タイトル: | 特許公報(B2)_外来遺伝子導入用パラミクソウイルスベクター |
出願番号: | 2001145935 |
年次: | 2011 |
IPC分類: | C12N 15/09,C12N 7/00,A61K 35/76,A61K 48/00 |
徳炭 剛 飯田 章博 長谷川 護 永井 美之 JP 4791651 特許公報(B2) 20110729 2001145935 20010516 外来遺伝子導入用パラミクソウイルスベクター 株式会社ディナベック研究所 595155107 清水 初志 100102978 徳炭 剛 飯田 章博 長谷川 護 永井 美之 CA 2322057 20001027 JP 2000152726 20000518 20111012 C12N 15/09 20060101AFI20110921BHJP C12N 7/00 20060101ALI20110921BHJP A61K 35/76 20060101ALN20110921BHJP A61K 48/00 20060101ALN20110921BHJP JPC12N15/00 AC12N7/00A61K35/76A61K48/00 C12N 15/09 C12N 7/00 A61K 35/76 A61K 48/00 CA/BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) 特開平08−168381(JP,A) 国際公開第00/001837(WO,A1) J Virol.,1996年,Vol.70,p.6634-6641 J Virol.,1999年,Vol.73,p.4823-4828 J Virol.,1999年,Vol.73,p.9237-9246 6 2002272465 20020924 41 20080317 特許法第30条第1項適用 3rd Annual Meeting of the American Society of Gene Therapy要約 Program No. 890で発表 小川 明日香 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、外来遺伝子を導入することができる、複製能を有するパラミクソウイルスベクターに関する。【0002】【従来の技術】これまでの遺伝子治療の臨床研究のアプローチの多くはレトロウイルス、アデノウイルス、およびアデノ随伴ウイルスなどのウイルスベクターが利用されている。これらの遺伝子治療用ベクターは、導入効率および持続発現に制限があり、ベクター自体に細胞毒性及び免疫原性があるなど、医学応用上の大きな問題が存在する(Lamb, R.A. & Kolakofsky, D., Paramyxoviridae: the viruses and their replication. in Fields Virology, 3rd edn, (Edited by B.N. Fields, D.M. Knipe & P.P. Howley)pp.1177-1204(Philadelphia, Lippincott-Raven. (1996))。これらの対策として新たなベクターがレンチウイルスやHSVをベースに提案されており、また既存ベクターの改良研究が精力的になされている。しかしながら、これらのベクターはいずれも生活環において、核内でDNAの形態で存在する。従って、患者の染色体とのランダムな相互作用に関わる安全性への危惧は完全に回避することは難しい。【0003】最近のリバースジェネティクス技術の急速な進歩により、従来開発が遅れていたRNAウイルスをベースにしたベクターの開発が可能となりつつある。組み換えRNAウイルスは高い遺伝子導入効率と発現能力を示し、遺伝子治療用ベクターとしての高いポテンシャリティが示唆される(Roberts, A. & Rose, J. K., Virology 247,1-6 (1998); Rose, J. K., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93, 14998-15000 (1996); Palese, P. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93, 11354-11358 (1996))。ネガティブ鎖RNAをゲノムに持つパラミクソウイルスベクターは、レトロウイルス、DNAウイルス、またはプラス鎖RNAウイルスベクターとは大きく異なる幾つかの特徴を持っている。そのゲノムまたはアンチゲノムは直接にmRNAとしては機能せず、ウイルスのタンパク質合成やゲノム複製を開始させることはできない。ウイルスのRNAゲノムもアンチゲノムも常にリボ核酸タンパク質(ribonucleoprotein; RNP)複合体の形で存在し、プラス鎖RNAウイルスに見られるような、mRNAsが相補的な裸のゲノムRNAにハイブリダイズしてゲノムのRNPへのアセンブリを妨害するといったアンチセンスの問題が殆ど起きない。これらのウイルスは自身のRNAポリメラーゼを持っており、RNP複合体を鋳型にしてウイルスmRNAの転写またはウイルスゲノムの複製を行う。特筆すべきことにネガティブ鎖RNA(nsRNA)ウイルスは宿主細胞の細胞質でのみ増殖し、DNAフェーズを持たないため染色体への組み込み(integration)は起こらない。更にはRNA同士の相同組み換えも認められていない。これらの性質はネガティブ鎖RNAウイルスの遺伝子発現ベクターとしての安定性と安全性に大きく寄与するものと思われる。【0004】本発明者らはネガティブ鎖RNAウイルスの中でもヒトに対して病原性を持たないセンダイウイルス(Sendai virus; SeV)、中でも特に弱毒であるZ株に注目してきた。SeVは非分節型ネガティブ鎖 RNAウイルスで、パラミクソウイルス(paramyxovirus)に属し、murine parainfluenza virusの一種である。このウイルスは二つのエンベロープ糖タンパク質であるヘマグルチニン-ノイラミニダーゼ(hemagglutinin-neuraminidase; HN)とフュージョンタンパク質(fusion protein; F)を介して宿主細胞膜に接着、膜融合を起こし、効率的に自分のRNAポリメラーゼとリボヌクレオプロテイン(RNP)複合体の形で存在するRNAゲノムを細胞質に放出し、そこでウイルスのmRNAの転写及びゲノムの複製を行う(Bitzer, M. et al., J. Virol. 71(7):5481-5486, 1997)。ウイルスエンベロープ蛋白質Fは活性の無い前駆蛋白(F0)として合成され、トリプシンによるタンパク質分解(proteolytic cleavage)で F1 と F2 に解裂され(Kido, H. et al., Biopolymers (Peptide Science) 51(1):79-86, 1999)、活性型蛋白質となり膜融合を引き起こす。このウイルスはヒトに対して病原性がないと言われている。また、ラボ弱毒株(Z strain)も分離されており、自然宿主であるげっ歯類に対し軽度の肺炎を誘発する程度である。この株はパラミクソウイルスの転写複製機構等の分子レベルにおける研究モデルとして広く用いられており、またハイブリドーマの作製にも使われてきた。このような高い安全性に加えこのウイルスは、細胞株または鶏卵で109〜11 pfu/mlという高い生産タイターを示す。最近成功したネガティブ鎖RNAウイルスベクターのcDNAからの回収システムの中で、センダイウイルスの場合は特に高い再構成効率を示している。外来遺伝子を導入した組み換え型野生ウイルスでは効率的且つ安定的に導入外来遺伝子を発現する能力が注目されている。【0005】これまでに、外来遺伝子をNP遺伝子の上流に挿入したセンダイウイルスベクターは知られているが、これ以外の部位に外来遺伝子を挿入した場合に、ウイルスの再構成および外来遺伝子の発現にどのような影響が出るのかについては知られていなかった。【0006】【発明が解決しようとする課題】本発明は、外来遺伝子を導入することができる、複製能を有するパラミクソウイルスベクターを提供することを課題とする。【0007】【課題を解決するための手段】本発明者らは、センダイウイルスのウイルス蛋白質をコードする各遺伝子の前後の部位に外来遺伝子を挿入したウイルスベクターDNAを構築し、ウイルスの再構成および外来遺伝子の発現量の検討を行った。すなわち、センダイウイルス(SeV)全長ゲノムcDNAに、外来遺伝子挿入用に新たな制限酵素部位をウイルス蛋白質タンパク質をコードする各遺伝子のスタートシグナルとATG翻訳開始シグナルの間に導入した。この制限酵素部位に外来遺伝子(ヒト分泌型アルカリフォスファターゼ遺伝子)を挿入し、LLC-MK2細胞を用いてセンダイウイルスの再構築を行ったところ、複製能を有するセンダイウイルスが再構築されることが確認された。これらの各ウイルスを鶏卵で増幅し、ウイルスのストック溶液を調製した。このウイルスを、タイターをあわせてLLC-MK2細胞に感染させ、外来遺伝子の発現量を測定したところ、調べたいずれの位置に外来遺伝子を挿入した場合でも、外来遺伝子の発現が見られた。外来遺伝子をゲノムの上流(ネガティブ鎖の3'側)、すなわちNP遺伝子の前、またはNP遺伝子とP遺伝子との間に挿入した場合では、外来遺伝子の発現量は比較的高く、外来遺伝子の挿入位置がゲノムの下流(ネガティブ鎖の5'側)に近づくに従って、外来遺伝子の発現が低下することが判明した。【0008】これらの結果は、外来遺伝子をNP遺伝子の上流またはNP遺伝子の下流(NP遺伝子とP遺伝子の間)に位置させれば、比較的高い外来遺伝子の発現を得ることが可能であり、外来遺伝子をゲノムのより下流に位置させれば、その発現量を減少させることが可能であることを示している。この知見を基にすれば、外来遺伝子の高い発現を得るためには、外来遺伝子をゲノムの上流側、すなわちネガティブ鎖ゲノムの3'側に挿入し、反対に、細胞毒性を有する遺伝子など高発現が好ましくない場合には外来遺伝子をゲノムの下流側、すなわちネガティブ鎖ゲノムの5'側に挿入することによって、ベクターにおける外来遺伝子の発現量を制御することが可能となる。このように本発明のパラミクソウイルスベクターは、外来遺伝子を減弱発現させるためのパラミクソウイルスベクターとして極めて有用である。本発明のパラミクソウイルスベクターは、in vivo および in vitro における外来遺伝子の発現に有用であり、特にパラミクソウイルスの優れた特徴を生かした遺伝子治療用ベクターとしての応用が期待される。【0009】RNAウイルスではゲノムの安定性の問題が指摘され得るが、SeVベクターによる異種遺伝子発現の結果ではウイルスを連続多代継代しても殆ど塩基の変異が認められず、挿入異種遺伝子を長期間に渡って安定に発現する事が示されている(Yu, D. et al. Genes Cells 2, 457-466 (1997))。