タイトル: | 特許公報(B2)_ミネラル強化用組成物の製造法及びそれを利用した食品 |
出願番号: | 2001149766 |
年次: | 2012 |
IPC分類: | A61K 33/00,A23L 1/304,A61K 9/10,A61K 47/34,A61P 3/02 |
岡 達夫 中田 勝康 南部 宏暢 レカ・ラジュ・ジュネジャ 山崎 長宏 JP 4916621 特許公報(B2) 20120203 2001149766 20010518 ミネラル強化用組成物の製造法及びそれを利用した食品 太陽化学株式会社 000204181 岡 達夫 中田 勝康 南部 宏暢 レカ・ラジュ・ジュネジャ 山崎 長宏 20120418 A61K 33/00 20060101AFI20120329BHJP A23L 1/304 20060101ALI20120329BHJP A61K 9/10 20060101ALI20120329BHJP A61K 47/34 20060101ALI20120329BHJP A61P 3/02 20060101ALI20120329BHJP JPA61K33/00A23L1/304A61K9/10A61K47/34A61P3/02 A61K 31/00 A61K 33/00 A23L 1/00 CA/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) 特開平08−332053(JP,A) 特開昭61−056040(JP,A) 特開昭60−262550(JP,A) 特開平02−150235(JP,A) 3 2002338478 20021127 7 20080509 安居 拓哉 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、ミネラル類を栄養強化及び生理活性成分として含有する組成物及び該組成物を用いた食品に関するものである。【0002】【従来の技術】現在の豊かな食生活においては、たんぱく質、脂肪、炭水化物のいわゆる三大栄養素は十分量以上が摂取されているが、ミネラル等の微量栄養素に関しては依然として摂取不足が指摘され続けている。栄養強化ミネラルは、一般に水溶性、水難溶性に大別される。水溶性ミネラルは易水溶性のため食品への応用面において優れているが、反面、イオン化するために食品との化学反応等により味、食感、色調等へ著しく影響を与えるという欠点がある。水難溶性ミネラルの特徴としては難水溶性のため食品への応用が限定され、風味の面では優れていても高温になると溶解度が上がりイオン化するため、水溶性ミネラルと同様に添加食品の味、食感、色調へ影響を与える点が挙げられる。現在、さまざまなミネラル強化食品が市場に提供されているが、上記の栄養強化ミネラルの特徴により使用が限定され微量栄養素の摂取不足となっているため、微量栄養素としてのミネラル摂取の必要性が強調されている。【0003】ミネラル強化としてカルシウムが一般によく使用され、様々なカルシウム補給剤の開発が行われてきた。塩化カルシウム等の水溶性品では、苦味等を呈し風味が損なわれたり、蛋白質が含まれる場合には、凝集が生じたりする。そこで、不溶性カルシウムとして炭酸カルシウムをスラリー状にし、HLB10以上の親水性乳化剤と混合した方法(特公平2−29301、特公平2−31942、特開昭64−69513、特開平5−319817、特開平6−127939、特開平8−107772)が提唱されている。これらは、比較的短時間の熱履歴にしか適応できないため、焼菓子、レトルト食品のような高温、長時間を要するものには適用されない。【0004】特開昭57−110167では、炭酸カルシウムと食用油脂と乳化剤を混合した食品強化用カルシウム製剤であるが、製剤中のカルシウムの粒子径には触れておらず、食品の食感等への検討が不充分である。【0005】他の不溶性カルシウムとして、卵殻カルシウムがありこれを添加してカルシウム分が強化された焼菓子(特許第257781号)、カルシウム強化剤(特開平9−191855)がみられるが、添加する卵殻微粉末の粗大粒子であり、食感の改善がなされていない。【0006】また、分散安定性の優れた難溶性ミネラル組成物(特開平2000−23626)では分散安定性の優れた難溶性ミネラルを提供する方法及び流通安定性の優れた分散安定性の優れた難溶性ミネラル組成物としているが、ミネラルの粒径の範囲については不明瞭で食品への風味、物性等の解決はなされていない。