タイトル: | 特許公報(B2)_差分走査熱量計 |
出願番号: | 2001076887 |
年次: | 2007 |
IPC分類: | G01N 25/20,G01K 19/00 |
ロバート エル.ダンレイ JP 3936846 特許公報(B2) 20070330 2001076887 20010316 差分走査熱量計 ティエー インスツルメンツ − ウォーターズ エルエルシー 501106791 古谷 栄男 100092956 松下 正 100101018 眞島 宏明 100101546 ロバート エル.ダンレイ US 09/533949 20000323 US 09/643869 20000823 US 09/643870 20000823 US 09/769313 20010126 20070627 G01N 25/20 20060101AFI20070607BHJP G01K 19/00 20060101ALI20070607BHJP JPG01N25/20 CG01K19/00 G01N 25/00 〜 25/72 JSTPlus(JDream2) 特開平07−092117(JP,A) 特表平10−504381(JP,A) S. M. Sarge,METROLOGICALLY BASED PROCEDURES FOR THE TEMPERATURE, HEAT AND HEAT FLOW RATE CALIBRATION OF DSC,Journal of Thermal Analysis,英国,John Wiley & Sons Limited,1997年 7月15日,Vol. 49 No. 2,p1125-p1134 8 2001330575 20011130 46 20020814 福田 裕司 【0001】【関連出願の表示】本明細書は、2000年3月23日出願の米国特許出願番号09/533,949(”949出願”)、2000年8月23日出願の米国特許出願番号09/643、870、2000年8月23日出願の米国特許出願番号 09/643,869(”869出願”)、および2001年1月26日出願の米国特許出願番号09/769、313からの優先権を主張する。【0002】【発明の背景】差分走査熱量計は、サンプル温度を制御変化させながらサンプルに与えられる熱流を測定する。DSCsには、主に熱流束(heat flux)およびパワー補償という二つの型式がある。以下に、この二つの型式のDCSに関して簡単な説明がなされる。DSCsの構成および原理の詳細については、G.ホーン、W.ヘミンガーおよびH.J.フラマーシェイム著(Springer-Velag:1996)”差分走査熱量測定:実務家のための入門”に述べられている。【0003】熱流束DSCは、分析対象であるサンプルに対する熱流を測定するセンサを含んでいる。このセンサは、サンプル位置および基準物位置を有している。また、当該センサは、所定の温度プログラムに基づきその温度が急激に変化するオーブン内に組み込まれている。当該オーブンが加熱または冷却されるにつれ、センサの前記サンプル位置と前記標準位置間の温度差が測定される。この温度差は、サンプルに対する熱流に正比例すると仮定される。【0004】パワー補償DSCは、恒温容器(constant temperature enclosure)に組み込まれるサンプルホルダおよび基準物ホルダを備えている。各ホルダは、ヒーターおよび温度センサーを有している。サンプルホルダおよび基準物ホルダの平均温度は、前記所定の温度プログラムに基づいた温度制御用に用いられる。更に、サンプルホルダと基準物ホルダ間の温度差をゼロへと減少させるため、前記ホルダ間の温度差に比例する差分パワーが、前記サンプルホルダ対する平均パワーに加えられ、前記基準物ホルダに対する平均パワーから減じられる。差分パワーは、サンプル熱流に正比例すると仮定され、サンプルホルダ温度と基準物ホルダ温度間の温度差を測定することにより得られる。市販のパワー補償DSCsにおいて、サンプル温度と基準物温度の差は、一般にゼロとはならない、なぜなら、差分パワーを制御するために比例制御器(proportional controller)が使用されているからである。【0005】熱流束およびパワー補償DSCsの双方において、被解析サンプルが保持皿に載置され、DSCのサンプル位置におかれる。通常、基準物保持皿は空の状態であるが、保持皿に不活性基準物(inertreference material)を載置し、DSCの基準物位置におくようにしてもよい。従来のDSC用の温度プログラムは、通常、線状の温度傾斜と定温域(constant temperature segments)との組み合わせを有している。変調DSC(modulated DSC)は、線状の温度傾斜と定温域上に周期的な温度振幅が重ね合わされる温度プログラムを用いる。実験結果は、サンプル熱流、対、温度又は時間である。熱流信号は、その固有の熱であり、サンプル内で発生する遷移の結果であるので、サンプルに対する、または、サンプルからの熱流の結果生じるものである。【0006】DSC実験の動的部分の実行中、DSCのサンプル位置と基準物位置との間に温度差が生じる。熱流束DSCsにおいて、サンプル熱流と基準物熱流間の差分、サンプルセンサ熱流と基準物センサ熱流との差分、およびサンプル保持皿熱流と基準物保持皿熱流との差分:の三つの差分熱流から温度差が生じる。パワー補償DSCsにおいては、サンプル熱流と基準物熱流間の差分、サンプルホルダ熱流と基準物ホルダ熱流間の差分およびサンプル保持皿熱流と基準物保持皿熱流間の差分:三つの差分熱流の組み合わせに加え、サンプルホルダに対して供給される差分パワーから温度差が生じる。サンプルと基準物間の熱流の差分は、サンプルと基準物間の熱容量差、遷移の熱流、又はMDSC実験中に起こる加熱レートの差が原因となり、熱流によって構成される。DSCsのサンプル部と基準物部間の熱流差は、センサの熱抵抗および熱容量の不均衡の結果またはホルダ間のそれら、およびサンプル遷移またはMDSC実験中にサンプル部と基準物部間で起こる加熱レート差である。同様に、サンプル保持皿と基準物保持皿間の熱流差は、保持皿間の質量差の積およびサンプル遷移またはMDSC実験の間に生じる加熱レートの差の結果生じる。【0007】従来の熱流束DSCsにおいて、センサー不均衡および皿不均衡は、些細なものと仮定され、加熱レートの差は無視されていた。従来のパワー補償DSCsにおいては、ホルダの不均衡および保持皿の不均衡は、些細なものと仮定され、サンプル遷移またはMDSC実験の間に生じる加熱レートの差は無視されていた。均衡であるという仮定が充足されるとともに、サンプル加熱レートがプログラムされた加熱レートと同じであれば、温度差はサンプル熱流に正比例し、かかる差分温度によりサンプル熱流を正確に測定することが可能となる。サンプルと基準物の加熱レートが同じであり、センサが完璧に対称であり、保持皿の質量が同じである場合、かかるサンプル熱流は、測定されたサンプルと基準物間の温度差のみに正比例する。機器が一定の加熱レートで動作し、サンプル温度が機器と同じレートで変化しており、さらに、サンプル内で遷移が発生していない場合に限り、均衡するセンサおよび保持皿のための温度差に対するサンプル熱流の比例性が、実験の一部の間だけに発生する。変調DSC実験の間、サンプルおよび基準物の加熱レートは、通常、同じでなく、測定されたサンプル温度と基準物温度間の差分は、前記サンプル熱流に比例しない。【0008】したがって、従来のDSCからのサンプル熱流は、実際のサンプル熱流ではないが、不均衡の効果および加熱レートの差を含んでおり;すなわち、DSCサンプル熱流測定は、不鮮明(smeared)である。大部分のDSC実験では、不鮮明なサンプル熱流でも十分正確な結果を導き出す。例えば、所望の実験結果が、融点の融解熱量のような遷移の総エネルギーであった場合、ピーク領域のエネルギー総和は、適切なベースラインに渡って積分され、従来のDSCの結果は、十分正確である。しかしながら、もし、前記ピーク領域の一部の積分が要求されると(例えば、反応速度論の研究(in the study of reaction kinetics)における)、従前のDSCの不鮮明なサンプル熱流を用いることはできない。従前のDSCsの結果が不十分な場合の他の例としては、短い温度間隔内で2以上の遷移が生じる場合である。この場合、不鮮明さの影響(smearing effects)により、従前のDSCsでは遷移を十分に分割することができない。本発明によって解析能を改良することにより、近傍に位置する遷移を明確に分離することができる。いずれにしても、従前のDSCsからの熱流信号は、遷移中のサンプル熱流を正確に描くことができない。【0009】遷移中、サンプルに与えられる熱流は、その遷移が発熱を伴うまたは吸熱するかにより、および、DSCが加熱されているか冷却されているかによって、遷移前の値から増加又は減少する。サンプル熱流の変化により、サンプルの加熱レートとDSCのそれとが相違するようになり、その結果、サンプル保持皿およびセンサ加熱レートとプログラムされた加熱レートとが相違するようになる。【0010】[熱流束DSCs]図1は、ある熱流束DSCセンサにおいて熱流束を表わすために用いられる熱ネットワークモデルを示している。Toは、オーブンへの接続部分の近傍にある前記センサのベースにおける温度であり、Tsは、センサのサンプル位置の温度であり、Trは、センサの基準物位置の温度である。RsおよびRrは、センサのベースと、サンプル位置および基準物位置間の熱抵抗をそれぞれ表わしている。CsおよびCrは、センサのサンプル部分および基準物部分の熱容量を表わしている。熱容量は、質量および比熱の積であり、本体の蓄熱容量の測定値、すなわち本体の熱容量、である。サンプルおよび基準物に与えられる熱流は、それぞれqsおよびqrである。qsおよびqr は、サンプル保持皿および基準物保持皿に与えられる熱流を含んでいることを理解しなければならない。熱プログラムの実行中、センサのベース温度To は、当該熱プログラムにしたがっている。