タイトル: | 特許公報(B2)_ビレットおよび線材の偏析評価方法 |
出願番号: | 2001166069 |
年次: | 2010 |
IPC分類: | B22D 11/16,G01N 33/20 |
田中 重典 内村 光雄 大賀 只則 JP 4464583 特許公報(B2) 20100226 2001166069 20010601 ビレットおよび線材の偏析評価方法 新日本製鐵株式会社 000006655 内藤 俊太 100107892 田中 久喬 100105441 田中 重典 内村 光雄 大賀 只則 20100519 B22D 11/16 20060101AFI20100422BHJP G01N 33/20 20060101ALI20100422BHJP JPB22D11/16 104NG01N33/20 M B22D 11/16 G01N 33/20 特開2000−237857(JP,A) 特開平04−231156(JP,A) 特開平02−024542(JP,A) 特開平01−167636(JP,A) 特開平04−174359(JP,A) 特開昭58−055858(JP,A) 3 2002361381 20021217 7 20070905 日比野 隆治 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は,ビレットの連続鋳造において、偏析を評価する際に,ビレットおよび線材での偏析を測定する方法である。【0002】【従来の技術】鉄鋼業においては、省エネルギーを目的に20数年前から連続鋳造による鋳片の製造をおこなってきた。【0003】連続鋳造で問題になる一つは、鋳片中心部に濃化溶鋼が集積する偏析である。偏析部分の濃化溶鋼の濃度が高い時には、例えばビレットやブルームから製造した線材の場合には、鋼線に伸線する際に、鋼材が部分的に硬さが異なることにより破断が生じたりする。この傾向は鋼成分の内、特に炭素濃度が高くなると顕著になる。その理由は、炭素濃度が高いと、ビレットから線材を製造する際に初析セメンタイトやミクロマルテンサイトが生じ、初析セメンタイトやミクロマルテンサイトが存在すると、それを起点として伸線中に割れが生じ、断線にいたる為である。【0004】従来はブルームで鋳造を行い、引き続いて分塊圧延でサイズを減少させた後に線材圧延に供していた。この場合にはブルームでの偏析粒径を測定して線材の成績を予測していたが、分塊工程での加熱圧延が加わり偏析濃度、粒の変形が生じ品質予測のばらつきは大きかった。【0005】一方、最近では、省エネルギー、省工程の目的で、連続鋳造でビレットを鋳造し、その後の分塊工程を省略し、直接線材圧延で線材を製造するプロセスが導入されてきている。また、ビレット鋳造でも偏析を軽減し、高級鋼に供するニーズも高まりつつある。その為、ビレット連続鋳造機で製造した鋳片の偏析を評価する必要が有り、従来は最大偏析粒径を測定してきた。【0006】この方法は採取した鋳片の中心偏析を含むL断面を切断後、Eプリント(エッチプリント)を採取してその中心偏析内で最も大きい偏析粒を検出し、その面積を測定した後にその面積から球形換算した際の直径を計算して最大偏析粒径とする方法である。【0007】【発明が解決しようとする課題】上記鋳片の最大偏析粒径を測定する方法は極めて直感的に判りやすいが、最大偏析粒径をプリントから見いだすのに熟練を要し、プリントから偏析粒の面積を計算するのに濃淡の考慮に測定者間の差異が生じ、これも熟練を要する。従って、熟練した測定者を養成しない限り正確な偏析評価が困難であるという問題があった。【0008】また、分塊工程を通るブルーム鋳片に比べてビレット鋳片の場合には鋳造後と線材圧延の前に加熱変形工程が加わらない為にビレット品質が線材品質に直接関係して、その推定精度が向上すると考えられたが、鋳片内に生じる短周期の偏析ばらつきの為に線材での試料採取位置をどのように考えるかが課題となった。【0009】本発明は、熟練を必要とせずに簡易に偏析を評価する方法を提供するとともに、鋳片に生じる短周期の偏析ばらつきに影響を受けない偏析評価方法を提供することを目的とする。【0010】【課題を解決するための手段】発明者はビレットの偏析の特徴を考慮に入れてより簡便に偏析を測定する方法を見いだした。