タイトル: | 特許公報(B2)_コラゲナーゼを用いたクラゲ処理方法 |
出願番号: | 2001211048 |
年次: | 2007 |
IPC分類: | B09B 3/00,C12N 1/20,C12R 1/07,C12R 1/63 |
小串 泰之 竹内 善幸 河野 進 中山 博之 川端 豊喜 岡 洋祐 柳川 敏治 長沼 毅 永尾 浩司 JP 3924137 特許公報(B2) 20070302 2001211048 20010711 コラゲナーゼを用いたクラゲ処理方法 三菱重工業株式会社 000006208 中国電力株式会社 000211307 田中 重光 100089163 石川 新 100069246 小串 泰之 竹内 善幸 河野 進 中山 博之 川端 豊喜 岡 洋祐 柳川 敏治 長沼 毅 永尾 浩司 JP 2001121488 20010419 JP 2001170054 20010605 20070606 B09B 3/00 20060101AFI20070517BHJP C12N 1/20 20060101ALI20070517BHJP C12R 1/07 20060101ALN20070517BHJP C12R 1/63 20060101ALN20070517BHJP JPB09B3/00 AC12N1/20 AC12N1/20 DC12N1/20 AC12R1:07C12N1/20 AC12R1:63 B09B 3/00 C02F 3/34 特開2000−262276(JP,A) 特開2000−254686(JP,A) 特開平11−343181(JP,A) 5 FERM P-17897 FERM P-18313 2003053303 20030225 7 20020719 星野 紹英 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、クラゲを酵素により処理する方法に関する。本発明はさらに、海域に大量発生したクラゲに、その場で又は陸上げされた状態で、コラゲナーゼを又はクラゲ分解酵素分泌細菌を適用することにより、上記クラゲの体を構成するコラーゲン繊維を破壊して、上記体に含有される水を除去し、もってクラゲの体積を減少させる(以下、減容化という。)方法に関する。【0002】【従来の技術】夏季になると日本近海には大量のクラゲが発生する。臨海地域に立地し、冷却水として大量の海水を必要とする発電所等のプラント施設においては、発生したクラゲが潮流にのって押し寄せ、冷却水の取水口から取り込まれると、フィルタの目詰まり等多くの弊害をもたらす。そのため、発電所等では回転式除塵機等を使用してクラゲを捕獲・回収している。このように陸揚げされたクラゲは、そのまま陸地に埋め立て処分されるか、自然乾燥されるか、あるいは、機械的、化学的又は生物学的に処理されている。【0003】陸揚げされたクラゲ処理には、以下のような問題点がある:(1)死んだクラゲは魚が腐ったような臭気を発生して悪臭源となる。(2)クラゲはその体に占める水分が95〜98%であるため焼却処理が可能であるとしてもエネルギー消費量が高く、しかもゼリー状で流動性に乏しいため、そのままでは通常の廃水処理工程での処理も困難である。(3)埋め立て処分する場合にも用地の確保が難しい。【0004】かかる問題を解決すべく、特開平11−179327号公報は、陸揚げされたクラゲを嫌気性条件下で、嫌気性細菌により生物学的及び機械的に処理し、その後廃水処理する簡易な処理方法・装置について記載している。また、特開平11−244833号公報は、陸揚げされたクラゲを加圧下で加熱し、その後瞬時に脱圧して膨化処理してクラゲ水を得、このクラゲ水に次亜塩素酸ナトリウムを添加して、廃水処理する方法について記載している。しかしながら、特開平11−179327号公報に記載の発明においては、そのクラゲ分解処理が嫌気性菌の自然発生又は下水処理後の活性汚泥に含まれる嫌気性細菌の添加によるので、嫌気性環境を作り出さなければならず、また、その分解処理には、3日間と長期間を要するので、迅速かつ効率のよい処理とは言い難い。特開平11−244833号公報に記載の発明においては、加熱蒸気の供給設備、加圧槽、次亜塩素酸ナトリウム添加設備等の装置が必要であり、それらの装置群の建設・維持費は高い。【0005】【発明が解決しようとする課題】したがって、本発明は、陸揚げクラゲの処理に関する上記の諸問題を解決すべく、また、上記従来技術のクラゲ処理方法・装置の不具合を解消すべく、迅速、かつ、効率のよいクラゲの生物学的処理方法を提供することを目的とする。