タイトル: | 特許公報(B2)_プロトン磁気共鳴スペクトル法を用いる結腸直腸腺腫および結腸直腸癌の診断方法 |
出願番号: | 2000620336 |
年次: | 2010 |
IPC分類: | G01N 33/483,G01N 24/00,G01R 33/465,G01R 33/32 |
ベザベー テドロス スミス イアン シー ピー レヴィン ベルナルド ジョンソン コンスタンス チャールズ ノア バーンスタイン JP 4486761 特許公報(B2) 20100402 2000620336 20000516 プロトン磁気共鳴スペクトル法を用いる結腸直腸腺腫および結腸直腸癌の診断方法 ナショナル リサーチ カウンシル オブ カナダ 500276482 ボード オブ リージェンツ ザ ユニヴァーシティ オブ テキサス システム 501450786 ザ ユニヴァーシティー オブ マニトバ 501450797 中村 稔 100059959 大塚 文昭 100067013 熊倉 禎男 100082005 宍戸 嘉一 100065189 竹内 英人 100096194 今城 俊夫 100074228 小川 信夫 100084009 村社 厚夫 100082821 西島 孝喜 100086771 箱田 篤 100084663 ベザベー テドロス スミス イアン シー ピー レヴィン ベルナルド ジョンソン コンスタンス チャールズ ノア バーンスタイン US 60/135,039 19990520 20100623 G01N 33/483 20060101AFI20100603BHJP G01N 24/00 20060101ALI20100603BHJP G01R 33/465 20060101ALI20100603BHJP G01R 33/32 20060101ALI20100603BHJP JPG01N33/483 EG01N24/00 DG01N24/08 510QG01N24/02 530M G01N 33/483 G01N 24/00 G01R 33/32 G01R 33/465 特開平10−307134(JP,A) 特表2002−534683(JP,A) 特表2002−511585(JP,A) 特表2002−529739(JP,A) 特表2002−539848(JP,A) 4 US2000013329 20000516 WO2000071997 20001130 2003500644 20030107 10 20070516 淺野 美奈 【0001】この発明は、結腸直腸腺腫および結腸直腸癌の検出方法に関するものであり、特に、プロトン磁気共鳴スペクトル法を用いるそのような腺腫および癌の検出方法に関するものである。結腸直腸癌は、アメリカ合衆国およびカナダでもっとも一般的な癌の1つであり、1999年にはおよそ146,000件の新しい症例が報告されている。北アメリカにおける個人が一生のうちに結腸直腸癌にかかる可能性は、約5〜6%である。便中血液、貧血、腹痛および排便習慣の変化が含まれる、結腸直腸癌に関係する症状は、この病気がかなり進行したときにだけ現われてくる。患者にとっての予後が診断時におけるこの病気の期に大きく左右されるということは、よく知られている。実際、結腸直腸癌が初期に検出された患者の5年生存率が92%であるのに対して、局部的に広がった結腸直腸癌のある患者のそれは約60%になり、遠くに転位した結腸直腸癌のある患者のそれは約6%になる。したがって、前駆腺腫および前駆癌をできるだけ早く検出して上首尾の治療的介入の機会を増やすことが重要である。【0002】病気のスクリーニングには、その病気が広い階層の人々に流行していることと、その病気の早期検出により死亡率が減ることと、生活の質が改善されることとが要求される。結腸直腸癌は、これらの要求を満たしており、したがって、そのような計画のための理想的な候補である。結腸直腸癌の自然成長、すなわち、何年(5〜15年)かの間にわたって起きる腺腫から腺癌への進行もまた、適切な対象になる。結腸直腸癌の早期検出についての費用便益分析も都合よく示されている(ボーリン,ティー.ディー(Bolin,T.D.)による「結腸直腸癌の早期検出についての費用便益」。Scand J Gastroenterol 誌の1996年、31補遺220の第142〜146ページ)。【0003】スクリーニング技術それ自体もまた、高い感度と特異度、低コスト、安全性および簡便性のような一連の規準を満たす必要がある。この目的のために、現在、直腸指診(DRE)、便中潜血検査法(FOBT)、バリウム注腸法および結腸X線直接透視法(S状結腸鏡検査法および結腸鏡検査法)が用いられている。DREには、指を使って直腸を検査することが含まれている。