このネガティブ鎖RNAウイルスレプリコンをベースにしたベクターは、既に成功しているポジティブ鎖(positive-strand)RNAウイルスであるセムリキ森林ウイルス(Semliki forest virus)またはシンドビスウイルス(Sindbis viruses)のレプリコンをベースにしたウイルスベクターに比べ、ゲノムの安定性や、カプシド構造タンパク質を持たないことによる導入遺伝子のサイズまたはパッケージングの柔軟性(flexibility)など性質上幾つかのメリットがある。複製能を有するセンダイウイルスベクターは、外来DNAを少なくとも4kbpまで導入可能であり、転写ユニットを付加することによって2種類以上の遺伝子を同時に発現する事が可能かもしれない。このセンダイウイルスのレプリコンをベースにしたベクターは複製されたウイルスが周囲の細胞にも再感染し、感染細胞の細胞質で多コピーに複製されたRNPが細胞の分裂に伴い娘細胞にも分配されるため持続発現が期待される。さらに、本発明者等は、センダイウイルスベクターが血球系の細胞、特に顆粒球系細胞にも高い効率で遺伝子導入され、c-kit陽性のprimitive細胞にも導入されることを見出した。このことから、このベクターは非常に広い組織適用範囲を持つ応用可能性の高いベクターになり得ることが示唆される。【0010】即ち本発明は、外来遺伝子を導入することができる、複製能を有するパラミクソウイルスベクターに関し、より具体的には、(1)外来遺伝子を保持し、かつ複製能を有するパラミクソウイルスベクターであって、該ベクターに含まれるネガティブ鎖ゲノムRNAにおいて、ウイルスタンパク質をコードする遺伝子の下流に外来遺伝子が位置しているベクター、(2)外来遺伝子を保持し、かつ複製能を有するパラミクソウイルスベクターであって、下記(a)から(f)のいずれかに記載のベクター、(a)ベクターに含まれるネガティブ鎖ゲノムRNAの3'端から1番目に位置するウイルスタンパク質をコードする遺伝子と2番目のウイルスタンパク質をコードする遺伝子の間に外来遺伝子が挿入されているベクター、(b)ベクターに含まれるネガティブ鎖ゲノムRNAの3'端から2番目に位置するウイルスタンパク質をコードする遺伝子と3番目のウイルスタンパク質をコードする遺伝子の間に外来遺伝子が挿入されているベクター、(c)ベクターに含まれるネガティブ鎖ゲノムRNAの3'端から3番目に位置するウイルスタンパク質をコードする遺伝子と4番目のウイルスタンパク質をコードする遺伝子の間に外来遺伝子が挿入されているベクター、(d)ベクターに含まれるネガティブ鎖ゲノムRNAの3'端から4番目に位置するウイルスタンパク質をコードする遺伝子と5番目のウイルスタンパク質をコードする遺伝子の間に外来遺伝子が挿入されているベクター、(e)ベクターに含まれるネガティブ鎖ゲノムRNAの3'端から5番目に位置するウイルスタンパク質をコードする遺伝子と6番目のウイルスタンパク質をコードする遺伝子の間に外来遺伝子が挿入されているベクター、(f)ベクターに含まれるネガティブ鎖ゲノムRNAの3'端から6番目に位置するウイルスタンパク質をコードする遺伝子とトレイラー配列の間に外来遺伝子が挿入されているベクター、(3)ベクターに含まれるネガティブ鎖ゲノムRNAの3'端から1番目〜6番目に位置するウイルスタンパク質をコードする遺伝子が、順にNP遺伝子、P遺伝子、M遺伝子、F遺伝子、HN遺伝子、およびL遺伝子である、(2)に記載のベクター、(4)(1)から(3)のいずれかに記載のパラミクソウイルスベクターに含まれるネガティブ鎖ゲノムRNAまたはその相補鎖をコードするDNA、(5)複製能を有するパラミクソウイルスベクターに含まれるネガティブ鎖ゲノムRNAまたはその相補鎖をコードするDNAであって、該ネガティブ鎖ゲノムRNAまたはその相補鎖において、ウイルスタンパク質をコードする遺伝子の下流に外来遺伝子を挿入するためのクローニング部位を保持するDNA、(6)複製能を有するパラミクソウイルスベクターに含まれるネガティブ鎖ゲノムRNAまたはその相補鎖をコードするDNAであって、下記(a)から(f)のいずれかに記載のDNA、(a)ネガティブ鎖ゲノムRNAの3'端から1番目に位置するウイルスタンパク質をコードする遺伝子と2番目のウイルスタンパク質をコードする遺伝子の間に外来遺伝子を挿入するためのクローニング部位を保持するDNA、(b)ネガティブ鎖ゲノムRNAの3'端に相当する部位から2番目に位置するウイルスタンパク質をコードする遺伝子と3番目のウイルスタンパク質をコードする遺伝子の間に外来遺伝子を挿入するためのクローニング部位を保持するDNA、(c)ネガティブ鎖ゲノムRNAの3'端に相当する部位から3番目に位置するウイルスタンパク質をコードする遺伝子と4番目のウイルスタンパク質をコードする遺伝子の間に外来遺伝子を挿入するためのクローニング部位を保持するDNA、(d)ネガティブ鎖ゲノムRNAの3'端に相当する部位から4番目に位置するウイルスタンパク質をコードする遺伝子と5番目のウイルスタンパク質をコードする遺伝子の間に外来遺伝子を挿入するためのクローニング部位を保持するDNA、(e)ネガティブ鎖ゲノムRNAの3'端に相当する部位から5番目に位置するウイルスタンパク質をコードする遺伝子と6番目のウイルスタンパク質をコードする遺伝子の間に外来遺伝子を挿入するためのクローニング部位を保持するDNA、(f)ネガティブ鎖ゲノムRNAの3'端に相当する部位から6番目に位置するウイルスタンパク質をコードする遺伝子とトレイラー配列の間に外来遺伝子を挿入するためのクローニング部位を保持するDNA、(7)ネガティブ鎖ゲノムRNAの3'端に相当する部位から1番目〜6番目に位置するウイルスタンパク質をコードする遺伝子が、順にNP遺伝子、P遺伝子、M遺伝子、F遺伝子、HN遺伝子、およびL遺伝子である、(6)に記載のDNA、(8)(4)から(7)のいずれかに記載のDNAを転写可能に保持するベクターDNA、(9)ポジティブ鎖ゲノムRNAを転写可能に保持する、(8)に記載のベクターDNA、(10)パラミクソウイルスベクターにおける外来遺伝子の発現レベルを制御する方法であって、(a)ベクターに含まれるネガティブ鎖ゲノムRNAの3'端から1番目に位置するウイルスタンパク質をコードする遺伝子と2番目のウイルスタンパク質をコードする遺伝子の間に外来遺伝子を位置させる方法、(b)ベクターに含まれるネガティブ鎖ゲノムRNAの3'端から2番目に位置するウイルスタンパク質をコードする遺伝子と3番目のウイルスタンパク質をコードする遺伝子の間に外来遺伝子を位置させる方法、(c)ベクターに含まれるネガティブ鎖ゲノムRNAの3'端から3番目に位置するウイルスタンパク質をコードする遺伝子と4番目のウイルスタンパク質をコードする遺伝子の間に外来遺伝子を位置させる方法、(d)ベクターに含まれるネガティブ鎖ゲノムRNAの3'端から4番目に位置するウイルスタンパク質をコードする遺伝子と5番目のウイルスタンパク質をコードする遺伝子の間に外来遺伝子を位置させる方法、(e)ベクターに含まれるネガティブ鎖ゲノムRNAの3'端から5番目に位置するウイルスタンパク質をコードする遺伝子と6番目のウイルスタンパク質をコードする遺伝子の間に外来遺伝子を位置させる方法、(f)ベクターに含まれるネガティブ鎖ゲノムRNAの3'端から6番目に位置するウイルスタンパク質をコードする遺伝子とトレイラー配列の間に外来遺伝子を位置させる方法、に関する。【0011】なお、本発明において「ウイルスベクター」とは、宿主内に核酸分子を導入する能力を有するウイルス粒子を指す。また、本発明においてパラミクソウイルスとはパラミクソウイルス属(Paramyxovirus)に属するウイルスまたはその誘導体を指す。本発明を適用可能なパラミクソウイルスとしては、例えばヒトパラインフルエンザウイルス1型(HPIV-1)、ヒトパラインフルエンザウイルス3型(HPIV-3)、ウシパラインフルエンザウイルス3型(BPIV-3)、センダイウイルス(Sendai virus; マウスパラインフルエンザウイルス1型とも呼ばれる)、およびサルパラインフルエンザウイルス10型(SPIV-10)などが含まれる。本発明のウイルスは、より好ましくはセンダイウイルスである。これらのウイルスは、天然株、野生株、変異株、ラボ継代株、および人為的に構築された株などであり得る。DI粒子(J. Virol. 68, 8413-8417(1994))等の不完全ウイルスや、合成したオリゴヌクレオチド等も、本発明のウイルスベクターを製造するための材料として使用することができる。【0012】パラミクソウイルスのウイルスタンパク質をコードする遺伝子としては、NP、P、M、F、HN、およびL遺伝子が含まれる。「NP、P、M、F、HN、およびL遺伝子」とは、それぞれヌクレオキャプシド、ホスホ、マトリックス、フュージョン、ヘマグルチニン-ノイラミニダーゼ、およびラージ蛋白質をコードする遺伝子のことを指す。パラミクソウイルス亜科に属する各ウイルスにおける各遺伝子は、一般に次のように表記される。一般に、NP遺伝子は「N遺伝子」と表記されることもある。パラミクソウイルス属 NP P/C/V M F HN - Lルブラウイルス属 NP P/V M F HN (SH) Lモービリウイルス属 NP P/C/V M F H - L【0013】例えばパラミクソウイルス科(Paramyxoviridae)のレスピロウイルス(Respirovirus)属にも分類されるセンダイウイルスの各遺伝子の塩基配列のデータベースのアクセッション番号は、NP遺伝子については M29343、M30202, M30203, M30204, M51331, M55565, M69046, X17218、P遺伝子については M30202, M30203, M30204, M55565, M69046, X00583, X17007, X17008、M遺伝子については D11446, K02742, M30202, M30203, M30204, M69046, U31956, X00584, X53056、F遺伝子については D00152, D11446, D17334, D17335, M30202, M30203, M30204, M69046, X00152, X02131、HN遺伝子については D26475, M12397, M30202, M30203, M30204, M69046, X00586, X02808, X56131、L遺伝子については D00053, M30202, M30203, M30204, M69040, X00587, X58886を参照のこと。【0014】「複製能を有する」とは、ウイルスベクターが LLC-MK2またはCV-1細胞等の宿主細胞に感染した場合、該細胞においてウイルスが複製され、感染性ウイルス粒子が産生されることを指す。また、本発明において「DNA」とは、一本鎖DNAおよび二本鎖DNAを含む。