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タイトル:特許公報(B2)_免疫グロブリンEのその高親和性レセプターへの結合を抑制する抗体に対する、抗イディオタイプの抗体
出願番号:2000612338
年次:2008
IPC分類:C07K 16/42,A61K 39/00,A61K 39/39,A61K 39/395,A61P 11/02,A61P 11/06,A61P 17/02,A61P 37/08,C12N 15/09,C12P 21/08


特許情報キャッシュ

フランツ・クリツェック ベダ・シュタットラー モニク・フォーゲル JP 4109829 特許公報(B2) 20080411 2000612338 20000412 免疫グロブリンEのその高親和性レセプターへの結合を抑制する抗体に対する、抗イディオタイプの抗体 ノバルティス アクチエンゲゼルシャフト 597011463 青山 葆 100062144 岩崎 光隆 100067035 中嶋 正二 100064610 小島 一晃 100072730 フランツ・クリツェック ベダ・シュタットラー モニク・フォーゲル GB 9908533.4 19990414 20080702 C07K 16/42 20060101AFI20080612BHJP A61K 39/00 20060101ALI20080612BHJP A61K 39/39 20060101ALI20080612BHJP A61K 39/395 20060101ALI20080612BHJP A61P 11/02 20060101ALI20080612BHJP A61P 11/06 20060101ALI20080612BHJP A61P 17/02 20060101ALI20080612BHJP A61P 37/08 20060101ALI20080612BHJP C12N 15/09 20060101ALN20080612BHJP C12P 21/08 20060101ALN20080612BHJP JPC07K16/42A61K39/00 HA61K39/39A61K39/395 DA61K39/395 NA61P11/02A61P11/06A61P17/02A61P37/08C12N15/00 AC12P21/08 C07K16/28-42 A61K39/395 BIOSIS(DIALOG) XVITH INT.CONG.ALLERGOL.CLIN.IMMUNOL.,(1997),p.339−342 7 EP2000003288 20000412 WO2000063252 20001026 2002544125 20021224 40 20011012 2004022454 20041101 平田 和男 鵜飼 健 小暮 道明 【0001】本発明は抗イディオタイプの抗体に関する。アレルゲンと結合した、細胞に結合した免疫グロブリンE(IgE)によって誘発され、ヒスタミンおよび他の媒介物質の放出およびアレルギー性および炎症反応の制御にかかわるサイトカインのデノボ合成をもたらす、マスト細胞および好塩基性球の始動を通常誘発する相互作用の抑制を対象とする。本発明はIgEのCε3領域の、IgEに対する高親和性レセプターへの結合を妨げる抗イディオタイプの抗体または抗体フラグメントにも関する。【0002】高親和性レセプター(FCεRI)と相互に作用するIgE上の特異的結合部位の認識は、この相互作用を結合エピトープの認識によって妨げる、抗体の産生の基礎を提供する。ワクチン接種による該抗体の誘導は、新規で一般的に適用可能なアレルギー治療をもたらす。本発明は、とりわけ、IgE-介在アレルギー性反応の誘導から保護する抗-IgE 抗体の産生用として、ワクチンに製剤される組換え抗体フラグメントの、同定および製造を記載する。【0003】アレルギー性症状は、細胞からその周辺の組織および脈管構造中への、血管作用性アミン(媒介物質)(特にヒスタミン)の放出によって誘発される。ヒスタミンは、通常、マスト細胞および好塩基性顆粒球として知られる特別の細胞中に蓄えられている。好塩基性球は脈管のシステム内を循環するけれども、このマスト細胞は動物の組織中の至るところに分散している。特別の一連の事象が起こりその放出を始動する場合を除いて、これらの細胞はヒスタミンを合成しそして細胞内に貯蔵する。【0004】アレルギー性反応を媒介するIgE 抗体の役割はよく知られている。