生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_鋼材の疲労亀裂進展速度評価方法
出願番号:2001087093
年次:2005
IPC分類:7,G01N3/00,G01N3/32,G01N33/20


特許情報キャッシュ

誉田 登 JP 3714180 特許公報(B2) 20050902 2001087093 20010326 鋼材の疲労亀裂進展速度評価方法 住友金属工業株式会社 000002118 杉岡 幹二 100093469 森 道雄 100103481 穂上 照忠 100083585 誉田 登 20051109 7 G01N3/00 G01N3/32 G01N33/20 JP G01N3/00 U G01N3/32 C G01N33/20 Z 7 G01N 3/00-3/62 G01N 33/20 JICSTファイル(JOIS) 特開2001−41868(JP,A) 特開2001−337015(JP,A) 特開昭61−56937(JP,A) 特開平6−18385(JP,A) 特開平5−93681(JP,A) 特開平1−6742(JP,A) 有限要素法ハンドブックII応用編,日本,培風館,1999年 9月 1日,p.335−366 2 2002286606 20021003 15 20030513 ▲高▼見 重雄 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、鋼材の疲労亀裂進展寿命を一義的に決定する材料特性、すなわち、鋼材の疲労亀裂進展速度を評価する方法に関し、より詳しくは、疲労亀裂進展速度を迅速に効率よく評価する方法に関する。【0002】【従来の技術】建築、橋梁などの各種構造物や、自動車を初めとする輸送用機械、産業用機械、建設用機械などの各種機械には種々の鋼材が用いられている。前記の構造物や機械には繰り返し荷重が加わるものが少なくないため、その強度健全性を確保する上で疲労特性に対する注意が不可欠である。【0003】従来、構造物や機械の疲労破壊に対しては、疲労亀裂の発生及びその後の疲労亀裂の進展という2つの面からの検討が加えられている。つまり、構造物や機械の幾何学的寸法、使用形態及び荷重経路などによって、疲労亀裂の「発生」に力点を置いた検討と、疲労亀裂の「進展」に力点を置いた検討とが行われている。【0004】しかし、大型で、且つ多数の部位で溶接接合されている所謂「冗長度」の高い構造物や機械については、疲労亀裂の発生を抑制するための工業的且つ有効な手段が極めて限られていることもあり、主として疲労亀裂の進展を抑制するための検討が行われている。つまり、前記のような構造物や機械に対しては、疲労亀裂の発生寿命を長くすることよりも、疲労亀裂の進展速度を遅くすることに重点が置かれている。【0005】鋼材の疲労亀裂進展速度(da/dN)は、従来、対象とする鋼材に繰り返し荷重を加え、特定の繰り返し負荷数の後に新たに成長した疲労亀裂長さ(以下、「亀裂成長長さ」といい、同じ意味で「亀裂成長量」、「亀裂進展量」を使うこともある)を、前記繰り返し数で除すことによって、繰り返し荷重1回あたりの疲労亀裂進展量として直接測定されてきた。その際、亀裂先端の力学条件が繰り返し荷重を加える前後で大きな変化を生じないようにすることが重要になる。このため、ASTM規格などの材料試験規格においては、亀裂成長長さの上限値を規定して疲労亀裂進展試験前後での応力拡大係数の大きな変動を規制し、更に、亀裂長さの測定精度を確保する観点から、亀裂成長長さの下限値をも規定することが行われている。一般に、亀裂先端の力学状態を表すために線形弾性破壊力学に基づく下記 (3)式で表される応力拡大係数がパラメータとして常用されているが、 (3)式から明らかなように、応力拡大係数は応力に線形比例して増大し、亀裂長さとともに増大してしまう。