タイトル: | 特許公報(B2)_ボイラ水処理システムおよびそれを用いたブロー水管理方法 |
出願番号: | 2001239448 |
年次: | 2011 |
IPC分類: | F22D 11/00,C02F 1/20,C02F 1/58,C02F 5/00,C02F 5/08,C23F 11/12,C23F 11/18,C23F 14/02,G01N 27/416,G01N 33/18,F22B 37/56 |
丸亀 和雄 板東 將之 大谷 武之 JP 4654392 特許公報(B2) 20110107 2001239448 20010807 ボイラ水処理システムおよびそれを用いたブロー水管理方法 株式会社片山化学工業研究所 000154727 野河 信太郎 100065248 丸亀 和雄 板東 將之 大谷 武之 JP 2000238725 20000807 20110316 F22D 11/00 20060101AFI20110224BHJP C02F 1/20 20060101ALI20110224BHJP C02F 1/58 20060101ALI20110224BHJP C02F 5/00 20060101ALI20110224BHJP C02F 5/08 20060101ALI20110224BHJP C23F 11/12 20060101ALI20110224BHJP C23F 11/18 20060101ALI20110224BHJP C23F 14/02 20060101ALI20110224BHJP G01N 27/416 20060101ALI20110224BHJP G01N 33/18 20060101ALI20110224BHJP F22B 37/56 20060101ALN20110224BHJP JPF22D11/00 GC02F1/20 AC02F1/58 TC02F5/00 620CC02F5/08 ZC23F11/12 101C23F11/18C23F14/02 AG01N27/46 351BG01N27/46 351JG01N33/18 DF22B37/56 A F22D 11/00 C02F 1/20 C02F 1/58 C02F 5/00 C02F 5/08 C23F 11/12 C23F 11/18 C23F 14/02 G01N 27/416 G01N 33/18 F22B 37/56 特開平02−259304(JP,A) 特開平08−042809(JP,A) 特開昭51−111388(JP,A) 特開昭53−074603(JP,A) 特開2000−354856(JP,A) 5 2002174402 20020621 20 20080708 中田 誠二郎 【0001】【発明の属する技術の分野】 この発明は、ボイラ水処理システムおよびそれを用いたブロー水管理方法に関し、さらに詳しくは、ボイラ内の腐食、スケールの生成またはシリカの選択的キャリオーバーなどの障害を防止するために添加されるボイラ水処理薬剤の濃度およびボイラ水濃縮度を管理しながら、ボイラ水処理薬剤を添加するボイラ水処理システムおよびそれを用いたブロー水管理方法に関する。【0002】【従来の技術および発明が解決しようとする課題】 従来、工業用水、井戸水などの原水をそのまま使用する原水ボイラおよび前記原水を処理した軟水または純水を使用する軟水ボイラまたは純水ボイラが一般的に使用されている。通常、ボイラは、ボイラ水の水温を加圧下で110℃〜臨界温度に設定して運転されている。【0003】 軟水ボイラでは、イオン交換樹脂を用いた軟水処理などにより硬度成分の殆どを除去したいわゆる軟水がボイラ水として使用されるので、高濃縮水の使用時でも、すなわちブロー水量が比較的少ない場合においてもスケールの発生は少ない。 しかしながら、硬度成分以外のアニオン成分、特に塩素イオン、硫酸イオンなどは、上記の軟水処理によっても除去されないため、これらのアニオン成分や軟水中に存在する酸素に起因して、ボイラ系内の鉄系金属が腐食し、重大な障害につながる孔食(ピッチング)が発生しやすい。【0004】 そこで、軟水ボイラでは、従来から、脱気器による脱酸素処理あるいは亜硫酸塩、ヒドラジンなどの脱酸素剤の添加による脱酸素処理を軟水処理と併用して行い、さらに、この脱酸素処理水にリン酸塩類と、必要に応じてアルカリ剤をさらに添加してpH10〜12に調整することにより、ボイラ系内の鉄系金属の腐食、特に孔食を防止する方法が採用されている。【0005】 一方、純水ボイラでは、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、硫酸イオン、塩素イオンなどのイオン成分を実質的に除去した、電気伝導度が0.1mS/m以下の純水やイオン交換水などがボイラ水として使用されているが、純水ボイラにおいても、空気中の炭酸ガスの溶解によりボイラ水中に不可避的に存在する炭酸イオンと溶存酸素によって、ボイラ系内の鉄系金属が腐食し、軟水ボイラと同様に孔食が発生しやすい。【0006】 そのため、純水ボイラにおいては、純水を脱気器に通し、かつ亜硫酸塩、ヒドラジンなどの脱酸素剤を添加して脱酸素処理を行い、さらにモルホリン、シクロヘキシルアミン、ジメチルメタノールアミンなどの揮発性アミンを炭酸捕捉剤として添加し、その上リン酸塩系の防食剤を添加することによって、ボイラ系内の鉄系金属の腐食、特に孔食を防止する方法が採用されている。【0007】 特開平8−105605号公報には、ボイラ給水に薬注を行うシステムが開示されている。ここでは、ボイラ給水系統の途中にボイラ給水の電気伝導度を検出する電気伝導度計を設け、検出された電気伝導度を薬注制御装置に入力し、薬注制御装置に予め入力された計算式に基づいて薬注率を算出し、算出した薬注率に基づいて常に最適な薬注を行うことができる、給水中の電気伝導度を利用したボイラの連動薬注システムが提案されている。