タイトル: | 特許公報(B2)_粗エチレンガスの精製方法 |
出願番号: | 2001187927 |
年次: | 2008 |
IPC分類: | C07C 7/10,C07C 7/11 |
岩木 信義 渡部 哲 北浦 保彦 JP 4048737 特許公報(B2) 20071207 2001187927 20010621 粗エチレンガスの精製方法 住友化学株式会社 000002093 久保山 隆 100093285 中山 亨 100113000 岩木 信義 渡部 哲 北浦 保彦 20080220 C07C 7/10 20060101AFI20080131BHJP C07C 7/11 20060101ALI20080131BHJP JPC07C7/10C07C7/11 C07C 7/10 C07C 7/11 特開平05−213817(JP,A) 特公昭44−023485(JP,B1) 4 2003002849 20030108 5 20040907 吉住 和之 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、粗エチレンガスの精製方法に関するものである。更に詳しくは、本発明は、不純物として酢酸ビニル及び二酸化炭素を含有する粗エチレンガスの精製方法であって、洗浄設備の汚れを防止することにより長期間の安定運転が可能であり、しかも洗浄用のアルカリの消費量を節減することができるという優れた特徴を有する粗エチレンガスの精製方法に関するものである。【0002】【従来の技術】石油化学工業において、エチレンを製造する方法として、エタン、プロパン、ナフサ、ガスオイル等を分解炉で熱分解する方法が知られている。エチレンの主用途のひとつとして、ポリエチレン製造用原料がある。ここで、エチレン製造設備とポリエチレン製造設備は、同じ又は隣接した工場内に設けられるのが一般である。ところで、ポリエチレン製造設備からは、未反応のエチレンを含む粗エチレンガスが回収される。該回収された粗エチレンガスには、酢酸ビニル、二酸化炭素等の不純物が含まれる。かかる不純物を含む粗エチレンガスを精製する方法として、アルカリ水溶液で洗浄する方法が知られている。しかしながら、従来の方法によると、使用中に重合物により洗浄設備が汚れ、よって長期間の安定運転が困難であるという問題があった。【0003】【発明が解決しようとする課題】かかる現状において、本発明が解決しようとする課題は、不純物として少なくとも酢酸ビニル及び二酸化炭素を含有する粗エチレンガスの精製方法であって、洗浄設備の汚れを防止することにより長期間の安定運転が可能であり、しかも洗浄用のアルカリ水溶液の消費量を節減することができるという優れた特徴を有する粗エチレンガスから酢酸ビニル及び二酸化炭素を除去する方法を提供する点にある。【0004】【課題を解決するための手段】すなわち、本発明は、不純物として少なくとも酢酸ビニル及び二酸化炭素を含有する粗エチレンガスの精製方法であって、下記の第一工程及び第二工程を含む粗エチレンガスの精製方法に係るものである。第一工程:粗エチレンガスを炭素数6〜8の芳香族炭化水素を含む溶剤で洗浄する工程第二工程:第一工程の洗浄後のガスをアルカリ水溶液で洗浄する工程【0005】【発明の実施の形態】本発明の原料である粗エチレンガスとしては、エチレンを重合してポリエチレンを得る設備から回収される粗エチレンガスをあげることができる。粗エチレンガスには、不純物として少なくとも酢酸ビニル及び二酸化炭素が含有される。酢酸ビニルの含有量は、通常1000〜4000molppmである。二酸化炭素の含有量は、通常1000〜2000molppmである。【0006】本発明の第一工程は、粗エチレンガスを炭素数6〜8の芳香族炭化水素を含む溶剤で洗浄する工程である。