タイトル: | 特許公報(B2)_生地染色法 |
出願番号: | 2001068547 |
年次: | 2004 |
IPC分類: | 7,D06P1/34,C12S11/00,D06B3/16,D06B3/32,D06B21/00,D06M13/152,D06P1/46,D06P3/60,D06P5/00 |
亀鷹 真二 石崎 征雄 勝圓 進 大島 邦裕 JP 3563706 特許公報(B2) 20040611 2001068547 20010312 生地染色法 倉敷紡績株式会社 000001096 青山 葆 100062144 北原 康廣 100103115 亀鷹 真二 石崎 征雄 勝圓 進 大島 邦裕 20040908 7 D06P1/34 C12S11/00 D06B3/16 D06B3/32 D06B21/00 D06M13/152 D06P1/46 D06P3/60 D06P5/00 JP D06P1/34 C12S11/00 D06B3/16 D06B3/32 D06B21/00 D06M13/152 D06P1/46 D06P3/60 A D06P5/00 121 7 D06P 1/34 D06P 1/46 D06P 3/60 D06P 5/00 121 D06P 5/02 D06P 5/13 D06M 13/152 特開平06−173176(JP,A) 特表平10−507495(JP,A) 特表2001−520710(JP,A) 特開昭53−074189(JP,A) 特開平06−316874(JP,A) 5 2002266258 20020918 9 20010312 松本 直子 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は生地染色法に関する。【0002】【従来の技術】デニムは長期間保存されると、色が全体的に黄味がかってきて、独特の古着の表情を醸すことが知られている。最近では、そのような古着の表情、いわゆるビンテージ感のあるデニムを用いた衣料の需要が急速に高まっている。しかしながら、ビンテージ感を得るには、生地を実際に10〜20年間保存する必要があるため、需要に対応できる十分な供給量を確保できないのが現状である。【0003】生地を長期保存することなく生地にビンテージ感を比較的短時間で付与する方法として、生地をイエロー系またはブラウン系の染料で染める方法が知られている。しかしながら、このような染料を用いると、実際に長期保存された生地が有するようなビンテージ感を十分に得ることはできない。【0004】【発明が解決しようとする課題】本発明は、実際に長期保存された生地が有するようなビンテージ感を比較的短時間で付与できる生地染色法および該染色法に使用される二液系生地染色用組成物を提供することを目的とする。【0005】【課題を解決するための手段】本発明はタンニンを含有する水溶液により生地を処理する工程、およびポリフェノールオキシダーゼを含有する水溶液により生地を処理する工程を含む生地染色法に関する。【0006】本発明はまた、タンニンを含有する水溶液およびポリフェノールオキシダーゼを含有する水溶液からなる二液系生地染色用組成物に関する。【0007】【発明の実施の形態】本発明の生地染色法は、タンニンを含有する水溶液により生地を処理する工程(この工程を、「タンニン処理工程」という)、およびポリフェノールオキシダーゼを含有する水溶液により生地を処理する工程(ポリフェノールオキシダーゼ処理工程)の2つの工程を含む。以下、タンニン処理を行った後に、ポリフェノールオキシダーゼ処理を行う場合を説明する。【0008】本発明の染色の対象となる生地は、織物、編み物、不織布等の平面性を有する形態(例えば、布)のものに限らず、繊維自体、繊維が撚られた糸、およびそれらを加工してなる各種製品(例えば、ジーンズ等の衣服)等の形態を含む。