タイトル: | 特許公報(B2)_4−フタロニトリル誘導体の製造方法 |
出願番号: | 2001225421 |
年次: | 2007 |
IPC分類: | C07C 319/14,C07C 323/62,C07B 61/00 |
寺尾 幸一 JP 3882546 特許公報(B2) 20061124 2001225421 20010726 4−フタロニトリル誘導体の製造方法 セイコーエプソン株式会社 000002369 増田 達哉 100091292 朝比 一夫 100091627 寺尾 幸一 20070221 C07C 319/14 20060101AFI20070201BHJP C07C 323/62 20060101ALI20070201BHJP C07B 61/00 20060101ALN20070201BHJP JPC07C319/14C07C323/62C07B61/00 300 C07C319/00 C07C323/00 CA(STN) REGISTRY(STN) 特開昭60−209583(JP,A) 特開昭63−71858(JP,A) 9 2003040859 20030213 14 20031112 前田 憲彦 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、4−フタロニトリル誘導体の製造方法に関するものである。【0002】【従来の技術】現在、プリンター用インク材料や、光情報記録媒体における記録材料等としてフタロシアニン化合物が、広く用いられている。【0003】このフタロシアニン化合物は、通常、フタロニトリル誘導体、無水フタル酸誘導体や1,3−ジイミノイソインドリン誘導体等を用いて、その合成(製造)が行なわれている。【0004】そして、フタロシアニン化合物においては、例えば、近赤外線吸収能、各種有機溶媒への溶解性、耐候性等の特性を向上させる観点から、フタロシアニン骨格のベンゼン環に対して置換基を導入することが行なわれている。この場合、フタロニトリルや無水フタル酸のベンゼン環に対して置換基を導入しておき、かかるフタロニトリル誘導体や無水フタル酸誘導体を用いて、対応するフタロシアニン化合物が合成されている。【0005】このようなフタロニトリル誘導体や無水フタル酸誘導体を合成する場合には、例えば、フタロニトリルのニトロ化体を出発物質として使用し、アミノ基のジアゾ化反応等を経由して置換基を導入する方法や、無水フタル酸を濃硫酸によりスルホン化体とし、かかる無水フタル酸のスルホン化体を経由する方法等が用いられている。【0006】しかしながら、フタロニトリルのニトロ化体を出発物質(合成中間体)とする製造方法では、製造工程数が多く、目的とする置換基を位置選択的に導入することが容易ではなく、収率も低い。また、無水フタル酸のスルホン化体を経由する製造方法では、濃硫酸によるスルホン化の工程において、位置選択的にスルホン基を導入することができず、すなわち、異性体が混在してしまい、純度が低くなる。したがって、最終的に得られるフタロシアニン化合物も、収率が低かったり、異性体の混合物となってしまったりする。【0007】フタロシアニン化合物において、異性体が混在した場合、分子同士の積層が効率よくなされず、特に、近赤外線吸収能の向上を図ることができないという問題がある。【0008】【発明が解決しようとする課題】本発明者は、フタロシアニン化合物の前記特性(特に、近赤外線吸収能)を向上させるためには、フタロシアニン骨格の対称的な位置に置換基を導入するのが有効であると考え、種々の検討を重ねた結果、特に、4−フタロニトリル誘導体から得られたフタロシアニン化合物が、近赤外線吸収能、各種有機溶媒への溶解性および耐候性に優れることを見い出した。【0009】しかしながら、前述したように、従来の製造方法では、4−フタロニトリル誘導体、すなわち、位置選択的に置換基を有するフタロニトリル誘導体を、合成(製造)することが極めて困難である。【0010】本発明の目的は、4−フタロニトリル誘導体を、容易かつ高い収率で得ること(合成すること)ができる製造方法を提供することにある。【0011】【課題を解決するための手段】このような目的は、下記(1)〜(9)の本発明により達成される。【0012】(1) アルカリ存在下で、4−ブロモフタロニトリルと、下記式(I)で示されるベンジルメルカプタン誘導体とを反応させ、下記式(II)で示される4−フタロニトリル誘導体を得ることを特徴とする4−フタロニトリル誘導体の製造方法。