IgE はポリペプチド鎖の複合的なアレンジメントであり、他の免疫グロブリンのように、ジスルフィド結合によって結合し"Y"型構造を形成した、2つの軽鎖および2つの重鎖からなる。各軽鎖は2つのドメインを有し、1つの可変(VL)ドメインは定常ドメイン(CL)といわれる比較的不変なアミノ酸配列を有するドメインと結合している。一方、重鎖は1つの可変ドメイン(VH)を有し、そしてIgEの場合、4つの定常ドメイン(CH1, CH2, CH3, CH4、またはCε1, Cε2, Cε3, Cε4としても知られる).を有する。抗体の2つの"アーム"は抗原結合を担い、ポリペプチド構造が変化する領域を有し、そしてジスルフィド結合によって結合する2つのFab'アームを表わすFab' フラグメントまたは(ab')2といわれる。抗体の"テール"または中心軸は固定されたまたは一定のペプチド配列を含有し、Fcフラグメントといわれている。Fcフラグメントは、抗体を、それらのFcレセプターへの結合によって他の免疫システム分子または細胞とコミュニケートすることができる相互作用部位を含有する。FCレセプターは、免疫グロブリンFC領域内の活性分子部位と特異的に結合する分子である。Fcレセプターは細胞の外部原形質膜内の完全膜タンパク質として存在することができ、または血漿または他の体液中で自由に循環する遊離の"溶性"分子として存在することができる。ヒトの系では、IgEのFcεRIへの高親和性結合は、IgEの第3の重鎖定常領域ドメイン(Cε3)およびFcεRIαサブユニットの膜に隣接した免疫グロブリン様ドメイン(α2)の様々な部分に関与する、複合的タンパク質-タンパク質相互作用によって達成されている。FcεのCε3ドメイン内の残基およびFcεRIαのα2ドメインに属する領域が結合に重要であるとして同定されているが、結合プロセスの詳細なメカニズムはまだ特徴付けられていない。実験的証拠は、ヒトIgEは、IgEのFcεRIに対する高親和性(Kdはほぼ10-10 M)に寄与すると推測される湾曲した構造を有することを示している。その上、この湾曲した構造は、IgE分子はレセプター結合に対する2つのCε3ドメイン上に同一のエピトープを提供するが、IgEおよび細胞に結合したまたは溶性FcεRIαの等モルの複合を担うとも想定される。この単結合性は、アレルゲンの欠如におけるレセプター始動を避けるとすれば、機能的に必要である。【0005】その機能に依存して、相互作用部位は、露出され、それ故に細胞のレセプターと結合することができる。あるいは、抗体が抗原と結合するまで該部位は隠されており、その後構造的に変化して、次いで他の活性部位に曝露し、特異的免疫活性を始動することができる。レセプター結合の後にCε3に影響する立体的構造変化が、細胞表面上のFcε/FcεRI複合体の1:1 化学量論に対する説明として提唱されている。【0006】生物体内でのマスト細胞および好塩基性球からの媒介物質のアレルギー性(免疫性)放出は下記の状況でのみ起こり得る:IgE分子が、細胞Fcレセプター部位に対して、そのFc部分で固着するかまたはそれ自身を付着させなければならなず、IgE 分子をマスト細胞または好塩基性球に固定しなければならない;そして細胞に結合したIgE分子のFab'の部分は、特に適合する抗原(アレルゲン)によって架橋結合していなければならない。このような相互作用が起これば、マスト細胞または好塩基性球は自動的に始動し、局所環境に対してヒスタミンを放出し、よく知られたアレルギー性症状(図1)を示す。他の生化学的な事象は遅延相反応によって起こり、デノボ合成ならびにサイトカインおよび他の媒介物質の放出をもたらす。【0007】アレルギー処置の従来方法は、抗-ヒスタミン剤を用いる全身的治療または患者を脱感作する試みを含み、基本的なIgE-マスト細胞/好塩基性球相互作用に対するものではなかった。他のアプローチは、IgE抗体の細胞表面上のFcレセプターに対する結合をブロックすることができ、そしてIgEが既に結合している結合部位からIgEを置換するポリペプチド鎖の産生にかかる。そしてヒスタミン放出に向けてマスト細胞/好塩基性球を始動する免疫性シグナルを提供すると推測されるIgE Fc領域内の推定上の"エフェクター"部位の性質を研究してきた。【0008】組換えIgEフラグメントを免疫原として防御用抗-IgEワクチンの産生に用いることが試験され、そして有効であることが示された。