タイトル: | 特許公報(B2)_マクロライド系抗生物質の新規結晶 |
出願番号: | 2000618290 |
年次: | 2007 |
IPC分類: | C07H 17/08,A61K 31/7052,A61P 31/04,A61P 33/02 |
ラフカ,ロバート・ジョン アレン,ダグラス・ジョン・メルドラム ラガン,コルマン・ブレンダン モートン,バリー・ジェームズ JP 3897983 特許公報(B2) 20070105 2000618290 20000414 マクロライド系抗生物質の新規結晶 ファイザー・プロダクツ・インク 397067152 社本 一夫 100089705 今井 庄亮 100071124 増井 忠弐 100076691 小林 泰 100075270 富田 博行 100096013 野▲崎▼ 久子 100113309 ラフカ,ロバート・ジョン アレン,ダグラス・ジョン・メルドラム ラガン,コルマン・ブレンダン モートン,バリー・ジェームズ US 60/134,644 19990518 20070328 C07H 17/08 20060101AFI20070308BHJP A61K 31/7052 20060101ALI20070308BHJP A61P 31/04 20060101ALI20070308BHJP A61P 33/02 20060101ALI20070308BHJP JPC07H17/08A61K31/7052A61P31/04A61P33/02 C07H 17/08 A61K 31/00〜31/80 CAplus(STN) REGISTRY(STN) 国際公開第98/056802(WO,A1) 社団法人日本化学会編,実験化学講座1基本操作I,日本,丸善株式会社,1990年11月 5日,第4版,p.184-186 17 IB2000000463 20000414 WO2000069874 20001123 2002544283 20021224 24 20011119 當麻 博文 【0001】発明の属する技術分野本発明は、マクロライド系抗生物質の新規結晶、それらを含む組成物、並びにそれらの製造法及び使用法に関する。【0002】発明の背景本明細書でCP−472,295と呼ぶマクロライドは、式1:【0003】【化9】で示される構造を有する。【0004】CP−472,295は抗生特性を有しており、例えば細菌及び原虫感染の処置に有用である。他のすべての薬物と同様、CP−472,295の安全で有効な使用は、それを厳密な量で正確に投与する専門家の能力にかかっている。【0005】厳密な量の薬物の正確な送達は、剤形を製造することによって容易になる。しかしながら、剤形が容易に製造できるかどうかは、薬物の溶解度、均質性、吸湿性、及びフロー特性といったファクタに左右されることはよく知られている。ファクタはこれらだけに限定されない。これらの性質は、アモルファス形ではなく結晶形の薬物が製造できれば改善されることが多い。このような理由から、よく特徴付けされた結晶のCP−472,295が求められている。特に非吸湿性の形態のCP−472,295が求められている。【0006】発明の要約本発明は、結晶のCP−472,295、これらの結晶を含む医薬組成物、並びにそれらの製造及び使用法に関する。従って、本発明の第一の実施態様は、式1の化合物の結晶を包含する。【0007】式1の化合物の好適な結晶は無水物である。式1の化合物の好適な結晶は、2θで表した特徴的ピークを約6.0、8.6、9.7、15.4、15.9、17.5、18.2、18.7、及び21に示すX線粉末回折パターンを有する。式1の化合物の特に好適な結晶は、X線粉末回折パターン:【0008】【化10】を有する。【0009】式1の化合物の好適な結晶は、約193℃で開始する事象を含む示差走査熱量測定スペクトルを有する。式1の化合物の特に好適な結晶は、示差走査熱量測定スペクトル:【0010】【化11】を有する。【0011】式1の化合物の好適な結晶は、相対湿度約87%及び25℃で保存した場合に約72時間非吸湿性である。【0012】式1の化合物の好適な結晶は一水和物である。式1の化合物の好適な結晶は、2θで表した特徴的ピークを約6.2、7.6、9.2、9.5、12.3、12.9、14.2、14.6、17.8、及び19.5に示すX線粉末回折パターンを有する。式1の化合物の特に好適な結晶は、X線粉末回折パターン:【0013】【化12】を有する。式1の化合物の好適な結晶は、表1:【0014】【表1】に与えられているのと実質的に同じ単結晶パラメータを有する。