【化3】【化4】[式(I)、式(II)中、Rは、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表す。]【0013】(2) 前記4−ブロモフタロニトリルと、前記ベンジルメルカプタン誘導体との反応温度は、30〜120℃である上記(1)に記載の4−フタロニトリル誘導体の製造方法。【0014】(3) 前記4−ブロモフタロニトリルと、前記ベンジルメルカプタン誘導体との反応時間は、0.5〜8時間である上記(1)または(2)に記載の4−フタロニトリル誘導体の製造方法。【0015】(4) 前記アルカリは、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、水素化ナトリウム、ピリジン、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]−5−ノネンのうちの少なくとも1種である上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の4−フタロニトリル誘導体の製造方法。【0016】(5) 前記アルカリの使用量は、前記ベンジルメルカプタン誘導体1モルに対して、1〜10モルである上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の4−フタロニトリル誘導体の製造方法。【0017】(6) 前記4−ブロモフタロニトリルは、4−ブロモ無水フタル酸から得られたものである上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の4−フタロニトリル誘導体の製造方法。【0018】(7) 前記4−ブロモフタロニトリルは、4−ブロモ無水フタル酸とアミド化合物とを反応させ、4−ブロモフタルイミドを得、次いで、前記4−ブロモフタルイミドとアンモニアとを反応させ、4−ブロモフタルアミドを得、その後、前記4−ブロモフタルアミドを脱水剤で処理することにより得られたものである上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の4−フタロニトリル誘導体の製造方法。【0019】(8) 前記アミド化合物は、ホルムアミドである上記(7)に記載の4−フタロニトリル誘導体の製造方法。【0020】(9) 前記脱水剤は、塩化チオニル、五酸化リン、オキシ塩化リン、ポリリン酸エステル、トリフェニルホスフィン、ホスゲンのうちの少なくとも1種である上記(7)または(8)に記載の4−フタロニトリル誘導体の製造方法。【0021】【発明の実施の形態】前述した課題を解決すべく、さらに、本発明者は、種々の検討を重ねた結果、4−ハロゲン化フタロニトリルを出発物質として用いることにより、4−フタロニトリル誘導体を容易かつ高い収率で合成できることを見い出した。【0022】特に、4−ハロゲン化フタロニトリルの中でも、ブロモ基を導入したもの(4−ブロモフタロニトリル)は、極めて反応性の高いフルオロ基やクロル基を導入したもの、あるいは、極めて反応性の低いヨード基を導入したものに比べて、合成反応を制御しやすく、他の官能基(例えば、アルキル基、アミノ基、水酸基等)への変換、エーテル結合の生成等、すなわち、4−フタロニトリル誘導体の合成(フタロニトリル誘導体への誘導)を、容易かつ高い収率で行なうことができることを見い出し、本発明を完成するに至った。【0023】以下、本発明の4−フタロニトリル誘導体の製造方法の好適な実施形態について詳細に説明する。【0024】式(II)の4−フタロニトリル誘導体は、例えば、下記化5に示すように、アルカリ存在下で、式(III)の4−ブロモフタロニトリルと、式(I)のベンジルメルカプタン誘導体とを反応させることにより合成(製造)される。【0025】【化5】【0026】[0] まず、式(III)の4−ブロモフタロニトリルを用意する。ここで、4−ブロモフタロニトリルの製造方法の一例について説明する。【0027】この4−ブロモフタロニトリルは、例えば、4−ブロモ無水フタル酸から、下記化6のスキームに従って製造することができる。【0028】【化6】【0029】この製造方法によれば、4−ブロモフタロニトリルを、容易かつ高い収率で製造することができる。【0030】[0−1] まず、式(IV)の4−ブロモ無水フタル酸を用意する。この4−ブロモ無水フタル酸は、比較的容易かつ安価に入手可能な化合物である。このため、4−ブロモ無水フタル酸を用いることにより、4−ブロモフタロニトリル、延いては、4−フタロニトリル誘導体も比較的安価に製造することができる。