この方法によれば、触診することのできる、指の届く範囲にある癌が検出される。陰性のDRE結果であっても、患者に癌がないという再確認はほとんどもたらされない。なぜなら、検査の指によって触診することのできる結腸直腸癌は10%に満たないからである。【0004】FOBTによれば、結腸直腸癌のすべてが出血するという仮定に基づく化学的方法で便中潜血が検出される。このFOBT法は、もっとも安価でもっとも簡便であるが、感度が低く、特異度が中くらいであり、早期検出には通常、適していない。利用可能なデータによれば、この技術の主な欠点は、X線あるいは内視鏡によりこの方法で発見された癌の半数以上がたいてい初期の限界を超えているということである。検査を受けた患者が気ままなダイエットをしているときには、10〜12%の擬陽性率が予測される。陽性の予測値を概算すると、2.2〜50%の範囲にある。グアヤク法は感度がきわめて低く、その感度はほぼ50%程度である(ランゾホフ,ディー.エフ.(Ransohoff,D.F.)およびラング,シー.エー.(Lang,C.A.)による「便中潜血検査による結腸直腸癌についてのスクリーニング」:背景論文.Ann Intern Med 誌の1997年 126:第811〜822ページ)。FOBTの使用は、結腸直腸癌が出血を伴うものであるという仮定に基づくものである。しかしながら、断続的に出血する結腸直腸癌もいくらかあり、まったく出血しない結腸直腸癌もある。【0005】バリウム注腸法には、造影剤を使う腸管X線撮影法が含まれている。この注腸法は、単一造影によるものでもよく、二重造影によるものでもよい。悪性であるときの主な放射線的徴候には、コケ状散乱、急な凹部(cut-off)や凸部(shouldering)、および入り組んでいない区域から鋭く分界された限局性病巣が含まれている。二重造影によるバリウム注腸法の、癌や大きいポリープについての見積もり感度は約65〜75%にしか過ぎず、小さい腺腫についてのそれはもっと低い。二重造影によるバリウム注腸法は、診断上の収益が大きいものの、偽陰性率が2〜18%である。そのうえ、この方法には放射線の被爆が含まれており、繰り返して使うと安全ではないおそれがある。バリウム注腸法による穿孔はきわめてまれなことであるが、これが起きると、致命的な事態になることが多く、あるいは、バリウムが腹腔の中へこぼれる結果、長期間、深刻な問題を引き起こすことになる。【0006】腸管を検査するためにさまざまな器具(ひとまとめにして内視鏡と称される)が使われている。内視鏡は、さまざまな長さを備えた、剛性のものでもよく、可撓性のものでもよい。剛性のS状結腸鏡は長さが通常、25cmであり、可撓性のS状結腸鏡は長さが通常、35cmあるいは60cmである。結腸鏡は、結腸の全体を検査するための、長さ130〜160cmの可撓性観察器具である。生体組織検査法は、腸管を内視鏡で観察して、疑わしい観察区域から生体組織を採取するものである。可撓性S状結腸鏡検査は、結腸および直腸の左側に制限される。新生物性腫瘍の約1/3は、S状結腸鏡によって到達することのできない脾湾曲部に近い区域に発生する。結腸鏡は、感度が高く、結腸のX線透視と新生物性異常の検出とについての黄金律が残っている。しかしながら、結腸鏡は、観血的であり、きわめて高価であり、また、被験者を腸管穿孔の危険にさらすものである。【0007】磁気共鳴スペクトル法(MRS)は、病気の進行に関連した初期の小さい生化学的変化を検出する可能性を備えており、癌患者からの組織生検の研究に役立つように改良されてきた(スミス アイシーピー(Smith ICP)のベザーベー,ティー.(Bezabeh,T)による「生体外での組織NMR」:ヤング,アイ.アール.(Young I.R.)編集のNMRの百科辞典:Medical Spin−off Volume,出版中(2000年))。磁気共鳴スペクトル法は、診断上の興味対象である特定の生体試料における小さい移動性化学種を検出するために、とりわけ役に立つ。しかしながら、このような検査のために組織生検材料を手に入れるには、観血的処置が通常含まれる。【0008】初期の癌を検出するために現在利用できる方法がいくつかある。従来のX線撮影法、核医学法、直線移動形スキャナー法、超音波法、CAT法およびMRI法等の生物物理的方法はすべて、癌の早期検出および治療に重要な役割を演じている。腫瘍マーカーのための臨床検査室検査もまた、初期癌検出における1つの補助手段として使うことができる。腫瘍マーカー検査によれば、癌患者に存在する腫瘍関連抗原か他の物質かのいずれかが測定され、それによって、診断、病気の段階付け、病気の進行、治療への監視反応、および再発性疾患の検出が促進される。