タイトル: | 特許公報(B2)_テストステロン5α−リダクターゼ阻害剤 |
出願番号: | 2001166636 |
年次: | 2009 |
IPC分類: | A61K 31/122,A61K 8/35,A61P 5/28,A61P 17/00,A61P 17/10,A61P 17/14,A61K 36/18 |
加藤 豊也 野入 宏之 JP 4220687 特許公報(B2) 20081121 2001166636 20010601 テストステロン5α−リダクターゼ阻害剤 加藤 豊也 599089376 古谷 聡 100087642 古谷 馨 100063897 溝部 孝彦 100076680 持田 信二 100091845 加藤 豊也 野入 宏之 JP 1997117076 19970507 20090204 A61K 31/122 20060101AFI20090115BHJP A61K 8/35 20060101ALI20090115BHJP A61P 5/28 20060101ALI20090115BHJP A61P 17/00 20060101ALI20090115BHJP A61P 17/10 20060101ALI20090115BHJP A61P 17/14 20060101ALI20090115BHJP A61K 36/18 20060101ALN20090115BHJP JPA61K31/122A61K8/35A61P5/28A61P17/00 101A61P17/10A61P17/14A61K35/78 C A61K 31/122 A61K 8/35 A61K 36/18 CAplus(STN) REGISTRY(STN) 特許第3276327(JP,B2) 特開平09−059133(JP,A) 特開平10−330310(JP,A) J. MED. CHEM.,1996年,39(13),P.2472-2481 3 1997356766 19971225 2002012542 20020115 17 20041209 大久保 元浩 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、テストステロン5α−リダクターゼ阻害剤に関し、更に詳しくは天然物であるホウセンカ抽出物又は当該ホウセンカ抽出物の含有成分である特定のビスナフトキノン誘導体を有効成分として含有する、有用かつ安全性の高いテストステロン5α−リダクターゼ阻害剤に関する。【0002】【従来の技術】精巣や副腎で生合成され分泌されたテストステロン(男性ホルモン)は、血液を介して皮脂腺、毛包、前立腺などに移行した後、各組織に存在する代謝酵素であるテストステロン5α−リダクターゼにより還元され、より活性なジヒドロテストステロン(DHT)へと変換される。各組織で生成したDHTは、皮脂腺や毛包では皮脂の分泌を、また、前立腺では細胞の増殖を促進することが知られている。【0003】一方、男性型脱毛症、尋常性ざ瘡(アクネ)、前立腺肥大症などの疾患では、男性ホルモンによる作用がその発症原因あるいは憎悪因子とされており、これらはDHTの異常産生に起因するものと考えられている。従って、これらの疾患の治療薬としては、テストステロン5α−リダクターゼ阻害剤を含む抗男性ホルモン剤が広く用いられている。抗男性ホルモン剤としては、プロゲステロン、クロルマジノン、シプロテロンといった強力なステロイド剤が、また、天然物由来では、センブリ、ウイキョウ、カンゾウなどの抽出物がテストステロン5α−リダクターゼ阻害剤として利用されている。更に、天然物中の成分としてローソン(ヘンナ葉)、シコニン(シコン)、オイゲノール(チョウジ)などにテストステロン5α−リダクターゼ阻害作用が報告されている[フレグランス・ジャーナル,No.92,78頁〜(1988).参照のこと]。【0004】【発明が解決しようとする課題】しかしながら、これら従来の抗男性ホルモン剤、特にステロイド剤は、その強力なホルモン様作用による好ましくない副作用を有しており、安全性に問題があった。また、これまでに知られている天然物由来のテストステロン5α−リダクターゼ阻害剤は、作用は認められるものの、その活性成分の不明なものが多かった。あるいは、前述のフレグランス・ジャーナルのように活性成分が特定されていても作用が弱いものが多かった。