このようなワクチンに対する主な異論は、大きなIgEフラグメントを免疫化に使用することは、阻害抗体の産出の開始のみでなく、架橋形成も生じ、そのため患者にアナフィラキシー誘発性の抗体の産生が惹起されるという可能性によるものである。【0009】これらの問題を克服するストラテジーは、可能な最も小さいIgE フラグメントの同定を目的とするものであり、理想的にはレセプター結合部位のみからなるものであって、結合後にIgE/IgERI複合体内に埋もれて、そしてワクチンで生じた免疫応答による架橋化をできなくするものである。試みは今もされているが、このストラテジーはIgE/IgERI相互作用に関する様々なCε3 領域の空間距離からみると、成功する可能性は低い。【0010】本質的に"古典的"ワクチンアプローチにつながるこの問題は、能動的免疫法のための短いミモトープ(mimotope)ペプチドを、適切な担体に結合した化学的合成ペプチドとして、または例えば卵白アルブミンまたはIgG上の組換え融合構成物として使用することにより克服することができる。このようなペプチド類は、モノクローナル抗体 BSW17によって認識されるエピトープの構造的模擬物であり、該抗体はFcε上の立体的エピトープを、一部はCε3内にあり、さらに一部はCε4内にあるエピトープで認識する。BSW17を産生するハイブリドーマ株は、微生物の委託に関するブタペスト条約の規定に基づいて、委託番号96121916で、1996年12月19日にECACCへ寄託された。この抗体は、図2に略記するように生物学的活性の興味ある特徴を示す。それ自体は非アナフィラキシー誘発性であり、そしてヒトのマスト細胞および好塩基性球を、始動剤によって誘発されるIgE-依存性ヒスタミン放出から保護する。脈管系内を循環するBSW17またはBSW17様抗体は、アレルギー性反応から、a)IgE/IgERI相互作用の競合的抑制による、マスト細胞および好塩基性球の始動の抑制、およびb)B細胞段階のIgE合成の下方制御による、血清のIgEレベルの低減によって保護する。抗-IgE 抗体エピトープの構造的模倣物として、化学的に合成したBSW17ミモトープペプチドは、免疫反応を誘発し、宿主中にBSW17-様抗体の産出をもたらす。BSW17は非アナフィラキシー誘発性でありIgE/IgERI結合およびB細胞上のIgE合成に対して抑制性であることを示すので、BSW17 ミモトープペプチドに基づいたワクチンに対するこれらの抗体は、同様の保護的特性を有する。このようなBSW17ミモトープペプチドに基づいたワクチンに起こり得る不利点は、該ペプチドの免疫原性を増大させるためにこの化学合成されたペプチドを担体タンパク質へ結合させることが必要となることから生じ得る。さらには、短いペプチドの構造上の柔軟性が多くの異なる立体配座をとることを可能にすることである。従って、ポリクローナル 抗-ミモトープ免疫応答の一部分のみ、ヒトIgEとの交差反応によって、治療的に活性となるであろう。【0011】本発明は、ミモトープペプチドアプローチに本質的な、起こり得る不利益を排除する。これは、高親和性レセプターに対するIgE-結合を妨げる抗体に対して抗イディオタイプ性である抗体または抗体フラグメントに基づいており、とりわけBSW17に対する組換え抗イディオタイプの抗体に基づいている。Jerneのネットワーク理論(Jerne N., Ann. 免疫l. 125C [1974] 373)によれば、抗体(Ab1)の高頻度可変領域は、それ自身が抗原として作用する。この方法で産生された抗体は、第1抗体のイディオタイプ領域に結合するため(図3)抗-イディオタイプ(抗-id)抗体(Ab2)として知られている。このような抗-id 抗体は、第1抗体(Abl)の結合部位(パラトープ)を対象にし、このようにして本来の抗原の"内部イメージ"を表わす。その結果、抗-id 抗体(Ab2)は、内部イメージ抗体またはAb2βとも呼ばれ、高頻度可変領域を介して抗体形成を誘発することもできる。これらの抗-抗-id 抗体(Ab3)はAb1のパラトープに構造上類似しており、そしてそのためAb1抗体と同様の生物学的特性を有する。hIgE/BSW17系においては、IgEは本来の抗原であり、BSW17は抗体Ab1を示す。それゆえに、抗-BSW17イディオタイプ抗体 Ab2のパラトープは、BSW17によって認識されるhIgE領域(エピトープ)と構造上の類似を示している。