【0015】式1の化合物の特に好適な結晶は、単位格子の原点に対する原子の相対位置が以下の表2に示されているような原子、以下の表3に示されているような結合長、又は以下の表4に示されているような結合角を含む。式1の化合物のさらに特に好適な結晶は、単結晶構造:【0016】【化13】を有する。【0017】式1の化合物の好適な結晶は、約75℃で開始する事象を含む示差走査熱量測定スペクトルを有する。式1の化合物の特に好適な結晶は、示差走査熱量測定スペクトル:【0018】【化14】を有する。【0019】式1の化合物の好適な結晶は、相対湿度約87%及び25℃で保存した場合に約7日間非吸湿性である。式1の化合物の好適な結晶はセスキ水和物である。式1の化合物の好適な結晶は、2θで表した特徴的ピークを約5.2、7.4、11.2、11.7、12.3、12.9、14.9、15.4、16.7、及び17.9に示すX線粉末回折パターンを有する。式1の化合物の特に好適な結晶は、X線粉末回折パターン:【0020】【化15】を有する。【0021】式1の化合物の好適な結晶は、約101℃で開始する事象を含む示差走査熱量測定スペクトルを有する。式1の化合物の特に好適な結晶は、示差走査熱量測定スペクトル:【0022】【化16】を有する。【0023】本発明の第二の実施態様は、式1の化合物の結晶と医薬上許容しうる担体とを含む医薬組成物を包含する。式1の化合物の結晶は、無水物、一水和物、又はセスキ水和物であり得る。本発明の医薬組成物は、経口、直腸、非経口(静脈内、筋肉内)、経皮、頬内、鼻腔、舌下、又は皮下投与に適切である。【0024】本発明の第三の実施態様は、式1の化合物の結晶の製造法を包含する。好適な方法は、式1の化合物の無水物結晶の製造法であって、ある量の式1の化合物を無水低極性溶媒中に溶解し、該溶液を式1の化合物の全量が溶液中にもはや溶解しない温度に冷却し、そして生成した任意の結晶をろ過により単離することを含む。本発明は本方法による生成物を包含する。【0025】好適な方法は、式1の化合物の一水和物結晶の製造法であって、ある量の式1の化合物を約0.05〜約15体積%の水を含有する非水性溶媒中に溶解し、該溶液を式1の化合物の全量が溶液中にもはや溶解しない温度に冷却し、そして生成した任意の結晶をろ過により単離することを含む。本発明は本方法による生成物を包含する。【0026】好適な方法は、式1の化合物のセスキ水和物結晶の製造法であって、ある量の式1の化合物を約1〜約10体積%の水を含有する酢酸エチル中に溶解し、該溶液を式1の化合物の全量が溶液中にもはや溶解しない温度に冷却し、そして生成した任意の結晶をろ過により単離することを含む。本発明は本方法による生成物を包含する。【0027】本発明の第四の実施態様は、哺乳動物における細菌又は原虫感染の処置法を包含し、そのような処置を必要とする哺乳動物に治療上有効量の式1の化合物の結晶を投与することを含む。式1の化合物の結晶は、無水物、一水和物、又はセスキ水和物であり得る。【0028】定義本明細書中で、“非吸湿性”という用語を問題とする組成物の説明に使用する場合、問題とする組成物は、相対湿度90%における水分の吸収速度が24時間で約0.4%未満であることを意味する。【0029】本明細書中で使用している“哺乳動物”という用語は、ヒト、イヌ、及びネコを包含する。【0030】本明細書中で使用している“細菌感染”及び“原虫感染”という用語は、本発明の化合物のような抗生物質によって処置又は予防できる、哺乳類、魚類及び鳥類に発生する細菌感染及び原虫感染、並びに細菌感染及び原虫感染に関連した障害を含む。そのような細菌感染及び原虫感染、並びにそのような感染に関連した障害は次のとおりである。肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、モラクセラ・カタラリス(Moraxella catarrhalis)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、又はペプトストレプトコッカス属(Peptostreptococcus)菌種による感染に関連した肺炎、中耳炎、副鼻腔炎、気管支炎、扁桃炎、及び乳様突起炎;化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、C及びG群連鎖球菌、クロストリジウム・ジプテリエ(Clostridium diptheriae)、又はアクチノバチルス・ヘモリティカム(Actinobacillus haemolyticum)による感染に関連した咽頭炎、リウマチ熱、及び糸球体腎炎;肺炎マイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae)、レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、又はクラミジア・ニューモニエ(Chlamydia