本発明の実施容易性を考慮すれば、生地は平面性を有する形態が好ましい。連続的に本発明方法を適用可能となる。ビンテージ感をより出しやくするために、生地を予め、温水洗浄、バイオ洗浄、ストーンウォッシュ等の処理にかけ、生地の色の濃淡、模様等の調整を行っていてもよい。【0009】生地を構成する繊維としては、、例えば、セルロース系天然繊維(綿、麻等)、セルロース系再生繊維(レーヨン、キュプラ、テンセル等)、セルロース系半合成繊維(アセテート等)の単独、およびこれら自身の混紡品、これらと合成繊維との混紡品および交織品を含む。【0010】特に、生地としてデニムを使用すると、ビンテージ感が特に優れた生地を得ることができ、実際に長期保存されたデニムと比較しても遜色のない古着の表情を付与することができる。【0011】デニムは綿製の経糸および緯糸を用いて得られる綾織物であり、一般的には経糸に染色された色糸を用い、緯糸に原糸を用いるため、表の色が裏より濃くなっている。経糸はデニムの表が所望の色相を有するように、染色されている。ジーンズの生地としてのデニムは、通常、インジゴ系の染料で藍色に染色された経糸が使用されている。ジーンズ用のデニムに限らず、その他の市販されている各種生地に本発明を適用してビンテージ感を付与することが可能である。【0012】本発明においては、上記した生地を、タンニンを含有する水溶液により処理する。処理は生地を浸漬して行うものであり、バッチ式でも連続式いずれでもよい。【0013】タンニンは、植物界に広く分布し、水によく溶け、水溶液は収レン性強く、皮を革に変化させる性質を有する物質で、ポリオキシフェニルを基本構造としており、アルカリ分解するとフェノール類、フェノールカルボン酸を生じる。市販品としてはタンニン酸(ナカライテスク社製)等が入手可能である。【0014】タンニンの水溶液濃度は、所望のビンテージ感を効率よく得る観点から、0.1〜10g/L、好ましくは1〜5g/Lとするのが望ましい。【0015】タンニン水溶液はさらにデニム生地への浸透性をよくするために、浸透剤が含有されていてもよい。浸透剤の水溶液中での濃度は1〜5g/Lとするのが望ましい。タンニン処理は連続式またはバッチ式で行われてよく、いずれの方式を採用する場合も、タンニン濃度が上記範囲内の水溶液を用いればよいが、特に、バッチ式を採用する場合においては、さらに水溶液中でのタンニン含有量が0.05〜0.5%owf、好ましくは0.05〜0.25%owfであって、かつ水溶液の水使用量が当該処理に供される生地重量の10〜30倍の重量、好ましくは10〜20倍の重量であるような水溶液を用いることがより好ましい。連続式で処理を行う場合においては一般に工場等で大規模で処理を行うことが多く、十分量のタンニン水溶液が使用されるため、当該水溶液中には十分量のタンニンが含有されており、タンニンの絶対量が不足することはほとんどない。一方、バッチ式で処理を行う場合においては一般に小規模で処理を行うことが多く、連続式処理と比較してタンニン水溶液の使用量は制限されるため、水溶液中のタンニン含有量もまた制限され、タンニンの絶対量が不足する傾向がある。このため、バッチ式処理を行う場合には、濃度だけでなく、タンニン水溶液の水量と当該水溶液中のタンニン含有量を生地重量に基づいてさらに規定することにより、当該処理をより確実に行うことができる。本明細書中、単位「%owf(% on weight of fiber)」は処理に供される繊維(生地)重量に対する重量割合(重量%)を意味する。【0016】タンニン処理工程でのタンニン水溶液の温度は特に制限されず、通常、室温でよい。またタンニン処理工程は生地全体が当該水溶液を吸収すればそれで十分であるので、生地の浸漬については、それ以上の時間を取る必要は必ずしも必要ではない。