構造的に、Ab2パラトープは上記の化学合成したBSW17ミモトープペプチドと同等である。このような(組換え)抗-BSW17イディオタイプ抗体がワクチンとして使用されたときは、BSW17-様免疫応答(Ab3)がワクチン注射をされた患者で誘導されるであろう。BSW17と同様に、(ポリクローナル)Ab3免疫グロブリンは、IgEとその高親和性レセプターとの結合を妨げ、そのため抗-アレルギー剤として作用する。フレキシブルな合成ミモトープペプチドとは対照的に、Ab2パラトープは構造的に固定された立体配座で環境で呈示される。そのため、固定されたhIgEエピトープに対する免疫応答はより特異的となる。その上、如何なる異種免疫原性担体タンパク質も必要としなくなる。そのため、破傷風トキソイドまたはジフテリアトキソイドなどのタンパク質担体によって引き起こされる起こり得る副作用も避けることができる。【0012】 本発明は、E25(olizumab)またはCGP56901、または好ましくはIgEのCε3領域のIgEについて高親和性レセプターへの結合を妨げるBSW17など、抗体に対して抗イディオタイプである抗体または抗体フラグメントを含む;これを以下"本発明のミモ体(mimobodies)"と略称する。これらがBSW17に対して抗イディオタイプである場合は、以下"BSW17-ミモ体"と略称する。【0013】従って、本発明のミモ体は、エピトープに特異的に結合する抗-イディオタイプの抗体または抗体フラグメントであり、換言すればIgEについて高親和性レセプター(FcεRI)に結合する、IgE分子のCε3領域上の部位を認識する、抗-IgE 抗体のパラトープである。【0014】本発明のミモ体は、ヒトでの使用が予期される範囲では、基本的にはヒト由来である。好ましくは組換え体である。好ましくはモノクローナルである。好ましくは抗体フラグメントであって、例えば下記からなるかまたは下記を含む。- 重鎖および軽鎖の両方(例えばFabフラグメント類)あるいは単に重鎖または軽鎖(例えば軽鎖二量体類)の何れか、好ましくは例えば図4(配列番号:35、36、37および38)に定義のようにそれらの定常領域成分伸展と一緒になって、それによって"定常領域"は、アロタイプの変異体でみられるように、例えば1から5位で、通常たった1つの、定常部分のアミノ酸位置でのマイナーな立体構造の修飾を含むものとして理解され;- またはそれらの部分、とりわけ少なくともそれらの特異性決定部分(例えば図5aから5d(配列番号 2、4、6、8)に定義);- またはそれらの下位区分、とりわけ少なくともそれらの高頻度可変下位区分、少なくとも1つのCDRを含むアミノ酸の伸展を構成するペプチドなど、例えば図5a、5b、5cまたは5d(配列番号:2、4、6、8)の少なくとも1つのCDR、または好ましくは2つ、またはさらに好ましくは3つのCDRを含み、所望により例えばCDRの1端または両端で約10アミノ酸まで、フレームワーク配列と一緒になっている。【0015】本発明のミモ体は、天然由来の抗-id 抗-IgE 抗体から誘導した、単離されたそして実質的に純粋な抗体または抗体フラグメントを表わす。 とりわけそれらは実質的に他の抗体を含まない。"実質的に純粋"とは、少なくとも重量で約60%、好ましくは重量で約90%、さらに好ましくは重量で約99%またはそれ以上の純度であると理解される。【0016】本発明は、本発明のミモ体を、単一の分子体としてまたは免疫原性担体分子に化学的に結合したタンパク複合体として含み、そして適切であれば、アジュバントおよびさらに通常の賦形剤を一緒に含む、医薬組成物、特にワクチンにも関する。【0017】さらに、本発明のミモ体を医薬として、とりわけワクチンとして、とりわけIgE-介在疾患の処置で使用することに関する。【0018】さらに、IgE のCε3領域の、IgEについての高親和性レセプターへの結合を妨げる抗体(BSW17など)の、ファージディスプレイ技術などの従来方法を使用する本発明のミモ体の同定のための使用に関する。【0019】さらに、治療的有効量の本発明のミモ体をこのような処置またはワクチン接種を必要とする患者に投与することを含む、IgE-介在疾患の処置方法、とりわけワクチン接種に関する。【0020】さらに、IgE-介在疾患に対する薬物、とりわけワクチンの調製における、本発明のミモ体の使用に関する。