残念ながら、腫瘍マーカー検査には、費用効率の高い方法におけるスクリーニング手段として使われる充分な特異度がたいてい存在しない。特異度の高い検査でさえも、予測値が低いという難点がある。これは、特定の癌の罹患率が総人口の中では比較的低いためである。利用可能な腫瘍マーカー検査の大部分は徴候性患者における癌を診断するのに利用することができない。なぜなら、程度の高いマーカーもまた、さまざまな良性の病気の中に認められるからである。腫瘍マーカーの主な臨床的価値は、腫瘍の段階付け、治療反応の監視、患者の予後の予測、および癌の再発の監視である。【0009】イー.ティー.フォッセル(E.T.Fossel)に1990年3月27日および4月17日に付与された米国特許第4,912,050号および第4,918,021号の公報には、血液、血清あるいは血漿のプロトン核磁気共鳴(NMR)によって癌を検出するための技術がそれぞれ開示されている。同じ発明者に1993年11月16日に付与された米国特許第5,261,405号の公報には、その方法を自動化するための装置および方法が開示されている。マウントフォード(Mountford)らに1997年6月7日に付与された米国特許第5,318,031号の公報には、生きている動物あるいはヒトの組織の化学的状態をNMRスペクトル法および2D−COSY(2次元相関)NMRスペクトル法を使って測定して、その測定値を正常状態、異常状態および遷移状態にある組織の参照測定値と比較する方法が開示されている。シー.エル.リーン(C.L.Lean)ら(1991年発行のMagn.Reson Med 20の第306〜311ページ、1992年発行のBiochemistry 3の第11095〜11105ページ、および1992年発行のMagn.Reson Med 30の第525〜533ページ)は、磁気共鳴スペクトル法を使って結腸の細胞および組織の検体について検査することを開示している。【0010】しかしながら、結腸直腸癌および結腸直腸腺腫を検出する、高価でない非観血的方法についての必要性がなお存在している。この発明の目的は、先に定義された高感度、高特異度、低コストおよび安全性という規準を満たす、結腸直腸腺腫および結腸直腸癌を検出するための比較的簡単な非観血的方法を提供することである。したがって、この発明は、患者から採取した便試料の液状懸濁物を磁気共鳴スペクトル法に付すステップと、その結果得られたスペクトルを癌にかかっていない被験者から採取した便の磁気共鳴スペクトルと比較するステップとが備わっており、観察されたスペクトルの違いが癌の指標である、患者の体内における結腸直腸腺腫および結腸直腸癌の存在を検出する方法に関するものである。ヒトの便に関するスペクトル分析を行うと、スペクトルの収集は非観血的であって患者への危険がまったくないので、他の方法に勝る大きい利点がもたらされる。そのうえ、分析に先立って特別な試料処理を行う必要がまったくない。【0011】2D−COSYスペクトル法を使うのが好ましいが、それは、1D MRSによれば、特定試料に存在する生物化学種の自然なかつ相対的な強度に関する情報が得られるものの、これらの種のいくつかについての排他的で疑わしくない同定が常に可能であるとは限らないからである。2次元MRSは、パルス遅延を変化させることで獲得され、次いで2つの軸(獲得時間および遅延時間)に沿ってフーリエ変換された一連の1D MRスペクトルとして、定義することができる。このような取り組みによれば、第2の次元に交差ピークを発生させることで、合成1Dスペクトル共鳴の分離を行うことができ、互いに結合したプロトンが同定される。この方法によれば、低濃度で存在し、かつ、より高濃度で存在する他の種によって1Dスペクトルの中に通常は被覆された種を検出することができる。この発明は、添付図面を参照することで、以下にいっそう詳しく記載されている。【0012】方法結腸鏡検査あるいは手術が予定されていた69人の被験者(36人が女性、33人が男性。平均年齢61歳、年齢範囲22歳〜90歳)を召集して、便の単一試料を提供してもらった。表1および表2には、これらの症例の内訳が提供されている。【0013】表1(召集した被験者の内訳)症例結腸直腸癌 24健康 13腺腫様ポリープ 20その他 12【0014】表2(表1における「その他」の範疇にある被験者の内訳)過形成性ポリープ 3結腸チック 2憩室症および肝臓癌 1リンパ球性リンパ腫 1結腸メラノーシス 1散乱性憩室 1憩室症 1胃癌 1注腸性直腸炎および進行性メラノーマ 1【0015】これらの被験者には、翌日に予定された結腸鏡検査あるいは手術のための結腸調整が開始された後における最初の便通の便を回収するように指示が出された。これらの便試料は、テキサス州立大学 エム.