【0011】 即ち、本発明の要旨とするところは以下のとおりである。(1)中心偏析部を含む鋳片のL断面を研磨後、腐食して得られた凝固組織および偏析組織を、そのまま又はテープに転写(Etch Print法)した後に、中心偏析部に沿って等間隔の十字クロスを罫書いた透明な定規を当て、十字クロス交点と偏析粒の重なり回数割合で最大偏析粒径を推定することを特徴とする偏析の測定方法。(2)十字クロスによって測定する鋳造長さ方向の範囲は500mm以上であることを特徴とする上記(1)に記載の偏析の測定方法。(3)150mm以下のビレット鋳片に於いて上記(1)又は(2)の方法で十字クロス交点と偏析粒の重なり回数割合を測定し、該重なり割合より(1)式を用いて最大偏析粒径を推定することを特徴とする偏析の評価方法。(1)式 B = 4.3824×A + 1.3375 ここで A:交点と偏析粒径の重なり回数割合 B:最大偏析粒径(mm)【0012】本発明において、鋳片のL断面とは、鋳片の長手方向に平行かつ鋳造後において垂直な断面、特に中心偏析部を含む断面をいう。【0013】【発明の実施の形態】連鋳機内で、鋳片は凝固過程で収縮を起こし、そのために鋳片中心部の液相部分では連鋳機の下流側に向かって引き込み流が発生して、凝固途中の固液共存相内の液相側に炭素などの成分元素が濃化し、それが凝固し、偏析の粒として残存して、線材伸線中に断線を発生させる原因となる。この偏析粒が小さいほど炭素などの成分元素の濃化は小さく断線を発生させる恐れは少なくなる。【0014】発明者はまず、ビレットL断面の偏析の特徴を解析した。ブルーム鋳片から製造したビレットでは偏析は線状に複数本存在する。それに対して直接ビレットに鋳造した鋳片の偏析は中心偏析部に点状の偏析が並んでいることを確認した。また、上述した引き込み流によってV型の偏析(V偏析と呼ぶ)が発生しており、そのV偏析に関連して図1に示すように偏析粒の個数が鋳造長手方向に周期的に変動していることを見いだした。そして、最大偏析粒径が大きい程、偏析粒個数の周期変動ははっきりしている。さらに、鋳造長手方向に上記変動周期以上の長さの範囲で偏析の個数を測定することにより、最大偏析粒径が大きいと個数が大きいと言う関係が有ることが判った。【0015】即ち、所定の長さの範囲内にある偏析の個数を測れば最大偏析粒径の評価が出来ることになるが、この方法では偏析粒個数の測定に最大偏析粒径測定以上の時間がかかり簡便では無い。【0016】そこで、測定方法として、透明な定規の上に一定間隔(例えば20mmピッチ)で十字のクロスを罫書きそれをエッチプリントの中心偏析上に置き、その十字クロス交点と偏析粒(偏析粒径は約0.5mm以上)とが重なっている該交点の個数を測定し、この個数を全十字クロス交点の個数で割ったものを偏析の重なり割合とした。このような測定を行うことにより、所定の範囲内の全偏析粒個数を計測することなく、簡易に偏析粒の個数に相当する指標を得ることができる。【0017】尚、十字クロスによって測定する鋳造長さ方向の範囲は、前述のV偏析による偏析粒個数の周期よりも広い範囲である必要が有る。これにより、偏析の重なり割合と最大偏析粒径との強い相関を得ることができる。十字クロスによって測定する鋳造長さ方向の範囲は500mm以上と定めると良い。【0018】この重なり割合と別に測定した最大偏析粒径の関係を図2に示す。重なり割合が大きくなるに従って最大偏析粒径は大きくなり、上記の方法が偏析の評価として有効なことが判った。【0020】更に、120mm角鋳片で測定を行った場合には偏析の重なり割合と最大偏析粒径の関係は(1)式の様になった。この関係は正方断面を持ち、且つ冷却速度がそれ程変わらないビレット鋳片、即ち150mm以下程度の鋳片に於いては適用出来る関係であると考えられる。(1)式 B = 4.3824×A + 1.3375ここで A:交点と偏析粒の重なり回数割合B:最大偏析粒径(mm)【0021】この関係を基に線材での偏析評価方法についても検討を行った。線材中に存在する偏析は圧延して伸びている為に鋳片の様にL断面の評価は困難でありC断面で評価せざるを得ない。また図1に示すようにビレットの偏析が長手方向にうねりを持っているために1断面での評価では誤差が生じる恐れがある。