タイトル: | 特許公報(B2)_排ガス処理触媒 |
出願番号: | 2001262801 |
年次: | 2012 |
IPC分類: | B01J 23/85,B01D 53/86,B01J 23/75,B01J 35/10,C07B 35/06,C07B 37/06,C07D 319/24 |
坪井 秀行 八田 直樹 神田 伸靖 宮本 明 JP 4909473 特許公報(B2) 20120120 2001262801 20010831 排ガス処理触媒 三井造船株式会社 000005902 石井 博樹 100095452 坪井 秀行 八田 直樹 神田 伸靖 宮本 明 20120404 B01J 23/85 20060101AFI20120315BHJP B01D 53/86 20060101ALI20120315BHJP B01J 23/75 20060101ALI20120315BHJP B01J 35/10 20060101ALI20120315BHJP C07B 35/06 20060101ALI20120315BHJP C07B 37/06 20060101ALI20120315BHJP C07D 319/24 20060101ALI20120315BHJP JPB01J23/85 AB01D53/36 GB01J23/74 311AB01J35/10 301FC07B35/06C07B37/06C07D319/24 B01J 21/00 - 38/74 B01D 53/86 C07B 35/06 C07B 37/06 C07D 319/24 特開2000−015106(JP,A) 特開2000−279806(JP,A) 特開2000−126601(JP,A) 特開平08−057255(JP,A) 特開平07−318036(JP,A) 特開昭52−087106(JP,A) 特開2001−062292(JP,A) 特開平10−128065(JP,A) 特開昭51−011065(JP,A) 特開昭51−022699(JP,A) 3 2003071291 20030311 14 20080313 佐藤 哲 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は排ガス処理触媒に関し、さらに詳しくは、例えば都市ごみ焼却炉、産業廃棄物焼却炉、化学プラント、製鉄所などから発生する排ガス中に含まれる人体に有害な有機ハロゲン化合物、例えばダイオキシン類や、ハロベンゼン類、ハロフェノール類などのダイオキシン前駆体等を分解、除去する触媒に関する。ここで、ダイオキシン類とは、ポリハロジベンゾ−パラ−ジオキシンおよびポリハロジベンゾフランおよびコプラナ−ポリハロビフェニルの総称である。【0002】【従来の技術】従来、都市ごみ焼却炉等の排ガスに含有される有機塩素化合物の処理には、活性炭による吸着除去や触媒による分解除去が行われている。また、特許2633316号公報には、酸化チタン担体に五酸化バナジウムと三酸化タングステンを担持させた触媒を用いてポリ塩素化ジベンゾダイオキシンおよび/またはポリ塩素化ジベンゾフランを分解する技術が開示されている。また、有機ハロゲン化合物除去に関する触媒としては、下記のものが知られている。(1)特開平06−063357号公報には、強酸点を有する排ガス有機ハロゲン化合物分解触媒を充填した触媒分解装置と、有機ハロゲン化合物の分解により発生したハロゲン化水素ガスを除去する洗浄塔を有する排ガスの処理装置において、有機ハロゲン化合物分解触媒として、Si,Al,Ti,Zr,B,Nb,Cr,Ga,Mo,W,Y,Cu,Sr,La,Fe,MnおよびPから選ばれる金属の酸化物に、Cu,Fe,Co,Ni,Mn,Pt,Pd,Rh,Au,Ag,Ir,W,Mo,V,Cd,SnおよびPbから選ばれる金属が担持されている触媒を用いる技術が開示されている。【0003】(2)特開平08−173760号公報には、有機ハロゲン化合物を含有する排ガスを酸化、分解して浄化処理する方法において、チタニアおよびジルコニアの2成分からなる複合酸化物の担体に、PdあるいはPtの2種の金属または金属酸化物からなる触媒活性A成分と、Co、Cu及びMnの群から選択される1種以上の金属酸化物からなる触媒活性B成分とを担持してなる触媒を利用する技術が開示されている。