タイトル: | 特許公報(B2)_カルバクロールおよびチモールを含む組成物の、トレポネーマによってもたらされる疾患の治療のための薬剤の製造のための使用 |
出願番号: | 2000617744 |
年次: | 2011 |
IPC分類: | A61K 31/05,A61P 17/00,A61P 31/04 |
ロサ,リカルド JP 4790129 特許公報(B2) 20110729 2000617744 20000417 カルバクロールおよびチモールを含む組成物の、トレポネーマによってもたらされる疾患の治療のための薬剤の製造のための使用 ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. 503220392 深見 久郎 100064746 森田 俊雄 100085132 仲村 義平 100083703 堀井 豊 100096781 野田 久登 100098316 酒井 將行 100109162 荒川 伸夫 100111246 ロサ,リカルド SE 9901733-7 19990512 20111012 A61K 31/05 20060101AFI20110921BHJP A61P 17/00 20060101ALI20110921BHJP A61P 31/04 20060101ALI20110921BHJP JPA61K31/05A61P17/00 171A61P31/04 171 A61K 31/05 CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) WPI 特開平11−255636(JP,A) 国際公開第96/037210(WO,A1) 特開平09−028312(JP,A) 国際公開第97/001348(WO,A1) M.TIZIANA BARATTA et al.,JOURNAL OF ESSENTIOAL OIL RESEARCH,1998年,Vol. 10, No. 6,p. 618-627 12 EP2000003513 20000417 WO2000069277 20001123 2002544213 20021224 8 20070416 三輪 繁 【0001】この発明は、天然物質カルバクロールおよびチモールを含む組成物に関する。この組成物は、ブタの赤痢などの深刻な粘液出血性の疾患、および有蹄動物、特に反芻動物などの偶蹄動物の蹄に影響する深刻な疾患の原因となるトレポネーマに対する相乗的な殺菌効果を示す。この組成物は食餌組成物、飲用水または水薬浴を介して動物に好適に投与される。【0002】トレポネーマによって引き起こされる疾患は家畜動物において一般的である。たとえば嫌気性スピロヘータのトレポネーマ・ヒオディセンテリエ(hyodysenteriae)は、ブタの赤痢(SD)の主要な病原体であると考えられている。たとえばD.L.ハリスおよびR.J.ライソンズ(1992)の、「ブタの疾患(Diseases of swine)」第7版、アイオワ州立大学出版(Iowa State University Press)、エームズ、アイオワ、USAの「ブタの赤痢」を参照されたい。SDは深刻な粘液出血性の下痢である。実際にSDにかかったブタは通常非常に少量の飼料しか摂取しないため、成育が本質的に低下し、かなりの経済的損失になる。トップ・アグラー(Top Agrar)(1998)、第4号、52頁には、ドイツにおける子ブタの群の3分の1および成育中のブタの群の2分の1もがトレポネーマ陽性の可能性があると報告されている。したがってこの疾患が広がるのを防ぐために多大な努力が必要となる。また、トレポネーマは有蹄動物、特に反芻動物などの偶蹄動物の蹄に影響する深刻な疾患を起こすことが周知である。【0003】M.タイジアナ・バラッタ(Tiziana Baratta)らの「月桂樹、セージ、ローズマリー、オレガノおよびコリアンダー精油の化学組成、抗菌および抗酸化活性(Chemical composition, antimicrobial and antioxidative activity of laurel, sage, rosemary, oregano and coriander essential oils)」(Journal of Essential Oil Research.、第10巻、第6号、1998、618−627頁、XP000929938 XX、XX ISSN:1041−2905)は、セージ、ローズマリー、オレガノ、月桂樹およびコリアンダーに由来する5つの精油の化学組成と、いくつかの微生物に対するこれらの精油の抗菌活性とを開示する。WO96/37210号の記載する医薬組成物においては、活性物質が特定の植物、特にマジョラム(Origanum vulgaris)、タイム(Thymus vulgaris)およびミント(Menta piprita)からの抽出物である。