サンプル位置および基準物位置における温度Ts およびTrは、サンプルおよび基準物に流れる熱およびセンササンプル熱容量Cs およびセンサ基準物熱容量Cr で表わしたセンサ内に蓄積される熱の分だけベース温度To を遅らせる。【0011】センサのサンプル側で熱流平衡を実施すると次式の熱流が導かれ:前記センササンプル熱抵抗Rrを通じてCrとして蓄えられた熱を減じる。同様に、センサの基準物側での熱平衡を実施すると次式が導かれる:前記センサ基準物熱抵抗Rs を通じてCsとして蓄えられた熱を減じる。この式において、τは、時間を示している。【0012】求める数値(サンプルに与えられる熱流と基準物に対するそれとの差分)は、サンプル熱流と基準物熱流間の差分である:qsおよびqrを代入すると次式が導かれる:以下の式を差分走査熱量計の二つの温度差に代入すると次の通りである:式(6)ここで、ΔTは、サンプルと基準物間の温度差であり、ΔTo は、サンプルとセンサのベースのある位置間の温度差であり、これにより、以下のDSC熱流式が導かれる:熱流束DSCs用として、DSC熱流式は四つの項を有する。第一の項は、センササンプル熱抵抗とセンサ基準物熱抵抗間の差の影響である。第二の項は、従来のDSC熱流に相当する。第三の項は、センササンプル熱容量とセンサ基準物熱容量間の差の影響に相当する。第四の項は、サンプルの加熱レートとDSCの基準物側の加熱レート間の差の影響を反映している。従来、この式がDSC熱流に適用された場合、RsおよびRrは等しいと仮定され、CsおよびCrも等しいと仮定されるので、第一と第三の項はゼロとなる。【0013】しかし、実際には、製造上の誤差および熱交換工程のばらつきにより、サンサは完全に均衡にならない。この不均衡により、ベースライン熱流(baseline heat flow)のずれが大きくなってしまうこともある。四つの項の熱流等式の第一および第三項が、それぞれ熱抵抗および熱容量の不均衡に相当する。第四項は、サンプルにおいて遷移が生じた場合、(例えば、融解中)または変調DSC実験中を除き、通常、ほぼゼロに近い値である。遷移にかかる合計エネルギー得るため、通常、熱流信号は、遷移領域にわたって積分される。なぜなら、第四項は、遷移領域を導き出しておらず、従来技術においては、これを無視していたからである。しかし、遷移中に熱流曲線の形状をはっきりと浮かび上がらせることもできる。したがって、第四項を含めることにより、熱流曲線の動特性が向上する。また、G.ホーン、W.ヘミンガーおよびH.J.フラマーシェイム著(Springer-Velag:1996)”差分走査熱量測定:実務家のための入門”に述べられているように、遷移ピークの部分積分がなされた場合(例えば、純度測定のための力学検査(kinetic investigations)が実行された場合)に、第四項を無視することはできず、考慮に入れなければならない。第四項を含めると、融解の開始はより明確になり、遷移完了後のベースラインへの復帰は、さらに迅速なものとなる。【0014】なぜなら、DSCの分解能は、短い温度間隔でサンプル内で起こる遷移を分離するそれ自身の能力だからであり、その能力は、遷移完了後にいかに早く熱流信号が減衰するかによって決定される。DSC熱流式に第四項を含めることにより、遷移完了後の熱流信号のベースラインへの復帰速度を早め、DSCセンサの分解能を向上させる。【0015】熱流束DSCs用の四つの項の熱流等式は、差分走査熱量測定の分野では、長い間知られてきた。この等式は、特定の基準を満たす熱流束DSCセンサだけに適用することが可能である。かかるセンサの構造は、センサの動的熱動作を正確に表わす熱ネットワークモデルのようなものでなければならない。理想的には、センサのサンプル位置および基準物位置は、完全に独立していなければならず、すなわち、サンプル側で起こる遷移は基準物温度に何らの影響をあたえるものであってはならない。サンプル温度および基準物温度が独立しておらず、四つの項の熱流等式がセンサの動的熱動作を正確に表わしていないので、通常、ウーに対する米国特許番号第4,095,453、ジョンソンに対する同特許番号第4,350,446、ケール等に対する同特許番号第5,033,866及びシェーファー等に対する同特許番号第5,288,147に開示されている熱流束DSCセンサに、四つの項の熱流等式を用いることができない。【0016】従来技術における熱流束センサの独立性を示す定量的測定値は、簡単な実験により求めることができる。仮に、インジウムのサンプルが、例えばウーに対する米国特許番号第4,095,453に開示された従来のセンサの基準物位置に載置され、当該サンプルが融点にかかるよう加熱されると、代表的な実験におけるサンプル位置において測定される温度ずれは、インジウムサンプルがサンプル位置に載置された場合に得られるであろう温度ずれの13.4%となる。理想的な機器であれば、かかるずれはゼロになるはずである。【0017】中村等に対する米国特許番号第5,599,104は、二つの温度差測定値を用いる熱流束DSCセンサを開示する。しかし、これらの測定値は、異なる熱流等式を用いた異なる方法により適用されており、差分温度測定値の構成(configuration)は、四つの項の熱流等式に対して使用するのに不適切である。特に、中村において測定される二つの温度差分が四つの項の熱流等式に対して使用するのに不適切であるため、中村には四つの項の熱流等式を用いることが出来ない。【0018】[パワー補償DSCs]図2は、パワー補償DSCsのある構成を表わすために用いることができる熱ネットワークモデル(thermal network model) を示している。Toは、サンプルホルダを取り囲む恒温容器(isothermal enclosure)の温度であり、Tsは、サンプルホルダの温度であり、Trは、基準物ホルダの温度である。RsおよびRrは、熱量計のサンプルおよび基準部分の熱抵抗をそれぞれ表わしている。CsおよびCrは、熱量計のサンプル部および基準部分の熱容量をそれぞれ表わしている。熱容量は、質量および比熱の積であり、本体の蓄熱容量の測定値である。サンプルならびに基準物およびこれらの保持皿に与えられる熱流は、それぞれqsおよびqrとして表わされる。サンプルホルダおよび基準物ホルダに与えられるパワーは、それぞれPsおよびPrとして表わされる。熱プログラムの実行中、恒温容器の温度Toは、一定に保たれる。平均加熱レートを維持しつつサンプルホルダおよび基準物ホルダ間の温度差を制御するため、サンプルパワーpsおよび基準物パワーprがサンプルホルダおよび基準物ホルダに与えられる。サンプルホルダ上で熱平衡を実施すると次式が導かれる:同様に、基準物ホルダ上で熱平衡を実施すると次式が導かれる、【0019】求める数値は、サンプル熱流と基準物熱流との差分である:qsとqrに代入すると次式が導かれる:以下の式を上記熱流式に代入する:この結果、次のパワー補償DSC熱流式が導かれる:本等式の第一の項は、サンプル位置に与えられるパワーと基準物位置に与えられるパワーの差分である。第二の項は、サンプルホルダの熱抵抗と基準物ホルダの熱抵抗との差分に相当する。第三の項は、サンプルと基準物間の温度差から生じる熱流に相当する。第四の項は、サンプルホルダと基準物ホルダ間の熱容量の不均衡に起因する熱流である。第五の項は、サンプルホルダと基準物ホルダ間の加熱レートの差分により生じる熱流を反映している。なお、従来技術においては、本式が用いられておらず、その代わりに、以下のきわめて単純な式が用いられているに過ぎない:ここで、kは、温度に依存する比例定数である。本式は、サンプルホルダと基準物ホルダ間の不均衡の影響(上記熱流式の第二および第四項)だけでなく、サンプルホルダと基準物ホルダ間の加熱レートの差分を示す第五の項をも含んでいない。本質的に、従来技術においては、DSCは完全に均衡状態にある、すなわち、Rs=RrでありCs=Crであると仮定されている。しかし、実際には、サンプルホルダと恒温容器間および基準物ホルダと恒温容器間の製造上の誤差および熱交換工程のばらつきにより、通常、不均衡が生じる。これらの不均衡により、ベースライン熱流(baseline heat flow)のずれが大きくなってしまうこともある。【0020】第五項は、サンプルにおいて遷移が生じた場合、例えば、融解中を除き、通常、ほぼゼロに近い値である。遷移にかかる合計エネルギー得るため、通常、遷移熱流信号(transition heat flow signal)は、適切なベースラインに渡って積分される。第五項の遷移に渡る積分値は、ゼロであるため、従来技術においては、これを無視していた。しかし、遷移中に、熱流曲線(heat flow curve)を形成するために大きく貢献するであろう。したがって、第五項を含めることにより、機器の動特性が向上する。また、上記で参照したホーン等に記載の通り、この項は、遷移ピークの部分積分がなされた場合(例えば、純度測定のために力学検査(kinetic investigations)が実行された場合)を、考慮しなければならない。第五項を含めると、遷移完了後のベースラインへの復帰は、さらに迅速なものとなる。なぜなら、DSCの分解能は、短い温度間隔においてサンプル内で起こる遷移を分離するそれ自身の能力だからであり、その能力は、遷移完了後にいかに早く熱流信号が減衰するかのみによって決定される。DSC熱流式に第五項を含めることにより、遷移完了後の熱流信号の減衰レートを上昇させ、DSCの分解能を向上させる。【0021】【発明の概要】本発明は、サンプル熱流および基準物熱流を独立して測定することができ、サンプルホルダと基準物ホルダ間の加熱レートの差分およびサンプルと基準物間(もし、基準物が用いられていれば)の加熱レートの差分を表わす熱流束又はパワー補償DSCsのいずれにも適用可能である。図1および図2は、それぞれ熱流束DSCsおよびパワー補償DSCs用の熱ネットワークモデルを示す略図である。【0022】[熱流束DSCs]熱流束DSCsの場合、本発明は、一の絶対的温度測定値および二つの差分温度測定値に基づきサンプルに与えられる差分熱流を測定する。