タイトル: | 特許公報(B2)_新規低温細菌および該細菌を検出するためのDNAプローブ |
出願番号: | 2000620082 |
年次: | 2007 |
IPC分類: | C12N 1/20,C12N 15/09,C12Q 1/68 |
丸山 明彦 北村 恵子 倉根 隆一郎 JP 3873112 特許公報(B2) 20061102 2000620082 20000525 新規低温細菌および該細菌を検出するためのDNAプローブ 独立行政法人産業技術総合研究所 301021533 平木 祐輔 100091096 石井 貞次 100096183 丸山 明彦 北村 恵子 倉根 隆一郎 JP JP0002045 20000330 JP 1999145342 19990525 20070124 C12N 1/20 20060101AFI20070104BHJP C12N 15/09 20060101ALN20070104BHJP C12Q 1/68 20060101ALN20070104BHJP JPC12N1/20 AC12N15/00 AC12Q1/68 A C12N 1/20 C12N 15/00-15/90 GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq BIOSIS/WPI(DIALOG) EPAT(QUESTEL) Marine Biology,128,p.705-711,1997 Appled and Environmental Microbiology,63(8),p.3068-3078,1997 International Journal of Systematic Bacteriology,46(4),p.841-848,1996 Systematic and Applied Microbiology,20,p.209-215,1997 2 FERM BP-7106 JP2000003372 20000525 WO2000071705 20001130 26 20020823 田中 晴絵 技術分野本発明は、深海微生物を指標とした深海水の循環やその湧昇のモニタリングの技術に関し、より詳細には、Psychrobacter pacificensis、Psychrobacter glacincolaおよびこれらの近縁種からなる群より選択される細菌を種特異的に検出する技術、ならびにPsychrobacter pacificensisに属する細菌を種特異的に検出する技術に関する。さらに、本発明は、深海水の循環やその湧昇のモニタリングの指標とし得る深海微生物に関し、より詳細には、Psychrobacter pacificensisに属する細菌に関する。背景技術日本近海の深海水は、グリーンランド沖で沈み込んだ密度の高い海水に端を発し、さらに南極海周辺での高密度海水の加入を経て日本海溝をはじめとする北太平洋海域へ流れ込む海洋大循環流により供給されていると推測されている。このような深海水は豊富な栄養塩類を含んでおり、湧昇海域では高い生物生産活動が見られるため、これを利用した深海水の利用が現在検討されている。また、これまで利用されていなかった深海魚が、食料、餌料として用いられはじめている。さらに、地球規模や地域規模での環境汚染問題に関連し、人間活動の結果放出または廃棄される二酸化炭素や放射性廃棄物、産業廃棄物等を日本近海の深海域に投棄することが検討されている。しかし、これら深海水や深海域に関する知見が不足しているため、深海水が表層の生物活動に及ぼす影響の評価や二酸化炭素や放射性廃棄物、産業廃棄物等の深海投棄が深海の生物活動に及ぼす影響の評価が困難な状況にある。また、グローバルな深層海水の循環を知る上で有用な指標生物の報告もない。発明の開示本発明は、深海水や深海域を人為的に利用するにあたって生物学的な安全性評価を行う技術、具体的には、深海に固有に生息する微生物種の遺伝情報の特徴に基づき、該微生物およびその近縁種を種特異的に検出する技術の提供を目的とする。本発明者らは、日本海溝深海水由来の新規低温細菌種の16S rRNA遺伝子の塩基配列情報に基づき、本微生物を分子・細胞レベルにおいて特異的に検出することを可能にするオリゴヌクレオチドプローブを開発して、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明は、配列番号1の塩基配列を有する16S rDNAを提供する。また、本発明は、配列番号1の塩基配列の一部を含むオリゴヌクレオチドプローブを提供する。オリゴヌクレオチドプローブはRNAプローブまたはDNAプローブのいずれであってもよい。配列番号1の塩基配列の一部としては配列番号2の塩基配列を挙げることができる。上記のプローブは、Psychrobacter pacificensis、Psychrobacter glacincolaおよびこれらの近縁種からなる群より選択される細菌を検出または同定するために使用することができる。また、上記のプローブは、Psychrobacter pacificensisに属する細菌を特異的に検出または同定するために使用することもできる。さらに、本発明は、配列番号1の塩基配列の一部を含むオリゴヌクレオチドプローブを用いて、Psychrobacter pacificensis、Psychrobacter glacincolaおよびこれらの近縁種からなる群より選択される細菌を検出または同定する方法を提供する。さらに、本発明は、配列番号1の塩基配列の一部を含むオリゴヌクレオチドプローブを用いて、Psychrobacter pacificensisに属する細菌を特異的に検出または同定する方法を提供する。また、本発明は、好気性、グラム陰性、非運動性、無色、非胞子形成性、およびオキシダーゼ陽性であることを特徴とするPsychrobacter pacificensisも提供する。