そこで、線材を複数回切断して偏析が検出された回数を全切断回数で割った割合と鋳片で検出された最大偏析粒径の関係を整理した結果を図3に示す。ここで、切断面に偏析が検出されたとは、切断面の研磨後に面を化学的に腐食するとC,P,Mn等の偏析元素濃度が高い部分が強く腐食されて黒く見えることをいう。ここでも線材断面で偏析が検出された割合と鋳片における最大偏析粒径は相関が見られる。【0022】更に、120mm角鋳片から製造した線材で測定を行った場合には線材断面で偏析が検出された割合と鋳片における最大偏析粒径の関係は(2)式の様になった。本来(2)式は(1)式と同様になるはずであるが鋳片では粒径0.5mmの偏析粒まで評価出来るのに比べて線材では圧延している為に偏析粒径は更に小さくなっており偏析の検出割合が鋳片より小さくなっている為と考えられる。この関係は正方断面を持ち、且つ冷却速度がそれ程変わらないビレット鋳片、即ち150mm以下程度の鋳片に於いては適用出来る関係であると考えられる。(2)式 B = 6.7249×C+ 1.0706ここで C:線材断面での偏析の検出割合【0023】この事から偏析粒径の管理値を決めると管理する偏析の検出割合は(3)式の様に求まった。(3)式 E=0.148×D−0.159ここで D:管理する偏析粒径(mm)E:管理する偏析の検出割合【0024】線材での切断回数は検出割合が安定する最小の回数より多くする必要がある。鋳片での試験結果では切断回数が10回未満であると偏析の検出割合が大きく外れる場合が出てきた。線材を切断して偏析を管理する場合には少なくても10回以上の切断面による検査が必要である。【0025】【実施例】(実施例1)図4に0.7%の炭素濃度の120mmビレットで偏析の重なり割合と線材成績の関係を示す。十字クロスは透明な定規に3mmピッチで配置し、十字クロスによって測定する鋳造長さ方向の範囲は500mmとした。十字クロス交点と偏析粒との重なり割合が0.74以下で線材成績が良好であり、本評価法が利用可能であることが判った。【0026】(実施例2)0.8%の炭素濃度の120mmビレットを伸線した後に50mの線材を20等分して線材断面の偏析を評価した。図5に線材断面における偏析の検出割合と線材の伸線結果の関係を示す。偏析の検出割合が0.4以上で線材の伸線成績が悪くなった。【0027】(実施例3)0.8%の炭素濃度の120mmビレットから製造した線材の偏析粒径の管理値を3mmとして(3)式を用いて管理する偏析の検出割合を0.28以上とした。切断回数は試料1の偏析検出割合は0.2であった。試料2は同じ切断回数で偏析検出割合は0.4であった。線材の伸線評価結果は試料1が試料2より良好であった。【0028】【発明の効果】本方法により鋳片および線材でのビレットの偏析評価が以前より簡便に行える様になり、ビレット鋳片からの分塊工程を経ない線材の製造がより簡便に行えるようになった。これによりエネルギーの少ない製造技術がより進歩して省エネルギー化に寄与出来る。【図面の簡単な説明】【図1】鋳片長手方向における中心偏析粒個数の変動状況を示す図である。【図2】十字クロス交点と鋳片偏析粒との重なり割合と鋳片の最大偏析粒径の関係を示す図である。【図3】線材断面で偏析が検出された割合と鋳片の最大偏析粒径との関係を示す図である。【図4】十字クロス交点と鋳片偏析粒との重なり割合と線材成績の関係を示す図である。【図5】線材断面における偏析の検出割合と線材の伸線結果の関係を示す図である。 中心偏析部を含む鋳片のL断面を研磨後、腐食して得られた凝固組織および偏析組織を、そのまま又はテープに転写(Etch Print法)した後に、中心偏析部に沿って等間隔の十字クロスを罫書いた透明な定規を当て、十字クロス交点と偏析粒の重なり回数割合で最大偏析粒径を推定することを特徴とする偏析の測定方法。 十字クロスによって測定する鋳造長さ方向の範囲は500mm以上であることを特徴とする請求項1に記載の偏析の測定方法。 150mm以下のビレット鋳片に於いて請求項1又は2の方法で十字クロス交点と偏析粒の重なり回数割合を測定し、該重なり割合より(1)式を用いて最大偏析粒径を推定することを特徴とする偏析の評価方法。(1)式 B = 4.3824×A + 1.3375 ここで A:交点と偏析粒径の重なり回数割合 B:最大偏析粒径(mm)