タイトル: | 特許公報(B2)_トウガラシからのカプサイシノイド様物質の抽出方法 |
出願番号: | 2001025258 |
年次: | 2011 |
IPC分類: | C07C 67/48,C07C 69/533,C07C 69/025,C07C 231/24,A23L 1/30,A61K 36/81,A61K 36/00,A61P 3/02,A61P 29/00,A61P 37/04,C07C 233/20,C07B 63/00 |
田原 弘之 松倉 勝喜 橋爪 秀一 加藤 正俊 瀬戸口 裕子 JP 4637377 特許公報(B2) 20101203 2001025258 20010201 トウガラシからのカプサイシノイド様物質の抽出方法 長谷川香料株式会社 000214537 特許業務法人小田島特許事務所 110000741 江角 洋治 100074217 味の素株式会社 000000066 特許業務法人小田島特許事務所 110000741 田原 弘之 松倉 勝喜 橋爪 秀一 加藤 正俊 瀬戸口 裕子 20110223 C07C 67/48 20060101AFI20110203BHJP C07C 69/533 20060101ALI20110203BHJP C07C 69/025 20060101ALI20110203BHJP C07C 231/24 20060101ALI20110203BHJP A23L 1/30 20060101ALI20110203BHJP A61K 36/81 20060101ALI20110203BHJP A61K 36/00 20060101ALI20110203BHJP A61P 3/02 20060101ALI20110203BHJP A61P 29/00 20060101ALI20110203BHJP A61P 37/04 20060101ALI20110203BHJP C07C 233/20 20060101ALI20110203BHJP C07B 63/00 20060101ALN20110203BHJP JPC07C67/48C07C69/533C07C69/025 AC07C231/24A23L1/30 BA61K35/78 RA61K35/78 XA61K35/78 YA61P3/02A61P29/00A61P37/04C07C233/20C07B63/00 C C07C A23L CA/REGISTRY(STN) 特開昭61−242559(JP,A) 特開平11−246478(JP,A) 特開2001−026538(JP,A) 特開平10−114649(JP,A) 特開平02−157274(JP,A) 特開2001−078708(JP,A) 特開平11−035538(JP,A) 3 2002226445 20020814 6 20070711 藤原 浩子 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、トウガラシからのカプサイシノイド様物質の抽出方法に関し、更に詳しくは、トウガラシ、特に、トウガラシの無辛味固定品種を超臨界又はその近傍の状態にある二酸化炭素を抽剤として用いて抽出処理することを特徴とするカプサイシノイド様物質の抽出方法に関する。【0002】【従来の技術】トウガラシ(Capsicum annuum L.)は、食品、香辛料及び医薬品原料として世界中で広く利用されている植物である。トウガラシの果実から単離・構造決定された辛味成分は、現在までにカプサイシン、ジヒドロカプサイシンなど14種類に達しており、カプサイシノイドと総称されている。カプサイシンは様々な生理活性を有しており、例えば、食欲増進や唾液・胃酸分泌、消化管蠕動、エネルギー代謝の亢進作用など(河田照雄,岩井和夫:香辛料成分の体熱産生亢進作用とその発現機構,岩井和夫,中谷延二編「香辛料成分の食品機能」,光生館,1989年,P97−129)のほかに、新しいタイプの鎮痛薬としての可能性が報告されている。しかしながら、カプサイシンはその強烈な辛味がトウガラシ摂取の魅力のひとつではあるが、この強辛味と発痛作用のためにその使用量等が制限され、食品添加物又は医薬としての用途はかなり限られている。【0003】一方、辛味の少ないトウガラシとして、タイ国で入手した辛味品種の変異株から、京都大学の実験園場で選抜固定されたトウガラシの無辛味固定品種である「CH−19甘」には、カプサイシノイドはほとんど含まれておらず、カプサイシノイド様物質が多量含有されていることが報告されている(園芸学会雑誌,58,3,601−607,1989)。また、そのカプサイシノイド様物質がカプシエイト及びジヒドロカプシエイトであり、これらのカプサイシノイド様物質には免疫の賦活化作用およびエネルギー代謝の活性化作用があることが示されている(J.Agricultural and Food Chemistry,46,5,1695-1697,1998、特開平11−246478号公報参照)。