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タイトル:特許公報(B2)_血中カルボニル化合物トラップ剤
出願番号:2000617926
年次:2010
IPC分類:A61K 31/74,A61M 1/16,A61M 1/36,A61P 7/08


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宮田 敏男 JP 4526192 特許公報(B2) 20100611 2000617926 20000511 血中カルボニル化合物トラップ剤 学校法人東海大学 000125369 宮田 敏男 597142376 黒川 清 597142387 清水 初志 100102978 宮田 敏男 JP 1999131978 19990512 20100818 A61K 31/74 20060101AFI20100729BHJP A61M 1/16 20060101ALI20100729BHJP A61M 1/36 20060101ALI20100729BHJP A61P 7/08 20060101ALI20100729BHJP JPA61K31/74A61M1/16 513A61M1/36 545A61P7/08 A61K 45/00 A61K 31/095 A61K 31/155 A61K 31/198 A61K 31/44 A61K 31/74 A61K 33/00 A61K 33/08 A61K 33/44 A61K 38/00 A61M 1/16 A61M 1/36 A61P 7/08 CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN) JSTPlus/JMEDPlus(JDreamII) 特開昭48−029702(JP,A) 特表平11−504316(JP,A) 米国特許第03284531(US,A) 国際公開第00/010606(WO,A1) MIYATA,T. et al,2-Isopropylidenehydrazono-4-oxo-thiazolidin-5-ylacetanilide (OPB-9195) treatment inhibits the development of intimal thickening after balloon injury of rat carotid artery: role of glycoxidation and lipoxidation reactions in vascular tissue damage,FEBS Letters,1999年,Vol.445, No.1,p.202-206 FISHBANE,S. et al,Reduction of plasma apolipoprotein-B by effective removal of circulating glycation derivatives in uremia,Kidney international,1997年,Vol.52, No.6,p.1645-50 FEATHER,M.S. et al,The use of aminoguanidine to trap and measure dicarbonyl intermediates produced during the Maillard reaction,ACS Symposium Series,1996年,Vol.631, No.Chemical Markers for Process,p.24-31 BOOTH,A.A. et al,BOOTH,A.A. et al,Journal of Biological Chemistry,1997年,Vol.272, No.9,p.5430-5437 NIWA,T. et al,Modification of β2m with advanced glycation end products as observed in dialysis-related amyloidosis by 3-DG accumulating in uremic serum,Kidney International,1996年,Vol.49, No.3,p.861-867 UNGAR,F. et al,Inhibition of binding of aldehydes of biogenic amines in tissues,Biochemical Pharmacology,1973年,Vol.22, No.15,p.1905-13 JARRET,M. et al,Elimination of glyoxal and glyoxylic acid by granular activated carbon filtration. Mechanisms involved,Sciences de l'Eau,1986年,Vol.5, No.4,p.377-400 CHAUDHURI,S.K. et al,Removal of carbonyl sulfide from a liquid hydrocarbon with activated alumina,Separations Technology,1992年,Vol.2, No.2,p.58-61 7 JP2000003029 20000511 WO2000069466 20001123 20 20070328 瀬下 浩一 技術分野本発明は、血中のカルボニル化合物の除去に関する。具体的には、カルボニル化合物トラップ剤を用いる、血中のカルボニル化合物の除去に関する。背景技術血液透析は慢性腎不全患者に対して一般的に行われる治療であり、半透膜を介して血液と透析液が接触することにより、血中の老廃物や毒性物質が除去される。しかし、腎不全の病態は、透析により完全に食い止められるものではない。そのような病態として、腎不全患者におけるAGE(advanced glycation end products)やその前駆体であるカルボニル中間体のレベルの上昇が挙げられる。AGEは、タンパク質を構造的および機能的に修飾し、透析アミロイドーシスや動脈硬化などの透析合併症の発症に関与することが報告されている(Makita Z,et al.N Engl J Med 325:836−842,1991;Miyata T,et al.J Clin Invest 92:1243−1252,1993;Miyata T,et al.J Clin Invest 93:521−528,1994;Miyata T,et al.Proc Natl Acad Sci USA 93:2353−2358,1996;Horie K,et al.J Clin Invest 100:2995−3004,1997;Miyata T,et al.FEBS letters 445:202−206,1999)。