なお、生地全体が水溶液を吸収することができるのであれば、浸漬法に限らずスプレー法を適用してもよい。【0017】タンニン処理工程終了後、生地を脱水乾燥する。脱水は、絞りローラー、洗濯機等による遠心力脱水または手作業等によって軽く絞ることによって行えばよい。そのとき、作業効率の向上と所望のビンテージ感を効率よく得る観点から、生地の初期重量(乾燥時)に対して30〜150重量%、好ましくは40〜100重量%の水溶液が生地に吸収されている程度にまで脱水して生地を乾燥工程にまわすことが好ましい。【0018】乾燥は公知の手段、例えば熱風乾燥機等によって行われればよい。【0019】次いで、ポリフェノールオキシダーゼを含有する水溶液により生地を処理する(ポリフェノールオキシダーゼ処理)。処理は生地を浸漬して行うものであり、バッチ式でも連続式いずれでもよい。【0020】本発明において用いられるポリフェノールオキシダーゼは多価フェノールの酸化を触媒する酵素である。作用機構の詳細は明らかではないが、当該酵素がタンニンを酸化することによって、耐久性のあるビンテージ感を生地に付与するものと考えている。そのようなポリフェノールオキシダーゼの具体例として、o−,p−二価フェノールの酸化を触媒する酵素、例えば、ラッカーゼおよびo−二価フェノールの酸化を触媒する酵素、例えば、チロシナーゼ等が挙げられ、好ましくはo−,p−二価フェノールの酸化を触媒する酵素、特にラッカーゼを用いる。ラッカーゼはアスペルギルス属の菌由来のものを用いることがより好ましく、そのようなラッカーゼとして市販のデニライトIIS(ノボ社製)が使用可能である。【0021】本発明の方法に使用されるポリフェノールオキシダーゼの水溶液中での濃度はポリフェノールオキシダーゼの種類および活性度に影響する因子(例えば、水溶液の温度およびpH)等に依存するため、一概には規定できず、当該水溶液と上記タンニン水溶液による処理によって所望のビンテージ感を生地に付与できるような濃度とする。例えば、ラッカーゼ、特に市販のデニライトIIS(ノボ社製)を用いる場合、水溶液中のデニライトIIS濃度は通常、0.5〜100g/L、好ましくは0.5〜50g/Lとするのが望ましい。ポリフェノールオキシダーゼ処理、特にデニライトIIS処理もまた連続式またはバッチ式で行われてよく、いずれの方式を採用する場合も、デニライトIIS濃度が上記範囲内の水溶液を用いればよいが、特に、バッチ式を採用する場合においては、バッチ式によるタンニン処理と同様の理由から、さらに水溶液中でのデニライトIIS含有量が0.1〜5%owf、好ましくは0.5〜3%owfであって、かつ水溶液の水使用量が当該処理に供される生地重量の10〜30倍の重量、好ましくは10〜20倍の重量であるような水溶液を用いることがより好ましい。【0022】ポリフェノールオキシダーゼ水溶液にはさらに緩衝液が含有されていてもよい。緩衝液を含有させることにより、得られる水溶液を後述のpH範囲に容易に制御できる。緩衝液としては、リン酸緩衝液等が使用可能である。その使用量は当該水溶液のpHを後述のpH範囲に制御できるような量とする。上記したデニライトIIS(ノボ社製)にはそのような緩衝液が予め含有されている。【0023】ポリフェノールオキシダーゼ水溶液のpHはポリフェノールオキシダーゼが失活しないpHにする。例えば、ラッカーゼを用いる場合においては、通常、3.5〜6.5、好ましくは3.7〜6.0であればよいが、処理時間の短縮の観点からは、より好ましくは4.0〜5.5、さらに好ましくは4.0〜5.0とする。そのようなpH範囲とすることによってラッカーゼが活性化される。【0024】ポリフェノールオキシダーゼ水溶液の温度はポリフェノールオキシダーゼが失活しない温度で使用する。