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タイトル:特許公報(B2)_シクロヘキサノンオキシムの蒸発方法
出願番号:2001093361
年次:2009
IPC分類:C07C 249/14,C07C 251/44


特許情報キャッシュ

嶋津 泰基 桑原 寛治 北村 勝 JP 4223694 特許公報(B2) 20081128 2001093361 20010328 シクロヘキサノンオキシムの蒸発方法 住友化学株式会社 000002093 深井 敏和 100104318 嶋津 泰基 桑原 寛治 北村 勝 20090212 C07C 249/14 20060101AFI20090122BHJP C07C 251/44 20060101ALI20090122BHJP JPC07C249/14C07C251/44 C07C 249/14 C07C 251/44 特開平06−049015(JP,A) 特開平02−025457(JP,A) 特開2000−256308(JP,A) 特開2000−256309(JP,A) 特開昭53−037641(JP,A) 特開平04−154746(JP,A) 特開昭60−054349(JP,A) 特開2001−029718(JP,A) 5 2002284752 20021003 7 20050825 山田 泰之 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、ε−カプロラクタムの製造原料等に使用されるシクロヘキサノンオキシムの蒸発方法に関し、より詳しくはシクロヘキサノンオキシムを原料とするベックマン転位反応において生成するε−カプロラクタムの品質に大きな問題を与えるシクロヘキサノンオキシムの劣化を低減し、かつシクロヘキサノンオキシムの蒸発を円滑に行わせることができる、シクロヘキサノンオキシムの蒸発方法に関する。【従来の技術】【0002】ε−カプロラクタムは,主に繊維やエンジニアリングプラクチックスの製造に使用されるナイロン―6の合成に用いられるモノマーである。ε−カプロラクタムの製造には、シクロヘキサノンオキシムを出発原料とする液相ベックマン転位反応と気相ベックマン転位反応の方法とが知られている。【0003】液相ベックマン転位反応を用いる方法は、硫酸を中和するために多量のアンモニアが必要であり、その結果、副生成物として多量の硫酸アンモニウムが発生し、その処理に多大な費用が必要となる。このため、硫酸アンモニウムが発生しない固体触媒を用いて気相中にてシクロヘキサノンオキシムをベックマン転位させる方法(気相ベックマン転位反応)が古くから注目されている。気相ベックマン転位反応では、反応物を蒸発させる必要があるため,蒸発工程が採用される。蒸発工程において、シクロヘキサノンオキシムを蒸発させるために、種々の方法が提案されている。【0004】すなわち、特開昭55−141467号公報には、液状シクロヘキサノンオキシムを不活性ガスと共に珪砂等の不活性固体の流動層中に供給し気化させることが記載されている。しかし、この方法では,シクロヘキサノンオキシムの一部が流動層中で劣化することや、多量の不活性ガスが必要であるという欠点がある。【0005】特開昭53−37641号公報には、濡壁蒸発器(流下式薄膜蒸発器)を用いて、液状シクロヘキサノンオキシムを不活性ガスの存在下、300torrの過圧にて蒸発させることが記載されている。しかし、濡壁蒸発器は、液状シクロヘキサノンオキシムを細い管内を薄膜状に流下しながら蒸発させるものであるため、管内面に該オキシムの残渣が残留すると、これがタール(コーク)となって、蒸発効率を低下させ、ついには管の詰まりを引き起こす原因となる。【0006】【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、濡壁蒸発器の管が詰まるのを防止して、シクロヘキサノンオキシムの蒸発を円滑に行わせ、かつ蒸発器の連続運転期間を延長させることができる、シクロヘキサノンオキシムの蒸発方法を提供することである。【0007】【課題を解決するための手段】本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、シクロヘキサノンオキシムを濡壁蒸発器で蒸発させるにあたり、濡壁蒸発器の蒸発面を常にシクロヘキサノンオキシムで濡らしておくことにより蒸発面にタールが形成されて管が詰まるのを防止することができ、その結果、シクロヘキサノンオキシムの蒸発が円滑に行われ、蒸発器の連続運転期間をも延長させることができるという新たな事実を見出し本発明を完成するに至った。