【0031】[0−2] 次いで、4−ブロモ無水フタル酸と、アミド化合物とを反応させることにより、式(V)の4−ブロモフタルイミドを得る。【0032】ここで、4−ブロモフタルイミドは、4−ブロモ無水フタル酸をアンモニア気流中で加熱する方法により合成してもよいが、かかる方法では、アンモニアガスを用いるため、その操作が極めて煩雑となるばかりでなく、安全に操作を進めるのに細心の注意を払わなければならない。これに比べ、アミド化合物を用いることにより、後述するように、アミド化合物自体を反応溶媒として用いたり、アミド化合物を反応溶媒に添加(溶解)するだけで足りるので、その操作を、より容易かつ安全に行なうことができるという利点がある。【0033】このようなアミド化合物としては、例えば、ホルムアミド、尿素、炭酸アンモニウム等が挙げられ、これらの中でも、特に、ホルムアミドを用いるのが好ましい。【0034】ホルムアミドは、常温で液体であり、それ自体を反応溶媒として用いることができる。すなわち、ホルムアミド中に4−ブロモ無水フタル酸を添加(溶解)して、これらを反応させることができる。これにより、別途、反応溶媒を用いる必要がないので、4−ブロモフタロニトリルの合成(製造)における手間とコストの低減を図ることができるという利点がある。【0035】アミド化合物の使用量としては、特に限定されないが、4−ブロモ無水フタル酸1モルに対して、例えば、1〜10モル程度とするのが好ましく、1.5〜3モル程度とするのがより好ましい。アミド化合物の使用量が少なすぎると、アミド化合物の種類等によっては、未反応の4−ブロモ無水フタル酸が多く残存する場合がある。一方、アミド化合物の使用量を、前記上限値を超えて多くしても、それ以上、4−ブロモフタルイミドの収量の増大が見込めず、アミド化合物が無駄になる場合がある。【0036】なお、アミド化合物自体に、反応溶媒を兼ねさせる場合には、前記範囲を超えた過剰量を用いるようにすればよい。【0037】また、反応溶媒としては、ホルムアミド(常温で液体のアミド化合物)を用いることができる他、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、ブロモベンゼンのような芳香族炭化水素類、テトラヒドロフラン、ジオキサンのようなエーテル類等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。【0038】反応温度としては、アミド化合物の種類等により適宜設定され、特に限定されないが、例えば、60〜200℃程度とするのが好ましく、90〜160℃程度とするのがより好ましい。このような温度範囲において、4−ブロモフタルイミドの収量を増大させることができる。【0039】また、反応時間も、アミド化合物の使用量、反応温度等により若干異なるが、通常、1〜8時間程度とするのが好ましく、2〜6時間程度とするのがより好ましい。このような時間範囲において、4−ブロモフタルイミドの収量を増大させることができる。【0040】[0−3] 次いで、4−ブロモフタルイミドと、アンモニアとを反応させることにより、式(VI)の4−ブロモフタルアミドを得る。【0041】本工程の反応では、アンモニアを溶媒に溶解したアンモニア溶液に、4−ブロモフタルイミドを添加しつつ、これらを反応させる。【0042】アンモニアを溶解する溶媒としては、例えば、蒸留水、イオン交換水、超純水、RO水のような各種水、メタノール、エタノール、プロパノールのようなアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドのような各種有機溶媒等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。【0043】アンモニアの使用量としては、特に限定されないが、4−ブロモフタルイミド1モルに対して、例えば、5〜50モル程度とするのが好ましく、10〜20モル程度とするのがより好ましい。アンモニアの使用量が少なすぎると、未反応の4−ブロモフタルイミドが多く残存する場合がある。一方、アンモニアの使用量を、前記上限値を超えて多くしても、それ以上、4−ブロモフタルアミドの収量の増大が見込めない。【0044】反応温度としては、特に限定されないが、例えば、−10〜60℃程度とするのが好ましく、0〜20℃程度とするのがより好ましい。このような温度範囲において、4−ブロモフタルアミドの収量を増大させることができる。