炭素数6〜8の芳香族炭化水素としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等を例示することができる。酢酸ビニルの、エチレン製造設備から回収される分解ガソリンへの溶解度は非常に大きく、かつ該分解ガソリンは酢酸ビニルを溶解したままでも製品として出荷できるため、溶剤としては該分解ガソリンを用いることが、溶剤入手及び廃溶剤処理が不要という観点から、好ましい。該分解ガソリンの組成としては、上記ベンゼン、トルエン及びキシレンの他にエチルベンゼン、スチレン、トリメチルベンゼン等をあげることができる。【0007】第一工程を実施する方法及び条件の具体例としては、下記のものをあげることができる。【0008】棚段塔或いは充填塔の塔底に粗エチレンガスを、塔頂には溶剤として分解ガソリンを供給する。粗エチレンガスは塔底に溜まった溶剤中へ吹き込まれ、バブリングした後に棚段部或いは充填部へ入る。塔底の分解ガソリンは液面を制御しながら抜き出される。棚段部或いは充填部で、バブリング後の粗エチレンガスと塔頂部のスプレーから供給される分解ガソリンの気液接触が行われた後、塔頂部より洗浄後の粗エチレンガスが第二工程へと抜き出される。【0009】本工程の運転温度は供給する分解ガソリンの温度で制御できるが、酢酸ビニルの溶解度を向上させること及び後工程への酢酸ビニル及び分解ガソリンの混入を少なくするためにも、できるだけ運転温度を下げることが好ましく、海水熱交換器で分解ガソリンの冷却を行う観点から、運転温度は25〜30℃が好ましい。【0010】本工程の運転圧力は洗浄設備の特性により決定されるものでは無く、粗エチレンガスの圧力やエチレン製造設備本体の運転圧力により自在に決定できる。【0011】本発明の第二工程は、第一工程の洗浄後のガスをアルカリ水溶液で洗浄する工程である。アルカリとしては、水酸化ナトリウムを例示することができる。アルカリ水溶液中のアルカリ濃度は、pH10.5〜12.5であることが好ましい。該濃度が低すぎると二酸化炭素が後工程へリークする場合があり、一方該濃度が高すぎるとアルカリの浪費及びアルカリ排水のpH上昇による排水処理設備の負荷上昇を招く場合がある。【0012】第二工程を実施する方法及び条件の具体例としては、下記のものをあげることができる。【0013】棚段塔或いは充填塔の塔底に第一工程を経た粗エチレンガスを、塔頂にはアルカリ水溶液として約5wt%の水酸化ナトリウム水溶液を供給する。棚段部或いは充填部では粗エチレンガスとアルカリ水溶液の向流接触が起き、二酸化炭素が化学吸収される。塔底部に溜まる炭酸塩を含んだアルカリ排水は、液面を制御しながら抜き出され、廃水処理設備へ送られる。塔頂部よりアルカリ洗浄後の粗エチレンガスが抜き出され、エチレン製造設備へ送られる。【0014】アルカリ洗浄設備は、装置の汚れ防止対策として、2塔以上の洗浄塔を直列或いは並列に設置し、運転継続中でも個々の洗浄塔を単独に遮断し、内部を洗浄可能とすることができる。【0015】本工程の運転温度は供給するアルカリ水溶液の温度で制御できるが、アルカリ排水に溶解している中和塩の析出を防ぐ観点から、温度を下げすぎることは好ましくなく、運転温度としては第一工程と同様の25〜30℃が好ましい。【0016】本工程の運転圧力も第一工程と同様に、粗エチレンガスの圧力やエチレン製造設備本体の運転圧力により自在に決定できる。【0017】一般に、エチレン製造設備では分解ガスを苛性洗浄するために多量の水酸化ナトリウム水溶液を扱っており、本発明においては、第一工程及び第二工程を行う設備が、エチレン製造設備のサイトに設けられていることが、溶剤入手、アルカリ水溶液入手及び廃溶剤処理が不要という観点から、好ましい。【0018】本発明の最大の特徴は、第一工程を用いる点にある。つまり、本発明によらず、第二工程のみを用いた場合には、酢酸ビニルがアルカリ性雰囲気下おいて酢酸及びアセトアルデヒドへ加水分解する。