Psychrobacter pacificensisとしては、例えば、Psychrobacter pacificensis NIBH P2K6(FERM BP−7106)を挙げることができる。本明細書は、本願において主張する優先権の基礎である日本国特許出願第11−145342号及び国際出願第PCT/JP00/02045号の明細書及び/又は図面に記載される内容を包含する。配列表の説明配列番号2:合成DNA(プローブPsypac469−487)配列番号3:合成DNA(プライマー359f)配列番号4:合成DNA(プライマー803r)配列番号5:合成DNA(プライマー821f)配列番号6:合成DNA(プライマー1104r)配列番号7:合成DNA(プライマー1111f)配列番号8:合成DNA(プローブEub338−355)配列番号9:合成DNA(プローブCont)配列番号10:合成DNA(プローブUniv1390−1407)発明を実施するための最良の形態本発明の新種の微生物、Psychrobacter pacificensisは、八丈島沖の日本海溝水深6,000mの海水より、1気圧摂氏4度の低温培養条件下で優占的に出現した従属栄養性微生物である。Psychrobacter pacificensisとしては、NIBH P2J2、NIBH P2J3、NIBH P2J13、NIBH P2K6、NIBH P2K17およびNIBH P2K18の6種の株が本発明者らにより単離されている。なお、該微生物は、当初、本発明者らによりPsychrobacter pacificusと命名されたが、その後、Psychrobacter pacificensisに名称変更されて新種登録されている(Maruyama et al.,Phylogenetic analysis of psychrophilic bacteria isolated from the Japan Trench,including a description of the deep−sea species Psychrobacter pacificensis sp.nov.,Inter.J.Syst.Evol.Microbiol.,50(2000)835−846)。従って、上記Psychrobacter pacificusとPsychrobacter pacificensisとは、全く同一の微生物群を意味する。上記菌株のうち、NIBH P2J3、NIBH P2K6およびNIBH P2K18の分類学的性質を以下の表1、2および3にまとめる。なお、表1、2および3には、同時に単離された他の菌株や本菌の近縁種についても分類学的性質が記載されている。1:ノマルスキー光学系を用いた光学顕微鏡下。2:栄養素勾配を有する半固形寒天培地上。3:電子顕微鏡観察による。−:陰性。Flagella★:鞭毛付着が時折観察された。w:弱い、ぴくっとした動き。a)全ての種および菌株は、オキシダーゼ、カタラーゼ、4〜15℃における増殖、6.5%NaClに対する耐性、ならびに唯一の炭素およびエネルギー源としてのL−プロリンの利用について陽性であった。b)Bowman et al.,(1996)Int.J.Syst.Bacteriol.46:841−848のデータ。c)Bowman et al.,(1997)System.Appl.Microbiol.20:209−215のデータ。d)API 20 NEテストによって決定した。化合物の利用性はAPI ID 32 GNテストを用いて推定した。PNPGテスト:パラ−ニトロフェニル−(β)−D−ガラクトピラノシドを用いたβ−ガラクトシダーゼについてのテスト。★その他:グルコース発酵、インドール産生、エスクリンの加水分解、ゼラチンの加水分解、およびアルギニンジヒドロラーゼ。(d★★その他:N−アセチル−D−グルコサミン、m−ヒドロキシ−ベンゾエート、グリコーゲン、酢酸フェニル。以下の炭素およびエネルギー源は、いずれの種または菌株によっても利用されなかった:N−アセチルグルコサミン、アジピン酸、L−アラビノース、カプリン酸、L−フコース、2−ケト−グルコネート、5−ケト−グルコネート、(D)グルコース、(ミオ)イノシトール、イタコン酸、マルトース、D−マンニトール、D−メリビオース、(L)ラムノース、D−リボース、(D)サリシン、D−ソルビトール、スクロース。なお()はBowmanら(1996)が用いた基質の型を示す。表中の利用の記載において、()は光学異性体の型を示す。表中のサイクロバクター・パシフィセンシスの欄における陽性菌株の頻度:+,100%;+v,67%;−v,33%;−,0%。他のサイクロバクター種の欄における陽性菌株の頻度:+,100−90%;v+,89−11%;v−,10−0%。w:弱い反応。NIBH P2K6菌株は、サイクロバクター・パシフィセンシスの基準株であると規定された。X1−3:正確な二重結合の位置は決定されていない。Tr:ごく微量(<0.1%)。かっこ内の数字は標準偏差を示す(n=3)。★:基準株。Psychrobacter pacificensisは、好気性、グラム陰性、非運動性、無色、非胞子形成性、オキシダーゼ陽性の長さ1.0−1.5μm、幅約1μmの球桿菌である。これらの菌株は細胞外器官として多数のフィムブリエ(繊毛)を生ずるが、鞭毛は生じない。ポリペプトンおよび酵母抽出物を含む寒天プレート上に、縁が欠けていない円形で凸状の、色がオフホワイトのコロニーを形成する。蛍光色素は全く形成されない。至適増殖には海水または約3%のNaClを必要とするが、殆どの菌株はNaCl濃度が0または8%以上の場合は増殖しない。4℃では定常期に達するのに1〜2週間を要するが、これらの菌株は4℃で20℃における増殖収率(growth yield)に匹敵する増殖収率を示す。約25℃で至適増殖が起こり、限界増殖温度は38℃である。グルコース、キシロースおよびアラビノースから酸が好気的に形成される。これらの菌株はウレアーゼ活性が陽性であるが、フェニルアラニンデアミナーゼおよびトリプトファンデアミナーゼについては陰性である。