【0004】上記の特開平11−246478号公報には、カプサイシノイド様物質を抽出する方法として、前記トウガラシの無辛味固定品種「CH−19甘」を酢酸エチルで抽出し、得られた抽出物から酢酸エチルを留去したオレオレジンをシリカゲルによるクロマトグラフィにかけて精製する方法が記載されている。【0005】【発明が解決しようとする課題】カプサイシノイド様物質を有機溶媒で抽出する上記の方法では、トウガラシの色素成分や微量含有されるカプサイシンなども一緒に抽出されるため、カプサイシノイド様物質を高純度で抽出することができず、さらに精製するためには、シリカゲルによるクロマトグラフィなどの煩雑な分離・精製工程を必要とする。しかし、このような有機溶媒による抽出及び/又はクロマトグラフィーなどによる分離・精製工程において、カプサイシノイド様物質の分解がおこり、カプサイシノイド様物質を高収率で抽出することができないという問題がある。【0006】従って、本発明の目的は、トウガラシ、特にトウガラシの無辛味固定品種から、高収率、高純度でかつ工業的に有利に、辛味のないカプシエイト、ジヒドロカプシエイトなどのカプサイシノイド様物質を抽出する方法を提供することである。【0007】【課題を解決するための手段】本発明者らは、トウガラシ、特にトウガラシの無辛味固定品種から、高収率、高純度でかつ工業的に有利にカプサイシノイド様物質を抽出する方法について鋭意研究を行った結果、今回、トウガラシ、特にトウガラシの無辛味固定品種を超臨界又はその近傍の状態にある二酸化炭素を抽剤として用いて抽出処理すること、特にシリカゲルなどの吸着剤の存在下に抽出することにより、カプサイシノイド様物質を高収率、高純度でかつ工業的に有利に抽出することができることを見いだし、本発明を完成するに至った。【0008】かくして、本発明によれば、トウガラシ、特にトウガラシの無辛味固定品種を超臨界又はその近傍の状態にある二酸化炭素を抽剤として用いて抽出処理すること、好ましくはシリカゲルなどの吸着剤の存在下に抽出処理することを特徴とするカプサイシノイド様物質の抽出方法が提供される。【0009】以下、本発明について更に詳細に説明する。【0010】【発明の実施の形態】本発明において使用しうるトウガラシは、カプサイシノイド様物質を含有するものであればその品種、産地等には特に制限はないが、好ましくはカプサイシンなどの辛味成分の含有量が少ない無辛味固定品種が好適である。かかるトウガラシの無辛味固定品種としては、例えば、トウガラシの無辛味固定品種「CH−19甘」を挙げることができ、そのトウガラシ自体(未処理品)、その凍結乾燥などの適宜な乾燥手段によって乾燥された乾燥物、その粉砕物のいずれでも使用することができるが、カプサイシノイド様物質の抽出効率の点から乾燥粉砕物を好ましく例示することができる。【0011】上記のトウガラシ、特に、トウガラシの無辛味固定品種の超臨界状態又はその近傍の状態にある二酸化炭素(以下、超臨界二酸化炭素と略称する)による抽出は、超臨界二酸化炭素を用いるそれ自体既知の抽出方法に従って実施することができる。一般には、約70℃以下の温度及び約40MPa以下、特に約20〜約60℃の範囲内の温度及び約7MPa〜約30MPaの範囲内の圧力の条件下の二酸化炭素を用いて抽出操作を行うのが好適である。【0012】本発明では、トウガラシを超臨界二酸化炭素で抽出する際に、好適には、吸着剤の存在下で行うことにより、原料に微量存在するカプサイシン、色素成分、ワックス成分などを吸着除去し、目的とするカプサイシノイド様物質の純度を向上させるができる。かかる吸着剤としては特に制限されるものではなく、例えば、シリカゲル、ゼオライト、多孔性樹脂などの上記微量成分を効率よく吸着除去する能力をもつ多孔性物質を挙げることができ、特にシリカゲルを好ましく例示することができる。吸着剤の使用量も特に制限されないが、トウガラシの重量を基準にして、通常約1〜約50重量%、好ましくは約2〜約20重量%の範囲内とすることができる。【0013】また、本発明では、トウガラシにあらかじめ油脂類を添加混合した後、超臨界二酸化炭素で抽出することにより、目的とするカプサイシノイド様物質の収率を向上させ、かつカプサイシノイド様物質の分解を抑えるために有効である。かかる油脂類としては、例えば、大豆油、菜種油、ヤシ油、コメ油、コーン油などの植物油脂類;炭素数6〜10の飽和脂肪酸(例えば、カプリル酸及びカプリン酸)を主要な構成成分とした脂肪酸とグリセリンから構成される中鎖飽和脂肪酸トリグリセライド類などを例示することができ、また、その使用量は、トウガラシの重量を基準にして、通常約0.5〜約50重量%、特に約1〜約10重量%の範囲内が好適である。【0014】さらに、本発明に従う超臨界二酸化炭素による抽出は、場合により、エントレーナーとして、水、エタノール、メタノール等を併用して行なうことができる。【0015】本発明の一実施態様を例示すれば、まず、トウガラシの無辛味固定品種を抽出槽に入れ、所望により中鎖脂肪酸トリグリセライドを加えて均一に混合する。さらに所望によりシリカゲルなどの吸着剤を仕込んだ後、該抽出槽に超臨界二酸化炭素を供給して抽出処理をおこなう。