したがって、疲労亀裂の進展試験を一定荷重下で実施すれば、亀裂の進展に伴って応力拡大係数は漸増することとなる。このために、亀裂成長長さの上限値の規定が必要となるのである。【0006】K=α・σ・a0.5 ・・・ (3)。ここで、Kは応力拡大係数、αは無次元の定数、σは応力、aは亀裂長さである。【0007】前記従来の疲労亀裂進展試験の場合には、被験材、つまり評価しようとする鋼材に対して一定繰り返し数の荷重を加えて疲労亀裂成長量を直接測定するので、その評価精度は極めて高くなる。しかし、評価には極めて多大の労力と時間を要してしまう。【0008】以下、疲労亀裂進展速度(da/dN)が2×10−6mm/サイクルの場合を例に挙げて計算する。【0009】前記の疲労亀裂進展速度を評価するに当たり、移動式顕微鏡によって信頼性高く且つ精度良く測定できる疲労亀裂成長量の最小値は0.5mmと考えられる。この状況下では被験材に対し繰り返し荷重を少なくとも、(0.5mm)/(2×10−6mm/サイクル)=250000サイクル負荷する必要がある。疲労試験の繰り返し速度は、試験機の能力、試験機と試験片とからなる全体構成の応答性などに支配されるが、仮に標準的な値の10Hzで試験すれば、250000サイクル負荷するのに25000秒(約7時間)も要してしまう。【0010】つまり、縦軸に疲労亀裂進展速度(da/dN)をとり、横軸に応力拡大係数範囲(ΔK)をとったグラフ上に1つの点をプロットするだけで約7時間もの時間が必要となる。このように、従来の疲労亀裂進展試験には極めて多大の時間と労力とが必要である。【0011】【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記した現状に鑑みなされたもので、その目的は、鋼材の疲労亀裂進展速度を、迅速に効率よく評価する方法を提供することである。【0012】【課題を解決するための手段】本発明の要旨は、下記(1)及び(2)に示す鋼材の疲労亀裂進展速度評価方法にある。【0013】(1)鋼材に±ε%の予歪をNサイクル負荷した後の延性亀裂進展抵抗をR曲線で評価し、そのR曲線を下記 (1)式で規定されるCTODで表すことを特徴とする鋼材の疲労亀裂進展速度評価方法。【0014】(CTOD)=C×(Δa)n ・・・(1)、ここで、CTODはmm単位での亀裂先端開口変位、Δaはmm単位での延性亀裂成長長さ、Cは係数、nは指数を表す。【0015】(2)鋼材に±2%の予歪を20サイクル負荷した後の延性亀裂進展抵抗をR曲線で評価し、そのR曲線を下記 (2)式で規定されるCTODで表すことを特徴とする鋼材の疲労亀裂進展速度評価方法。【0016】(CTOD)=C×(Δa)0.7 ・・・(2)、ここで、CTODはmm単位での亀裂先端開口変位、Δaはmm単位での延性亀裂成長長さ、Cは係数を表す。鋼材に±ε%の予歪をNサイクル負荷するとは、弾性歪と塑性歪の和で、引張側にε%の変形を与えた後、圧縮側にε%の変形を与えて残留歪がない状態に戻す負荷を1サイクルと計数し、このサイクルをN回繰返すことをいう。したがって、鋼材に±2%の予歪を20サイクル負荷するとは、引張側に2%の変形を与えた後、圧縮側に2%の変形を与えて残留歪がない状態に戻す負荷を1サイクルと計数し、このサイクルを20回繰返すことを指す。【0017】以下、鋼材に±ε%の予歪をNサイクル負荷する予歪履歴を「±ε%×Nサイクル」と表示することにする。したがって、鋼材に±2%の予歪を20サイクル負荷する予歪履歴の場合は「±2%×20サイクル」と表わす。【0018】なお、「R曲線」とは安定破壊抵抗曲線(fracture resistance(R)curve)を、「CTOD」とは亀裂先端開口変位(Crack Tip Opening Displacement)をそれぞれ指す。