【0005】本発明は上記課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、優れた男性ホルモン阻害作用を有し、かつホルモン様作用のない高い安全性を備えたテストステロン5α−リダクターゼ阻害剤を提供することにある。【0006】【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題を解決するため、漢方処方中で汎用されている種々の生薬から民間療法で利用されている生薬に至る種々の植物抽出エキスについて、テストステロン5α−リダクターゼ阻害作用を指標として検索を行った。その結果、古くから民間生薬として知られるホウセンカにテストステロン5α−リダクターゼ阻害作用があることを見いだした。更に鋭意研究を重ねた結果、当該ホウセンカから特定のビスナフトキノン誘導体を単離し、そのテストステロン5α-リダクターゼ阻害作用を確認して、本発明を完成するに至った。【0007】すなわち、本発明は、ホウセンカ抽出物を有効成分として含有するテストステロン5α−リダクターゼ阻害剤を提供するものである。【0008】また、本発明は、下記式(I)で表されるビスナフトキノン誘導体を有効成分として含有するテストステロン5α−リダクターゼ阻害剤を提供するものである。【0009】【化2】【0010】また、本発明は、上記式(I)で表されるビスナフトキノン誘導体を有効量で含有するホウセンカ抽出物を有効成分として含有するテストステロン5α−リダクターゼ阻害剤を提供するものである。【0011】更に本発明は、上記の本発明のテストステロン5α−リダクターゼ阻害剤を有効成分として含有する育毛用組成物及びアクネ用組成物を提供するものである。【0012】【発明の実施の形態】前記本発明のテストステロン5α−リダクターゼ阻害剤に利用されるホウセンカの起源は、わが国を含むアジア各国に自生するツリフネソウ科の一年草で、インパティエンスバルサミナ(Impatiens Balsamina L.)の学名を持つ植物である。【0013】本発明のテストステロン5α−リダクターゼ阻害剤は、その有効成分として前記ホウセンカ抽出物またはその成分である式(I)で表されるビスナフトキノン誘導体を含有する。ホウセンカ抽出物は、例えば、ホウセンカの全草、あるいは、葉、茎、花弁のうち何れか1ヶ所以上(以下、「原体」という)を乾燥又は乾燥せずに裁断した後、常温もしくは加温下で溶剤により抽出することにより得られる。【0014】ここで用いられる溶剤としては、水、有機溶媒及びこれらの混合物が挙げられる。これらの有機溶媒の具体例としては、メタノール、エタノール、ブタノール等の低級アルコール類、または、これら低級アルコール類と水の混合液(10〜90V/V%、好ましくは20〜70V/V%)、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、または、これらケトン類と水との混合液(10〜90V/V%、好ましくは20〜70V/V%)、ヘキサン、ベンゼン、トルエン、石油エーテル等の炭化水素類、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類、及びこれらの混合物などが挙げられる。【0015】原体からの好ましい抽出方法の具体例としては、原体を裁断した後、適当な有機溶媒(好ましくは、低級アルコール類、含水低級アルコール類、ケトン類、含水ケトン類、炭化水素類、または、エステル類)で抽出し、溶媒を留去する方法、あるいは、原体を裁断した後、無水あるいは含水低級アルコール等の溶媒で抽出し、次いで抽出物を酢酸エチル、ブタノール等の水と混和しない溶媒と水を用いる液-液抽出に付し、更に有機層または水層から溶媒を留去する方法等が挙げられるが、特に限定されるものではない。尚、ホウセンカ成分の効率的抽出には、原体と溶剤の抽出比率が1〜80W/V%、好ましくは10〜60W/V%であるのが好適である。【0016】また、抽出溶媒として例えば無水または含水エタノールまたは水を用いた場合は、溶媒を留去することなくそのまま用いることができ、更に溶媒の一部を留去して或いは留去することなく、エタノール、水等を適宜加えることによりアルコール濃度を調整して用いることもできる。