【0008】 また、特開平6−343949号公報には、ボイラー流などの原水流および/またはボイラーシステムに添加する添加剤に、その添加剤に所定量の不活性トレーサー、例えば、1種または2種以上の蛍光種を加え、添加剤が消費される箇所の上流および下流に設定された試料採取位置および監視位置の両方で不活性トレーサーからの蛍光を監視し測定することにより添加剤の消費率を計算し、消費量に応じて添加剤の供給量を任意的に調整する添加剤消費率の監視方法が提案されている。【0009】 さらに、特開昭51−111388号公報には、水中の添加薬剤の濃度管理方法が開示されている。この方法では、トレーサーとしてリチウムの水溶性塩を水中に添加し、リチウムの濃度を原子吸光法で測定することにより水中に添加した薬剤の濃度が管理される。【0010】【発明が解決しようとする課題】 前記のような目的で添加される脱酸素剤、アルカリ剤および防食剤等のボイラ水処理薬剤が添加されたボイラ水において、前記薬剤の濃度は、以下の3つの因子、すなわち、(1)ボイラ水処理薬剤の添加量、(2)主にブロー水中に含まれるボイラ水処理薬剤の排出量、(3)ボイラ水系内でのボイラ水処理薬剤の蒸気系への移行や熱分解など、物理的・化学的影響により変化する薬剤量、の影響を受ける。【0011】 ボイラの給水中またはボイラ水中の処理薬剤は、常に上記の(1)および(2)の影響を受けるので、ボイラ水処理を十分に行うためには、(1)と(2)の両方を常時管理する必要がある。したがって、従来、軟水ボイラでは、JIS B8223等に準じて、給水中およびボイラ水中の塩素イオン濃度を測定してボイラ水の濃縮度を算出し、その結果によりブロー水量を管理するとともに、ボイラ水中の残留薬剤濃度を測定し、その結果と上記ブロー水中に含まれる処理薬剤の排出量とを考慮に入れて、ボイラ水処理薬剤の添加量を制御していた。【0012】 また、上記の(3)は、上記の(1)および(2)と無関係に発生し、(3)の影響を受けるボイラ水処理薬剤の濃度管理は、その濃度を直接測定することが困難であるが、上記の(1)および(2)を適切に管理することにより、当業者がある程度経験的に管理を行うことができる。しかし、上記の(1)および(2)の管理には、相当の熟練を要した。【0013】 一方、ボイラの給水には流量が随時変化するドレン回収水が流入し、それにつれて塩素イオン濃度も変動するため、上記のような給水中およびボイラ水中の塩素イオン濃度の測定結果からは、ボイラ水の濃縮度を正確に算出することができなかった。また、JIS B8223等に準じた上記の方法では、塩素イオン濃度の測定と煩雑な操作を伴う残留薬剤濃度の測定という二種類の測定が必要であり、その上、ボイラ水中に塩素イオンが存在しない純水ボイラには適用できないという問題点があった。【0014】 また、脱酸素剤は、通常、脱気器を出た給水に残留する溶存酸素を化学的に除去するために使用されるが、脱気器をもたない場合には使用される脱酸素剤が相当な量になり、それに付随する障害、例えば、亜硫酸ナトリウムを多量に添加すると、電気伝導度が上昇し、キャリーオーバー等の障害が発生する。また、脱酸素剤の必要量を常時制御して添加し、なおかつブロー水の排出量を制御することは困難であった。【0015】 前記の特開平8−105605号公報に開示されたボイラの連動薬注システムにおいても、常に最適な薬注を行うためには、前記の二種類の操作が必要となり、ボイラ給水の水質の変動による電気伝導率の変化への対応や、ボイラ水の濃縮度の管理等の点で、ボイラ管理の自動化には困難が伴うものと考えられる。 また、前記の特開平6−343949号公報では、蛍光種などの不活性トレーサーの添加が必須であるが、蛍光種は熱安定性が低いため、低圧ボイラには適用できるが、中・高圧ボイラには適用できないという問題点があった。 さらに、特開昭51−111388号公報に記載の方法では、トレーサーとしてリチウムの水溶性塩が水中に添加されるが、原子吸光法によりリチウムの定量分析を行う方法であるため、操作が煩雑になるとともに大掛かりな装置が必要となり、現場での実施には適していなかった。【0016】 この発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたものであり、多様な種類のボイラにおいて、ボイラ水の流量や水質の変化等に随時対応でき、ボイラの管理を簡易かつ迅速に行うことができ、しかも安全性の高いボイラ水処理システムおよびそれを用いたブロー水管理方法を提供することを目的とする。【0017】【課題を解決するための手段】 この発明によれば、ボイラと、ボイラ水としての軟水または純水を貯水する給水タンクと、該給水タンク内のボイラ水をボイラに給水するための給水管と、前記ボイラにて発生した蒸気の一部をドレンとして前記給水タンクへ回収するためのドレン回収管と、前記ボイラからブロー水を外部に排出するためのブロー水管と、前記給水管にのみ設けられてボイラへ給水されるボイラ水の溶存酸素濃度を測定する溶存酸素濃度計およびボイラ水に脱酸素剤を含むボイラ水処理薬剤を添加する薬剤添加手段と、前記ブロー水管に設けられてボイラから排出されるブロー水の量を制御するブロー水量制御手段およびブロー水中のカチオン成分またはアニオン成分の濃度を測定するためのイオン濃度測定部と、前記ブロー水管に設けられて前記ブロー水のpHを測定するpH計と、制御部とを備え、 前記イオン濃度測定部が、軟水または純水には実質的に含有されないカチオン成分またはアニオン成分のブロー水中における濃度を測定するイオン電極を有してなり、 前記制御部が、前記溶存酸素濃度計によって測定された溶存酸素濃度測定値に基づいて前記薬剤添加手段を制御し、その後前記イオン濃度測定部によって測定されたイオン濃度測定値に基づいて前記ブロー水量制御手段を制御し、その後前記pH計によって測定されたブロー水のpH測定値に基づいてブロー水量制御手段の制御を補正するように構成されたボイラ水処理システムが提供される。 