【0008】すなわち、本発明のシクロヘキサノンオキシムの蒸発方法は、濡壁蒸発器を用いて、シクロヘキサノンオキシムを蒸発させるものであって、前記蒸発器内の全蒸発面がシクロヘキサノンオキシムで濡れた状態で蒸発を行わせることを特徴とする。本発明では、シクロヘキサノンオキシムとこれを希釈する溶剤(アルコール等)との混合液を蒸発させるのが該オキシムの熱劣化を低減させるうえで好ましい。【0009】ここで、全蒸発面が濡れた状態とは、蒸発面全体にわたって少なくともシクロヘキサノンオキシムの薄膜が形成されていることを意味する。シクロヘキサノンオキシムを溶剤との混合液で使用する場合、前記薄膜は、蒸発初期にはこの混合液からなるが、蒸発後期には溶剤が先に蒸発して実質的にシクロヘキサノンオキシムだけの薄膜となる。【0010】前記蒸発は、シクロヘキサノンオキシムの劣化を防止するうえで、1060torr以下の圧力下で行うのが好ましい。さらに、本発明の方法では、濡壁蒸発器から排出された未蒸発液は、この濡壁蒸発器内に強制循環することもできる。濡壁蒸発器内の全蒸発面を濡れた状態に維持させるために、前記蒸発器内の蒸発面下端でのシクロヘキサノンオキシム流下液量は、蒸発面下端の単位長さ(m)当たり170kg/時間以上であるのが好ましい。蒸発は不活性ガスの存在下で行うこともできる。【0011】【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施形態を図1に基づいて説明する。図1はこの実施形態に係る濡壁蒸発器1を示している。この濡壁蒸発器1は多管式の濡壁塔であって、塔上部の供給部3から複数の管2、2…内にシクロヘキサノンオキシムとこれを希釈する溶剤との混合液を供給し、パイプ内面に薄膜を形成させながら流下させ、その過程で塔内に供給された熱媒(スチーム等)により各管2の外面を加熱して前記混合液を蒸発させる。6は熱媒供給パイプを示している。【0012】シクロヘキサノンオキシムはオキシム供給パイプ4を経て前記供給部3へ送られる。その供給過程で溶剤供給パイプ5から溶剤が供給され、シクロヘキサノンオキシムと混合される。なお、溶剤は溶剤供給パイプ5とは別の供給パイプ(図示せず)にて供給部3に送り、供給部3でシクロヘキサノンオキシムと混合してもよい。前記溶剤としては、シクロヘキサノンオキシムより沸点が低く、かつ該オキシムを溶解し希釈できるものであれば使用可能であり、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ターシャリーブタノール、1−ヘキサノ−ル、1−オクタノール等から選ばれる炭素数1〜8の飽和アルコール、ベンゼン、トルエンなどが挙げられ、中でもメタノールあるいはエタノールが好ましい。また、シクロヘキサノンオキシムと溶剤との混合割合は重量比で約100:1〜1:10であるのがよい。【0013】一方、ガス供給パイプ7,8を経て不活性ガスと溶剤ガスの混合ガスが供給部3へ送られる。不活性ガスとしては窒素ガス等が挙げられ、溶剤ガスとしては前記したと同じ溶剤、特にメタノールガスが挙げられる。【0014】このように、シクロヘキサノンオキシムを溶剤およびそのガスと混合することにより蒸発工程での該オキシムの劣化を抑制することが可能になる。また、溶剤ガスとしてアルコ−ルを使用した場合は、後続する流動層反応(気相ベックマン転位反応)にシクロヘキサノンオキシムと同伴し、反応収率を上げる作用を有する。【0015】供給部3に供給されたシクロヘキサノンオキシムと溶剤との混合液は、不活性ガスおよび溶剤ガスと共に、管2,2…内を流下する。このとき、管2,2…の内面は全体が少なくともシクロヘキサノンオキシムで濡れていることが必要であって、一部に濡れていない部位が存在すると、当該部位に残留したシクロヘキサノンオキシムがタールとなって溜まり、ついには管2の詰まりを引き起こす。【0016】管2の内面全体を濡らすためには、前記蒸発器内の管2下端でのシクロヘキサノンオキシムの流下液量が、管2下端での円周の単位長さ(m)当たり170kg/時間以上、好ましくは170〜1700kg/時間、より好ましくは340〜680kg/時間であるのがよい。流下液量が単位長さ当たり170kg/時間未満である場合には、一部に濡れていない部位が発生するおそれがある。【0017】前記混合液の蒸発は、1060torr未満の圧力下で行うのが好ましく、圧力が1060torr以上であると、オキシムの劣化を招来するおそれがある。好ましくは、圧力が1000torr以下の範囲で混合液を蒸発させるのがよい。また、蒸発温度は130〜170℃であるのが適当である。【0018】蒸発ガスは、塔底9から抜き出され、反応原料供給パイプ12を経て反応工程に送られる。一方、管2内で蒸発せずに濡壁蒸発器1の塔底9に溜まった未蒸発液は、塔底9から排出され、ポンプ11により循環パイプ13を通って供給部3に送られる。