例えば、ラッカーゼを用いる場合においては、通常、80℃未満、好ましくは10℃以上80℃未満であればよいが、処理時間の短縮の観点からは、より好ましくは45℃以上75℃以下、さらに好ましくは60℃以上70℃以下とする。そのような温度範囲とすることによってラッカーゼがより活性化される。【0025】ポリフェノールオキシダーゼ処理における水溶液への生地の浸漬時間はタンニンのポリフェノールオキシダーゼによる酸化が十分に行われ得るような時間であり、ポリフェノールオキシダーゼの種類、水溶液の温度およびpHに依存する。通常、20分間〜1.5時間である。例えば、ラッカーゼを用い、水溶液の温度が60℃、pHが4.5であれば浸漬時間は20〜40分間が好適である。また例えば、ラッカーゼを用い、水溶液の温度が室温(25℃)、pHが4.5であれば浸漬時間は50分間〜1.5時間が好適である。【0026】ポリフェノールオキシダーゼ処理においては、当該水溶液が生地に十分に吸収された後、上記浸漬時間の経過前に浸漬を終えて生地を水溶液から取り出し、濡れた状態で上記したポリフェノールオキシダーゼ水溶液と同様の温度範囲内の温度下にて放置してもよい。このように生地を浸漬後、放置するときの放置時間は、当該放置時間と放置前の浸漬時間の和が上記した浸漬時間の範囲内となるような時間とする。【0027】第2処理工程において生地を上記のように浸漬または放置した後は、所望によりポリフェノールオキシダーゼの失活を行ってもよい。失活を行う場合は、生地をポリフェノールオキシダーゼが失活する温度以上の環境下で維持すればよい。失活は、例えば浸漬されている水溶液温度を上げることによって達成してもよいし、放置されている生地の環境温度を上げることによって達成してもよいし、放置されている生地を上記温度以上の水に浸漬することによって達成してもよい。失活は通常、10〜20分間で達成される。【0028】ポリフェノールオキシダーゼ処理後、生地を水洗乾燥する。【0029】タンニン処理およびポリフェノールオキシダーゼ処理された生地は所望により毛焼き処理、柔軟処理、ねじれ防止処理、および防縮処理され、その後、ジーンズ等に製品化される。これらの処理は上記両処理の終了後でなくともタンニン処理の前、タンニン処理後ポリフェノールオキシダーゼ処理前に行っても良い。但し、製品化は少なくとも毛焼き処理、ねじれ防止処理および防縮処理が終了した後で行うことが好ましい。そのような好ましい処理工程順序としては、例えば、▲1▼タンニン処理−ポリフェノールオキシダーゼ処理−毛焼き処理−柔軟処理−ねじれ防止処理−防縮処理−製品化処理の順序、▲2▼毛焼き処理−タンニン処理−ねじれ防止処理−防縮処理−ポリフェノールオキシダーゼ処理−柔軟処理−製品化処理の順序、▲3▼毛焼き処理−タンニン処理−柔軟処理−ねじれ防止処理−防縮処理−製品化処理−ポリフェノールオキシダーゼ処理の順序等が挙げられるが、タンニン処理の後、ポリフェノールオキシターゼ処理を行う順序さえ守ればこれらに制限されない。【0030】毛焼き処理、柔軟処理、ねじれ防止処理、防縮処理、および製品化処理はそれぞれ従来から当該分野で行われている各処理と同様である。毛焼き処理は生地表面の毛羽を焼いて除去し平滑にし、生地組織を鮮明にするための処理であり、詳しくは、熱板式、電熱式またはガス炎式の毛焼き機を用いて毛焼きする。【0031】柔軟処理は、生地を柔軟にするための処理であり、生地の繊維間の摩擦抵抗を低下させ、滑らかさ、しなやかさを増大させることによって柔軟化を達成してもよいし、弾力のあるかさ高感を増大させることによって柔軟化を達成してもよい。具体的には、油脂、ろう、油脂製品、界面活性剤、吸湿性薬剤(グリセリン、グルコース等)等の柔軟剤の溶液を生地に吸収させ乾燥させる。ねじれ防止処理は、生地がねじれにくくなるように施す処理である。