pneumoniae)による感染に関連した気道感染;黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、コアグラーゼ陽性ブドウ球菌[すなわち、表皮ブドウ球菌(S. epidermidis)、スタフィロコッカス・ヘモリティカス(S. hemolyticus)など]、化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、ストレプトコッカス・アガラクチエ(Streptococcus agalactiae)、C〜F群連鎖球菌(微小コロニー連鎖球菌)、ヴィリダンス型連鎖球菌、コリネバクテリウム・ミヌティシマム(Corynebacterium minutissimum)、クロストリジウム属(Clostridium)菌種、又はバルトネラ・ヘンセレ(Bartonella henselae)による感染に関連した単純性皮膚及び軟組織感染、膿瘍及び骨髄炎、並びに産褥熱;腐生ブドウ球菌(Staphylococcus saprophyticus)又は腸球菌属(Enterococcus)菌種による感染に関連した単純性急性尿路感染;トラコーマクラミジア(Chlamydia trachomatis)、軟性下疳菌(Haemophilus ducreyi)、梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)、ウレアプラズマ・ウレアリティカム(Ureaplasma urealyticum)、又は淋菌(Neiserria gonorrheae)による感染に関連した尿道炎及び子宮頚管炎、並びに性感染症;黄色ブドウ球菌(S. aureus)(食中毒及び中毒性ショック症候群)、又はA、B、及びC群連鎖球菌による感染に関連した毒素疾患;ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)による感染に関連した潰瘍;回帰熱ボレリア(Borrelia recurrentis)による感染に関連した全身性発熱症候群;ライム病ボレリア(Borrelia burgdorferi)による感染に関連したライム病;トラコーマクラミジア(Chlamydia trachomatis)、淋菌(Neiserria gonorrheae)、黄色ブドウ球菌(S. aureus)、肺炎連鎖球菌(S. pneumoniae)、化膿連鎖球菌(S. pyogenes)、インフルエンザ菌(H. influenzae)、又はリステリア属(Listeria)菌種による感染に関連した結膜炎、角膜炎、及び涙嚢炎;鳥型結核菌(Mycobacterium avium)、又はマイコバクテリウム・イントラセルラーレ(Mycobacterium intracellulare)による感染に関連した播種性鳥型結核菌複合体(MAC)病;カンピロバクター・ジェジュニー(Campylobacter jejuni)による感染に関連した胃腸炎;クリプトスポリジウム属(Cryptosporidium)菌種による感染に関連した腸原虫症;ヴィリダンス型連鎖球菌(viridans streptococci)による感染に関連した歯性感染;百日咳菌(Bordetella pertussis)による感染に関連した持続性咳;ウェルシュ菌(Clostridium perfringens)又はバクテロイデス属(Bacteroides)菌種による感染に関連したガス壊疽;ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)又はクラミジア・ニューモニエ(Chlamydia pneumoniae)による感染に関連したアテローム性動脈硬化などである。動物において処置又は予防できる細菌感染及び原虫感染、並びにそれらの感染に関連した障害は以下の通りである。すなわち、パスツレラ・ヘモリティカ(P. haem.)、パスツレラ・マルトシダ(P. multocida)、マイコプラズマ・ボビス(Mycoplasma bovis)、又はボルデテラ属(Bordetella)菌種による感染に関連したウシ呼吸器疾患;大腸菌(E. coli)又は原虫(すなわち、コクシジウム、クリプトスポリジウムなど)による感染に関連したウシ腸疾患;黄色ブドウ球菌(Staph. aureus)、ストレプトコッカス・ウベリス(Strep. uberis)、ストレプトコッカス・アガラクチエ(Strep. agalactiae)、ストレプトコッカス・ジスガラクチエ(Strep. dysgalactiae)、クレブシエラ属(Klebsiella)菌種、コリネバクテリウム(Corynebacterium)、又は腸球菌属(Enterococcus)菌種による感染に関連した乳牛乳腺炎;アクチノバチルス・プリュロニューモニエ(A. pleuro.)