この種はグルコース発酵、インドール産生、エスクリン加水分解、ゼラチン加水分解およびアルギニンジヒドロラーゼという生化学試験について陰性である。この種は唯一の炭素およびエネルギー源としてL−ヒスチジンおよびDL−リンゴ酸を利用する。いくつかの菌株は酢酸、L−アラニン、3−ヒドロキシ−ブチレート、乳酸、マロン酸およびスベリン酸を利用するが、p−ヒドロキシ−ベンゾエート、クエン酸、グルコン酸、プロピオン酸、L−セリンまたはn−吉草酸を利用する菌株はない。18:1w9cが主要な脂肪酸であり、またQ8が主要なキノンである。DNA G+C含有量は、HPLCで測定すると43〜44モル%である。基準株は、日本国八丈島沖日本海溝の深度6,000mの海水から4℃で単離したNIBH P2K6である。この菌株は、財団法人醗酵研究所に寄託されている(IFO 16270)。また、Psychrobacter pacificensis NIBH P2K6 (IFO 16270)は工業技術院生命工学工業技術研究所(日本国茨城県つくば市東1丁目1番3号)に平成11年5月21日付けで寄託された(受託番号:FERM BP−7106)。Psychrobacter pacificensisは新種であり(Maruyama et al.,Phylogenetic analysis of psychrophilic bacteria isolated from the Japan Trench,including a description of the deep−sea species Psychrobacter pacificensis sp. nov.,Inter.J.Syst.Evol.Microbiol.,50(2000)835−846)、その近縁種は南極域で多数分離されている(Bowman et al.,(1996)Int.J.Syst.Bacteriol.46:841−848,Bowman et al.,(1997)System.Appl.Microbiol.20:209−215)ことから、グローバルな深層海水の循環に関連した指標生物として有用であることがわかる。グローバルな深層海水の循環については、太平洋海域では定常的に南極から日本海溝に向け深層海水が流れていることが知られている(Stommel,H.(1958)Deep−Sea Res.5:80−82)。本発明の新菌種であるPsychrobacter pacificensisは、上述のように、深層水および深海域の新規な指標生物であり、従って、様々な目的において深層水および深海域のモニタリング技術に有用である。最近、深層水が富栄養性、低水温性、清浄性などの資源的価値を有する再生循環型の大型資源として注目されており(「海洋深層水の資源的価値とその利用」、月刊海洋、Vol.26,No.3,133−138,1994)、例えば、水産分野では、餌料性プランクトンの培養、海藻培養、冷水性海産動物飼育、深海性生物飼育などが研究されている。また、エネルギー分野では、水温制御、冷房、淡水生産などが試みられている。このような深層水を資源として利用するためには、深層水を評価するための生物モニタリング技術が不可欠となる。さらに、Psychrobacter pacificensisは、産業廃棄物の深海域への廃棄処理に関連する深層水のモニタリング、深海魚の利用に関わる深海微生物のモニタリング、深層海水の地球規模での循環調査、深海水の湧昇域のモニタリング等において、有用な指標生物である。また、Psychrobacter pacificensisは、有用物質を生産する微生物である可能性があり、例えば、キチン分解酵素(Bioindustry,3月号,5−12,1998,シーエムシー)、低温で活性のある低温性リパーゼやプロテアーゼ(洗剤として利用できる)等(東原孝規、「海洋微生物とバイオテクノロジー」清水潮編、技報堂出版、pp.51−67、1991)(Ohgiya et al.,In:Biotechnological Application of Cold−adapted Organisms.Edited by R.Margesin and F.Schinner,Springer,pp.17−34,1999)、EPA、DHA等(Appl.Environ.Microbiol.,51,730−737,1986)の有用脂肪酸を含有する脂質等の微生物生産に利用しうる。配列番号1の塩基配列を有する16S rDNAは、Psychrobacter pacificensis NIBH P2K6から得られる。すなわち、Psychrobacter pacificensis NIBH P2K6の菌体から標準的な方法によりゲノムDNAを抽出し、適切なプライマーを用いて16S rDNAをPCRにより増幅する(Lane,D.L.(1991)16S/23S rRNA sequencing.In Nucleic Acid Techniques in Bacterial Systematics,pp.115−175.Edited by E.Stackebrandt,M.Goodfellow.West Sussex:John Wiley&Sons)。PCR産物から過剰なプライマーおよびdNTPを除去した後、適切なプライマーを用いるサイクルシークエンス法により、精製PCR産物の配列を直接決定することができる。その配列を配列番号1に示す。Psychrobacter pacificensis NIBH P2K6の16S rRNA遺伝子の塩基配列情報に基づき、本菌に特異的な塩基配列領域を抽出し、分子・細胞レベルでの検出を可能にするDNAプローブを作製する。本菌に特異的な塩基配列領域としては、配列番号1の塩基配列の塩基番号458〜476の領域(大腸菌の配列に準じた場合は、塩基番号469〜487の領域)などを挙げることができる。この領域は対応する塩基長10〜50bp、好ましくは塩基長15〜25bpのプローブを作製するとよい。好ましい一例として、以下の塩基配列を有するプローブを挙げることができる。