防縮処理は、洗濯による収縮を防止するための処理である。製品化処理においては、生地を裁断および縫製して所望の製品を作製する。【0032】以上のような方法によって処理された生地は色が全体的に黄味がかり、特にデニムを用いた場合においては実際に10〜20年間保存したデニムと同等の優れたビンテージ感を有している。また、本発明の方法によって処理された生地が有するビンテージ感は光、汗、摩擦、および洗濯に対する耐久性に優れている。さらに、本発明の方法において使用されるタンニンおよびポリフェノールオキシダーゼは天然物質であるため、環境を汚染することはない。【0033】【実施例】実施例1(連続式)生地は、経糸としてインジゴ系染料で染色された7番手綿糸を63本/インチで用い、緯糸として染色されていない6番手綿糸を42本/インチで用いて得られたデニム(KD1509;倉敷紡績株式会社製)50mを使用した。タンニンはタンニン酸(ナカライテスク社製)を使用した。まず生地を、仕上げ加工機によって、3g/Lのタンニン水溶液に浸漬して、絞って、乾燥させた。乾燥開始直前において生地に吸収されているタンニン水溶液の量は生地の初期重量(乾燥時)に対して50重量%であった。次いで、乾燥した生地を、ジッガーを使用して、10g/LのデニライトIIS(ノボ社製)水溶液(室温、pH5.0)中、2回通過させた。得られた生地をロールに巻き上げ、濡れたままの状態で室温で1時間放置した後、水洗し、乾燥させた。その後、再度仕上げ加工機を用いて、生地の毛焼き処理、柔軟処理、ねじれ防止処理、および防縮処理を行い、裁断および縫製してジーンズを作った。【0034】実施例2(バッチ式)生地は、経糸としてインジゴ系染料で染色された7番手綿糸を63本/インチで用い、緯糸として染色されていない6番手綿糸を42本/インチで用いて得られたデニム(KD511;倉敷紡績株式会社製)50mを使用した。タンニンは実施例1で使用したものを使用した。まず生地を、仕上げ加工機によって、毛焼き処理し、5g/Lのタンニン水溶液に浸漬して、絞って、乾燥させた。乾燥開始直前において生地に吸収されているタンニン水溶液の量は生地の初期重量(乾燥時)に対して50重量%であった。次いで、生地のねじれ防止処理、および防縮処理を行った後、裁断および縫製してジーンズ製品20着を作った。一方、1%owfのデニライトIIS(ノボ社製)を生地(ジーンズ)重量に対して15倍重量の水に溶解して60℃の溶液(pH5.0)を調製した。ワッシャー加工機を用いて、上記溶液にジーンズ製品を30分間浸漬した後、80℃で10分間さらに浸漬して酵素を失活させ、水洗および脱水し、乾燥させた。【0035】比較例1〜3生地は、実施例1で使用されたデニムと同様のものを使用した。顔料としてDISPERSE YELLOW SD−4002(大日本インキ化学社製)を使用した。生地を、下記顔料濃度および室温の顔料水溶液に浸漬して乾燥した後、水洗し、更に乾燥させた。その後、生地の毛焼き処理、柔軟処理、ねじれ防止処理、および防縮処理を行い、裁断および縫製してジーンズを作った。比較例1〜3の顔料濃度は順に0.1重量%、0.5重量%、および1重量%であった。【0036】比較例4デニライトIISによる処理を行わなかったこと以外、実施例2と同様にしてズボンを作成した。【0037】評価(目視)実施例1および2および比較例1〜3で得られたジーンズを、実際に10〜20年間保管していたジーンズ(オリゾンティ社製およびマッコイ社製;以下、オリゾンティ社製およびマッコイ社製のジーンズをそれぞれ単に「オリゾンティ」および「マッコイ」という)と目視により比較した。実施例1および2で得られたジーンズはいずれも、オリゾンティおよびマッコイと同程度に黄味がかっており、オリゾンティおよびマッコイと比較しても遜色ない優れたビンテージ感を有していた。