、パスツレラ・マルトシダ(P. multocida)、又はマイコプラズマ属(Mycoplasma)菌種による感染に関連したブタ呼吸器疾患;大腸菌(E. coli)、ラウソニア・イントラセルラリス(Lawsonia intracellularis)、サルモネラ(Salmonella)、又はセルプリナ・ヒオジシンテリエ(Serpulina hyodyisinteriae)による感染に関連したブタ腸疾患;フソバクテリウム属(Fusobacterium)菌種による感染に関連したウシ腐蹄症;大腸菌(E. coli)による感染に関連したウシ子宮炎;フソバクテリウム・ネクロフォルム(Fusobacterium necrophorum)又はバクテロイデス・ノドサス(Bacteroides nodosus)による感染に関連したウシ毛いぼ;モラクセラ・ボビス(Moraxella bovis)による感染に関連したウシ急性カタル性結膜炎;原虫(すなわち、ネオスポリウム)による感染に関連したウシ早熟流産;大腸菌(E. coli)による感染に関連したイヌ及びネコの尿路感染;表皮ブドウ球菌(Staph. epidermidis)、スタフィロコッカス・インターメディウス(Staph. intermedius)、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(coagulase neg. Staph.)、又はパスツレラ・マルトシダ(P. multocida)による感染に関連したイヌ及びネコの皮膚及び軟組織感染;アルカリゲネス属(Alcaligenes)菌種、バクテロイデス属(Bacteroides)菌種、クロストリジウム属(Clostridium)菌種、エンテロバクター属(Enterobacter)菌種、ユーバクテリウム(Eubacterium)、ペプトストレプトコッカス(Peptostreptococcus)、ポルフィロモナス(Porphyromonas)、又はプレボテラ(Prevotella)による感染に関連したイヌ及びネコの歯科又は口腔感染などである。本発明の方法に従って処置又は予防できるその他の細菌感染及び原虫感染、並びにそれらの感染に関連した障害は、Sanford,J.P.らによる“The Sanford Guide To Antimicrobial Therapy”第27版(Antimicrobial Therapy,Inc.,1996)を参照。【0031】発明の詳細な説明本発明は、CP−472,295の3種類の異なる多形(すなわち結晶構造)の発見に基づく。これらの多形は、化合物の剤形の製造を容易にする思いがけない物理的性質を有している。【0032】化合物の好適な多形は無水物形の結晶である。この形態は、針状(acicular(needle-like))晶癖と中等度の複屈折(birefringence)を有する。平行双晶化(parallel twinning)により結晶は薄片(laths)としての外観を呈する場合があるので、単結晶X線測定に適切な単結晶の単離が妨げられる。上記グラフ1に、無水物形の結晶の特徴的なX線粉末回折パターンを示す。【0033】上記グラフ2に、無水物形の結晶の特徴的な示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムを示す。約193℃で開始する単一事象だけが観察される。無水物形のCP−472,295の融解検鏡(fusion microscopy)からは融解以外の事象は見られない。【0034】無水物形による特別の利点は吸湿性がないことである。以下のグラフ7に無水物形の特徴的な吸湿測定結果を示す。【0035】【化17】【0036】本データ及び他のデータから、CP−472,295の無水物結晶は、約87%の相対湿度及び周囲温度で約72時間非吸湿性であると判定される。この思いがけない性質により、薬物の低コストで効率的な取扱いや保存が可能となり、また正確な量の薬物を各種の剤形に容易に配合できる。【0037】無水物形と同様に、CP−472,295の一水和物結晶も思いがけず非吸湿性である。一水和物形は平面又は等方晶癖の外観を呈するが、これは平面の積み重ね又は集合の結果であろう。グラフ3に一水和物形の特徴的なX線粉末回折パターンを示す。単結晶X線分析に適した結晶が得られ、そのような分析から得られたデータから前記のような結晶構造が示される。