・5’TAATGTCATCGTCCCCGGG3’(配列番号2)プローブは、ホスホルアミド法(Beacage and Carruthers,Tetrahedron Lett.22:1859−1862(1981))またはトリエステル法(Matteucci et al.,J.Am.Cem.Soc.103:3185(1981))により合成することができる。あるいは、自動合成装置を使用してプローブを合成してもよい。さらに、プローブは、アイソトープ、蛍光色素、DIG(ジゴキシゲニン)などで標識するとよい。標識としては、Cy5(インドジカルボシアニン)やTRITC(テトラメチルローダミンイソチオシアネート)、FITC(フルオレセインイソチオシアネート)等の蛍光色素やDIG(ジゴキシゲニン)等のハプテンを挙げることができる。本発明のプローブを用いて、種々のハイブリダイゼーション法(サザンブロット法、ノーザンブロット法、コロニーハイブリダイゼーション、in situハイブリダイゼーション(例えば、FISH)など)により、Psychrobacter pacificensis、Psychrobacter glacincolaおよびこれらの近縁種を検出または同定することができる。Psychrobacter pacificensisおよびPsychrobacter glacincolaの近縁種としては、データベース上に記載されているが同定根拠が不明なPsychrobacter glacincola(AFO25555、PGU85879、PGU85878、PGU85877、PGU85876)、Psychrobacter immobilis(PIU85880)、Psychrobacter sp.(PSU85874)等の菌株を挙げることができる。また、上述のような方法により、Psychrobacter pacificensisに属する細菌を種特異的に検出または同定することもできる。配列番号2の塩基配列のプローブを用いて、Psychrobacter pacificensisを検出または同定する方法の一例について、以下に説明する。パラフォルムアルデヒド等を用いて固定した微生物試料を、ゼラチン等有機被膜を形成させたスライドグラス上に塗沫し、微生物細胞をスライドグラスの有機被膜上に不動化する。エタノールで脱水、または微生物細胞を室温で一晩程乾燥させた後、微生物のゲノムDNAおよびRNAと該DNAプローブとの間でハイブリダイゼーションを行い、洗浄処理により遊離または不完全結合DNAプローブを除去する。ここで、ハイブリダイゼーションの条件は特に限定されないが、Psychrobacter pacificensis、Psychrobacter glacincolaおよびこれらの近縁種を検出または同定する場合には、1〜2個のミスマッチを許す比較的穏和な条件で、好ましくは、フォルムアミドを添加しない40〜46℃で4時間以上の条件であり、Psychrobacter pacificensisに属する細菌を種特異的に検出または同定する場合には、1個のミスマッチをも許さない厳格な条件で、好ましくは、30〜40%程度のフォルムアミド存在下44〜48℃で4時間以上の条件である。通常の蛍光顕微鏡観察手法に準じて微生物細胞を観察し、対象とする微生物細胞に相補結合した蛍光標識DNAプローブの蛍光を検出する。コントロールとして、非特異的なDNAプローブや対象とする微生物属種外の微生物を用い、上記実験を行う。対象とした微生物がDNAプローブで標的とした微生物であった場合は、細胞内核酸と該DNAプローブとの相補結合により細胞全体が蛍光を発するので検出、同定ができる。本発明のプローブは、Psychrobacter pacificensis、Psychrobacter glacincolaおよびこれらの近縁種の種特異的な検出、ならびにPsychrobacter pacificensisに属する細菌の種特異的な検出を可能にするばかりでなく、検出の迅速化と精度向上をもたらす点でも非常に有益である。本発明を以下の実施例により具体的に説明する。これらの実施例は説明のためのものであって、本発明の範囲を限定するものではない。実施例1Psychrobacter pacificensis菌株の単離と16S rRNA遺伝子の配列決定日本海溝の表層および深海環境から単離した67菌株より全部で16菌株を選択した。このうち、11菌株をモラキセラ菌に類似した細菌であると仮に同定した。異なる寒天培地、例えばポリペプトンおよび酵母抽出物を含有する人工海水に基づく1/2 TZ(Maruyama,A et al.,(1993)J.Oceanogr.49,353−367)、Marine Agar(Difco;Detroit,MI,USA)およびNitrient Agar(Difco)等を用いてこれらの菌株を純化した。各菌株を20℃でインキュベートして集菌し、ゲノムDNAを得た。0.3%の寒天を含む1/2 TZ半固形寒天培地を4℃での保存のために用いた。ガラス試験管に封入した乾燥菌体もまた長期保存のために4℃で保存した。深海水から単離したモラキセラ菌に類似した菌株について、下記の直接配列決定によって16S rRNA遺伝子を決定した。すなわち、菌体を遠心により集菌し、洗浄し、そしてTE緩衝液(10mM Tris−HCl、1mM EDTA;pH8.0)に再懸濁した。セチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)、フェノール、およびクロロフォルム/イソアミルアルコール(Murray,M.G.et al.,(1980)Nucleic Acids Res 8,4321−4325)を用いて標準的方法によってゲノムDNAを抽出した。ほぼ完全な16S rRNA遺伝子を得るため、プライマー27fおよび1525r(Lane,D.L.