腎不全では血漿中にグリオキサール、メチルグリオキサール、3−デオキシグルコソン、アラビノース(Odani et al.,Biochem.Biophys.Res.Commun.256:89−93,1999;Niwa et al.,Nephron 69:438−443,1995;Miyata et al.,Kidney Int.55:389−399,1999;Miyata et al.,J.Am.Soc.Nephrol.9:2349−2356,1998)などのカルボニル中間体が蓄積すること(いわゆるカルボニルストレス)により、AGE産物レベルが上昇することが、近年明らかにされた(Miyata T,et al.J Am Soc Nephrol 9:2349−2356,1998;Miyata T,et al.Kidney Int 55:389−399,1999)。AGE前駆体であるさまざまなカルボニル中間体は、主として炭水化物および脂質に由来する(Miyata T,et al.Kidney Int 55:389−399,1999;Miyata T,et al.Kidney Int 54;1290−1295,1998;Miyata T,et al.Kidney Int 51:1170−1181,1997)。腎不全患者における、これらAGEやカルボニル中間体のレベルの上昇、すなわち、「カルボニルストレス」は、現行の血液透析では有効に改善することはできない。発明の開示本発明は、血中のカルボニル化合物を除去するためのカルボニル化合物トラップ剤の提供を課題とする。また、本発明は、生体のカルボニルストレス状態を改善するための方法および薬剤の提供を課題としている。本発明により、特にカルボニルストレス状態に陥りやすい血液透析患者において、カルボニル化合物による障害を防止することが可能となる。血液透析患者のカルボニル化合物による障害をできるだけ小さくすることが本発明の課題である。本発明者は、まず、血液透析に使用される血液透析膜が、患者血中のカルボニル化合物量にどのような影響を及ぼすのかを検討した。カルボニル中間体の蓄積(カルボニルストレス)を表すマーカーであるペントシジンの血中含量を、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により定量し、患者が透析に使用している透析膜の種類別に比較した。その結果、遊離ペントシジンは、いずれの透析膜を使用した場合でも透析により顕著に除去されるものの、体内のペントシジンの大半を占める蛋白結合型ペントシジンは、透析によっては効果的に除去できていないことが判明した。透析膜の種類別では、low−fluxセルロース、high−fluxポリメチルメタクリレート(PMMA)、およびAN69においては、蛋白結合型および遊離型ペントシジンは、両者とも同様の値を示したが、high−fluxポリスルフォン(PS)においては低い値を示した(p<0.01)。患者が日本人であるかベルギー人であるか、またはPS膜のメーカーなどで差は認められなかった。患者が使用する透析膜をAN69からPSに変更した3人の患者では、蛋白結合型ペントシジンのレベルが低下し、再びAN69に戻すと、もとのレベルまで上昇した。これらの結果から、カルボニル化合物の生成を抑制するための透析膜としては、ポリスルフォン膜が有効であることが判明した。本発明者は次に、血中のカルボニル化合物をより効果的に除去するため、カルボニル化合物トラップ剤を利用することを考えた。透析患者血液から血漿を調製し、カルボニル化合物トラップ剤を固定化した担体と共にインキュベートし、血中カルボニル化合物量の定量を行った。その結果、カルボニル化合物トラップ剤を固定化した担体とのインキュベーションにより、血中カルボニル化合物量は有意に低下することが判明した。このようなことから、本発明者は、血中に蓄積するカルボニル化合物をより重視し、タンパク質修飾を中心とした透析患者のカルボニルストレスを改善するためには、血中に蓄積するカルボニル化合物の除去が必要と考えた。そこでこの課題の解決のために、カルボニル化合物との化学的な反応や吸着によってカルボニル化合物のタンパク質に対する修飾活性を失わせる、または低下させる機能を有する化合物の利用が有効であることを見出し本発明を完成した。本発明において、このような機能を有する化合物を固定化した担体、あるいはこのような化合物そのものを「カルボニル化合物トラップ剤」と呼ぶ。すなわち本発明は、以下に記載の、血中のカルボニル化合物を除去するための、カルボニル化合物トラップ剤、および生体のカルボニルストレス状態を改善するための方法および薬剤に関する。〔1〕 血中のカルボニル化合物を除去するための、カルボニル化合物トラップ剤。〔2〕 血液透析に用いるための、〔1〕に記載のカルボニル化合物トラップ剤。〔3〕 カルボニル化合物トラップ剤が、血液に不溶性の担体に固定化されたものである〔1〕に記載のカルボニル化合物トラップ剤。〔4〕 担体が透析膜である、〔3〕に記載のカルボニル化合物トラップ剤。〔5〕 透析膜がポリスルフォン膜である、〔4〕に記載のカルボニル化合物トラップ剤。〔6〕 カルボニル化合物トラップ剤がメイラード反応阻害剤である、〔1〕に記載のカルボニル化合物トラップ剤。〔7〕 メイラード反応阻害剤が、アミノグアニジン、ピリドキサミン、ヒドラジン、SH基含有化合物、およびそれらの誘導体からなる群から選択された少なくとも1つの化合物である、〔6〕に記載のカルボニル化合物トラップ剤。〔8〕 カルボニル化合物トラップ剤が、血液に不溶性の化合物からなることを特徴とする〔1〕に記載のカルボニル化合物トラップ剤。〔9〕 血液に不溶性の化合物が、イオン交換樹脂、活性炭、シリカゲル、アルミナ、および炭酸カルシウムからなる群から選択された少なくとも1つの化合物である、〔8〕に記載のカルボニル化合物トラップ剤。〔10〕 カルボニル化合物トラップ剤を有効成分とする、生体のカルボニルストレス状態改善剤。〔11〕 カルボニル化合物トラップ剤を有効成分とする、血液におけるカルボニルストレス状態改善剤。〔12〕 血液回路内に固定化するための、〔11〕に記載のカルボニルストレス状態改善剤。〔13〕 カルボニル化合物トラップ剤がメイラード反応阻害剤である、〔11〕に記載のカルボニルストレス状態改善剤。〔14〕 メイラード反応阻害剤が、アミノグアニジン、ピリドキサミン、ヒドラジン、SH基含有化合物、およびそれらの誘導体からなる群から選択される少なくとも1つの化合物である、〔13〕に記載のカルボニルストレス状態改善剤。〔15〕 患者血液を血液回路内においてカルボニル化合物トラップ剤に接触させる工程を含む、カルボニルストレス状態の改善方法。〔16〕 カルボニル化合物トラップ剤が血液に不溶性の担体に固定化されていることを特徴とする、〔15〕に記載の方法。