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タイトル:特許公報(B2)_メラトニンの分析方法
出願番号:2001102847
年次:2012
IPC分類:C07D 209/14,C07D 209/08,G01N 21/64,G01N 21/78,G01N 30/88,G01N 33/74


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財津 潔 濱瀬 健司 冨田 辰之介 JP 4873437 特許公報(B2) 20111202 2001102847 20010402 メラトニンの分析方法 国立大学法人九州大学 504145342 窪田 法明 100090402 財津 潔 濱瀬 健司 冨田 辰之介 JP 2000373096 20001207 20120208 C07D 209/14 20060101AFI20120119BHJP C07D 209/08 20060101ALI20120119BHJP G01N 21/64 20060101ALI20120119BHJP G01N 21/78 20060101ALI20120119BHJP G01N 30/88 20060101ALI20120119BHJP G01N 33/74 20060101ALI20120119BHJP JPC07D209/14C07D209/08G01N21/64 ZG01N21/78 CG01N30/88 CG01N33/74 C07D 209/08〜14 G01N 21/64〜78 G01N 30/88 G01N 33/74 CAplus(STN) REGISTRY(STN) 特開昭58−148859(JP,A) 特開2001−027632(JP,A) 国際公開第01/012626(WO,A1) J.C.S. Chem. Comm.,1981年,211−213 Bioorg. Med. Chem. Lett.,1998年,8,2045−2050 Heterocycles,1998年,48,1117−1120 J. Chem. Research (S),1981年,194−195 7 2002234872 20020823 23 20080326 早川 裕之 【0001】【発明の属する技術分野】 この発明は、メラトニンオキサイドが発する強い蛍光を利用したメラトニンの分析方法に関するものである。【0002】【従来の技術】急速に都市化、情報化の進んだ現代社会は24時間化しており、人々のライフスタイルの多様化と共に睡眠覚醒症候群を含む生体リズム障害が急増している。これらの疾患は成人の社会生活を困難とし、幼児期、高齢者においては生活支援者の生活にも重大な問題を生じる。【0003】また、このリズム障害は投与薬物の副作用の減弱と薬効の増強を目的とする時間治療、すなわち薬物投与のタイミングを最適化する治療の導入を困難とし、様々な疾患において治療法に制限を与える。【0004】更にまた、例えば、未熟児や新生児の医療現場におけるような微量の試料しか採取できない場合において、生体成分や薬物などの微量分析が要請されるときには、蛍光分析法が広く利用されている。特に誘導体化試薬を用いる蛍光誘導体化法はそれ自体吸収や蛍光を持たない様々な分析対象に対して高感度かつ選択的な分析を可能にする極めて有効な手段であるといえる。【0005】また、これまで蛍光標識を目的としてDNS−Cl、NBD−Fなどの数多くの優れた試薬が開発されているけれども、これらの蛍光標識試薬にしても、安定性、感度、溶解性などにおいて問題を有するものも少なくない。例えば、DNS誘導体は感度が不足するという欠点が、またNBD誘導体は光で分解されるという問題を有している。更に、当然のことながら、それらの蛍光標識試薬を用いた分析法や分析装置も問題を有する結果になっている。【0006】上記したようなリズム障害の著効薬として、また生体リズムのマーカーとして最近注目されているのが、松果体から血液中に分泌されるホルモンであるメラトニンがあり、血中メラトニン濃度のモニターは重要である。【0007】メラトニンは松果体においてL−トリプトファンからセロトニン、N−アセチルセロトニンを経て生合成されるインドールホルモンであり、夜間に生合成、分泌が亢進するという顕著な概日リズムを示すことが知られている。