本発明の差分走査熱量計は、従来の機器で得られるものよりも更にゼロに近い空のセルに対する熱流を用いることにより、従来の機器を超え、分解能が著しく向上する。【0023】[温度測定値]本発明においては、センサのベースの絶対的な温度の測定値、サンプル位置とセンサのベース間の差分温度およびサンプル位置と基準物位置間の差分温度からサンプルに与えられるもの基準物に対するそれとの差分熱流を算出している。かかる差分温度は、サンプル温度測温体(例えば、サンプル領域測温体)、基準物温度測温体(例えば、基準物領域測温体)およびベース温度測温体を用いて測定される。【0024】オーブンの温度を制御するため、ベース温度測温体(オーブンへの接続部分の近傍にある前記センサのベースにおける温度を測定する)が用いられる。サンプル温度は、サンプル温度とベース温度間の差を測定し、かかる差をベース温度から減じることにより測定される。すなわち、サンプル温度は、Ts=To-ΔToによって得られる。一の絶対的温度測定値Toおよびベース位置とサンプル位置間の差分温度測定値を測定することにより、温度センサの相違に起因する絶対的な温度測定値に関連するいかなる誤差をも除去することができる。このような構成により、恒温域におけるサンプル温度のずれを最小化することもできる。結果として得られた熱流信号は、ベースラインの性能をおよび動特性を向上させる。さらに、融解中には熱流信号が極めて大きくなるので、その間の熱量計の感度が非常に良好となる。【0025】本発明により構成された熱量計は、サンプル位置と基準物位置間での独立性を向上させる。例えば、従来の熱流束機器においては、インジウムのサンプルが基準物位置に載置され、当該サンプルが融点にかかるよう加熱された場合のサンプル位置の温度ずれは13.4%であったが、本発明を用いた代表的な実験における当該温度ずれは、1.4%に過ぎない。すなわち、本発明は、従来の機器と比べ、約一桁違う(about an order of magnitude)改良を実現する。インジウムサンプルを基準物位置に載置した場合のサンプル位置における温度ずれは、インジウムサンプルをサンプル位置に載置した場合のサンプル位置における温度ずれの約1.5%未満の温度ずれを示すので、本発明により構成されたセンサは、”実質的に独立”しているといえる。【0026】[校正]本発明の第一の好ましい実施形態において、本発明の差分走査熱量計を校正するには、二つの独立した実験が必要とされる。これらの実験により、四つのセンサ熱要素、Cs、(センササンプル熱容量)Cr (センサ基準物熱容量)Rs (センササンプル熱抵抗)およびRr(センサ基準部熱抵抗)が実験的に決定され、これにより熱流センサの校正が行なわれる。【0027】第一の実験は、空のDSCセルを用いて行なわれる。このDSCセルは、まずセンサの均衡を確保するのに十分な一定の時間だけ、校正温度域を下回る恒温に保たれる。次に、DSCセルは、校正温度域を上回るある温度にいたるまで一定の加熱レートで熱せられ、その温度でセンサの均衡を確保するのに十分な一定の時間だけ、さらに他の恒温域に保たれる。この第一の実験は、校正済温度にわたる温度の関数としてのサンプルおよび基準物の時定数を算出するために用いられる。【0028】サンプルのサンプル側の熱流均衡式は、以下の通りである:ここで、τは、時間を示しており、qsは、サンプルおよびサンプル保持皿に与えられる熱流であり、Rsは、センササンプル熱抵抗であり、Csは、センササンプル熱容量である。同様に、サンプルの基準物側の熱均衡式は、以下の通りである:ここで、qrは、基準物および基準物保持皿に与えられる熱流であり、Rrは、センサ基準物熱抵抗であり、Crは、センサ基準物熱容量である。【0029】サンプルに与えられる熱流および基準物に与えられる熱流はゼロとなるべきである(DSCが空なので)。その結果、もし、センサのサンプル側および基準物側の熱均衡式内のqsとqrがゼロに設定されれば、サンプルおよび基準物の時定数は、以下のようにそれぞれ求められる:およびここで、ΔT= To - Ts およびΔT=Ts - Trとなる。これらの結果は、温度の関数rとして記録される。【0030】第二の実験では、二の校正用サンプルを保持皿なしで用いる。この校正用サンプル同士は、同じ質量でも、異なる質量であってもよい。校正用サンプルは、サファイア試料(例えば、単結晶サファイアデイスク)であることが好ましく、質量が25mg以上であることが好ましい。また、前記校正温度域の範囲内で遷移せず、既知の温度特性を有するものであれば、サファイアの代わりに他の物質を用いることも出来る(この場合、Csapph は、以下の式においてCmatに書き換えられ、ここで、Cmatは他の基準物の比熱である)。【0031】熱均衡式から導かれるサンプル熱流および基準物熱流は、以下のように設定される:ここで、ms およびmr は、それぞれサンプルサファイアおよび基準物サファイアの質量であり、Csapph は、サファイアの比熱であり、Tss およびTrsは、サンプル温度および基準物温度である。【0032】以下のように仮定する:qs およびTss を、サンプル熱流式に代入し、Csについて、その式を解くと以下の通りである:qrおよびTrs を、基準物熱平衡式に代入し、Crについて、その式を解くと以下の通りである:サファイア(または他の既知の校正用材料)を用い、第一の実験において得られたDSCセルの時定数を用いて得られた第二の実験の結果は、さらに、サンプルセンサ熱容量および基準物センサ熱容量を算出するため、温度の関数として用いられる。最後に、時定数およびセンサ熱容量から、センササンプル熱抵抗および基準物熱抵抗が算出される:第二の好ましい実施形態は、第一の実施形態と同様であるが、第一の校正実験および第二の校正実験の両方において、サファイア(または既知の熱容量を有するとともに、当該温度範囲で遷移しない他の校正用材料)校正用サンプルを用いる。本実施形態のための校正等式およびそれらのずれを、以下に説明する。【0033】[パワー補償DSCs]差分走査熱量計に適用されたように、本発明は、機器をモデル化するために、差分温度測定値、一の温度測定値および五つの項の熱流等式を用いるパワー補償差分走査熱量計である。また、本発明は、五項の熱流等式への適用に必要とされる熱要素を決定する方法である。本発明を用いる差分走査熱量計は、空のDSCセルを流れる熱流がほぼゼロになり(したがって、ベースラインが改善される)、従来の機器を超え、分解能が著しく向上する。【0034】好ましい実施形態において、二の差分温度測定値は、熱抵抗Rsにわたる差分温度ΔTo 、およびサンプルホルダと基準物ホルダ間の差分温度ΔTである。サンプルホルダの温度の絶対な測定値およびサンプルホルダと基準物ホルダ間のパワーの差分(すなわち、基準物に与えられるパワーとサンプルに対するそれとの差分)も、測定される。また、四つの熱要素、Rs、Rr、CsおよびCrが既知でなければならない。この二の差分温度測定値を使用することにより、五つの項の熱流等式の五項全部を含む熱流モデルが使用できるようになる。結果として得られた熱流信号は、ベースラインの性能をおよび動特性を向上させる。特に、融解中には熱流信号が極めて大きくなるので、その間の熱量計の感度は非常によい。【0035】以下に説明するように、前記二の差分温度測定値に他の値を用いるようにしてもよい。【0036】本発明は、四つの熱要素、Cs、Cr、Rs、Rrを決定する方法を含んでいる。決定された熱要素は、DSCの熱流校正(heat flow calibration)の構成要素である。【0037】熱流の校正には、そこから前記四つの熱要素を算出することができる二つの実験が必要とされる。第一の実験は、空のDSCセルを用いて行なわれる。DSCプログラムは、所望の校正範囲の最低温度より低い恒温域(isothermal temperature segment)で始まり、次に、一定の加熱レートでの温度傾斜が続き、最後に、所望の校正範囲の最高温度より高い恒温域で終了する。前記加熱レートは、次の実験で用いられる加熱レートと同じでなければならない。第二の校正実験は、保持皿のないサンプルホルダおよび基準物ホルダ内に装着したサファイアの試料を用いて行われる。第二の実験には、第一の(空のDSC)実験で使用されたものと同じ熱プログラムが用いられる。この二つの校正実験およびそれらの実験に基づいた前記熱要素の計算について以下で詳細に説明する。【0038】[改良された計算方法]本発明は、差分走査熱量計によりサンプル熱流を算出するために、熱流束DSCsおよびパワー補償DSCsの両方において使用することのできる改良された計算方法も含んでいる。【0039】本発明の改良された計算方法を用いた差分走査熱量計は、従来のDSCにおいて現れる不鮮明さによる影響(smearing effects)をほぼなくし、DSC実験が行なわれている間のサンプル熱流を非常に正確に表わすサンプル熱流信号を供給する。この結果、本発明を用いたDSCsは、分解能が著しく向上する。例えば、本発明を用いると、ピーク領域の部分的積分を要求する力学分析(kinetic analysis)を実行することが出来るが、サンプル熱流信号が歪んでしまうので、部分積分を、従来のDSCsには用いることは困難である。【0040】この結果、サンプルに対する加熱レートと基準物に対するそれとが異なる遷移中のサンプル熱流をより正確に測定することが出来る。遷移完了後のベースラインへの復帰がさらに迅速なものとなるので、解析能が向上する。【0041】【詳細な説明】[熱流束DSCs][温度測定]図1aは、本発明にかかる熱流束DSCセンサの好ましい実施形態を示す全体図である。サンプルは、保持皿内に載置され、サンプルプラットホーム1上に設けられる。サンプルプラットホーム1は、ベース3に結合されている薄壁の円筒チューブ2に取り付けられた薄い平坦な円盤である。基準物は、保持皿内に載置され、基準物プラットホーム4上に設けられる。基準物プラットホーム4は、ベース3に結合されている薄壁の円筒チューブ5に取り付けられた薄い平坦な円盤である。