タイトル: | 特許公報(B2)_二酸化炭素からのメタンの製造方法 |
出願番号: | 2001064134 |
年次: | 2009 |
IPC分類: | B01J 35/10,B01J 21/16,C07B 61/00,C07C 1/12,C07C 9/04,C10L 3/06 |
蛯名 武雄 坪 紀彦 横山 千昭 JP 4214218 特許公報(B2) 20081114 2001064134 20010307 二酸化炭素からのメタンの製造方法 独立行政法人産業技術総合研究所 301021533 須藤 政彦 100102004 蛯名 武雄 坪 紀彦 横山 千昭 20090128 B01J 35/10 20060101AFI20090108BHJP B01J 21/16 20060101ALI20090108BHJP C07B 61/00 20060101ALI20090108BHJP C07C 1/12 20060101ALI20090108BHJP C07C 9/04 20060101ALI20090108BHJP C10L 3/06 20060101ALI20090108BHJP JPB01J35/10 301GB01J21/16 ZC07B61/00 300C07C1/12C07C9/04C10L3/00 A B01J21/00-38/74, C01B33/00-33/46, C07C1/12, C07C9/04 特開平6−48722(JP,A) 坪 紀彦、外3名,Ni含有スメクタイトを用いたCO2のメタン化,化学工学会秋季大会研究発表講演要旨集,33rd,2000年8月12日,p.248 1 2002263494 20020917 7 20010307 2005023533 20051207 板橋 一隆 繁田 えい子 木村 孔一 【0001】【発明の属する技術分野】 本発明は、二酸化炭素からメタンを製造する方法に関するものであり、更に詳しくは、二酸化炭素のメタン化反応で二酸化炭素からメタンを生成する活性を有する3−八面体型スメクタイト様合成多孔体を触媒として使用し、二酸化炭素のメタン化反応を利用して二酸化炭素を水素化することにより、燃料や化学原料として有用なメタンを効率的に合成する新規な方法に関するものである。【0002】【従来の技術】一般に、石油、石炭などの化石資源の急激な消費に伴い、それらの枯渇が危倶されるようになるとともに、排出され続ける二酸化炭素の大気中濃度の上昇は、近年の地球温暖化の主要因と考えられている。このように、エネルギー問題は、地球温暖化問題と等価であると考えられる。これらの問題に対処する方法として、省エネルギーの推進や代替エネルギーの開発などによる二酸化炭素の排出量の削減、二酸化炭素の物理的、生物的あるいは化学的固定化などが考えられている。また、二酸化炭素は、地球上に無尽蔵にある未利用資源であるという観点からも、人工的な二酸化炭素の再循環、再資源化技術の開発が期待されている。【0003】それらの技術的手段の中のひとつとして、二酸化炭素の接触水素化が挙げられ、二酸化炭素を高性能触媒により効率よくメタン、あるいはメタノール等の有用な工業的化学原料に変換する方法が提案されてきており、そのための触媒開発を中心とした多くの研究がなされてきている。しかし、それらの反応に提案されてきた触媒の活性は必ずしも十分ではなく、一層の性能改善が要求されている。【0004】一般に、二酸化炭素のメタン化反応は、次式で表される。CO2 +4H2 →CH4 +2H2 O工業的には、この反応において高選択率を有する触媒の活性成分としては、Ni系触媒が最もよく用いられている。触媒の活性を高めるために、高比表面積を有するシリカ、アルミナ等の担体に触媒の活性成分を高分散に担持したりしている。触媒の担持方法は、調製の容易さから、含浸法がもっとも用いられる。含浸法で調製した触媒では、活性金属成分と促進剤との添加量を任意に制御することが容易であるが、これらの成分は、主に触媒表面に偏析しているために、反応に先立つ前処理や反応条件下において凝集しやすく、粒子径を微小かつ均一に保つことが困難であった。