【0008】メラトニンの分析方法としては、例えば、メラトニン自身の持つ蛍光を測定してメラトニンの量を求める自然蛍光法や、放射線ラベル体を使用してメラトニンの量を求めるラジオイムノアッセイ(RIA)が知られている。【0009】【発明が解決しようとする課題】ところで、哺乳類における内因性メラトニン含量は極微量であり、上述した従来の分析法ではメラトニンなどのインド−ル誘導体の血中濃度を測定するためには数ミリリットルの血液が必要であった。これは注射による静脈採血が必要な血液量であり、被験者に多大な負担を与えることから、特に頻繁に採血が必要な概日リズム測定などは非常に困難であった。【0010】また、RIAはラジオアイソトープを使用しなければならないので、取り扱いが危険であり、特別の施設が必要である。【0011】また、この発明は、特に蛍光性を有するインド−ルオキサイド誘導体を提供することを主な目的とする。更に、この発明は、強い蛍光性を有し、蛍光標識試薬の母核となり得るインド−ルオキサイド誘導体の製造方法を提供することを別の目的とする。【0012】 この発明はできるだけ微量の採血でメラトニンなどのインド−ルオキサイド誘導体の量を分析・測定できるようにした高感度なインド−ルオキサイド誘導体の分析方法を提供することを目的とする。【0013】【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、この発明は、一般式(I):【0014】【化6】【0015】(式中、R1、R2、R3およびR4はそれぞれ水素原子、炭素原子数が1ないし6の低級アルキルオキシ基またはハロゲン原子を意味し、R5は水素原子またはアルデヒド基を意味し、R6は水素原子を意味し、R7は水素原子またはアシルアミノ−オキソアルキレン基を意味する。ただし、R5が水素原子を意味するときは、R7は水素原子またはアシルアミノ−オキソアルキレン基を意味し、R5がアルデヒド基を意味するときは、R7は水素原子を意味する)で示されるインド−ルオキサイド誘導体を提供する。【0016】また、この発明に係るインド−ルオキサイド誘導体は、その好ましい1態様として、一般式(I)において、R2が炭素原子数が1ないし6の低級アルキルオキシ基を意味することを特徴とする。更に好ましい1態様として、一般式(I)において、R2がメチルオキシ基を意味することを特徴とするインド−ルオキサイド誘導体が提供される。【0017】更に、この発明に係るインド−ルオキサイド誘導体は、その好ましい1態様として、一般式(I)において、R5が水素原子を意味し、R7がアセトアミノメチルカルボニル基を意味することを特徴とする。また、別の好ましい1態様として、一般式(I)において、R5がアルデヒド基を意味し、R7が水素原子を意味することを特徴とするが提供される。【0018】更にまた、この発明は、反応式:【0019】【化7】【0020】に示すように、一般式(II):【0021】【化8】【0022】(式中、R1、R2、R3およびR4はそれぞれ水素原子、低級アルキルオキシ基またはハロゲン原子を意味し、R’5は水素原子を意味し、R6は水素原子を意味し、R’7はカルボン酸残基またはアシルアミノアルキレン基を意味する。)で示されるインド−ル誘導体を酸化して、上記一般式(I)で示されるインド−ルオキサイド誘導体を得ることを特徴とするインド−ルオキサイド誘導体の製造方法を提供する。【0023】この発明に係るインド−ル誘導体の分析方法は、一般式(II)で示されるインド−ル誘導体を酸化させて一般式(I)で示されるインド−ルオキサイド誘導体を得る酸化工程と、該酸化工程で得られたインド−ルオキサイド誘導体の蛍光強度を測定してインド−ル誘導体の量を求める測定工程とを備えたことを特徴とするものである。【0024】 また、この発明で使用する分析装置は、一般式(II)で示されるインド−ル誘導体を酸化させて一般式(I)で示されるインド−ルオキサイド誘導体を得る酸化部と、このインド−ルオキサイド誘導体の蛍光強度を測定してインド−ル誘導体の量を求めるインド−ル誘導体測定部とを備えたことを特徴とするものである。【0025】【発明の実施の形態】この発明に係るインド−ルオキサイド誘導体は、一般式(I):【0026】【化9】【0027】(式中、R1、R2、R3およびR4はそれぞれ水素原子、炭素原子数が1ないし6個の低級アルキルオキシ基またはハロゲン原子を意味し、R5は水素原子またはアルデヒド基を意味し、R6は水素原子を意味し、R7は水素原子またはアシルアミノ−オキソアルキレン基を意味する。