【0021】さらに、本発明は、受動免疫による、本発明のミモ体に対するポリクローナルまたはモノクローナル抗体の産生のための;受動免疫法のための本発明のミモ体に対するポリクローナルまたはモノクローナル抗体を、本発明のミモ体を適当な非ヒト動物に投与し、それに対して形成された抗体を単離し、精製するかまたは通常のハイブリドーマ技術によって製造するための、本発明に記載のミモ体の使用;そして本発明のミモ体から得られたポリクローナルまたはモノクローナル抗体の、受動免疫法によるIgE-介在疾患の処置における使用、に関する。【0022】さらに、下記を含む、本発明のミモ体の同定方法に関する。- 天然由来の抗イディオタイプ抗-IgE抗体を同定すること;- それらのフラグメントを単離すること;および- 適切な抗-IgEモノクローナル抗体、例えばIgE のCε3領域の、IgE高親和性レセプターへの結合を阻害するBSW17などへ結合させることにより、組換えフラグメントを選択すること。【0023】一旦同定され、特徴付けられたら、本発明のミモ体を、従来方法、例えば組換えDNA技術または化学合成によって、産生することができる。【0024】上記のミモトープペプチド(すなわち選択されたIgE上のエピトープ)と同じ特異性を示す、抗イディオタイプの抗体の同定のために、ヒト抗体レパートリーのFab部分を発現するバクテリオファージディスプレイライブラリーを使用することができる。このライブラリーは、例えばヒト被検者の扁桃腺から得られたB細胞のプールとバイオパニングの標的として使用される固定化BSW17抗体とから構成される。ヒトFab-発現ファージ粒子を単離し、BSW17を特異的に認識するよう豊富化した。従ってこれらの組換えFabフラグメントは本発明のミモ体であり、そしてBSW17の高頻度可変領域に対して抗-イディオタイプを示す。ワクチンとして使用した場合、それらはアレルギー患者においてBSW17-様抗体の産生をもたらす免疫応答を誘発する。BSW17は非アナフィラキシー誘発性であり、IgE/IgERI結合およびB細胞上でのIgE合成について抑制的であるので、患者においてBSW17抗イディオタイプのFabワクチンに対して産生されたポリクローナル抗体は同様の特性を有する。"古典的ワクチンアプローチ"とは対照的に、免疫化された患者において架橋化抗体を生成するIgE-由来タンパク質フラグメントが存在しないので、この免疫応答は非常に特異的であり安全であり、そして担体を欠く組成物を設計することが可能である。【0025】これらのBSW17-ミモ体は、ヒト免疫グロブリンGから誘導される、可変ドメイン類(V-ドメイン類)および定常ドメイン類(C-ドメイン類)からなる組換え抗体または抗体フラグメントである。それらの表面上に異なるミモ体フラグメントを呈示する2つの異なるクローン(クローン52および43)が、固定化BSW17抗体上の抗体ファージライブラリーのバイオパニングによって同定されている。ヒトIgE上のBSW17エピトープを擬似するこのミモ体構造は、高頻度可変領域(CDR)でV-ドメインのフレームワーク領域(FR)に隣接して存在する。クローン52およびクローン43の重鎖および軽鎖V-ドメインのcDNAおよびアミノ酸配列を、図5aから5d(配列番号:1から8)に示す。クローン52軽鎖の構成(L.C.)2は、二量体の"Fab-様"軽鎖フラグメントからなる。これらのBSW17-ミモ体の全長構造を図4Aから4Cに略図的に示すと、定常領域部自体を上記のようにアロタイプの変異体にみられるようなマイナーな立体構造の修飾をも含むものとして理解される。これらのクローンの完全な重鎖および軽鎖それぞれのアミノ酸配列を図12aから12d(配列番号:35から38)に示す。【0026】本発明のミモ体は薬理活性を有する。そのためこれらは、医薬として、例えばワクチンに対する抗原として、使用される。実質的に非細胞溶解性のヒスタミン放出を媒介せず、IgEの Fc領域の標的アミノ酸配列と強力な血清交差反応を有する抗体を誘発することができる。【0027】本発明のミモ体の初期の投与量は、例えば約0.05 mgから約5 mg、好ましくは約 1 mgである;例えば鼻腔、あるいは皮下または筋肉に投与することができ、次いで、例えば14から28日後に、同量をもう1度(追加免疫)投与することができる。使用される投与量は、ある程度、患者の年齢、体重および身体全体の健康などに依存し、適切に調整してもよい。