また、本発明の別の観点によれば、前記ボイラ水処理システムを用いるブロー水管理方法であって、前記溶存酸素濃度計にてボイラ水中の溶存酸素濃度を測定する第1ステップと、前記溶存酸素濃度計によって測定された溶存酸素濃度測定値に基づいて前記薬剤添加手段にて前記ボイラ水処理薬剤をボイラ水に添加する第2ステップと、前記イオン濃度測定部にてブロー水中のイオン濃度を測定する第3ステップと、前記イオン濃度測定部によって測定されたイオン濃度測定値に基づいて前記ブロー水制御手段を制御して前記ブロー水管を流れるブロー水の量を調整する第4ステップと、前記pH計によってブロー水のpHを測定する第5ステップと、前記pH計によって測定されたpH測定値に基づいて前記ブロー水制御手段による制御を補正する第6ステップとを含むブロー水管理方法が提供される。【0018】 本発明によれば、ボイラ水系における塩素イオン濃度とボイラ水中に残留したボイラ水処理薬剤の濃度(以下、「残留薬剤濃度」という)の測定という二段階の測定が不要となり、ボイラ水中に塩素イオンが存在しない純水ボイラにも適用できる。【0019】 また、ボイラ水中におけるボイラ水処理薬剤の濃度を把握できるので、この結果に基づいてボイラ水の濃縮度および/またはボイラ水処理薬剤の添加量を制御することにより、簡易、迅速かつ正確にボイラの水処理を管理することができる。 また、残留薬剤濃度を測定する際に従来行われていた有機溶剤の使用が不要となるので、現場での安全性を高めることができる。【0020】 この発明におけるボイラ水処理薬剤とは、ボイラに供給されるボイラ水(給水)に、またはボイラに供給されたボイラ水に添加され、ボイラ内で有害な不純物を無害な物質に変化させるとともに、ボイラ水をボイラ内の腐食防止に適した状態に調整し維持するための薬剤を意味する。このようなボイラ水処理薬剤を構成する薬剤としては、水と接触する鉄系金属の腐食を抑制するためのリン酸塩,亜硝酸塩,カルボン酸塩,コバルト塩,モリブデン酸塩,タングステン塩,ジエチレントリアミン,水酸化ナトリウム,水酸化カリウム,水酸化リチウム,重合リン酸塩,高分子分散剤,デンプン,アミノ酸誘導体などの防食剤・分散剤・反応促進剤、亜硫酸塩,ヒドラジン,糖類,アミノピロリジン,タンニン,没食子酸,ジエチルヒドロキシルアミン,メチルエチルケトオキシム,コハク酸塩,タンニン酸塩,グルコン酸塩,アスコルビン酸,エリソルビン酸,カルボヒドラジドなどの脱酸素剤、モルホリン,シクロヘキシルアミン,ジメチルメタノールアミン,モノエタノールアミン,2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール,ジエタノールアミン,アンモニア,オクタデシルアミン,メトキシプロピルアミンなどの炭酸捕捉剤等が挙げられる。この発明の方法で使用されるボイラ水処理薬剤は、これらの薬剤に限定されず、通常のボイラ水系で使用されているものを適宜用いることができる。 特に、ヒドラジン等の脱酸素剤の添加が不要な一液型のボイラ水処理薬剤「ミラクルシャン」(株)片山化学工業研究所製〔なお、ミラクルシャンは、(株)片山化学工業研究所の登録商標〕が好ましい。【0021】 この発明における「軟水または純水には実質的に含有されないカチオンまたはアニオン成分」とは、給水またはボイラ水に添加する以外にはボイラ水中に存在し得ないか、あるいは存在しても添加量に比べて極めて微量の成分である。 また、この発明においてイオン電極により測定するカチオンまたはアニオン成分は、ボイラ水処理薬剤として、または別途に添加により発生あるいは形成されるものも含まれる。なお、「実質的に含有されない」とは、ボイラ水中に極めて微量に存在していても、イオン電極による測定結果に影響を与えないような濃度で含有されることを意味する。【0022】 そのようなカチオン成分またはアニオン成分としては、イオン電極により測定可能なものであれば特に限定されないが、ボイラ水処理効果およびイオン電極による測定操作性の面から、1価または2価のカチオンまたはアニオンが好ましい。 カチオン成分としては、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、ストロンチウムイオンなどが挙げられ、特に、リチウムイオンが、腐食防止およびイオン電極による測定精度の点で好ましい。 アニオン成分としては、カルボン酸イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオンが挙げられ、特に、カルボン酸イオンが、腐食防止、スケール防止およびイオン電極による測定精度の点で好ましい。 また、モリブデン酸イオン、リン酸イオン、クエン酸イオン等の多価のイオンが例示される。【0023】 上記のようなカチオンまたはアニオンをボイラ水中で生じる物質は、少なくともボイラ内でボイラ水処理効果を阻害することなく、無害であって環境を汚染することがない成分が好ましく、給水およびボイラ水の特性に適したカチオンおよび/またはアニオン成分を選択することができる。さらに、前記のカチオンまたはアニオン成分が、ボイラ水処理薬剤として実質的に作用する成分を形成したり、実質的なボイラ水処理薬剤として作用することが好ましく、そのような薬剤としては、水酸化リチウムやグルコン酸等が挙げられる。 また、ボイラ水処理薬剤として実質的に作用しないが、イオン電極を用いて測定可能な上記のようなカチオンまたはアニオンを水中で放出しうる化合物を、ボイラ水処理薬剤とともにあるいは別途に添加することもできる。上記のような化合物としては、塩化リチウムが挙げられる。 前記のようなカチオンまたはアニオンをボイラ水中で生じる物質のボイラ水中への添加量(濃度)は特に限定されることはなく、イオン電極を用いて検出可能な濃度であればよい。【0024】 この発明において使用されるイオン電極としては、測定対象のイオンに応じて、例えば、カルボン酸イオン電極、リチウムイオン電極、塩素イオン電極などを適宜用いることができる。【0025】 この発明では、ボイラ水の残留薬剤濃度と濃縮度とが同時に把握されるため、残留薬剤濃度の増減がボイラ水処理薬剤の添加量に起因するのかブロー水中に含まれるボイラ水処理薬剤の排出量に起因するのかが明確になり、その結果に基づいて、ボイラ水の水処理を適切に管理することができる。したがって、スラッジ,不溶成分あるいは腐食因子となる塩化イオン等の過濃縮によるボイラ内部の腐食やスケールの生成を抑制し、キャリオーバーによる過熱器やタービンの障害、事故を防止することができる。