このため、含浸法で調製した触媒では、本来期待されるべきレベルの高い触媒活性が得られないばかりではなく、主生成物のメタンの他に、一酸化炭素のような好ましくない副生物の生成が顕著であるという問題があった。【0005】【発明が解決しようとする課題】 このような状況の中で、本発明者らは、上記従来技術に鑑みて、二酸化炭素を水素化し、メタン等を製造する触媒について鋭意研究を行った結果、Ni2+あるいはNi2+およびMg2+を含む3−八面体型スメクタイト様合成多孔体を100〜250℃での水熱処理によって合成し、空気中において100〜1000℃で焼成した合成多孔体を200〜600℃で水素還元処理したものを触媒として用いることにより、二酸化炭素と水素からなる混合ガスから、一酸化炭素の副生を抑制し、メタンを高選択率で製造することが可能な新しい方法を見出し、本発明を完成するに至った。 本発明は、二酸化炭素のメタン化反応で二酸化炭素からメタンを生成する活性を有する3−八面体型スメクタイト様合成多孔体からなる触媒を用いて、二酸化炭素からメタンを高選択率で製造する方法を提供することを目的とするものである。【0006】【課題を解決するための手段】 上記課題を解決するための本発明は、以下の技術的手段から構成される。(1)一般式(I); Si4−xAlxM2+yO8−x/2+y−z/2(OH)2・nH2O (I)(式中xは、0≦x≦0.8、yは、2.2≦y≦3.0、zは、2.0≦z≦4.5、nは、不定比の関係を満たし、M2+は、Ni2+あるいはNi2+およびMg2+のいずれかの2価金属イオンを表す)で示される含水酸化物に、カチオン性有機化合物を添加し、100〜250℃で水熱処理し、空気中において100〜1000℃で焼成して得られる3−八面体型スメクタイト様合成多孔体であり、かつ比表面積が250〜1000m2/gであり、平均細孔径が20〜100Åであり、細孔容積が0.2〜1.5ml/gである3−八面体型スメクタイト様合成多孔体を200〜600℃で水素還元処理したもので、しかも二酸化炭素のメタン化反応活性を有するものを触媒として用いて、二酸化炭素のメタン化反応で二酸化炭素からメタンを製造する方法であって、当該触媒に、50〜200ml/min/g−触媒の反応物質のガス流速で、実質的に一酸化炭素を含まず、二酸化炭素と水素を含有するガスを接触させ、一酸化炭素の副生を抑制し、メタンを少なくとも95.6%の高選択率で生成させることを特徴とする二酸化炭素からのメタンの製造方法。【0007】【発明の実施の形態】次に、本発明について更に詳細に説明する。本発明は、ケイ素、アルミニウムの他に、ニッケルあるいはニッケルおよびマグネシウムを含有した複合沈殿物を水熱合成により調製し、空気中において100〜1000℃の温度で焼成して得られる、3−八面体型スメクタイト様合成多孔体からなる触媒、この3−八面体型スメクタイト様合成多孔体を、更に、水素気流中で200〜600℃の温度で還元処理したものを触媒として用い、当該触媒に、実質的に一酸化炭素を含まず、二酸化炭素と水素を含有するガスを接触させ、メタンを生成させることを特徴とする、二酸化炭素と水素からなる混合ガスからメタンを高効率で製造する方法、である。【0008】 本発明では、ケイ素、アルミニウムの他に、ニッケルあるいはニッケルおよびマグネシウムが、一般式(I)で示された値を満足するように、ケイ酸ナトリウム溶液とアルミニウム塩水溶液、およびマグネシウム、ニッケルの各金属塩のいずれか1種類以上の水溶液を混合し、混合液のpHを8以上、好ましくは9.5以上に調整し、各成分の複合沈殿物を得る。 アルミニウム、マグネシウム、ニッケル、の各金属は、塩化物、炭酸塩、フッ化物、水酸化物、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、過塩素酸塩などの形で用いられる。