【0019】以下、上記の(1)、(2)に記載のものをそれぞれ(1)の発明、(2)の発明という。【0020】【発明の実施の形態】本発明者らは、前記した課題を達成するために鋼材の疲労破壊現象と疲労亀裂進展挙動に関して詳細な観察を行い、下記の知見を得た。(a)疲労破壊は構造物の破壊原因として大きな比率を占める。これは構造物に作用している応力が弾性範囲内の低応力であっても、極めて局所的な破壊である疲労破壊が発生し得るためであり、従来行われているように、疲労破壊は疲労亀裂の発生過程とその後の疲労亀裂の進展過程とに分離することができる。【0021】(b)疲労亀裂は極めて大きな歪集中率を持つ、歪集中源と見なすことができ、この歪集中源に起因する歪分布によって、鋼材全体の平均的な歪が十分弾性範囲内にあっても、亀裂の前方には極めて大きな歪が発生しており、しかも、この大きな歪は外力の繰返しに伴い繰返し発生する。【0022】(c)疲労亀裂は上記のような繰返し歪を受けた領域内を進展する。したがって、疲労亀裂進展特性を評価するための鋼材は、歪の負荷履歴を持たない鋼材(つまり、受入れままの鋼材)ではなく、繰返し予歪を受けた後の鋼材である。【0023】(d)疲労亀裂先端における歪量は、外力に応じて変化するものの、一般に数%程度である。【0024】(e)鋼材の着目している領域に疲労亀裂が浸入してくるまでの負荷の繰返し数は、その領域の亀裂先端からの距離及び疲労亀裂進展速度によって変動するが、概ね数百回の程度である。【0025】(f)疲労亀裂進展によって形成された疲労破面には、ストライエーションと呼ばれる規則正しい特徴的な破面形態が認められ、このストライエーションの間隔は、繰返し荷重1回当たりの疲労亀裂進展量、つまり疲労亀裂進展速度に対応する。【0026】(g)湿潤硫化水素環境などの特殊な腐食環境を除けば、上記のストライエーションは通常「延性ストライエーション」であり、延性ストライエーションが形成されるということは、繰返しの延性破壊が負荷サイクル毎に発生していることである。但し、疲労亀裂進展時の延性破壊による亀裂進展量は、一般に行われている延性破壊試験で観察される延性亀裂進展量に比べて小さく、その10万分の1程度になっている。【0027】(h)疲労亀裂の進展抵抗性に優れた鋼材は、疲労亀裂先端に相当する繰返し予歪を受けた後においても十分な延性破壊抵抗を示す。疲労亀裂進展挙動は、極めて微小な亀裂進展量の延性破壊の連続と見なすことができるので、繰返し予歪後の延性破壊抵抗性と疲労亀裂進展速度との間に強い相関がある。本発明は、上記の知見に基づいて完成されたものである。疲労亀裂先端では大きな歪を受けて塑性変形領域になっているが、鋼材の大部分は弾性範囲内にある。したがって、既に述べたように、亀裂先端の力学状態を表わすために、線形弾性破壊力学に基づく前記 (3)式で表される応力拡大係数(以下、K値という)がパラメータとして常用されており、K値は外力と亀裂長さによって一義的に決定される。したがって、亀裂長さの成長量(すなわち、変化量)が無視できるほど小さな場合には、外力によってK値を制御することができる。そのため、疲労亀裂進展試験は、疲労亀裂進展量に注意して疲労亀裂長さの変化がK値に影響しない範囲で荷重制御して、繰返し負荷を与えることによって行われる。【0028】上記疲労亀裂進展試験における荷重を縦軸にとり、横軸には、例えば、亀裂を挟むように設置したゲージ長さに対する伸びをとると、疲労亀裂進展試験中には図2に示すようなヒステリシスが形成され、このヒステリシスに囲まれた領域は、負荷サイクル毎に鋼材に投入されたエネルギと見なすことができる。【0029】このエネルギは鋼材側では破面の形成エネルギ、つまり、延性破面形成エネルギとして消費され、鋼材の場合は同一のK値に対してほぼ同じヒステリシスが形成される。つまり、鋼材側に投入されるエネルギはK値によってほぼ一義的に決まる。