ただし、R5が水素原子を意味するときは、R7はアシルアミノ−オキソアルキレン基を意味し、R5がアルデヒド基を意味するときは、R7は水素原子を意味する。)で示される。【0028】上記一般式(I)および(II)において、R1、R2、R3およびR4において示される炭素原子数が1ないし6個の低級アルキルオキシ基の低級アルキルは、炭素原子数が1ないし6個の1価直鎖状もしくは分岐状飽和脂肪族炭化水素基を意味し、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基、ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基などが挙げられる。また、ハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、フッ素原子などが挙げられる。【0029】また、上記一般式(II)において、R'7で示されるカルボン酸残基は、炭素原子数が2ないし7のカルボン酸のアルキル分子から1個の水素原子が脱離して得られた残基を意味し、例えば、カルボキシルメチル基、カルボキシルエチル基、カルボキシルプロピル基などが挙げられる。【0030】また、R'7で示されるカルボン酸残基は、アシルアミノアルキレン基のアシルは、炭素原子数が2ないし7の脂肪酸残基を意味し、例えば、アセチル、プロピオニル、ブチリルなどが挙げられる。更にまた、アシルアミノアルキレン基のアルキレンは、炭素原子数が2ないし6の2価飽和脂肪族炭化水素基を意味し、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレンなどが挙げられる。【0031】更に、上記一般式(I)において、R7で示されるアシルアミノ−オキソアルキレン基は、上記アシルアミノアルキレン基におけるアルキレンにオキソ基か置換基として存在する基を意味し、そのオキソアルキレンとしては、例えば、オキソエチレン、オキソプロピレン、オキソブチレンなどが挙げられる。【0032】この発明に係るインド−ルオキサイド誘導体は、強い蛍光を有すると共に、光や熱に対しても安定であることから、優れた蛍光母核となることができる。【0033】この発明に係る上記一般式(I)で示されるインド−ルオキサイド誘導体は、反応式:【0034】【化10】【0035】に示すように、一般式(II):【0036】【化11】【0037】(式中、R1、R2、R3およびR4はそれぞれ水素原子、低級アルキルオキシ基またはハロゲン原子を意味し、R’5は水素原子を意味し、R6は水素原子を意味し、R’7はカルボン酸残基またはアシルアミノアルキレン基を意味する。)で示されるインド−ル誘導体を酸化することによって得ることができる。【0038】この発明における酸化反応は、酸化剤を使用して常法に従って行うことができる。使用する酸化剤としては、インド−ル骨格の3位の置換基であるアシルアミノアルキレン基のアルキレン分子にオキソ基を導入することができる酸化剤、またはインド−ル骨格の1位のアミノ基にアルデヒド基を付加するとともに、その3位の置換基であるカルボン酸残基を脱離することができる酸化剤であればいずれでも使用することができるが、特に好ましい酸化剤としては過酸化水素が挙げられる。また、この発明における酸化反応は、水、炭酸ナトリウムなどの無機溶媒中において、加熱下で行うのが好ましいが、これらに何ら限定されるものではなく、適宜条件は変更することができる。【0039】この発明に係るインド−ル誘導体の分析方法は、上記反応式において、一般式(II)で示されるインド−ル誘導体を酸化させて、一般式(I)で示されるインド−ルオキサイド誘導体を得る酸化工程と、該酸化工程で得られたインド−ルオキサイド誘導体の蛍光強度を測定してインド−ル誘導体の量を求める測定工程とを備えたことを特徴とするものである。【0040】この発明に係るインド−ル誘導体の分析方法において、前記インド−ル誘導体の酸化は、R’7で示されるアシルアミノアルキレン基の側鎖アルキレンのみを酸化する条件下またはインド−ル骨格1位のアミノ基にアルデヒド基を置換すると同時に、その3位のカルボン酸残基を脱離する条件下おいて行わせるのが好ましい。また、前記インド−ル誘導体の酸化はアルカリ性下、特にpH10〜12で行わせるのが好ましい。