混合液のpHは、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、アンモニア水等で調整することができる。 得られた沈殿物を水洗することにより、副生塩を除去した後、水および要すれば水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カルシウム水溶液、アンモニウム水などを添加し、更に、カチオン性有機化合物として、例えば、ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド等を添加することにより、原料スラリーを調製する。【0009】カチオン性有機化合物の配合量は、含水酸化物に対して(x−2y+6)当量(式中、xおよびyは一般式(I)と同じ) である。この値は有効に作用しうる最大量であり、一般的には、水熱処理後の段階でも、含水酸化物は、水酸基を含む程度にとどまるので、更に少量でも良い。得られた原料スラリーをオートクレーブに移し、水熱反応させる。水熱反応温度は、100〜250℃、好ましくは100〜200℃である。水熱反応物は、濾過、水洗後、乾燥する。水洗は最終生成物の均質性、特性の再現性に影響を与えるため、50〜90℃の温水を用い、迅速に洗浄するのが好ましいが、洗浄工程を省くこともできる。乾燥は、一般的な乾燥機または真空乾燥機を用い、常温から200℃で脱水乾燥するか、あるいは凍結乾燥する。また、必要により粉砕しても良い。【0010】得られた乾燥反応生成物を、電気炉等で100〜1000℃、好ましくは400〜600℃で加熱処理することで、3−八面体型スメクタイト様合成多孔体が生成し、本発明の触媒が得られる。これよりも温度が低いと、多孔体材料に起因する有機物の残留が顕著であり、これによる活性金属種表面の被毒のため活性が低い。一方、これよりも温度が高いと、多孔体構造の一部崩壊により活性金属種の表面積が減少し、活性が低下するため、いずれも好ましくない。加熱時間は2時間程度で十分である。反応に先立つ水素処理温度は、200〜600℃、好ましくは350〜500℃の温度範囲で、水素ガス流速50〜200ml/min/g−触媒の範囲で行う。【0011】本発明に従って製造された3−八面体型スメクタイト様合成多孔体は、高められた温度で、実質的に一酸化炭素を含まず、二酸化炭素と水素を含有するガスを選択的にメタンに転化し、しかも、一酸化炭素の副生の少ない触媒として使用される。反応の形式は、気相固定床である。【0012】 本発明において、二酸化炭素と水素の混合ガスからメタンを合成する場合、その反応条件として、二酸化炭素と水素のCO2/H2モル比は1/10〜1/1、好ましくは1/2〜1/4であり、反応温度は150〜450℃、好ましくは300〜400℃であり、反応圧力は1〜50kg/cm2である。反応物質のガス流速は、50〜200ml/min/g−触媒の範囲である。接触の際、反応物質は不活性気体で希釈しても良い。本発明においては、二酸化炭素の水素化により得られる生成物は、主としてメタンであり、副生物として一酸化炭素が得られる。反応温度、反応圧力、ガス流速などの反応条件を変化させることにより、主生成物であるメタンの生成量を高めることができる。【0013】【実施例】 次に、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明は当該実施例によって何ら限定されるものではない。実施例1(1)触媒の調製 3号水ガラス(SiO2 28%,Na2 O 9%,モル比3.22)26.1gを蒸留水120mlに溶解させ、13規定の硝酸9.6mlを加えた溶液に、蒸留水60mlに塩化アルミニウム六水和物特級試薬3.28gおよび塩化ニッケル六水和物特級試薬24.2gを溶解した溶液を攪拌させながら1分間で加えて混合した。3規定水酸化ナトリウム水溶液100mlに攪拌しながらこの溶液を1分間で加えて混合すると、直ちに反応沈殿物が得られた。