【0045】また、反応時間も、アンモニアの使用量、反応温度等により若干異なるが、通常、1〜24時間程度とするのが好ましく、3〜10時間程度とするのがより好ましい。このような時間範囲において、4−ブロモフタルアミドの収量を増大させることができる。【0046】[0−4] 次いで、4−ブロモフタルアミドを、脱水剤で処理することにより、式(III)の4−ブロモフタロニトリルを得る。【0047】この脱水剤としては、例えば、塩化チオニル、五酸化リン、オキシ塩化リン、ポリリン酸エステル、トリフェニルホスフィン、ホスゲン、無水酢酸、ベンゼンスルホニルクロリド等が挙げられ、これらの中でも、特に、塩化チオニル、五酸化リン、オキシ塩化リン、ポリリン酸エステル、トリフェニルホスフィン、ホスゲンのうちの少なくとも1種を用いるのが好ましい。これらの脱水剤を用いることにより、比較的温和な条件下で、収率よく反応を行なうことができるという利点がある。【0048】脱水剤の使用量としては、特に限定されないが、4−ブロモフタルアミド1モルに対して、例えば、1〜10モル程度とするのが好ましく、2〜4モル程度とするのがより好ましい。脱水剤の使用量が少なすぎると、未反応の4−ブロモフタルアミドが多く残存する場合がある。一方、アンモニアの使用量を、前記上限値を超えて多くしても、それ以上、4−ブロモフタロニトリルの収量の増大が見込めず、脱水剤が無駄になる場合がある。【0049】なお、常温で液体の脱水剤を用いる場合には、前記範囲を超えた過剰量を用いて、脱水剤自体に反応溶媒を兼ねさせることもできる。【0050】また、反応溶媒としては、前記常温で液体の脱水剤を用いることができる他、例えば、塩化メチレン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタンのようなハロゲン化炭化水素類、n−ヘキサン、石油エーテル、トルエン、ベンゼン、キシレンのような炭化水素類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンのようなケトン類、酢酸エチル、酢酸メチルのようなエステル類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンのようなエーテル類、アセトニトリル、プロピオニトリルのようなニトリル類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルリン酸トリアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、ジメトキシエタン、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等の各種有機溶媒が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。【0051】処理温度としては、特に限定されないが、例えば、−10〜60℃程度とするのが好ましく、0〜20℃程度とするのがより好ましい。このような温度範囲において、4−ブロモフタロニトリルの収量を増大させることができる。【0052】なお、処理温度は、前記温度範囲内で一定に保つようにしてもよいし、必要に応じて変化させるようにしてもよい。【0053】また、処理時間も、脱水剤の使用量、処理温度等により若干異なるが、通常、0.5〜8時間程度とするのが好ましく、1〜5時間程度とするのがより好ましい。このような時間範囲において、4−ブロモフタロニトリルの収量を増大させることができる。【0054】[1] 次に、アルカリ存在下で、4−ブロモフタロニトリルと、式(I)のベンジルメルカプタン誘導体とを反応させることにより、式(II)の4−フタロニトリル誘導体を得る。【0055】前記式(I)で示されるベンジルメルカプタン誘導体において、置換基Rは、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表す。【0056】なお、炭素数3、4のアルキル基としては、直鎖状、分枝状、環状のいずれであってもよい。【0057】また、置換基Rがアルキル基の場合、置換基Rは、ベンゼン環の2〜6位のいずれに導入されていてもよいが、特に、4位に導入されているのが好ましい。すなわち、この場合、式(I)のベンジルメルカプタン誘導体としては、4−ベンジルメルカプタン誘導体であるのが好ましい。