ここで、生成した酢酸はアルカリと中和反応を起こしてアルカリを消費し、一方でアセトアルデヒドはアルカリ性雰囲気下においてアルドール縮合を生起し、その結果生成した重合物が徐々に蓄積し、設備を汚染するのである。そこで、該酢酸ビニルを本発明の第一工程で除去し、その後第二工程を用いるという特徴的な組み合わせを採用することにより、重合物の発生を防止し、更に酢酸の中和反応によるアルカリの消費を抑制することで、第二工程でのアルカリの消費量を節減することが可能となるのである。【0019】【実施例】比較例1本発明の第二工程に相当するアルカリ洗浄塔のみから成る洗浄設備を用いて、ポリエチレン製造設備から回収される粗エチレンガスを精製した。なお、アルカリ洗浄塔は1塔単独で、棚段塔を用いた。通常状態の粗エチレンガス処理量は1.5〜2T/Hであり、アルカリ洗浄塔のpHが10.5〜12.5になるように約5wt%水酸化ナトリウム水溶液を供給した。その結果、アルカリ洗浄塔単独で粗エチレンガス中の酢酸ビニル及び二酸化炭素を処理するため、アルカリ洗浄塔内で酢酸ビニルの加水分解反応が進行して酢酸及びアセトアルデヒドが生成され、アルカリは二酸化炭素の中和に加えて酢酸の中和にも消費された。更に、アルカリ洗浄塔塔底部にはアセトアルデヒドのアルドール縮合により生成した重合物が析出したため、1日当たり3〜6回の頻度でアルカリ洗浄塔塔底液の抜き出し及び重合物の掻き取り作業が必要であった。【0020】実施例1本発明の第一工程としての分解ガソリン洗浄塔及び第二工程としてのアルカリ洗浄塔から成る洗浄設備を用いて、比較例1と同様にポリエチレン製造設備から回収される粗エチレンガスを精製した。なお、分解ガソリン洗浄塔及びアルカリ洗浄塔には充填塔を用い、アルカリ洗浄塔は2塔直列式とした。通常状態としては粗エチレンガス処理量は1.5〜2T/H、分解ガソリン供給量は2T/Hであり、1塔目のアルカリ洗浄塔塔底液のpHが10.5〜11.5、2塔目のアルカリ洗浄塔塔底液のpHが11.5〜12.5になる様に約5wt%水酸化ナトリウム水溶液を供給した。その結果、第一工程に当たるガソリン洗浄塔で粗エチレンガスから酢酸ビニルが除去されるため、第二工程に当たるアルカリ洗浄塔では酢酸ビニルの加水分解反応が起こらなくなった。従って、アルカリは二酸化炭素の中和のみに消費されることとなり、アルカリ消費量は比較例1で酢酸の中和に消費されていた量だけ減少した。更に、アルカリ洗浄塔内でのアセトアルデヒドのアルドール縮合も起こらず、アルカリ洗浄塔塔底部での重合物の生成は無くなったため、エチレン製造設備本体の定期修理間隔である2年間以上、該洗浄設備を遮断・洗浄すること無く連続で運転し続けることが可能となった。【0021】【発明の効果】以上説明したとおり、本発明により、不純物として酢酸ビニル及び二酸化炭素を含有する粗エチレンガスの精製方法であって、洗浄設備の汚れを防止することにより長期間の安定運転が可能であり、しかも洗浄用のアルカリの消費量を節減することができるという優れた特徴を有する粗エチレンガスの精製方法を提供することができた。 不純物として少なくとも酢酸ビニル及び二酸化炭素を含有する粗エチレンガスの精製方法であって、下記の第一工程及び第二工程を含む粗エチレンガスの精製方法。第一工程:粗エチレンガスを炭素数6〜8の芳香族炭化水素を含む溶剤で洗浄する工程第二工程:第一工程の洗浄後のガスをアルカリ水溶液で洗浄する工程 粗エチレンガスが、エチレンを重合してポリエチレンを得る設備から回収されるエチレンを含むガスである請求項1記載の方法。 第一工程及び第二工程を行う設備が、エチレン製造設備のサイトに設けられている請求項1記載の方法。 第一工程の溶剤が、エチレン製造設備から回収される分解ガソリンである請求項1記載の方法。