【0015】本発明において「遺伝子」とは遺伝物質を指し、RNAおよびDNA等の核酸が含まれる。遺伝子の由来に制限はなく、天然または人為的に設計された配列に由来するものであり得る。人工的な蛋白質としては、例えば、他の蛋白質との融合蛋白質、ドミナントネガティブ蛋白質(受容体の可溶性分子または膜結合型ドミナントネガティブ受容体を含む)、欠失型の細胞接着分子および可溶型細胞表面分子などの形態であり得る。あるいは、感染症に関する細菌またはウイルスの抗原蛋白質の部分ペプチドをコードする遺伝子であってもよい。また、例えばアンチセンス核酸またはリボザイムなどのタンパク質をコードしない核酸であってもよい。【0016】【発明の実施の形態】パラミクソウイルスは、一般に、エンベロープの内部にRNAとタンパク質からなる複合体(リボヌクレオプロテイン; RNP)を含んでいる。RNPに含まれるRNAはパラミクソウイルスのゲノムであるネガティブ鎖(マイナス鎖)の一本鎖RNAであり、NPタンパク質、Pタンパク質、およびLタンパク質がこのRNAに結合して複合体を形成している。このRNPに含まれるRNAがウイルスゲノムの転写および複製のための鋳型となる(Lamb, R.A., and D. Kolakofsky, 1996, Paramyxoviridae : The viruses and their replication. pp.1177-1204. In Fields Virology, 3rd edn. Fields, B. N., D. M. Knipe, and P. M. Howley et al. (ed.), Raven Press, New York, N. Y.)。RNP複合体は、細胞内で自立的にRNP複合体を複製し、遺伝子(複合体に含まれるRNA)のコピー数を増やす。これにより、外来遺伝子を持つベクターからの外来遺伝子の高い発現がもたらされる。【0017】本発明のウイルスベクターは、通常、(a)パラミクソウイルスに由来するネガティブ鎖一本鎖RNAまたはその相補鎖(ポジティブ鎖)をコードするベクターDNAを、NP、P、およびL蛋白質を発現する細胞(ヘルパー細胞)で転写させ、(b)該細胞を培養し、その培養上清からウイルス粒子を回収することにより調製することができる。ベクターDNAから転写されたRNAは NP、L、およびPタンパク質とRNP複合体を形成し、さらにエンベロープ蛋白質を含む外殻に包まれたウイルス粒子が形成する。【0018】ヘルパー細胞で発現させる、ウイルスゲノムをコードするDNA(ベクターDNA)は、ゲノムのマイナス鎖(ネガティブ鎖RNA)またはその相補鎖(ポジティブ鎖RNA)をコードしている。例えば、ネガティブ鎖一本鎖RNAまたはその相補鎖をコードするDNAをT7プロモーターの下流に連結させ、T7 RNA ポリメラーゼによりRNAに転写させる。プロモータとしては、T7ポリメラーゼの認識配列を含むもの以外にも所望のプロモーターを利用することができる。あるいは、インビトロで転写させたRNAをヘルパー細胞にトランスフェクトしてもよい。細胞内で転写させる鎖は、ウイルスゲノムのポジティブ鎖でもネガティブ鎖でもよいが、ポジティブ鎖が転写されるようにすることが再構成の効率を上げるためには好ましい。【0019】センダイウイルス(Sendai virus; SeV)の場合、天然のウイルスのゲノムサイズは約15,000塩基で、ネガティブ鎖においては 3'の短いリーダー領域に続き、NP(ヌクレオキャプシド)、P(ホスホ)、M(マトリックス)、F(フュージョン)、HN(ヘマグルチニン-ノイラミニダーゼ)、およびL(ラージ)蛋白質をコードする6つの遺伝子が並んでおり、短い5'トレイラー領域を他端に有する。本発明においては、複製能を有する限り、一部の遺伝子が欠損していてもよく、ウイルスゲノム上におけるこれらの遺伝子の配置は野生型と同じでなくてもよい。RNPの形成には M、HN、およびF蛋白質は必要ないため、NP、P、およびLタンパク質の存在下でこのゲノムRNA(ポジティブ鎖またはネガティブ鎖)を転写させることによりRNPが構築され、さらにこのRNPから感染性のウイルス粒子が構築される。ベクターの再構築は、例えばLLC-MK2細胞などで行わせることができる。NP、P、およびLタンパク質の供給は、各遺伝子をコードする発現ベクターを細胞に導入することにより行われ得る。また、各遺伝子は宿主細胞の染色体に組み込まれていてもよい。RNPを形成させるために発現させる NP、P、およびL遺伝子は、ベクターのゲノムにコードされる NP、P、およびL遺伝子と完全に同一である必要はない。すなわち、これらの遺伝子がコードする蛋白質のアミノ酸配列は、RNPゲノムがコードするタンパク質のアミノ酸配列そのままでなくとも、ゲノムRNAと共にRNPを形成し、このRNPからの遺伝子発現を誘導する活性を有する限り、変異を導入したり、あるいは他のウイルスの相同遺伝子で代用してもよい。RNPが形成されれば、このRNPから NP、P、およびL遺伝子が発現され、細胞内で自立的にRNPが複製し、エンベロープタンパク質と共にウイルスベクターが生産される。【0020】産生されたウイルスは、培養細胞、鶏卵、個体(例えばマウスなどの哺乳動物)などに再感染させて増幅または継代することができる。また、ウイルスベクターの再構成で形成されるRNPをLLC-MK2細胞などの宿主細胞に再度導入して培養することにより、本発明のウイルスベクターを増幅することもできる。この過程は、(a)パラミクソウイルスに由来するネガティブ鎖一本鎖RNA、並びに NP、P/C、および L 蛋白質からなる複合体を細胞に導入する工程、および(b)該細胞を培養し、その培養上清からウイルス粒子を回収する工程、を含む。【0021】RNPを細胞に導入するには、例えばリポフェクトアミンやポリカチオニックリポソームなどと共に複合体を形成させて導入することが可能である。具体的には、種々のトランスフェクション試薬が利用できる。例えば、DOTMA(Boehringer)、Superfect(QIAGEN #301305)、DOTAP、DOPE、DOSPER(Boehringer #1811169)などが挙げられる。エンドソーム中での分解を防ぐため、クロロキンを加えることもできる(Calos, M.P., 1983, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80: 3015)。【0022】ウイルス再構成の際に、ゲノムRNAがコードするエンベロープタンパク質以外のエンベロープ蛋白質を細胞で発現させてもよい。このようなタンパク質としては、他のウイルスのエンベロープタンパク質、例えば水疱性口内炎ウイルス(VSV)のGタンパク質(VSV-G)を挙げることができる。本発明のパラミクソウイルスベクターは、VSV-Gタンパク質などのように、ゲノムが由来するウイルス以外のウイルスに由来するエンベロープタンパク質を含むベクターであってもよい。また、ウイルスのエンベロープタンパク質以外にも、例えば、特定の細胞に接着しうるような、接着因子、リガンド、受容体等由来のポリペプチドを細胞外領域に有し、ウイルスエンベロープ由来のポリペプチドを細胞内領域に有するキメラタンパク質などを用いることが可能である。これにより、特定の組織を標的とするベクターを作り出すこともできる。これらはウイルスゲノムにコードされていてもよいし、ウイルスベクターの再構成時に、ゲノム以外の遺伝子(例えば別の発現ベクターまたは宿主染色体上の遺伝子など)の発現により供給されてもよい。【0023】また、本発明のウイルスベクターは、例えば、SeV蛋白質による免疫原性を低下させるために、または、RNAの転写効率や複製効率を高めるために、ベクターに含まれるウイルス遺伝子が改変されたものであってもよい。具体的には、例えば複製因子であるNP遺伝子、P/C遺伝子およびL遺伝子の少なくとも一つを改変し、転写または複製の機能を高めることが考えられる。また、構造体蛋白質の1つであるHN蛋白質は、赤血球凝集素であるヘマグルチニン(hemagglutinin)活性とノイラミニダーゼ(neuraminidase)活性との両者の活性を有するが、例えば前者の活性を弱めることができれば、血液中でのウイルスの安定性を向上させることが可能であろうし、例えば後者の活性を改変することにより、感染能を調節することも可能である。また、膜融合に関わるF蛋白質を改変することにより、膜融合リポソームの融合能を調節することもできる。また、例えば、細胞表面の抗原分子となりうるF蛋白質やHN蛋白質の抗原提示エピトープ等を解析することが再構成系の確立により可能となったため、これを利用してこれらの蛋白質に関する抗原提示能を弱めたセンダイウイルスを作製することもできる。【0024】本発明のウイルスベクターは、ネガティブ鎖一本鎖RNA中に外来遺伝子をコードしているか、または外来遺伝子を挿入するための部位を有する。外来遺伝子としては、標的細胞中で発現させたい所望の遺伝子を用いることが可能である。例えば、遺伝子治療などを目的とする場合には、該ウイルスベクターDNAに対象となる疾患の治療用遺伝子を挿入する。外来遺伝子は、ウイルスの各遺伝子(NP、P、M、F、HN、およびL遺伝子)の下流に挿入することができる(実施例参照)。ここで「下流」とは、タンパク質をコードするセンス鎖において3'側に隣接する部位をさす。すなわち、ネガティブ鎖RNA(またはDNA)であれば、遺伝子の下流とは該遺伝子の5'側隣接部位であり、ポジティブ鎖RNA(またはDNA)であれば、該遺伝子の3'側隣接部位を言う。【0025】本発明は、特に外来遺伝子の発現を制限したい場合に有用である。外来遺伝子をネガティブ鎖ゲノムの下流に挿入するほど、外来遺伝子の発現レベルを減弱させることができる。この場合、本発明のベクターとしては、外来遺伝子を保持し、かつ複製能を有するパラミクソウイルスベクターであって、該ベクターに含まれるネガティブ鎖ゲノムRNAにおいて、3'端から2番目に位置するウイルスタンパク質をコードする遺伝子より少なくとも下流に外来遺伝子が位置しているベクターが好ましい。より好ましくは、外来遺伝子は、ネガティブ鎖ゲノムRNAにおいて、3'端から3番目、さらに好ましくは4番目、さらに好ましくは5番目、さらに好ましくは6番目に位置するウイルスタンパク質をコードする遺伝子より少なくとも下流に位置している。また本発明は、これら本発明のパラミクソウイルスベクターにより外来遺伝子の発現レベルを制御する方法に関する。外来遺伝子を、ネガティブ鎖ゲノムの3'側に位置させる程、その発現レベルを相対的に上昇させることができ、逆に5'側に位置させる程、発現レベルを低下させることができる。発現レベルを相対的に低下させたい場合は、例えば、外来遺伝子をパラミクソウイルスベクターに含まれるネガティブ鎖ゲノムRNAの3'端から1番目に位置するウイルスタンパク質をコードする遺伝子と2番目のウイルスタンパク質をコードする遺伝子の間に、より好ましくは同2番目と3番目の間に、さらに好ましくは同3番目と4番目の間に、さらに好ましくは同4番目と5番目の間に、さらに好ましくは同5番目と6番目の間に、さらに好ましくは同6番目とトレイラー配列の間に位置させる。