【0038】グラフ4に、CP−472,295の一水和物結晶の特徴的なDSCサーモグラムを示す。DSC及び融解検鏡によれば、一水和物形は約70℃〜約75℃で水を失い始め、擬似多形に転化する。この擬似多形は一水和物結晶を周囲温度で真空下に置くことによっても形成できる。真空下でない場合、擬似多形は約165℃で融解し、次いで急速に無水物形の結晶に転化する。これは前述のように約193℃で融解する。【0039】CP−472,295の一水和物結晶は、前述の無水物結晶と同様に非吸湿性という利点がある。グラフ4に、一水和物形の特徴的な吸湿測定結果を示す。本データ及び他のデータから、CP−472,295の一水和物結晶は、約87%の相対湿度及び周囲温度で約7日間非吸湿性であると判定される。この思いがけない性質により、薬物の低コストで効率的な取扱いや保存が可能となり、また正確な量の薬物を各種の剤形に容易に配合できる。【0040】これとは対照的に、一水和物が水を失うときに形成される擬似多形は吸湿性であり、相対湿度約87%及び周囲温度で保存すると、水和の水を約4時間以内に再吸収する。【0041】CP−472,295のセスキ水和物結晶は、前述の二つの形態とは異なる物理的性質を有している。この形態は中等度の複屈折と薄片晶癖の外観を呈する。グラフ5に、セスキ水和物形の特徴的なX線粉末回折パターンを示す。【0042】一水和物と異なり、この形態のCP−472,295は、日常の取扱い条件下(例えば25℃及び相対湿度70%)で容易に水を失う。グラフ6に、CP−472,295のセスキ水和物結晶の特徴的なDSCサーモグラムを示す。DSC及び融解検鏡によれば、約35℃で水を失い、次いで無水物形に結晶化する。これは前述のように約193℃で融解する。【0043】本明細書中に開示の、問題としている3種類の各結晶組成物はアモルファス(すなわち非晶質)又は不純CP−472,295から製造できる。CP−472,295の合成はWO98/56802に開示されている(前記特許は本明細書に引用して援用する)。【0044】CP−472,295の無水物結晶の好適な形成法は、アモルファス化合物を乾燥溶媒又は溶媒混合物に溶解することを含む。好適な溶媒は、ヘプタン、アセトン、及びアセトニトリルなどである。エタノール、イソプロパノール、及びテトラヒドロフランのような他の溶媒も使用できるが、無水物、一水和物、及びセスキ水和物の各生成物の混合物を生成しやすい。好ましくは、溶媒を、溶媒中に溶解しているアモルファス化合物の飽和点におよそ等しい温度にまで加熱し、得られた溶液を、溶解化合物の全量が溶媒中にもはや溶解しなくなる温度にまで冷却する。結晶はろ過により単離し、空気乾燥する。【0045】無水物形の結晶は拡散結晶化によって製造することもできる。例えば、CP−472,295が難溶の一つ以上の混和性溶媒を、アモルファスCP−472,295が溶解している溶液に加える。【0046】CP−472,295の無水物結晶の別の形成法は、化合物の一水和物結晶の脱水を含む。これは、熱を用い、必要に応じて減圧下で実施できる。【0047】CP−472,295の一水和物結晶は、少しの水、好ましくは約0.05〜約15体積%の水、さらに好ましくは約1〜約10体積%の水を含有する溶媒又は溶媒混合物から単離できる。酢酸エチルを除いて、一水和物形の単離は溶媒の極性に影響されないようである。一水和物の好適な単離法は、溶媒混合物、例えばエタノール/水10%、又はイソプロピルエーテル/水1%を加熱し、該混合物中にアモルファスCP−472,295を飽和又は飽和近くまで溶解し、次いで該混合物を溶解化合物の全量が溶媒混合物中にもはや溶解しない温度にまで冷却することを含む。結晶はろ過により単離し、空気乾燥する。【0048】CP−472,295のセスキ水和物結晶も、従来の結晶化法を用いて湿溶媒から単離できる。しかしながら、アモルファスCP−472,295を、約1〜約10体積%の水、さらに好ましくは約2〜約6体積%の水を含有する熱酢酸エチルに溶解し、得られた混合物を溶解化合物の全量が溶媒中にもはや溶解しない温度にまで冷却することによって形成させるのが好ましい。結晶はろ過により単離する。【0049】医薬用製剤及び処置法本発明の化合物(すなわち、CP−472,295の無水物結晶、CP−472,295の一水和物結晶、及びCP−472,295のセスキ水和物結晶;以後“活性化合物”とも言う)は、経口、直腸、非経口(すなわち静脈内、筋肉内)、経皮、頬内、鼻腔、舌下、及び皮下経路で投与できる。