比較例1および3で得られたジーンズをオリゾンティおよびマッコイと比較したところ、比較例1で得られたジーンズは明らかに黄色が薄く、一方で比較例3で得られたジーンズは明らかに黄色が濃く、いずれのジーンズもビンテージ感を全く有していなかった。比較例で得られたジーンズのうち、ジーンズに染色された黄色の濃さに関してオリゾンティおよびマッコイに最も近かったのは比較例2で得られたジーンズであったが、該ジーンズの黄色はオリゾンティおよびマッコイ、ならびに実施例1および2のジーンズほど自然に染色されておらず、該ジーンズのビンテージ感は不十分であった。【0038】(色彩色差計)実施例1および2および比較例2で得られたジーンズ、ならびにオリゾンティおよびマッコイを色彩色差計(COLOR 7X;倉敷紡績株式会社製)による測定に供した。得られた測定結果のうちC値(彩度)およびH(色相)の結果を表1に示す。C値は、Lab表色系におけるa−b座標の中心からの距離を表し、値が大きいほど色が鮮やかであることを意味する。Hはa−b座標においてa軸プラス方向からの左周り角度を表し、当該角度によって色相を示す。【0039】【表1】【0040】比較例2のジーンズは色相がオリゾンティおよびマッコイによく近似しているものの、彩度が最も離れていた。これらの結果によると、ビンテージ感を出すためには、色相をオリゾンティおよびマッコイに近似させるだけでは不十分であり、色相と彩度とを同時に適度にオリゾンティおよびマッコイに近似させることが重要であると考えられる。顔料による染色では色相と彩度とを同時に適度にオリゾンティおよびマッコイに近似させることはできず、そのために染色が不自然となって、十分なビンテージ感が得られないと考えられる。【0041】(耐久性)実施例2で得られたジーンズの光、汗、摩擦、および洗濯に対するビンテージ感の耐久性を評価した。比較例4で得られたジーンズの洗濯に対するビンテージ感の耐久性を評価した。詳しくは、実施例2のジーンズを家庭用洗剤によって洗濯機で洗っても、ビンテージ感は失われなかった。比較例4のジーンズを家庭用洗剤によって洗濯機で洗うと、ビンテージ感が失われた。【0042】光、汗および摩擦に対するビンテージ感の耐久性を耐光堅牢度、汗堅牢度および摩擦堅牢度に基づいて評価した。・耐光堅牢度JIS L 0842 カーボンアーク灯光に対する染色堅牢度試験方法(第3露光法)に準拠。変退色4級以上で合格。・汗堅牢度JIS L 0848 A法 汗に対する染色堅牢度試験方法に準拠。変退色4級以上で合格。・摩擦堅牢度JIS L 0849 摩擦に対する染色堅牢度試験方法に準拠。JIS L 0849 6.1乾燥試験に準拠。汚染4級以上で合格。JIS L 0849 6.2湿潤試験に準拠。汚染2〜3級以上で合格。等級が高いほど、変退色しない、あるいは汚染しないことを示す。【0043】【表2】【0044】【発明の効果】本発明の方法および二液系生地染色用組成物によれば、実際に長期保存された生地が有するようなビンテージ感を比較的短時間で、生地、特にデニムに付与できる。 タンニンを含有する水溶液により室温で生地を処理する工程、およびポリフェノールオキシダーゼ濃度が0.5〜50g/Lで、pH4.0〜5.5の水溶液により生地を処理する工程を含む生地染色法。 タンニンを含有する水溶液により生地を処理した後、該生地を、ポリフェノールオキシダーゼを含有する水溶液によりさらに処理する請求項1に記載の生地染色法。 ポリフェノールオキシダーゼがラッカーゼである請求項1または2に記載の生地染色法。 生地としてデニムを用いる請求項1〜3いずれかに記載の生地染色法。 タンニンを含有する水溶液およびポリフェノールオキシダーゼを含有する水溶液からなる二液系生地染色用組成物。