あるいは本発明は、カルボニル化合物トラップ剤の、血中のカルボニル化合物の除去における使用に関する。更に本発明は、カルボニル化合物トラップ剤の、血中のカルボニルストレス状態改善剤の製造のための使用に関する。本発明において、トラップの対象となるカルボニル化合物とは、例えば腎不全患者の血中に酸化ストレスにともなって蓄積する以下のような化合物が含まれる。炭水化物に由来するカルボニル化合物:・アラビノース・グリオキサール・メチルグリオキサール・3−デオキシグルコゾンアスコルビン酸に由来するカルボニル化合物:・デヒドロアスコルビン酸脂質に由来するカルボニル化合物:・ヒドロキシノネナール・マロンジアルデヒド・アクロレイン本発明におけるカルボニル化合物トラップ剤としては、これら全てのカルボニル化合物に対し、化学的な反応や吸着によってカルボニル化合物のタンパク質に対する修飾活性を失わせる、または低下させるものであることが望ましいが、これらのカルボニル化合物の中で主要なもののみに対して有効な場合も含まれる。本発明において使用することができるカルボニル化合物トラップ剤には、例えば以下のようなものが含まれる。・アミノグアニジン(Foote,E.F.et al.,Am.J.Kidney Dis.,25:420−425(1995))・±2−イソプロピリデネヒドラゾノ−4−オクソ−チアゾリジン−5−イルアセタニリド(±2−isopropylidenehydrazono−4−oxo−thiazolidin−5−ylacetanilide:OPB−9195)(S.Nakamura,1997,Diabetes.46:895−899)さらにカルボニル化合物トラップ剤としては、例えば以下のような化合物またはそれらの誘導体であって、カルボニル化合物トラップ剤として機能する化合物を用いることができる。なお、誘導体とは、化合物のいずれかの位置で原子または分子の置換が起きている化合物を指す。これらの化合物は血液との分離を容易にするために担体に結合させて本発明によるカルボニル化合物トラップ剤とすることができる。あるいは、化合物自体が血液に対して不溶性であれば、担体に固定することなく本発明のカルボニル化合物トラップ剤として用いることができる。(1)メチルグアニジンなどのグアニジン誘導体(特開昭62−142114号、特開昭62−249908号、特開平1−56614号、特開平1−83059号、特開平2−156号、特開平2−765号、特開平2−42053号、特開平6−9380号、特表平5−505189号)。(2)スルホニルヒドラジンなどのヒドラジン誘導体。(3)ピラゾロン(特開平6−287179号)、ピラゾリン(特開平10−167965号)、ピラゾール(特開平6−192089号、特開平6−298737号、特開平6−298738号)、イミダゾリジン(特開平5−201993号、特開平6−135968号、特開平7−133264号、特開平10−182460号)、ヒダントイン(特開平6−135968号)などの2個の窒素原子を有する5員複素環式化合物。(4)トリアゾール(特開平6−192089号)などの3個の窒素原子を有する5員複素環式化合物。(5)チアゾリン(特開平10−167965号)、チアゾール(特開平4−9375号、特開平9−59258号)、チアゾリジン(特開平5−201993号、特開平3−261772号、特開平7−133264号、特開平8−157473号)などの1個の窒素原子と1個の硫黄原子を有する5員複素環式化合物。(6)オキサゾール(特開平9−59258号)などの1個の窒素原子と1個の酸素原子を有する5員複素環式化合物。(7)ピリジン(特開平10−158244号、特開平10−175954号)、ピリミジン(特表平7−500811号)などの含窒素6員複素環式化合物。(8)インダゾール(特開平6−287180号)、ベンゾイミダゾール(特開平6−305964号)、キノリン(特開平3−161441号)などの含窒素縮合複素環式化合物。(9)ベンゾチアゾール(特開平6−305964号)などの含硫含窒素縮合複素環式化合物。(10)ベンゾチオフェン(特開平7−196498号)などの含硫縮合複素環式化合物。(11)ベンゾピラン(特開平3−204874号、特開平4−308586号)などの含酸素縮合複素環式化合物。(12)カルバゾイル(特開平2−156号、特開平2−753号)、カルバジン酸(特開平2−167264号)、ヒドラジン(特開平3−148220号)などの窒素化合物。(13)ベンゾキノン(特開平9−315960号)、ヒドロキノン(特開平5−9114号)などのキノン類。(14)脂肪族ジカルボン酸(特開平1−56614号、特開平5−310565号)。(15)ケイ素含有化合物(特開昭62−249709号)。(16)有機ゲルマニウム化合物(特開平2−62885号、特開平5−255130号、特開平7−247296号、特開平8−59485号)。(17)フラボノイド類(特開平3−240725号、特開平7−206838号、特開平9−241165号、WO94/04520)。(18)アルキルアミン類(特開平6−206818号、特開平9−59233号、特開平9−40626号、特開平9−124471号)。(19)アミノ酸類(特表平4−502611号、特表平7−503713号)。(20)アスコクロリン(特開平6−305959号)、安息香酸(WO91/11997)、ピロロナフチリジニウム(特開平10−158265号)などの芳香族化合物。(21)ポリペプチド(特表平7−500580号)。(22)ピリドキサミンなどのビタミン類(WO97/09981)。(23)グルタチオンやシステインなどのSH基含有化合物。(24)還元型アルブミンなどのSH基含有蛋白。(25)テトラサイクリン系化合物(特開平6−256280号)。(26)キトサン類(特開平9−221427号)。(27)タンニン類(特開平9−40519号)。(28)第4級アンモニウムイオン含有化合物。(29)メトホルミン、フェンホルミン、およびブホルミンなどのビグアナイド。(30)イオン交換樹脂などの高分子化合物。(31)活性炭、シリカゲル、アルミナ、炭酸カルシウム等の無機化合物。以上のような化合物の多くは、一般にメイラード反応阻害剤として知られている。メイラード反応とは、グルコースなどの還元糖とアミノ酸やタンパク質との間に生じる非酵素的な糖化反応であり、1912年にメイラード(Maillard)がアミノ酸と還元糖の混合物を加熱すると褐色に着色する現象に注目して報告した(Maillard,L.C.,Compt.Rend.Soc.Biol.,72:599(1912))。メイラード反応は、食品の加熱処理や貯蔵の間に生じる褐変化、芳香成分の生成、呈味、タンパク質変性などに関与していることから、食品化学の分野で研究が進められてきた。