(1991)16S/23S rRNA sequencing.In Nucleic Acid Techniques in Bacterial Systematics,pp.115−175.Edited by E.Stackebrandt,M.Goodfellow.West Sussex:John Wiley & Sons)ならびに文献(Maruyama,A.et al.,(1997)Mar.Biol 128,705−711)に記載のPCRサイクルを用いて、Gene Amp PCR 9600(Perkin−Elmer,Norwalk,Conn.,USA)によってPCRを実施した。SUPREC−02(宝酒造)を用いてPCR産物から過剰なプライマーおよびdNTPを除去した。自動DNAシークエンサー(ALFred;Pharmacia LKB,Sweden)を用いて、適切なフォワードおよびリバースプライマー(Lane,D.L.(1991)、上記)を用いて、製造者の指示に従って、サイクルシークエンス法により精製PCR産物を直接配列決定した。具体的には、上記プライマーは大腸菌番号系における342r、359f(5’−TCC TAC GGG AGG CAG CAG TG(配列番号3);20量体)、519r、803r(5’−CAT CGT TTA CGG CGT GGA C(配列番号4);19量体)、821f(5’−GTC CAC GCC GTA AAC GAT G(配列番号5);19量体)、1104r(5’−TTG CGC TCG TTG CGG GAC(配列番号6);18量体)、および1111f(5’−GTC CCG CAA CGA GCG CAA(配列番号7);18量体)である。各16S rDNA領域断片の配列を両方の鎖について決定し、GENETYX ソフトウエア(バージョン8;ソフトウエア開発株式会社)を用いて連結した。モラキセラ菌に類似した深海の菌株を除いて、標準種モラキセラ・ラクナータ菌(Moraxella lacunata)ATCC 17967を含む他の細菌の16S rDNAを以前に記述された(Maruyama,A.et al.,(1997)上記)ように抽出し、増幅し、サブクローン化した。CLUSTAL W(バージョン1.71;44)中の多重アラインメントプログラムを用いて配列を並べた。CLUSTAL W プロファイルアラインメントオプションを用いて、我々が決定した配列をアントワープ大学(University of Antwerp)のrRNA wwwサーバー(http://rrna,uia,ac,be/;45)から得た公知の並置させた配列に合わせた。この並置したデータマトリックスから、空隙(gap)があるすべての位置、すなわち未決定および曖昧な配列を除去した。Psychrobacter pacificensis NIBH P2K6の16S rRNA遺伝子の配列を配列番号1に示す。実施例2Psychrobacter pacificensisの分類学的性質実施例1に記載したように、Psychrobacter pacificensisは、八丈島沖の日本海溝水深6,000mの海水より、1気圧摂氏4度の低温培養条件下で優占的に出現した従属栄養性微生物である。Psychrobacter pacificensisとしては、NIBH P2J2、NIBH P2J3、NIBH P2J13、NIBH P2K6、NIBH P2K17およびNIBH P2K18の6種の株が本発明者らにより単離されている。上記菌株のうち、NIBH P2J3、NIBH P2K6およびNIBH P2K18の分類学的性質を常法に従って調べた。その結果を、以下の表4、5および6にまとめる。なお、表4、5および6には、同時に単離された他の菌株や本菌の近縁種についても分類学的性質が記載されている。1:ノマルスキー光学系を用いた光学顕微鏡下。2:栄養素勾配を有する半固形寒天培地上。3:電子顕微鏡観察による。−:陰性。Flagella★:鞭毛付着が時折観察された。w:弱い、ぴくっとした動き。a)全ての種および菌株は、オキシダーゼ、カタラーゼ、4〜15℃における増殖、6.5%NaClに対する耐性、ならびに唯一の炭素およびエネルギー源としてのL−プロリンの利用について陽性であった。b)Bowman et al.,(1996)Int.J.Syst.Bacteriol.46:841−848のデータ。c)Bowman et al.,(1997)System.Appl.Microbiol.20:209−215のデータ。d)API 20 NEテストによって決定した。化合物の利用性はAPI ID 32 GNテストを用いて推定した。PNPGテスト:パラ−ニトロフェニル−(β)−D−ガラクトピラノシドを用いたβ−ガラクトシダーゼについてのテスト。★その他:グルコース発酵、インドール産生、エスクリンの加水分解、ゼラチンの加水分解、およびアルギニンジヒドロラーゼ。(d★★その他:N−アセチル−D−グルコサミン、m−ヒドロキシ−ベンゾエート、グリコーゲン、酢酸フェニル。以下の炭素およびエネルギー源は、いずれの種または菌株によっても利用されなかった:N−アセチルグルコサミン、アジピン酸、L−アラビノース、カプリン酸、L−フコース、2−ケト−グルコネート、5−ケト−グルコネート、(D)グルコース、(ミオ)イノシトール、イタコン酸、マルトース、D−マンニトール、D−メリビオース、(L)ラムノース、D−リボース、(D)サリシン、D−ソルビトール、スクロース。なお()はBowmanら(1996)が用いた基質の型を示す。表中の利用の記載において、()は光学異性体の型を示す。表中のサイクロバクター・パシフィセンシスの欄における陽性菌株の頻度:+,100%;+v,67%;−v,33%;−,0%。他のサイクロバクター種の欄における陽性菌株の頻度:+,100−90%;v+,89−11%;v−,10−0%。w:弱い反応。NIBH P2K6菌株は、サイクロバクター・パシフィセンシスの基準株であると規定された。X1−3:正確な二重結合の位置は決定されていない。Tr:ごく微量(<0.1%)。