これにより、外来遺伝子の発現を所望のレベルに制御することが可能である。【0026】例えば野生型パラミクソウイルスにおいては、ウイルス遺伝子は、ネガティブゲノムの3'から順にNP、P、M、F、HN、およびLの順で配置しているが、本発明のベクターにおいてはこれ以外の配置であってもよい。前後の遺伝子の発現を妨げないようにするため、外来遺伝子の前および/または後ろに適宜 E-I-S配列(転写終結配列−介在配列−転写開始配列)またはその部分を挿入する。例えば、センダイウイルスゲノムをコードするDNAにおいて外来遺伝子を導入する場合には、ウイルスタンパク質をコードする遺伝子間に6の倍数の塩基数を有する配列を挿入することが望ましい(Journal of Virology,Vol.67,No.8,1993,p.4822-4830)。挿入した外来性遺伝子の発現量は、外来遺伝子の5'側(先頭)に付加する転写開始配列の種類により調節することができる。また、遺伝子挿入の位置、また遺伝子の前後の塩基配列により調節しうる。【0027】実施例に示すように、センダイウイルスにおいては、挿入位置がネガティブ鎖RNAの3'端に近いほど(野生型ウイルスのゲノム上の遺伝子配置においては、NP遺伝子に近いほど)、挿入された遺伝子の発現量が高い。外来遺伝子の高い発現を得るためには、ウイルスタンパク質をコードする遺伝子のうち最も上流(ネガティブ鎖の3'側)の遺伝子の下流(すなわち1番目の遺伝子と2番目の遺伝子の間)に外来遺伝子を挿入する。具体的には、野生型ゲノムの遺伝子配置においてはNP遺伝子の下流(ネガティブ鎖においてはNP遺伝子の5'隣接部位)、つまりNP遺伝子とP遺伝子の間に外来遺伝子を挿入する。ウイルスタンパク質をコードする遺伝子のうち上流(ネガティブ鎖の3'側)から2番目と3番目の間に外来遺伝子を挿入すると、1番目と2番目の間に挿入した場合よりも減弱した発現が得られる。この場合、野生型ゲノムの遺伝子配置においてはP遺伝子の下流(ネガティブ鎖においてはP遺伝子の5'隣接部位)、つまりP遺伝子とM遺伝子の間に外来遺伝子を挿入することが好ましい。挿入位置がネガティブ鎖RNAの5'端に近いほど(野生型ウイルスのゲノム上の遺伝子配置においては、L遺伝子に近いほど)、挿入された遺伝子の発現量が低い。ウイルスタンパク質をコードする遺伝子のうち上流(ネガティブ鎖の3'側)から3番目と4番目の間に外来遺伝子を挿入すると、より減弱した発現が得られ、4番目と5番目の間に外来遺伝子を挿入すると、さらに発現量が低く抑えられる。3番目と4番目の間に外来遺伝子を挿入する場合、野生型ゲノムの遺伝子配置においてはM遺伝子の下流(ネガティブ鎖においてはM遺伝子の5'隣接部位)、つまりM遺伝子とF遺伝子の間に外来遺伝子を挿入することが好ましい。4番目と5番目の間に外来遺伝子を挿入する場合、野生型ゲノムの遺伝子配置においてはF遺伝子の下流(ネガティブ鎖においてはF遺伝子の5'隣接部位)、つまりF遺伝子とHN遺伝子の間に外来遺伝子を挿入することが好ましい。さらに外来遺伝子の発現を低く抑えるためには、ウイルスタンパク質をコードする遺伝子のうち最も下流(ネガティブ鎖の5'側)にあるウイルスタンパク質をコードする遺伝子の上流(すなわち5'側から1番目の遺伝子と2番目の遺伝子の間;野生型ウイルスゲノムにおいては、3'側から5番目の遺伝子と6番目に遺伝子の間)、より低い発現を得るには下流(すなわちネガティブ鎖の5'端から1番目の遺伝子とトレイラー配列の間、野生型ゲノムにおいては3'側から6番目の遺伝子とトレイラー配列の間)に外来遺伝子を挿入する。具体的には、野生型ゲノムの遺伝子配置においてはL遺伝子の上流(ネガティブ鎖においてはL遺伝子の3'隣接部位)または下流(ネガティブ鎖においてはL遺伝子の5'隣接部位)、すなわち、それぞれHN遺伝子とL遺伝子の間またはL遺伝子とトレイラー配列の間に外来遺伝子を挿入する。本発明のベクターは、このように挿入した以外に位置に他の外来遺伝子を保持していてもよい。外来遺伝子の挿入位置は、該遺伝子の所望の発現量を得るために、また前後のウイルスタンパク質をコードする遺伝子との組み合わせが最適となる様に適宜調節することができる。【0028】外来遺伝子を容易に挿入できるようにするために、挿入部位にクローニングサイトを設計することができる。クローニングサイトは、典型的には制限酵素の認識配列とすることができる。好ましくは、挿入したい外来遺伝子中にその部位が存在しそうにない制限酵素部位を設計する。このような制限酵素としては、8bp認識の制限酵素など、長い認識配列を有するものが好ましい。8bp認識の制限酵素としては、例えば Asc I(GG↓CGCGCC)、Fse I(GGCCGG↓CC)、Not I(GC↓GGCCGC)、Pac I(TTAAT↓TAA)、Pme I(GTTT↓AAAC)、Sfi I(GGCCNNNN↓NGGCC)、Sgf I(GCGAT↓CGC)、Srf I(GCCC↓GGGC)、Sse232 I(CG↓CCGGCG)、Sse8387 I(CCTGCA↓GG)、および Swa I(ATTT↓AAAT)などが挙げられるがこれらに制限されない。クローニングサイトは、複数の制限酵素認識配列を有する、いわゆるマルチクローニングサイトとしてもよい。また、制限酵素以外のエンドヌクレアーゼにより切断される配列であってもよい。また、クローニングサイトを組換え酵素の認識配列として、組換えにより外来遺伝子を挿入することも考えられる。ウイルスゲノムをコードするDNA中にこれらの配列を設計することは、公知の変異導入法により行い得る。さらに、外来遺伝子挿入部位を予め分断しておきクローニングサイトとすることも考えられる。分断したベクターDNAの5'末端を脱リン酸化しておけば、外来遺伝子が挿入されたクローンを優先的に生じさせることができる。また、分断したベクターDNAの3'末端をTの一塩基突出末端にしておけば、PCRにより増幅した外来遺伝子(末端がAの突出末端になっている)を簡便にクローニングすることも可能である。ベクターDNAがプラスミドのように環状DNAであれば、クローニングサイトを分断しておいても両端が遊離しないため、高いライゲーション効率を得ることができる。【0029】ウイルスゲノムをコードするDNA(ベクターDNA)への外来遺伝子の挿入は、例えば、Hasan, M. K. et al., 1997, J. General Virology 78: 2813-2820、Kato, A. et al., 1997, EMBO J. 16: 578-587及びYu, D. et al., 1997, Genes Cells 2: 457-466の記載に準じて、次のようにして構築することができる。【0030】まず、所望の外来遺伝子のcDNA塩基配列を含むDNA試料を用意する。DNA試料は、25ng/μl以上の濃度で電気泳動的に単一のプラスミドと確認できることが好ましい。以下、外来遺伝子をNotI部位を利用してウイルスゲノムをコードするDNAに挿入する場合を例にとって説明する。目的とするcDNA塩基配列の中にNotI認識部位が含まれる場合は、部位特異的変異挿入法などを用いて、コードするアミノ酸配列を変化させないように塩基配列を改変し、NotI部位を予め除去しておくことが好ましい。この試料から所望の遺伝子断片をPCRにより増幅回収する。増幅された断片の両端がNotI部位とし、さらに一端にセンダイウイルスの転写終結配列(E)、介在配列(I)及び転写開始配列(S)(EIS配列)のコピーを付加するために、NotI制限酵素切断部位配列及び転写終結配列(E)、介在配列(I)及び転写開始配列(S)と目的遺伝子の一部の配列を含むプライマー対として、フォワード側合成DNA配列及びリバース側合成DNA配列(アンチセンス鎖)を作成する。【0031】例えば、フォワード側合成DNA配列は、NotIによる切断を保証するために 5'側に任意の2以上のヌクレオチド(好ましくはGCGおよびGCCなどのNotI認識部位由来の配列が含まれない4塩基、更に好ましくはACTT)を選択し、その3'側にNotI認識部位gcggccgcを付加し、さらにその3'側にスペーサー配列として任意の9塩基または9に6の倍数を加えた数の塩基を付加し、さらにその3'側に所望のcDNAの開始コドンATGからこれを含めてORFの約25塩基相当の配列を付加した形態とする。最後の塩基はGまたはCとなるように該所望のcDNAから約25塩基を選択してフォワード側合成オリゴDNAの3'の末端とすることが好ましい。【0032】リバース側合成DNA配列は5'側から任意の2以上のヌクレオチド(好ましくはGCGおよびGCCなどのNotI認識部位由来の配列が含まれない4塩基、更に好ましくはACTT)を選択し、その3'側にNotI認識部位gcggccgcを付加し、さらにその3'側に長さを調節するための挿入断片のオリゴDNAを付加する。このオリゴDNAの長さは、NotI認識部位gcggccgcを含め、cDNAの相補鎖塩基配列と後述するセンダイウイルスに由来するセンダイウイルスゲノムのEIS塩基配列の合計が6の倍数になるように塩基数を設計する(いわゆる「6のルール(rule of six)」;Kolakofski, D. et al., J. Virol. 72:891-899, 1998)。さらに挿入断片の3'側にセンダイウイルスのS配列の相補鎖配列、好ましくは5'-CTTTCACCCT-3'(配列番号:1)、I配列、好ましくは5'-AAG-3'、E配列の相補鎖配列、好ましくは5'-TTTTTCTTACTACGG-3'(配列番号:2)、さらにその3'側に所望のcDNA配列の終始コドンから逆に数えて約25塩基相当の相補鎖の最後の塩基がGまたはCになるように長さを選択して配列を付加し、リバース側合成オリゴDNAの3'の末端とする。【0033】PCRは、例えば、ExTaqポリメラーゼ(宝酒造)を用いる通常の方法を用いることができる。好ましくはVentポリメラーゼ(NEB)を用いて行い、増幅した目的断片はNotIで消化した後、プラスミドベクターpBluescriptのNotI部位に挿入する。得られたPCR産物の塩基配列をシークエンサーで確認し、正しい配列のプラスミドを選択する。このプラスミドから挿入断片をNotIで切り出し、ゲノムcDNAを含むプラスミドのNotI部位にクローニングする。またプラスミドベクターpBluescriptを介さずにNotI部位に直接挿入し、組換えセンダイウイルスcDNAを得ることも可能である。【0034】ウイルスゲノムをコードするDNAは、適当な転写プロモーターを連結してベクターDNAを構築し、これを試験管内または細胞内で転写させ、ウイルスのL、P、およびNPタンパク質の共存下でRNPを再構成させ、このRNPを含むウイルスベクターを生成させることができる。