ところが、1968年ヘモグロビンの微小画分であるグリコシルヘモグロビン(HbA1c)が生体内で同定され、さらにこれが糖尿病患者において増加することが判明し(Rahbar.S.,Clin.Chim.Acta,22:296(1968))、それを契機に生体内におけるメイラード反応の意義並びに糖尿病合併症、動脈硬化などの成人病の発症や老化の進行との関係が注目されるようになってきた。そして、このような生体内のメイラード反応を阻害する物質の探索が精力的に行われ、前述の化合物類がメイラード反応阻害剤として見いだされた。しかし、このようなメイラード反応阻害剤が、血中のカルボニル化合物を排除して血液透析患者等のカルボニルストレス状態を改善することができるということは知られていなかった。本発明におけるカルボニル化合物のトラップ剤を固定化する担体としては、血液に不溶性で、人体に対して無害なもの、血液に直接接触する材料として安全性および安定性を有するものであれば特に制限されない。具体的には、例えば、合成または天然の有機高分子化合物や、ガラスビーズ、シリカゲル、アルミナ、活性炭などの無機材料、およびこれらの表面に多糖類、合成高分子などをコーティングしたものなどが挙げられる。高分子化合物からなる担体としては、例えば、ポリメチルメタクリレート系重合体、ポリアクリロニトリル系重合体、ポリスルフォン系重合体、ビニル系重合体、ポリオレフィン系重合体、フッ素系ポリマー系重合体、ポリエステル系重合体、ポリアミド系重合体、ポリイミド系重合体、ポリウレタン系重合体、ポリアクリル系重合体、ポリスチレン系重合体、ポリケトン系重合体、シリコン系重合体、セルロース系重合体、キトサン系重合体などがあげられる。具体的には、アガロース、セルロース、キチン、キトサン、セファロース、デキストラン等の多糖類およびそれらの誘導体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール、ポリアリルエーテルスルフォン、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリカーボネート、アセチル化セルロース、ポリアクリロニトリル、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、シリコン樹脂、フッ素樹脂、ポリウレタン、ポリエーテルウレタン、ポリアクリルアミド、それらの誘導体などが挙げられる。これらの高分子材料は単独、あるいは2種以上を組み合わせて使用され得る。2種以上組み合わせる場合は、そのうち少なくとも1種にカルボニル化合物トラップ剤が固定化される。固定化されるカルボニル化合物トラップ剤は、単独で固定化するほか、2種類以上を固定化してもよい。またこれらの高分子材料には、適当な改質剤を添加したり、放射線架橋や過酸化物架橋などの変性処理を施すこともできる。担体の形状に制限はなく、例えば膜状、繊維状、顆粒状、中空系状、不織布状、多孔形状、ハニカム形状などがあげられる。これらの担体は、厚さ、表面積、太さ、長さ、形状、および/または大きさを種々変えることにより、血液との接触面積を制御することができる。上記担体にカルボニル化合物トラップ剤を固定化するには、公知の方法、例えば、物理的吸着法、生化学的特異結合法、イオン結合法、共有結合法、グラフト化などを用いればよい。また必要によりスペーサーを担体とカルボニル化合物トラップ剤の間に導入してもよい。トラップ剤に毒性がある場合など、担体からの溶出が問題となる場合には、溶出量をできるだけ少なくするためにトラップ剤は担体に共有結合で固定化されていることが好ましい。カルボニル化合物トラップ剤を担体に共有結合するには、担体に存在する官能基を用いればよい。官能基としては、例えば、水酸基、アミノ基、アルデヒド基、カルボキシル基、チオール基、ヒドロキシル基、シラノール基、アミド基、エポキシ基、サクシニルイミド基等が挙げられるが、これらに制限されない。共有結合の例としてエステル結合、エーテル結合、アミノ結合、アミド結合、スルフィド結合、イミノ結合、ジスルフィド結合等が挙げられる。カルボニル化合物トラップ剤が固定化された担体としては、例えば、スルホニルヒドラジン基を有するポリスチレン担体(PS−TsNHNH2,ARGONAUT TECHNOLOGIES社)などの市販のものを用いることもできる。本発明のカルボニル化合物トラップ剤を固定化した担体の滅菌は、公知の滅菌法から、トラップ剤や担体などの種類により適当な滅菌法が選択される。滅菌処理には高圧蒸気滅菌、ガンマ線照射滅菌、ガス滅菌などが挙げられる。カルボニル化合物トラップ剤を固定化した担体と血液との接触は、種々の形態が考えられる。例えば、カルボニル化合物トラップ剤を固定化した担体が充填された血液バッグに採血した患者の血液を入れ、この中で患者血液のカルボニル化合物をトラップする方法、カルボニル化合物トラップ剤を固定化したビーズ状、または繊維状等の担体をカラムに充填したものに血液を循環させる方法、などが挙げられる。血液は、全血でなくても、血漿を分離したのち、血漿を処理してもよい。処理された血液は患者に戻されるか、必要に応じて血液バッグ中などに保存することもできる。血液バッグ内にカルボニル化合物トラップ剤を固定化した担体を含めておくことにより、血液バッグ内に保存中の血液で生成・蓄積するカルボニル化合物をトラップすることも可能である。本発明のカルボニル化合物トラップ剤を固定化した担体と血液との接触は、血液透析や血液濾過、血液濾過透析、血液吸着、血漿分離を含む血液浄化の過程で行うことができる。例えば、血液透析患者に対しては、血液透析回路内にカルボニル化合物トラップ剤を固定化した担体を配置させることにより、血液透析とカルボニル化合物のトラップとを同時に行うことができる。この場合、血液透析膜を担体として利用し、カルボニル化合物トラップ剤を血液透析膜に固定化しておくことが好ましい。担体として用いられる透析膜の種類は公知のものを使用することができる。例えば、再生セルロース、セルローストリアセテート等のセルロース誘導体、ポリメチルメタクリレート、ポリオレフィン、ポリスルフォン、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルナイロン、シリコン、ポリエステル系共重合体等が挙げられ、特に限定されない。実施例に示されたように、透析膜としてポリスルフォンを用いた場合に、カルボニル中間体(ペントシジン)レベルの低下が認められた。従って、上記透析膜の中でも、特にポリスルフォン膜を担体として用いるのが好ましい。もちろん透析膜を担体とせず、上記のように、カルボニル化合物トラップ剤を固定化した担体を充填したカラムを血液透析回路中に配置させてもよい。このように患者血液をカルボニル化合物トラップ剤を固定化した担体に接触させることにより、血中由来のカルボニル化合物が捕捉され、その生体に対する障害活性がうばわれ、無害化される。