【0026】 この発明では、ボイラ水中の酸素を除去する脱酸素手段を備え、ボイラ給水中における溶存酸素濃度を溶存酸素濃度計で測定し、その結果に基づいて脱酸素手段の駆動を制御することにより、ボイラ給水中の酸素を除去を容易にかつ正確に行うことができる。 ボイラからのブロー水のpHを測定し、その結果に基づいてボイラからのブロー水排出量を制御すれば、ブロー水の排出がより正確に行われる。【0027】 ボイラ水中の酸素を除去する脱酸素手段と、ボイラ給水中の溶存酸素濃度を測定する溶存酸素濃度計とを備え、制御部が、溶存酸素濃度計によって測定された溶存酸素濃度に基づいて脱酸素手段を制御することにより、ボイラ給水中の酸素の除去を容易にかつ正確に行うことができる。 この発明における脱酸素手段としては、薬剤添加手段によってボイラ水系に添加される脱酸素剤が挙げられる。 上記の脱酸素剤は、ボイラ水処理薬剤中に加えられボイラ水処理薬剤とともにボイラ水中に添加される一液型のボイラ水処理薬剤として、ボイラ水中に添加される。 上記の一液型のボイラ水処理薬剤を用いる場合には、薬剤添加手段からボイラ水中に添加される一液型ボイラ水処理薬剤の添加量を溶存酸素濃度計によって測定された溶存酸素濃度に基づいて制御することができる。【0028】 脱酸素剤としては、前記したように、亜硫酸塩、ヒドラジン、ヒドラジン誘導体、グルコース等の還元性糖類、タンニンおよび脱酸素性のアミン等が挙げられる。【0029】 薬剤添加手段から添加される薬剤によって溶存酸素濃度が変化するので、ボイラ水中の溶存酸素濃度を正確に測定するために、溶存酸素計は、薬剤添加手段の上流側のボイラ水中の溶存酸素濃度を測定するのが好ましい。 さらに、ボイラからのブロー水中の溶存酸素濃度を測定するのが好ましい。 ボイラからのブロー水のpHを測定するpH計をさらに備え、制御部が、pH計によって測定されたボイラ水のpHに基づいてブロー水量制御手段を制御することにより、ボイラ水のpHの調整を正確に行うことができ、総合的なボイラ水処理管理を行うことができることから好ましい実施態様であるといえる。【0030】【発明の実施の形態】 以下、図1から図4を参照して、この発明のボイラ水処理方法およびボイラ水処理システムの実施の形態を説明するが、この実施の形態によってこの発明が限定されるものではない。【0031】 実施の形態1(参考例1) 図1は、この発明のボイラ水処理方法が採用されるボイラプラントの構成を模式的に表したものである。 図1において、ボイラプラント10は、給水管20を介してボイラ1の上流側に配設された給水タンク2およびボイラ水処理薬剤をボイラ水に添加するための薬剤タンク4と、ブロー水管30を介してボイラ1の下流側に配設されたブロー弁3(ブロー水量制御手段)および熱交換器5と、ボイラ1から供給される蒸気がドレンとなって給水タンク2に回収されるドレン回収管40とから主に構成されている。【0032】 さらに、給水管20には、給水タンク2からボイラ1へボイラ水を送るためのポンプ(図示せず)と、薬剤タンク4とボイラ1の間から分岐した、ボイラ水中のカチオン成分および/またはアニオン成分の濃度を測定するためのイオン濃度測定部6とが配設されている。イオン濃度測定部6は、電磁開閉弁8aを有する試料採取用の採取口8に接続されている。 また、ブロー水管30は、熱交換器5の下流側に配設されたブロー水中のカチオン成分および/またはアニオン成分の濃度を測定するためのイオン濃度測定部7を有し、イオン濃度測定部7は、ブロー水管30に設けられた、電磁開閉弁9aを有する試料採取用の採取口9に接続されている。 イオン濃度測定部6,7は、イオン電極16,17および各イオン電極16,17に接続された電位差計18,19からなる。イオン濃度測定部6,7が各採取口8,9に接続されると、採取口8,9から採取されたボイラ水およびブロー水は、イオン電極16,17を浸漬し、電位差計18,19によってボイラ水処理薬剤の濃度が測定される。【0033】 ボイラプラント10を用いた本発明のボイラ水処理方法の一例を、図1を参照しながら説明する。 ボイラプラント10は、高圧ボイラを使用し、表1に示した条件で運転されていた。【0034】【表1】【0035】 薬剤タンク4から供給されるボイラ水処理薬剤として、カルボン酸アミン塩を主成分とする一液型ボイラ水処理薬剤〔商品名:ミラクルシャン508S (株)片山化学工業研究所製 〔なお、ミラクル,シャンおよびミラクルシャンは(株)片山化学工業研究所の登録商標である〕に水酸化リチウム水和物を配合したものを使用した。【0036】 給水およびブロー水監視用のイオン電極16,17として、リチウムイオン電極〔一体型タイプ 東亜電波工業(株)製〕を、電位差計18,19として、ポータブルpH計〔型式HM−21P 東亜電波工業(株)製〕を準備した。 なお、リチウムイオン電極は、JIS K0101で規定するナトリウム電極に準ずるものである。【0037】 前記のボイラ水処理薬剤を使用して、ボイラプラント10について行われたボイラ水処理薬剤の濃度測定と、その測定結果に基づくボイラ水処理薬剤の添加量とボイラ水の濃縮度の管理について以下に述べる。(1) 薬剤濃度をそれぞれ10mg/L、100mg/L、1000mg/L、10000mg/Lとした液温25℃の各標準液を作成した。(2) 薬剤濃度が1000mg/Lの標準液の電位を測定したところ、指示電位は−176mVであった。薬剤濃度が10mg/L、100mg/Lおよび10000mg/Lの各標準液の電位を測定したところ、指示電位はそれぞれ−294mV、−235mVおよび−117mVであった。(3) 前記(2)の結果に基づいて、薬剤濃度と起電力との相関関係を示す検量線を作成した。(4) ボイラ水処理薬剤を表1の設定値に基づいて薬剤タンク4から給水管20中のボイラ水に添加した。(5) ボイラ1を所定時間運転した後、試料採取用の採取口8および9からボイラ水およびブロー水をサンプリングした。(6) サンプリングしたボイラ水およびブロー水の電位を液温25℃で測定し、前記検量線に基づいてボイラ水中の薬剤濃度およびブロー水中の薬剤濃度を算出した。