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タイトル:特許公報(B2)_ポルフィリン・フラーレン連結分子により化学修飾されたITO電極を用いた光エネルギー・電気エネルギー変換素子
出願番号:2001220227
年次:2009
IPC分類:H01M 14/00,C07D 487/22,C07F 3/06


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中島 容子 今堀 博 JP 4326167 特許公報(B2) 20090619 2001220227 20010719 ポルフィリン・フラーレン連結分子により化学修飾されたITO電極を用いた光エネルギー・電気エネルギー変換素子 独立行政法人科学技術振興機構 503360115 宮本 晴視 100110168 中島 容子 今堀 博 20090902 H01M 14/00 20060101AFI20090813BHJP C07D 487/22 20060101ALI20090813BHJP C07F 3/06 20060101ALI20090813BHJP JPH01M14/00 PC07D487/22C07F3/06 H01M 14/00 2 2003036896 20030207 9 20050106 特許法第30条第1項適用 平成13年3月15日 社団法人日本化学会発行の「日本化学会第79回春季年会(2001)講演予稿集I」に発表 須田 裕一 【0001】【発明の属する技術分野】 本発明は、光透過型半導体電極であるITO(インジウム−スズ−酸化物:Indium-tin-Oxide)電極上に、同一分子内に電子供与体(ドナーという場合もある)−受容体(アクセプターという場合もある)構造、具体的にはポルフィリン−フラーレン構造を有する化合物を、自己組織化により配列し、共有結合により固定化した単分子膜(Self-Assembled Monolayers=SAM)を作製して、高効率の光エネルギー・電気エネルギー変換系を提供する技術に関する。【0002】【従来の技術】 植物やある種の光合成細菌は、太陽エネルギーを化学エネルギーに代える働きを持つ系を持っている。該系では、希薄な密度の光子を効率よく集めるために、アンテナのように多くの光受容体分子が集合体を作っていることが生化学的・分光学的解析データから知られていた。この系をアンテナ系といい、光合成ではクロロフィルやカロチノイドなどの有機色素がエネルギー伝達のために反応中心タンパク質の周辺に配置されている。そして、アンテナ系複合体で捕足された光エネルギーは反応中心複合体に位置するクロロフィル2量体(スペシャルペアーと呼ばれる)に集められ電荷分離反応が行われる。電子供与体と電子受容体間の電子的相互作用が大きい場合、電子移動速度は、電子移動の自由エネルギー変化(−ΔG)と電子移動に伴う再配列エネルギー(λ)(電子移動による化学結合の変化および溶媒などの近傍の分子との相互作用の変化のエネルギー)で決まるが、相互作用が小さくなると距離に依存して指数関数的に電子移動速度は遅くなる。【0003】 最近生態系における集光複合体のX線結晶学解析に基づくX線構造決定から、効率的なアンテナ系の構築が盛んに試みられている。該アンテナ系の構築により、ここで効率よく集められたエネルギーを高速に電荷分離を行う反応中心タンパク質に送り込むことでき、より効率よく太陽光を吸収し、そのエネルギーを利用できるようにすることができる。【0004】 前記自然におけるアンテナ複合体は、自己組織化によって形成されており、その際タンパク質が自己組織化複合体の形成を助けている。 このような研究の中で、人工的に組織化された分子集合体、特に単分子膜の形成方法が研究されており、その手法として、ラングミュアー−ブロジェット膜(いわゆるLB膜)や脂質膜などを用いたものがあるが、単分子膜を形成する方法としては均一性に欠け(ピンホールなどの欠陥部の発生がある)、更に、基板上に形成された単分子膜は、該膜を構成する分子が基板表面に物理的に付着したものであるため、膜の安定性にも欠けるという不都合があった。このような中で、アルカンチオールが金表面において自己組織化した単分子膜を形成することがわかって以来、この単分子膜形成の原理、即ち自己組織化の機能を用いて(共吸着)単分子膜を形成させる技術が研究されてきた。また更に進んで、機能性を持った単分子膜を得るために、前記機能性を発揮する基と前記自己組織化機能を発揮する基とを結合し、また自己組織化により形成された単分子膜を電極表面に安定に固定する基を導入した化合物を設計して、その化合物だけで自己組織化により種々の機能を持った単分子膜を形成する研究へと発展してきている(Hiroshi Imahori, et al., J. Phys. Chem. B 2000, 104, 1253-1260)。 