体外循環時に血液の凝固を防ぐため、抗凝固剤を併用することもできる。抗凝固剤としては、例えば、ヘパリン、低分子ヘパリン、フサン(メシル酸ナファモスタット)等が挙げられる。これらは、担体に固定化されていてもよい。血液との接触時に用いるトラップ剤が少ないと、透析時に患者血中のカルボニル化合物を処理することができなくなるケースが予想される。特に患者血中のカルボニル化合物の量をあらかじめ予測することは困難なので、患者に対する安全性を保障できる範囲内でできるだけ多量のトラップ剤が活性を維持できるようにするのが効果的である。トラップ剤の用量は、担体へのトラップ剤の固定化量、またはトラップ剤が固定化された担体の使用量を変更して調整することができる。本発明のカルボニル化合物トラップ剤には、上述のメイラード反応阻害剤に代表される有機化合物の他、イオン交換樹脂などの高分子化合物、あるいは活性炭やシリカゲル、アルミナ、炭酸カルシウムなどの無機化合物も使用できる。これらの化合物は、クロマトグラフィーの充填剤として知られているものであるが、その吸着能を利用してカルボニル化合物をトラップすることができる。このような化合物は、それ自体が担体として機能するため、例えば、外部血液循環回路に装置された濾過器内に充填して使用することができる。このような化合物も、本発明によるカルボニルストレス状態改善剤を構成する「カルボニル化合物トラップ剤」として利用することができる。この場合、これらの化合物そのものが、前記カルボニル化合物トラップ剤を固定化した担体として機能する。あるいは、このような自らカルボニル化合物トラップ能を有する担体に、更に他のカルボニル化合物トラップ剤を固定化することもできる。なお、活性炭を使用した吸着型血液浄化器が公知である。吸着型血液浄化器は、薬物中毒や肝性昏睡時の血液浄化、多臓器不全としての急性腎不全発症の初期に増加する内因性・外因性の各種トキシンや血管作動性物質の除去を目的とした血液透析の補助療法として使用されている。しかしながら、かかる吸着型血液浄化器が、カルボニル化合物トラップ剤として有効であるということは全く知られていなかった。発明を実施するための最良の形態以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に制限されるものではない。[実施例1]血漿ペントシジンに及ぼす血液透析膜の種類の影響1. 患者ベルギー人(n=29)または日本人(n=97)で、週3回の血液透析を行っている患者126名(男性69名、女性57名)を調査した。年齢は61.2±13(標準偏差)歳であった。2名のみが、軽いII型糖尿病であった。すべての患者は、少なくとも3ヶ月間(または、2、3名の患者は3ヶ月以内であるが、血液透析の開始以来)にわたって同じ種類の血液透析膜を使用していた。ベルギー人患者29名中26名においては、透析膜を再使用したが、日本人患者においては、再使用はなかった。各患者のカルテから、残存腎機能(ml/day)、透析膜表面積、および血液透析の透析時間のデータを得た。2. 膜の種類血液透析膜は、high−flux(UFインデックス>10ml/mmHg/h)AN69(Hospal(France)社製)(AN69群)、high−fluxポリスルフォン(Fresenius(Germany)社製)(PS群)、high−fluxポリスルフォン(旭メディカル(Japan)社製)(APS群)、high−fluxポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate)(Toray(Japan)社製)(PMMA群)、およびlow−fluxセルロース(旭メディカル(Japan)社製)(セルロース群)を使用した。3. 血漿試料血漿試料は、1回目の血液透析開始に先立って126名の患者全員から採取し、毎週の透析後に66名から採取した。すべての試料は直ちに遠心分離を行い、−20℃に凍結した血漿について下記の検査をおこなった。4. 全ペントシジンおよび遊離ペントシジンの定量全ペントシジンの定量には、試料(50μl)を凍結乾燥させ、100μlの6N HClに溶解させ窒素封入後110℃で16時間インキュベートし、100μlの5N NaOHおよび200μlの0.5Mリン酸バッファー(pH7.4)で中和後、孔径0.5μmのフィルターで濾過し、PBSで20倍に希釈した。遊離型ペントシジンの定量には、試料(50μl)に等量の10%TCAを混合後、5000×g10分で遠心した。上清を孔径0.5μmのフィルターで濾過し、蒸留水で4倍に希釈した。これらの試料中のペントシジンをC18逆相カラム(Waters,Tokyo,Japan)を用いた逆相HPLC(Miyata T,et al.J Am Soc Nephrol 7:1198−1206,1996)で分析した。蛍光検出器(RF−10A;Shimadzu)を用い、励起波長/検出波長を335/385nmで流出液をモニターした。合成ペントシジンを用いて標準曲線を作成した。蛋白結合型ペントシジン(ペントシジン/蛋白)(pmol/mg protein)は、[血漿全ペントシジン(pmol/ml)−遊離ペントシジン(pmol/ml)]/[血漿蛋白濃度(mg/ml)]により算出した。5. 患者群間の統計解析ペントシジンレベルの定量の結果を含む各数値は平均±標準偏差またはパーセンテージ(%)として表した。残存腎機能のデータはlog変換した。一元配置分散分析(one−way ANOVA)(F検定つき)により、個人データとペントシジンレベルを、異なる透析膜を用いている血液透析患者のグループ間で比較した。さらにBonferroni t−testを用いて透析膜のグループを比較分析した。カイ二乗検定により、残存腎機能の程度を、さまざまな群間で比較した。5群の患者間のcross−sectionalな解析の結果を表1に示す。年齢に関してはグループ間に大きな違いはなかった。血漿蛋白レベルはAN69およびセルロース群ではより高かった。透析膜面積はAPS群において大きく、また研究前の血液透析期間・1回の透析時間もAPS群で長かった。一方、残存腎機能はPS群で高かった。透析前の蛋白結合型ペントシジンおよび遊離型ペントシジンの血漿レベルは、AN69、PMMA、およびセルロース群では同じレベルであり、PS群およびAPS群では有意に低かった。PS群とAPS群との間では有意差はなかった(表2)。透析前の血漿ペントシジンに対し影響を与えうる様々な因子を、単変量分析により分析した結果、残存腎機能が、蛋白結合型および遊離ペントシジンに対し有意に影響を与えることが判明した。具体的には、残存腎機能が高いほど、ペントシジンレベルは低かった。血漿蛋白レベルやアルブミンレベル・年齢・透析歴は、ペントシジンレベルと相関は認められなかった(表3)。