【0006】【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明の第一の態様においては、クラゲをコラゲナーゼで処理して上記クラゲの体を構成するコラーゲン繊維を破壊し、そして上記体に含有される水を除去することを含む、上記クラゲの減容化方法を提供する。前記コラゲナーゼは通性嫌気性のビブリオ属(Vibrio sp.)又は好気性のバチルス属(Bacillus sp.)に属する細菌由来であることができる。本発明の第二の態様においては、クラゲを、クラゲ分解酵素を分泌する細菌で処理して上記クラゲの体を構成するコラーゲン繊維を破壊し、そして上記体に含有される水を除去することを含む、上記クラゲの減容化方法を提供する。同様に、前記細菌はビブリオ属又はバチルス属に属する細菌であることができる。好ましくは、前記細菌は、2001年4月25日に独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに寄託された海洋細菌バチルス属(Bacillus sp.)(J26W株)(受託番号FERM P-18313)である。前記コラゲナーゼ又は前記細菌は、前記クラゲが大量発生した海域に適用することができるが、好ましくは、前記のクラゲが大量発生した海域を周りの海域と隔離することが望ましい。あるいは、前記コラゲナーゼ又は前記細菌は、陸揚げされた前記クラゲに適用する。【0007】本明細書中、クラゲの減容化とは、コラゲナーゼを又はクラゲ分解酵素分泌細菌を適用することにより、上記クラゲの体を構成するコラーゲン繊維を破壊して、上記体に含有される水を除去し、もってクラゲの体積を減少させることをいう。したがって、減容率は、コラゲナーゼ又はクラゲ分解酵素分泌細菌適用後のクラゲの残渣湿重量を適用前のクラゲの重量で除して100を乗じた値である。ここで、クラゲ重量は容器・反応液を含めた重量の増加分として、そして分解後残渣重量は、反応液をろ過し、残った固形分の重量を乾燥させない状態で測定した。【0008】クラゲは、その体を構成するタンパク質(コラーゲン)が繊維状構造をとり、その網目に水を閉じ込めてゼリー状となっている。この網目構造を構成するコラーゲン繊維をコラゲナーゼ、好ましくは、海洋性Vibrio 属細菌又はBacillus属細菌が分泌するコラゲナーゼによって切断し、上記の閉じ込められた水を溶出させて(解放して)、クラゲを減容化する。クラゲの減溶化に伴って、クラゲと溶出水の混合物は流動化する。図1にクラゲ分解のイメージを示す。【0009】陸揚げされたクラゲを処理する場合には、予め抽出したコラゲナーゼを入れた容器又はコラゲナーゼを分泌する細菌を培養した容器に減容化すべきクラゲを投入する。投入されたクラゲは、抽出したコラゲナーゼ又は細菌より培地中に分泌されたコラゲナーゼにより減容化される。かかるクラゲの投入は、繰り返し行われることができる。減容化後の処理水を、環境上の理由からそのままクラゲ捕獲海域に戻せない場合には、その処理水をさらに廃水処理にかけてCODやBODを低下させた後に、上記海域に戻すことができる。一方、コラゲナーゼ又はクラゲ分解酵素分泌細菌をクラゲ発生海域にそのまま適用する場合には、95〜98%の体内保持水分が除去された減容化クラゲだけを、従来技術のクラゲ処理を行うか又はそのまま埋め立て処分等をすることができる。【0010】重要なことは、本発明に係るクラゲ減容化方法は、厳密なる嫌気条件下でなくても実施することができるということであり、そしてこれが、本発明に係るクラゲの減容化を迅速かつ効率の高いものにする。【0011】実施例1:バチルス属細菌の単離及び同定海洋細菌バチルス属 (Bacillus sp.)(J26W株)(受託番号FERM P-18313)を、広島県安芸津町の海岸から採取し、以下の方法で単離・同定した。【0012】約1gの上記海洋土壌を、選択培地ミズクラゲ熱水抽出物(ミズクラゲを121℃で15分間熱処理して得られた上清))10mlに植菌し、そして25℃で14日間集積培養した。その後、この培養液0.1mlを、選択寒天培地(ミズクラゲ熱水抽出物、1.5%寒天)上に塗布し、そして25℃で3日間培養した。培養により上記培地上にクリア・ゾーンを形成したコロニーを、釣菌操作を繰り返すことにより、単一分離した。【0013】以上のようにして、コラーゲンに対して高い分解活性を有する分解菌を選別し、その中で最優秀の菌株について遺伝子レベルでの解析を行い、新種として単離・同定した。【0014】上記菌株のDNAをHigh pure PCR Template Kit (Roche社)を用いて抽出し、PCR法により16S rDNAを増幅させた。