(7) 算出された薬剤濃度から、残留薬剤濃度の変動を確認したが、この変動はボイラ水の濃縮度がその設定値を外れていることに起因することが判明した。そこで、これらの算出結果に基づいてブロー弁3の開度を調整し、さらに数日間にわたってボイラ1内の薬剤濃度の推移を監視した。(8) 前記の濃度推移を監視しながら、ボイラ水処理薬剤の添加量とボイラ水の濃縮度を制御することによりボイラ1内の薬剤濃度を設定値1500mg/Lに調整した。【0038】 上記の手順で行われたボイラ1内のボイラ水処理薬剤の濃度推移を図2に示す。 図2に示すように、初期において変動が大きかったボイラ1内の薬剤濃度が、終期においては、設定値1500mg/Lに近づいたことがわかる。 なお、参照測定として、表2のボイラ水処理薬剤中のリチウムについて、従来から行われている炎光光度法による測定を、同一試料を用いて前記の操作と平行して行った(図2中の○印で示す)。【0039】 炎光光度法を用いた従来法によるリチウム測定結果と本発明のリチウム電極を用いた測定結果との相関係数は、0.99であり、リチウム電極を用いたリチウムイオン濃度の測定結果が正確であることが明らかになった。【0040】実施の形態2(参考例2) 図3は、ボイラ水処理を自動制御する本発明のボイラ水処理システムが適用されたボイラプラントの構成を模式的に表したものである。 図3において、ボイラプラント50は、給水管20を介してボイラ1の上流側に配設された給水タンク2と、ボイラ水処理薬剤をボイラ水に添加するための薬剤タンク14およびポンプ12と、ブロー水管30を介してボイラ1の下流側に配設された電磁式のブロー弁13および熱交換器5と、ボイラ1から供給される蒸気がドレンとなって給水タンク2に回収されるドレン回収管40とから主に構成されている。薬剤タンク14は、ポンプ12の駆動制御によりボイラ水処理薬剤のボイラ水への添加量を任意に設定することができる。ブロー弁13は、その開度が調節されることによりブロー水管30を介して排出されるブロー水の排出量を任意に設定することができる。【0041】 さらに、給水管20には、給水タンク2からボイラ1へボイラ水を送るためのポンプ(図示せず)と、薬剤タンク14とボイラ1の間から分岐した、ボイラ水中のカチオン成分および/またはアニオン成分の濃度を測定するためのイオン濃度測定部6とが配設されている。イオン濃度測定部6は、電磁開閉弁8aを有する試料採取用の採取口8に接続されている。 また、ブロー水管30は、熱交換器5の下流側に配設されたブロー水中のカチオン成分および/またはアニオン成分の濃度を測定するためのイオン濃度測定部7を有し、イオン濃度測定部7は、ブロー水管30に設けられた、電磁開閉弁9aを有する試料採取用の採取口9に接続されている。 イオン濃度測定部6,7は、JIS K0101に準ずるリチウムイオン電極16,17と、各イオン電極16,17に接続された電位差計18,19と、各採取口から採取された試料温度を検知するデジタル温度計22,23とからなる。各採取口8,9から採取されたボイラ水およびブロー水は、イオン電極16,17を浸漬し、電位差計18,19によってボイラ水処理薬剤の濃度が測定される。【0042】 さらに、ボイラプラント50は、開閉弁8a,9a、電磁ブロー弁13、ポンプ12、電位差計18,19、デジタル温度計22,23の各出入力部に接続され、CPU,ROM,RAM,タイマー等を有するコンピュータを含む制御部60を有する。【0043】 前記制御部60の動作に基づいて、ボイラプラント50によるボイラ水処理方法の一例を、図3および図4のフローチャートを参照しながら説明する。 なお、ボイラ水処理薬剤としては、実施の形態1で使用した薬剤が使用される。また、ポンプ12は、ボイラ水処理薬剤が設定吐出量75〜85mg/Lで薬剤タンク14からボイラ水へ連続して添加されるよう駆動され、ブロー弁13は、ボイラ内薬剤濃度が設定値1500〜1700mg/Lとなるようにブロー水の排出量を設定開度に設定され、ブロー水管30を介してボイラ1から連続して排出される。 制御部60が起動されると、予め設定された検量線を検定するための検定プログラムをスタートさせる(ステップS1)。検定プログラムは、液温25℃の標準液で作成され、記憶された検量線(例えば、薬剤濃度をそれぞれ10mg/L、100mg/L、1000mg/L、10000mg/Lとした各標準液の電位を測定したもの)を、デジタル温度計22,23で検知された水温に応じて検定する。【0044】 次いで、開閉弁8aおよび9aを開いてボイラ水処理薬剤を含むボイラ水およびブロー水を試料水として採取口8および9から所定量を自動採取する。採取された試料水にイオン濃度測定部6および7のリチウムイオン電極16および17を浸漬すると、薬剤濃度設定プログラムをスタートさせる(ステップS2)。薬剤濃度設定プログラムは、リチウムイオン電極16および17に接続された電位差計18および19の指示電位を読み取り、検定された検量線に基づいて給水およびボイラ1内の薬剤濃度に換算し、ボイラ水中の薬剤濃度fおよびボイラ内薬剤濃度bを算出する。【0045】 次いで、算出されたボイラ水薬剤濃度fに基づいてボイラ水処理薬剤の添加量を調整する。 まず、ステップS3において、採取口8から採取されたボイラ水の薬剤濃度fを設定吐出量と比較する。ボイラ水薬剤濃度fが設定値より小さいと判断されると、ステップS4に移行してボイラ水処理薬剤の吐出量が増加するようポンプ12の駆動を制御する。一方、ステップS3における判断がnoの場合には、ステップS5に移行してボイラ水の薬剤濃度fを設定吐出量と比較する。ボイラ水薬剤濃度fが設定値より大きいと判断されると、ステップS6に移行してボイラ水処理薬剤の吐出量が減少するようポンプ12の駆動を制御する。 次に、ボイラ水薬剤濃度fが設定吐出量75〜85mg/Lになるまで、上記の測定と演算を繰り返し行い、ボイラ水薬剤濃度fが設定吐出量75〜85mg/Lに達すると、ポンプ12の吐出量を設定吐出量に戻す(ステップS7〜S8)。