ポリスルフォン群(PS群およびAPS群)の場合、Fresenius社または旭メディカル社(Asahi社)のポリスルフォン膜による透析を受けたベルギー人患者または日本人患者の透析前のペントシジンレベルは同様の値を示した(表4)。以上のように、ポリスルフォン透析膜を使用する透析患者は、他の透析膜による透析患者よりもペントシジンレベルが低いことが判明した。ポリスルフォン膜で透析を行った患者は、国に関わらずペントシジンレベルの低下が認められ、さらに異なるメーカーの透析膜でも同様の結果が得られた。更に、旭メディカル社製ポリスルフォン透析膜による透析を受ける患者は、実質的に無尿であるにもかかわらず、ペントシジンレベルは同様に低かった。Fresenius社製ポリスルフォン群では、尿量が300ml/minを超える患者を除外してもペントシジンレベルの差異における統計学的な有意性に変化は来さなかった。AN69もhigh−fluxであり、また、high−fluxのAN69とlow−fluxのセルロースによる透析が、透析前のペントシジンレベルに関して同様の結果を示したことから、ペントシジンレベルの差異と透析膜の除去性能は無関係であると考えられる。蛋白補正ペントシジンレベルおよび遊離ペントシジンレベルと残存腎機能との関係を、線形回帰分析により分析した。従属変数(蛋白補正ペントシジンレベル・遊離ペントシジンレベル)に対する各説明変数の効果を、変数選択−重回帰分析(変数増加法)(Forward stepwise multiple regression analysis)により検定した。すべての分析は、BMDP統計ソフトウェア(BMDPはNew System Professional Edition:Statistical Solutions Inc.,University of California Press,Berkeley,1995の商標)を用いて行った。P<0.05を有意とした。分析の結果、透析膜の種類と残存腎機能のみが、蛋白結合型および遊離ペントシジンレベルの独立決定因子であることが示された(表5)。相互作用はどれも有意でなかったことから、ペントシジンレベルに対する残存腎機能の影響は、透析膜の種類によって影響されないと考えられる。6. 血液透析前後のペントシジンレベルに及ぼす透析膜の効果透析前のペントシジンレベルに対して透析膜が効果を及ぼす機構をさらに解析するため、high−fluxポリスルフォン(Fresenius)、AN69、PMMA、またはlow−fluxセルロース透析膜を使った4群の患者に対し、透析前および後のペントシジンレベルを定量した(表6)。上記の実験により予想された通り、蛋白結合型ペントシジンはほとんど変化せず、また、透析膜の種類とも無関係であった。唯一、遊離ペントシジンが顕著に減少したが、その比率はすべての群で似ており、76%(AN69)から67%(PMMA)の間であった。グループ間に有意な差はなかった。従って、ポリスルフォン膜による透析患者で透析前のペントシジンレベルが低かったことを、透析膜の透析能力の差異によって説明することはできないことが判明した。本発明者は、以前、血液透析そのものは、全ペントシジンまたは蛋白結合型ペントシジンレベルに変更を与えないことを示した(Miyata T,et al.Kidney Int 51:880−887,1997)。この知見は、ペントシジンの95%は、透析で除去されないアルブミンと結合している(Miyata T,et al.J Am Soc Nephrol 7:1198−1206,1996)という事実に一致する。この知見は、上記の4つの異なる種類の透析膜による実施例で裏付けられた。これに対し、遊離ペントシジンは血液透析により減少し、すべての透析膜で似た現象が観察されたが、この結果は、遊離ペントシジンの分子量(379Da)を考えれば予想されることである。血液透析の前後のペントシジンレベルが、すべての透析膜で同様であったことは、受動輸送だけでなく、ペントシジンの吸収も、ポリスルフォンや他の透析膜による透析中に同様に起こっていることを示唆している。インビトロにおいて、放射性標識された遊離ペントシジンの吸収を測定したところ、吸収はセルロース膜およびポリスルフォン膜ではごく僅かであり、事実上、差は認められなかった。 従って、ポリスルフォン膜によりペントシジンの除去が向上するということで、透析前のペントシジンの低レベルを説明することはできないと思われる。別の可能性としては、ポリスルフォン膜による透析が、ペントシジン産生の抑制と係わっている可能性が考えられる。既に指摘したように、ペントシジンレベルは炭水化物に由来するカルボニル中間体の濃度を反映している。ポリスルフォン膜は、これらのカルボニル化合物の除去に特異的な効果を有しており、それによりペントシジン産生に効果を発揮している可能性がある。または、ポリスルフォン膜は尿毒症に関連しているとされる酸化的ストレスを減少させる可能性も考えられる(Miyata T,et al.Kidney Int 54;1290−1295,1998;Miyata T,et al.Kidney Int 51:1170−1181,1997;Loughrey CM,et al.Q J Med 87:679−683,1994;Ueda Y,et al.Biochem Biophys Res Commun 245:785−790,1998;Kumano K,et al.Adv Perit Dial 1992;8:127−130;Witko−Sarsat V,et al.Kidney Int 49:1304−1313,1996)。酸化的ストレスの減少により、カルボニル化合物の産生が抑えられ、それによりペントシジンの生成が減少する可能性もある(Miyata T,et al.Kidney Int 51:1170−1181,1997)。7. ペントシジンレベルに及ぼす透析膜の変更の効果ポリスルフォン膜において特異的にペントシジンレベルが低くなる効果を確かめるため、長期間(>5年)AN69による透析を受けている3人の無尿症患者についてlongitudinalな解析を行った。患者は10週間の間、同様の表面積を持つポリスルフォンの透析膜(Fresenius)による透析に変更し、その後AN69に再変更した。PSへの変更の2週間前の透析前試料(2試料)、PS透析期間中の透析前試料(5試料)、およびAN69へ戻した後、14〜16週の透析前試料(2試料)を採取した。PSの透析へ変更後、各患者の蛋白結合型ペントシジンレベルは次第に減少し、AN69の透析へ戻した後は、PSに変更前のAN69使用時のレベルまで戻ることが判明した(図1)。AN69からPSによる透析に移行した患者のlongitudinalな研究において観察されたペントシジンレベルの減少は、cross−sectionalな研究において観察されたPS群とAN69群との間の違いの1/3に過ぎない(3.6に対し10.4pmol/mg protein)。