これらのプラットホーム、複数のチューブおよびベース(アイテム1から5)は、コンスタンタン製のセンサ本体6と一体となっており、E型熱電対の負の素子である。センサ本体の薄壁の円筒チューブ2および5は、DSCセンサの熱抵抗RsおよびRrの決定のために重要な役割を果たす。ベース7の裏面は平面に構成されている。かかる面は、センサの取り付け面であり、DSCオーブンにセンサを取り付けるために用いられる。【0042】サンプル用の薄壁の円筒チューブ2および基準物用の薄壁の円筒チューブ5の代表的なものは、0.09インチの高さ、0.187インチの直径、および0.005インチの壁の厚みを有している。したがって、チューブの断面積そのもの(すなわち、チューブの円周とその厚み)は、約0.00284平方インチであり、アスペクト比(その断面積に対する円筒の高さの比率)は約31.5インチ−1となる。高い解析能および感度を得るには、アスペクト比が、25から35の範囲であることが好ましい。円筒の高さを、例えば0.3から0.5インチまで高くすることにより、センサの感度は、(解析能を犠牲にして)上昇する。また、円筒の高さを、例えば0.02から0.004インチまで低くすることにより、センサの分解能は、(感度を犠牲にして)高くなる。【0043】図1bは、サンプルプラットホームおよび基準物プラットホームの中心に対して垂直であり、それを通過する面に沿って見たDSCセンサ全体の断面図である。サンプル領域温度計8は、サンプルプラットホーム1の裏面に同心円状に溶接される。当該領域温度計は、E型熱電対の正の素子として構成されたクロメル製の薄い円盤状のものである。その中央は、クロメル線を溶接するよう凹部となっている。サンプル領域温度計8は、円パターンを形成する等間隔の16箇所においてサンプルプラットホーム1の裏面に溶接され、この円パターンは、サンプル領域温度計8およびサンプルプラットホーム1と同心円状である。したがって、コンスタンタン製サンプルプラットホーム1とサンプル領域温度計8間には、16個の熱電対接点が並列に形成されている。【0044】基準物領域温度計10は、基準物プラットホーム4の裏面に同心円状に溶接される。当該基準物領域温度計10は、E型熱電対の正の素子として構成されたクロメル製の薄い円盤状のものである。その中央は、クロメル線を溶接するよう凹部となっている。基準物領域温度計10は、円パターンを形成する等間隔の16箇所において基準物プラットホーム4の裏面に溶接され、この円パターンは、基準物領域温度計10および基準物プラットホーム4と同心円状である。したがって、コンスタンタン製基準物プラットホーム4と基準物領域温度計10間に、16個の熱電対接点が並列に形成される。E型熱電対12は、ベース3の頂面中央に溶接される。リード線13は、クロメルであり、リード線14は、E型熱電対のコンスタンタン素子である。【0045】図1cは、電圧ΔTo、TsおよびΔTで表わされる電圧がどのようにして測定されるか、を示す熱電対構成を表わす図である。(+)記号は、クロメルリード線および領域温度計を示している。(−)記号は、コンスタンタ製センサ本体およびコンスタンタン製リード線を示している。図1cに示すように、サンプルと基準物間の差分電圧ΔTを表わす電圧は、クロメルリード線9とクロメルリード線11間で測定される。サンプルとベース間の差分電圧ΔTo を表わす電圧は、クロメルリード線9と13間で測定される。本願明細書内に、説明のため引用された米国特許番号第4,095,453に記載されているように、領域温度計8と10、サンプルプラットホーム1と基準物プラットホーム4との間に16個並列接合されたそれぞれの熱電対によって、サンプルプラットホームと基準物プラットホーム間の平均温度の測定が可能となる。また、領域温度計8は、サンプルプラットホームとセンサ本体での間の温度差の測定を可能にする。領域温度計およびそれに関連する並列熱電対は、保持皿の位置ずれおよび保持皿とセンサ間の接触抵抗が異なることに起因するセンサに及ぼす影響を低減するため、ΔTおよびΔTo の測定値の感度を低下させる。E型熱電対12は、To 、すなわちセンサのベースにおける温度の測定に用いられる。図1cに示すように、この温度を示す電圧は、リード線13、14間に現れる。リード線9と14との間に現れるTs を表わすサンプル温度は、To およびΔTo を表わす電圧を組み合わせることにより得られる。好ましい実施形態は、コンスタンタンとクロメルという熱電材料の組み合わを用いた構成を開示しているが、当業者であれば、同じ測定値を得、同じ結果を得るために他の熱電対を用いることを理解するであろう。【0046】また、当業者であれば、同じ結果を得るため、四つの項の熱流等式に若干の変更を加えたものを、単一の測定値および二の差分測定値とともに用いた他の構成が存在することも理解するであろう。 温度測定値としては:サンプルプラットホーム温度Ts、基準物プラットホーム温度Trおよびセンサベース温度To:の三つの選択枝がある。当該選択肢のいずれか一つと、前記差分温度測定値の三つの選択枝のうちいずれか二つを組み合わせても同じ結果が得られる。したがって、好ましい実施形態において、ベース温度To は、サンプル温度Tsは、差分温度測定値To-TsおよびTs-Trとともに絶対的な温度測定値として用いることができる。当該ベース温度To は、To-TsおよびTo-Tr又は、Ts-Trおよび To-Trとともに用いることもできる。基準物温度Tr は、差分温度測定値Ts-TrおよびTo-Tr、又はTo-TrおよびTo-Ts又は、Ts-Trおよび To-Tsとともに絶対的な温度測定値として用いることができる。サンプル温度Tsは、To-TsおよびTs-Tr、To-TsおよびTo-Tr又は、To-Trおよび Ts-Trとともにとともに絶対的な温度測定値として用いることができる。【0047】したがって、四つの項の熱流等式が適宜書き換えられるのであれば、同じ情報を導き出すことができる8つの構成が加わる。これら可能性のある9つ全部の構成は、本発明の範囲内である。【0048】[センサの熱要素を決定する第一の好ましい方法]センサは使用前に校正されるのが好ましい。当該センサは、熱要素、Cs、Cr、Rs、Rrの値を決定することにより校正される。【0049】上述のように、本発明の第一の好ましい実施形態において、センサは、空のDSCを用いた第一の実験、およびサンプル位置に保持されたサファイア試料および基準物位置に保持された他のサファイア試料を用いた第二の実験、の二の連続した実験を実行することにより校正される。前記サファイア試料は、少なくとも25mgであることが好ましい。【0050】前述のように、第一の実験用には、校正範囲の最低温度より低い恒温域(isothermal temperature segment)で始まり、次に、一定の加熱レートでの温度傾斜が続き、最後に、前記校正範囲の最高温度より高い恒温域で終了する熱プログラムが、空のDSCセルに用いられる。前記加熱レートは、次の実験で用いられる加熱レートと同じであることが好ましい。この校正温度範囲は、次の実験の温度範囲と同じまたはそれを超えるものであることが好ましい。【0051】温度の関数であるサンプルの時定数は、次式によって得られ:また、基準物の時定数は、次式によって得られる:空のDSCセルを用いた実験から選られた結果は、時定数をサンプル温度の関数として算出し、記録するために用いられる。【0052】上述のように、第二の実験用として、一対の校正用サファイア試料がセンサのサンプル位置および基準物位置に載置される。次に、空のDSC実験に用いられた熱プログラムがDESCセルに適用される。【0053】前述のように、センサのサンプル熱容量は、次式で得られ:また、センサの基準物熱容量は、次式によって得られる:温度の関数としてサンプルセンサ熱容量値および基準物センサ熱容量値を算出するための空DSCセル実験が行なわれ、その実験によって得られた時定数が上式に用いられている。最後に、時定数およびセンサ熱容量からセンサ熱抵抗値が演算される:これらの熱容量値および熱抵抗値は、DSC熱流演算においてテーブル状データまたはポイント間の補完をするため、又は、データを多項式(polynomial)により表現するために用いられる。通常、熱容量および熱抵抗データは、スムーズかつ所定の動きをする(well-behaved)ので、低次な多項式に適用しても十分な精度を得ることができる。【0054】[センサの熱要素を決定する第二の好ましい方法]DSCセンサを校正する第二の好ましい方法は、サンプルを用いた二つの連続した走査を実行することにより行われ、いずれの走査にも、例えばサファイア試料を用いる。サンプルおよび基準物側の両試料の質量は、二回の走査で相違していなければならない。【0055】第一実験用について、試料の加熱レートは、センサのサンプル側および基準物側の加熱レートと同じであると仮定する。【0056】サンプル側について、熱流は、次式によって得られる:下付きの数字は、1回目および2回目の走査であることを表わしている。【0057】サンプル側の1回目および2回目の走査の熱平衡式は、以下の通りとなる:これらの熱平衡式を同時に解くと以下のようになる、基準物側ついて、熱流は、次式によって得られる:基準物側の1回目および2回目の走査の熱平衡式は、以下の通りとなる:上記のように、代入を行なうと、次式が導かれる:これらを同時に解くと以下のようになる:従って、サンプル側および基準物側において異なる質量の試料を用いた二回のDSC走査から得られた結果を用いることにより、センサの熱要素を計算することができる。なお、二つの校正実験のうち一つを空のDSCを用いて実行することも出来、いずれの場合もms およびmrはゼロであり、qsおよびqr もゼロ(これによって、第一の好ましい校正方法まで下降する。すなわち、第一の方法は、ms1=mr1=0とした場合の第二の方法の特別な例に過ぎない)こととなる。【0058】[DSC容器]DSCセンサは、DSCセンサを介し、サンプルプラットホームとDSC容器との間を流れる熱と、DSCセンサを介して基準物プラットホームとDSC容器との間を流れる熱との差分熱を測定する。