【0004】(3)特開平08−238418号公報には、有機ハロゲン化合物を含有するガスを、水またはオゾンの存在する約200〜500℃の温度環境で有機ハロゲン化合物分解触媒と接触させる工程と、前記触媒に接触させて発生したガス種をアルカリ水溶液と接触させて吸収除去する工程と前記アルカリ水溶液を通過したガス流を酸素、オゾンまたは水素の存在する雰囲気で一酸化炭素分解触媒に接触させる工程とを有する有機ハロゲン分解方法において、有機ハロゲン化合物分解触媒がチタニアを主成分とし、さらに酸化コバルト、酸化クロム、酸化マンガンほかのうち少なくとも1種類の成分を触媒全体重量の約10〜約40重量%および硫酸根を同じく約3〜10重量%含有する触媒を使用する技術が開示されている。【0005】(4)特表平10−511602号公報には、ハロゲン化有機化合物、非ハロゲン化有機化合物、一酸化炭素およびこれらの混合物からなる群から選択される化合物を含む気体流を処理するための、少なくとも一つの白金族金属、酸化ジルコニウム、および酸化マンガン、酸化セリウムおよび酸化コバルトからなる群から選択される酸化物を含んでなる、かつ実質的にバナジウムを含まない触媒を利用する技術が開示されている。【0006】(5)特開平10−235191号公報には、有機ハロゲン化合物除去用触媒として、触媒成分としてチタン酸化物を含有し、0.01μm〜0.05μmの範囲に孔径分布のピークを有する細孔群と、0.1μm〜0.8μmの範囲に孔径分布のピークを有する細孔群とを含む細孔を有し、触媒成分として酸化バナジウムおよび/または酸化タングステンを含む有機ハロゲン化合物除去用触媒が開示されている。【0007】【発明が解決しようとする課題】前記(1)特開平06−063357号公報には、処理対象の例として四塩化炭素、クロロホルム、クロロエチレン、1,1,1−トリクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、テトラクロロエチレン、トリクロロエチレン、ジクロロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、1,1,2−トリクロロ−1,2,2−トリフルオロエタン、臭化メチルが挙げられているとおり、炭素数1〜2の脂肪族ハロゲン化炭化水素の処理に対して好適化された技術ではあるものの、炭素数3以上の有機ハロゲン化合物または芳香族を含む有機ハロゲン化合物等の処理技術に関する記載・示唆は一切なされてない。また、同公報に開示されている触媒は、強酸点を有する有機ハロゲン化合物分解触媒を充填した触媒分解装置と有機ハロゲン化合物の分解により発生したハロゲン化水素ガスを除去する洗浄塔を有する排ガスの処理装置において好適化されたものであり、その他のプロセスへの適用に関しては全く考慮されていない。さらに、同公報では、Co、V、Wは金属として担持されることを想定しており、金属酸化物の触媒活性については、何ら言及されていない。【0008】前記(2)特開平08−173760号公報には、有機ハロゲン化合物を含有する排ガスを酸化、分解して浄化処理する方法が開示されているが、その主目的は触媒担体の耐ハロゲン性の改善、即ち触媒の失活対策であり、記載されている触媒系は有機ハロゲン化合物の酸化分解処理に関して最適化されたものではない。特に実施例において処理対象となっている有機ハロゲン化合物は、塩化メチレン、臭化メチルなどの炭素数1〜3の脂肪族ハロゲン化炭化水素であり、炭素数4以上の有機ハロゲン化合物または芳香族を含む有機ハロゲン化合物等の処理技術に関する記載・示唆は一切なされてない。また同公報では、担体はチタニアおよびジルコニアの2成分からなる複合酸化物を用いることを第一の必須用件に挙げており、また触媒成分はPdおよびPtの2種の金属あるいは金属酸化物からなる触媒活性成分を必須とするものである。【0009】前記(3)特開平08−238418号公報においても有機ハロゲン含有ガスの分解処理方法に関する技術が開示されているが、その目的は従来のフロン処理技術で必然的に発生する有害な一酸化炭素成分をフロン分解工程に続く一連の工程の中で連続的に分解し、効率よくフロンを分解処理すると同時に分解生成ガスを無害化する方法を提供するためであり、有機ハロゲン化合物の酸化分解に関して触媒を高性能化した発明ではない。また処理対象である有機ハロゲン化合物は、フロンガス、トリクロロエチレン、臭化メチル等の炭素数1〜2の低級炭化水素のハロゲン化物であり、炭素数3以上の有機ハロゲン化合物または芳香族を含む有機ハロゲン化合物等の処理技術に関する記載・示唆は一切なされてない。さらに処理対象の有機ハロゲン化合物の濃度は、実施例において3〜6%と非常に高濃度条件であり、より低濃度域での触媒性能に関しては全く明示されていない。