本発明者は、前記アンテナ系を更に改良したアンテナ系複合体も提案している(特願2000−120511号、Hiroshi Imahori et. al., J. Am. Chem. Soc. 2001, 123, 100-110)。【0005】 このような中で、前記技術の新たな展開をすべく、本発明者等は、基本に戻り、電極構成材料と該電極上に形成された自己組織化膜の光電流の量子効率(電極による光励起された色素の失活を押さえる)との関係を確認すべく、金(Au)電極とITO電極上に自己組織化膜(以下、SAMと表現する場合もある。)形成方法を用いてポルフィリンの単分子膜を作製し、該各膜の光電流特性をトリエタノールアミン(犠牲試薬)の存在する系を用いて測定した。その結果、金板上のポルフィリンSAMに比べて、ITO上のポルフィリンSAMを用いた場合は280倍の光電流の量子効率でアノード光電流が流れることが明らかになり、電極材料としては金に比べ、ITOの方が優れていることを明らかした(Hiroko Yamada et. al., Chem. Commun. 2000, 1921-1922)。電極材料と光電流変換系を結合する結合構造が光電流変換効率にどのように影響するかについては系統的には検討しなかったが、本発明においてITO電極表面を「ITO」O3Si−(CH2)3−NH2(図1)で処理した材料を用いたことにも前記光電流変換効率の向上において何らかの技術的意味があることも予想される。【0006】【発明が解決しようとする課題】 従って、本発明の課題は、前記本発明者等の前記基本的な研究を更に進めて、より実用に近い光エネルギー・電気エネルギー変換素子を提供することである。 前記課題を解決するために、本発明者等はITO電極上に同一分子にドナー−アクセプターを持つ二元系化合物、特にポルフィリン(P)−フラーレン(P:メタルフリーまたはZn化)を持つ二元系化合物の自己組織化単分子膜の形成、更にはO3Si−の結合構造を介して前記二元系化合物の自己組織化単分子膜の形成を試みた。そして、前記二元系化合物の自己組織化単分子膜を作用極とし、白金線を対極、Ag/AgCl(飽和KCl)電極を参照極として用い、電解質として0.1モルNa2SO4を含む水溶液に、電子受容体として酸素(O2)あるいはヘキシルビオローゲン(HV2+)を溶存させたものを電解液とし、これらにより光電池系を構築し、Xeランプからの単色光を照射して光電流を測定することにより、前記自己組織化単分子膜の光電気化学特性を調べたところ、フラーレン部分を持たないものに比べて10倍または30倍という光電流発生の量子効率が得られることを確認し、前記課題を解決できることを見出した。【0007】【課題を解決するための手段】 本発明は、インジウム−スズ酸化物(ITO)電極表面に前記一般式(A)で表される化合物の群から選択される少なくとも一種を、Bin.で表される共有結合、特にO3Si−の結合構造を介して自己組織化することにより単分子膜を形成したことを特徴とする光エネルギー・電気エネルギー変換素子である。好ましくは、前記形式1で結合して自己組織化して単一膜を形成していたことを特徴とする前記光エネルギー・電気エネルギー変換素子である。【0008】【本発明の実施の態様】 本発明をより詳細に説明する。A.本発明の特徴を図面を参照しながら説明する。 本発明の光電池系の概略は図2のように表すことができる。すなわち、外部から供給される光エネルギー(hv)はポルフィリン(M=2Hの場合はメタルフリー、M=Znの場合は亜鉛ポルフィリン)部分で吸収され、励起されたポルフィリンから電子はまずフラーレンに移動し、さらに電解液中の電子受容体として機能する酸素(O2)あるいはヘキシルビオローゲン(HV2+)に移動する。還元されたこれらの電子受容体は溶液中を拡散して、対極である白金電極に電子を受け渡す。一方、電子移動により生じたポルフィリンラジカルカチオンへは、ITO電極から電子が供給される。結果として、修飾電極への光照射によりカソード電流が回路に流れることになる。【0009】B.本発明の光エネルギー・電気エネルギー変換素子の構築方法。式Bの化合物の合成。【0010】【化4】 式B【0011】(但し、Pは、メタルフリーのポルフィリン環である。)の化合物は、式Cの化合物を、【0012】【化5】【0013】(Mは2Hである。)