かっこ内の数字は標準偏差を示す(n=3)。★:基準株。Psychrobacter pacificensisは、好気性、グラム陰性、非運動性、無色、非胞子形成性、オキシダーゼ陽性の長さ1.0−1.5μm、幅約1μmの球桿菌である。これらの菌株は細胞外器官として多数のフィムブリエ(繊毛)を生ずるが、鞭毛は生じない。ポリペプトンおよび酵母抽出物を含む寒天プレート上に、縁が欠けていない円形で凸状の、色がオフホワイトのコロニーを形成する。蛍光色素は全く形成されない。至適増殖には海水または約3%のNaClを必要とするが、殆どの菌株はNaCl濃度が0または8%以上の場合は増殖しない。4℃では定常期に達するのに1〜2週間を要するが、これらの菌株は4℃で20℃における増殖収率(growth yield)に匹敵する増殖収率を示す。約25℃で至適増殖が起こり、限界増殖温度は38℃である。グルコース、キシロースおよびアラビノースから酸が好気的に形成される。これらの菌株はウレアーゼ活性が陽性であるが、フェニルアラニンデアミナーゼおよびトリプトファンデアミナーゼについては陰性である。この種はグルコース発酵、インドール産生、エスクリン加水分解、ゼラチン加水分解およびアルギニンジヒドロラーゼという生化学試験について陰性である。この種は唯一の炭素およびエネルギー源としてL−ヒスチジンおよびDL−リンゴ酸を利用する。いくつかの菌株は酢酸、L−アラニン、3−ヒドロキシ−ブチレート、乳酸、マロン酸およびスベリン酸を利用するが、p−ヒドロキシ−ベンゾエート、クエン酸、グルコン酸、プロピオン酸、L−セリンまたはn−吉草酸を利用する菌株はない。18:1w9cが主要な脂肪酸であり、またQ8が主要なキノンである。DNA G+C含有量は、HPLCで測定すると43〜44モル%である。基準株は、日本国八丈島沖日本海溝の深度6,000mの海水から4℃で単離したNIBH P2K6である。この菌株は、財団法人醗酵研究所に寄託されている(IFO 16270)。また、Psychrobacter pacificensis NIBH P2K6(IFO 16270)は工業技術院生命工学工業技術研究所(日本国茨城県つくば市東1丁目1番3号)に平成11年5月21日付けで寄託された(受託番号:FERM BP−7106)。なお、Psychrobacter pacificensisは、当初、本発明者らによりPsychrobacter pacificusと命名されたが、その後、Psychrobacter pacificensisに名称変更されて新種登録されている(Maruyama et al.,Phylogenetic analysis of psychrophilic bacteria isolated from the Japan Trench,including a description of the deep−sea species Psychrobacter pacificensis sp.nov.,Inter.J.Syst.Evol.Microbiol.,50(2000)835−846)。従って、Psychrobacter pacificensisが新種の微生物であることは、国際的に承認されている。実施例3作製プローブのデータベース検索結果配列中2つまでのミスマッチを許す条件で、配列番号2の塩基配列をプローブ配列(「Psypac469−487」と命名する。)としてRDP‐DB(データベース)を検索したところ、Psypac469−487と一致するものは、該Psychrobacter pacificensisを除き、現在種登録されている基準菌株(タイプスピーシズ)および明確な同定根拠が論文等に示されている菌株の中には存在しなかった。ただし、データベース中には、登録番号(Accession No.)AF025555(Pinhassら;300bpの部分配列;表示はPsychrobacter glacincola)がミスマッチ0、U85874(Bowmannら,Appl.Environ.Microbiol.63,3068−3078,1997;表示はPsychrobacter sp.)、U85876,U85877,U85878,U85879(Bowmannら,Appl.Environ.Microbiol.63,3068−3078,1997;表示はPsychrobacter glacincola)、U85880(Bowmannら,Appl.Environ.Microbiol,63,3068−3078,1997;表示はPsychrobacter immobilis)がミスマッチ1、U85875(Bowmannら,Appl.Environ.Microbiol.63,3068−3078,1997;表示はPsychrobacter sp.)、AF025579(Pinnhassiら;442bpの部分配列;表示はPsychrobacter sp.Ant9)およびAF025577(Pinnhassiら;501bpの部分配列;表示はMoraxella sp.Ant7)がミスマッチ2として検出された。これらの配列データの元となった菌株の同定根拠は明確でなく、その中には該Psychrobacter pacificensisが含まれている可能性が残されている。一方、見いだされた近似配列データの多くが南極域で得られた菌株からのものであることから、表示にあるように南極域での生息が既に確認されているPsychrobacter glacincolaおよびその近縁種に由来している可能性も否定できない。以上の結果は、該Psypac469−487プローブの塩基配列が、既存菌株を網羅するDNAデータベース上でPsychrobacter pacificensis、Psychrobacter glacincolaおよびこれらの近縁種に相補性を示すのみで、本プローブが本二種の種特異的検出に極めて有効であることを示す。実施例4作製プローブのハイブリダイゼーション試験結果(1)(1)微生物試料の調整用いた微生物試料の属種株名は、表7に示した。