【0017】一方、ホウセンカ成分である式(I)で表されるビスナフトキノン誘導体は、前記何れかの抽出方法、好ましくは含水低級アルコール(好ましくは含水メタノール、含水エタノール)、親水性有機溶剤(好ましくはメタノール、エタノール、アセトン)、疎水性有機溶剤(好ましくはブタノール、酢酸エチル、クロロホルム)の中から選ばれる1種以上により得られた当該抽出物から、更に適当な分離精製手段、好ましくは薄層クロマト法、カラムクロマト法、高速液体クロマト法または再結晶等を繰り返し行うことにより単離、精製され得る。【0018】また、式(I)で表されるビスナフトキノン誘導体、すなわち2,2'-エチリデンビス(3-ヒドロキシ-1,4-ナフトキノン)は、有機合成により得ることもできる。すなわち、2-ヒドロキシ-1,4-ナフトキノン(ローソンと呼称されるときもある)とアセトアルデヒド又はアセタールとを適当な有機溶媒、好ましくはジメチルホルムアミド又はアセトニトリルなどの溶媒中で、周囲温度あるいは加温下、好ましくは50〜80℃で縮合することにより製造される。次いで、得られる粗生成物から、通常用いられる分離精製手段、例えば抽出、濃縮、カラムクロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、再結晶などにより単離、精製される。【0019】本発明者らの研究により、テストステロン5α−リダクターゼ阻害作用が確認された式(I)で表されるビスナフトキノン誘導体は、本発明のホウセンカ抽出物のテストステロン5α−リダクターゼ阻害作用における主要活性成分の1つであることがわかる。【0020】本発明に含まれるホウセンカ抽出物のテストステロン5α−リダクターゼ阻害作用については、今まで全く報告されていない。更に、本発明者らによって初めてホウセンカから単離された式(I)で表されるビスナフトキノン誘導体は、合成品としては公知物質であるが、これまで他の天然物成分として抽出、単離された例もなく、テストステロン5α−リダクターゼ阻害作用についても全く報告されていない。尚、ホウセンカに関しては、その白色花弁の抽出物に抗アレルギー作用があることが既に報告され[Phytotherapy Res. 6, 112 (1992).参照のこと]、また、式(I)で表されるビスナフトキノン誘導体に関しては、抗エイズ作用(HIV−1インテグラーゼ及びプロテアーゼ阻害作用)の検討がなされているが[J. Med. Chem., 39, 2472 (1996).参照のこと]、いずれも本発明のテストステロン5α−リダクターゼ阻害作用とは作用メカニズムの異なるものである。従って、本発明のホウセンカ抽出物又は式(I)で表されるビスナフトキノン誘導体が有するテストステロン5α−リダクターゼ阻害作用は、本発明者らによって初めて見出された有用な薬理作用である。【0021】なお、本発明の効果を損なわない範囲で、作用増強を目的として、上記の本発明のホウセンカ抽出物に式(I)で表されるビスナフトキノン誘導体を別途添加することもできる。【0022】また、本発明のテストステロン5α−リダクターゼ阻害剤としては、前記式(I)で表されるビスナフトキノン誘導体を有効量で含有するホウセンカ抽出物を有効成分とするものが含まれる。ここで、「有効量」とは、所望のテストステロン5α−リダクターゼ阻害作用を得るのに充分な量を意味する。式(I)で表されるビスナフトキノン誘導体は、本発明の有効成分であるホウセンカ抽出物の主要活性成分であり、ホウセンカ抽出物が式(I)の化合物を有効量で含む場合はこれをそのまま本発明のテストステロン5α−リダクターゼ阻害剤として用いることができる。また、式(I)の化合物を含有していても所望のテストステロン5α−リダクターゼ阻害作用を得るのに充分でない場合は、別途式(I)の化合物を添加したホウセンカ抽出物を用いることができる。【0023】かくして得られるホウセンカ抽出物又は式(I)で表されるビスナフトキノン誘導体は、いずれも望ましからぬホルモン様作用のない優れたテストステロン5α−リダクターゼ阻害作用を有しており、その応用としては、DHTの異常産生に起因する疾患、例えば、男性型脱毛症やアクネ等の皮膚疾患であれば外用剤の医薬品、医薬部外品、化粧品として、また、前立腺肥大症等の疾患であれば経口剤又は注射剤の医薬品として投与することにより、その予防または治療に用いることができるが、特にこれらに限定されるものではない。