一般に、活性化合物は、1日体重1kg当たり約0.2mg(mg/kg/日)〜約200mg/kg/日の範囲の用量を1回に又は分割して(すなわち1日1〜4回)投与するのが最も望ましいが、処置される患者の動物種、体重、及び状態、並びに選択された特定の投与経路によって変動は必然的に起こるであろう。約1mg/kg/日〜約100mg/kg/日の範囲にある用量レベルが好適であり、約2mg/kg/日〜約50mg/kg/日の範囲にあるマクロライド系抗生物質の用量レベルが最も好適である。それでも、変動は、処置される動物種(例えば細菌又は原虫感染しているヒト)及びマクロライド系抗生物質に対する個々の応答、並びに選択された医薬用製剤の種類、及びそのような投与が行われる期間と間隔によって発生しうる。時には前述の範囲の下限未満の用量が適切な場合もあれば、またそれより大用量でも、その大用量を1日を通して投与するためにまずいくつかの小用量に分割すればこれといった有害副作用もなく使用することができる場合もある。【0050】当該活性化合物は、単独で、又は医薬上許容しうる担体もしくは希釈剤と組み合わせて、前述の経路によって投与することができる。そのような投与は1回に又は複数回に分けて実施できる。当該活性化合物は、様々に異なる剤形、すなわち医薬上許容しうる種々の不活性担体と組み合わせて、錠剤、カプセル、ロゼンジ、トローチ、硬飴、散剤、スプレー、クリーム、膏薬(salves)、坐剤、ゼリー、ゲル、ペースト、ローション、軟膏、水性懸濁液、注射用溶液、エリキシル、シロップなどの形態で投与できる。そのような担体は、固体希釈剤、又は充填剤、無菌水性媒体、及び各種の非毒性有機溶媒などを含む。さらに、経口用医薬組成物は、適切な甘味及び/又は香味を付けることができる。一般に、当該活性化合物は、そのような剤形中に、約5.0%〜約70重量%の範囲の濃度で存在する。【0051】経口投与の場合、微結晶セルロース、クエン酸ナトリウム、炭酸カルシウム、リン酸二カルシウム、及びグリシンのような種々の賦形剤を含有する錠剤を、デンプン(好ましくは、トウモロコシ、ジャガイモ、又はタピオカデンプン)、アルギン酸、及びある種の複合ケイ酸塩のような種々の崩壊剤、並びにポリビニルピロリドン、ショ糖、ゼラチン、及びアカシアのような顆粒化結合剤と共に使用することができる。ステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、及びタルクのような滑沢剤、界面活性剤、及びすべり剤も、錠剤化のために有用である。同様の種類の固体組成物をゼラチンカプセルに充填剤として用いることもできる。好適な充填剤は、ラクトース又は乳糖、並びに高分子量のポリエチレングリコールなどである。経口投与用に水性懸濁液及び/又はエリキシルが所望であれば、活性化合物に、種々の甘味料又は香料、着色料又は染料を組み合わせることができる。また、所望であれば乳化剤及び/又は懸濁剤も、水、エタノール、プロピレングリコール、グリセリン、及びそれらの多様な類似の組合せなどの希釈剤と共に組み合わせることができる。【0052】前述の一般的な剤形のほかに、本発明の化合物は、活性化合物を必要な速度で放出して一定の薬理活性を所望の期間維持できる制御放出手段及び/又は送達装置によって投与することもできる。そのような剤形は、予め決められた期間身体に薬物を供給するので、従来の非制御製剤よりも長期間治療範囲の薬物濃度が維持される。本発明の活性化合物の投与に適応しうる適切な制御放出医薬組成物及び送達装置は、米国特許第3,847,770号、3,916,899号、3,536,809号、3,598,123号、3,630,200号、4,008,719号、4,687,610号、4,769,027号、5,674,533号、5,059,595号、5,591,767号、5,120,548号、5,073,543号、5,639,476号、5,354,566号、及び5,733,566号に記載されており、前記特許の開示内容は本明細書に引用して援用する。例えば、活性化合物を薬物の制御放出の達成に有用なある種の生分解性ポリマーと組み合わせればよい。生分解性ポリマーは、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸とポリグリコール酸のコポリマー、ポリε−カプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル類、ポリアセタール類、ポリジヒドロピラン類、ポリシアノアクリレート類及びヒドロゲルの架橋又は両親媒性ブロックコポリマーなどである。【0053】非経口投与の場合、活性化合物をゴマ油もしくはピーナツ油、又はプロピレングリコール水溶液中で溶液にして使用できる。水溶液は、必要であれば、適切に緩衝し、液体希釈剤はまず等張にしなければならない。