このようにして、未蒸発液は濡壁蒸発器1内を強制循環される。未蒸発液の循環量は前記蒸発器内の管2下端からの流下液量になる。【0019】未蒸発液の液組成を調整するために、未蒸発液の一部は循環パイプ13から排出する。この排出した液は、第2の蒸発器(例えば掻き取り蒸発器、蒸留等)で不純物(タ−ル)を分離し、残存するシクロヘキサノンオキシムを蒸発させ再使用することもできる。【0020】なお、以上の説明では、管2の内面にシクロヘキサノンオキシムの薄膜を形成するようにしたが、管2の内面にスチーム等の熱媒を導入し管2の外面にシクロヘキサノンオキシムと溶剤の混合液を流下させて薄膜を形成させてもよい。また、本発明の蒸発方法は、シクロヘキサノンオキシムを溶剤と混合して蒸発させる場合のみに限定されるものではなく、シクロヘキサノンオキシムを単独で蒸発させてもよい。【0021】【実施例】以下、実施例および比較例を挙げて、本発明の蒸発方法を詳細に説明する。【0022】実施例図1に示す蒸発装置を用いて、循環形式によりシクロヘキサノンオキシムを蒸発させた。溶剤としてメタノールを、不活性ガスとして窒素ガスをそれぞれ使用した。使用した濡壁蒸発器1は直径50mm、長さ6mの円管2を4本備えたものである。主な運転条件は以下の通りである。・シクロヘキサノンオキシム供給量:250kg/時間・メタノール液供給量:50kg/時間・メタノールガス供給量:400kg/時間・窒素ガス供給量:50kg/時間・蒸発温度:140〜160℃・運転圧:950torr以下・未蒸発液の循環量:250kg/時間・シクロヘキサノンオキシムの流下液量:円管2下端での円周の単位長さ(m)当たり398kg/時間以上の条件で連続運転した結果、運転開始から60日経過後も円管2の詰まりは認められなかった。また、シクロヘキサノンオキシムからシクロヘキサノンなどの副生物の生成率をガスクロマトグラフィーで調べた。その結果、オキシムの劣化は0.12%であった。【0023】比較例図2に示す濡壁蒸発器20を用いて、液循環のないワンパスでの完全蒸発形式によりシクロヘキサノンオキシムを蒸発させた。この濡壁蒸発器20は直径50mm、長さ6mの円管21を28本備えたものを使用した。また、濡壁蒸発器20の底部22から反応原料供給パイプ23にて蒸発ガスを抜き出し、オキシムから生成したタール成分は排出パイプ24にて排出した。その他は図1に示す装置と同じであるので、同一符号を付して説明を省略する。主な運転条件のうち、シクロヘキサノンオキシム、メタノール液、メタノールガス、窒素ガスの各供給量、蒸発温度、運転圧は実施例と同じである。シクロヘキサノンオキシムの流下液量は円管21下端での円周の単位長さ(mm)当たり0.5kg/時間であった。その結果、運転開始から10日目で、円管21内にオキシムから生成したタール成分25が溜まり、円管21が閉塞した。【0024】【発明の効果】本発明によれば、濡壁蒸発器を用いてシクロヘキサノンオキシムを蒸発させるにあたり、濡壁蒸発器の蒸発面を常に濡らしておくことにより蒸発面にタールが形成されるのが防止され、これによりシクロヘキサノンオキシムの蒸発が円滑に行われ、蒸発器の連続運転期間を延長させることができるという効果がある。また、シクロヘキサノンオキシムにこれを希釈する溶剤を同伴させることにより、該オキシムの熱劣化を低減できるという効果がある。【図面の簡単な説明】【図1】本発明の一実施形態に使用される蒸発装置の概略図である。【図2】比較例で使用した蒸発装置の概略図である。【符号の説明】1 濡壁蒸発器2 管4 オキシム供給パイプ5 溶剤供給パイプ6 熱媒供給パイプ12 循環パイプ13 反応原料供給パイプ 濡壁蒸発器を用いて、シクロヘキサノンオキシムとこれを希釈する溶剤との混合液を蒸発させるシクロヘキサノンオキシムの蒸発方法であって、 前記溶剤がアルコ−ルであり、前記蒸発器内の全蒸発面が少なくともシクロヘキサノンオキシムで濡れた状態となるように、前記混合液を1060torr以下の圧力下で、かつ前記蒸発器内の蒸発面下端でのシクロヘキサノンオキシム流下液量が、蒸発面下端の単位長さ(m)当たり170kg/時間以上で蒸発させることを特徴とするシクロヘキサノンオキシムの蒸発方法。 濡壁蒸発器から排出された未蒸発液を、この濡壁蒸発器内に強制循環させる請求項1記載の蒸発方法。 前記蒸発器内の蒸発面下端でのシクロヘキサノンオキシム流下液量が、蒸発面下端の単位長さ(m)当たり340kg/時間以上である請求項1または2に記載の蒸発方法。 不活性ガスの存在下で蒸発を行わせる請求項1〜3のいずれかに記載の蒸発方法。 蒸発温度が130〜170℃である請求項1〜4のいずれかに記載の蒸発方法。


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