【0024】本発明のホウセンカ抽出物は、通常成人一人当たり、外用剤の場合であれば、乾燥重量で1回に1mg〜1g、好ましくは10mg〜500mg、内服剤の場合であれば1回に0.1〜500mg、好ましくは0.5〜100mg配合することができる。また、本発明の式(I)で表されるビスナフトキノン誘導体は、通常成人一人当たり、外用剤の場合であれば、0.1mg〜500mg、好ましくは1mg〜50mg、内服剤の場合であれば0.01〜100mg、好ましくは0.1mg〜50mg配合することができる。但し、投与量は年令、体重、症状、治療効果、投与方法、処理時間等により変動するので、上記投与範囲より少ない量で十分の場合もあるし、また範囲を越えて投与する必要のある場合もある。【0025】本発明のテストステロン5α−リダクターゼ阻害剤の剤形は、特に限定されるものではなく、例えば、男性型脱毛症用であればヘアローション、シャンプー、リンス、ヘアトニック、ヘアトリートメント、ヘアクリーム等の通常頭髪に用いられるものが、また、アクネ用であれば軟膏、ローション、クリーム、ジェル、乳液等の通常皮膚用として用いられるものが挙げられる。また、前立腺肥大症用であれば錠剤、カプセル剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、液剤等の通常の経口剤あるいは注射剤とすることもできる。【0026】本発明のテストステロン5α−リダクターゼ阻害剤には、上記必須成分であるホウセンカ抽出物又は式(I)で表されるビスナフトキノン誘導体の他に、必要に応じ、本発明の効果を損なわない範囲で、外用剤の場合であれば、通常適用される炭化水素類、ロウ類、油脂類、高級脂肪酸、低級あるいは高級アルコール、界面活性剤、香料、色素、防腐剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤、pH調節剤、また、経口用製剤であれば、適当な賦形剤、例えば、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、コーティング剤、着色剤等を添加することができる。【0027】更に、本発明の有効成分であるホウセンカ抽出物又は式(I)で表されるビスナフトキノン誘導体以外の他の薬効成分として、例えば、卵胞ホルモン(エストラジオール、エチニルエストラジオール等)、抗アンドロゲン剤(スピロノラクトン、プロゲステロン等)、消炎、鎮疹剤(グリチルリチン酸塩、アズレン等)、代謝・毛根賦活剤(パントテン酸、パントテニールアルコール等)、ビタミン類(ビタミンA,B1,E,B2,B6,B12,C,E等)、血流改善剤(dl-α-トコフェロール、γ-オリザノール等)、局所刺激剤(ショウキョウチンキ、トウガラシチンキ等)、角質溶解剤(サリチル酸、レゾルシン等)、抗脂漏剤(レシチン、イオウ等)、殺菌剤(塩化ベンザルコニウム、ヒノキチオール等)、保湿剤(レモンエキス、ヒアルロン酸、プロピレングリコール、グリセリン等)等を各種目的に応じてホウセンカ抽出物又は式(I)で表されるビスナフトキノン誘導体と併せて用いることもできる。【0028】また、本発明のホウセンカ抽出物又は式(I)で表されるビスナフトキノン誘導体以外の薬効成分として、各種生薬、例えばセンブリ、オトギリソウ、チンピ、カシュウ、ショウガ、ニンジン、レイシ、タヒボ、ローズマリー、ニンニク等の抽出物を1種以上添加することもできる。かかる生薬の抽出、添加方法としては、通常生薬の抽出に用いられる方法、例えば、水および/または有機溶媒で抽出して得られる液、あるいは溶媒留去したものをホウセンカ抽出物又は式(I)で表されるビスナフトキノン誘導体と混合する方法、あるいは、当該ホウセンカの抽出の際、これら生薬を同時抽出する方法、あるいは、ホウセンカ抽出液、好ましくは、無水または含水低級アルコール(更に好ましくは、10〜80V/V%エタノール)により得られるホウセンカ抽出液を用いて、これら生薬を再抽出する方法などが挙げられる。