この相異は、PS透析移行による観察が、10週間しか行われなかったことによることが考えられる。ポリスルフォンが、ペントシジンの生成速度を減少させているとすれば、蛋白結合型ペントシジンの減少がこのように緩やかであったことも説明できると思われる。このような環境下では、蛋白結合型ペントシジンレベルの減少は、そのタンパク質の代謝によってしか起こらないと考えられる。同様の観察が、腎臓移植成功後においてもなされている。このとき、蛋白結合型ペントシジンの減少は、血漿β2ミクログロブリンの減少と比べ、非常にゆっくりとしか起こらず、蛋白結合型ペントシジンの崩壊が遅いことが示されている(Miyata T,et al.Kidney Int 51:880−887,1997;Hricik DE,et al.Clin Transplantation 10:568−573,1996)。[実施例2]カルボニル化合物トラップ剤固定化担体による血中カルボニル化合物の除去架橋したポリスチレン樹脂にスルホニルヒドラジン基を結合したもの(PS−TsNHNH2,ARGONAUT TECHNOLOGIES社)をカルボニル化合物トラップビーズとして用いて、血中カルボニル化合物の除去効果を検討した。透析患者血漿及びカルボニル化合物トラップビーズを添加した透析患者血漿を37℃でインキュベートし、ペントシジンの形成抑制効果を確認した。カルボニル化合物トラップビーズの入ったチューブに、ジメチルスルホキシド100μl加え膨潤させた後、濾過滅菌した透析患者の透析前の血漿を添加し、37℃で1週間インキュベートした。インキュベート終了後、ポアーサイズ0.22μmの遠心式フィルター(ミリポア製、UFC30GV00)を用いてビーズを除去した。つぎに、ビーズを除去した溶液50μlに10%トリクロル酢酸50μlを加え、遠心してタンパク質を沈殿させた。タンパク質を300μlの5%トリクロル酢酸で洗浄し、乾固させた。つぎに、6N HClを100μl添加し、110℃で16時間加熱した後、HPLCでペントシジンを定量した(T.Miyataら,1996,J.Am.Soc.Nephrol.,7:1198−1206,T,Miyataら,1996,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,93:2353−2358)。37℃でインキュベートしたときに生成するペントシジン量を図2に示した。カルボニル化合物トラップビーズの添加により、ペントシジンの生成が抑制されることが判明した。また、ペントシジンの生成の抑制は添加したカルボニル化合物トラップビーズの量に依存した。これらの結果から、カルボニル化合物トラップ剤を固定化した担体を用いて、血中のカルボニル化合物を除去できることが明らかとなった。また、血液透析膜としては、特にポリスルフォン膜が、カルボニルストレス状態の改善に好適であることが判明した。[実施例3]活性炭によるジカルボニル化合物溶液中のカルボニル化合物の除去作用活性炭(和光純薬製)25mgまたは50mgの入ったチューブに、グリオキサール、メチルグリオキサール、3−デオキシグルコソンをPBS(−)に溶解したジカルボニル溶液(各100μMの濃度)をそれぞれ900μl添加しローテーターを用いて室温で19時間攪拌した。次に、溶液をポアーサイズ0.22μmの遠心式濾過チューブ(ミリポア製、UFC30GV00)で濾過し、濾液中のグリオキサール、メチルグリオキサール、3−デオキシグルコソン濃度を高速液体クロマトグラフィーを用いて測定した。活性炭25mgにジカルボニル溶液を900μl添加した場合、グリオキサールは71%、メチルグリオキサールは96%、3−デオキシグルコソンは97%トラップされた。活性炭50mgの場合、グリオキサールは85%、メチルグリオキサールは98%、3−デオキシグルコソンは98%トラップされた(図3)。[実施例4]活性炭による腹膜透析液中のジカルボニル化合物の除去作用腹膜透析液は通常、高濃度のブドウ糖を含有することから、滅菌時や保存時にブドウ糖由来のカルボニル化合物が生成し、これらのカルボニル化合物が腹膜透析施工中に生体内に導入され、カルボニルストレス状態の発生の一因となる。そこで、本発明のカルボニル化合物トラップ剤による腹膜透析液中のカルボニル化合物の除去効果を検討した。活性炭25mgまたは50mgの入ったチューブに、腹膜透析液(バクスター製、ダイアニール PD−4,1.5)を900μl添加しローテーターを用いて室温で19時間攪拌した。次に、溶液をポアーサイズ0.22μmの遠心式濾過チューブ(ミリポア製、UFC30GV00)で濾過し、濾液中のグリオキサール、メチルグリオキサール、3−デオキシグルコソン濃度を高速液体クロマトグラフィーを用いて測定した。活性炭25mgに腹膜透析液を900μl添加した場合、グリオキサールは56%、メチルグリオキサールは71%、3−デオキシグルコソンは62%トラップされた。活性炭50mgに腹膜透析液を900μl添加した場合、グリオキサールは64%、メチルグリオキサールは78%、3−デオキシグルコソンは77%トラップされた(図4)。[実施例5]活性炭による透析患者血漿を37℃でインキュベートしたときのペントシジンの生成抑制効果PBS(−)に懸濁させた活性炭12mgの入ったチューブに、濾過滅菌した透析患者の透析前の血漿250μlを添加し、37℃で1週間インキュベートした。インキュベート終了後、遠心後の上清50μlに、12N HClを50μl添加し、110℃で16時間加熱し、加水分解した後、高速液体クロマトグラフィーを用いてペントシジンを定量した(T.Miyataら,1996,J.Am.Soc.Nephrol.,7:1198−1206,T.Miyataら,1996,Proc.Natl.Acad.Sci.USA.,93:2353−2358)。37℃でインキュベートしたときに生成するペントシジン量を図5に示した。活性炭の添加により、対照と比較してペントシジンの生成が51%抑制された。このことから、ペントシジンの前駆体となるカルボニル化合物が活性炭により吸着されることが示唆された。[実施例6]活性炭による血漿中のカルボニル化合物の除去作用活性炭(和光純薬製)20mg、または50mgの入ったチューブに、腎不全患者の血漿を500μl添加しローテーターを用いて室温で12時間撹拌した。つぎに、遠心により活性炭を分離後、血漿中のグリオキサールとメチルグリオキサール濃度を高速液体クロマトグラフィーを用いて測定した。血漿中のグリオキサールとメチルグリオキサール濃度は、以下のようにして測定した。すなわち、血漿200μlに0.67M過塩素酸300μlを添加して撹拌後、遠心して上清を分離した。この上清150μlに1% o−フェニレンジアミン20μl、内部標準として10μMの2,3−ブタンジオン50μlを加え撹拌後、25℃で1時間反応させた。