そこで、鋼材の疲労亀裂進展速度を抑制させるためには、投入されたエネルギが鋼材側で効率良く消費されることが重要になる。【0030】疲労亀裂進展速度に着目して上記関係を見直すと、外力によって投入されたエネルギを鋼材側で効率良く消費するとは、疲労亀裂進展により新しく生成した破面でエネルギを効率良く消費することである。このエネルギを効率良く消費するということは、同じエネルギをより短い亀裂進展量で消費すること、つまり、単位面積当たりでより多くのエネルギを消費することである。なお、通常の疲労亀裂進展試験では試験片の幅は一定であり、したがって、単位亀裂進展量当たりでより多くのエネルギを消費することである。【0031】鋼材を初めとする材料の延性破壊時のエネルギ消費に関しては、数mmオーダーの亀裂成長量に対してASTM規格やBSI規格にR曲線が規定されている。【0032】そこで、本発明においては、疲労亀裂進展特性の観点からは、亀裂進展量が10万分の1程度と小さくなるものの、各種規格で規定されて比較的試験方法が確立しているR曲線法を採用した。【0033】R曲線を測定する具体的な方法は次のとおりである。【0034】▲1▼疲労亀裂を破壊発生の予亀裂として導入した試験片に対し、適切な量の外力を与え、その後除荷する。【0035】▲2▼除荷後の試験片を強制破断し、次いで、破面を観察して外力によって成長した延性亀裂成長量を測定し、破壊力学パラメータと亀裂成長量との関係を各試験片毎にプロットする。【0036】▲3▼本発明においては、上記の破壊力学パラメータとしてCTODを採用する。このCTODは、例えば図3に示すような荷重−変位曲線が1つの試験片から採取された時、下記 (4)式に示す日本溶接協会の規格(WES1108−1995)に基づいて計算すればよい。なお、図3は、3点曲げ破壊試験片を用いた延性亀裂進展試験における荷重と亀裂縁開口変位(つまり、亀裂縁に設置した伸び計の出力)の測定例を示すものである。【0037】(CTOD)={K2(1−ν2)/(2σyE)}+{rp(W−a0)Vp}/{rp(W−a0)+a0 +z}・・・・(4)。【0038】ここで、Kは応力拡大係数(MPa・m0.5)、νはポアソン比、σyは降伏応力(N・m−2)、Eはヤング率(N・m−2)、rp は回転係数(0.4とする)、Wは試験片の幅(mm)、a0 は初期亀裂の長さ(mm)、Vp は伸び計によって計測された亀裂縁開口量の塑性成分(mm)、zは伸び計取付けのナイフエッジ高さ(mm)である。【0039】上記の応力拡大係数KはPを試験終了時の荷重(N)、Bを試験片の厚み(mm)として、下記(5)〜(7)式によって表される。【0040】K=Y{P/(BW0.5)}・・・(5)、Y=4(2.9α0.5−4.6α1.5+21.8α2.5−37.6α3.5+38.7α4.5)・・・(6)、α=a0/W・・・(7)。【0041】なお、破壊力学パラメータと延性亀裂成長量との関係は原点を通る滑らかな曲線となることが知られている。【0042】そこで、引張強度が350〜650MPaレベルの各種鋼材について、破壊力学パラメータとしてCTODをとった場合のR曲線を測定した。一例として図4に、後述の実施例で用いた引張強度が550MPaレベルの鋼材(すなわち、鋼板No.が9−A、1−Cの鋼材)について、R曲線を測定した結果を示す。破壊力学パラメータとしてCTODをとった場合のR曲線を測定した結果、図4に示したように、各種鋼材のR曲線は 指数nを0.5〜0.9として (1)式で表される指数関数によって精度良く近似できることが明らかになった。なお、図4には指数nが0.7の場合のものを示す。【0043】疲労亀裂進展抵抗性を高めるためには、R曲線の接線の傾きが大きいこと、つまり、 (1)式や (2)式における係数Cが大きいことが好ましい。