なお、ステップS5における判断がnoの場合には、ステップS9に移行してボイラ水薬剤濃度fが設定吐出量75〜85mg/Lに一致するか否かを判断する。ボイラ水薬剤濃度fが設定吐出量の範囲内にあれば、次のステップS10に移行し、noの場合には、ステップS3に移行する。【0046】 次いで、算出されたボイラ内薬剤濃度bに基づいてブロー水の排出量を調整(ボイラ水の濃縮度を調整)する。 まず、ステップS10において、採取口9から採取されたブロー水のボイラ内薬剤濃度bを設定濃度と比較する。ボイラ内薬剤濃度bが設定濃度より大きいと判断されると、ステップS11に移行してブロー水の排出量が増加するようブロー弁13の開度を大きくする。一方、ステップS10における判断がnoの場合には、ステップS12に移行してボイラ内薬剤濃度bを設定濃度と比較する。ボイラ内薬剤濃度bが設定濃度より小さいと判断されると、ステップS13に移行してブロー水の排出量が減少するようブロー弁13の開度を小さくする。 次に、ボイラ内薬剤濃度bが設定濃度1500〜1700mg/Lになるまで、上記の測定と演算を繰り返し行い、ボイラ内薬剤濃度bが設定濃度1500〜1700mg/Lに達すると、ブロー弁13の開度を設定開度に戻す(ステップS14〜S15)。なお、ステップS12における判断がnoの場合には、ステップS16に移行してボイラ内薬剤濃度bが設定濃度1500〜1700mg/Lに一致するか否かを判断する。ボイラ内薬剤濃度bが設定濃度の範囲内にあれば、ブロー水の排出量の調整を終了し、noの場合にはステップS10に移行する。【0047】 上記の一連の各プログラムは、予め設定されたインターバルで、あるいは割り込みで実行され、数日間あるいは数月間にわたるボイラ1内の薬剤濃度の推移が監視される。薬剤濃度の推移は、タイムチャートに記憶される。 なお、前記の検定プログラムにおける検量線の検定は、検量線の勾配が試料水の温度によって大きく変動しない場合に実施されることが好ましいが、デジタル温度計22,23を用いて採取口8,9で雰囲気温度まで徐冷した試料水を測定することも可能である。【0048】実施の形態3 図6は、ボイラ水処理を自動制御する本発明のボイラ水処理システムが適用されたボイラプラントの構成を模式的に表したものである。 図6において、ボイラプラント70は、炉筒煙管ボイラ1と、給水管20を介してボイラ1の上流側に配設された給水タンク2と、ボイラ水中の溶存酸素濃度を測定する溶存酸素濃度計72と、ボイラ水処理薬剤をボイラ水に添加する薬剤タンク14およびポンプ12と、ブロー水管30を介してボイラ1の下流側に配設された電磁式のブロー弁13および熱交換器5と、ボイラ1から供給される蒸気がドレンとなって給水タンク2に回収されるドレン回収管40とから主に構成されている。 ポンプ12は、ステッピングモータの周波数を制御することにより、薬剤タンク14からボイラ水へのボイラ水処理薬剤の添加量を任意に設定することができる。 ブロー弁13は、その開度が流量に比例するよう構成され、前記開度を調節することにより、ブロー水管30を介して排出されるブロー水の排出量を任意に設定することができる。【0049】 さらに、給水管20には、給水タンク2からボイラ1へボイラ水を送るためのポンプ(図示せず)が配設されている。 また、ブロー水管30は、熱交換器5の下流側に配設されたpH計73およびブロー水中のカチオン成分および/またはアニオン成分の濃度を測定するためのイオン濃度測定部7を有し、イオン濃度測定部7は、ブロー水管30に設けられた、電磁開閉弁9aを有する試料採取用の採取口9に接続されている。 イオン濃度測定部7は、JIS K0101に準ずるリチウムイオン電極17と、イオン電極17に接続された電位差計19と、採取口9から採取された試料温度を検知するデジタル温度計23とからなる。採取口9から採取されたブロー水は、イオン電極17を浸漬し、電位差計19によってボイラ水処理薬剤の濃度が測定される。【0050】 さらに、ボイラプラント70は、開閉弁9a、電磁ブロー弁13、ポンプ12、電位差計19、デジタル温度計23、溶存酸素濃度計72およびpH計73の各出入力部に接続され、CPU,ROM,RAM,タイマー等を有するコンピュータを含む制御部80を有する。【0051】 前記制御部80の動作に基づいて、ボイラプラント70によるボイラ水処理方法の一例を説明する。 薬剤タンク14から供給されるボイラ水処理薬剤の構成を表2に示す。【0052】【表2】【0053】 なお、上記のボイラ水処理薬剤は、亜硫酸ナトリウムを脱酸素剤として含む一液型のボイラ水処理薬剤〔商品名:ミラクルFD530 (株)片山化学工業研究所製/なお、ミラクルは(株)片山化学工業研究所の登録商標である〕を使用した。 溶存酸素濃度計72は、東亜電波工業(株)製のDO30Aを使用した。 pH計73は、東亜電波工業(株)製のHM−21Pを使用した。【0054】 ポンプ12は、ボイラ水中の溶存酸素濃度に基づいて、ボイラ水処理薬剤の吐出量が設定される。表2の一液型ボイラ水処理薬剤を使用する場合、溶存酸素濃度1mg/Lに対して亜硫酸ナトリウム7.9mg/Lが必要となるので、これを基準にしてボイラ水処理薬剤の吐出量が設定される。 また、ブロー弁13は、初期において標準設定開度に設定された状態に保持される。 ボイラプラント70は、0.7MPaでドレン回収率が0〜50%となるように運転条件が設定された。【0055】 図7〜図10のフローチャートを参照しながら、実施の形態3における制御部80の動作を説明する。 図7のフローチャートに示すように、ボイラプラント70は、後記の検定第2プログラム(P1)、薬剤濃度設定第2プログラム(P2)、ブロー設定プログラム(P3)およびpH補正プログラム(P4)を順次スタートさせることによってボイラ水が管理される。 図8〜図10は、上記のプログラムP2〜4のそれぞれのルーチンを説明するフローチャートである。【0056】 図7において、制御部80が起動されると、予め設定された検量線を検定するための検定第2プログラム(ステップP1)をスタートさせる。 