一般的に、抽出された油は3%のチモールと60−70%のカルバクロールとを含む。さらにWO97/01348号には、主成分としてチモールおよびカルバクロールを含むハーブ精油と、医薬的に受容可能な担体とを含む医薬組成物が開示される。前記精油中のチモールおよびカルバクロールの総量は前記精油の重量比で少なくとも55%、好ましくは70%であり、カルバクロールのチモールに対する比率は少なくとも10である。この医薬組成物は、家禽におけるコクシジウム症の予防および治療に用い得る。【0004】ストレプトマイシン、バシトラシン、ネオマイシン、チロシン、ゲンタマイシン、クロルテトラサイクリン、ヴァージニアマイシンおよびリンコマイシンなどの広範囲の抗生物質がSDの治療に効果的であると報告されている。この疾患は風土病であるため、動物の飼料にしばしば予防薬が添加される。しかし抗生物質はだんだん効果がなくなってきているようであり、トップ・アグラー(1998)、第5号、52頁は、1997年におけるトレポネーマの耐性率がチロシンに対して99%、リンコマイシンに対して92%、チアムリンに対して48%であると報告している。【0005】しかし近年になり、化学および抗生物質の成長促進剤の使用に関する激しい議論があり、多くの国ではこの種の飼料用添加物の禁止が検討されている。したがって農業には、信頼性ありかつ一般的に受入れられる実施と調和し、医薬的性質ではない物質の開発が緊急に必要とされている。【0006】この発明の1つの目的は、トレポネーマによって引き起こされる疾患の治療、予防または軽減のために、食餌、飲用水または水薬浴を介して動物に投与するために好適な、活性物質としての天然物質を提供することである。別の目的は、成育への負の影響を減少させることである。【0007】この発明に従うと、乾燥重量で5ppmから90%の天然物質カルバクロールと乾燥重量で5ppmから80%のチモールとを、1:5から10:1、好ましくは2:3から4:1の重量比で含む組成物はトレポネーマに対する相乗効果を示し、それによってこれらのバクテリアが動物の健康および成育に対して有する負の効果を減少させることが見出された。この状況において「天然物質」という表現は、天然に存在し自然産物から、または合成を通じて得られる化合物からなる物質のことと理解される。この組成物は通常カルバクロールおよびチモールを含む食餌組成物または飲用水として投与され、その量は栄養物質を含む食餌組成物の乾燥重量または飲用水の重量で計算して5−2000ppm、好ましくは20−600ppmである。またこの組成物は、有蹄動物、特に反芻動物などの偶蹄動物の蹄の治療のために、水薬浴中に重量比0.2−30%の量存在してもよい。この発明はまた、食餌組成物の調製に用い得るプレミックスおよび食餌添加物、ならびに飲用水補給物および水薬浴補給物を含む。【0008】この組成物および食餌組成物はまた、健康を増進し成育を改善する他の天然物質を含んでもよい。食餌組成物にこれらの物質は通常、乾燥重量で計算して0.1から30ppmの量存在する。このような物質およびその量の例は、1−5ppmのグアヤコール、1−5ppmのオイゲノール、0.1−2ppmのカプサシン、および1−20mgのタンニンである。食餌組成物におけるその他の好適な成分は天然物質の調味料である。それらは通常、食餌組成物の乾燥重量で計算して0.2−50ppmの量存在する。好適な調味料およびその量の例は、0.05−0.5ppmのクレオソール、0.1−5mgのアネトール、0.1−2ppmのデカラクトン、ウンデカラクトンおよび/またはドデカラクトン、0.1−2のキノレイン、0.1−2ppmのイオノンおよび/またはイロン、0.05−1ppmのジンジャロール、0.05−2ppmのピペリン、0.05−1ppmのプロピリデンフタリドおよび/またはブチリデンフタリド、ならびに0.1−5ppmのサリチル酸アミルおよび/またはサリチル酸ベンジルである。【0009】食餌組成物への活性成分の組入れは通常、活性化合物カルバクロールおよびチモールならびに他の好適な添加物のプレミックスを調製することによって行なわれる。このようなプレミックスは、乾燥重量で1−10%のカルバクロールおよびチモール、乾燥重量で0−40%の成育改善添加物、調味料および健康増進添加物、ならびに重量比50−99%の吸着支持体を含んでもよい。この支持体はたとえば、重量比40−50%の木部繊維、重量比8−10%のステアリン、重量比4−5%のウコン粉末、重量比4−5%のローズマリー粉末、重量比22−28%の石灰岩、重量比1−3%のアラビアゴムなどのゴム、重量比5−50%の糖および/または澱粉、ならびに重量比5−15%の水を含んでもよい。