【0028】直接的ワクチン接種、すなわち本発明のミモ体を用いる能動的免疫化は、好ましくは、様々な宿主発現システム、例えば従来方法の細菌、カビ、または真核生物細胞で生産することができる、組換えペプチド(Fabフラグメント、軽鎖または重鎖)を使用して行なうことができる。【0029】遊離組換えミモ体の投与が好ましい。しかしながら、さらに免疫原性担体との化学結合により、免疫原の免疫原性を増大させることも可能である。本明細書中の"免疫原性担体材料"の用語は、宿主動物中で免疫原性応答を独立して誘発する特性を有する材料、そしてポリペプチドの遊離カルボキシル、アミノまたはヒドロキシル基と免疫原性担体材料上の対応する基の間で直接的ペプチドまたはエステル結合の形成を介して、またあるいは在来の二官能性結合部分を介する結合によってポリペプチドに共有結合されることができる、材料を含む。このような担体の実施例には、動物血清のアルブミン類、動物血清のグロブリン類、動物のサイログロブリンン類、動物のヘモグロビン類、動物のヘモシアニン類(特にキーホールリンペットヘモシニアン[KLH])、回虫から抽出したタンパク質、例えば J. Immun. 111 [1973] 260-268, J. Immun. 122 [1979] 302-308, J. Immun. 98 [1967] 893-900 および Am. J. Physiol. 199 [1960] 575-578などに記載された回虫抽出物、またはその精製品;ポリリジン、ポリグルタミン酸、リジン-グルタミン酸コポリマー、リジンまたはオルニチン等を含有するコポリマー、などが含まれる。近年、CRM197などのジフテリアトキソイドまたは破傷風トキソイドを免疫原性担体材料として使用してワクチンが製造されており(Lepow. M. L., et al., J. Infectious Diseases 150 [1984] 402-406;および Coen Beuvery, E. et al., Infection and Immunity 40 [1983] 39-45)、そしてこれらのトキソイド材料をここで使用することもできる。化学的に解毒されたジフテリア毒素と対照的に、好ましくは組換え変異されたジフテリア毒素 CRM197が使用される。CRM197で、グリシン-52残基はグルタミン酸に置換されており、無毒の産物が得られる。CRM197は十分に特性化された無毒の担体タンパク質であり、そして既承認のヒトワクチンで使用される。精製したツベルクリン(PPD)タンパク質誘導体は、(1)T-細胞応答自体を誘導せず(すなわち実質上"T-細胞ハプテン"である)、そしてさらに完全加工された抗原としてふるまい、そしてT-細胞によってそれとして認識される;(2)結合認識モードで最も強力なハプテン"担体"の1つとして知られている;そして(3)さらなる試験をすることなくヒトに使用することができるので、"能動的"免疫化スキームで使用してもよい。【0030】ハプテン-担体結合剤として、抗原の調製で従来用いられたものを使用することができる。本発明のミモ体の免疫原性担体材料への共有カップリングを従来方法で行なうことができる。例えば、直接的共有カップリングについて、ビス-N-スクシンイミドの誘導体を利用して、最も好ましくはカップリング剤としてビス(スルホスクシンイミジル)スベレートを、またはグルタルアルデヒドまたはカルボジイミドを、最も好ましくは(ジシクロヘキシル)カルボジイミドまたは1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドを利用することができる。【0031】ハプテンの割合は、ハプテン-担体結合剤および担体を適切に設定することができるが、ハプテンの重量に対して約1から約6倍、好ましくは約1から約5倍の量の担体が好ましく、そしてハプテン-担体結合剤はハプテンのモル当量の約5から約10倍の量が好ましい。上記カップリング反応によって、担体はハプテン-担体結合剤を介してハプテンに結合し、本発明のミモトープのペプチド-担体複合体および担体で構成された所望の抗原が得られる。【0032】反応が完了した後、得られた免疫原を、透析法、ゲル濾過または分別沈殿などの従来方法で単離し、精製することができる。【0033】本発明は、基本的に、直接ワクチン接種による能動免疫化を対象とする;しかしながら、受動免疫化も意図されている。このような状況で、本発明のミモ体を非ヒト適切な動物に投与し、そしてそれに対して生じた抗体を単離精製し、次いでアレルギー性症状の軽減を誘導する目的でヒトに投与する。