また、酸化コバルトについては、同公報の請求項中には記載があるものの、発明の詳細な説明や実施例には一切記載されていない。【0010】前記(4)特表平10−511602号公報にはハロゲン化有機化合物、非ハロゲン化有機化合物、一酸化炭素およびこれらの混合物からなる群から選択される化合物を含む気体流を処理するための方法が開示されているが、その目的は、元素状ハロゲン(X2)による触媒被毒対策であり、有機ハロゲン化合物の酸化分解に関して触媒を高性能化した発明ではない。また、処理対象となる有機ハロゲン化合物として、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、フルオロベンゼンなどの単環の芳香族ハロゲン化合物と四塩化炭素などの炭素数1〜4の低級脂肪族炭化水素が挙げられているが、実施例では臭化メチルの分解効率が示されているのみであり、芳香族ハロゲン化合物の分解性能に関する記載・示唆は一切なされていない。また、同公報に記載された触媒組成は、少なくともひとつの白金族金属、および酸化ジルコニウムを必須とするものである。【0011】前記(5)特開平10−235191号公報には、ダイオキシン類などの有機ハロゲン化合物を対象にした発明が記載されているが、ダイオキシン類に対する効果は0.01μm〜0.05μmの細孔のみが存在する場合との比較において若干の優位性が見られるものの、そのほかのさまざまな細孔分布の形態に対する優位性は全く示されていない。したがって、ダイオキシン類等のハロゲン化合物に対して最も有効な触媒の細孔構造はいまだ解明されていないというのが現状である。また、触媒活性成分としてバナジウム酸化物およびタングステン酸化物を含むことが開示されているが、その他の元素種と比較してのバナジウム酸化物およびタングステン酸化物の優位性は全く示されておらず、この点でもダイオキシン類等の有機ハロゲン化合物に対して最も有効な触媒活性成分は未だ明かにされていないといえる。【0012】上述のように、フロン等の低級脂肪族ハロゲン化合物の分解処理などに関してはいくつかの技術が開示されているものの、ダイオキシン類等の芳香族塩素化合物を含む有機ハロゲン化合物の酸化分解処理における高性能で好適な触媒系は、未だ知られていないのが現状である。【0013】本発明の課題は、ごみ焼却炉等から排出される排ガス中の有機ハロゲン化合物、特に塩素化および臭素化ダイオキシン類を分解、除去するために好適な触媒を提供することにある。【0014】【課題を解決するための手段】 上記課題を解決するため、第1の態様の有機ハロゲン化合物を含む排ガスの処理触媒の発明は、酸化チタンおよび/または酸化ケイ素を主成分とする触媒担体に、触媒活性成分として次の(a)、(b)または(c);(a)酸化コバルト、(b)酸化コバルトおよび酸化タングステン、(c)酸化コバルト、酸化バナジウムおよび酸化タングステン、を担持させたことを特徴とする。この特徴によれば、触媒活性成分として酸化コバルトを必須に含む構成としたことにより、排ガス中の有機ハロゲン化合物を効率良く分解することができる。特に、触媒活性成分として酸化コバルト、酸化バナジウムおよび酸化タングステンを含む触媒は、ダイオキシン類等の有機ハロゲン化合物に対して特異的に高い酸化分解性能を有するものである。【0015】 第2の態様の有機ハロゲン化合物を含む排ガスの処理触媒の発明は、第1の態様において、酸化コバルトの含有量が触媒全体の10重量%以上であり、酸化バナジウムを含む場合にはその含有量が触媒全体の15重量%以下であり、酸化タングステンを含む場合にはその含有量が触媒全体の5重量%以上であることを特徴とする。この特徴によれば、酸化コバルトをはじめとする活性成分の含有量を上記範囲とすることによって、有機ハロゲン化合物を効率よく分解できる高活性な触媒となる。【0016】 第3の態様の有機ハロゲン化合物を含む排ガスの処理触媒の発明は、第1の態様または第2の態様において、酸化コバルトが、スピネル構造の酸化コバルトであることを特徴とする。この特徴によれば、酸化コバルトとしてスピネル構造の酸化コバルト(Co3O4)を用いることにより、有機ハロゲン化合物の分解、除去にいっそう適した触媒となる。【0017】 第4の態様の有機ハロゲン化合物を含む排ガスの処理触媒の発明は、第1の態様から第3の態様のいずれか1つにおいて、触媒の細孔径分布が、少なくとも3つのピークを持ち、第1のピークが300〜450nmの範囲、第2のピークが50〜100nmの範囲、第3のピークが30nm以下の範囲にあることを特徴とする。