タイトル: | 特許公報(B2)_酵素ジサッカリダーゼの評価法及び評価用キット |
出願番号: | 2000615787 |
年次: | 2008 |
IPC分類: | C12Q 1/34,C12Q 1/54 |
ペンッティ・シッポネン オスモ・スオヴァニエミ ヤニ・タンミネン JP 4108274 特許公報(B2) 20080411 2000615787 20000428 酵素ジサッカリダーゼの評価法及び評価用キット ビオヒット・ユルキネン・オサケユキテュア 501391733 BIOHIT OYJ 青山 葆 100062144 岩崎 光隆 100067035 中嶋 正二 100064610 ペンッティ・シッポネン オスモ・スオヴァニエミ ヤニ・タンミネン FI 990990 19990430 20080625 C12Q 1/34 20060101AFI20080605BHJP C12Q 1/54 20060101ALI20080605BHJP JPC12Q1/34C12Q1/54 C12Q1/00-70 G01N21/00-33/98 C12N1/00-13/00 PUBMED MEDLINE BIOSIS/WPI Clinica Chimica Acta(1989)Vol.183,p.317−321 11 FI2000000375 20000428 WO2000066765 20001109 2003530069 20031014 6 20040415 2005017058 20050905 種村 慈樹 鈴木 恵理子 高堀 栄二 【0001】(技術分野)本発明は、ジサッカライド不耐症、特にはラクトース不耐症を患っている疑いのある患者の、通常は胃内視鏡の手順による、十二指腸からの生検試料中におけるジサッカリダーゼの評価法に関する。本発明はまた、当該不耐症の診断に使用するキットに関する。本発明の方法は、迅速な「ベッドサイドの」診断法として容易に実施可能である。【0002】(背景技術)ジサッカライド不耐症は、ジサッカライド、通常は乳中の糖質(milk sugar)、すなわちラクトースを消化する、生体の制限的な能力として定義されるが、例えばマルトース不耐症もまた知られている。該不耐症は、相応するジサッカライド消化酵素、すなわちラクトース不耐症の場合にはラクターゼ(β−ガラクトシダーゼ)の活性あるいは濃度の低下によるものであり、当該酵素は、小腸、あるいは十二指腸の粘膜で産生される。該酵素は、ジサッカライドをその後血流に吸収され得るより単純な糖に分解する。【0003】通常、ラクトースが消化系に達すると、ラクターゼはラクトースをD−グルコース及びD−ガラクトースに加水分解する。肝臓がその後、ガラクトースをグルコースに変換し、そのグルコースは血流に流れ込み、人の血中グルコース値が上昇する。もしラクトースが完全には分解されなければ、血中グルコース値が上がらず、ラクトース不耐症と診断が下される。不耐症により起こる症状は、通常は危険ではないけれども、かなり苦痛なこともあり得る。ラクターゼの欠損している全ての人に症状があるわけではない一方で、症状のある人は、ラクトース不耐症であると考えられる。一般的には、Buller, H.A. 及びGrand, R.J. 「Lactose Intolerance」、Ann. Rev. Med.、41巻、141−148頁(1990)参照。【0004】一般的な症状としては、嘔吐、痙攣、鼓腸、ガス、及び下痢が含まれ、ラクトースを含有する食物を飲食後、約30分から2時間でおこる。その症状は、小腸で液体と結びつき、大腸への通過速度を促進する未吸収のラクトースによるものであり、大腸ではバクテリアが炭化水素を消化して短鎖脂肪酸、乳酸塩、二酸化炭素、及び水素とする。不耐症状の重症度は、個人が許容できるラクトースの量によって様々である。【0005】ラクトース不耐症のいくつかの要因は既知である。例えば、消化性疾患及び小腸の損傷は、産生される酵素量を減少させ得る。稀な要因としては、子供がラクターゼ産生能を持たないで生まれてくる。けれども殆どの人については、ラクターゼ欠損は自然発生的に時間をかけて進展する症状である。だいたい2歳を過ぎると、体がだんだんラクターゼを産生しなくなってくる。しかしながら、多くの人は、歳をとるまで症状を自覚しない。【0006】アメリカ人の3,000万から5,000万人がラクトース不耐症である。特定の民族及び人種の人口集団は、他よりも広範にわたって高頻度である。アフリカ系アメリカ人及びネイティブ・アメリカ人の75%ぐらい、そしてアジア系アメリカ人の90%ぐらいはラクトース不耐症である。南ヨーロッパ及び中東においては約60%、中でもアラブ人は90%近くである。不耐症状は、北ヨーロッパ系の人々の間では最も発症率が低くて、例えばフィンランドでは人口の11%がラクトース不耐症であるが、しかし北スカンジナビアではラップ人の60%はラクトース不耐症である。