しかし、気体の熱伝導、放射線交換(radiation exchange)及び対流により、少量の熱が直接サンプルプラットホーム、基準物プラットホームおよびDSC容器間を流れる。【0059】サンプルプラットホームとDSC容器間、および基準物プラットホームとDSC容器間を流れる副次的な熱は、測定されないので、差分熱流測定値の誤差の原因とはならない。但し、これは、基準物プラットホームから流れる副次的な熱がサンプルプラットホームから流れる副次的な熱と異なる場合に限られる。この誤差の大きさは、DSC容器内の温度ずれにより変化する。当該容器内において温度均一性が上昇すると、通常、副次熱は全体的に減少し、サンプルプラットホームからの熱と基準物プラットホームからの熱との差は減少する。【0060】特に、DSC容器の蓋は、容器(DSCセルの周囲と次々に熱を交換する)を取り巻く断熱材との間で熱交換を行ない、また、当該容器の本体と熱接触が悪い(簡単に取り外し可能になっている)ので、容器内での不均一性について重要な役割を果たす。したがって、蓋の温度は、容器本体の温度とは著しく異なっており、このような不均一性が前述した副次的な熱流の最も大きな原因である。【0061】図1dに示す本発明の好ましい実施形態において、DSC容器内の不均一性は、第一の蓋を内包するとともに、DSC容器本体に接触する第二の外蓋を追加することにより著しく低下する。本実施形態においては、容器を取り巻く断熱材と外蓋間で熱交換が行なわれる。これにより、DSC容器を介して流れる熱を根本的に無くし、本体とDSC容器の蓋間の温度差を非常に小さくするとともに、副次的な熱流を著しく減少させる。【0062】図1dは、DSCセルアセンブリの上部(下部は明確化のために省略している)にわたる断面図である。本発明のDSCセンサ101は、DSC容器の本体103の下表面102に取り付けられている。通常、当該センサは、センサと容器間に熱が容易かつ均一に伝達されるよう、容器にろう付けされている。保持皿104内の試料は、センササンプル位置105に保持され、保持皿106内の基準物(もし、基準物が用いられていれば)は、センサ基準物位置107に保持される。サンプル保持皿と基準物保持皿は、DSCセンサに直接接触しているので、これらとセンサ間の熱伝導は良好であり、これにより、サンプルおよび基準物に対するまたはこれらからのほぼ全ての熱はセンサを介して流れることが保証され、したがって、そこで測定される。DSC容器の中空部(cavity)108は、内蓋109によって密閉される。中空部108は、パージガス、通常、窒素(ヘリウム、またはアルゴンガス等の他のガスを用いることもできるが)により連続的に浄化される(purged)。【0063】中空部の本体は、一片の熱伝導率の高い素材(通常、銀)から構成されているので、その温度は非常に均一である。内蓋109は、単に容器本体103の表面112上に置かれているに過ぎないので、内蓋109と容器本体103間では熱交換がほとんど行なわれない。外蓋111は、内蓋109を完全に覆っており、表面112上で容器本体103の上に置かれている。DSC容器の上部全体を覆っているのは、本体113および、サンプルおよび基準物を載置、その取り出しをするためにDSC容器の前記内蓋および外蓋の取り外しができる取り外し可能な蓋114、を備えた断熱材である。【0064】[改良された計算方法]上述で説明した本発明および前記’949出願で説明した熱流束DSCセンサは、図1に示すサンプル部および基準物部用の熱抵抗および熱容量を用いてモデル化することができる独立したサンプル測定部および基準物測定部を備えている。熱抵抗素子および熱容量素子は、センサを理想化したものであり、センサの熱動作を簡単な数式により表わすことを可能にする。RsおよびRr は、熱抵抗であり、CsおよびCrは、センサのサンプル部分および基準物部分の熱容量を表わしている。To,Ts およびTr は、センサベースの温度、サンプル位置の温度および基準物位置の温度である。サンプル、その保持皿、基準物およびその保持皿に与えられる熱流は、それぞれqsおよびqrである。【0065】サンプルおよび基準物について熱平衡を実行することにより、以下の熱平衡式が得られる:上述で説明した本発明および前記’949出願においては、センサベースの温度To、センサベースの温度とサンプル位置温度との差、およびサンプル位置温度と基準物位置温度との差が測定される。この差分温度は次のように定義される:これを上記の熱平衡式に代入すると、次式が得られる:サンプル温度は、ΔToの定義から得られる、温度の関数としてのセンサの熱抵抗および熱容量は、上述および’949出願の校正方法を用いることにより得られる。校正によって得られた熱抵抗および熱容量を、DSC実験中に測定された温度および差分温度とともに用いることにより、サンプル熱流qsおよび基準物熱流qrを求めることが可能となる。’949出願および従来のDSCの発明で用いられたように、サンプル熱流および基準物熱流の差は、所望の結果となる。【0066】上述のように、サンプル熱流および基準物熱流は、サンプルおよび基準物に与えられる熱流だけでなく、それらの保持皿への熱流も含んでいる。【0067】ここで、qssは、サンプル熱流であり、qpsは、サンプル保持皿熱流であり、qrsは、基準物熱流であり、qprは、基準物保持皿熱流である。保持皿および基準物は、遷移しないので、これらの熱流は、それら自身の比熱によって定まる検出可能な熱(sensible heat)に過ぎない:ここで、mpsおよびmprは、サンプル保持皿および基準物保持皿の質量であり、cpは、皿材の比熱であり、mrsは、基準物の質量であり、crsは、基準物材の比熱である。サンプル保持皿温度は、Tpsであり,基準物保持皿温度は、Tprである。基準物材は、遷移せず、基準物保持皿と同じレートで熱くなるものと仮定する。【0068】サンプル保持皿熱流を代入し、サンプル熱流について、その式を解くと以下の通りである:基準物熱流式を皿の比熱について解き、当該比熱をサンプル熱流式に代入すると、以下の通りである:この式により、実際のサンプル熱流、すなわち、サンプル保持皿熱流、基準物保持皿熱流および基準物に与えられる熱流に相当する。右辺の第二項は、サンプル保持皿および基準物保持皿の質量の割合およびサンプル保持皿および基準物保持皿の加熱レートと基準物熱流を乗じたものと見られる。これは、遷移熱流を考慮すると、サンプル保持皿は、遷移中、基準物保持皿とは異なるレートで加熱されるという事実に基づく。第三項は、基準物材に与えられる熱流に相当する。ほとんどの場合、基準物保持皿は、空であり、サンプル熱流式は次のようになる。【0069】これらのいずれの式も、異なる学術用語(nomenclature)、異なる単位、又は形式的には異なるが熱力学的に均等の数学的表現によって表わすことができる。例えば、前記二つの式は、加熱レートによって除すことにより、以下のように熱容量単位に書き直すことができる:サンプル加熱レートが基準物加熱レートと異なっている場合、サンプル熱流から減じられた基準物熱流の割合は、サンプル保持皿加熱レートが基準物保持皿加熱レートよりも大きいか小さいかによって、大きくもなり小さくもなる。基準物熱流は、基準物保持皿熱流にすぎないので、本式は、サンプル保持皿加熱レートと基準物保持皿加熱レート間の差に相当する。例えば、DSCにおける融解中、基準物保持皿がプログラムされたレートで加熱されているにも拘わらず、サンプル保持皿加熱レートは、プログラムされたレートを下回る。従来のDSCにおいては、サンプル熱流から減じられる基準物熱流は、プログラムされたレートで皿を加熱するためのものであった。したがって、融解中、サンプル熱流から過度の熱が減じられてしまうとともに、熱流信号は微少である。ベースラインへの回帰中、サンプル保持皿は、基準物保持皿よりも早く熱せられてしまい、サンプル熱流から不十分な熱流が減じられる。この結果、熱流信号は、過大となる。【0070】本来のサンプル熱流式を用いるには、サンプル保持皿温度および基準物保持皿温度が知られることが必要であり、これにより、これらの微分値(derivatives)が決定される。残念ながら、皿の温度を直接する術はない。しかし、以下の温度および熱流信号から皿の温度を算出することができる。【0071】センサからサンプル保持皿および基準物保持皿へ流れる熱を求める式は、次の通りである:保持皿の温度を求める式を解く。【0072】これらの式を用いると、測定した信号から皿の温度およびサンプル熱流を算出することが可能となる。【0073】皿の熱抵抗RpsおよびRprは、皿の構造、DSC内で用いられるパージガスおよびDSCの温度によって決まる。従来、Rps およびRpr を決定するために、いくつかの技術が開発されており、当業者によく知られている。例えば、良くしられているものの一つに、金属融解の開始点(onset)の傾斜を測定する方法がある。【0074】Rps およびRprを決定する好ましい半経験的(semi-empirical)な方法に、サンプル保持皿とDSCセンサ間、および基準物保持皿とDSCセンサ間の熱交換をモデル化するモデル式を用いるものがある。二の名目的に平らな表面同士が接触するようになった場合、突出した部分の一部分だけが接触する(当該表面は完全に平らではない)ので、熱は、主に以下の三つのメカニズムによって起こる:接触する二の表面の隆起を介した固体間の直接熱伝導(solid heat conduction)によるもの、表面間の隙間にある気体(interstitial gas)を介した対流または熱伝導によるもの、二の表面間の放熱によるもの。但し、熱流束が非常に高い場合および二の表面間に大きな温度差がある場合、すなわち、放熱が著しく大きい場合を除く。気体を介する熱交換は、主に熱伝導によって行われる。この場合、前記表面間の接触熱抵抗は、二の直列接続された固体の伝導体(各表面を表わす)との間に気体を介し、それらと並列方向に行われる熱伝導によってモデル化することができる。