タイトル: | 特許公報(B2)_藻類成長抑制剤 |
出願番号: | 2001100018 |
年次: | 2004 |
IPC分類: | 7,C12P1/02,A01N63/02 |
坂木 剛 柴田 昌男 迎 勝也 境 正志 若松 國光 宮内 信之助 JP 3598370 特許公報(B2) 20040924 2001100018 20010330 藻類成長抑制剤 独立行政法人産業技術総合研究所 301021533 阿形 明 100071825 坂木 剛 柴田 昌男 迎 勝也 境 正志 若松 國光 宮内 信之助 20041208 7 C12P1/02 A01N63/02 JP C12P1/02 Z A01N63/02 P 7 C12P 1/02 A01N 63/02 JSTPlus(JOIS) BIOSIS/WPI(DIALOG) 特開平6−256370(JP,A) 特開昭62−123194(JP,A) 米国特許第4872986(US,A) 米国特許第5677345(US,A) 1 2002291493 20021008 5 20010330 七條 里美 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、藻類の除去又は生育抑制を行いうる、特定の担子菌由来の色素を有効成分とする藻類成長抑制剤に関するものである。【0002】【従来の技術】従来、植物、例えば藻類の除去又は生育抑制を行う植物成長抑制剤として市販されている農薬の多くは化学農薬であるが、これは散布後環境中に残存し生態系への影響が懸念され、近年の環境保全指向には適合しないものである。そこで、安全性の高い藻類成長抑制剤が強く望まれている。【0003】【発明が解決しようとする課題】本発明は、このような事情の下、環境保全指向に適合した、安全性の高い藻類成長抑制剤を提供することを目的としてなされたものである。【0004】【課題を解決するための手段】本発明者らは、藻類成長抑制剤について、化学農薬によらずに、微生物やその産生物に着目して種々検索、スクリーニングを重ねた結果、担子菌類のうちの特定菌の菌体に含まれる色素や該菌の産生物中の色素が優れた藻類成長抑制作用を有することを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。【0005】すなわち、本発明は、ロクショウグサレキンにより木質部中に産生された色素又はロクショウグサレキンの菌体に含まれる色素を有効成分とする藻類成長抑制剤を提供するものである。【0006】【発明の実施の形態】本発明の藻類成長抑制剤における有効成分の色素は、ロクショウグサレキンによって木質部中に産生された色素、あるいは該菌体に含まれる色素であって、その調製は好ましくは抽出分離、中でも熱水抽出分離により行われるが、従来公知の液体培地による培養法あるいはおがくずに液体培地を含浸させた培養法によって産生された培地成分を有機溶剤を用いて抽出し、有機溶剤成分を蒸発させるか、あるいは適当な分離カラムを選択使用して吸着させることで色素を回収することによってもよい。【0007】【0008】上記熱水抽出分離は、ロクショウグサレキンにより産生された色素を含む木質部、あるいはロクショウグサレキンを原料とし、これを好ましくは粉末形態で用い、気体あるいは液体状態の熱水による腐朽成分や易溶性成分の抽出除去処理後、加圧熱水、好ましくはアルカリが添加された加圧熱水での色素の選択的抽出分離処理によるか、さらに必要に応じ採択される、これらの処理で得られた色素水溶液への酸添加による色素の沈折分離処理によるのが好ましい。【0009】この熱水抽出分離についてさらに詳細に説明すると、適当に粉砕された、上記色素を含む木質部試料あるいは菌体試料を、試料が流出しないようメッシュ等でカバーした抽出容器内に充填し、これに圧力解放下100〜140℃、好ましくは120〜135℃の熱水を接触させて先ず腐朽成分あるいはロクショウグサレキンの菌体由来の易溶性成分の抽出除去を行う。この処理の際、熱水温度が140℃を越えると色素の分解が生じやすくなるし、また100℃未満では熱水の溶解力が低下して効率的な抽出が行われないので好ましくない。