【0007】一般に鉄は、ポリフェノールとの反応で色が黒色化することが知られており、お茶、コーヒー、ココア等の鉄強化が困難とされてきた。【0008】【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、ミネラル類を長期間安定に保ち、且つ呈味性に優れたミネラル強化用組成物を提供する事にある。【0009】【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記の目的を達成するために鋭意検討を行った結果、栄養強化用の固体ミネラル類をポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルを含む中性脂質中に湿式摩砕法を用いて平均粒径2μm以下の超微粒子に分散させる事を特徴とするミネラル強化用組成物を食品に添加してもイオン化されることなく、食品の風味、色、食感等に影響を及ぼすことなく、且つ安定性に優れる事を見出し、本発明を完成するに至った。【0010】即ち本発明は、栄養強化用の固体ミネラル類をポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルを含む中性脂質中に湿式摩砕法を用いて平均粒径2μm以下の微粒子に分散させることを特徴とするミネラル強化用組成物の製造法及びミネラル組成物、及びそれを含有する食品に関する。【0011】【発明の実施の形態】本発明における栄養強化用の固体ミネラル類は人体に摂取可能なものであり、食品添加物に使用されるものであれば特に限定するものではなく、水溶性であれば塩化カルシウム、乳酸カルシウム、カゼイン・カルシウム・ペプチド(CCP)、カルシウムサイトレートマレート(CCM)、硫酸亜鉛、塩化亜鉛、グルコン酸亜鉛等があげられる。水難溶性としては水難溶性カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、セレン塩類等が適用される。難溶性カルシウムとしては、卵殻カルシウム、貝殻カルシウム、真珠カルシウム、サンゴ未等の炭酸カルシウムを主成分とする未焼成天然物またはそれらの焼成物、天然物、合成による重質または軽質の炭酸カルシウム、骨カルシウム、乳カルシウム等のリン酸カルシウムを主成分とする天然物、合成によるリン酸カルシウム等がある。難溶性マグネシウムとしては炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、リン酸三マグネシム、ドロマイト等があり、難溶性鉄としてはピロリン酸鉄等、難溶性亜鉛としては酸化亜鉛等があり、これらのミネラルの内のいずれか1種または2種以上の混合物が用いられ、好ましくは油脂に不溶の固体で且つ物理的破砕によってレーザー回折型粒度分布測定機による平均粒径が2μm以下の微粒子とすることができる性質のものが良い。【0012】本発明のミネラル類の平均粒径は2μm以下で好ましくは1μm以下の微粒子である。【0013】本発明のミネラル類の含有量は特に限定するものではないが、該組成物中1〜70重量%である事が好ましく、より好ましくは10〜60重量%である。また、ミネラル類の含有量が70重量%より多い場合には、該組成物の構造粘度が極度に高まり流動性を失ってしまう為に後の加工特性及び応用範囲を著しく狭める事となる。【0014】本発明に用いるポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルは、例えばHLB4以下の平均重合度2〜10のポリグリセリンと縮合度2〜4のポリリシノレイン酸のエステルから成るが、他の乳化剤と併用しても差し支えない。他の乳化剤としては、食品に供するものであれば特に限定するものではないが具体例として、モノグリセリンモノ脂肪酸エステル、モノグリセリンジ脂肪酸エステル、モノグリセリン脂肪酸有機酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、特にモノグリセリンモノステアリン酸エステル、モノグリセリンモノオレイン酸エステル、モノグリセリンモノミリスチン酸エステル、モノグリセリンモノカプリル酸エステル、モノグリセリンジステアリン酸エステル、モノグリセリンジオレイン酸エステル、モノグリセリンステアリン酸クエン酸エステル、モノグリセリンステアリン酸酢酸エステル、モノグリセリンステアリン酸コハク酸エステル、モノグリセリンカプリル酸コハク酸エステル、モノグリセリンステアリン酸乳酸エステル、モノグリセリンステアリン酸ジアセチル酒石酸エステル、平均重