4−メトキシカルボニルアニリン(4-methoxycarbonylaniline)および4−(4,4’−ジメチル−2,6−ジオキサシクロヘキシル)アニリン〔4-(4,4'-dimethyl-2,6-dioxacyclohexyl)aniline〕と交差縮合させ、ついで酸およびアルカリで加水分解することにより得られる。【0014】 式Dの化合物(但し、Pは、メタルフリーのポルフィリン環である。)は前記式Bの化合物を、ペンタフルオロフェノール(pentafluorophenol)と反応させることによって得られる。【0015】【化6】 式D【0016】 次いで、前記Dの化合物を、N−メチルグリシンの存在下でC60フラーレンと環化付加することによってポルフィリン−フラーレン構造を持つ式E(但し、Pは、メタルフリーのポルフィリン環である。)の二元化合物が得られる。【0017】【化7】 式E【0018】3、前記Eの化合物を図1に示されるITO電極と反応させることにより前記形式1で表される、本発明の光エネルギー・電気エネルギー変換系の一態様系を構築することができる。【0019】【実施例】実施例1A,自己組織化膜の形成に用いられるポルフィリン−フラーレンC60の二元化合物式Eの化合物の調製 1、式Cのポルフィリン化合物を6mLのCH2Cl2溶解させ、これに4−ピロリジノピリジン(4-pyrrolidinopyridine:3.3 mg,0.2ミリモル)およびペンタフルオロフェノール(37 mg, 0.022ミリモル)を加える。該溶液を0℃に冷却し、窒素雰囲気下でN,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(4.5 mg, 0.022ミリモル)加える。次いで、ゆっくり室温にし、該溶液を18時間撹拌する。溶媒を除去後、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーを用い(溶剤CHCl3)精製し所望の前記式Dの化合物を収率60%(16 mg, 0.012ミリモル)で得た。 前記式Dの化合物の物性;融点>300℃、 1H-NMR (270 MHz, CDCl3) d = 10.01 (s, 1H), 8.93 (d, J = 5 Hz, 4H), 8.78 (d, J = 5 Hz, 4H) 8.3 (m, 13H), 8.09 (m, 4H), 8.01 (s, 1H), 7.98 (s, 4H), 7.83 (s, 2H), 1.53 (s, 36H), -2.70 (s, 2H) 質量分析:FAB(fast atom bombardment法)、1315(M+H+)【0020】 前記Dの化合物80mg、C60フラーレン(220mg,0.305ミリモル)およびN−メチルグリシン(272mg、3.01ミリモル)を乾燥トルエン400mL中に溶かし、該溶液を一昼夜還流する。有機溶媒を減圧下で除去し、残部をトルエン−CHCl3溶液を用いたシリカゲルクロマトグラフィーで精製し、ポルフィリン−C60フラーレンを含む上記二元化合物Eを83%の収率(104mg、0.050ミリモル)で得た。 化合物Eの物性:融点>300℃、1H−NMR(270MHz、CDCl3) δ=8.91(m, 4H), 8.78 (m, 4H), 8.49 (s, 1H), 8.40 (d, J = 8 Hz, 4H), 8.30 (d, J = 8 Hz, 4H), 8.26 (s, 4H), 8.06 (s, 4H), 8.02 (d, J = 8 Hz, 2H), 7.94 (d, J = 8 Hz, 2H), 7.82 (s, 2H), 7.78 (s, 1H), 4.79 (d, J = 9 Hz, 1H), 4.67 (s, 1H), 4.02 (d, J = 9 Hz, 2H), 2.77 (s, 3H), 1.55 (s, 36H), -2.77 (s, 2H)、 質量分析:(FAB)2063 (M+H+).【0021】 B,光エネルギー・電気エネルギー変換系の形成1、透明ガラススライド表面に190〜200nm厚のITOを形成したITO電極( エバース社製(Evers, Inc. (Japan))表面をトリメトキシシリルプロピルアミン(((MeO)3Si(CH2)3NH2)(10%v/v)及びイソプロピルアミン(2%v/v)を溶かしたトルエン溶液中に入れ、還流下で20時間処理し、表面にシロキシ結合で結合するアミノプロピルシリル化ITO電極(図1)を調製する。2、該アミノプロピルシリル化ITO電極を、前記式Eのポルフィリン(2H)−C60フラーレン二元化合物を溶かしたトルエン溶液中に入れ、還流下で20時間処理し、ITO表面にポルフィリン−C60フラーレン2元化合物で修飾した1a/ITOを得た。