【0041】また、インド−ル誘導体の酸化は、例えばH2O2とNa2CO3からなる酸化剤を用いて行うことができるが、これら以外の酸化剤を用いて行ってもよい。【0042】また、前記酸化工程と前記測定工程の間に、前記インド−ルオキサイド誘導体を有機溶媒で抽出する抽出工程を設けてもよい。この場合、抽出工程を加えることによりインド−ル誘導体の定量における再現性が低下するおそれがあるので、内標準物質を加えて分析するのが好ましい。【0043】内標準物質としては、酸化によって蛍光誘導体化されてクロマトグラム上で良好なピークを与える物質、例えば5−メトキシインドール−3−酢酸(MIAA)を使用することができる。【0044】また、この発明で使用する分析装置は、上記反応式において、一般式(II)で示されるインド−ル誘導体を酸化させて一般式(I)で示されるインド−ルオキサイド誘導体を得る酸化部と、このインド−ルオキサイド誘導体の蛍光強度を測定してインド−ル誘導体の量を求めるインド−ル誘導体測定部とを備えたことを特徴とするものである。【0045】ここで、前記酸化部は側鎖アルキレンのみを酸化する条件下においてインド−ル誘導体を酸化させる装置であることが好ましい。また、前記酸化部は前記インド−ル誘導体をアルカリ性下において酸化させる装置であることが好ましい。アルカリ性下としてはpH10〜12が、側鎖メチレンのみを酸化できるので、なお好ましい。【0046】また、インド−ル誘導体の酸化は、例えばH2O2とNa2CO3からなる酸化剤を用いて行うことができるが、これら以外の酸化剤を用いて行ってもよい。【0047】また、前記酸化部で得られたものからインド−ルオキサイド誘導体を有機溶媒で抽出し、これを前記測定部に供給する抽出部を設けてもよい。この場合、抽出部を設けることによりインド−ル誘導体定量における再現性が低下するおそれがあるので、内標準物質を加えて分析するのが好ましい。【0048】内標準物質としては、インド−ル誘導体と同様にインドール骨格を持ち、酸化によって蛍光誘導体化されてクロマトグラム上で良好なピークを与える物質、例えばMIAAを使用することができる。【0049】前記インド−ル誘導体測定部にはミクロHPLC(高速液体クロマトグラフィー)を使用し、高感度化して分析することが好ましい。【0050】【実施例】(実施例1)メラトニンオキサイド(MEL oxide)の合成法【0051】【化12】【0052】メラトニン(MEL)500mgと炭酸ナトリウム1gを水50mlに溶解し、80℃加熱下、3M過酸化水素水120mlを添加して10時間酸化反応を行った。反応の進行は、反応液の蛍光スペクトルを測定することによって追跡した。図1に、反応0時間(A)、6時間後(B)および10時間後(C)におけるスペクトルを示している。また図1の各図において、点線は280nmで励起したときのスペクトルを示しており、主として350nmに蛍光を示す原料であるメラトニンを示している。一方、実線は245nmで励起したスペクトルであり、生成物であるメラトニンオキサイドを示している。このように時間の経過とともにメラトニンが減少し、374nmに蛍光を示すメラトニンオキサイドが増加していることが示されている。反応終了後、反応液を酢酸エチルで洗浄し、水層を凍結乾燥した。【0053】得られたメラトニンオキサイドの物理的性質は次の通りであった。1H−NMR/重メタ(H1:1.95ppm;H2:見えない;H3:4.30ppm;H4:7.94ppm;H5:見えない;H6:7.51ppm;H7:7.33ppm;H8:3.90ppm;H9:7.68ppm)【0054】(実施例2)1−ホルミル−5−メトキシインドール(MIAA oxide)の合成法【0055】【化13】【0056】5−メトキシインドール−3−酢酸(MIAA)を、実施例1と同様にして酸化反応をなって1−ホルミル−5−メトキシインドールを得た。【0057】得られた1−ホルミル−5−メトキシインドールの物理的性質は次の通りであった。1H−NMR/重メタ(H1:見えない;H2:7.90ppm;H3:6.30ppm;H4:7.50ppm;H5:3.90ppm;H6:7.35ppm;H7:7.65ppm)【0058】(実験例1)メラトニンオキサイドの蛍光測定メラトニンオキサイドを10%メタノールに溶解して10μMの濃度の溶液にした。この溶液を用いてこの化合物の蛍光測定を行った。【0059】なお、コントロールとして、メラトニンを同様にメタノールに溶解して10μMの濃度の溶液にした。