このような水溶液は静脈注射用に適している。油性溶液は、関節内、筋肉内、及び皮下注射用に適している。無菌条件下におけるこれらすべての溶液の調製は当業者に周知の標準製薬技術によって容易に達成される。【0054】本発明の活性化合物は局所投与も可能である。これは、標準の製薬実施基準に従って、クリーム、ゼリー、ゲル、ペースト、パッチ、軟膏などの手段によって行うことができる。活性化合物はさらに動物飼料中に入れて、又は水薬組成物として経口投与することができる。【0055】当該活性化合物はリポソーム送達システムの形態で投与することもできる。大小の単層状小胞及び多層状小胞などである。リポソームは各種のリン脂質、例えばコレステロール、ステアリルアミン又はホスファチジルコリン類などから製造できる。【0056】当該活性化合物は、標的薬物担体としての可溶性ポリマーと組み合わせることもできる。そのようなポリマーは、ポリビニルピロリドン、ピランコポリマー、ポリヒドロキシプロピルメタクリルアミドフェニル、ポリヒドロキシエチルアスパルタミド−フェノール、又はパルミトイル残基で置換されたポリエチレンオキシド−ポリリジンなどであり得る。【0057】本発明で問題としている組成物に関するその他の新規及び非制限的態様を実施例により提供する。【実施例】【0058】実施例1:CP−472,295の無水物結晶の製造例WO98/56802に従って製造したアモルファスCP−472,295約20mgを、1ドラムバイアル(プレ−スクラッチ(pre-scratched)した)に入れた。ジエチルエーテル、アセトニトリル、アセトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、tert−ブチルメチルエーテル(MTBE)、及びベンゼンを使用して結晶化を試みた。各バイアル中のアモルファス化合物に加熱した少量の各溶媒を加え、強制的に溶液にした。バイアルを室温に放冷したところ、アセトン、アセトニトリル、及びMIBKの系に結晶(白色針状)の生成が観察された。結晶は拡散結晶化を用いても得られた。その場合、ジエチルエーテルを拡散溶媒とし、酢酸エチル、エタノール、アセトニトリル、n−プロパノール、及びMIBKをベース溶媒とした。結晶の成長がエタノール/ジエチルエーテル系で観察された。【0059】実施例2:CP−472,295の一水和物結晶の製造例水飽和ジエチルエーテル溶液(0.9体積%の水)を、ジエチルエーテルと水の振盪により形成した。水性層を除去し、有機層をろ過して透明溶液を得た。これにCP−472,295を飽和になるまで加えた。室温に保つと、一水和物結晶が溶液から約1分以内に析出した。一水和物形の結晶は、アモルファスCP−472,295を2mlの水飽和MTBE中に飽和に達するまで溶解し、次いで溶液をデカントすることによっても生成した。化合物の析出は、デカントした溶液を室温に約15分間放置した後に起きた。【0060】実施例3:CP−472,295の一水和物結晶の単結晶構造実施例2の方法(ジエチルエーテル)を用いて得られた代表的結晶を調べ、1AデータセットをSiemens R3RA/v回折計で収集した。原子散乱因子は、International Tables for X−ray Crystallography,Vol.IV,pp.55,99,149(Birmingham:Kynoch Press,1974)から取った。すべての結晶学的計算はSHELXTLシステムの助けを借りた。Sheldrick,G.M.,SHELXTL,User Manual,Nicolet Instrument Co.,1981参照。回折計データはすべて室温で収集した。【0061】直接法によって得られたトライアル構造を慣例的手続きに従って精密化した。差マップ(difference map)から結晶水の存在が明らかとなった。水素の位置は可能なところはすべて計算した。メチルの水素と窒素及び酸素上の水素は、差フーリエ法(difference Fourier techniques)によって位置を決定した。水素のパラメータは構造因子計算に加えたが、精密化しなかった。最小2乗精密化の最終サイクルで算出したシフトはいずれも対応する標準偏差の0.1未満であり、最終R因子は6.29%であった。最終の差フーリエから電子密度の欠如も誤置もないことがわかった。【0062】結晶の詳細は前記表1に示してある。データから決定された選択原子座標と等方性温度パラメータを表2に示す。【0063】【表2】【0064】単結晶データから決定された選択結合長を表3に示す。【0065】【表3】【0066】単結晶データから決定された選択結合角を表4に示す。