更に、3規定水酸化ナトリウム水溶液を滴下し、溶液のpHを11.5とした。反応沈殿物を濾過した後、十分に水洗した。沈殿物を蒸留水500mlに入れスラリー状とし、ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド特級試薬3.59gを加え、よく攪拌したのち、オートクレーブに移し、175〜250℃で2時間反応させた。冷却後、反応生成物を取り出し、70℃で一晩乾燥して、Ni含有3−八面体型スメクタイト様合成多孔体12gを得た。窒素吸着測定により、比表面積461m2/g、細孔容積0.235cm3 /g、平均細孔径27.1Åであった(175℃の場合)。尚、同様にして、NiおよびMg含有3−八面体型スメクタイト様合成多孔体を合成した。【0014】(2)二酸化炭素からメタンの製造 この触媒を、粉砕し、10〜28meshに整粒し、反応に使用した。この触媒1gを固定床反応管に充填し、水素気流中(150ml/min/g−触媒) において、450℃で3時間還元処理を行った。アルゴンガス10mol%を含むCO2 /H2 =1/3の組成を有する混合ガスを100ml/min/g−触媒の流速で流し、常圧、350℃の条件で反応を行った。原料ガスに含まれるアルゴンガスを内部標準として、反応管に直結したガスクロマトグラフを用いて反応生成物を分析した。主生成物のメタンの他に、少量の一酸化炭素の副生が認められた。これらの収量およびメタン選択率を表1に示す。尚、NiおよびMg含有3−八面体型スメクタイト様合成多孔体の場合にも同様の結果が得られた。【0015】比較例1塩化ニッケル六水和物特級試薬の代わりに塩化コバルト六水和物を加えて、実施例1と同様の方法でCo含有3−八面体型スメクタイト様合成多孔体を合成した。これを実施例1と同様の条件で反応に使用した。反応結果を表1に示す。【0016】比較例2塩化ニッケル六水和物特級試薬の代わりに塩化鉄(II) 水和物を加えて、実施例1と同様の方法でFe含有3−八面体型スメクタイト様合成多孔体を合成した。これを反応温度が300℃である以外は、実施例1と同様の条件で反応に使用した。反応結果を表1に示す。【0018】【表1】【0019】【発明の効果】 本発明により、次のような効果が奏される。(1)3−八面体型スメクタイト様合成多孔体からなる触媒を用いて二酸化炭素のメタン化反応で二酸化炭素からメタンを生成する方法を提供することができる。(2)二酸化炭素と水素を含有するガスからメタンを高選択率で合成することができる。(3)一酸化炭素のような好ましくない副生成物の生成が少ない。(4)反応条件を調整することにより、メタンの生成量を高めることができる。(5)触媒の調製温度を制御することにより、メタンの生成量を高めることができる。 一般式(I); Si4−xAlxM2+yO8−x/2+y−z/2(OH)2・nH2O (I)(式中xは、0≦x≦0.8、yは、2.2≦y≦3.0、zは、2.0≦z≦4.5、nは、不定比の関係を満たし、M2+は、Ni2+あるいはNi2+およびMg2+のいずれかの2価金属イオンを表す)で示される含水酸化物に、カチオン性有機化合物を添加し、100〜250℃で水熱処理し、空気中において100〜1000℃で焼成して得られる3−八面体型スメクタイト様合成多孔体であり、かつ比表面積が250〜1000m2/gであり、平均細孔径が20〜100Åであり、細孔容積が0.2〜1.5ml/gである3−八面体型スメクタイト様合成多孔体を200〜600℃で水素還元処理したもので、しかも二酸化炭素のメタン化反応活性を有するものを触媒として用いて、二酸化炭素のメタン化反応で二酸化炭素からメタンを製造する方法であって、当該触媒に、50〜200ml/min/g−触媒の反応物質のガス流速で、実質的に一酸化炭素を含まず、二酸化炭素と水素を含有するガスを接触させ、一酸化炭素の副生を抑制し、メタンを少なくとも95.6%の高選択率で生成させることを特徴とする二酸化炭素からのメタンの製造方法。