【0034】本発明のミモ体は、医薬、特にワクチンとしての使用において、とりわけIgE-介在疾患、アレルギーなど(例えば喘息、アトピー性皮膚炎)、アレルギー性好酸球増加、鼻炎、慢性蕁麻疹および食物アレルギーなど、の処置に適応する。【0035】"処置"には、治療的な処置と同様に、予防的なものも含まれると理解されるべきである。宿主は好ましくはヒトであるが、本発明は、基本的に何れの哺乳動物、例えばネコまたはイヌについて、必要な修飾を加えて適用することもできる。下記の先行技術文献は、本出願に関して国際段階の審査で参酌されたものである:D1 Progr. Allerey Clin. Immunol. (Proc. Int. Congress Allergol. Clin. Immunol., 16th) 4 [1997] 339-342;D2 Int. Arch. Allargy Immunol. 118 (1999) 119-121;D3 Tumor Biology 18 (1997) Suppl. 2, 59;D4 Tanox WO 89/06138;D5 Patent Abstracts of Japan 4 (1999) [C.A. 130 (1999) 138296k] [JP 11/000174]【0036】図面の説明:図1:IgEとその高親和性レセプターとの相互作用図2:モノクローナル抗-hIgE抗体 BSW17の特性図3:抗イディオタイプのネットワーク:BSW 17および抗イディオタイプのパラトープによって認識されるhIgEエピトープを、黒丸で略図的に示す。白丸は、抗イディオタイプの抗体 Ab2を用いる免疫法によって誘導された、抗体 BSW17(Abl)およびポリクローナル抗体3(Ab3)の、相同性の高頻度可変領域を示す。図4:3つの組換えBSW17ミモ体の構造:A:抗-id-BSW17、クローン52(SDS426);軽鎖:(L.C.)2 (配列番号36)B:抗-id-BSW17、クローン52(SDS427);Fab:FAB (配列番号35および36)C:抗-id-BSW17、クローン43(SDS463);Fab:FAB (配列番号37および38)図5:抗-BSW17 Fabクローン:バクテリオファージディスプレイされたヒト免疫グロブリンDNA配列および推定されるアミノ酸配列:高頻度可変領域(相補性決定領域;CDR)は斜体で示す:図5a:クローン52;可変重鎖(配列番号1および2)(CDR1:配列番号39および40;CDR2:配列番号41および42;CDR3:配列番号43および44);図5b:クローン52;可変軽鎖(配列番号3および4)(CDR1:配列番号45および46;CDR2:配列番号47および48;CDR3:配列番号49および50);図5c:クローン43;可変重鎖(配列番号5および6)(CDR1:配列番号51および52;CDR2:配列番号53および54;CDR3:配列番号55および56);図5d:クローン43;可変軽鎖(配列番号7および8)(CDR1 配列番号57および58;;CDR2:配列番号59および60;CDR3:配列番号61および62)。図6:抗-BSW17 rFabとヒトIgEのCε3ドメインとのアミノ酸配列相同性:A:それぞれ、抗-id Fab、クローン52、重鎖(hIGE、Cε3:配列番号25;クローン52:配列番号26);抗-id Fab、クローン52、軽鎖、アラインメント1(hIGE、Cε3:配列番号27;クローン52:配列番号28);抗-id Fab、クローン52、軽鎖、アラインメント2(hIGE、Cε3:配列番号29;クローン52:配列番号30);B:それぞれ、抗-id Fab、クローン43、重鎖(hIGE、Cε3:配列番号31;クローン43:配列番号32);抗-id Fab、クローン43、軽鎖(hIGE、Cε3:配列番号33;クローン43:配列番号34)。アミノ酸配列アラインメント:同一の残基を黒囲みで示し、類似のアミノ酸を灰色囲みで示す(リップマンおよびピアソン)。Fcε残基の位置を各アラインメントの上部に示す。組換えFabフラグメントの高頻度可変(CDR)およびフレームワーク領域(FR)の寄与を、それぞれの配列対の下部に示す。