸の初期粒子径は、粒度分布測定器(大塚電子(株)製、DLS−700)を用いて測定したところ0.7μmであった。得られたエラグ酸分散物は、経皮吸収性に優れており、明らかな美白効果が観られた。また、得られたエラグ酸分散物について、後述の「長期保存後の分散安定性試験」、並びに「長期保存後の凝集及び粒径変化試験」を行ったところ、いずれの試験においておいても、「○」の評価が得られ、長期保存安定性に優れていた。【0041】(調製例2)前記高速剪断装置として乾式粉砕機ジェットミル(カウンタージェットミル、ホソカワミクロン(株)製、100AFG)を用いて、温度25℃、圧力7kg/cm3、処理回数3passの条件で、前記エラグ酸化合物としてのエラグ酸と、前記結晶成長抑制剤としてのトリポリリン酸ナトリウムとを、該エラグ酸の濃度が15質量%となるように、かつ該トリポリリン酸ナトリウムの濃度が1.2質量%(該エラグ酸に対して8質量%)となるようにして、20分間分散させることにより、エラグ酸の微粒子分散液を調製した。次に、前記水溶性高分子として、脱アシル型ジェランガム((株)三晶製、ケルコゲル)、ネイティブ型ジェランガム((株)三晶製、ケルコゲルLT−100)及びウルトラキサンタンガム((株)日清製油製、ノムコートZ)の70℃混合溶液を用い、該混合溶液と、前記エラグ酸の微粒子分酸液とを、ディスパーミキサー(特殊機化工業(株)製、T.Kホモディスパー)を用いて7,000rpm、20分間の条件で混合し、冷却することにより、エラグ酸分散物を得た。【0042】得られたエラグ酸分散物におけるエラグ酸の初期粒子径は、粒度分布測定器(大塚電子(株)製、DLS−700)を用いて測定したところ0.95μmであった。得られたエラグ酸分散物は、経皮吸収性に優れており、明らかな美白効果が観られた。また、得られたエラグ酸分散物について、後述の「長期保存後の分散安定性試験」、並びに「長期保存後の凝集及び粒径変化試験」を行ったところ、いずれの試験においておいても、「○」の評価が得られ、長期保存安定性に優れていた。【0043】(調製例3)前記エラグ酸化合物としてのエラグ酸を精製水に撹拌分散後、これに1Nの水酸化ナトリウム水溶液を添加して該エラグ酸を溶解して溶液を調製した。この溶液をパドルで激しく撹拌しながら、6N硫酸をpHが2になるまでゆっくり滴下した(1ml/min)。そして、生じた沈殿物を遠心分離し、水で更に2回洗浄した後、乾燥し、平均粒径が0.2μmであり、かつ粒子径が1μm以下のものが98質量%であるエラグ酸の微粒子分散液を調製した。次に、前記結晶成長抑制剤としてのピロリン酸ナトリウムと、前記水溶性高分子としてのアクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体(B.F.Goodrich社製、TR−1)との40℃混合溶液と、前記エラグ酸の微粒子分酸液とを、ホモミキサー(特殊機化工業(株)製、T.Kアジホモミクサー)を用いて7,000rpm、15分間の条件で混合し、冷却することにより、エラグ酸分散物を得た。【0044】得られたエラグ酸分散物におけるエラグ酸の初期粒子径は、粒度分布測定器(大塚電子(株)製、DLS−700)を用いて測定したところ0.3μmであった。得られたエラグ酸分散物は、経皮吸収性に優れており、明らかな美白効果が観られた。また、得られたエラグ酸分散物について、以下の「長期保存後の分散安定性試験」、並びに「長期保存後の凝集及び粒径変化試験」を行ったところ、いずれの試験においておいても、「○」の評価が得られ、長期保存安定性に優れていた。【0045】<長期保存後の分散安定性試験>50℃及び室温(25℃)で6カ月もの長期保存後における、エラグ酸の微粒子の分散安定性を以下の基準で評価した。◎:エラグ酸の沈降が全く観られない状態○:エラグ酸の沈降がほんの僅かだけ観られる状態×:エラグ酸の沈降が観られる状態【0046】<長期保存後のエラグ酸の凝集及び粒子径変化試験>50℃及び室温(25℃)で6カ月もの長期保存後における、エラグ酸の微粒子の凝集及び結晶成長による粒径変化を以下の基準で評価した。◎:エラグ酸の微粒子の凝集及び結晶成長による粒径変化が全く観られない状態○:エラグ酸の微粒子の平均粒径が50μm以下の範囲で凝集又は結晶成長している状態×:エラグ酸の微粒子の平均粒径が50μm超にまで凝集又は結晶成長している状態【0047】(実施例29〜35、42、44、及び46、参考例1〜28、36〜41、43、45、及び47、並びに比較例1〜2) 表1〜9に示す組成物を表1〜9に示す条件で微粒子分散の処理を行い、エラグ酸分散物を調製し、前記調製例1〜3と同様の評価を行った。 なお、表1〜9において、「エラグ酸と高分子の混合手段」の欄に、「湿式」と記されている実施例は前記(調製例1)と同様にして、「乾式」と記されている実施例は前記(調製例2)と同様にして、「晶析」と記されている実施例は前記(調製例3)と同様にして、それぞれエラグ酸分散物を調製した。また、「1,3−BG」は、1,3−ブチレングリコールを表し、「PG」は、プロピレングリコールを表し、「DPG」は、ジプロピレングリコールを表し、「PEG300」は、ポリエチレングリコール300を表す。 その結果、得られたエラグ酸分酸体の「室温保存試験」、「凍結復元試験」、及び「高温(50℃)安定性試験」の結果では、いずれの試験においても、エラグ酸の微粒子が凝集、結晶成長、沈降分離等の変化を生ずることなく安定に分散していた。【0048】【表1】【0049】【表2】【0050】【表3】【0051】【表4】【0052】【表5】【0053】【表6】【0054】【表7】【0055】【表8】【0056】【表9】【0057】【発明の効果】本発明によると、従来における前記諸問題を解決し、難分散性のエラグ酸化合物の微粒子を高濃度で長期間安定に含有するエラグ酸分散物、及び該エラグ酸分散物を含有し、経皮吸収性に優れ、美白作用等を示し、化粧料、医薬品、医薬部外品等に好適な外用剤組成物を提供することができる。 12.5質量%〜50質量%のエラグ酸化合物と、リン酸アルカリ金属塩と、0.001質量%〜20質量%の水溶性高分子とを含有し、前記リン酸アルカリ金属塩を前記エラグ酸化合物の質量に対し0.1質量%〜20質量%含有するエラグ酸分散物であって、 前記エラグ酸化合物を前記リン酸アルカリ金属塩の存在下で分散させ、微粒子化した後で前記水溶性高分子を添加してなることを特徴とするエラグ酸分散物。 エラグ酸化合物をリン酸アルカリ金属塩の存在下で高速せん断型分散機を用いて分散させ、微粒子化した後で水溶性高分子を添加するエラグ酸分散物の製造方法であって、 前記エラグ酸分散物に対する前記エラグ酸化合物の添加量が12.5質量%〜50質量%であり、前記リン酸アルカリ金属塩を前記エラグ酸化合物の質量に対し0.1質量%〜20質量%添加し、前記水溶性高分子の添加量が0.001質量%〜20質量%であることを特徴とするエラグ酸分散物の製造方法。 請求項1に記載のエラグ酸分散物を含有することを特徴とする外用剤組成物。 美白化粧料として用いられる請求項3に記載の外用剤組成物。