この溶液を用いて蛍光測定を行った。【0060】図2にメラトニンオキサイドについての励起・蛍光スペクトルを示した。図3にコントロールとしてのメラトニンについての励起・蛍光スペクトルを示した。図2および図3に示す励起・蛍光スペクトルから、メラトニンの励起極大波長は280nm、蛍光極大波長は350nmであるのに対して、メラトニンオキサイドの励起極大波長は247nm、蛍光極大波長は378nmとなり、ストークスシフトの増加が認められた。また蛍光強度は酸化反応によって増加し、メラトニンオキサイドはメラトニンの6.5倍の発光を示した。【0061】(実験例2)1−ホルミル−5−メトキシインドールの蛍光測定実験例1と同様にして、1−ホルミル−5−メトキシインドールを10%メタノールに溶解して10μMの濃度の溶液にした。この溶液を用いてこの化合物の蛍光測定を行った。【0062】なお、コントロールとして、5−メトキシインドール−3−酢酸をメタノールに溶解して10μMの濃度の溶液にした。この溶液を用いて蛍光測定を行った。【0063】図4に1−ホルミル−5−メトキシインドールについての励起・蛍光スペクトルを示した。図5にコントロールとしての5−メトキシインドール−3−酢酸についての励起・蛍光スペクトルを示した。図4および図5に示すように、5−メトキシインドール−3−酢酸においてもメラトニンと同様に波長シフトが認められ、5−メトキシインドール−3−酢酸の励起極大波長は279nm、蛍光極大波長は351nmであるのに対して、1−ホルミル−5−メトキシインドールの励起極大波長は243nm、蛍光極大波長は374nmとなり、ストークスシフトの増加が認められた。また1−ホルミル−5−メトキシインドールも強い蛍光を示し、その蛍光強度は5−メトキシインドール−3−酢酸の6.3倍であった。【0064】(比較実験例1、2)メラトニンオキサイドおよび1−ホルミル−5−メトキシインドールの蛍光特性と比較するために、市販の蛍光標識試薬のうち現在アミノ酸などの分析に広く用いられているNBD−FならびにDns−Clを用いてアミノ酸を誘導体化して生成した蛍光誘導体の励起・蛍光スペクトルを測定した。NBD−Fを用いた場合の蛍光誘導体(NBD−Ala)の励起・蛍光スペクトルを図6に示し、Dns−Clを用いた場合の蛍光誘導体(Dns−Ala)の励起・蛍光スペクトルを図7に示した。【0065】図6の結果から、蛍光誘導体(NBD−Ala)の励起極大波長は472nm、蛍光極大波長は536nmであることが、図7の結果から、蛍光誘導体(Dns−Ala)の励起極大波長は328nm、蛍光極大波長は542nmであることが判明した。またそれぞれの蛍光強度は23.64ならびに9.173であった。【0066】上記実験例ならびに比較実験例に使用した化合物についての励起・蛍光極大波長、蛍光強度ならびにS/N比を表1に示した。表1に示した結果から明らかなように、メラトニンオキサイドの蛍光強度は、NBD−Alaの80倍、Dns−Alaの200倍であり、1−ホルミル−5−メトキシインドールの蛍光強度もNBD−Alaの70倍、Dns−Alaの180倍であることが判明した。【0067】なおS/N比は、各化合物の蛍光強度とそれぞれの測定波長における測定溶媒の蛍光強度の比を表したものであって、HPLCで測定する際の感度の指標となると考えられる。NBD−AlaおよびDns−Alaにおいては、それぞれの蛍光特性は低かったが、これらはノイズレベルも低かったためにS/N比はそれぞれ高い値を示した。しかし、メラトニンオキサイドならびに1−ホルミル−5−メトキシインドールはS/N比についてもより高い値を示した。したがって、この発明に係るインドールオキサイド誘導体は高感度分析に使用できる。【0068】【表1】【0069】(実験例3)メラトニンオキサイドと1−ホルミル−5−メトキシインドール(MIAA oxide)との安定性メラトニンオキサイドならびにと1−ホルミル−5−メトキシインドール(MIAA oxide)との安定性を測定するために、これらの化合物を20%アセトニトリル水溶液に溶解し、採光下において25℃で所定時間放置して、それぞれの残存率を逆相HPLCによって測定した。分離カラムにはODS−120TS QA(4.6 mm i.d. x 150 mm)を用い、移動相は0.01%TFAを含む20%アセトニトリル水溶液(CH3CN/TFA/H2O=20/0.01/80(v/v))を1ml/minの割合で40℃で送液した。