ディー.アンダーソン 癌センターで回収された。これらの試料は、小さいアイスチェスト(郵送用容器)の中に入れて病院へ輸送される前に、患者用冷蔵庫の中で平均24〜48時間、冷凍保存された。これらはその後、カナダのウィニペグにある国立生体診断調査協議研究所へ輸送されるまで、−70℃の冷凍庫で保存された。すべての試料は、ドライアイスの中に密封状に置かれて送られ、検査の時まで−70℃で冷凍保存された。これらの試料が冷凍保存された時間の長さには大きな違いがなかった。【0016】試料の調整MRS検査のために、これらの試料は、解凍されて、アリコート部分が採取され、PBS/D2O緩衝液の中に懸濁された。この懸濁物は次に、(その容積のほぼ3分の1が満たされた)毛細管の中に入れられた。毛細管は、その一方端部がテフロン(Teflon)(ポリテトラフルオロエチレンの商標)の栓で塞がれている。これはその後、化学シフト基準液として作用するパラ−アミノ安息香酸(PABA)が含有された5mmの標準MR管の中へ入れられた。MRS検査すべての検査は、AMR−360分光計(ブラッカー インストルメント(Bruker Instruments)社の1986年型)を使って、25℃において、20ヘルツ(Hz)で試料を回転させながら行われた。単一パルス1D(90°パルス、走査数NS=256、循環遅延RD=2.41秒、時間範囲におけるデータ点の数TD=4K、スペクトル幅SW=5000Hz)および2D COSY(NS=128、検査数NE=180、TD2=2K、第2の次元におけるスペクトル幅SW2=2906Hz)の両方のMRS検査が、それぞれの便試料について行われた。2D COSY検査は、2つの90°パルスの間における1.2ミリ秒の初期遅延、374マイクロ秒の増分および1秒の緩和遅延で実行された。この緩和遅延の間、低出力型CW放射線(20デシベルで0.2ワットより小さい)が使われて、水シグナルが予備飽和(presaturate)された。【0017】データ処理COSYデータ行列は、t1ドメインにおける1Kへのゼロ充填、すなわち、フーリエ変換と、等級演算〔(実数値2+虚数値2)の平方根〕とを受けて、それぞれの2Dスペクトルについて1024×1024個の実数データ点が得られた。フーリエ変換に先立って、t1ドメインとt2ドメインとの両方に鐘状窓型正弦関数が一様に適用された。輪郭線のプロットが、雑音レベルの近くに設定された最低レベルと、2つの出力に増える、それに続くレベルとで、行われた。【0018】臨床診断結腸鏡検査は、その結果が比較される標準的なものであった。新生物(腫瘍あるいはポリープ)の正確な位置、癌の病期、ポリープの組織学的種類(すなわち、管状、柔突起状、あるいは管状柔突起状)、およびポリープの大きさと数のような情報が、適用可能なそれぞれの患者にもたらされた。【0019】結果健康な被験者から得られた便試料の1D MRスペクトル、腺腫様ポリープがある被験者から得られたそれらのスペクトル、および癌患者から得られたそれらのスペクトルの間には、違いがあった。しかしながら、図1〜図3に認めることができるように、もっとも顕著な結果は、2D COSY MRスペクトルに由来していた。図1〜図3における3つのCOSYスペクトルを比較すると、癌患者から得られた便試料のCOSYスペクトル(図3)では交差ピークの総数が一番大きく、健康な被験者から得られたそれら(図1)では交差ピークの総数が一番小さく、腺腫様ポリープがある被験者から得られたそれら(図2)では交差ピークの総数が中間である、とうことがわかる。しかしながら、もっとも興味深い交差ピークは、図2および図3にだけ存在している、1.3〜4.3ppmにおけるものである。この交差ピークは、結合型フコースのメチル−メチン(H5−H6)結合に起因すると考えられ、また、結腸直腸新生物のためのマーカーとして作用すると信じられている。フコース化の頻度の増大は、図2(ポリープ)における交差ピークと比較して、図3(癌)におけるフコース交差ピークの数と複雑度との増大によって立証されていることもわかる。フコース交差ピークの存在あるいは不存在に基づいて、検体は、新生物について陽性であるか陰性であるかが判定された。これらのMRS結果は、次に結腸鏡による所見と比較された。MRS分析についての感度、特異度、および陽性予測値(PPV)はすべて、表3に表示されている。腺腫様ポリープのある20人の被験者のうち14人にこのMRSで陽性の結果が出たということは注目に値する。興味深いことに、6症例のうち4つに陰性の結果が出たが、これらには、大きさが1cmよりも小さいポリープがあった。