検定第2プログラムは、液温25℃の標準液で作成され、記憶された検量線(例えば、リチウムイオン薬剤濃度をそれぞれ1mg/L、10mg/L、100mg/Lとした各標準液の電位を測定したもの)と、溶存酸素濃度計72による溶存酸素濃度測定結果に基づく脱酸素剤との相関を示す関係式により、デジタル温度計23で検知された水温に応じて検定を行う。 次いで、薬剤濃度設定第2プログラムをスタートさせる(ステップP2)。【0057】 薬剤濃度設定第2プログラム(P2)は、図8のフローチャートに示すように、まず、溶存酸素濃度計72でボイラ水中の溶存酸素濃度A(mg/L)を測定した(ステップS21)。 次いで、ステップS22において、P1で設定された検定第2プログラムに基づいて薬剤添加濃度A×Bを設定する。Bは、ボイラ水処理薬剤中の亜硫酸ナトリウムイオンの濃度比率に基づく係数であり、この例では、40である。 次いで、設定された薬剤添加濃度A×Bに基づいてポンプ12のモータに供給するパルスの周波数を設定し、設定された条件でポンプ12を駆動した(ステップS23およびS24)。薬剤濃度設定第2プログラム(P2)による制御の停止が指令されると、ブロー設定プログラム(P3)へ移行する(ステップS25)。【0058】 ブロー設定プログラム(P3)は、図9のフローチャートに示すように、まず、薬剤濃度設定第2プログラムのステップS22で得られた薬剤添加濃度A×Bに、ボイラ水処理薬剤中のリチウムイオンの濃度比率を示す係数Cを掛けて薬剤添加濃度A×B×Cを得た。この例では、Cが0.003である。 さらに、ボイラ濃縮倍率を設定した。設定された設定濃縮倍率Zは、通常、10〜20であるが、ここでは10(倍)に設定した(ステップS31)。 次いで、ステップS32において、リチウムイオン電極17によりリチウム濃度D(mg/L)を測定した。 次いで、ステップS33において、薬剤添加濃度A×B×Cおよびリチウム濃度Dの測定値に基づいて、実際のボイラ濃縮倍率を算出した。 この測定濃縮倍率Eは、D/(A×B×C)から得ることができる。 次いで、ステップS34において、設定濃縮倍率Zと測定濃縮倍率Eの各数値を比較した。【0059】 上記の比較結果において、Z<0.9Eとなった場合には電磁ブロー弁13の標準設定開度からさらに10%開き(ステップS35およびS36)、Z>1.1Eとなった場合には電磁ブロー弁13の標準設定開度からさらに10%閉じ(ステップS37およびS38)、0.9E≦Z≦1.1Eの場合には電磁ブロー弁13の標準設定開度のままの状態とした(ステップS39)。ブロー設定プログラム(P3)による制御の停止が指令されると、pH補正プログラム(P4)へ移行する(ステップS40)。【0060】 pH補正プログラム(P4)は、図10のフローチャートに示すように、まず、pH計73でブロー水中のpH値Fを測定した(ステップS41)。 次いで、ステップS42において、予め設定されたpH値の幅G〜Hの各数値と測定したpH値Fとを比較した。【0061】 上記の比較結果において、F<Gとなった場合には電磁ブロー弁13の標準設定開度からさらに10%閉じ(ステップS43およびS44)、F>Hとなった場合には電磁ブロー弁13の標準設定開度からさらに10%開き(ステップS45およびS46)、G≦F≦Hの場合には電磁ブロー弁13の標準設定開度のままの状態とした(ステップS47)。pH補正プログラム(P4)による制御の停止が指令されると、薬剤濃度設定第2プログラム(P2)へ戻る(ステップS48)。【0062】 上記の一連の各プログラムを所定期間内で実行し、この間に毎日または隔日で測定したボイラ1内の薬剤濃度の推移を図11〜図14に示す。 図11に示すように、溶存酸素濃度の測定に基づく薬剤添加率は、設定値から大きく離れることがなく変動の少ない推移となった。【0063】 図12は、pH補正プログラムによるpH補正を行わなかった場合の、溶存酸素濃度の測定に基づく薬剤添加率およびブロー率(測定濃縮倍率E)を示す。 この場合には、溶存酸素濃度の測定に基づく薬剤添加率およびブロー率は、設定値から大きく離れることがなく変動の少ない推移となり、ブロー水の管理がほぼ設定通り行われていることがわかる。【0064】 図13は、pH補正プログラムによるpH補正を行った場合の、溶存酸素濃度の測定に基づく薬剤添加率およびブロー率(測定濃縮倍率E)を示す。 この場合には、溶存酸素濃度の測定に基づく薬剤添加率およびブロー率は、設定値から大きく離れることがなく変動の少ない推移となり、ブロー水の管理がほぼ設定通り行われていることがわかる。【0065】 図14は、ボイラ水のpHの推移を示す。 図14から明らかなように、図14中の測定日2000/1/20を境にしてpH補正を行わなかった場合(図12)と、pH補正を行った場合(図13)では、pH測定値の分布が異なる。すなわち、pH補正を行った測定日2000/1/20以降は、JIS B8223で規定するpH範囲(pH11.0〜11.8)内に分布するようになり、ブロー水の管理がほぼ設定通り行われていることがわかる。【0066】 実施の形態3では、溶存酸素濃度の測定に基づいて薬剤添加手段を制御し、イオン濃度測定部の測定に基づいてブロー水量制御手段を制御したので、脱酸素剤の必要量を常時、正確に管理して添加し、なおかつブロー水を正確に管理することができる。 なお、実施の形態3では、脱気器をもたないボイラプラント70で用いられた本発明の脱酸素剤の添加量の制御を説明したが、脱気器を有するボイラプラントであっても上記の制御が可能であることは明らかである。 また、イオン電極17にカルボン酸イオン電極を用いる場合は、イオン電極17の上流側、例えば採取口9に、さらに溶存酸素濃度計72を接続することにより、溶存酸素濃度を測定することが好ましい。【0067】他の実施の形態 図5は、本発明に使用されるカルボン酸イオン電極の構成を示す。このカルボン酸イオン電極は、「神戸女子短期大学 論文 39巻 57 -71(1994) 」に開示されたものであり、説明は省略する。