DSCの保持皿/センサの熱交換をモデル化するという仮定を用いることにより、DSC皿の接触抵抗を求めるモデル式は、次のようになる:ここで、R(T)は、温度の関数である接触抵抗であり;Kp(T)、Ks(t)、Kg(T)は、皿、センサおよび気体の熱伝導率であり;αp、αs、αg は、皿、センサおよび気体の形態係数(geometric factor)である。かかる形態係数は、熱流に対して垂直な面積に対する熱伝導路長の比として考えることができる。なお、皿、センサおよび気体の熱伝導率は、既知のものである。【0075】前記形態係数は、以下のように、経験的に決定される。皿とサンプル間の接触抵抗は、ゼロに等しい平均加熱レートを用い、MDSCを使用することによって測定することが出来る。既知の熱容量のサンプルが皿内に載置され、DSCのサンプル位置におかれ、温度は、所定温度近傍において、固定振幅で正弦的(sinusoidally)に調節される。サンプル温度および皿の温度が同じであると仮定すると、皿およびサンプルの時定数を検出するために、DSCの二つの温度モデルを解くことが出来る。【0076】ここで、であり、ここで、その上にバーが付いている温度部分は、MDSC温度の簡略化(deconvolution)アルゴリズム(本願明細書内に、説明のため引用された米国特許番号第5,224,775に記載されているように)により得られた変調温度振幅を意味し、Csは、サンプルおよび皿の熱容量を組み合わせたものであり、ωは、前記変調の角周波数(circular frequency)である。変調周期が充分長い(通常60秒以上である)場合、サンプル温度および基準物温度は同じであるみなしてもよい。DSCの基準物側に関して、同様の式をたてることができ、一の実験において二の接触抵抗を決定することができる。【0077】さまざまな不連続的な温度における接触抵抗を決定するこの方法を用いることにより、上述のモデル式を、形態係数αp、αs、αg を決定するためのデータに合わせることができる。異なるサンプルおよび保持皿を沢山用いることにより、かかる実験を繰り返すことができ、接触抵抗の統計上の平均値を算出することができる。【0078】本発明の方法は、熱流束DSCには適用できないことに注意すべきであり、通常、サンプル熱流と基準物熱流を別個独立に測定するDSCのみに適用可能である。ここで開示される装置の物理的な構成により、サンプル熱流と基準物熱流を別個独立に測定することが可能となり、本発明を適用するには、このような特徴(ここで開示されたものと全く同じ実施形態である必要はないが)を備えていることが条件とされる。【0079】[パワー補償DSCs]図2aは、本発明のパワー補償を説明する実施形態におけるパワー補償DSCセルの断面図である。このDSCセルは、サンプルホルダアセンブリ201sおよび恒温容器203に内蔵された基準物ホルダアセンブリ201rを備えている。当該サンプルホルダアセンブリおよび基準物ホルダアセンブリは、全体として出来るだけ同じになるように作られている。サンプルホルダ201sは、測温体(temperature detector)202sおよび加熱素子(図2aにおいては図示せず)を内蔵する本体204sを有している。サンプル保持皿205s内のサンプルは、蓋207sによって密閉されるサンプルホルダの中空部(cavity)206s内に挿入される。サンプルホルダ204sの本体は、フランジ209sに接続する熱抵抗器208sによって支持されている。この熱抵抗器は、サンプルホルダと恒温容器間での熱交換のための主要な通路であり、これによりサンプルホルダは、適度なヒーター出力を与えるだけで、恒温容器よりも高い温度に熱せられる。当該熱抵抗器208sは、熱流の流れる方向に比べ、当該熱流に垂直な(normal)方向に小さい断面部を有する管状部材(tubular member)である。【0080】同様に、基準物ホルダ201rは、測温体(temperature detector)202rおよび加熱素子(図2においては図示せず)を内蔵する本体204rを有している。基準物保持皿205rは、蓋207rによって密閉される基準物ホルダ201rの中空部(cavity)206r内に挿入される。基準物ホルダ204rの本体は、フランジ209rに接続する熱抵抗器8rによって支持されている。この熱抵抗器は、基準物ホルダ201rと恒温容器間での熱交換のための主要な通路であり、これにより基準物ホルダは、適度なヒーター出力を与えるだけで、恒温容器よりも高い温度に熱せられる。当該熱抵抗器は、熱流の流れる方向に比べ、当該熱流に垂直な(normal)方向に小さい断面部を有する管状部材(tubular member)である。基準物は、基準物ホルダ201rの中空部(cavity)206r内に挿入される基準物保持皿205r内に置くことも出来るが、通常は、基準物の載置を省略し、基準物ホルダ201r内に空の基準物保持皿205rを載置する。【0081】恒温容器203は、本体211および、サンプルおよび基準物を載置するためにサンプルホルダおよび基準物ホルダへのアクセスを可能にする取り外し可能な蓋212を備えている。サンプルホルダのフランジ209sは、恒温容器の本体211に接続されており、サンプルホルダおよびサンプルからの熱が熱抵抗器208sを介して、恒温容器へと流れる。恒温容器203の本体211には、恒温温度(isothermal temperture)を測定する恒温容器測温体210が組み込まれている。この温度とサンプルホルダの温度との差分が、ΔToである。この恒温容器本体は、例えば、液体冷却材(liquid cryogen)、機械的冷却(mechanical refrigeration)、水冷または空冷といった、様々な方法で冷却される。恒温容器は、容器内の温度変化を最小化するために高熱伝導率物質から構成されており、通常は、アルミニウムである。【0082】本発明のこの実施形態では、サンプル温度測定値を唯一の絶対的な温度測定値として用いる。また、サンプルホルダと基準物ホルダ間の差分温度、サンプルホルダと恒温容器間の差分温度、およびサンプルに与えられるパワーと基準物に対するそれとの差分パワーも測定している。サンプルへのパワーと基準物に対するパワーとの差分パワーは、例えば、サンプルホルダに与えられるパワーと基準物ホルダへのパワーを別々に測定し、個々の測定値の差を得ることにより測定される。サンプルへのパワーおよび基準物に対するパワーは、様々な異なる方法、例えば、サンプルヒーターおよび基準物ヒーターに与えられる電圧および電流を測定する計器、により測定することができる。したがって、本実施形態は、パワー補償DSC熱流等式(power compensation DSC heat flow equation)に基づき、サンプルに与えられる差分熱流の計算に必要な数値を得るため、一の絶対的な温度測定値(サンプル温度)、二の差分温度測定値(サンプル/基準物 およびサンプル/容器)および差分パワー測定値(サンプル/基準物)の組み合わせを用いている:式(64)【数64】一の絶対的な温度測定値および二の差分温度測定値の別の組み合わせを、五つの項の熱流等式に用いることもできる、ということが理解されよう。また、他の構成を用いることにより、本発明を改良することも可能である。一の絶対的な温度測定値としては:サンプルホルダ温度、基準物ホルダ温度、および恒温容器温度:の三つの選択枝がある。当該選択肢のいずれか一つと、前記差分温度測定値の三つの選択枝のうちいずれか二つを組み合わせても同じ結果が得られる。したがって、好ましい実施形態において、サンプル温度Tsは、差分温度測定値To-TsおよびTs-Tr、To-TsおよびTo-Tr又は、Ts-Trおよび To-Trとともに絶対的な温度測定値として用いることができる。基準物温度Tr は、差分温度測定値Ts-TrおよびTo-Tr、To-TrおよびTo-Ts又は、Ts-Trおよび To-Tsとともに絶対的な温度測定値として用いることができる。また、ベース温度To は、差分温度測定値To-TsおよびTs-Tr、To-TsおよびTo-Tr又は、To-Trおよび Ts-Trとともに絶対的な温度測定値として用いることができる。したがって、五つの項の熱流等式が適宜書き換えられるのであれば、同じ情報を導き出すことができる8つの構成が加わる。これら可能性のある9つ全部の構成は、本発明の範囲内である。【0083】[熱要素の決定方法]前記五つの項のパワー補償DSC熱流等式を用いるためには、四つの熱要素、Cs、Cr、Rs、Rrを決定しなければならない。これらの要素を決定すれば、DSCの熱流校正を行なうことができる。【0084】熱流の校正には、そこから前記四つの熱要素を算出することができる二つの実験が必要とされる。第一の実験は、空のDSCセルを用いて行なわれる。DSCプログラムは、所望の校正範囲の最低温度より低い恒温域(isothermal temperature segment)で始まり、次に、一定の加熱レートでの温度傾斜が続き、最後に、所望の校正範囲の最高温度より高い恒温域で終了する。前記加熱レートは、次の実験で用いられる加熱レートと同じでなければならない。第二の校正実験は、例えば、サンプルおよび基準物ホルダ内に装着したサファイアの試料を用いて行われる。当該温度範囲内で遷移せず、既知の温度特性を有するものであれば、サファイアの代わりに他の物質を用いることも出来る。第二実験には、第一の(空のDSC)実験で使用されたものと同じ熱プログラムが用いられる。【0085】パワー補償差分走査熱量計のサンプル側の熱平衡式は、以下の通りである:基準物側において、熱平衡式は、以下の通りである:まず、サンプル側の熱平衡式について、空の状態でのDSC実験中の熱流を0に設定すると、熱平衡式は、以下の通りとなる:下付きの数字の1は、第一の校正実験であることを表わし、サファイア試料を用いる第二の校正実験において、サンプル熱流は、以下と同じに設定される:ここで、ms2は、サファイア試料の質量であり、Csapph は、サファイアの既知の熱容であり、下付きの数字の2は、第二の校正実験であることを表わしている。