【0007】ラクトース不耐症は、従来法ではラクトース耐性試験、水素呼気試験、便の酸性度試験、あるいはガラクトース評価法を用いて診断される。ラクトース耐性試験は、ラクトース不耐症を診断するのに用いられる最も一般的な試験である。絶食後、グルコース評価用に患者から血液試料が採取され、その後当該患者にラクトース飲料が与えられる。新たな血液試料が20、40、60分後に採取される。ラクトース飲料摂取後、1から2時間で明らかな腹痛の症状がでれば、そして血中グルコース値の増加が初期値から1.1mmol/lを未満に留まっているならば、その試験は、低ラクターゼ症を示す。【0008】水素呼気試験は、呼気中の水素量を測定する。本来なら、呼気中において水素は検出されない。しかしながら、未消化のラクトースが、細菌により結腸中で発酵し、その結果水素を含む大量のガスを発生する。発生した水素は、小腸から吸収され、血流により肺まで運ばれ、そして吐き出される。患者にラクトース含有飲料を摂取させ、その後呼気を規則正しい間隔で分析する。呼気中の増加水素濃度は、ラクトースの消化不良を意味する。当該試験は特定の食物、薬、及び禁煙により影響され得る。【0009】便の酸性度試験は、結腸中の細菌により未消化のラクトースが発酵して産生する乳酸及び他の短鎖脂肪酸を測定するもので、これらの酸は、便試料中で評価可能である。単純な試験では、ラクトース投与後の尿中においてガラクトースが評価可能であり、当該試験はガラクトースの半定量的な評価方法を必要とする。【0010】ジサッカライドの評価法は、従来から既知であるが、生検試料に係るジサッカリダーゼ含有量の分析は、いくつかのステップが必要とされる。まず最初に、試料は、ホモジナイズされなければならず、その後、基質(ラクトース、マルトースなど)と一緒にインキュベートされ、それから所望のモノサッカライドが化学的に分析される。既存の方法は、複雑で時間がかかる。それゆえ、ジサッカライド不耐症、特にはラクトース不耐症を診断する単純で迅速で明確な方法が要求されている。【0011】公報EP72 450は、嚢胞性線維症(CF)の乳児の診断に関連して、乳児に対するラクターゼ活性試験を開示しており、報告によるとそのようなCF児は、胎便中でジサッカリダーゼ活性が上昇した。したがって胎便試料の薄膜が、ラクトース、グルコースオキシダーゼ、過酸化活性剤、及び色原体を含有する試験装置上に展開され、もし試料がラクターゼ活性を有していれば、容易に目に見える青色がその胎便試料の下の方から直接展開されてくる。【0012】(発明の概要)本発明は、ジサッカライド不耐症の疑いのある人の十二指腸から採取された生検試料中におけるジサッカリダーゼ酵素の迅速で簡単な評価法を提供し、その方法は、生検試料をそのまま当該ジサッカライドを含有する基質培地と接触させ;そして基質培地中における所望のモノサッカライドの存在を当該モノサッカライドのアッセイシステムを用いて評価する、ステップを含む。【0013】上述の方法を実施するのに使用するキットを提供することが、本発明の更なる目的であり、そのキットは、ジサッカライド不耐症の疑いのある人の十二指腸から採取された生検試料と接触させるための当該ジサッカライドを含有する基質培地;及びその基質培地を当該生検試料に暴露した後、基質培地中における所望のモノサッカライドの存在を評価する手段、を含む。【0014】本発明の更なる適用分野は、以降の本明細書中に示される詳細な説明から明らかであろう。【0015】(本発明の詳細な説明)本発明に従って、ジサッカライド不耐症は、相応するジサッカライド消化酵素である、ジサッカリダーゼの欠損、あるいは活性の低下をその相応する酵素が本来なら産生される人の十二指腸から採取された生検試料中において検出することにより、個別に診断される。【0016】特にジサッカライドとしてラクトース、そしてそれに相応するジサッカライド消化酵素としてラクターゼを参照するけれども、他のジサッカライド不耐症の診断法にもまた同様に本記述が適用されることは明らかである。同様の疾患は、マルターゼ酵素の欠損が診断の目的となるマルト−ス不耐症、あるいは診断される酵素がサッカリダーゼとなるサッカロース不耐症を含む。【0017】簡単に言えばその方法は、ジサッカライド不耐症を患っている疑いのある人の十二指腸から採取された生検試料中において、ジサッカリダーゼの存在を検出することを含み、該方法は、生検試料を、ホモジネートしていない、そして細分していないような無処置の形態であるインタクトな形態で、当該ジサッカライドを含有する基質培地と接触させる第1のステップを含む。試料中に存在するジサッカリダーゼは基質中の該ジサッカライドをモノサッカライドに消化する。続くステップでは、該基質培地中で形成された所望のモノサッカライドの存在が、当該モノサッカライドのアッセイシステムを用いて評価される。【0018】診断の対象がラクトース不耐症であり、該方法がそれゆえ生検試料中におけるラクターゼ酵素活性の有無を検出することであるときは、基質培地において使用されるべきジサッカライドは、ラクトースである。