【0029】また、本発明のホウセンカ抽出物を外用剤として用いる場合には、ホウセンカあるいは目的により併用する生薬抽出物由来の特異臭を和らげ、また、ビタミンC等の栄養成分を与える目的で、レモン、みかん、すだち、ゆず等柑橘類の果実成分を添加することができる。更に、ホウセンカ抽出液、好ましくは、無水または含水低級アルコール(更に好ましくは、10〜80V/V%エタノール)により得られるホウセンカ抽出液を用いて、これら果実を再抽出する方法が特に好適である。【0030】以上説明した本発明は、ホウセンカ抽出物を含有する育毛用組成物を含むものであり、この場合において、ホウセンカ抽出物は、育毛効果と経済性の面から、本発明の育毛用組成物中に乾燥重量で0.001〜10W/V%、好ましくは0.01〜5W/V%配合することができる。【0031】【実施例】以下に実施例として本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。【0032】抽出例1一昼夜日陰干しした後裁断したホウセンカの全草(地上部)(15kg)を35V/V%エタノール(30リットル)に漬け込み、1ヶ月間浸出した。次いで、全草をろ別し、更に2週間熟成した後、ろ過して抽出液(26リットル)を得た。【0033】抽出例2一昼夜日陰干しした後裁断したホウセンカの全草(地上部)(0.5kg)を50V/V%エタノール(1リットル)に漬け込み、1ヶ月間浸出した。次いで、全草をろ別し、更に2週間熟成した後、ろ過して抽出液(0.83リットル)を得た。【0034】抽出例3一昼夜日陰干しした後裁断したホウセンカの全草(地上部)(0.5kg)を70V/V%エタノール(1リットル)に漬け込み、1ヶ月間浸出した。次いで、全草をろ別し、更に2週間熟成した後、ろ過して抽出液(0.87リットル)を得た。【0035】抽出例4抽出例1で得られた抽出液(1リットル)を減圧下溶媒留去して、抽出物(19g)を得た。【0036】実験例1(急性毒性試験)5匹ずつ2群のICRマウス(雄性、5週齢、体重20〜25g)に、抽出例4のホウセンカ抽出物を5g/kg経口投与及び1g/kg腹腔内投与した。投与後14日目に至っても、いずれのマウスも死亡例を認めず、LD50値は、経口投与:5g/kg以上、腹腔内投与:1g/kg以上であることがわかった。これより、本発明のホウセンカ抽出物の安全性が非常に高いことがわかる。【0037】実験例2(皮膚10日間累積刺激性試験)日本白色ウサギ(雄性、体重2.5〜3kg)10匹それぞれの背部を除毛し、更に除毛した部位を背骨を中心として左右2カ所(左:試験部位、右:無処置部位)に分けた。次に、これらの除毛したウサギを無作為に5匹ずつ2つの群に分け、一方を実施例群、他方をプラセボ(偽薬)群とした。次いで、実施例群のウサギ5匹の試験部位に1日1回の頻度で10日間、抽出例4のホウセンカ抽出物の10W/V%流動パラフィン溶液(0.5mL)を均一に塗布し、一定の条件下(気温:23±2℃、明暗サイクル12時間、但し照明時間7:00〜19:00)で飼育した。また、プラセボ群には、流動パラフィン(0.5mL)を実施例群と同様に塗布した。10日間経過後、すべてのウサギの試験部位を肉眼により観察した。結果を表1に示す。【0038】【表1】【0039】上記表1において、Aは発赤、炎症等の刺激性を示す所見が見られた個体数であり、Bは当該群の全個体数を示す。本皮膚刺激性試験において、プラセボ群と実施例群に全く差異が認められなかったことから、本発明のホウセンカ抽出物には、皮膚に対する累積刺激性がほとんどないことがわかった。【0040】抽出例5抽出例1で得られた抽出液(26リットル)を約2リットルまで減圧濃縮した後、酢酸エチル(1リットル)で2回液−液抽出した。次いで、酢酸エチル抽出液を合わせ、無水硫酸マグネシウムで乾燥後減圧下溶媒留去して、酢酸エチル抽出物(8.6g)を得た。【0041】<2,2'-エチリデンビス(3-ヒドロキシ-1,4-ナフトキノン)(I)の製造方法>製造例1抽出例5の方法で得られたホウセンカの酢酸エチル抽出物(10.0g)にクロロホルムを加え、不溶物をろ別した。次いで、ろ液を減圧濃縮して得られる残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム)で2回分離精製した後、酢酸エチルで再結晶して黄色プリズム晶の2,2'-エチリデンビス(3-ヒドロキシ-1,4-ナフトキノン)(1.03g)を得た。