検出は210nmの紫外吸収で行った。その結果を図8に示す。図8において、(A)は各化合物の混合物を調製した直後、(B)はその混合物を1日放置した後、(C)はその混合物を3日放置した後の結果を示している。【0070】(実験例4)NBD−AlaとDns−Alとの安定性NBD−AlaおよびDns−Alaを、採光下において25℃で所定時間放置した以外は実験例3と同様にしてそれぞれの安定性を測定した。測定結果を図9に示す。図9において、(A)は各化合物の混合物を調製した直後、(B)はその混合物を1日放置した後、(C)はその混合物を3日放置した後の結果を示している。【0071】(実験例5)メラトニンオキサイド、1−ホルミル−5−メトキシインドール(MIAA oxide)ならびにNBD−AlaおよびDns−Alaの安定性メラトニンオキサイド、1−ホルミル−5−メトキシインドール(MIAA oxide)ならびにNBD−AlaおよびDns−Alaを、採光下において4℃、25℃、60℃で所定時間それぞれ放置した以外は実験例3と同様にしてそれぞれの安定性を測定した。測定結果を図10に示す。図10において、(A)は各化合物の混合物を4℃で放置した後、(B)はその混合物を25℃で放置した後、(C)はその混合物を60℃で放置した後の結果を示している。図示する結果から、NBD−Alaはいずれの温度においても採光下6時間で完全に分解した。これに対して、メラトニンオキサイド、1−ホルミル−5−メトキシインドールおよびDns−Alaは、ほとんど分解されなかった。【0072】(実験例6)メラトニンオキサイド、1−ホルミル−5−メトキシインドール(MIAA oxide)ならびにNBD−AlaおよびDns−Alaの安定性メラトニンオキサイド、1−ホルミル−5−メトキシインドール(MIAA oxide)ならびにNBD−AlaおよびDns−Alaを、遮光下で放置する以外は実験例5と同様にしてそれぞれの安定性を測定した。その測定結果を図11に示す。図11において、(A)は各化合物の混合物を4℃で放置した後、(B)はその混合物を25℃で放置した後、(C)はその混合物を60℃で放置した後の結果を示している。図示するように、遮光下では4℃、25℃においては、各化合物ともほとんど分解されずほぼ100%の残存率を示したが、60℃で加熱して3日間放置した場合には、NBD−Alaの残存率はほぼ50%になった。これに対して、メラトニンオキサイド、1−ホルミル−5−メトキシインドール(MIAA oxide)およびDns−Alaはいずれの条件下においてもほぼ100%の残存率を示した。【0073】これらの結果からして、メラトニンオキサイドは光ならびに熱に対して著しく安定であるのに対して、市販されているNBD−AlaおよびDns−Alaは光ならびに熱に対して不安定であるといえる。【0074】(実施例3)図12に示す工程図に従って、実施例3を説明する。メラトニン標品の水溶液100μlに300mMのNa2Co3水溶液10μlと10mMのH2O2水溶液10μlを加え、90℃で30分間誘導化(酸化)反応を行った。【0075】この反応液20μlを高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で分析し、励起波長245nm、蛍光波長380nmで検出した結果、図13のクロマトグラムが得られた。クロマトグラム中でmelatoninと表記したピークがメラトニンオキサイドである。【0076】(比較例1)一方、比較のために、酸化処理をしないメラトニン(50fmol)について、上記実施例3と同様に高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にてメラトニンを分析したところ、図20のクロマトグラムが得られた。【0077】図13と図20のメラトニンの強度を比較してみると、この実施例3による強度は比較例1による強度の10倍になっていることがわかる。【0078】(実施例4)図14に示す工程図に従って、実施例4を説明する。まず、Wistar系雄性ラット(6週齢、SPF)から松果体を1個摘出し、これを氷冷したメタノール(500μl)と共にミクロホモジナイザーですりつぶし、得られたホモジネートを遠心分離器にかけ、遠心力4500G、5分で分離し、上澄み液(上清)をマイクロピペットで採取した。