この特徴によれば、触媒の細孔径分布に、上記少なくとも3つのピークを持つようにすることによって、有機ハロゲン化合物、特に有機塩素化合物であるダイオキシン類の分子、またはダイオキシン類生成の前駆体であるハロフェノール、ハロベンゼン等の分子に対して触媒内部での細孔内拡散の抵抗を低減することができ、これにより触媒の有機塩素化合物の分解効率を向上させることができる。【0018】【発明の実施の形態】本発明の処理対象は、都市ごみ焼却炉等から発生する有機ハロゲン化合物含有排ガスであり、特にダイオキシン類や、ハロベンゼン類、ハロフェノール類などのダイオキシン類前駆体などに代表される1環もしくは多環の芳香族有機塩素化合物や芳香族有機臭素化合物等を含有する排ガスである。【0019】触媒は一般に主触媒(触媒活性物質)、助触媒(主触媒の活性、選択性などを高めるもの)、担体から構成される。本発明においては、主に有機ハロゲン化合物を分解する活性点を与える金属酸化物種が主触媒であり、主触媒の活性を高める機能を与える金属酸化物種が助触媒である。ここで担体とは、主触媒の特性(触媒の活性、選択性、寿命、機械強度など)を高める作用を持ち、かつ担体自体は活性を示さないか少なくとも主触媒よりも活性が低い物質であり、かつ助触媒よりも含有量が多い成分である(触媒学会編「触媒講座第5巻、触媒設計」、1985、講談社)。また、主触媒、助触媒、担体は、後述の触媒調製法のいかんによらず、調製された触媒におけるそれぞれの構成化学種の性能、含有量、分布状態などに基づいて区別される。【0020】本発明触媒における必須の触媒活性成分は、酸化コバルトである。酸化コバルトとしては、特にスピネル構造の酸化コバルト(Co3O4)を用いることが好ましい。【0021】本発明において酸化タングステンは、酸化コバルトと、あるいは酸化コバルトおよび酸化タングステンと組み合わせて用いられる。酸化タングステンとしては、例えば、三酸化タングステン(WO3)が好ましい。【0022】本発明において酸化バナジウムは、酸化コバルトおよび酸化タングステンと組み合わせて用いられる。酸化バナジウムとしては、特に五酸化二バナジウム(V2O5)が好ましい。【0023】本発明触媒は、活性成分として酸化コバルトを触媒全体の10重量%以上、好ましくは20重量%以上、さらに好ましくは30重量%以上含むことが望ましい。酸化コバルトの含有量が10重量%未満では、活性成分の担持量が少ないため、充分な触媒性能が得られない場合がある。【0024】また、酸化バナジウムを含む場合には、その含有量が触媒全体の15重量%以下、好ましくは10重量%以下、さらに好ましくは2〜8重量%程度であることが望ましい。酸化バナジウムの含有量が触媒全体の2重量%未満では、充分に酸化バナジウムの性能が発揮されない場合があり、また含有量が15重量%より多くても触媒性能が向上することはない。【0025】酸化タングステンを含む場合には、その含有量が5重量%以上、好ましくは10重量%、さらに好ましくは15重量%以上であることが望ましい。酸化タングステンの含有量が5重量%未満では、充分に酸化タングステンの性能が発揮できない場合がある。【0026】上記触媒活性成分は、酸化チタンおよび/または酸化ケイ素を主成分とする触媒担体に担持される。ここで、担体に触媒活性成分を「担持」させることには、例えば触媒活性成分と担体成分を混合するなど、後述する種々の手法あるいはそれらと類似の手法によって、担持触媒効果を得る手段の全てが含まれる。【0027】本発明触媒においては、ダイオキシン類程度の大きさの分子の細孔内拡散抵抗を低減し触媒性能を向上させるために、触媒の孔径分布が少なくとも3つのピークを有し、第1のピークが300nm〜450nm、好ましくは350nm〜450nm(さらに好ましくは380nm〜420nm)の範囲、第2にピークが50nm〜100nm、好ましくは75nm〜100nm(さらに好ましくは90nm〜100nm)の範囲、および第3のピークが30nm以下、好ましくは20nm以下の範囲を持つようにすることが有利である。【0028】一般的に、触媒性能は比表面積が大きい触媒のほうが活性点数が増えるため有利であり、そのため触媒の細孔構造の観点からはなるべく小さい細孔(本発明の場合には第3のピークに相当する)が多く存在する触媒が有利である。