第二の校正実験用の熱平衡式は、以下のようになる:CsおよびRsについて、これらの式を解くと、以下の通りである:同様に、空の状態における校正用および基準物側で行われるサファイアを用いた校正用の熱平衡式は、以下の通りである:基準物温度Trは、直接測定されたものではない。次式で求められるTrおよびΔToを代入する:その結果、熱平衡式は、以下の通りとなる:上式を同時に解くと以下のようになる:他の実施形態においては、いずれの校正実験にも試料を含めるようにしてもよい。当該二つの校正実験における試料は、その質量が互いに著しく異なっているものでなければならない。例えば、もし、第一の実験用のサンプル(基準物)試料の質量が、第二の実験用のサンプル(基準物)試料の質量の二倍であったなら、これらのサンプル(基準物)試料の質量は、著しく異なるとされるが、5%の違いしかない場合には、著しく異なるとはされない。本実施形態において、サンプル側における第一の実験用の熱平衡式は、以下のようになる:また、基準物側における第一の実験用の熱平衡式は、以下のようになる:この式を上記のように同時に解くと、以下のようになる:熱容量および熱抵抗は、DSC実験中のサンプル熱流を算出するために用いられる。これらは、中間値用の適切な補完(suitable interpolation)を伴ったテーブル形式のデータとして用いられるか、数式、すなわち、多項式(polynomial)が適用される。いずれの場合も、熱容量および熱抵抗は、温度関数として用いなければならない。なお、サファイア試料の質量は、25mgから125mgの範囲であり、通常の質量は、75mgから100mgの範囲である。【0086】サンプルに与えられるパワーPsおよび基準物に与えられるパワーPrは、校正ステップ中、別々に測定される。パワーPsからパワーPrを差し引くことにより差分パワーが求められる。【0087】[改良された計算方法]上述のパワー補償DSCは、図2に示すサンプルホルダおよび基準物ホルダのそれぞれの熱抵抗および熱容量を用いることによりモデル化することのできる独立したサンプルホルダおよび基準物ホルダを備えている。熱抵抗素子および熱容量素子は、センサを理想化したものであり、センサの熱動作を簡単な数式により表わすことを可能にする。RsおよびRrは、熱抵抗であり、CsおよびCrは、サンプルホルダおよび基準物ホルダの熱容量を表わしている。To,Ts およびTr は、恒温容器の温度、サンプルホルダの温度および基準物ホルダの温度である。サンプルホルダに与えられる加熱パワーはPsであり、平均加熱パワーに差分パワーを加えたものから構成される。基準物ホルダに与えられる加熱パワーはPrであり、平均加熱パワーから差分パワーを減じたものから構成される。サンプルおよびその保持皿に与えられる熱流はqsおよびqrとして表わされる。【0088】サンプルおよび基準物について熱平衡を実行することにより、以下の熱流差分式が得られる、上述で説明した本発明および前記’949出願においては、センサベースの温度To、恒温容器の温度とサンプルホルダ温度との差、およびサンプルホルダ温度と基準物ホルダ温度の差が測定される。これらの差分温度は次のように定義される:これを上記の熱平衡式に代入すると、次式が得られる、サンプル温度は、ΔToの定義から得られる、温度の関数としてのセンサの熱抵抗および熱容量は、上記で開示された校正方法および’949出願の校正方法を用いることにより得られる。校正から得られた熱抵抗および熱容量を、サンプルホルダパワーおよび基準物オルダパワー、DSC実験中に測定された温度および差分温度とともに用いることにより、サンプル熱流qsおよび基準物熱流qrを求めることが可能となる。サンプル熱流および基準物熱流の差は、所望の結果となる:上述のように、サンプル熱流および基準物熱流は、サンプルおよび基準物に与えられる熱流だけでなく、それらの保持皿への熱流も含んでいる。【0089】ここで、qssは、サンプル熱流であり、qpsは、サンプル保持皿熱流であり、qrsは、基準物熱流であり、qprは、基準物保持皿熱流である。保持皿および基準物は、遷移しないので、これらの熱流は、それら自身の比熱によって定まる検出可能な熱(sensible heat)に過ぎない:ここで、mpsおよびmprは、サンプル保持皿および基準物保持皿の質量であり、cpは、皿材の比熱であり、mrsは、基準物の質量であり、crsは、基準物材の比熱である。サンプル保持皿温度は、Tpsであり,基準物保持皿温度は、Tprである。基準物材は、遷移せず、基準物保持皿と同じレートで熱くなるものと仮定する。【0090】サンプル保持皿熱流を代入し、サンプル熱流について、その式を解くと以下の通りである:基準物熱流式を皿の比熱について解き、当該比熱をサンプル熱流式に代入すると、以下の通りである:この式により、実際のサンプル熱流、すなわち、サンプル保持皿熱流、基準物保持皿熱流および基準物に与えられる熱流に相当する。右辺の第二項は、サンプル保持皿および基準物保持皿の質量の割合およびサンプル保持皿および基準物保持皿の加熱レートと基準物熱流を乗じたものと見られる。これは、遷移熱流を考慮すると、サンプル保持皿は、遷移中、基準物保持皿とは異なるレートで加熱されるという事実に基づく。第三項は、基準物材に与えられる熱流に相当する。ほとんどの場合、基準物保持皿は、空であり、サンプル熱流式は次のようになる。【0091】これらのいずれの式も、異なる学術用語(nomenclature)、異なる単位、又は形式的には異なるが熱力学的に均等の数学的表現によって表わすことができる。【0092】サンプル加熱レートが基準物加熱レートと異なっている場合、サンプル熱流から減じられた基準物熱流の割合は、サンプル保持皿加熱レートが基準物保持皿加熱レートよりも大きいか小さいかによって、大きくもなり小さくもなる。基準物熱流は、基準物保持皿熱流にすぎないので、本式は、サンプル保持皿加熱レートと基準物保持皿加熱レート間の差に相当する。例えば、DSCにおける融解中、基準物保持皿がプログラムされたレートで加熱されているにも拘わらず、サンプル保持皿加熱レートは、プログラムされたレートを下回る。従来のDSCにおいては、サンプル熱流から減じられる基準物熱流は、プログラムされたレートで皿を加熱するためのものであった。したがって、融解中、サンプル熱流から過度の熱が減じられてしまうとともに、熱流信号は微少である。ベースラインへの回帰中、サンプル保持皿は、基準物保持皿よりも早く熱せられてしまい、サンプル熱流から不十分な熱流が減じられ、この結果、熱流信号は、過大となる。【0093】本来のサンプル熱流式を用いるには、サンプル保持皿温度および基準物保持皿温度が知られることが必要であり、これにより、これらの微分値(derivatives)が決定される。残念ながら、皿の温度を直接する術はない。以下の温度および熱流信号から皿の温度を算出することができる。【0094】サンプルホルダおよび基準物ホルダからサンプル保持皿および基準物保持皿へ流れる熱を求める式は、次の通りである:皿の温度を求める式を解く:これらの式を用いると、測定した信号から皿の温度およびサンプル熱流を得られる。Rps およびRpr は、これらのパラメータについての上記半経験的手順を、熱流束熱量計に適用することによって求められる。【0095】[実験結果]図3は、本発明の改良された計算方法を、熱流束DSC内に流れるDSC熱流の計算に適用した場合であって、4.92mgのインジウム試料が毎分10℃の割合で溶解される状態を横軸に時間を取って示した図である。従来のDSCによる結果を示す曲線を301と、改良された計算方法を用いていない本発明の結果を曲線302とし、改良された計算方法を用いた本発明の方法による結果を曲線303とする。改良された計算方法を用いて算出された融解インジウムの開始点304は、グラフの左側から始まって他のものよりも早めに起こり、しかも改良された計算方法を用いていない本発明の点305または従来のDCSを用いた場合の点306より変化が急である。融解中、改良された計算方法を用いた熱流信号307は、改良された計算方法を用いていない本発明により得られた熱流信号308よりもかなり大きく、また、従来のDSCを用いて得られた熱流信号309よりも明らかに大きい。融解は、融解のための潜熱が試料によって吸収されていた場合、熱流信号がピークになった時点で完了する。【0096】改良された計算方法310を用いて算出された熱流は、他より高い位置にあり、そのピークは、改良された計算方法を用いていない本発明による熱流311よりも高く、かつ、若干早く、従来のDSCを用いて得られた熱流312よりもかなり高く、しかも、さらに早い。サンプル熱流は、ピークの直後に急激に減少して、サンプルの比熱に対応する遷移直前の値に戻る。改良された計算方法を用いていない本発明を用いた融解後の熱流信号314は、ゆっくりとしており、従来のDSCの融解後の熱流信号315はさらにゆっくりとしているが、本発明の改良された計算方法を用いて算出された融解後の熱流信号313の減衰速度は、非常に早い。開始点304、融解307、ピーク熱流310および融解後減衰313を備える改良された計算方法を用いて算出された完全に融解したインジウムの熱流信号303は、改良された計算方法を用いていない本発明を用いた測定値(曲線302として示した)又は従来のDSCによる測定値(曲線301として示した)よりも精度の高い測定値である。【0097】図4は、融解の開始点近傍の時間間隔におけるサンプルセンサ、サンプル保持皿およびサンプルの温度をグラフに表わした図である。温度(T)を縦軸に、時間(τ)を横軸に示している。軌道400が、サンプルセンサ温度を、軌道401がサンプル保持皿温度を、さらに、軌道402がサンプルの温度を示している。融解は、開始時間であるτonset403において開始する。融解開始前のサンプルセンサ温度、サンプル保持皿温度およびサンプル温度は平行である。なぜなら、これらの軌道はいずれもDSCの加熱レートで変化していること、すなわち、熱流が一定であることを示しているからである。融解開始点403において、サンプル温度はその変化を停止する。