【0042】IR(KBr)cm-1:3296, 1664, 1637, 1359, 1344, 1278, 729.1H-NMR(CDCl3):1.73(3H, d, J=7.5Hz, =CHCH3), 4.83(1H, q, J=7.5Hz,=CHCH3), 7.54-7.83(4H, m, 6,7-H of naphthoquinone), 7.96-8.14(4H, m, 5,8-H of naphthoquinone).ここで、「=C」はアルキリデンの1位の炭素原子を意味する。元素分析:C22H14O6 計算値 C%=70.59 H%=3.77, 実測値 C%=70.86 H%=3.93m.p. 196−198℃。【0043】製造例2アルゴン置換下、ローソン(10.0g)及びアセタール(14.28g)のジメチルホルムアミド(50mL)溶液を80℃で4.5時間撹拌した。冷後、反応液に酢酸エチルを加え、希塩酸及び飽和食塩水の順に洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下溶媒留去した。得られた残渣を酢酸エチルで結晶化し、更に、酢酸エチルで再結晶して、黄色プリズム晶の2,2'-エチリデンビス(3-ヒドロキシ-1,4-ナフトキノン)(9.10g)を得た。【0044】本製造例で得られた化合物の物性データ(IR, 1H-NMR, 元素分析, m.p.)は、ホウセンカから抽出、単離した製造例1で得られたものと一致した。【0045】実験例3(急性毒性試験)1群5匹ずつのICRマウス(雄性、5週齢、体重20〜25g)に、製造例1の2,2'-エチリデンビス(3-ヒドロキシ-1,4-ナフトキノン)を250mg/kgから1000mg/kgの間の用量で経口投与した。化合物は0.5%カルボキシメチルセルロースナトリウム水溶液に分散させて用いた。その結果、LD50値は514mg/kgであった。【0046】実験例4(テストステロン5α-リダクターゼ阻害活性実験)(酵素液の調製法)ウイスター系雄性ラットより摘出した前立腺(湿重量15.038g)を小片にし、0.25M-スクロース含有0.1M-HEPES緩衝液(以下、「緩衝液」という)(45mL)を加え、ホモジネートした。次いで、900×gで5分間遠心分離し、沈渣を緩衝液(27.5mL)に懸濁し、再度900×gで5分間遠心分離した。この沈渣に緩衝液(11.25mL)を加えて懸濁し、これを酵素液として使用した。【0047】(テストステロン5α-リダクターゼ阻害活性測定法)各種濃度(10μg/mL〜1mg/mL)に調製した抽出例5のホウセンカ抽出物又は製造例1の2,2'-エチリデンビス(3-ヒドロキシ-1,4-ナフトキノン)のエタノール溶液(100μL)及びテストステロンのエタノール溶液(5μg/mL)(50μL)の混合物を窒素ガスで蒸発乾固した後、40mM-リン酸水素ナトリウム緩衝液(488μL)、28mM-ジチオトレイトール(20μL)、2.8mM-β-NADPH(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸還元型)(10μL)及び酵素液(50μL)を加え混合し、37℃で30分間インキュベートした。この混合液にn-ヘキサン(1mL)を加え10分間振とうした後、3000rpmで10分間遠心分離した。次いで、n-ヘキサン層を分取し減圧乾固した後、トリフルオロ酢酸(100μL)を加え40℃で30分間インキュベートした。続いて、混合液を減圧乾固した残渣に、内部標準物質としてヘキサクロロベンゼンのn-ヘキサン溶液(1μg/mL)(100μL)を加え溶解し、試料溶液とした。一方、ホウセンカ抽出物又は2,2'-エチリデンビス(3-ヒドロキシ-1,4-ナフトキノン)を含まない上記と同様の方法で得られた溶液をコントロール溶液とした。【0048】前記各試料溶液及びコントロール溶液につき、ガスクロマトグラフ質量分析計を用いて、テストステロン5α-リダクターゼにより還元されたジヒドロテストステロン(DHT)の量を測定し、次式に従い各試料溶液のテストステロン5α-リダクターゼ阻害率を算出した。