しかしながら、単に小さな細孔のみからなる比表面積が大きい(従って活性点数が多い)触媒を作製しても、触媒外部の気相中の反応分子が触媒外表面から拡散して触媒内部の活性点まで到達しないと触媒性能は向上しない。本発明の第1のピークに相当する大きな径の細孔の存在は、反応分子の拡散を促進するために、すなわち拡散抵抗の低減に非常に有効に作用する。当然のことながら大孔径の細孔の存在比が大きくなれば、触媒の体積当たりの有効利用の観点からも空隙部分が増えるため無駄な空間ができるとともに、結果として比表面積が減少することになり、全体の触媒性能としては不利となる。したがって、中程度の細孔(本発明における第2のピークに相当する細孔)を設けることにより、触媒中の無駄な空隙部分が充填され、必要な比表面積を確保できるとともに、反応分子を大細孔から小細孔へ導く通路としての役割も担うことができるので、触媒性能として非常に有利になり、触媒の高性能化が期待できる。【0029】第1のピークに好適範囲が存在する理由は、第1のピークに相当する細孔が広すぎると反応分子の拡散速度が飽和するとともに触媒全体の比表面積が小さくなるので触媒性能としては不利となり、また第1のピークに相当する細孔が狭すぎると反応分子の拡散が充分でなくなりやはり触媒性能として不利になるためと考えられる。第2のピークは第1のピークと第3のピークの間で比表面積と反応分子の拡散が最もバランスした配置が好適範囲となっていると考えられる。第3のピークの好適範囲は、第3のピークに相当する細孔は触媒の比表面積に最も寄与する細孔なので反応分子が充分侵入できる範囲であれば細孔径は狭い方が比表面積を確保する上で有利であるためと考えられる。【0030】本発明における触媒の比表面積は50m2/g以上、好ましくは75m2/g以上、さらに好ましくは100m2/g以上である。比表面積が50m2/g未満では単位体積当たりの触媒性能が充分に得られなくなる場合がある。【0031】上記のような触媒を用いることにより、有機ハロゲン化合物、特に有機塩素化合物であるダイオキシン類の分子、またはダイオキシン類生成の前駆体であるハロフェノール、ハロベンゼン等の分子に対して触媒内部での細孔内拡散の抵抗を低減することができ、これにより触媒の有機塩素化合物の分解効率を向上させることができる。すなわち、有機ハロゲン化合物分子(反応分子)は触媒外表面近傍の境膜を通過したあと、触媒内部へ拡散する段階でいきなり微細な細孔に入っていくのではなく、大中小の細孔を有する場合には比較的大きな気孔から中間段階の広さの細孔を経て最後に最も小さな細孔にまで順次拡散していくことにより容易に触媒内部まで拡散することができるので、有機ハロゲン化合物分子(反応分子)は触媒内部の表面に存在する活性点に容易に到達することができ、このため触媒内部の活性点が有効に使われ、触媒全体の性能が向上するものと考えられる。【0032】本発明触媒の調製は、例えば、混練法、含浸法、共沈法、ゾル−ゲル法などの手法により行うことが可能である。混練法の場合には、平均粒径が1μm以下の、好ましくは0.1μm以下の、さらに好ましくは0.01μm以下の原料粒子を用い、触媒活性成分の金属酸化物と担体とを成形助剤・バインダー等の各種添加剤とともに混練し、成形・焼成して触媒の調製を行う。また、金属酸化物の替わりに、焼成時に酸化物に変化するような原料物質、例えば金属(または金属酸イオン)の水酸化物、ハロゲン化物、アンモニウム塩、硫酸塩、炭酸塩、酢酸塩、アルコキシド、アセチルアセトナート等の錯化合物などを混入することもできる。【0033】含浸法の場合には、担体として平均分子粒径が1μm以下の、好ましくは0.1μm以下の、さらに好ましくは0.01μm以下の原料粒子かまたはその成形体を用い、触媒活性成分を含浸する。含浸は、焼成時に酸化物に変化するような原料物質、例えばこれらの金属(または金属酸イオン)の水酸化物、ハロゲン化物、アンモニウム塩、硫酸塩、炭酸塩、酢酸塩、アルコキシド、アセチルアセトナート等の錯化合物などの溶液を用いて行う。含浸の順序は、触媒成分をひとつづつ含浸する方法でも、複数の触媒成分を同時に含浸する方法でもよい。より具体的には、酸化チタン等の担体(粉末、粒状、板状、棒状、ハニカム状ほか)に触媒活性成分としてCo等の金属酸化物を担持させる。担体が粉末またはスラリの場合には、Co等の金属(または金属酸イオン)の水酸化物、ハロゲン化物、アンモニウム塩、硫酸塩、酢酸塩、アルコキシド、アセチルアセトナート等の錯化合物などの溶液に混ぜて活性金属成分を含浸させる。