サンプル保持皿の温度は、遷移領域404を通過し、そこでは温度の変化率が減少して、最終的には安定状態(steady-state)405が得られる。ここで、温度は、DSCセンサベースの加熱レートよりも遅い一定のレートで変化する。同様に、サンプルセンサ温度400は、遷移領域406を通過し、そこでは温度の変化率が減少して、最終的には安定状態407になり、そこでの温度変化率はDSCセンサベースより低いが、サンプル保持皿のそれよりは高い。【0098】上記に示したサンプルに対する熱流qsは、サンプルセンサの温度とサンプル保持皿温度間の差に正比例する。この場合、基準物に与えられる熱流qrは、一定である。これは、センサの構造が、温度TsおよびTrを独立のものとするからである。【0099】融解に続いて起こる開始点の形状の変化およびベースラインへの帰還速度の上昇は、主に、前記熱流式の第四項に起因するものである。第四項は、センサのサンプル側と基準物側間の加熱レートの差に起因するセンサのサンプル側と基準物側間に蓄えられた熱に相当する。【0100】[その他の考察]改良された計算方法を用いた場合、サンプル熱流および基準物熱流は、個別に測定され、この基準物熱流は、保持皿の質量の割合と保持皿の加熱レートの割合との積である係数と乗じられる。保持皿の質量と加熱レートで補正した基準物熱流は、サンプル熱流から減じられる。理想値を得るため、ノイズの発生に関連する二つの問題に対処しなければならない。【0101】最初の問題は、非常に低い加熱レートが使用された場合に起こる。保持皿温度の係数、すなわち、保持皿加熱レートdTps/dτおよびdTpr/dτは、測定点の両側の数点で測定された値を用いて数値的に算出される。微分されるデータの最小平方根多項式フィット(least squares polynominal fit)(この場合、温度または温度差)を得るためには、A.サビトスキーおよびN.J.E.ゴリーによって開発された、分析化学第36巻、8号 1627ページから1639ページに記載の”簡略化した平方根処理による積分および微分法”を用いることが好ましい。しかし、微分を行うと、ノイズを含む信号を創り出すことが知られている。毎分0.1℃のように加熱レートが低い場合、温度測定分解能および適用したヒーターには限界があるので温度はゆっくりと変化し、測定された温度は停滞する。このような事態が発生すると、算出した微分係数は、マイナス、または、たまにゼロに近くなる。保持皿加熱レートの割合を求める式の分母における基準物保持皿温度の係数は、ほぼゼロであるので”ゼロで割るに等しく”、基準物加熱レートを乗ずる係数は非常に大きく(正または負)なり、計算された熱流は大きなスパイク状の変化(huge spikes)を示すことになる。【0102】もし、遷移のピークが平滑化されると、本発明の特徴である分解能の向上が失われてしまうことになるので、この問題は、微分係数を平滑化するだけでは解決しない。かかる問題は、サンプル保持皿の微分係数と基準物保持皿の微分係数が密接に関係していることを利用して解決するのが好ましい。【0103】基準物保持皿の微分係数を加え、分子から引くと、以下の式になる:この式は、次のように整理することができる:分母において、サンプル保持皿加熱レートと基準物保持皿加熱レート間の差により相関するノイズは打ち消される。DSCのサンプル側および基準物側が独立しているので、基準物が遷移しない限り、基準物保持皿の加熱レートは、ほぼプログラムされた加熱レートである。分母中の基準物保持皿の加熱レートをプログラムされた加熱レートに置き換えると、以下の通りである:ここで、bはプログラムされた加熱レートである。分母をほぼゼロで割ることにより、熱流のスパイクがなくなり、相関するサンプル保持皿加熱レートおよび基準物保持皿加熱レートが打ち消される。したがって、サンプル熱流式は、以下のようになる:遷移中に生じる他の問題は、以下ように解決するのが好ましい。サンプル熱流および基準物熱流は、比較的高いレベルのコモンモードノイズを含む。両熱流信号のノイズは、本質的に等しく、当該二の信号間の差を取ることにより消去されうる。DSC実験のベースライン中、サンプル加熱レートおよび基準物加熱レートは、本質的に等しく、プログラムされた加熱レートと等しくなるので、基準物熱流に適用される前記加熱レートを補正するための項は1となる。このような条件下で、サンプル熱流および基準物熱流に含まれるコモンモードノイズは、互いに打ち消し合い、ノイズの少ない信号が得られる。遷移が起こると、加熱レートを補正するための項は、明らかに1を超える。基準物熱流に含まれるノイズは、このゲイン係数分だけコモンモードノイズを打ち消すことができなくなる。したがって、遷移中、結果としてのサンプル熱流qssは、ノイズを多く含むものとなる。【0104】この問題も解決可能である。上記熱流等式の右辺の第二項を展開すると、以下のようになる。【0105】展開しただけでは意味はないが、DSCセンサのサンプル側および基準物側は、独立しているので、基準物熱流は時間とともにゆっくり変化し、悪影響を受けない程度に平滑化またはフィルタリングしてもよい。このように、上記式の第三項は、平滑化またはフィルタリングされ、ノイズが少なくなる。こうして得られた式は以下の通りである。【0106】二番目の基準物熱流の上のバーは、それが平滑化またはフィルタリングされていることを示している。この構造を用いることにより、サンプル熱流に含まれるコモンモードノイズを最初の基準物熱流に含まれるコモンモードノイズより打ち消すことができる。実験のベースライン部分中、サンプル保持皿加熱レートおよび基準物物保持皿加熱レートが同じなので第三項はゼロであり、また、遷移中、保持皿の加熱レートが相違すると、加熱レートを表わす項の係数(gain)が、平滑化またはフィルタリングされた基準物熱流に適用される。したがって、平滑化またはフィルタリングを実行することによる分解能の損失なしに、ノイズの少ない信号を事件中、常に得ることが可能となる。【0107】本発明の実施形態の前述の開示は、説明の目的で行われているに過ぎず、発明内容を網羅するものでも、開示と同様の形式に発明を限定するものではない。上記説明に基づいて、開示された実施形態の変更および改良を行い得ることは当業者にとって自明のことである。本発明の範囲は、添付された特許請求の範囲および、その均等物のみによって定められる。【図面の簡単な説明】【図1】 図1は、熱流束差分走査熱量計の熱ネットワークモデルである。【図1a】 図1aは、本発明の一実施形態の熱流束DSCセンサの略図である。【図1b】 図1bは、図1aに示すセンサの実施形態の断面図である。【図1c】 図1cは、図1aおよび図1bに示す熱電対が、本発明においてどのように絶対的温度および差分温度を測定するために用いられているかを示す接続図である。【図1d】 図1dは、本発明の好ましい実施形態のためのDSCセルアセンブリの断面図である。【図2】 図2は、パワー補償差分走査熱量計の熱ネットワークモデルである。【図2a】 図2aは、本発明の実施形態によるパワー補償DSCの概略ダイヤグラムである。【図3】 図3は、以下で説明する、本発明にかかる改良された計算を用いて得られた熱流(曲線3)と、従来のDSCsを用いて得られた熱流(曲線1)と、および改良された計算なしで本発明を用いて得られた熱流(曲線2)との比較を示すグラフである。【図4】 図4は、本発明における融解の開始時点のサンプルの温度、サンプル保持皿の温度、サンプルセンサの温度を示すグラフである。 差分走査熱量計であって、 (a) ベース温度、サンプル温度および基準物温度のいずれか一つを測定する絶対的な温度計と、 (b) 前記サンプル温度と前記ベース温度との差、前記基準物温度と前記ベ−ス温度との差、および前記サンプル温度と前記基準物温度との差のいずれか一つを測定する第一差分温度計と、 (c) 前記サンプル温度と前記基準物温度との差、前記サンプル温度と前記ベ−ス温度との差、および前記基準物温度と前記ベ−ス温度との差のいずれか一つを測定する第二差分温度計と、を備えており、 前記ベース温度は、前記オーブンに与えられるパワーを制御するために用いられ、 前記センサは、前記差分走査熱量計のサンプル位置に第一のサンプル校正用試料および前記差分走査熱量計の基準物位置に第一の基準物校正用試料を備えた第一の校正セットを伴う第一の実験を実行し、次に、前記差分走査熱量計のサンプル位置に第二のサンプル校正用試料および前記差分走査熱量計の基準物位置に第二の基準物校正用試料を備えた第二の校正セットを伴う第二の実験を実行することにより校正され、 前記サンプルに与えられる熱流は、サンプル保持皿に与えられる熱流および基準物保持皿に与えられる熱流に相当する下式に基づいて算出されることを特徴とする差分走査熱量計。 式(112) 請求項1の差分走査熱量計において、前記基準物保持皿は空であり、以下の式に基づいて前記サンプルに与えられる前記熱流を算出すること、 式(113) を特徴とする差分走査熱量計。 請求項2の差分走査熱量計において、以下の式に基づいてサンプル保持皿温度Tpsおよび基準物保持皿温度Tprをそれぞれ決定すること、 式(114) ここで、RpsおよびRprは、サンプル保持皿および基準物保持皿の熱抵抗であること、 を特徴とする差分走査熱量計。 請求項3の差分走査熱量計において、RpsおよびRprは、接触抵抗のモデル式を用いて得られること、 を特徴とする差分走査熱量計。 請求項1の差分走査熱量計において、以下の式に基づいてサンプル保持皿温度Tpsおよび基準物保持皿温度Tprをそれぞれ決定すること、 式(115) ここで、RpsおよびRprは、サンプル保持皿および基準物保持皿の熱抵抗であること、 を特徴とする差分走査熱量計。 請求項1の差分走査熱量計において、前記差分走査熱量計は、熱流束差分走査熱量計であること、 を特徴とする差分走査熱量計。 請求項1の差分走査熱量計において、前記差分走査熱量計は、パワー補償差分走査熱量計であること、 を特徴とする差分走査熱量計。 請求項7の差分走査熱量計において、RpsおよびRprは、接触抵抗のモデル式を用いて得られること、 を特徴とする差分走査熱量計。