ラクトースは、生検試料中に存在するラクターゼにより消化されてグルコースとガラクトースになり、これらは既知の方法で該基質培地中において検出され得る。一方、マルトースは、マルターゼ酵素により消化されて2つのグルコース分子となり、サッカロースは、サッカリダーゼにより消化されてグルコースとフルクトースになる。【0019】該方法は、単純な方法、例えば同じ溶液中にその酵素に対する基質、すなわち、もしラクターゼ酵素欠乏が診断されるのであればラクトースと、グルコースオキシダーゼ(あるいはガラクトースオキシダーゼ)酵素、ペルオキシダーゼ酵素、及び色原体物質を含有する基質培地を用いることにより実施され得る。試薬の1つあるいは複数が、試験が実施される瞬間まで、他の試薬とは分けておくこともまた可能である。別法としては、別にした溶液中に色原体物質、及び/あるいはグルコース又はガラクトース酵素を保持しておくこと、あるいは例えば適切な培地、例えば試験時に残りの試薬と接触させる予定のゲルマトリックス又は紙に吸収させておくことがある。試験の実施に係る他の変更もまた可能であり、当業者により容易に理解される。【0020】基質培地に導入された生検試料中のジサッカリダーゼ酵素は、該基質培地中でジサッカライドを消化して、ジサッカライドの種類によってグルコース、ガラクトース、及び/あるいはフルクトースにする。同じ培地中のグルコース(又はガラクトース)オキシダーゼは、好ましくはおよそpH5〜7まで緩衝されて、その後グルコース又はガラクトースを酸化して酸化物とし、過酸化水素(H2O2)を遊離する。ペルオキシダーゼ酵素は、その過酸化水素が無色の色原体物質を有色の形態に、あるいはさもなければ検出可能な形態に酸化する反応を触媒する。【0021】基質においておこる色反応は、迅速であり、室温で数分後にはすでに検出可能となる。生検試料は、内視鏡の手順により十二指腸から採取される、例えば1mmx1mmx1mmオーダーの小さいサイズでも可能である。採取された試料はそのまま使用され、試験前にホモジナイズする、あるいはさもなければ試料を細分する必要もない。色の変化は、裸眼でも評価可能であるし、あるいは適切な装置で、例えば、光度測定により、蛍光測定により、あるいは反射率測定により読み取ることも可能である。該方法により生検試料中のジサッカリダーゼ値を評価すること、すなわち半定量的な分析をすることもまた可能となり、それゆえ不耐症状の重症度を評価することが可能となる。該方法は、「ベッドサイドの試験」として実施が容易で迅速であり、そして複雑な研究設備も全く必要としない。【0022】基質培地中の種々の試薬の濃度は重要ではなくて、最適な試験条件を提供するよう調節され得る。反応は室温で適切な容器中において実施可能であるし、あるいは使い捨てですぐに使える包装中に試験を実施するのに必要とされる試薬の全てが含有されている適切なキットの形態において提供可能である。【0023】上記本発明を、多様な方法に変化されてもよいことは、明らかである。そのような多様な変化は、本発明の精神と範囲からの逸脱とみなすべきではないし、当業者に明らかであるような変更の全ては、以下の請求項の範囲内に含まれることが意図されている。 ジサッカライド不耐症試験のための、ジサッカライドをモノサッカライドに消化可能な酵素であるジサッカリダーゼの評価法であって、 被検者の十二指腸から採取した、ホモジナイズしない、そのままの生検試料を、ジサッカライドを含有する基質培地と接触させ、次いで 当該基質培地中で上記ジサッカライドから形成されるモノサッカライドを検出することによりジサッカリダーゼを評価することを特徴とする方法。 ジサッカリダーゼがラクターゼ、マルターゼまたはスクラーゼである、請求項1に記載の方法。 ジサッカライドがラクトースである、請求項1に記載の方法。 モノサッカライドがグルコースである、請求項3に記載の方法。 基質培地がジサッカライド、グルコースおよび/またはガラクトースオキシダーゼ、酵素ペルオキシダーゼおよび色原体物質を含有する、請求項1に記載の方法。 グルコースの検出が試薬ストリップ法で行われる、請求項4に記載の方法。 モノサッカライドの検出が光度分析、蛍光分析または反射率分析で行われる、請求項1に記載の方法。 請求項1に記載の方法を実施するのに使用するキットであって、(a)生検試料と接触させるためのジサッカライドを含有する基質培地および(b)生検試料を基質培地に接触させた後、当該基質培地中におけるモノサッカライドを検出する手段を含むキット。 基質培地がグルコースまたはガラクトースオキシダーゼとペルオキシダーゼ酵素を含有する、請求項8に記載のキット。 基質培地中におけるグルコースの存在を検出する手段が色原体物質を含む、請求項9に記載のキット。 色原体物質が基質の他の成分とは分離されている、請求項10に記載のキット。