【0058】本工程[1]において、アルカリは、反応を促進させるために添加されるものであり、例えば、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、水素化ナトリウム、水素化リチウム、水素化カルシウム、水素化アルミニウムリチウムのような無機塩基、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、ピペリジン、ジアミノエタン、ジアミノプロパン、ジアミノブタン、ジアミノペンタン、ジアミノヘキサン、ジアミノオクタン、トリエタノールアミン、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン(DBU)、1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]−5−ノネン(DBN)のような有機塩基等が挙げられ、これらの中でも、特に、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、水素化ナトリウム、ピリジン、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]−5−ノネンを用いるのが好ましい。また、これらのアルカリは、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。【0059】アルカリの使用量としては、特に限定されないが、ベンジルメルカプタン誘導体1モルに対して、例えば、1〜10モル程度とするのが好ましく、1〜5モル程度とするのがより好ましい。このようなアルカリの使用量範囲において、4−ブロモフタロニトリルとベンジルメルカプタン誘導体とを、より効率よく反応させることができる。【0060】なお、アルカリとして、有機塩基を使用する場合には、前記範囲を超えた過剰量を用いて、アルカリ自体に反応溶媒を兼ねさせることもできる。【0061】また、反応溶媒としては、前記有機塩基を用いることができる他、例えば、塩化メチレン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタンのようなハロゲン化炭化水素類、n−ヘキサン、石油エーテル、トルエン、ベンゼン、キシレンのような炭化水素類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンのようなケトン類、酢酸エチル、酢酸メチルのようなエステル類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンのようなエーテル類、アセトニトリル、プロピオニトリルのようなニトリル類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルリン酸トリアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、ジメトキシエタン、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等の各種有機溶媒が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。【0062】反応温度としては、特に限定されないが、例えば、30〜120℃程度とするのが好ましく、60〜90℃程度とするのがより好ましい。このような温度範囲において、4−フタロニトリル誘導体の収量を増大させることができる。【0063】また、反応時間も、アルカリの使用量、反応温度等により若干異なるが、通常、0.5〜8時間程度とするのが好ましく、1〜5時間程度とするのがより好ましい。このような時間範囲において、4−フタロニトリル誘導体の収量を増大させることができる。【0064】以上のような工程[0]および[1]を経て、4−フタロニトリル誘導体が合成(製造)される。【0065】なお、前記各工程[0−2]〜[0−4]および[1]においては、それぞれ、例えば、抽出、洗浄、再結晶等の後処理操作により、各化合物の精製および/または単離を行なうようにしてもよい。また、前記各工程[0−2]〜[0−4]において得られた各化合物(合成物)は、このような後処理操作を、必要に応じて省略し、そのまま次工程に供するようにしてもよい。【0066】本発明により合成(製造)される4−フタロニトリル誘導体は、フタロシアニン化合物の原材料として有用な化合物である。また、4−フタロニトリル誘導体の用途は、これに止まらず、例えば、医薬品、液晶等の各種化合物の原材料としても極めて有用な化合物である。