【0049】【数1】【0050】A:コントロール溶液のDHTピーク面積/内部標準物質のピーク面積B:試料溶液のDHTピーク面積/内部標準物質のピーク面積更に、試料の各濃度における阻害率から、ホウセンカ抽出物及び2,2'-エチリデンビス(3-ヒドロキシ-1,4-ナフトキノン)のテストステロン5α-リダクターゼに対する50%阻害濃度(IC50値)を算出した。結果を表2、3に示す。【0051】【表2】【0052】【表3】【0053】上記により、ホウセンカ抽出物及びホウセンカ成分である2,2'-エチリデンビス(3-ヒドロキシ-1,4-ナフトキノン)にはテストステロン5α−リダクターゼ阻害活性があることが確認された。なお、比較としてローソンを用いて同様の試験を行ったところ、IC50値は500μg/mL以上であった。【0054】実験例5(抗アクネ菌活性試験)2種類のアクネ菌(Propionibacterium acnes、Prpionibacterium avidum)に対する抗菌活性を寒天培養法により試験した。【0055】(Propionibacterium acnesに対する抗菌活性)各種濃度に調製した抽出例1のホウセンカ抽出液、抽出例5のホウセンカ抽出物及び製造例1の2,2'-エチリデンビス(3-ヒドロキシ-1,4-ナフトキノン)のエタノール溶液又は懸濁液(0.2mL)をGAM培地(日水製薬社製)(9.8mL)に溶解又は均一に懸濁し試験管に流し込み凝固させた(最終エタノール含量:2%)。各培地にPropionibacterium acnesを穿刺接種した後、培地上層にTryptic Soy Broth培地(DIFCO社製)(2mL)を重層した(嫌気培養)。次いで、30℃で7日間培養した後、各試料の各種濃度における菌の発育を観察し、その有無から最小発育阻止濃度(MIC)を測定した。結果を表4に示した。【0056】尚、予め、試料の溶媒であるエタノール(0.2mL)のみを用いた培地でPropionibacterium acnesを培養したところ、問題なく菌の発育が認められたことから、本試験に対する溶媒の影響はないものとした。【0057】(Propionibacterium avidumに対する抗菌活性)各種濃度に調製した抽出例1のホウセンカ抽出液、抽出例5のホウセンカ抽出物及び製造例1の2,2'-エチリデンビス(3-ヒドロキシ-1,4-ナフトキノン)の5%エタノール溶液又は懸濁液(1mL)を1.5%寒天含有Tryptic Soy Broth培地(DIFCO社製)(9mL)に溶解又は均一に懸濁しシャーレに流し込み凝固させた(最終エタノール含量:0.5%)後、各培地にPropionibacterium avidumを接種した。次いで、30℃で3日間培養した後、各試料の各種濃度における菌の発育を観察し、その有無から最小発育阻止濃度(MIC)を測定した。【0058】尚、予め、試料の溶媒である5%エタノール(1mL)のみを用いた培地でPropionibacterium avidumを培養したところ、問題なく菌の発育が認められたことから、本試験に対する溶媒の影響はないものとした。結果を表4に示した。【0059】【表4】【0060】上記より、ホウセンカ抽出物、特に脂溶性成分を多く含有する酢酸エチル抽出物に高い抗アクネ菌活性が認められた。このことから、当該ホウセンカ抽出物は、前述のテストステロン5α−リダクターゼ阻害作用により皮脂の分泌を抑制するばかりでなく、アクネ毛嚢内菌に対する抗菌作用により皮膚炎症等を防ぐ働きを併せ持つ、優れたアクネ予防・治療用組成物を提供するものである。【0061】抽出例6抽出例1で得られた抽出液(10リットル)に輪切りしたレモン果実(0.5kg)を加え、2週間浸出した。次いで、レモン果実をろ別し、更に2週間熟成した後、ろ過してレモン/ホウセンカ抽出液(9.8リットル)を得た。【0062】抽出例7裁断した乾燥ホウセンカの全草(地上部)(160g)をメタノール(1リットル)にて2回60℃で5時間加熱抽出した。冷後、全草をろ別し減圧下溶媒留去して、抽出物(18.9g)を得た。【0063】抽出例8裁断した乾燥ホウセンカの全草(地上部)(160g)を酢酸エチル(1リットル)にて2回60℃で5時間加熱抽出した。冷後、全草をろ別し減圧下溶媒留去して、抽出物(6.4g)を得た。