この処理は抽出溶液の色が透明となったところで終了される。【0010】次いで、抽出容器内の抽出残留物に対し、100℃より高温、好ましくは120〜135℃の加圧熱水で更に抽出を行う。この際に負荷する圧力は熱水が完全な液体状態となるように蒸気圧以上の加圧、好ましくは0.5〜2MPa程度でよい。この加圧熱水によって難溶性の色素が抽出されるが、加圧熱水に少量のアルカリ、例えば水酸化ナトリウムや水酸化カリウムのようなアルカリ金属水酸化物等を添加することによって抽出速度を大幅に上げることができる。その添加量としては加圧熱水のアルカリ濃度が0.001〜0.1N(規定度)となるように調製するのがよく、アルカリ濃度が0.1Nを超えるとヘミセルロースのような残留分として除去されるべき成分までが抽出され、有用な色素の純度が低下するし、また0.001N未満ではその添加効果が十分ではなく、抽出速度が十分には上がらない。この加圧熱水抽出処理により色素を含む水溶液が得られるが、フェノール性水酸基を持つ色素あるいはカルボン酸誘導体色素は、これに水溶液のpHが3以下になるよう酸を添加すると沈析するので、この沈析色素を通常のろ過法や遠心分離法で回収することにより固体状の色素粉末が得られる。【0011】本発明の藻類成長抑制剤は有効成分としての色素を含んでいれば特に制限されず、ロクショウグサレキンの菌体自体であってもよいし、ロクショウグサレキンを培養させた培地、例えば液体培地等であってもよいし、ロクショウグサレキンを繁殖させた原木やそれを適宜形状に裁断、切断、粉砕等で加工処理した木質材、例えばおがくず等であってもよいが、好適には上記色素の回収物、例えば抽出液や、色素単体や、製剤が用いられる。【0012】製剤は、一般に藻類成長抑制剤に慣用されている剤型にしたものであればよく、このようなものとしては、例えば粉剤、微粒剤、顆粒剤、乳剤、水和剤、懸濁剤、ドライフロアブル、フロアブル、水性液剤、油剤、燻煙剤、エアゾール剤、マイクロカプセル剤などが挙げられる。製剤化に際して用いられる担体等の賦形剤、界面活性剤、固着剤、分散剤、安定剤等の添加剤については、一般に藻類成長抑制剤の製剤に慣用されているものの中から、使用分野や使用目的等に応じ適宜選べばよい。【0013】担体については、固体担体、液体担体、ガス状担体のいずれも用いられ、固体担体の例としては、粘土類(例えば、カオリナイト、酸性白土、ケイソウ土、合成含水酸化ケイ素、ベントナイト)、タルク類、その他の無機鉱物(例えば、炭酸カルシウム、石英粉末、活性炭、水和シリカ)、化学肥料(例えば、硫安、塩安、燐安、尿素)、有機物(例えば、さとうきび、樹皮末、タバコ茎末)等の微粉末あるいは粒状物を挙げることができる。液体担体の例としては、水、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール)、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン)、炭化水素類(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、メチルナフタレン)、エステル類(例えば酢酸エチル、酢酸ブチル)、エーテル類(例えば、ジオキサン、ジイソプロピルエーテル)、酸アミド類(例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド)等を挙げることができる。【0014】界面活性剤としては、例えば、アルキル硫酸エステル類、アルキルスルホン酸塩、アルキルアリールスルホン酸塩、アルキルアリールエーテル類及びそのポリオキシエチレン化物、ポリエチレングリコールエーテル類、多価アルコールエステル類、糖アルコール誘導体等を挙げることができる。固着剤や分散剤としては、例えば、カゼイン、ゼラチン、多糖類(例えば、でんぷん、アラビアゴム、セルロース誘導体)、リグニン誘導体、ベントナイト、糖類、合成水溶性高分子(例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸類)等を挙げることができる。安定剤としてはPAP(酸性リン酸イソプロピル)、BHT(2,6‐ジ‐t‐ブチル‐4‐メチルフェノール)、植物油、鉱物油、脂肪酸、又はそのエステル類を挙げることができる。