本発明は、パラミクソウイルスのL、P、およびNPタンパク質の共存下で本発明のパラミクソウイルスベクターのゲノムをコードするDNAを転写させる工程を含む、該ベクターの製造方法を提供する。また本発明は、該DNAからなる、本発明のパラミクソウイルスベクター製造用DNAを提供する。また本発明は、本発明のパラミクソウイルスベクターを製造するための、該ベクターのゲノムをコードするDNAの使用に関する。ウイルスベクターDNAからのウイルスの再構成は公知の方法に従って行うことができる(国際公開97/16539号; 国際公開97/16538号; Durbin, A.P. et al., 1997, Virology 235: 323-332; Whelan, S.P. et al., 1995, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92: 8388-8392; Schnell. M.J. et al., 1994, EMBO J. 13: 4195-4203; Radecke, F. et al., 1995, EMBO J. 14: 5773-5784; Lawson, N.D. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92: 4477-4481; Garcin, D. et al., 1995, EMBO J. 14: 6087-6094; Kato, A. et al., 1996, Genes Cells 1: 569-579; Baron, M.D. and Barrett, T., 1997, J. Virol. 71: 1265-1271; Bridgen, A. and Elliott, R.M., 1996, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93: 15400-15404)。これらの方法により、パラインフルエンザ、水疱性口内炎ウイルス、狂犬病ウイルス、麻疹ウイルス、リンダーペストウイルス、センダイウイルスなどを含むパラミクソウイルス科のウイルスベクターをDNAからウイルスを再構成させることができる。【0035】例えば、ベクターDNAを細胞内に導入する方法には、次のような方法、▲1▼目的の細胞が取り込めるようなDNA沈殿物を作る方法、▲2▼目的の細胞による取りこみに適し、かつ細胞毒性の少ない陽電荷特性を持つ、DNAを含む複合体を作る方法、▲3▼目的の細胞膜に、DNA分子が通り抜けられるだけに十分な穴を電気パルスによって瞬間的に開ける方法などがある。【0036】▲2▼としては、種々のトランスフェクション試薬が利用できる。例えば、DOTMA(Boehringer)、Superfect(QIAGEN #301305)、DOTAP、DOPE、DOSPER(Boehringer #1811169)などが挙げられる。▲1▼としては例えばリン酸カルシウムを用いたトランスフェクション法が挙げられ、この方法によって細胞内に入ったDNAは貧食小胞に取り込まれるが、核内にも十分な量のDNAが入ることが知られている(Graham, F.L. and Van Der Eb, J., 1973, Virology 52: 456; Wigler, M. and Silverstein, S., 1977, Cell 11: 223)。ChenおよびOkayamaはトランスファー技術の最適化を検討し、1) 細胞を共沈殿物のインキュベーション条件を 2〜4% CO2 、35℃、15〜24時間、2) DNAは直鎖状より環状のものが活性が高く、3) 沈殿混液中のDNA濃度が 20〜30μg/mlのとき最適な沈殿が得られると報告している(Chen, C. and Okayama, H., 1987, Mol. Cell. Biol. 7: 2745)。▲2▼の方法は、一過的なトランスフェクションに適している。古くはDEAE-デキストラン(Sigma #D-9885 M.W. 5×105 )混液を所望のDNA濃度比で調製し、トランスフェクションを行う方法が知られている。複合体の多くはエンドソームの中で分解されてしまうため、効果を高めるためにクロロキンを加えることもできる(Calos, M.P., 1983, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80: 3015)。▲3▼の方法は電気穿孔法と呼ばれる方法で、細胞選択性がないという点で▲1▼や▲2▼の方法に比べて汎用性が高い。効率はパルス電流の持続時間、パルスの形、電界(電極間のギャップ、電圧)の強さ、バッファーの導電率、DNA濃度、細胞密度の最適条件下で良いとされている。【0037】以上、3つのカテゴリーの中で▲2▼の方法は操作が簡便で多量の細胞を用いて多数の検体を検討することができるので、本発明においては、トランスフェクション試薬が適している。好適には Superfect Transfection Ragent(QIAGEN, Cat No. 301305)、または DOSPER Liposomal Transfection Reagent(Boehringer Mannheim, Cat No. 1811169)が用いられる。【0038】cDNAからの再構成は具体的には次のようにして行うことができる。24穴から6穴程度のプラスチックプレートまたは100mmペトリ皿等で、10%ウシ胎児血清(FCS)および抗生物質(100 units/ml ペニシリンGおよび100μg/ml ストレプトマイシン)を含む最少必須培地(MEM)を用いてサル腎臓由来細胞株LLC-MK2を70〜80%コンフルエント(1×106 細胞)になるまで培養し、例えば 1μg/ml psoralen(ソラレン)存在下 UV照射処理を20分処理で不活化した、T7ポリメラーゼを発現する組換えワクシニアウイルスvTF7-3(Fuerst, T.R. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83: 8122-8126,1986、Kato, A. et al., Genes Cells 1: 569-579, 1996)を2 PFU/細胞で感染させる。ソラレンの添加量およびUV照射時間は適宜調整することができる。感染1時間後、2〜60μg、より好ましくは 3〜5μgの上記の組換えセンダイウイルスcDNAを、全長センダイウイルスゲノムの生成に必須なトランスに作用するウイルスタンパク質を発現するプラスミド(24-0.5μgのpGEM-N、12-0.25μgのpGEM-P、および24-0.5μgのpGEM-L、より好ましくは1μgのpGEM-N、0.5μgのpGEM-P、および1μgのpGEM-L)(Kato, A. et al., Genes Cells 1: 569-579, 1996)と共にSuperfect(QIAGEN社)を用いたリポフェクション法等によりトランスフェクションする。トランスフェクションを行った細胞は、所望により100μg/mlのリファンピシン(Sigma)及びシトシンアラビノシド(AraC)、より好ましくは40μg/mlのシトシンアラビノシド(AraC)(Sigma)のみを含む血清不含のMEMで培養し、ワクシニアウイルスによる細胞毒性を最少にとどめ、ウイルスの回収率を最大にするように薬剤の最適濃度を設定する(Kato, A. et al., 1996, Genes Cells 1: 569-579)。トランスフェクションから48〜72時間程度培養後、細胞を回収し、凍結融解を3回繰り返して細胞を破砕した後、LLC-MK2細胞にトランスフェクションして培養する。または、培養上清を回収し、LLC-MK2細胞の培養液に添加して感染させ培養する。培養3〜7日後に培養液を回収する。あるいは、回収した細胞を別の細胞に重層するなどして共培養してもよい。あるいは、上記の凍結融解による細胞破砕物を10日齢の発育鶏卵の尿膜内へ接種し、約3日後、尿液を回収してもよい。培養上清または尿液に含まれるウイルス力価は赤血球凝集活性(HA)を測定することにより決定することができる。HAは「endo-point 希釈法」(Kato, A. et al., 1996, Genes Cells 1: 569-579; Yonemitsu, Y. & Kaneda, Y., Hemaggulutinating virus of Japan-liposome-mediated gene delivery to vascular cells. Ed. by Baker AH. Molecular Biology of Vascular Diseases. Method in Molecular Medicine: Humana Press: pp. 295-306, 1999)により決定することができる。混入し得るワクシニアウイルスvTF7-3を除去するために、得られた尿液試料を適宜希釈(例えば106 倍)して、鶏卵で再増幅させることができる。再増幅は、例えば3回上繰り返すことができる。得られたウイルスストックは-80℃で保存することができる。【0039】回収したパラミクソウイルスは実質的に純粋になるよう精製することができる。精製方法はフィルトレーション、遠心分離、およびカラム精製等を含む公知の精製・分離方法により行うことができる。「実質的に純粋」とは、単離した物質(化合物、ポリペプチド、またはウイルス等)が、それが存在する試料中の成分として主要な割合を占めることを言う。典型的には、試料中に存在する実質的に純粋な成分は、試料中の他の成分を合わせた全体の50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上を占める。割合は当業者に公知の手順により、例えば重量比率[w/w]等で算出される。当然溶媒、塩、添加化合物などを除いて算出されるべきである。パラミクソウイルスの具体的な精製方法としては、例えばセルロース硫酸エステルまたは架橋ポリサッカライド硫酸エステルを用いる方法(特公昭62-30752号公報、特公昭62-33879号公報、および特公昭62-30753号公報)、およびフコース硫酸含有多糖および/またはその分解物に吸着させる方法(WO97/32010)等を例示することができる。【0040】本発明の組換えセンダイウイルスベクターは、例えば生理食塩水やリン酸緩衝生理食塩水(PBS)などで適宜希釈して組成物とすることができる。本発明の組換えセンダイウイルスベクターを鶏卵で増殖させた場合等においては尿液を含むこともできる。本発明の組換えセンダイウイルスベクター含有組成物には、脱イオン水、5%デキストロース水溶液等の生理学的に許容しうる担体または媒体を含んでいてもよい。「生理学的に許容される担体または媒体」とは、ベクターと共に投与することが可能であり、ベクターによる遺伝子導入を有意に阻害しない材料である。さらに、その他にも、植物油、懸濁剤、界面活性剤、安定剤、殺生物剤等が含有されていてもよい。また保存剤やその他の添加剤を添加することができる。