【0010】次いでこのプレミックスは、重量比0.2−5%のプレミックスを含む食餌組成添加物の調製において、ビタミン、酵素、ミネラル塩、粉砕した穀類、タンパク質含有成分、炭水化物含有成分、小麦シャープスおよび/またはフスマなどの一般的な飼料成分と混合されてもよい。この食餌組成添加物は最終的に、飼料が5−2000ppm、好ましくは20−600ppmの活性混合物を含むような量で食餌組成物に加えられる。通常食餌組成添加物は重量比0.3−3.5%の食餌組成物を構成する。【0011】この発明に従った食餌組成物は通常、飼料の乾燥重量で計算して、以下の成分を含む。【0012】a) 重量比0−80%、好ましくは10−70%の穀類、b) 重量比0−30%、好ましくは1−12%の脂肪、c) 重量比0−85%、好ましくは10−50%の、穀類以外の種類のタンパク質を含む栄養物質、d) 1−500ppm、好ましくは10−100ppmの混合物。【0013】a)−d)の総量は重量比で少なくとも80%であることが好ましい。食餌組成物を調製するとき、食餌組成添加物は、粉砕または破砕した小麦、オート麦、大麦、トウモロコシおよび米などの穀類と、たとえばナタネ、大豆およびヒマワリなどに基づく植物性タンパク質飼料と、血粉、肉骨粉および魚粉などの動物性タンパク質飼料と、糖蜜と、さまざまな粉乳および乳漿粉末などの乳製品とからなる乾燥成分と混合されてもよい。すべての乾燥添加物を混合した後、液体成分および加熱後に液状になる成分を加えてもよい。液体成分は、加熱により任意に液化するたとえば屠殺肉脂肪および植物性油脂などの脂肪などの脂質、ならびに/または脂肪酸などのカルボン酸からなっていてもよい。完全に混合した後、成分の粉砕の度合いに依存して粉または粒子の密度が得られる。貯蔵中の分離を避けるために動物飼料に水を加えることが好ましく、それは次いで従来のペレット化、膨張または押出しプロセスを受ける。乾燥によってあらゆる過剰な水を取除いてもよい。所望であれば、その結果得られる顆粒状の動物飼料を破砕してより小さい粒子にしてもよい。【0014】飲用水補給物は、乾燥重量で2−90%、好ましくは乾燥重量で10−50%のカルバクロールおよびチモールを含んでもよい。カルバクロールおよびチモールに加え、この補給物は乾燥重量で10−98%の多数の他の成分を含む。一般的な成分はミネラル塩と、ビタミンと、健康および成育を増進する天然物質と、調味料と、糖、粉乳、乳副生成物およびセルロース誘導体などの水溶性または水分散性担体と、水溶性または水分散性高分子などの分散剤および安定化剤とである。健康および成育を増進する天然物質の好適な例は前述した。飲用水を調製するとき、補給物は通常、天然物質の濃度が5−2000ppm、好ましくは20−600ppmになるような量で水に加えられる。【0015】水薬浴補給物は、乾燥重量で30−98%のカルバクロールおよびチモールと、重量比2−70%のミネラル塩と、水溶性または水分散性担体と、水溶性または水分散性高分子などの分散剤および/または安定化剤とを含んでもよい。【0016】この発明の範囲内で、食餌組成物の懸濁液を生成することも可能である。これは即時摂取のための飼料を調製するときに特に便利である。【0017】この発明について、以下の例によってさらに例示する。例1トレポネーマ・イノセンス(innocens)およびトレポネーマ・ヒオディセンテリエに対するこの発明の組成物の抗菌活性をin vitroで定めた。この試験においては以下の微生物、成育培地、培養条件および評価方法を用いた。【0018】微生物:トレポネーマ・イノセンス、ATCC29796トレポネーマ・ヒオディセンテリエ、ATCC31212成育培地:カゼイン−ペプトン・大豆粉−ペプトン・アガーUSP(カソ−アガー(Caso-Agar)、商品番号5458)+5%のヒツジ血液培養条件:37℃における4−6日間の嫌気的インキュベーション評価方法:アガー希釈試験(DIN58940、タイル6に従う)重量比10%のカルバクロールおよび/またはチモール溶液(ポリプロピレングリコール中)を加えた成育培地を用いて、アガープレートを調製した。【0019】各微生物の10.9cfu/mlの濃度の細胞懸濁液を調製した。次いで、マルチポイント接種器を用いて約0.5cm2の最終面に1μlを塗布することにより、単一の懸濁液をアガー表面上に配した。すべての濃度のカルバクロールおよび/またはチモールに対して2つの並行するプレートを接種し、各プレート上には2つの微生物の各々の3つの接種点が塗布された。接種期間後、微生物の成育を観察した。成育が観察されないときは、次の試験においてカルバクロールおよび/またはチモールの濃度を半分に減少させた。バクテリア成育の全体的な抑制を起こすカルバクロールおよび/またはチモールの最小濃度を、活性成分または化合物のMIC値(最小阻害濃度)として示す。