【0022】 実施例2 前記調製された1a/ITOのポルフィリン環部分にZnを挿入するために酢酸亜鉛〔Zn(OAc)2〕を溶解させたCHCl3溶液中に入れ、還流下で6時間、アルゴン雰囲気下で処理しポルフィリン環に亜鉛を挿入したポルフィリン(Zn)−C60フラーレン二元化合物修飾電極1b/ITOを得た。【0023】 比較例1,2実施例1、2の二元化合物で修飾した1a/ITOおよび1b/ITOに代えて、一元のC60フラーレンを含む結合基を除いた、換言すればポルフィリンのみを含む化合物で修飾した2a/ITO(メタルフリーポルフィリン環を含む)および2b/ITO(Znでメタル化したポルフィリン環を含む)を調製した。【0024】 前記実施例1および2の修飾ITO電極、ならびに比較例1および2の修飾ITO電極表面上の自己組織化化合物の吸着量(Γ)を電気化学測定によるポルフィリンのアノードピークから求め、表1にまとめた。1a/ITO(2.5×10−10molcm−2) および2a/ITO(1.8×10−10mol cm−2)はITO表面上の類似のポルフィリンSAM (2.4×10−10mol cm−2).と実質的に同じあった。【0025】 光電流を、前記「0006」で説明するようにITO/1a/HV2+/Pt電池系により測定した。波長λ=430±5nm、強度500μWcm−2の光を用いて、作用極電位を-0.2Vに設定して光照射すると、カソード電流が観測された。作用極電位を正方向に変化させるにつれ、光電流は小さくなり、作用極電位が+0.8Vで光電流はゼロになった。同様の測定を、ITO/1b、2a又は2b/HV2+/Pt電池系についても行った。ITO上の化合物によって吸収された光子の数に対する流れた電子数の割合を表す量子収率の結果を表1にまとめた。 この結果から、本発明のC60フラーレン(アクセプター部位)を含む二元系の光電流発生特性がポルフィリンのみの参照系に比べて著しく改善されたことがわかる。【0026】 1a、1b、2a、あるいは2b/ITOのポルフィリン部位の蛍光寿命を、ピコ秒単−光子計数法を用い、励起光453nmを用い、ITO表面の蛍光寿命を測定することにより調べ、表1にまとめた。蛍光の観測はポルフィリン部位の蛍光に相当する、655nm(1a及び2a/ITO)あるいは605nm(1b及び2b/ITO)で行った。 2a/ITOの平均蛍光寿命(3.2ナノ秒)は2b/ITOの平均蛍光寿命(0.14ナノ秒)に対し25倍であり、1a/ITO(0.12ナノ秒)は1b/ITO(0.031ナノ秒)に対して5倍であった。 前記平均蛍光寿命の値は、光電流の量子収率に対応している。2a/ITOの平均蛍光寿命(3.2ナノ秒)は、メルカプト基で金(Au)表面に自己組織化した対応するポルフィリン部位のみを持つ化合物の蛍光寿命(40ピコ秒)の80倍であり、ITO電極を用いると、金電極によるポルフィリン励起状態の消光が抑えられることが確認された。【0027】【表1】 被覆率、蛍光寿命、および光電流の量子収率【0028】 上記結果から、本発明において電極構成材料としてITOを用いたこと、自己組織化による単分子膜形成材料として前記二元化合物を用いたことにより、光電流発生の量子効率を著しく向上できたことは明らかである。【0029】【発明の効果】 以上述べたように、本発明により光電流発生の量子効率を著しく向上させた光エネルギー・電気エネルギー変換系の構築は、このような系を改善した実用系の実現に向けての大きな示唆を与えたという優れた効果がもたらされる。【図面の簡単な説明】【図1】 本発明の光エネルギー・電気エネルギー変換系を構成するITOの結合基の一態様【図2】 本発明の光エネルギー・電気エネルギー変換系のメカニズムの概要 インジウム−スズ酸化物(ITO)電極表面に一般式(A)で表される化合物の群から選択される少なくとも一種を、Bin.で表される共有結合を介して自己組織化することにより単分子膜を形成したことを特徴とする光エネルギー・電気エネルギー変換素子。 一般式A(但し、Bin.はO3Si−である。X1、X2およびX3は、−NH−CO−であり、nは1〜20の整数、Arは嵩高のアルキル基を有していても良いフェニル基、Mは2HまたはZn、フラーレン誘導体は式(a)で表されるC60のフラーレン誘導体〔式(a)(R2はメチル基である。〕。 (a) ITO電極と一般式Aの化合物類から選択される化合物が形式1で結合して自己組織化して単一膜を形成していることを特徴とする請求項1に記載の光エネルギー・電気エネルギー変換素子。 形式1(ここで、嵩高のアルキル基を有するArは3,5−ジ(t−ブチル)−フェニル基であり、MはZnあるいは2Hである。)


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