【0068】【発明の効果】 本発明によれば、ボイラ水系における塩素イオン濃度の測定と残留処理薬剤濃度の測定という二段階の測定が不要となり、またボイラ水中に塩素イオンが存在しない純水ボイラにも適用できるボイラ水処理方法およびボイラ水処理システムを提供することができる。【0069】 ボイラ水およびブロー水中におけるボイラ水処理薬剤の濃度に相関するカチオンまたはアニオン成分のボイラ水中における濃度を測定することにより、ボイラ水中におけるボイラ水処理薬剤の濃度を把握できるので、この結果に基づいてボイラ水の濃縮度および/またはボイラ水処理薬剤の添加量を制御することにより、簡易、迅速かつ正確にボイラの水処理を管理することができる。 また、本発明では、残留薬剤濃度を測定する際の有機溶剤の使用が不要となるので、現場での安全性を高めることができる。【0070】 したがって、多様な種類のボイラにおいて、ボイラ水の流量や水質の変化等に随時対応でき、ボイラの管理を簡易かつ迅速に行うことができる安全性の高いボイラ水処理システムおよびそれを用いたブロー水管理方法が提供され、スラッジ,不溶成分あるいは腐食因子となる塩化イオン等の過濃縮によるボイラ内部の腐食やスケールの生成を抑制し、キャリオーバーによる過熱器やタービンの障害、事故を防止することができる。【0071】 さらに、脱酸素剤の添加量の制御が正確に行えるので、ボイラ水の流量や水質の変化等に随時対応でき、ボイラの管理を簡易かつ迅速に行うことができ、しかも安全性が向上する。脱酸素剤の過剰な添加が防止できるので、脱酸素剤の添加に付随する障害を抑えることができる。【図面の簡単な説明】【図1】 この発明のボイラ水処理方法が実施されたボイラプラントの構成を模式的に示す概略図。【図2】 図1のボイラプラントで測定されたボイラ水処理薬剤の濃度推移を示すグラフ。【図3】 この発明のボイラ水処理システムが適用されるボイラプラントの構成を模式的に示す概略図。【図4】 図3のボイラプラントに適用されるボイラ水処理システムのフローチャート。【図5】 この発明で用いられるカルボン酸イオン電極の構成を示す正面断面図。【図6】 この発明のボイラ水処理システムが適用されるボイラプラントの構成を模式的に示す概略図。【図7】 図6のボイラプラントに適用されるボイラ水処理システムのフローチャート。【図8】 図7の薬剤濃度設定第2プログラムのサブルーチンを説明するフローチャート。【図9】 図7のブロー設定プログラムのサブルーチンを説明するフローチャート。【図10】 図7のpH補正プログラムのサブルーチンを説明するフローチャート。【図11】 この発明の溶存酸素濃度の測定に基づく薬剤添加率の推移を示すグラフ。【図12】 この発明の溶存酸素濃度の測定に基づく薬剤添加率およびブロー率を示すグラフ。【図13】 この発明の溶存酸素濃度の測定に基づく薬剤添加率およびブロー率を示すグラフ。【図14】 この発明の溶存酸素濃度の測定に基づいて行われた薬剤添加によるボイラ水のpHの推移を示すグラフ。【符号の説明】 1 ボイラ 2 給水タンク 3 ブロー弁 4 薬剤タンク 5 熱交換器 6 イオン濃度測定部 7 イオン濃度測定部 8 採取口 8a 開閉弁 9 採取口 9a 開閉弁 10 ボイラプラント 12 ポンプ 13 ブロー弁 14 薬剤タンク 20 給水管 30 ブロー水管 40 ドレン回収管 50 ボイラプラント 60 制御部 70 ボイラプラント 72 溶存酸素濃度計 73 pH計 80 制御部 ボイラと、ボイラ水としての軟水または純水を貯水する給水タンクと、該給水タンク内のボイラ水をボイラに給水するための給水管と、前記ボイラにて発生した蒸気の一部をドレンとして前記給水タンクへ回収するためのドレン回収管と、前記ボイラからブロー水を外部に排出するためのブロー水管と、前記給水管にのみ設けられてボイラへ給水されるボイラ水の溶存酸素濃度を測定する溶存酸素濃度計およびボイラ水に脱酸素剤を含むボイラ水処理薬剤を添加する薬剤添加手段と、前記ブロー水管に設けられてボイラから排出されるブロー水の量を制御するブロー水量制御手段およびブロー水中のカチオン成分またはアニオン成分の濃度を測定するためのイオン濃度測定部と、前記ブロー水管に設けられて前記ブロー水のpHを測定するpH計と、制御部とを備え、 前記イオン濃度測定部が、軟水または純水には実質的に含有されないカチオン成分またはアニオン成分のブロー水中における濃度を測定するイオン電極を有してなり、 前記制御部が、前記溶存酸素濃度計によって測定された溶存酸素濃度測定値に基づいて前記薬剤添加手段を制御し、その後前記イオン濃度測定部によって測定されたイオン濃度測定値に基づいて前記ブロー水量制御手段を制御し、その後前記pH計によって測定されたブロー水のpH測定値に基づいてブロー水量制御手段の制御を補正するように構成されたことを特徴するボイラ水処理システム。 前記イオン電極が、リチウムイオンの濃度を測定するリチウム電極またはカルボン酸イオンの濃度を測定するカルボン酸電極である請求項1に記載のボイラ水処理システム。 前記薬剤添加手段が、前記カチオンまたはアニオン成分をボイラ水処理薬剤として、または別途にボイラ水中に添加する請求項1または2に記載のボイラ水処理システム。 前記溶存酸素濃度計が、前記給水管における前記薬剤添加手段の上流側のボイラ水中の溶存酸素濃度を測定する請求項1〜3のいずれか1に記載のボイラ水処理システム。 請求項1〜4のいずれか1つに記載のボイラ水処理システムを用いるブロー水管理方法であって、前記溶存酸素濃度計にてボイラ水中の溶存酸素濃度を測定する第1ステップと、前記溶存酸素濃度計によって測定された溶存酸素濃度測定値に基づいて前記薬剤添加手段にて前記ボイラ水処理薬剤をボイラ水に添加する第2ステップと、前記イオン濃度測定部にてブロー水中のイオン濃度を測定する第3ステップと、前記イオン濃度測定部によって測定されたイオン濃度測定値に基づいて前記ブロー水制御手段を制御して前記ブロー水管を流れるブロー水の量を調整する第4ステップと、前記pH計によってブロー水のpHを測定する第5ステップと、前記pH計によって測定されたpH測定値に基づいて前記ブロー水制御手段による制御を補正する第6ステップとを含むブロー水管理方法。