【0020】表3(MRS診断の結果(%))Sens. Spec. PPV癌 対 健康 83 85 91ポリープ 対 健康 70 85 88(癌+ポリープ)対 健康 77 85 94(癌+ポリープ)対(健康+他の病気) 77 60 77Sens.=感度、Spec.=特異度、PPV=陽性予測値【0021】結論これらの結果は、細胞表面における高水準のフコースの存在が腫瘍マーカーであると思われる結腸直腸の細胞系および組織生検材料についての早期所見と一致している(リーンらによる1991年および1992年の前記のものを参照のこと)。癌の存在および不存在を表示するのに加えて、フコースの水準とフコース化パターンの複雑度の増大とは、癌の程度および/または病期と相関関係にある。結腸直腸癌におけるフコース/フコース化の潜在的役割についての知識がすでに存在するので、フコース交差ピークは診断を行うことに排他的に依存する。しかしながら、COSYスペクトルの中、とりわけ、付加的な診断情報をもたらし、したがって注目する価値のある3つのグループの中には、他の顕著な違いも存在した。【0022】結腸直腸癌腫についての単一試験のためのFOBTにおける報告された感度は30%〜50%の範囲にあり、その特異度は約90%であると見積もられる。これらの値は、腺腫様ポリープについてはいっそう小さい。表3に認められるように、この発明の方法における感度および陽性予測値は、少なくともこの小さい試料では優れている。診断精度は、分析から得られたある種の異常のあるすべての被験者が除外されるときに改善される(表3の第3列対第4列を比較のこと)。感度は同じ値にとどまるものの、特異度および陽性予測値はどちらも、そのような被験者が含まれることで、かなり減少する。しかしながら、最終列は真の臨床像を反映するものである。癌の他の形態がある被験者の場合には、結腸鏡検査において見過ごされた結腸へのいくつかの顕微鏡的早期転移があったものと思われる。実際、通常の結腸鏡検査がなされた、肺への転移のある結腸癌(切除された)の既往症がある患者(この分析には含まれていない)の症例があったが、MRS分析において陽性の結果が示された。結腸鏡検査は、他のすべての研究における症例と同様に、分析における黄金律として使われるが、報告には、従来の結腸鏡検査において10〜20%のポリープと5%までの結腸直腸癌とが見過ごされたことが示されている。偽陰性の結腸鏡検査はMRSについての偽陽性の結果であると推測される。したがって、分析の真の特異度と陽性予測値とは、実際には、この明細書に説明されたものよりも大きいと思われる。【0023】MRS法が自覚症状のない被験者のスクリーニングに任意に使われるものであるときには、腺腫様ポリープのあるそれらの被験者を識別することが可能でなければならない。これらの被験者には、大きい割合(70%)で陽性MRS結果が現れる。ポリープが悪性である可能性はそれらの大きさ、組織学的種類、およびポリープの数に左右されるという充分な証拠がある。大きさが1cm未満のポリープは悪性になることがほとんどなく、また、陰性のMRS結果が示されたそれらの被験者の2/3には大きさが1cm以下のポリープがある、ということが知られている。しかしながら、ポリープの組織学的種類および数のいずれにも、そのMRS診断(の精度)とどのような相関関係も示されなかった。要するに、この発明の方法を用いると、患者に完全な結腸鏡検査を行うかどうかについていっそう良好な決定をすることが可能になる。【図面の簡単な説明】【図1】 図1は、正常な結腸を有する被験者から採取されたヒトの便の360MHz1H MR対称化COSYスペクトル図である。【図2】 図2は、腺腫様ポリープ(上行結腸中の1cm管状腺腫および3cm管状腺腫)がある被験者から採取されたヒトの便の360MHz1H MR対称化COSYスペクトル図である。【図3】 図3は、結腸直腸癌(右結腸中の腺癌、TisNOMX、残留性柔突起腺腫あり)がある被験者から採取されたヒトの便の360MHz1H MR対称化COSYスペクトル図である。 患者の便の試料を回収するステップと、この便試料の液状懸濁物を作るステップと、この便試料の液状懸濁物を磁気共鳴スペクトル法に付すステップと、その結果得られたスペクトルを癌にかかっていない被験者から採取した便試料の液状懸濁物の磁気共鳴スペクトルと比較するステップとが備わっており、観察されたスペクトルの違いが腺腫または癌の指標である、患者の体内における結腸直腸腺腫および結腸直腸癌の存在を検出する方法。 便試料の液状懸濁物が、2次元相関核磁気共鳴スペクトル法に付される請求項1に記載の方法。 便試料の液状懸濁物が、1H対称化相関磁気共鳴スペクトル法に付される請求項2に記載の方法。 便試料の液状懸濁物が、3601MHz対称化相関磁気共鳴スペクトル法に付される請求項2に記載の方法。