【0041】ウイルスベクターが再構成する限り、再構成に用いる宿主細胞は特に制限されない。例えば、センダイウイルスベクターの再構成においては、サル腎由来のCV-I細胞やLLC-MK2細胞、ハムスター腎由来のBHK細胞などの培養細胞、ヒト由来細胞等を使うことができる。これらの細胞に適当なエンベロープタンパク質を発現させることで、そのエンベロープを有する感染性ウイルス粒子を得ることもできる。また、大量にセンダイウイルスベクターを得るために、上記の宿主から得られたウイルスベクターを発育鶏卵に感染させ、該ベクターを増幅することができる。鶏卵を使ったウイルスベクターの製造方法は既に開発されている(中西ら編,(1993),「神経科学研究の先端技術プロトコールIII, 分子神経細胞生理学」, 厚生社, 大阪, pp.153-172)。具体的には、例えば、受精卵を培養器に入れ9〜12日間 37〜38℃で培養し、胚を成長させる。センダイウイルスベクターを尿膜腔へ接種し、数日間卵を培養してウイルスベクターを増殖させる。培養期間等の条件は、使用する組換えセンダイウイルスにより変わり得る。その後、ウイルスを含んだ尿液を回収する。尿液からのセンダイウイルスベクターの分離・精製は常法に従って行うことができる(田代眞人,「ウイルス実験プロトコール」, 永井、石浜監修, メジカルビュー社, pp.68-73,(1995))。【0042】外来遺伝子として疾患の治療用遺伝子を用いてウイルスベクターを調製すれば、このベクターを投与して遺伝子治療を行うことが可能となる。本発明のウイルスベクターの遺伝子治療への応用としては、直接投与による遺伝子発現、間接(ex vivo)投与による遺伝子発現のいずれの方法によっても、治療効果を期待できる外来遺伝子もしくは患者の体内で供給が不足している内在遺伝子等を発現させることが可能である。本発明のウイルスベクターは安全性が高く、さらに外来遺伝子の発現量を制御することができるため、幅広い臨床応用に対応できると期待される。外来遺伝子としては特に制限はなく、蛋白質をコードする核酸に加え、例えば、アンチセンスまたはリボザイムなどのタンパク質をコードしない核酸であってもよい。また、外来遺伝子として、感染症に関する細菌またはウイルスの抗原をコードする遺伝子を用いれば、これを動物に投与することにより、該動物において免疫を誘導することができる。即ち、ワクチンとして利用することができる。病原性のパラミクソウイルス、例えば、麻疹ウイルス、おたふく風邪ウイルスのようなワクチンの必要性の高いウイルスに本発明を適用することもできる。【0043】ワクチンとして用いる場合、例えば腫瘍、感染症、およびその他の一般的な疾患に対し本発明のウイルスベクターを適用することが考えられる。例えば腫瘍治療としては、腫瘍細胞、またはDC細胞などの抗原提示細胞(APC)に本発明のベクターを用いて治療効果を有する遺伝子を発現させることができる。このような遺伝子としては、癌抗原 Muc-1 または Muc-1様ムチンタンデムリピートペプチド(米国特許第 5,744,144号)、メラノーマ gp100抗原などが挙げられる。このような遺伝子による治療は、乳癌、結腸癌、膵臓癌、前立腺癌、肺癌等、幅広い応用が示されている。また、アジュバント効果を高めるサイトカイン類を組み合わせることも有効である。このような遺伝子としては、例えば i)IL-2と一本鎖IL-12 との組み合わせ(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96 (15): 8591-8596, 1999)、ii)IL-2とインターフェロン-γ(米国特許第 5,798,100号)、iii)単独で用いられる顆粒球コロニー刺激因子(GM-CSF)、iv)脳腫瘍を治療対象とした GM-CSF と IL-4 の組み合わせ(J. Neurosurgery 90 (6), 1115-1124 (1999))などが挙げられる。【0044】感染症の治療としては、インフルエンザにおいては、例えば強毒株 H5N1 型エンベロープ、日本脳炎においては、例えばエンベロープキメラ(Vaccine, vol. 17, No. 15-16, 1869-1882 (1999))、エイズにおいては、例えばHIV gagまたは SIV gag タンパク質(J. Immunology (2000) vol. 164, 4968-4978)、HIVエンベロープタンパク質の経口投与によるワクチン治療、ポリ乳酸-グリコール共重合体に包んでの投与(Kaneko, H. et al., Virology 267: 8-16 (2000))、コレラにおいては、例えばコレラ毒素のBサブユニット(CTB)(Arakawa, T., et al., Nature Biotechnology (1998) 16(10): 934-8、Arakawa, T., et al., Nature Biotechnology (1998) 16(3): 292-7)、狂犬病においては、例えば狂犬病ウイルスの糖タンパク(Lodmell, D. L. et al., 1998, Nature Medicine 4(8):949-52)、子宮頚癌においては、ヒトパピローマウイルス6型のカプシドタンパクL1(J. Med. Virol, 60, 200-204 (2000))などが挙げられる。【0045】本発明のベクターをワクチンとして用いる場合には、免疫原性を高めるために、サイトカイン、コレラ毒素、サルモネラ毒素等の免疫促進剤を組み合わせることもできる。またワクチンには、ミョウバン、不完全Freund'sアジュバント、MF59 (オイルエマルジョン)、MTP-PE (マイコバクテリア細胞壁由来の muramyl tripeptide)、および QS-21 (soapbark tree Quilaja saponaria 由来)などのアジュバントを組み合わせることもできる。【0046】また、一般病への適用も考えられる。糖尿病におては、例えばI型糖尿病モデル動物におて、インシュリン断片のペプチドの発現が行われている(Coon, B. et al., J. Clin. Invest., 1999, 104(2):189-94)。【0047】ベクターの投与量は、疾患、患者の体重、年齢、性別、症状、投与目的、投与形態、および投与方法等により異なるが、当業者であれば適宜決定することが可能である。好ましくは、投与組成物に含有されるベクター量は約105 pfu/mlから約1011 pfu/mlの範囲内であるとよい。より好ましくは、投与組成物に含有されるベクターの量は約107 pfu/mlから約109 pfu/mlの範囲内であるとよい。最も好ましくは、約1×108 pfu/mlから約5×108 pfu/mlの範囲内の量を薬学上容認可能な担体中で投与することが好ましい。【0048】なお、治療が完了しウイルスベクターの増殖を抑止する必要が生じた際または治療中に、RNA依存性RNAポリメラーゼ阻害剤を投与すれば、宿主に障害を与えずにウイルスベクターの増殖だけを特異的に抑止することができる。【0049】【実施例】以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これら実施例に制限されるものではない。[実施例1] センダイウイルスにおける極性効果を利用した遺伝子発現量の制御 I<SeVゲノムcDNAの構築>センダイウイルス(SeV)全長ゲノムcDNA、pSeV(+)(Kato, A. et al., Genes to Cells 1: 569-579, 1996)のcDNAに新たな Not I サイトを各遺伝子のスタート(S)シグナルとATG翻訳開始シグナルの間に導入した。導入方法としてはまず、図1(A)のようにpSeV(+)をSph I/Sal Iで消化した断片(2645bp)、Cla Iで消化した断片(3246bp)、及びCla I/Eco RIで消化した断片(5146bp)をそれぞれアガロース電気泳動で分離、該当するバンドを切り出し、QIAEXII Gel Extraction System(QIAGEN社製)で回収・精製した。Sph I/Sal Iで消化した断片はLITMUS38(NEW ENGLAND BIOLABS社製)、Cla Iで消化した断片とCla I/Eco RIで消化した断片は pBluescriptII KS+(STRATAGENE社製)にライゲーションし、サブクローニングした。続いてNot Iサイトの導入にはQuickchange Site-Directed Mutagenesis kit(STRATAGENE社製)を使った。それぞれの導入に用いたプライマーはNP-P間ではセンス鎖:5'-ccaccgaccacacccagcggccgcgacagccacggcttcgg-3'(配列番号:3)、アンチセンス鎖:5'-ccgaagccgtggctgtcgcggccgctgggtgtggtcggtgg-3'(配列番号:4)、P-M間ではセンス鎖:5'-gaaatttcacctaagcggccgcaatggcagatatctatag-3'(配列番号:5)、アンチセンス鎖:5'-ctatagatatctgccattgcggccgcttaggtgaaatttc-3'(配列番号:6)、M-F間ではセンス鎖:5'-gggataaagtcccttgcggccgcttggttgcaaaactctcccc-3'(配列番号:7)、アンチセンス鎖:5'-ggggagagttttgcaaccaagcggccgcaagggactttatccc-3'(配列番号:8)、F-HN間ではセンス鎖:5'-ggtcgcgcggtactttagcggccgcctcaaacaagcacagatcatgg-3'(配列番号:9)、アンチセンス鎖:5'-ccatgatctgtgcttgtttgaggcggccgctaaagtaccgcgcgacc-3'(配列番号:10)、HN-L間ではセンス鎖:5'-cctgcccatccatgacctagcggccgcttcccattcaccctggg-3'(配列番号:11)、アンチセンス鎖:5'-cccagggtgaatgggaagcggccgctaggtcatggatgggcagg-3'(配列番号:12)をそれぞれ合成し、用いた。【0050】鋳型としてNP-P間はSalI/SphI断片、P-M間、M-F間はClaI断片、F-HN間、HN-L間はCla I/Eco RI断片をそれぞれ上記でサブクローニングしたものを用いてQuickchange Site-Directed Mutagenesis kitのプロトコルに従い、導入を行った。導入したものを再びサブクローニングした酵素で消化して同様に回収・精製し、元のセンダイゲノムcDNAへアセンブリした。その結果、図1(B)のように各遺伝子間に新たにNotIを導入した5種類(pSeV(+)NPP、pSeV(+)PM、pSeV(+)MF、pSeV(+)FHNおよびpSeV(+)HNL)のセンダイウイルスゲノムcDNAを構築した。