担体が成形体の場合には、そのままCo等の金属(または金属酸イオン)の水酸化物、ハロゲン化物、アンモニウム塩、硫酸塩、炭酸塩、酢酸塩、アルコキシド、アセチルアセトナート等の錯化合物などの溶液中に投じて活性成分を含浸させる。含浸の順序は、チタン酸化物に触媒活性成分を1種のみまたは1種づつ複数種を担持する方法、酸化チタンに複数の触媒活性成分を同時に含浸させる方法などがある。【0034】共沈法の場合には、担体成分の水溶液と1種または複数種の触媒成分の水溶液を混合し、沈殿剤を加えて共沈殿を作成し、その後洗浄、成形し、焼成を行う。より具体的には、担体が酸化チタンの場合には、例えば水溶液チタン化合物(例えば硫酸チタニル)と触媒活性成分金属種の水溶性化合物の水溶液をつくり、これをpHが中性付近になるように適当な溶液で調製しながら、また過度に発熱しないように注意しながら沈殿物を得る。この沈殿物を濾過し、洗浄(水洗い)した後、乾燥、焼成して触媒を得る。この方法で一つの触媒活性成分を担持し、のちに別の方法で別の触媒活性成分を担持することもできる。【0035】さらに、触媒成分および/または担体成分を、単独または同時にゾル−ゲル法を利用して調製することもできる。ゾル−ゲル法では、それぞれの成分の金属アルコキシド、またはアセチルアセトナートなどの錯体を所定有機溶媒に所定量溶かしたゾル状溶液に、所定量の酸またはアルカリおよび水を添加してゲル状高分子を形成させ、これを成形後焼成して目的酸化物を調製する。本触媒調製に当たっては、触媒活性成分および/または担体成分をゾル状溶液段階において所定割合で予め混合しておき、これをゲル化成形・焼成する方法や、触媒成分のゾル状混合溶液を担体成分に含浸させてからゲル化・焼成する方法、ゾル−ゲル法によってそれぞれの酸化物微粒子を単独に調製し、これらを混練・成形・焼成する方法などが利用できる。【0036】触媒の細孔径を制御する方法としては、担体が酸化チタン(チタニア)である場合には、チタニア原料として粒径が5nm〜600nmの1種または2種以上のチタニア粒子(この場合チタニア粒子は、単結晶または緻密な多結晶粒から構成される一次粒子であるか、または、実質的に一次粒子から構成される二次粒子である)と、多孔化剤(例えば、粒径が50nm〜1000nmの易熱分解性化合物)と触媒活性成分(Co、V、Wの酸化物)を混練し成形したのち焼成する方法、上述と同じように粒径が5nm〜600nmの1種または2種以上の径粒のチタニア粒子(この場合、チタニア粒子は単結晶または緻密な多結晶粒から構成される一次粒子であるか、または、実質的に一次粒子から構成される二次粒子である)を担体原料として、多孔化剤(例えば、粒径が50nm〜1000nmの易熱分解性化合物)とともに混練、成形、焼成したのち触媒活性成分を含浸法により担持焼成する方法などがある。なお、上記活性成分は、上記チタニア粒子の作製時に共沈法等により担持させてもよい。原料チタニア粒子の粒径は、5nm〜600nmの範囲、好ましくは、50nm〜400nm、さらに好ましくは100nm〜200nmである。このチタニア粒子の粒径が上記範囲外であると第2のピークに相当する細孔または第3のピークに相当する細孔の形成が困難となる。【0037】前記多孔化剤としては、焼成温度以下(およそ400〜800℃)で熱分解しやすい物質(易熱分解性化合物)、例えばメタクリル樹脂のほかアクリル樹脂、アセタール樹脂、フェノール樹脂などの樹脂やセルロースが用いられる。多孔化剤の粒径は、作製したい孔径よりも大きい粒径のものを使用する。例えば400nmの気孔を開ける場合には400nm以上の粒径の多孔化剤を用いる。およその目安は作製したい孔径の1.2〜1.5倍程度であるが、この値は、多孔化剤自体の(上記の樹脂の種類による)物性や触媒調製条件等を考慮して決定する。【0038】また、第2、第3のピークは、粒径が5nm〜600nmのチタニア粒子(この場合チタニア粒子は、単結晶または緻密な多結晶粒から構成される一次粒子であるか、または、実質的に一次粒子から構成される二次粒子である。)のすき間としてパッキング密度を制御することにより形成することができる。【0039】その他、第2のピークである50nm〜100nmの範囲のピークを得るには、例えば上記原料チタニアとして粒径5nm〜600nmの二次粒子を用い、これを混練、焼成することによっても得ることができる。二次粒子の大きさは作製時の温度、pH、界面活性剤の使用により制御することができる。また、サンドミルで高分散処理を行なうことによっても制御することができる。さらに第3のピークである30nm以下の範囲のピークも、チタニアの一次粒子間のすき間として形成することができる。