シーケンサー(Applied Biosystems社)を用いて塩基配列を読み取り、DNA Data Bank of Japan (DDBJ)にデータを送信し、分子系統学的解析に基づく同定を行った。【0015】本発明者は、この株をバチルス属(Bacillus sp.)(J26W株)と命名し、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに2001年4月25日に寄託申請した。この株は、受託番号FERM P-18313として受託された。【0016】実施例2:上記バチルス属細菌分泌酵素含有培地を用いたクラゲ処理図2に本実施例のクラゲ処理手順を示す。海底泥から採取した海洋細菌Bacillus sp.(J26W株)FERM P-18313を、ミズクラゲ熱水抽出物を含む培地上で、室温で振とう培養して、増殖させた。この海洋細菌は増殖時にコラゲナーゼを培地中に分泌する。分泌されたコラゲナーゼを含む培地30mlを150mlの海水に添加した。これに、ミズクラゲ(学名Aurelia aurita)個体(直径約5cm;体重35g)を入れて、25℃で静置した。ほぼ1日後、クラゲの体を構成するコラーゲンの繊維が切断されて、閉じ込められていた水が溶出し、減容化がなされた。減容化率は、約90%以上であった。このミズクラゲが分解した海水に新たに同様にミズクラゲ個体(直径約5cm;体重35g)を入れて、25℃で静置した結果、更にほぼ1日後、同様にクラゲの体を構成するコラーゲンの繊維が切断されて、閉じ込められていた水が溶出し、減容化がなされた。この操作によるクラゲの減容化は少なくとも6回の繰り返しが可能であった。【0017】実施例3:凍結乾燥させた上記バチルス属細菌分泌酵素含有培地を用いたクラゲ処理図3に本実施例のクラゲ処理手順を示す。実施例2における分泌されたコラゲナーゼを含む培地30mlを液体窒素で凍結させた後、真空ポンプを用いて水分を除去した。この凍結乾燥物をビニール袋に入れて密封し、室温、遮光状態で1年間保存した。これを30mlの水で溶解させた後、150mlの海水に添加し、ミズクラゲ個体(直径約5cm;体重35g)を入れて、25℃で静置した。ほぼ1日後、クラゲの体を構成するコラーゲンの繊維が切断されて、閉じ込められていた水が溶出し、減容化がなされた。減容化率は、約90%以上であった。【0018】実施例4:精製酵素を用いたクラゲ処理図4に本実施例のクラゲ処理手順を示す。実施例2における分泌されたコラゲナーゼを含む培地に、硫酸アンモニウム溶液を加えタンパク質を沈殿させ、遠心分離によりタンパク質画分を得た。このタンパク質画分をセロハンチューブに入れ、海水で透析して硫酸アンモニウムを除去した。このタンパク質画分からゲル濾過によりコラゲナーゼ活性を持つ酵素を精製した。上記精製酵素溶液50μlを150mlの海水中に添加して、ミズクラゲ個体(直径約5cm;体重35g)を入れて、25℃で静置した。ほぼ1日後、クラゲの体を構成するコラーゲンの繊維が切断されて、閉じ込められていた水が溶出し、減容化がなされた。減容化率は、約90%以上であった。【0019】実施例5:上記バチルス属細菌自体を用いたクラゲ処理図5に本実施例のクラゲ処理手順を示す。海底泥から取得した海洋細菌Bacillus sp.(J26W株)FERM P-18313を、クラゲ熱水抽出物を含む培地で増殖させた後、遠心分離により上記細菌を、5g回収した。150mlの海水中のミズクラゲ個体(直径約5cm;体重35g)に上記回収細菌1gを散布し、静置した。ほぼ1日後、クラゲの体を構成するコラーゲンの繊維が切断されて、閉じ込められていた水が溶出し、減容化がなされた。減容化率は、約90%以上であった。【図面の簡単な説明】【図1】クラゲ分解のイメージ図。【図2】海洋細菌分泌酵素含有培地を用いたクラゲ処理(繰り返し処理を含む)。【図3】凍結乾燥させた海洋細菌分泌酵素含有培地を用いたクラゲ処理。【図4】精製酵素を用いたクラゲ処理。【図5】海洋細菌自体を用いたクラゲ処理。 クラゲをコラゲナーゼ(collagenase)で処理して上記クラゲの体を構成するコラーゲン繊維を破壊し、そして上記体に含有される水を除去することを含む、上記クラゲの減容化方法。 クラゲを、コラゲナーゼを分泌する細菌で処理して上記クラゲの体を構成するコラーゲン繊維を破壊し、そして上記体に含有される水を除去することを含む、上記クラゲの減容化方法。 前記クラゲが大量発生した海域に前記コラゲナーゼ又は前記細菌を適用する、請求項1又は2に記載の方法。 前記のクラゲが大量発生した海域を周りの海域と隔離する、請求項3に記載の方法。 前記クラゲが陸揚げされている、請求項1又は2に記載の方法。