外来遺伝子を挿入するには、外来遺伝子の下流に終結シグナル-介在配列-開始シグナル(E-I-S)が付加されたDNA断片を上記ゲノム cDNA のNotIサイトに挿入する。このためには、例えば、マルチクローニングサイトと終結シグナル-介在配列-開始シグナルが2つのNotIサイトに挟まれた配列(図2参照)を予め用意しておき、外来遺伝子をマルチクローニングサイトに挿入するのが簡便である。【0051】L遺伝子の下流に外来遺伝子を挿入するには、例えば pSeV(+)もしくは上記の所望のSeV cDNA(pSeV18+、pSeV(+)NPP、pSeV(+)PM、pSeV(+)MF、pSeV(+)FHNおよびpSeV(+)HNL)等においてL遺伝子の終止コドンと転写終結シグナルとの間に存在する制限酵素 Kpn I サイトに遺伝子を挿入することができる(図3(A))。その場合、挿入する外来遺伝子には、両端側に KpnI サイト、5'側に終結シグナル-介在配列-開始シグナルをPCR等で付加させる(図3(B))。付加させたDNAを SeV cDNA へ組み込み、L遺伝子の下流に外来遺伝子が挿入されたcDNAを得る。【0052】遺伝子発現量を見るためのレポータ遺伝子としてヒト分泌型アルカリフォスファターゼ(SEAP)をPCRでサブクローニングした。プライマーにはAsc I 制限酵素サイトを付加した5'プライマー:5'-gcggcgcgccatgctgctgctgctgctgctgctgggcctg-3'(配列番号:13)、3'プライマー:5'-gcggcgcgcccttatcatgtctgctcgaagcggccggccg-3'(配列番号:14)を合成し、PCRを行った。鋳型にはpSEAP-Basic(CLONTECH社製)、酵素にはPfu tourbo DNAポリメラーゼ(STRATAGENE社製)を用いた。PCR後、産物をAsc Iで消化し、電気泳動により精製・回収した。サブクローニングするプラスミドとしてpBluescriptII KS+のNot Iサイトにマルチクローニングサイト(Pme I-Asc I-Swa I)と終結シグナル-介在配列-開始シグナル含む合成二本鎖DNA[センス鎖:5'-gcggccgcgtttaaacggcgcgccatttaaatccgtagtaagaaaaacttagggtgaaagttcatcgcggccgc-3'(配列番号:15)、アンチセンス鎖:5'-gcggccgcgatgaactttcaccctaagtttttcttactacggatttaaatggcgcgccgtttaaacgcggccgc-3'(配列番号:16)]を組み込んだものを作製した(図2)。このプラスミドのAsc Iサイトに精製・回収したPCR産物をライゲーションし、クローニングした。これをNot Iで消化してSEAP遺伝子断片を電気泳動で回収・精製し、上記の5種類のセンダイウイルスゲノムcDNAとpSeV18+のNot Iサイトにそれぞれライゲーションし組み込んだ。それぞれのウイルスベクターをpSeV(+)NPP/SEAP、pSeV(+)PM/SEAP、pSeV(+)MF/SEAP、pSeV(+)FHN/SEAP、pSeV(+)HNL/SEAPおよびpSeV18(+)/SEAPとした。【0053】<ウイルスの再構築>LLC-MK2細胞を2×106 cells/dish で100mmシャーレに蒔き、24時間後培養後、ソラレンとUV処理したT7ポリメラーゼを発現するリコンビナントワクシニアウイルス(PLWUV-VacT7)(Fuerst, T.R. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83: 8122-8126,1986、Kato, A. et al., Genes Cells 1: 569-579, 1996)に室温でmoi=2で1時間感染させた。細胞を洗浄してからSEAPを組み込んだ各センダイウイルスcDNA、pGEM/NP、pGEM/P、およびpGEM/Lをそれぞれ12μg、4μg、2μg、及び4μg/dishの量比でOptiMEM(GIBOCO BRL社製)に懸濁し、110μl のSuperFect transfection reagent (QIAGEN社製)を入れて混合し、室温で15分放置後、最終的に3%FBSを含むOptiMEM 3mlを加え、細胞に添加して3〜5時間培養した。培養後、細胞を血清を含まないMEMで2回洗浄し、シトシンβ-D-アラビノフラノシド(AraC)を含むMEMで72時間培養した。これらの細胞を回収し、ペレットを1mlのPBSで懸濁し、凍結融解を3回繰り返した。これらを10日間孵卵させた鶏卵に100μl接種し、35℃で3日間孵卵させたのち、尿液を回収した。ワクシニアウイルスフリーにするため、これら回収した尿液をさらに10-5 〜10-7 に希釈して鶏卵に再接種し、同様に回収し、分注して-80℃にストックした。それぞれのウイルスベクター名をSeVNPP/SEAP、SeVPM/SEAP、SeVMF/SEAP、SeVFHN/SEAP、SeVHNL/SEAPおよびSeV18/SEAPとする。【0054】<プラークアッセイによるタイターの測定>CV-1細胞を6well プレートに1wellあたり5×105 cellsずつ蒔き、24時間培養した。PBS洗浄後、BSA/PBS(1% BSA in PBS)で10-3、10-4、10-5、10-6、10-7 に希釈した組換えSeVを1時間インキュベーションした後、PBSで洗浄、BSA/MEM/アガロース(0.2% BSA+2×MEMと等量の2%アガロースを混合したもの)をwellあたり3mlずつ重層し、6日間37℃、5% CO2 で培養した。培養後、3mlのエタノール/酢酸(エタノール:酢酸=1:5)を加え、3時間放置し、アガロースとともに除去した。PBSで三回洗浄後、100倍希釈したウサギ抗センダイウイルス抗体で室温で1時間インキュベーションした。PBSで三回洗浄後、200倍希釈したAlexa FlourTM 標識ヤギ抗ウサギIg(G+H)(Molecular Probe社)を加えて室温で1時間インキュベーションした。PBSで三回洗浄後、ルミノイメージアナライザーLAS1000(富士フィルム)で蛍光画像を取り込み、プラークを測定した。結果を図4に示す。またこれから得られたタイターの結果を表1に示す。【0055】【表1】プラークアッセイの結果から測定した各組換えセンダイウイルスのタイターの結果【0056】<レポーター遺伝子発現の比較>LLC-MK2細胞を6well プレートに1wellあたり1〜5×105 cellsずつ蒔き、24時間培養した後、各ウイルスベクターをmoi=2で感染させ、24時間後培養上清を100μl 回収し、SEAPアッセイを行った。アッセイはReporter Assay Kit -SEAP-(東洋紡)で行い、ルミノイメージアナライザーLAS1000(富士フィルム)で測定した。測定値はSeV18+/SEAPの値を100としてそれぞれ相対値として表した。その結果、図5に示したいずれの位置にSEAP遺伝子を挿入した場合でもSEAP活性が検出された。SEAP活性はゲノムの下流に位置するに従って下がり、すなわち発現量が下がっていることがわかった。SEAP遺伝子の発現量は、挿入位置がゲノムの上流(NP側)から下流(L側)に行くに従い単調減少した。例えば、NP遺伝子とP遺伝子の間にSEAP遺伝子を挿入した場合には、NP遺伝子の上流にSEAP遺伝子を挿入したベクターと、P遺伝子とM遺伝子の間にSEAP遺伝子を挿入したベクターの中間の発現量が検出された。【0057】<マルチクローニングサイトの作製>マルチクローニングサイトをSeVベクターに付加させた。方法は以下の二種類。1)センダイウイルス(SeV)全長ゲノムcDNA、pSeV18+ b(+)(Hasan, M. K. et al., 1997, J. General Virology 78: 2813-2820)(「pSeV18+ b(+)」は「pSeV18+」ともいう)cDNAのゲノム中のいくつかの制限酵素サイトを壊し、つぶした制限酵素サイトを含む新たな制限酵素サイトを各遺伝子のスタートシグナルとATG翻訳開始シグナルの間に導入した(図6)。2)すでに構築したSeVベクターcDNAにマルチクローニングサイト配列と転写開始シグナル-介在配列-終結シグナルを付加させてNotIサイトへ組み込む(図7)。【0058】1)の場合、導入方法としてはまず、図6(A)のように pSeV18+ をEag Iで消化した断片(2644bp)、Cla Iで消化した断片(3246bp)、ClaI/Eco RIで消化した断片(5146bp)、及びEco RIで消化した断片(5010bp)をそれぞれアガロース電気泳動で分離、該当するバンドを切り出し、QIAEXII Gel Extraction System(QIAGEN社製)で回収・精製した。Eag Iで消化した断片はLITMUS38(NEW ENGLAND BIOLABS社製)、Cla Iで消化した断片、ClaI/Eco RIで消化した断片、及びEco RIで消化した断片はpBluescriptII KS+(STRATAGENE社製)にライゲーションし、サブクローニングした。続いて制限酵素サイトの破壊、導入にはQuickchange Site-Directed Mutagenesis kit(STRATAGENE社製)を使った。【0059】制限酵素サイトの破壊にはSal I:(センス鎖)5'-ggagaagtctcaacaccgtccacccaagataatcgatcag-3'(配列番号:17)、(アンチセンス鎖)5'-ctgatcgattatcttgggtggacggtgttgagacttctcc-3'(配列番号:18)、Nhe I:(センス鎖)5'-gtatatgtgttcagttgagcttgctgtcggtctaaggc-3'(配列番号:19)、(アンチセンス鎖)5'-gccttagaccgacagcaagctcaactgaacacatatac-3'(配列番号:20)、Xho I: (センス鎖)5'-caatgaactctctagagaggctggagtcactaaagagttacctgg-3'(配列番号:21)、(アンチセンス鎖)5'-ccaggtaactctttagtgactccagcctctctagagagttcattg-3'(配列番号:22)、また制限酵素導入にはNP-P間:(センス鎖)5'-gtgaaagttcatccaccgatcggctcactcgaggccacacccaaccccaccg-3'(配列番号:23)、(アンチセンス鎖)5'-cggtggggttgggtgtggcctcgagtgagccgatcggtggatgaactttcac-3'(配列番号:24)、P-M間:(センス鎖)5'-cttagggtgaaagaaatttcagctagcacggcgcaatggcagatatc-3'(配列番号:25)、(アンチセンス鎖)5'-gatatctgccattgcgccgtgctagctgaaatttctttcaccctaag-3'(配列番号:26)、M-F間:(センス鎖)5'-cttagggataaagtcccttgtgcgcgcttggttgcaaaactctcccc-3'(配列番号:27)、(アンチセンス鎖)5'-ggggagagttttgcaaccaagcgcgcacaagggactttatccctaag-3'(配列番号:28)、F-HN間:(センス鎖)5'-ggtcgcgcggtactttagtcgacacctcaaacaagcacagatcatgg-3'(配列番号:29)、(アンチセンス鎖)5'-ccatgatctgtgcttgtttgaggtgtcgactaaagtaccgcgcgacc-3'(配列番号:30)、HN-L間:(センス鎖)5'-cccagggtgaatgggaagggccggccaggtcatggatgggcaggagtcc-3'(配列番号:31)、(アンチセンス鎖)5'-ggactcctgcccatccatgacctggccggcccttcccattcaccctggg-3'(配列番号:32)をそれぞれ合成し反応に用いた。