この中で、Psychrobacter pacificensis菌株は、八丈島沖日本海溝の6000m深海水試料より4℃で培養可能な微生物として分離されたもので、表層海水中には全く見出されなかった(Maruyama et al.Marine Biology 128,705−711,1997)。BacillusmarinusはMarine Broth(Difco)を用いて好気条件下20℃で、Psychrobacter phenylpyruvicusはATCC Culture Medium 4番を用いて好気条件下30℃で、培養した。これ以外の細菌は、1/2TZ 液体培地(Maruyama et al.,J.Oceanogr.49,353−367,1993)を用いて好気条件下10〜20℃で培養した。培養された微生物は,最終濃度3%のパラフォルムアルデヒドを用いて4℃で一晩固定された。パラフォルムアルデヒドは、3xPBS(Phosphate Buffer Saline:NaCl:24g、KCl:0.6g、Na2HPO4:0.72g,pH7.4)中に15%となるように予め溶解しておき,試料:パラフォルムアルデヒド=4:1で混合して使用した。(2)試料のDNAプローブによる染色この固定した微生物細胞を、あらかじめゼラチンを塗布した直径11mmの穴の開いたテフロンコートスライド上に吸着させ、エタノール脱水、または室温で一晩乾燥させた。その後、試料穴中にハイブリダイゼーション溶液(NaCl:0.9M,リン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0):50mM,EDTA:5mM,SDS:0.5%、Denhardt solution:finalx10,Poly(A):1.0mg/ml)を50μl添加した。上記のように調整したスライドグラスを、乾燥を防ぐために少量の3xPBSを加えた50mlコニカルチューブ内に静置し、42〜45℃で30分間のプレハイブリダイゼーションを行った。5’末をCy5,TRITC(テトラメチルローダミンイソチオシアネート)またはFITC(フルオレセインイソチオシアネート)でラベル化した蛍光標識オリゴヌクレオチドDNAプローブを作成し、上記ハイブリダイゼーション溶液にそれぞれのプローブを1ng/μlとなるように添加し、42〜45℃で4時間半のハイブリダイゼーションを行った。未反応のオリゴヌクレオチドプローブDNAを除去するために、44〜45℃の洗浄溶液(NaCl:0.9M,リン酸ナトリウム:0.5mM,SDS:0.1%、pH=7.0)中にスライドグラスを入れ,30分間洗浄した。用いたオリゴヌクレオチドDNAプローブとしては、該Psypac469−487の他、ドメイン Bacteria(旧称 Eubacteria)の共通プローブであるEub338−355(5’−GCTGCCTCCCGTAGGAGT(配列番号8))やコントロール用のCont(5’−GTGCCAGCAGCCGCGG(配列番号9))を用いた。(3)試料のDNA染色ハイブリダイゼーション終了後,スライドグラスに終濃度5μg/mlのDAPI溶液を加え、室温で10分間反応させ、微生物細胞内に存在するDNAの染色を行った。反応終了後、純水中にスライドグラスを浸し,15分間洗浄した後、室温で乾燥した。(4)試料の蛍光顕微鏡観察乾燥させたスライドグラスの微生物試料上にDABCO(ジアゾビシクロオプタン)溶液(1g/100ml(10ml PBS+90ml Glycerol))等の退色防止剤を加え,カバーグラスを載せ,油浸条件下で蛍光顕微鏡による観察を行った。必要に応じ、蛍光顕微鏡に取り付けた冷却CCDカメラで各々の色素に対する蛍光画像を取得し、画像を解析した。結果を表7に示す。以上の結果は、1〜2個のミスマッチを許す比較的穏和な条件でのin situハイブリダイゼーション(whole cellハイブリダイゼーションともいう)により、実際に作製したプローブがPsychrobacter pacificensisおよびPsychrobacter glacincolaに属する菌株に特異的に結合し、他の属種の菌株とは結合しないことを示す。実施例5作製プローブのハイブリダイゼーション試験結果(2)(1)微生物試料の調整用いた微生物試料の属種株名は、表8に示した。この中で、Psychrobacter pacificensis菌株は、八丈島沖日本海溝の6000m深海水試料より4℃で培養可能な微生物として分離されたもので、表層海水中には全く見出されなかった(Maruyama et al.Marine Biology 128,705−711,1997)。Bacillus marinusはMarine Broth(Difco)を用いて好気条件下20℃で、Psychrobacter phenylpyruvicusはATCC Culture Medium 4番を用いて好気条件下30℃で、培養した。これ以外の細菌は、1/2TZ 液体培地(Maruyama et al.,J.Oceanogr.49,353−367,1993)を用いて好気条件下10〜20℃で培養した。培養された微生物は,最終濃度3%のパラフォルムアルデヒドを用いて4℃で一晩固定された。パラフォルムアルデヒドは、3xPBS(Phosphate Buffered Saline:NaCl:24g、KCl:0.6g、Na2HPO4:0.72g,pH7.4)中に15%となるように予め溶解しておき,試料:パラフォルムアルデヒド=4:1で混合して使用した。(2)試料のDNAプローブによる染色この固定した微生物細胞を、あらかじめゼラチンを塗布した直径11mmの穴の開いたテフロンコートスライド上に吸着させ、エタノール脱水、または室温で一晩乾燥させた。その後、試料穴中にハイブリダイゼーション溶液(NaCl:0.9M,リン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0):50mM,EDTA:5mM,SDS:0.5%、Denhardt solution:finalx10,Poly(A):1.0mg/ml)を50μl添加した。