【0067】以上、本発明の4−フタロニトリル誘導体の製造方法の実施形態に基づいて説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。【0068】例えば、本発明では、必要に応じて、任意の工程を追加するようにしてもよい。【0069】なお、本発明の4−フタロニトリル誘導体の製造方法は、例えば3−フタロニトリル誘導体、複数の位置に置換基を有するフタロニトリル誘導体等の合成にも適用することができる。【0070】【実施例】次に、本発明の具体的実施例について説明する。【0071】(実施例1)<0> まず、4−ブロモフタロニトリルを、次のようにして得た。【0072】<0−1> 4−ブロモ無水フタル酸90.8g(0.4mol)を、ホルムアミド450g(10mol)に加え、120〜130℃に保って3時間攪拌した。【0073】反応終了後、反応液を室温まで冷却した後、この反応液にメタノールを400mL加え、析出した結晶を濾別した。【0074】得られた結晶を、少量のメタノールで洗浄した後、一晩風乾させた。これにより、76.9gの4−ブロモフタルイミドの白色結晶を得た(mp235〜236℃)。【0075】<0−2> 次に、この4−ブロモフタルイミド76.9g(0.34mol)を冷却して−5〜0℃に保ちながら、28%アンモニア水溶液400mLに少量ずつ加えた。その後、室温下で一晩(8時間)攪拌した。【0076】反応終了後、析出した結晶を濾別して、蒸留水、メタノールの順で洗浄した後、減圧下で赤外線ランプを用いて乾燥させた。【0077】これにより、74.5gの4−ブロモフタルアミドの白色固体を得た(mp209〜210℃(dec.))。【0078】<0−3> 次に、氷冷下5〜10℃に保ったジメチルホルムアミド(DMF)360mLに、塩化チオニル91.2g(0.77mol)を30分かけて滴下し、同温度で1時間攪拌した。【0079】次いで、この溶液に、4−ブロモフタルアミド74.5g(0.31mol)を冷却して、0〜5℃に保ちながら、少量ずつ加えた。その後、5〜10℃に保って1時間攪拌し、さらに室温下で2時間攪拌した。【0080】反応終了後、反応液を氷水に注加し、析出した結晶を濾別し、蒸留水で洗浄した後、室温下で風乾した。【0081】得られた結晶に対して、トルエン、n−ヘキサンからの再結晶操作を行なった。【0082】これにより、60.0gの4−ブロモフタロニトリルの白色結晶を得た(mp139〜143℃)。【0083】<1> 次に、4−ブロモフタロニトリル33.5g(0.16mol)をジメチルホルムアミド(DMF)325mLに溶解した。【0084】次いで、この溶液に、炭酸カリウム44.8g(0.32mol)、および、下記式(I−1)[式(I−1)中、R1=H]のベンジルメルカプタン20.1g(0.16mol)を加えた。【0085】【化7】【0086】この混合物を加熱し、70〜80℃に保って3時間攪拌した後、室温まで冷却した。【0087】その後、反応液を氷水に注加し、析出した結晶を濾別し、この結晶を蒸留水で洗浄した後、50℃で送風乾燥した。さらに、得られた結晶に対して、トルエンからの再結晶操作を行った。【0088】これにより、下記式(II−1)[式(II−1)中、R1=H]の4−ベンジルチオフタロニトリル34.3gを白色結晶として得た(mp139.5〜141℃)。【0089】【化8】【0090】なお、4−ベンジルチオフタロニトリルの4−ブロモフタロニトリルからの収率は、84%であった。【0091】(実施例2)前記工程<1>における反応条件を、以下に示すように変更した以外は、前記実施例1と同様にして、4−ベンジルチオフタロニトリルを合成した。【0092】前記工程<1>において、4−ブロモフタロニトリルのジメチルホルムアミド(DMF)溶液に、炭酸カリウムおよびベンジルメルカプタンを加え、この混合物を加熱し、40〜50℃で6時間攪拌した。【0093】なお、4−ベンジルチオフタロニトリルの4−ブロモフタロニトリルからの収率は、75%であった。【0094】(実施例3)前記工程<1>において、炭酸カリウムの使用量を、11.2g(0.08mol)に変更した以外は、前記実施例1と同様にして、4−ベンジルチオフタロニトリルを合成した。【0095】なお、4−ベンジルチオフタロニトリルの4−ブロモフタロニトリルからの収率は、68%であった。【0096】(実施例4)前記工程<1>において、炭酸カリウムに代わり、水素化ナトリウム4.8g(0.20mol)を用いた以外は、前記実施例1と同様にして、4−ベンジルチオフタロニトリルを合成した。