合度2〜10のポリグセリンと炭素数6〜22の脂肪酸エステル等のグリセリン脂肪酸エステル類、プロピレングリコールモノステアリン酸エステル、プロピレングリコールモノオレイン酸エステル等のプロピレングリコール脂肪酸エステル類、ソルビタンジステアリン酸エステル、ソルビタントリステアリン酸エステル、ソルビタンセスキオレイン酸エステル、ソルビタンジオレイン酸エステル、ソルビタントリオレイン酸エステル等のソルビタン脂肪酸エステル類等から選ばれる1種または2種以上の混合物が挙げられ、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルと併用することによって相乗効果が期待できる。【0015】本発明に用いるポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルは中性脂質に対して0.1〜100重量%配合するが、好ましくは0.2〜50重量%、より好ましくは0.5〜20重量%が良い。添加量が0.1重量%未満の場合はミネラル類固体微粒子を十分に分散させる事が不可能であり、100重量%より多い場合には該組成物を改めて水系に分散させる際、乳化転相により内包するミネラル類微粒子の溶出が生じ易くなり、中性脂質中に安定な均一分散系を構成するに支障を来たす。【0016】本発明に用いる中性脂質は特に限定するものではないが、脂肪酸エステル、多価アルコール脂肪酸エステル、中鎖脂肪酸トリグリセリド及びそれらの水素添加物等の合成油脂や大豆、米、菜種、カカオ、椰子、ごま、べにばな、パーム、綿、落花生、アボガド、カポック、ケシ、ごぼう、小麦、月見草、つばき、とうもろこし、ひまわり等から得られる一般的な植物性油脂及びこれらの硬化物及び牛、乳、豚、いわし、さば、さめ、さんま、たら、卵黄等から得られる動物性油脂及びこれらの硬化物等が挙げられ、これらの油脂は1種または2種以上の混合物が使用できる。また、これらに本来含まれているリン脂質、ステロール類、ワックス類等が共存しても一向に差し支えない。【0017】本発明の湿式摩砕法とは、粉砕室(ベッセル容器)中でガラスビーズ、アルミナビーズ、ジルコニアビーズ、チタニアビーズ等のメディアをディスク又はローターを回転させることにより、メディア同士を衝突させて該粉砕室中に供給される被粉砕物スラリーをせん断応力を生じさせ粉砕する方法である。本発明におけるメディアは、好ましくはアルミナビーズ、ジルコニアビーズ、チタニアビーズが使用される。さらに、メディアの粒径は特に限定されるものではないが、好ましくは1mm以下、より好ましくは0.8mm以下、更に好ましくは0.5mm以下が使用される。メディアの充填量は特に限定されるものではないが、通常摩砕室の有効容積に対して50%以上であるが、摩砕効率から好ましくは70%以上、更に好ましくは80%以上が望ましい。本発明に用いられる湿式摩砕機は、本発明によって得られるミネラルの平均粒径が2μm以下にする性質を有するものであれば特に限定するものではないが、一般的にコボールミル、ダイノーミル、サンドミル、レディミル等と呼称されているものであり、更に縦型、横型、バッチ式、連続式などいずれのタイプでも差し支えないが生産効率の面から、好ましくは連続式が望ましい。なお、摩砕室の材質は余分な異物が混入しないよう金属ではなく、セラミック等が望ましい。【0018】本発明のミネラル強化用組成物は、茶飲料、コーヒー、ココア飲料等の嗜好飲料、クッキー、ビスケット等製菓・製パン類、カレー、シチュー等さまざまな食品への応用が可能である。以下に実施例及び試験例によって本発明を説明するが、その内容に制限されるものではない。【0019】【実施例】実施例1中鎖脂肪酸トリグリセリド45重量部(サンソフトMCT−6、太陽化学株式会社製)、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル5重量部(サンソフト818H、太陽化学株式会社製)を混合し、卵殻カルシウム50重量部(卵殻カルシウムTS−800、平均粒子径約5μm、太陽化学株式会社製)を加えた油性懸濁液を調製し、これをレディミル(株式会社アイメックス製)に掛け、レーザー回折型粒度分布測定により卵殻カルシウムの平均粒子径が0.7μmとなった卵殻カルシウム分散組成物を得た。