導入後、それぞれの断片を上記同様に回収・精製し、cDNAをアセンブリした(図6(B))。【0060】2)の場合、(センス鎖)5'-ggccgcttaattaacggtttaaacgcgcgccaacagtgttgataagaaaaacttagggtgaaagttcatcac-3'(配列番号:33)、(アンチセンス鎖)5'-ggccgtgatgaactttcaccctaagtttttcttatcaacactgttggcgcgcgtttaaaccgttaattaagc-3'(配列番号:34)を合成し、それぞれの合成DNAをリン酸化し、85℃ 2分、65℃ 15分、37℃ 15分、室温 15分でアニーリングさせ、SeV cDNAへ組み込む。あるいはpUC18またはpBluescriptII等のマルチクローニングサイトを終結シグナル-介在配列-開始シグナル含むプライマーでPCRしてサブクローニングし、これをSeV cDNAへ組み込む。得られたcDNAでのウイルス再構成は上記の通り行う。【0061】[実施例2] センダイウイルスにおける極性効果を利用した遺伝子発現量の制御 II<SeVゲノムcDNAの構築とウイルスの回収>センダイウイルス(SeV)全長ゲノムcDNA、pSeV(+)のcDNAにNot IサイトをL遺伝子の翻訳終止コドンと転写終結シグナルの間に導入した。導入方法としてはまず、図8のように、pSeV(+)をEco RIで消化した断片(5010bp)をアガロース電気泳動で分離、該当するバンドを切り出し、QIAEXII Gel Extraction System(QIAGEN社製)で回収・精製した。回収した断片はpBluescriptII SK+(STRATAGENE社製)にライゲーションし、サブクローニングした。続いて制限酵素 Not I サイトの導入にはQuickchange Site-Directed Mutagenesis kit(STRATAGENE社製)を使った。プライマーはセンス側:5'-cgtgcagaacgatcgaagctccgcggccgctggaagtcttggacttgtcc-3'(配列番号:35)、アンチセンス側:5'-ggacaagtccaagacttccagcggccgcggagcttcgatcgttctgcacg-3'(配列番号:36)をそれぞれ合成し反応に用いた。導入後、Xho I-Mlu Iで消化した断片(2010bp)を上記同様に回収・精製し、cDNAをアセンブリした(図8)。【0062】遺伝子発現量を見るための遺伝子としてヒトVascular Endothelial Growth Factor (VEGF)をPCRでサブクローニングした。プライマーには 制限酵素Asc Iサイトを付加した5'プライマー:5'-gcggcgcgccaaccatgaactttctgctgtcttgggtgcattgg-3'(配列番号:37)、3'プライマー:5'-gcggcgcgcctcaccgcctcggcttgtcacatctgcaagt-3'(配列番号:38)を合成し、PCRを行った。酵素にはKOD - plus - DNAポリメラーゼ(TOYOBO社製)を用いた。PCR後、産物をAsc Iで消化し、電気泳動により精製・回収した。これにセンダイウイルスの転写終結シグナル-介在配列-転写開始シグナルを付加させるためのプラスミドを構築した(図9)。pSeV18+のMlu I - Sph I断片(3317bp)を組み込んだLITMUS38(pAC114とする)に終結シグナル-介在配列-開始シグナルとクローニングサイト(Asc I - Pme I)含む合成二本鎖DNA(センス鎖:5'-ggccgctaagaaaaacttagggtgaaagttcacttcacgagggcgcgccgtttaaactgc-3'(配列番号:39)、アンチセンス鎖:5'-ggccgcagtttaaacggcgcgccctcgtgaagtgaactttcaccctaagtttttcttagc-3'(配列番号:40))を組み込んだものであるpAG180を作製した(図9)。このプラスミドのAsc Iサイトに、精製・回収したVEGF PCR産物をライゲーションし、クローニングした。これをNot Iで消化してVEGF遺伝子断片を電気泳動で回収・精製し、センダイウイルスゲノムcDNAのNot Iサイトにライゲーションし組み込んだ。ウイルスベクターcDNAをpSeV+L/VEGFとした。また実施例1記載の方法で作成した終結シグナル-介在配列-開始シグナル(図2参照)を、VEGF cDNAの下流につなぎ、pSeV18+、pSeV(+)HNLに組み込んだもの(それぞれをpSeV18+/VEGF、pSeV(+)HNL/VEGFとする)も発現量の比較のため構築した。それぞれのcDNAからウイルスを従来の方法通り回収し、それぞれSeV18+/VEGF、SeVHNL/VEGF、SeVL/VEGFとした。【0063】<発現量の比較>LLC-MK2細胞を6well プレートに1wellあたり5×105cellsずつ蒔き、24時間培養した後、各ウイルスベクターをmoi=5で感染させ、24時間後培養上清を200μl 回収し、ELISAにより培養上清中のVEGFの定量を行った。その結果を図10に示す。これによりL遺伝子の下流に組み込むことでVEGFの発現量がNP遺伝子の上流に組み込んだときより1/10ほど低下することがわかった。本発明者らは、転写開始シグナルを変更することで発現量を変化させることができることを開示(WO01/18223)しており、これを組み合わせることによりさらに発現量の制御の幅が広がることが予想される。【0064】【発明の効果】本発明により、外来遺伝子を導入することができる、複製能を有するパラミクソウイルスベクターが提供された。本発明のベクターは、外来遺伝子の挿入位置を調節することにより、発現レベルを制御することが可能である。特に、外来遺伝子をネガティブ鎖ゲノムに挿入することにより、外来遺伝子の発現レベルを低く抑えることができる。また、2種類以上の部位に外来遺伝子が挿入されたウイルスベクターの作製も考えられる。特にセンダイウイルスベクターは遺伝子導入効率も広範な細胞種に対して極めて高く、さらに本発明により外来遺伝子の発現レベルを制御することができるため、遺伝子治療などの生体における遺伝子導入への利用が期待される。【0065】【配列表】【図面の簡単な説明】【図1】センダイウイルスゲノムcDNA断片のサブクローニング(A)と新たにNotIサイトを導入し構築した5種類のセンダイウイルスゲノムcDNAの構造(B)を示す図である。【図2】 SEAPにNotIサイト、転写開始シグナル、介在配列、転写終結シグナルを付加するためのクローニング用プラスミドの構造を示す図である。【図3】 L遺伝子の下流のセンダイウイルスゲノムの構造(A)、およびL遺伝子の下流へ外来遺伝子を挿入するためのクローニング用DNAの構造(B)を示す図である。【図4】各センダイウイルスベクターのプラークアッセイの結果を示す図である。LAS1000で取り込んだプラークアッセイの蛍光画像の一部を示す。【図5】各センダイウイルスベクター間におけるレポーター遺伝子(SEAP)の発現量の違いを比較した結果を示す図である。SeV18+/SEAPのデータを100としてそれぞれ相対値を表した。SEAP遺伝子が下流に位置するに従ってその活性すなわち発現量が低下していくことがわかった。【図6】センダイウイルスゲノムcDNAに構築したマルチクローニングサイトの構造を示す図である。【図7】マルチクローニングサイトの構造を示す図である。塩基配列は、PacI-PmeI-BssHII-TspRIの制限酵素サイトとE/I/S配列を有するマルチクローニングサイトの例を示す。【図8】センダイウイルスゲノムcDNA断片のサブクローニングと新たにNot Iサイトを導入し構築したセンダイウイルスゲノムcDNAの構造を示す図である。【図9】 VEGFにNot Iサイト、転写開始シグナル、介在配列、転写終結シグナルを付加するためのクローニング用プラスミドの構造および付加後のVEGFの構造を示す図である。【図10】 ELISAによるVEGF搭載のSeVベクターの発現量の比較を示す図である。L遺伝子の後にVEGFを搭載したものが最も発現量が低かった。 外来遺伝子を保持し、かつ複製能を有するセンダイウイルスベクターであって、ベクターに含まれるネガティブ鎖ゲノムRNAの3'端から1番目〜6番目に位置するウイルスタンパク質をコードする遺伝子が、順にNP遺伝子、P遺伝子、M遺伝子、F遺伝子、HN遺伝子、およびL遺伝子であり、該ネガティブ鎖ゲノムRNAの3'端から3番目に位置するウイルスタンパク質をコードする遺伝子と4番目のウイルスタンパク質をコードする遺伝子の間に外来遺伝子が挿入されているベクター。 請求項1に記載のセンダイウイルスベクターに含まれるネガティブ鎖ゲノムRNAまたはその相補鎖をコードするDNA。 複製能を有するセンダイウイルスベクターに含まれるネガティブ鎖ゲノムRNAまたはその相補鎖をコードするDNAであって、ネガティブ鎖ゲノムRNAの3'端から1番目〜6番目に位置するウイルスタンパク質をコードする遺伝子が、順にNP遺伝子、P遺伝子、M遺伝子、F遺伝子、HN遺伝子、およびL遺伝子であり、該ネガティブ鎖ゲノムRNAの3'端に相当する部位から3番目に位置するウイルスタンパク質をコードする遺伝子と4番目のウイルスタンパク質をコードする遺伝子の間に外来遺伝子を挿入するためのクローニング部位を保持するDNA。 請求項2または3に記載のDNAを転写可能に保持するベクターDNA。 ポジティブ鎖ゲノムRNAを転写可能に保持する、請求項4に記載のベクターDNA。 請求項2に記載のDNAを、センダイウイルスのNP蛋白質、P蛋白質、およびL蛋白質の存在下で転写させる工程を含む、センダイウイルスベクターの製造方法。