この一次粒子のすき間は、一次粒子自体の粒径や二次粒子の作製条件を、目標とする孔径になるように適宜選択することにより形成することができる。【0040】触媒の細孔は、担体の作製時に形成することができるので、触媒活性成分の担持については、上記した混練法、含浸法、共沈法等から適宜選択した方法を用いることができる。混練法等の場合は、担体作製(細孔作製)と同時に活性成分を担持することになり、また含浸法等の場合は担体作製後(細孔作製後)、活性成分を担持することになる。共沈法の場合は担体作製前(細孔作製前)のチタニア等の担体原料に活性成分を担持する。【0041】【実施例】次に、実施例等を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらによって制約されるものではない。実施例、比較例における触媒の調製は、以下の方法により行った。【0042】触媒の調製(1):触媒は、酸化チタンを担体として、これに触媒活性種を混練法で担持し、成型・焼成して調製した。具体的には、以下の通りである。原料となる酸化チタン、酸化バナジウム、酸化タングステンは、市販の粉末試薬(酸化チタンTiO2は和光純薬社製:型番207−11121アナターゼ型、酸化バナジウムV2O5は和光純薬社製:型番226−00125、酸化タングステンWO3は和光純薬社製:型番205−10262)を用いた。酸化コバルトCo3O4は、コバルトの硝酸塩水和物(関東化学社製:型番07408)の溶液1リトッルに10%アンモニア水を10ml/分の速度でpH8.5になるまで滴下して沈殿を形成させ、ろ過および蒸留水での洗浄を3回繰り返した後、この沈殿を100℃にて12時間真空乾燥・粉砕し、空気中で350℃で5時間焼成したものを用いた。【0043】成型性を向上させるためシランカップリング剤(信越シリコーン社製:KBM603)により表面処理を行った。また、バインダーとしてメチルセルロース10g、可塑剤としてグリセリン15g、滑剤としてステアリン酸エマルジョン2g、蒸留水19〜32gを添加した。成型・焼成の手順は、まず酢酸またはアンモニア水によって所定のpHに調製した水溶液にシランカップリング剤を入れて撹拌し、その後24時間室温下で静置した。この静置した液と所定の重量比に配合した原料金属酸化物をホモジナイザーで混合し、混合液を80℃で水分が無くなるまで乾燥させた。その後、粉砕分級してから、バインダー等の各種添加剤および蒸留水を混合し、混練した後再び静置した。一定時間静置した後、さらに再度混練してから成形を行った。成形は押し出し治具を用いてヌードル状(ペンシル状)に成形した。成形後、再び乾燥させた後、酸素雰囲気下、所定温度で所定時間焼成した。【0044】触媒の調製(2):原料粉末として粒径180nmのチタニア粉末90gを用い、成形性を向上させるためシランカップリング剤(信越シリコーン社製 KBM603)で表面処理を行った。またサンドミルによる高分散処理も行った。多孔化剤としてポリメタクリル酸ビーズを10g、バインダーとしてメチルセルロースを5g、可塑剤としてグリセリンを7g、滑剤としてステアリン酸エマルジョンを1g用い、さらに蒸留水11g〜15gを加えた。成形・焼成の手順は、まず酢酸、アンモニア水によって所定のpHに調整した水溶液にシランカップリング剤を入れて撹拌し、その後24時間室温下で静置した。この静置した液と粘度配合したチタニア粉末をホモジナイザーで混合し、混合液を80℃で水分がなくなるまで乾燥させた。その後、粉砕分級してから、バインダー、多孔化剤、蒸留水など各種添加剤と混合し、さらに活性金属である酸化コバルト(製法は上記と同じ)、必要に応じ酸化バナジウム、酸化タングステン(試薬は上記と同じ)をあわせてさらに混練し静置した。一定時間静置した後、さらに再度混練し、成形を行った。成形は押し出し治具を用いてヌードル状(ペンシル状)に成形した。成形後、再び乾燥させた後、酸素雰囲気下、500℃で3時間焼成させて本発明の触媒を調製した。【0045】このようにして得られた触媒の比表面積は、窒素吸着による多点BET法により測定した。【0046】触媒の性能評価:以上のようにして得られた触媒を下記のように評価した。固定床流通式マイクロリアクターを用い、反応温度200℃の範囲で、W/F(滞留時間)0.017(g・min/ml)、反応ガスは指標物質濃度300ppm、酸素濃度10%、水分35%、窒素バランスとして、有機ハロゲン化合物の分解に対する触媒の性能評価試験を行った。