【0020】実施例2ヤシ硬化油57.8重量部(ユーコリン、植田製油株式会社製、融点36℃)、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル8重量部(サンソフト818H,太陽化学株式会社製)、クエン酸モノオレイン酸グリセリル8重量部(サンソフトNO.623M、太陽化学株式会社製)、トリミリスチン酸ペンタグリセリン1.2重量部(サンソフトA−143E、大陽化学株式会社製)、乳清カルシウム25重量部(平均粒子系約3μm、森永乳業株式会社製)を加えた油性懸濁液を調製し、これをレディミル(株式会社アイメックス製)に掛け、レーザー回折型粒度分布測定により鉄の平均粒子径が0.3μmとなった乳清カルシウム分散組成物を得た。【0021】実施例3ヤシ硬化油50重量部(ユーコリン、植田製油株式会社製、融点36℃)、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル10重量部(サンソフト818H,太陽化学株式会社製)、ピロリン酸第二鉄40重量部(平均粒子径約4μm、富田製薬株式会社製)を加えた油性懸濁液を調製し、これをレディミル(株式会社アイメックス製)に掛け、レーザー回折型粒度分布測定により鉄の平均粒子径が0.3μmとなったピロリン酸鉄分散組成物を得た。【0022】試験例1実施例1の卵殻カルシウム分散組成物3.2g、バター31.8g、粉糖40gを混合、攪拌しクリーム状にし、全卵液25gを加えクリーム状になるまで混合した。(カルシウムとして300mg配合)薄力粉100g加えて生地を調製し、冷蔵庫で30分ねかせて、クッキー型で成型し、170℃のオーブンで20分間焼いてクッキーを調製した。対照品として、カルシウム無添加及び卵殻カルシウム添加品を調製してそれぞれの食感、風味について比較した。卵殻カルシウム分散組成物添加のクッキーの食感は柔らかく、ざらつきもなく、風味も良好であった。これに対してカルシウム無添加品はクッキーとしての風味・甘さはあったが食感は硬く、卵殻カルシウム添加品は食感も硬く、風味も損なわれたものであった。【0023】試験例2実施例2の乳清カルシウム分散組成物6.9g、カレールー288.6g、水4.0を混合した。(カルシウムとして150mg配合)耐熱性の袋に充填し、121℃15分レトルト殺菌を行った。対照品として、カルシウム無添加及び乳清カルシウム添加品を調製して食感、風味について比較した。乳清カルシウム分散組成物添加のカレーは無添加品と同様辛味が損なわれていなかった。これに対して、乳清カルシウム添加のものは、無添加品と比べて味もうすくざらつきが感じられた。【0024】試験例3実施例3のピロリン酸鉄分散組成物130g、ポリグリセリンステアリン酸エステル18.6g(サンソフトPS−68、太陽化学株式会社製)、クエン酸モノステアリン酸エステル1.86g(サンソフトNO.621B、太陽化学株式会社製)、ポリグリセリンステアリン酸エステル2.6g(サンソフトQ−182S、太陽化学株式会社製)、カゼイン44.6g、炭酸ナトリウム、デキストリン170.8g、水742.86gをホモミキサー(特殊機化工業株式会社製)にて高速攪拌を行ってW/O/W乳化液を調製し、スプレードライにて粉末化した。この粉末品0.2重量部、ココア10重量部、90℃の熱水100重量部加えて溶解させた。(鉄として最終濃度が10mg/100ml)対照として、ピロリン酸第二鉄、鉄無添加品を調製して比較した。ピロリン酸第二鉄添加品については瞬時に黒色化したが、ピロリン酸第二鉄分散組成物は鉄無添加品と見た目は変わらなかった。色調については色差計(日本電色工業株式会社製)により測定した。結果を表1に示す。【0025】【表1】【0026】【発明の効果】本発明のミネラル類組成物は、種々のミネラル類が極めて安定化されたものであり、更に油系食品中に分散させた場合においても、乳化転相により内包するミネラル類が溶出する事なく、安定なW/O、W/O/W乳化系を構成する事を特徴とするものである。ここで言うW/O/W乳化系は、水中に分散する中性脂質の油滴の中に栄養強化用の固体ミネラルの超微粒子結晶が安定分散する2重乳化構造を示す。また、本発明ミネラル類組成物は、食品に添加しても、食品本来の食感、色、風味等を損なわずミネラル強化を可能とするものであり、産業上の意義は非常に大きい。 固体ミネラル類をポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルを含む中性脂質中で湿式摩砕法を用いて平均粒径2μm以下の微粒子に分散させることを特徴とするミネラル強化用油性懸濁液。 請求項1記載のミネラル強化用油性懸濁液の製造法。 請求項1記載のミネラル強化用油性懸濁液を含有する食品。