【0064】実施例1(ヘアローション1−1〜1−3)A 抽出例1の抽出液 31.5mLB 無水エタノール 12.0mLC 精製水 適 量A及びBを混合した後全量が100mLになるようにCを加え、均一に混合攪拌してヘアローション(1−1)とした。【0065】A 製造例1の化合物 5.0mgB 無水エタノール 20.0mLC 精製水 適 量AをBに溶解した後全量が100mLになるようにCを加え、均一に混合攪拌してヘアローション(1−2)とした。【0066】A 抽出例1の抽出液 31.5mLB 製造例1の化合物 1.5mgC 無水エタノール 12.0mLD 精製水 適 量BをCに溶解し、Aを加えた後全量が100mLになるようにDを加え、均一に混合攪拌してヘアローション(1−3)とした。【0067】Bの各成分をCに溶解し、Aと均一に混合した。次いで、Dの各成分をEに溶解した溶液を先に調製したA、B、Cの混合液に加え、更に、全量が100mLになるようにFを加えた後、均一に混合攪拌してヘアローションとした。【0068】実施例3(ヘアシャンプー)A 抽出例1の抽出液 28.0mLB 25V/V%エタノール 12.0mLC ニッサンアノン5010〔日本油脂(株)製〕 360.0mLA、B、Cをそれぞれ均一に混合攪拌して、ヘアシャンプーとした。【0069】Cの各成分を均一に混合した後、Dを加え予備混合した。次いで、均一に混合溶解したA及びBの各成分を加え更に混合した後、造粒乾燥(1m/m)して、顆粒剤の育毛用補助食品とした。【0070】上記実施例1、3で得られたヘアローション及びヘアシャンプーを用いて下記の方法で育毛試験を行った。【0071】<育毛試験>被験者95名(うち女性9名)に、実施例1のヘアローション(1−1)(3ヶ月分:100mL×6本)及び実施例3のヘアシャンプー(3ヶ月分:400mL×3本)両者を3ヶ月間継続使用させた。3ヶ月経過後、まず、「効果あり」、「効果なし」、「効果の有無が不明」の3段階で評価させ、更に「効果あり」と答えた被験者には、その効果の内容及び発現時期についての回答を得た。結果を表5〜7に示す。【0072】【表5】【0073】下記表6は、上記表5の評価実験で「効果があった」と答えた人(有効群)の具体的な効果の内容を示すものである。【0074】【表6】【0075】下記表7は、前記表5の評価実験で「効果があった」と答えた人(有効群)の育毛用組成物の使用開始から効果発現までにかかった期間を示すものである。【0076】【表7】【0077】尚、本試験終了時、すなわち3ヶ月間連続使用後において、いずれの被験者も皮膚刺激等の異状は全く認められなかった。【0078】上記処方に従い、Aの成分を均一に溶解した後、Bの成分溶液に徐々に加え均一に混合溶解してスキンローションとした。【0079】上記処方に従い、A、B各成分をそれぞれ約80℃に加温し、撹拌下BにAを徐々に加え均一に混合した後、冷却してスキンクリームとした。【0080】上記処方に従い、A、B各成分をそれぞれ約80℃に加温し、撹拌下BにAを徐々に加え均一に混合した後、冷却して乳液とした。【0081】上記処方に従い、A成分をBに均一に分散させた後、Cを加え混合して軟膏とした。【0082】上記処方に従い、A成分をBに均一に分散させた後、Cを加え混合して軟膏とした。【0083】1錠が上記割合になるように各成分を均一に混合した後、打錠して錠剤とした。【0084】1カプセルが上記割合になるように各成分を均一に混合した後、カプセルに充填した。【0085】1カプセルが上記割合になるように各成分を均一に混合した後、カプセルに充填した。【0086】【発明の効果】本発明のホウセンカ抽出物及び式(I)で表されるビスナフトキノン誘導体は、安全性が高くホルモン様作用のない優れたテストステロン5α−リダクターゼ阻害作用を有していることから、当該抽出物又は当該物質を有効成分として配合した組成物は、男性型脱毛症、アクネ、前立腺肥大症等のDHTの異常産生に起因する疾患の予防及び治療に有効である。 下記式(I)で表されるビスナフトキノン誘導体(ホウセンカから抽出、単離されたものを除く)を有効成分として含有するテストステロン5α−リダクターゼ阻害剤。 請求項1記載のテストステロン5α−リダクターゼ阻害剤を有効成分として含有する育毛用組成物。 請求項1記載のテストステロン5α−リダクターゼ阻害剤を有効成分として含有するアクネ用組成物。