以下の結果が得られた。【0020】【表1】【0021】この結果より、この発明の組成物は試験した微生物に対する相乗的な抗菌効果を示すことが明らかである。【0022】例2この発明の混合物がトレポネーマの発生を減少させる効力を定めるために、以下の組成の市販の食餌を与えた飼育ブタ(25kgから100kg)によるいくつかの試験を行なった。【0023】粗タンパク質、% 24.0粗脂肪、% 6.0粗繊維、% 3.5粗灰分、% 5.0リジン、% 1.35MJDE、kg 14.3この飼料は、好適な量の小麦、ルピナス種子、キャノーラ粉、米ぬか、肉粉、血粉および獣脂を混合することによって配合した。実験群に投与した食餌には、67ppmのカルバクロールと33ppmのチモールとを含む100ppmの混合物を加えた。【0024】成育相において、動物の糞便中のトレポネーマの存在を検査し、赤痢の発生を記録した。以下の結果が得られた。【0025】【表2】【0026】これらの結果は、飼料にこの発明の混合物を加えたときに負の対照に比べてトレポネーマの発生がかなり低くなることを明らかに示す。【0027】例3以下の実験の目的は、この発明に従った混合物が動物の成育を増加させ、かつトレポネーマの増殖を阻害する影響を調べることであった。2つの畜舎にいる40匹の雄ブタを各処理に割当てた。ブタは生後46日目に個別に体重を測り、実験の食餌を導入した。この実験は42日間続けた。試験におけるすべての食餌は以下の基本的組成物を含んだ。【0028】粗タンパク質、% 24.4粗脂肪、% 6.3粗繊維、% 3.5粗灰分、% 5.3リジン、% 1.35MJDE、kg 14.5この組成物は、好適な量の小麦、ルピナス種子、キャノーラ粉、米ぬか、肉粉、血粉および獣脂を混合することによって配合した。【0029】対照試験Aにおいては基本的組成物に100ppmのオラキンドックスおよび25ppmのチアムリンを加え、この発明に従った試験IおよびIIにおいては食餌は例2に開示した100ppmおよび200ppmのカルバクロールおよびチモールの混合物を含んだ。対照試験Bにおいては食餌は基本的組成物からなった。以下の結果が得られた。【0030】【表3】【0031】【表4】【0032】これらの結果から、この発明の混合物を加えることによって特に日齢46日から67日の期間における成育が増加することが明らかに見られる。【0033】各々5匹のブタを有する4つの群に対照試験AおよびBならびに試験IおよびIIにおいて用いた食餌を与えることにより、この発明の活性混合物を含む食餌の影響および糞便中のトレポネーマの存在を調べた。ブタにその食餌を4日、8日および16日間与えた後に各ブタの糞便中のトレポネーマの存在を調べた。以下の結果が得られた。【0034】【表5】【0035】この結果から、この発明に従った食餌を与えられたブタは8日後にはその糞便中にトレポネーマを有さなかったのに対し、対照AおよびBの食餌を与えられたブタは16日間の処理を必要としたことが明らかである。 乾燥重量で5ppmから90%のカルバクロールと、乾燥重量で5ppmから80%のチモールとを含み、カルバクロールおよびチモールの重量比は1:2から2:1である組成物の、トレポネーマによってもたらされる疾患の治療のための薬剤の製造に対する活性物質としての使用。 前記重量比は2:3から2:1である、請求項1に記載の使用。 ブタの赤痢の治療または有蹄動物の蹄の治療のための、請求項1または2に記載の使用。 乾燥重量で5ppmから90%のカルバクロールと、乾燥重量で5ppmから80%のチモールとを含み、カルバクロールおよびチモールの重量比は1:2から2:1である組成物を、非ヒト動物に投与することを含む、トレポネーマによってもたらされる非ヒト動物の疾患の治療方法。 前記重量比は2:3から2:1である、請求項4に記載の方法。 ブタの赤痢の治療または有蹄動物の蹄の治療のための、請求項4または5に記載の方法。 乾燥重量で5ppmから90%のカルバクロールと、乾燥重量で5ppmから80%のチモールとを含み、カルバクロールおよびチモールの重量比は1:2から2:1である、トレポネーマによってもたらされる疾患の治療剤。 前記重量比は2:3から2:1である、請求項7に記載の治療剤。 ブタの赤痢の治療または有蹄動物の蹄の治療のための、請求項7または8に記載の治療剤。 乾燥重量で5ppmから90%のカルバクロールと、乾燥重量で5ppmから80%のチモールとを含み、カルバクロールおよびチモールの重量比は1:2から2:1である、抗トレポネーマ剤。 前記重量比は2:3から2:1である、請求項10に記載の抗トレポネーマ剤。 ブタの赤痢の治療または有蹄動物の蹄の治療のための、請求項10または11に記載の抗トレポネーマ剤。