【0015】本発明の藻類成長抑制剤を施用するには、その剤型、対象藻類、環境条件等によっても変わるが、液剤の場合には、有効成分の色素の濃度で0.1〜100,000nM(ナノモル濃度)程度に希釈して用い、また粉剤や粒剤のようにそのまま施用する場合には藻類群落地面積10アール当り有効成分として0.01〜1,000モル程度の施用量とすればよい。また、他の藻類成長抑制剤と組み合わせて併用してもよく、例えば混合剤としたり、使用現場で混合したり、交互使用したりすればよい。【0016】本発明の藻類成長抑制剤を適用しうる藻類としては、例えば緑藻植物、褐藻植物、紅藻植物などが挙げられる。【0017】【実施例】次に、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。【0018】参考例ロクショウグサレキンが産生した青色色素を含む木質材を粉砕して試料とし、この試料7gを、それが流出しないように両端を焼結フィルターでキャップした抽出部に仕込み、これに130℃の熱水を、圧力開放下、10ml/分で40分間流したのち、0.01モル/リットル濃度の水酸化ナトリウム水溶液を2MPaにて10ml/分の流量で流し、色素の抽出を約2時間行った。こうして得られた濃い青色の色素水溶液に3.5質量%塩酸を少量添加してpHを3以下に調整して色素成分を析出させ、ろ過して固体状で青色のキシリンデイン系色素を得た。【0019】実施例1クロレラ培養用培地成分として、KNO3(50g)とKH2SO4(30g)を水1リットルに溶解させてなるA液、FeSO4(3g)とNa2−EDTA(4g)を水1リットルに溶解させてなるB液、及びH2BO4(3g)、MnCl2(2g)、ZnSO4(0.3g)、CuSO4(0.1g)、Na2MoO4(0.02g)及び濃硫酸(0.2ml)を水1リットルに溶解させてなるC液をそれぞれ調製した。クロレラ基本培地(継代培養用)としてA液5ml、B液0.5ml、C液0.2ml、グルコース0.5g及びイースト抽出物0.1gを水に溶解して100mlにした培地Xを、また、別のクロレラ基本培地としてA液10ml、B液0.2ml、C液0.2ml及びグルコース1gを水に溶解して200mlにした培地Yをそれぞれ調製した。これらの培地を用い、以下の実験を行ったすなわち、クロレラの継代培養を、寒天を含む培地Xを用い人工気象器照射下3−4週間毎に行った。この継代培養物を寒天を含まない培地Yに移し、同じく人工気象器照射下振とう培養を行い、培養7日後のクロレラ懸濁液を試験標品とした。この試験標品5mlに、参考例で得られたキシリンデイン系色素を20nMとなるように添加し、それから人工気象器照射下に2日経過させた後、クロレラ中のクロロフィル量を測定した。その結果、クロロフィル含量は全く測定されず、クロレラ細胞は全く死滅したことが示唆された。【0020】比較例実施例1のキシリンデイン系色素に代えて、メチルビオローゲン0.0126gを水100mlに溶解して調製されたパラコートを用い、その添加濃度を1μMに変えた以外は実施例1と同様にして、クロレラ中のクロロフィル量を測定した。その結果、クロロフィル含量は5%迄減少し、クロレラ細胞の多くが死滅したことが示唆された。【0021】実施例2ケイソウ植物プランクトン(skeletonema costatum)を新鮮海水中で培養した試験標品5mlを用い、それに参考例で得られたキシリンデイン系色素を20nMとなるように添加し、それから人工気象器照射下に2日経過させた後、試験標品中のクロロフィル量を測定した。その結果、クロロフィル含量は観察されず、試験対象植物プランクトンの成長が大幅に抑制されていることが示唆された。【0022】【発明の効果】本発明の藻類成長抑制剤は、藻類に対し優れた成長抑制効果、場合によりさらには除草効果を示し、特に藻類細胞であるクロレラやケイソウ植物プランクトンの成長を阻害し、しかも市販のパラコートよりも低い濃度でそれに優る高い効果を示す。 ロクショウグサレキンにより木質部中に産生された色素又はロクショウグサレキンの菌体に含まれる色素を有効成分とする藻類成長抑制剤。