【0097】なお、4−ベンジルチオフタロニトリルの4−ブロモフタロニトリルからの収率は、82%であった。【0098】(実施例5)ベンジルメルカプタンに代わり、前記式(I−1)[式(I−1)中、R1=CH3]の4−メチルベンジルメルカプタンを用いた以外は、前記実施例1と同様にして、前記式(II−1)[式(II−1)中、R1=CH3]の4−(4−メチルベンジルチオ)フタロニトリルを白色結晶として得た(mp148〜149℃)。【0099】なお、4−(4−メチルベンジルチオ)フタロニトリルの4−ブロモフタロニトリルからの収率は、80%であった。【0100】(比較例1)まず、4−クロロ無水フタル酸を用いて、前記実施例1と同様にして、4−クロロフタロニトリルを合成した。【0101】次に、この4−クロロフタロニトリルを用いて、前記実施例1と同様にして、4−ベンジルチオフタロニトリルを得た。【0102】なお、4−ベンジルチオフタロニトリルの4−クロロフタロニトリルからの収率は、52%であり、反応生成物中には、4−ベンジルチオフタロニトリルの他に、構造不明の茶褐色の副生成物が混在していた。【0103】(比較例2)まず、4−ヨード無水フタル酸を用いて、前記実施例1と同様にして、4−ヨードフタロニトリルを合成した。【0104】次に、この4−ヨードフタロニトリルを用いて、前記実施例1と同様にして、4−ベンジルチオフタロニトリルを得た。【0105】なお、4−ベンジルチオフタロニトリルの4−ヨードフタロニトリルからの収率は、45%であった。【0106】【発明の効果】以上述べたように、本発明によれば、4−ブロモフタロニトリルを出発物質として用いるので、位置選択的に置換基が導入された4−フタロニトリル誘導体を、容易かつ高い収率で製造することができる。【0107】また、反応に用いるアルカリ等の種類、反応温度や反応時間を、適宜選択することにより、4−フタロニトリル誘導体の収率をより向上させることができる。【0108】さらに、4−ブロモフタロニトリルを、4−ブロモ無水フタル酸から合成(製造)することにより、前記効果をさらに向上させることができる。 アルカリ存在下で、4−ブロモフタロニトリルと、下記式(I)で示されるベンジルメルカプタン誘導体とを反応させ、下記式(II)で示される4−フタロニトリル誘導体を得ることを特徴とする4−フタロニトリル誘導体の製造方法。[式(I)、式(II)中、Rは、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表す。] 前記4−ブロモフタロニトリルと、前記ベンジルメルカプタン誘導体との反応温度は、30〜120℃である請求項1に記載の4−フタロニトリル誘導体の製造方法。 前記4−ブロモフタロニトリルと、前記ベンジルメルカプタン誘導体との反応時間は、0.5〜8時間である請求項1または2に記載の4−フタロニトリル誘導体の製造方法。 前記アルカリは、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、水素化ナトリウム、ピリジン、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]−5−ノネンのうちの少なくとも1種である請求項1ないし3のいずれかに記載の4−フタロニトリル誘導体の製造方法。 前記アルカリの使用量は、前記ベンジルメルカプタン誘導体1モルに対して、1〜10モルである請求項1ないし4のいずれかに記載の4−フタロニトリル誘導体の製造方法。 前記4−ブロモフタロニトリルは、4−ブロモ無水フタル酸から得られたものである請求項1ないし5のいずれかに記載の4−フタロニトリル誘導体の製造方法。 前記4−ブロモフタロニトリルは、4−ブロモ無水フタル酸とアミド化合物とを反応させ、4−ブロモフタルイミドを得、次いで、前記4−ブロモフタルイミドとアンモニアとを反応させ、4−ブロモフタルアミドを得、その後、前記4−ブロモフタルアミドを脱水剤で処理することにより得られたものである請求項1ないし6のいずれかに記載の4−フタロニトリル誘導体の製造方法。 前記アミド化合物は、ホルムアミドである請求項7に記載の4−フタロニトリル誘導体の製造方法。 前記脱水剤は、塩化チオニル、五酸化リン、オキシ塩化リン、ポリリン酸エステル、トリフェニルホスフィン、ホスゲンのうちの少なくとも1種である請求項7または8に記載の4−フタロニトリル誘導体の製造方法。