【0079】次に、遠心分離した上清をマイクロピペットで採取し、これをミクロガラスチューブ内に入れ、100℃で乾固させた。【0080】次に、この残渣に水40μl加えて良く撹拌した後、2MのNa2CO3水溶液を5μl、50mMのH2O2水を5μl加え、100℃で30分間誘導化(酸化)反応を行なわせた。【0081】この誘導体化反応で得られた反応溶液の一部を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にかけ、励起波長245nmの光を照射し、蛍光波長380nmの光の強度を測定したところ、図15のクロマトグラムのようになった。このクロマトグラム中、矢印で示したピークがメラトニンである。【0082】次に、この反応溶液に水で飽和させた酢酸エチル250μlを加え、メラトニン誘導体の抽出を行った。この抽出操作は3回繰り返し、上層を合わせて蒸発乾固した。【0083】次に、この残渣に10%CH3CN/H2Oを40μl加えて良く撹拌し、その20μlを高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にかけ、励起波長245nmの光を照射し、蛍光波長380nmの光の強度を測定したところ、図16のクロマトグラムが得られた。このクロマトグラム中、矢印で示したピークがメラトニンである。【0084】図15と図16のクロマトグラムを比較してみると、抽出操作により抽出前に存在した様々な夾雑成分が除去され、メラトニンの選択的分析が可能になっていることがわかる。【0085】(実施例5)図17に示す工程図に従って、実施例5を説明する。実施例4と同様に、まず、Wistar系雄性ラット(6週齢、SPF)の松果体を1個摘出し、これを氷冷したメタノール(500μl)と共にミクロホモジナイザーですりつぶし、得られたホモジネートを遠心分離器にかけ、遠心力4500G、5分で分離し、上清をマイクロピペットで採取した。【0086】次に、遠心分離した上清に5nMのMIAA(5−メトキシインドール−3−酢酸)/MeOH溶液を50μl加え、マイクロガラスチューブ内に入れ、100℃で乾固させた。【0087】次に、この残渣に水40μl加えて良く撹拌した後、2MのNa2CO3水溶液を5μl、50mMのH2O2水を5μl加え、100℃で30分間誘導化(酸化)反応を行なわせた。【0088】次に、この反応溶液に水で飽和させた酢酸エチル250μlを加え、メラトニン誘導体の抽出を行った。この抽出操作は3回繰り返し、上層を合わせて蒸発乾固させた。【0089】次に、この残渣に10%CH3CN/H2Oを40μl加えて良く撹拌し、その20μlを高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にかけ、励起波長245nmの光を照射し、蛍光波長380nmの光の強度を測定したところ、図18のクロマトグラムのようになった。このクロマトグラム中、矢印で示したピークがメラトニンである。【0090】また、遠心分離したものの上澄み液であって、MIAAを添加しないものを高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にかけ、励起波長245nmの光を照射し、蛍光波長380nmの光の強度を測定したところ、図19のクロマトグラムのようになった。このクロマトグラム中、矢印で示したピークがメラトニンである。【0091】図18のクロマトグラムと図19のクロマトグラムを対比してみると、MIAA誘導体の保持時間付近に妨害ピークは存在せず、MIAA誘導体はクロマトグラム上で良好に定量可能であることがわかる。【0092】(実施例6)図21、図22に示す実施例6について説明ずる。図21は1fmolのメラトニンを酸化させ、通常の逆相HPLC(高速液体クロマトグラフィー)で分析したものである。図22は同じく1fmolのメラトニンを酸化させ、ミクロHPLC(高速液体クロマトグラフィー)で分析したものである。共にメラトニンピークは矢印で示した。図21と図22を比較すると、ミクロHPLC(高速液体クロマトグラフィー)の導入によって検出感度が10倍以上向上していることが分かる。従って前記酸化工程とミクロHPLC(高速液体クロマトグラフィー)の導入によって従来法と比較し、100倍以上高感度なメラトニン分析が可能である。【0093】【発明の効果】この発明に係るインド−ルオキサイド誘導体は、強い蛍光を有すると共に、光ならびに熱にも安定であるなどという優れた特性を有している。