【0067】【表4】【0068】上記三次元構造は精密化された結晶構造のプロットを示す。この分析では構造中に“重原子”が存在しないので絶対構造は決定されなかった。【0069】実施例4:CP−472,295のセスキ水和物結晶の製造例CP−472,295(0.3グラム)を室温で1mlの酢酸エチル中に溶解した。この透明溶液に0.4mlの水を加えた。溶液を一晩攪拌し、この間にセスキ水和物が沈殿物として生成した。沈殿物をろ過により取り出した。本発明は、実施例及び前述の詳細な説明によって制限されない。本発明の範囲は添付のクレームによってさらに定義される。 式1:の化合物の無水物の結晶であって、2θで表した特徴的ピークを6.0、8.6、9.7、15.4、15.9、17.5、18.2、18.7、及び21に示すX線粉末回折パターンを有する、前記結晶。 式1:の化合物の無水物の結晶であって、193℃で開始する事象を含む示差走査熱量測定スペクトルを有する、前記結晶。 式1:の化合物の無水物の結晶であって、相対湿度87%及び25℃で保存した場合に72時間又は7日間まで非吸湿性である、前記結晶。 式1:の化合物の一水和物の結晶であって、2θで表した特徴的ピークを6.2、7.6、9.2、9.5、12.3、12.9、14.2、14.6、17.8、及び19.5に示すX線粉末回折パターンを有する、前記結晶。 式1:の化合物の一水和物の結晶であって、以下の単結晶パラメータを有する結晶:単位格子ディメンジョンa=10.557(1)Å、b=19.396(1)Å、c=23.223(1)Å、α=90.00°、β=90.0°、Y=90.0°、V=4755.2(6)Å3、空間群P212121、単位当たりの分子数4,密度(g/cm)1.151。 式1:の化合物の一水和物の結晶であって、75℃で開始する事象を含む示差走査熱量測定スペクトルを有する、前記結晶。 式1:の化合物の一水和物の結晶であって、相対湿度87%、室温で保存した場合に7日間非吸湿性である、前記結晶。 式1:の化合物のセスキ水和物の結晶であって、2θで表した特徴的ピークを5.2、7.4、11.2、11.7、12.3、12.9、14.9、15.4、16.7、及び17.9に示すX線粉末回折パターンを有する、前記結晶。 式1:の化合物のセスキ水和物の結晶であって、101℃で開始する事象を含む示差走査熱量測定スペクトルを有する、前記結晶。 請求項1乃至9のいずれか一項の結晶と、医薬上許容しうる担体とを含む医薬組成物。 前記医薬組成物が、経口、直腸、非経口(静脈内、筋肉内)、経皮、頬内、鼻腔、舌下、又は皮下投与に適切である、請求項10に記載の医薬組成物。 請求項1乃至3のいずれか一項記載の式1の化合物の無水物形の結晶の製造方法であって、 ある量の式1の化合物を、ヘプタン、アセトン、アセトニトリル、エタノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、メチルイソブチルケトンから選択される溶媒またはその混合物に溶解する工程; 前記溶液を、式1の化合物の全量が溶液中にもはや溶解しない温度に冷却する工程;そして 生成した結晶をろ過により単離する工程を含む、前記製造方法。 請求項1乃至3にいずれか一項記載の式1の化合物の無水物形の結晶の製造方法であって、 式1の化合物の一水和物形結晶の脱水工程を含む、前記製造方法。 請求項1乃至3にいずれか一項記載の式1の化合物の無水物形の結晶の製造方法であって、 ある量の式1の化合物を原料とし、エタノール/ジエチルエーテルでの拡散結晶化による、前記製造方法。 請求項4乃至7のいずれか一項記載の式1の化合物の一水和物形の結晶の製造方法であって、 ある量の式1の化合物を、エタノール、イソプロピルエーテル、ジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテルから選択される溶媒、およびその混合物から選択される溶媒を水に対して体積にて0.05から15%の間で含む溶液に溶解する工程; 該溶液を、式1の化合物の全量が溶液中にもはや溶解しない温度に冷却する工程;そして 生成した結晶をろ過により単離する工程 を含む、前記製造方法。 請求項8または9記載の式1の化合物のセスキ水和物形の結晶の製造方法であって、 ある量の式1の化合物を、酢酸エチルを水に対して体積にて1から10%の間で含む溶液に溶解する工程; 該溶液を、式1の化合物の全量が溶液中にもはや溶解しない温度に冷却する工程;そして 生成した結晶をろ過により単離する工程 を含む、前記製造方法。 細菌又は原虫感染の処置用の医薬組成物であって、治療上有効量の請求項1乃至9のいずれか一項記載の結晶を含む、前記組成物。