なお、疲労亀裂の進展抵抗性は繰返し予歪を受けた鋼材の延性破壊抵抗を測定する必要があるが、繰返し予歪を受けた後の延性破壊抵抗の変化量は一般に、鋼材に強く依存する。すなわち、繰返し予歪を受けて受入れままの状態からの転位の再配列が有利に行われた場合には延性破壊抵抗の減少は極めて小さい。一方、転位の再配列が不利な場合には繰返し予歪を受けると延性破壊抵抗の減少が大きくなる。【0044】なお、予歪後の延性破壊抵抗を測定する場合、延性破壊抵抗が予歪量の増大とともに減少し、ついには飽和状態となることから、鋼材に与える予歪波形も飽和状態とすることが必要である。【0045】そこで、予歪波形についての検討を行った。その結果、先ず、引張側にε%の変形を与えた後、圧縮側にε%の変形を与えて残留歪がない状態に戻す負荷を1サイクルと計数し、上記のサイクルをN回繰返す「±ε%×Nサイクル」の予歪履歴を与えた場合に、εとNの積であるε・Nの値を30以上とする必要があることが判明した。なお、疲労亀裂進展速度を迅速に効率よく評価するための予歪履歴は、εを0.5〜5%、Nを6〜100として、ε・Nの値が30以上となるように選びさえすればよい。そこで次に、疲労亀裂進展速度を迅速に効率よく評価するために、一例として「±2%×20サイクル」の予歪履歴を与えて検討した。その結果、引張側に2%の変形を与えた後、圧縮側に2%の変形を与えて残留歪がない状態に戻す負荷を1サイクルと計数し、上記のサイクルを20回繰返せば必要十分であることが判明した。以上、鋼材に「±ε%×Nサイクル」の予歪を負荷した後の延性亀裂進展抵抗をR曲線で評価し、そのR曲線を前記 (1)式で表されるCTODで表せば、その係数Cによって、鋼材の疲労亀裂進展速度を迅速且つ効率的に評価することができることから(1)の発明が得られた。又、鋼材に「±2%×20サイクル」の予歪を負荷した後の延性亀裂進展抵抗をR曲線で評価し、そのR曲線を前記 (2)式で表されるCTODで表せば、その係数Cによって、鋼材の疲労亀裂進展速度を迅速且つ効率的に評価することができることから(2)の発明が得られた。【0046】【実施例】以下、本発明の実施例として、「±2%×20サイクル」の予歪を負荷した後の延性亀裂進展抵抗をR曲線で評価し、そのR曲線を前記 (2)式で表されるCTODで表す場合を取り上げ、本発明を更に詳しく説明する。表1〜3に示す化学組成の鋼を通常の方法によって厚さ240mmのスラブに連続鋳造し、そのスラブに表4、表5に示す条件の熱間圧延と冷却を行い、厚さ25mmの鋼板を得た。なお、表4、表5中の鋼板No.における数字は表1〜3の鋼の番号に対応するものである。【0047】【表1】【表2】【表3】【表4】【表5】表4、表5に示す鋼板No.が1−A〜1−Fの50種の鋼板を用いて、延性亀裂進展抵抗をR曲線で評価し、そのR曲線を前記 (2)式で表されるCTODで近似した。その結果、近似式によるR曲線の予測量と実験によるR曲線の測定量との相関関係はいずれも0.95以上であり、いずれの鋼板についてもR曲線を (2)式で表されるCTODを用いることで、極めて精度よく近似できることを確認した。【0048】次いで、繰返し予歪によるR曲線の変化を、鋼板No.が1−A〜10−A及び40−A〜1−Fの21種の鋼板を用いて評価した。すなわち、繰返し予歪の波形として±2%の三角波(すなわち、弾性歪と塑性歪を合わせた全歪で+2%まで一定の歪速度で引張負荷した後に、圧縮側に上記と同じ一定の歪速度で負荷して残留歪が0%となる歪波形)を用いて、この波形を1〜30サイクル負荷した後のR曲線を測定し、予歪を受けていない鋼板を基準として (2)式における係数Cの変化を調査した。その結果、係数Cの変化には鋼板による相違が見られた。【0049】表6に、上記21種の鋼板の内で (2)式における係数Cが最も変化した鋼板No.2−Aの値を示す。