【0094】また、この発明にかかる分析方法は、メラトニンなどのインド−ル誘導体を酸化させて、インド−ルオキサイド誘導体として、このメラトニンオキサイドなどのインド−ルオキサイド誘導体の蛍光強度を測定するので、メラトニンなどのインド−ル誘導体の微量測定が可能になるという効果がある。【0095】従って、この発明によれば、血中メラトニン定量が数十ミリリットルと極めて微量の血液で可能となり、指尖からの非疼痛性採血法が適用可能になり、被験者の負担を極めて軽減し、個人レベルでのメラトニン日内リズム解析などが可能になり、生体リズム障害時における詳細なメラトニンリズム計測が可能となり、リズム障害時における原因究明と従来経験的に行われてきたメラトニン治療に科学的指針を与え、効果的な投薬設計が可能になるという効果がある。【0096】また、この発明によれば、夾雑物を含む実際のヒト血液について夾雑物の影響を受けず、メラトニンなどの濃度を正確に定量分析することができるという効果がある。【0097】また、この発明によれば、メラトニン血中濃度を生体リズムのマーカーとして様々な疾病における時間治療の導入が可能となるという効果がある。【図面の簡単な説明】【図1】メラトニンオキサイドの蛍光強度を示し、(A)は反応時間0時間、(B)は反応時間6時間後、(C)は反応時間12時間後の蛍光強度を示す。【図2】メラトニンオキサイドの励起・蛍光極大波長を示す。【図3】メラトニンの励起・蛍光極大波長を示す。【図4】1−ホルミル−5−メトキシインドールの励起・蛍光極大波長を示す。【図5】5−メトキシインドール−3−酢酸の励起・蛍光極大波長を示す。【図6】NBD−Alaの励起・蛍光極大波長を示す。【図7】Dns−Alaの励起・蛍光極大波長を示す。【図8】メラトニンオキサイド、NBD−AlaおよびDns−Alaの混合物の残存率を示すクロマトグラム。【図9】メラトニンオキサイド、NBD−AlaおよびDns−Alaの混合物の遮光下での残存率を示すクロマトグラム。【図10】メラトニンオキサイド、NBD−AlaおよびDns−Alaの混合物の採光下での分解率を示す。【図11】メラトニンオキサイド、NBD−AlaおよびDns−Alaの混合物の遮光下での分解率を示す。【図12】実施例3の操作を示す工程図である。【図13】実施例3の操作で処理された反応液のクロマトグラムである。【図14】実施例4の操作を示す工程図である。【図15】実施例4の操作において溶媒抽出される前の液のクロマトグラムである。【図16】実施例4の操作で処理された抽出液のクロマトグラムである。【図17】実施例5の操作を示す工程図である。【図18】実施例5の操作で処理された抽出液のクロマトグラムである。【図19】実施例5の操作でMIAAを添加しなかった抽出液のクロマトグラムである。【図20】比較例1の操作で酸化せずに分析したメラトニン標品のクロマトグラムである。【図21】メラトニンオキサイドを通常の逆相HPLCで分析したクロマトグラムである。【図22】メラトニンオキサイドをミクロHPLCで分析したクロマトグラムである。 メラトニンを酸化してメラトニン酸化物を得る酸化工程と、該酸化工程で得られたメラトニン酸化物の蛍光強度を測定してメラトニンの量を求める測定工程とを備えたことを特徴とするメラトニンの分析方法。 前記メラトニンを過酸化水素で酸化することを特徴とする請求項1に記載のメラトニンの分析方法。 前記メラトニンを側鎖メチレンのみを酸化する条件下において酸化することを特徴とする請求項1又は2に記載のメラトニンの分析方法。 前記メラトニンをアルカリ性下において酸化することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のメラトニンの分析方法。 前記メラトニンを炭酸ナトリウムの存在下において酸化することを特徴とする請求項4に記載のメラトニンの分析方法。 前記メラトニン酸化物を有機溶媒で抽出する抽出工程を前記酸化工程と前記測定工程の間に備えていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のメラトニンの分析方法。 内標準物質を加えたことを特徴とする請求項6に記載のメラトニンの分析方法。


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