図7:FITC標識化BSW17を有するIgE-準備刺激されたCHOα細胞における、抗-id BSW17 rFabの競争的な結合図8:アフィニティー精製したウサギ抗-BSW17ミモ体免疫グロブリンとヒトIgEの結合:サンドイッチ-ELISAによる、hIgE/抗-ミモ体複合体の測定:hIgEおよび免疫アフィニティー精製した抗-BSW17ミモ体調製物を等モル濃度で混合し、4℃で一晩インキュベートした。それからインキュベーション混合物を、捕獲抗体としてモノクローナル抗-hIgE抗体 LE27(1μg/ml)で被覆されたマイクロタイタープレートウェルに加えた。結合したミモ体 IgGを、ヤギ 抗-ウサギIgG-HRPで検出した:□=hIgE/SDS410複合体;○=hIgE/SDS411複合体。図9:Balb/cマウスにおける抗-BSW17ミモ体免疫反応:■ = マウス1; ● = マウス2; ▼ = マウス3; ▲ = マウス4; ◆ = マウス5A: 抗-id-BSW17.52;軽鎖(SDS426);B: 抗-id-BSW17.52;Fab(SDS427);C: 抗-id-BSW17.43;Fab(SDS463);O.D. 値は、被覆されていないウェルに対するバックグラウンド結合を矯正した、光学密度読出しを示す。2度の測定の平均値を示す。変動は一般的に< 0.05 O.D.である。図10:免疫アフィニティー精製した抗-ミモ体抗体によるHIgE/FcεRIa結合の抑制:A:■ = BSW17● = 抗-クローン52;軽鎖(SDS410)△ = 抗-クローン52;Fab(SDS411)▼ = 抗-クローン52;軽鎖(カラムフロースルー)B:■ = BSW17● = 抗-クローン43 Fab(SDS476)図11:様々なミモ体製剤で免疫性を与えられた赤毛サルグループのPCAスコア特徴(n=2):A:免疫原:抗-id-BSW17.52; 軽鎖 (SDS426);B:免疫原:抗-id-BSW17.52; Fab (SDS427);C:免疫原:抗-id-BSW17.43; Fab (SDS463)。免疫化後の様々な時点での、赤毛サルの皮膚の受動型皮膚アナフィラキシー(PCA)反応。PCAスコア値は、注入されたIgE(JW8)濃度に対する青色皮膚ドットの直径のプロットによって生じた濃度曲線下面積(AUC)から計算したPCA強度を示す。スコアは同じミモ体製剤で免疫化された2匹のサルの群の平均数であり、表4に示す単一のサルの値から計算した。変動をエラーバーで示す。統計P値はエラーバー上に示す。注入を高めた時点をx軸の下に示す。図12:3つの組換えBSW17-ミモ体の重鎖および軽鎖の完全なアミノ酸配列:図12a:抗-id-BSW17、クローン52:重鎖の可変および第1定常ドメイン(配列番号35);図12b:抗-id-BSW17、クローン52: カッパー軽鎖の可変および定常ドメイン(配列番号36);図12c:抗-id-BSW17、クローン43:重鎖の可変および第1定常ドメイン(配列番号37);図12d:抗-id-BSW17、クローン43:ラムダ軽鎖の可変および定常ドメイン(配列番号38)。ミモ体(L.C.)2クローン52は、図4Aに示すジスルフィド架橋結合した、図12b(配列番号36)の軽鎖を含む。ミモ体Fabクローン52は、図4Bに示すジスルフィド架橋結合した、図12b(配列番号36)の軽鎖および図12a(配列番号35)の重鎖を含む。ミモ体Fabクローン43は、図4Cに示すジスルフィド架橋結合した、図12d(配列番号38)の軽鎖および図12c(配列番号37)の重鎖を含む。【0037】下記の実施例は本発明を例示説明するが、制限的なものではない。温度は摂氏度である。次の略語を使用する:抗-id:抗イディオタイプのABTS:[2,2'-アジノジ(3-エチル-ベンズチアゾリン)スルホナート]BSA:ウシ血清アルブミンBSW17:マウスモノクローナル抗-ヒトIgE 抗体;Cε3特異的CDR:相補性決定領域Cε3:IgEの第3重鎖定常領域ドメインCε4:IgEの第4重鎖定常領域ドメインCεE:BSW17のCε3エピトープ領域を擬態したミモトープペプチドCεM:BSW17のCε4エピトープ領域を擬態したミモトープペプチドcfu:コロニーを形成するユニットELISA:酵素結合免疫吸着アッセイFab:抗体フラグメント欠乏重鎖定常領域2および3FcεRI; IgERI:IgEに対する高親和性レセプターFcεRIα:IgEに対する高親和性レセプター、α鎖FCS:ウシ胎仔の血清FR:フレームワーク領域FITC:フルオレセインイソチオシアネートが抱合したHRP:西洋わさびペルオキシダーゼHSA:