上記のように調整したスライドグラスを、乾燥を防ぐために少量の3xPBSを加えた50mlコニカルチューブ内に静置し、46℃でプレハイブリダイゼーションを30分間行った。5’末をCy5,TRITC(テトラメチルローダミンイソチオシアネート)またはFITC(フルオレセインイソチオシアネート)でラベル化した蛍光標識オリゴヌクレオチドDNAプローブを作成し、上記ハイブリダイゼーション溶液にそれぞれのプローブを1ng/μlとなるように添加した。各々のオリゴヌクレオチドDNAプローブの最適条件(下記参照)で4時間半ハイブリダイゼーションを行った。その後、未反応のオリゴヌクレオチドプローブDNAを除去するため、スライドグラスを洗浄溶液(NaCl:0.9M,リン酸ナトリウム:0.5mM,SDS:0.1%、pH=7.0)中に入れ,44℃で30分間洗浄した。用いたオリゴヌクレオチドDNAプローブとそのハイブリダイゼーション最適条件(括弧で示した)は、該Psypac469−487(35%フォルムアミド溶液中46℃)、ドメイン Bacteria(旧称 Eubacteria)の共通プローブである Euba 338−355(5’−GCTGCCTCCCGTAGGAGT:配列番号8)(20%フォルムアミド溶液中46℃)、ユニバーサルプローブのUniv1390−1407(5’−GACGGGCGGTGTGTACAA:配列番号10)(0%フォルムアミド溶液中42℃)とした(Maruyama and Sunamura,Applied and Environmental Microbiology,66,2211−2215,2000)。また、非特異的吸着の有無を調べるため、コントロール用としてCont(5’−GTGCCAGCAGCCGCGG:配列番号9)(0%フォルムアミド溶液中42℃)を用いた。(3)試料のDNA染色ハイブリダイゼーション終了後,スライドグラスに終濃度5μg/mlのDAPI溶液を加え、室温で10分間反応させ、微生物細胞内に存在するDNAの染色を行った。反応終了後、純水中にスライドグラスを浸し,15分間洗浄した後、室温で乾燥した。(4)試料の蛍光顕微鏡観察乾燥させたスライドグラスの微生物試料上にDABCO(ジアゾビシクロオプタン)溶液(1g/100ml(10ml PBS+90ml Glycerol))等の退色防止剤を加え,カバーグラスを載せ,油浸条件下で蛍光顕微鏡による観察を行った。必要に応じ、蛍光顕微鏡に取り付けた冷却CCDカメラで各々の色素に対する蛍光画像を取得し、画像を解析した。結果を表8に示す。以上の結果は、1個のミスマッチをも許さない厳格な条件でのin situハイブリダイゼーション(whole cellハイブリダイゼーションともいう)により、実際に作製したプローブがPsychrobacter pacificensisに属する菌株のみに特異的に結合し、他の属種の菌株とは結合しないことを示す。本明細書で引用した全ての刊行物、特許及び特許出願は、参照によりその全体を本明細書に組み入れるものとする。産業上の利用の可能性本発明のオリゴヌクレオチドプローブにより、深層海水の循環を知る上で有用な指標生物としてのPsychrobacter pacificensisを分子・細胞レベルで高感度、高精度に検出できる。深層海水の挙動解析やその影響評価のためには多数の微生物試料を扱う必要があるため、従来の培養法では洋上での煩雑な分離・培養操作および陸上での分類・同定作業に多大な労力と時間が必要であったが、既存のデータベースでその種特異性が確認された塩基配列からなる本発明のDNAプローブを用いることにより、Psychrobacter pacificensis、Psychrobacter glacincolaおよびこれらの近縁種の検出や同定、ならびにPsychrobacter pacificensisの種特異的な検出や同定の迅速化、省力化を図ることができる。さらに、本発明の新規低温細菌Psychrobacter pacificensisにより、深層水や深海域の新規な指標生物が提供される。【配列表】 好気性、グラム陰性、非運動性、無色、非胞子形成性、及びオキシダーゼ陽性であり、さらに以下の特性を有することを特徴とする深海由来低温細菌であるPsychrobacter pacificensis:(1)細胞外器官として多数のフィムブリエ(繊毛)を生ずるが、鞭毛は生じない;(2)ポリペプトンおよび酵母抽出物を含む寒天プレート上に、縁が欠けていない円形で凸状の、色がオフホワイトのコロニーを形成する;(3)蛍光色素は全く形成されない;(4)至適増殖には海水または約3%のNaClを必要とする;(5)4℃で20℃における増殖収率(growth yield)に匹敵する増殖収率を示し、約25℃で至適増殖が起こり、限界増殖温度は38℃である;(6)グルコース、キシロースおよびアラビノースから酸が好気的に形成される;(7)ウレアーゼ活性が陽性であるが、フェニルアラニンデアミナーゼおよびトリプトファンデアミナーゼについては陰性である;(8)グルコース発酵、インドール産生、エスクリン加水分解、ゼラチン加水分解およびアルギニンジヒドロラーゼ生化学試験について陰性である;(9)唯一の炭素およびエネルギー源としてL−ヒスチジンおよびDL−リンゴ酸を利用する;(10)p−ヒドロキシ−ベンゾエート、クエン酸、グルコン酸、プロピオン酸、L−セリンまたはn−吉草酸を利用しない;(11)18:1w9cが主要な脂肪酸であり、またQ8が主要なキノンである;ならびに(12)DNA G+C含有量は、HPLCで測定すると43〜44モル%である。 Psychrobacter pacificensis NIBH P2K6(FERM BP-7106)である、請求項1記載の深海由来低温細菌であるPsychrobacter pacificensis。