Ohmoriらの方法(Ohmori S,et al.J.Chromatogr.414:149−155,1987)によりグリオキサールあるいはメチルグリオキサールと o−フェニレンジアミンとの反応で生成するキノキサリン誘導体を逆相カラムを用いたHPLC分離し定量した。結果は図6に示した。血漿に活性炭20mgを添加することにより、グリオキサールは58%、メチルグリオキサールは65%トラップされた。活性炭50mgを添加した場合には、グリオキサールは75%、メチルグリオキサールは80%がトラップされた。[実施例7]スルホニルヒドラジン結合ポリスチレンビーズ(Ps−TsNHNH2)による血漿中のカルボニル化合物の除去作用スルホニルヒドラジン結合ポリスチレンビーズ10mg、または20mgの入ったチューブに、腎不全患者の血漿を500μl添加しローテーターを用いて室温で12時間撹拌した。 つぎに、遠心によりスルホニルヒドラジン結合ポリスチレンビーズを分離後[実施例6]と同様の方法により血漿中のグオキサールとメチルグリオキサール濃度を高速液体クロマトグラフィーを用いて測定した。結果は図6に示した。血漿にスルホニルヒドラジン結合ポリスチレンビーズ10mgを添加することにより、グリオキサールは45%、メチルグリオキサールは39%トラップされた。スルホニルヒドラジン結合ポリスチレンビーズ20mgを添加した場合には、グリオキサール、メチルグリオキサールともに75%がトラップされた。[実施例8]アミノグアニジンによる血漿中のカルボニル化合物の除去作用アミノグアニジンを0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.4)に溶かした溶液(50mM,100mM)50μlと腎不全患者の血漿を450μlを混合し室温で12時間静置した。12間後に血漿中のグリオキサールとメチルグリオキサール濃度を[実施例6]と同様の方法により高速液体クロマトグラフィーを用いて測定した。結果は図7に示した。血漿のアミノグアニジン濃度が5mMのとき、グリオキサールは50%、メチルグリオキサールは46%トラップされた。アミノグアニジン濃度が10mMの場合には、グリオキサールは58%、メチルグリオキサールは70%がトラップされた。[実施例9]カルボニル化合物トラップ剤を固定化した担体によるカルボニル化合物の除去作用カルボニル化合物トラップ剤を固定化した担体によるカルボニル化合物の除去作用を、ジアミノグアニジン結合ポリアミドを用いて検討した。ジアミノグアニジン結合ポリアミドは、ポリアミドにエピクロルヒドリンを反応させた後、ジアミノグアニジンの水溶液(pH12)を添加し80℃で約1時間反応させることにより作製した(図8)。反応後、得られたジアミノグアニジン結合ポリアミドを水で洗浄し乾燥させたのち、実験に用いた。PBS(pH7.4)に溶かしたジカルボニル化合物溶液(グリオキサール、メチルグリオキサール、3−デオキシグルコソン各1μM)1mlを、ジアミノグアニジン結合ポリアミド30mgを含むチューブに添加し、ローテーターを用いて室温(25℃)で5時間攪拌した。溶液100μlを遠心し、上清に残留したグリオキサール、メチルグリオキサール、3−デオキシグルコソンの濃度を、これらを誘導体に転換したのち、高速液体クロマトグラフィーを用いて測定した。結果を図9に示した。グリオキサールは30%、メチルグリオキサールは56%、3−デオキシグルコソンは11%がトラップされた。同じ条件下で、ジアミノグアニジンを結合していないポリアミドをネガティブコントロールとして用いた場合、上記カルボニル化合物に対するトラップ作用は観察されなかった。以上の結果から、カルボニル化合物トラップ剤を固定化した担体により、効果的に液体中のカルボニル化合物を除去できることが確認された。産業上の利用の可能性本発明によれば、血中のカルボニル化合物を効果的に取り除くことができる。本発明のカルボニルストレス状態改善剤は、血液透析用透析膜に固定化することにより、またはその他の担体に固定化して血液回路内に配置することにより簡単に実施することができる。これにより、腎不全患者等を苦しめていたカルボニル化合物による障害(カルボニルストレス)を改善することが可能となる。【図面の簡単な説明】図1は、3人の患者における、血漿ペントシジンレベル(pmol/mg protein)に及ぼす血液透析膜の種類の変更の効果を示す図である。結果は初期値(患者1(◇)、患者2(□)、患者3(△)で、それぞれ41.8、22.1、28.5pmol/mg protein)に対する%で表した。各値は各期間の最後に2週間の間隔をあけて採取された2サンプルの平均である(AN69で透析していた−2および0週目、PSに変更後の8および10週目、AN69に戻した後の14および16週目)。図2は、カルボニル化合物トラップ剤を固定化したビーズとのインキュベーションによる、透析患者血漿中のペントシジンレベルの抑制効果を示す図である。図3は、活性炭によるジカルボニル化合物溶液中のカルボニル化合物のトラップ作用を示す図である。図4は、活性炭による腹膜透析液中のジカルボニル化合物のトラップ作用を示す図である。図5は、透析患者血漿を37℃でインキュベートしたときの、活性炭によるペントシジンの生成抑制効果を示す図である。図6は、活性炭、あるいはスルホニルヒドラジン結合ポリスチレンビーズによる、腎不全患者血漿におけるカルボニル化合物の除去作用を示す図。図中、縦軸はカルボニル化合物の濃度を示す。図7は、アミノグアニジンによる、腎不全患者血漿におけるカルボニル化合物の除去作用を示す図。図中、縦軸はカルボニル化合物の濃度を示す。図8は、ジアミノグアニジン結合ポリアミドの作製方法を示す図である。図9は、ジアミノグアニジン結合ポリアミドによるジカルボニル化合物溶液中のカルボニル化合物の除去作用を示す図である。 血液回路内に固定化し、血中のカルボニル化合物を除去するための、スルホニルヒドラジン基を結合したポリスチレン樹脂を含むカルボニル化合物トラップ剤。 血液透析に用いるための、請求項1に記載のカルボニル化合物トラップ剤。 カルボニル化合物トラップ剤が、血液に不溶性の担体に固定化されたものである請求項1に記載のカルボニル化合物トラップ剤。 担体が透析膜である、請求項3に記載のカルボニル化合物トラップ剤。 透析膜がポリスルフォン膜である、請求項4に記載のカルボニル化合物トラップ剤。 スルホニルヒドラジン基を結合したポリスチレン樹脂を含むカルボニル化合物トラップ剤を有効成分とする、血液回路内に固定化するための生体のカルボニルストレス状態改善剤。 スルホニルヒドラジン基を結合したポリスチレン樹脂を含むカルボニル化合物トラップ剤を有効成分とする、血液回路内に固定化するための血液におけるカルボニルストレス状態改善剤。


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