その際の抽出条件は、前述したとおり、一般には、温度約20〜約60℃及び圧力約7MPa〜約30MPa、好ましくは温度約30〜約40℃及び圧力約10MPa〜約20MPaの範囲内で、使用する二酸化炭素の所望の状態に応じた温度及び圧力を採用することができる。抽出時間も適宜選択することができるが、通常約1時間〜約50時間、好ましくは約3時間〜約8時間の範囲内とすることができる。また、二酸化炭素の供給量は、通常、トウガラシ1gあたり0.5〜20g/h、好ましくは3〜10g/hの範囲内とすることができる。【0016】抽出は、例えば、二酸化炭素を連続的に吹き込むことによって行うことができる。抽出終了後、カプサイシノイド様物質を含有する二酸化炭素流体を分離槽に導き、超臨界抽出で常用されている方法、例えば、圧力を下げる方法、温度を変化させる方法、分離槽中に抽出された溶質を吸着するような吸着剤を充填しておく吸着法など、抽出条件に応じた適宜の分離手段を採用することにより、上記した如きカプサイシノイド様物質を回収することができる。分離された二酸化炭素は液化槽に輸送して再利用することができる。【0017】このようにして得られるカプサイシノイド様物質は、実質的にカプサイシンなどの辛味成分を含有しないため、エネルギー代謝の活性化及び免疫の賦活化等の各種生理活性作用を有する食品添加物又は医薬品成分として使用することができる。例えば、持続的運動における耐久性維持のための食品添加物又は医薬品成分として、或いは非麻酔性の鎮痛薬として利用することができる。【0018】【実施例】次に実施例および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。【0019】実施例1内容積5リットルの抽出槽にトウガラシの無辛味固定品種「CH−19甘」の凍結乾燥品粉砕物900gを仕込み、超臨界二酸化炭素(抽出槽:圧力10MPa、温度40℃;二酸化炭素供給量5Kg/h)を供給しながら5時間抽出を行った。次いで抽出ガスを分離槽に導き、分離槽内の温度40℃、圧力4MPaの条件で分離し、抽出物9.4gを得た(本発明品1)。【0020】実施例2実施例1において、さらにシリカゲル90g(トウガラシの無辛味固定品種「CH−19甘」に対して20重量%)を仕込んだ以外は実施例1と同様に処理して抽出物5.4gを得た(本発明品2)。【0021】実施例3実施例2において、あらかじめODO(日清製油株式会社製、中鎖飽和脂肪酸トリグリセライドの商品名)45g(トウガラシの無辛味固定品種「CH−19甘」に対して5重量%)をトウガラシの無辛味固定品種「CH−19甘」に添加混合した以外は実施例2と同様に処理して抽出物30.1gを得た(本発明品3)。【0022】比較例12リットル三径フラスコに実施例1で使用したものと同じトウガラシの無辛味固定品種「CH−19甘」の凍結乾燥品粉砕物100gにメタノール1000gを加えて、40℃にて5時間攪拌抽出した。抽出終了後、固液分離、濾紙濾過して抽出液850gを得た。その後、減圧にてメタノールを回収し、抽出物20.9gを得た(比較品1)。【0023】比較例2比較例1において、メタノールを酢酸エチルに代えた以外は比較例1と同様に処理して、抽出物14.4gを得た(比較品2)。【0024】比較例3比較例1において、メタノールをヘキサンに代えた以外は比較例1と同様に処理して、抽出物13.5gを得た(比較品3)。(抽出物の分析)実施例1〜3および比較例1〜3で得られた各抽出物を下記に示した条件にて、抽出物中に含まれるカプサイシノイド様物質およびカプサイシンを分析し、その結果を下記の表1に示す。なお、表中のカプサイシノイド様物質の回収率は、原料であるトウガラシの無辛味固定品種「CH−19甘」の凍結乾燥品中のカプサイシノイド様物質を6倍量の酢酸エチルで3回攪拌抽出した抽出液を試料として、下記に示した高速液体クロマトグラフィーにより測定した値を100%として、その回収率で示した。分析条件カラム:ODS(4.6×150mm)溶媒 :80%メタノール流速 :1ml/min検出器:蛍光検出器 Ex=280mm,Em=320mm【0025】【表1】【0026】表1から明らかなように、本発明による抽出物は、比較品に比べ、カプサイシノイド様物質の回収率が高かった。また、シリカゲルを使用した本発明品2および本発明品3では、原料中に微量含まれているカプサイシンが完全に除去されていた。【0027】【発明の効果】以上述べたとおり、本発明の抽出方法によりトウガラシから、高収率、高純度でかつ工業的に有利にカプサイシノイド様物質を抽出することができ、極めて有用である。 無辛味固定品種のトウガラシの乾燥粉砕物を、超臨界又はその近傍の状態にある二酸化炭素を抽剤として用い、シリカゲルの存在下に抽出処理することを特徴とする辛味成分を含有しないカプサイシノイド様物質の抽出方法。 抽出処理をトウガラシにあらかじめ油脂類を添加混合した後におこなう請求項1に記載の方法。 カプサイシノイド様物質がカプシエイト又はジヒドロカプシエイトである請求項1又は2に記載の方法。