【0050】【表6】表6から、予歪履歴の影響はサイクル数15で飽和していることが明らかで、サイクル数Nを20と規定する(2)の発明で十分であることが確認された。【0051】次に、表4、表5に示した鋼板No.が1−A〜1−Fの50種の各鋼板に対して「±2%×20サイクル」の予歪履歴を与え、延性亀裂進展抵抗をR曲線で評価し、そのR曲線を前記 (2)式で表されるCTODで近似した。表4、表5には、この時の (2)式における係数Cの値を併せて示した。【0052】前記50種の各鋼板については、ASTM規格(E647)に準拠した疲労亀裂進展試験も行った。試験片も上記のASTM規格(E647)に則った幅(W)が50mmで厚さ(B)が24mmの形状のCT試験片を疲労亀裂進展試験片として用い、荷重比R、すなわち「最小荷重/最大荷重」を0.1とし、繰返し速度を25Hzとした条件で、室温大気中環境における疲労亀裂進展試験を行った。【0053】一般に、疲労亀裂進展試験結果は下記 (8)式に示すParis則で近似できることが知られている。【0054】(da/dN)=Const.×(ΔK)m・・・(8)。【0055】ここで、(da/dN)は繰返し荷重一回当たりの亀裂進展量(mm/サイクル)、つまり、疲労亀裂進展速度である。Const.は定数を表す。又、ΔKは応力拡大係数範囲(MPa・m0.5 )であり、本実施例における疲労亀裂進展速度の比較は、20MPa・m0.5 で行った。【0056】疲労亀裂進展試験を行ったいずれの鋼板においても、上記 (8)式について、両対数グラフ上での直線の傾きはほぼ3.5であった。したがって、Paris則の指数mが鋼材によらず3.5であるとして、Paris則の定数Const.の値で亀裂進展速度の特性を表示し、表4、表5に併せて示した。【0057】図1に、延性亀裂進展抵抗をR曲線で評価し、そのR曲線を前記 (2)式で表されるCTODで表した時の係数Cと、疲労亀裂進展速度を表す前記 (8)式のParis則における定数であるConst.との関係を示す。図1から、前記した係数Cと定数Const.とは極めて良い相関関係を有し、したがって、 (2)式の係数Cから疲労亀裂進展速度が評価できることが明らかである。【0058】【発明の効果】本発明によれば、鋼材の疲労亀裂進展速度を迅速に効率よく評価できるので、繰り返し荷重が加わる各種の構造物や機械の強度健全性を確保する上で極めて有効である。【図面の簡単な説明】【図1】延性亀裂進展抵抗をR曲線で評価し、そのR曲線を (2)式で表されるCTODで表した時の係数Cと、疲労亀裂進展速度を表す (8)式のParis則における定数であるConst.との関係を示す図である。【図2】疲労亀裂進展試験時の荷重、変位で形成されるヒステリシスを示す図である。【図3】3点曲げ破壊試験片を用いた延性亀裂進展試験における荷重と亀裂縁開口変位(つまり、亀裂縁に設置した伸び計の出力)の測定例を示す図である。【図4】破壊力学パラメータとしてCTODを採用した時のR曲線の測定例を示す図である。 鋼材に±ε%の予歪をNサイクル負荷した後の延性亀裂進展抵抗をR曲線で評価し、そのR曲線を下記 (1)式で規定されるCTODで表すことを特徴とする鋼材の疲労亀裂進展速度評価方法。(CTOD)=C×(Δa)n ・・・(1)ここで、CTODはmm単位での亀裂先端開口変位、Δaはmm単位での延性亀裂成長長さ、Cは係数、nは指数を表す。 鋼材に±2%の予歪を20サイクル負荷した後の延性亀裂進展抵抗をR曲線で評価し、そのR曲線を下記 (2)式で規定されるCTODで表すことを特徴とする鋼材の疲労亀裂進展速度評価方法。(CTOD)=C×(Δa)0.7 ・・・(2)ここで、CTODはmm単位での亀裂先端開口変位、Δaはmm単位での延性亀裂成長長さ、Cは係数を表す。


ページのトップへ戻る

生命科学データベース横断検索へ戻る