ここでは、有機ハロゲン化合物の一例として、ダイオキシン類の代替指標物質となるo−クロロフェノールおよびo−ブロモフェノールを用いた。用いた指標物質については、稲葉ら:第8回廃棄物学会研究発表会講演論文集p558、神田ら:平成9年度触媒学会研究発表会講演予稿集p114、田中ら:日本機械学会第8回環境工学総合シンポジウム'98講演論文集p182などの研究から、ダイオキシン類と分解特性が類似することが明かになっている。【0047】触媒性能は、指標物質の分解除去率を指標として評価した。分解除去率は、下式に基づき算出した。【0048】分解除去率=(指標物質初期濃度−指標物質残留濃度)/指標物質初期濃度【0049】実施例1−1〜1−4、比較例1−1〜1−4担体として酸化チタンを用い、酸化コバルトを活性金属種とした触媒を調製し、性能評価試験を行った。また、比較のため、触媒活性金属種を酸化バナジウムに替える以外は同様にして調製した触媒についても試験を行った。性能評価試験の結果を表1に示す。表1から、活性金属種として酸化コバルトを用いた場合には酸化バナジウムを用いた場合に比べ、どの反応温度においても触媒活性が高いことがわかる。【0050】【表1】【0051】実施例2−1〜2−6酸化チタンを担体とし、活性種である酸化コバルトの含有量を変えて触媒性能を評価した。結果を表2に示す。分解率は反応温度200℃で測定した結果である。表2から酸化コバルトを触媒全体の30重量%以上担持している場合がもっとも高活性で、10%〜20重量%の範囲でも高活性であるが、10重量%未満であると充分な触媒性能が得られないことがわかる。【0052】【表2】【0053】実施例3−1〜3−3担体として酸化チタンを用い、▲1▼触媒種として酸化コバルト30重量%を担持した触媒、▲2▼触媒種として酸化コバルト30重量%、酸化タングステン10重量%を担持した触媒、▲3▼触媒種として酸化コバルト30重量%、酸化バナジウム5重量%、酸化タングステン10重量%を担持した触媒、をそれぞれ調製し、性能評価試験を行った。結果を表3に示す。分解率は反応温度200℃で測定した結果である。表3から明らかなように、酸化コバルトと酸化タングステンを組み合わせた場合(▲2▼)、および酸化コバルトと酸化バナジウムと酸化タングステンを組み合わせた場合(▲3▼)には、触媒がより高活性になることがわかる。【0054】【表3】【0055】実施例4−1および4−2担体として酸化チタンを用い、触媒種として酸化コバルト30重量%、酸化バナジウム5重量%、酸化タングステン10重量%を担持する細孔分布制御触媒を調製した。この触媒の性能評価試験結果を表4に示す。表4には、細孔分布制御を行わない触媒(実施例4−1)についての性能評価試験結果も併記した。実施例4−2が細孔分布制御触媒であり、分解率は反応温度200℃で測定した結果である。表4から細孔分布制御を行った触媒の方がより高活性になることがわかる。【0056】【表4】【0057】【発明の効果】本発明の触媒は、焼却炉から排出される排ガス中の有機ハロゲン化合物、特に有機塩素化合物であるダイオキシン類を非常に高効率に分解、除去することができる。したがって、都市ごみ焼却炉などの排ガス中に含まれる有機塩素化合物(塩素化ダイオキシンン類、塩素化ベンゼン類、塩素化フェノール類)や、家電製品などの廃プラスチックの焼却処理設備排ガスに含まれる有機臭素化合物(臭素化ダイオキシン、臭素化ベンゼン類、臭素化フェノール類)などの無害化処理に最適な触媒である。 有機ハロゲン化合物として芳香族ハロゲン化合物を含む排ガスの処理触媒であって、 酸化チタンおよび/または酸化ケイ素を主成分とする触媒担体に、有機ハロゲン化合物を酸化分解する触媒活性成分として次の(b)または(c)、 (b)触媒全体の10重量%以上の酸化コバルトおよび5重量%以上の酸化タングステン (c)触媒全体の10重量%以上の酸化コバルト、15重量%以下の酸化バナジウムおよび5重量%以上の酸化タングステンを担持させたことを特徴とする、有機ハロゲン化合物を含む排ガスの処理触媒。 請求項1において、酸化コバルトが、スピネル構造の酸化コバルトであることを特徴とする、有機ハロゲン化合物を含む排ガスの処理触媒。 請求項1または請求項2において、触媒の細孔径分布が、少なくとも3つのピークを持ち、第1のピークが300〜450nmの範囲、第2のピークが50〜100nmの範囲、第3のピークが30nm以下の範囲にあることを特徴とする、有機ハロゲン化合物を含む排ガスの処理触媒。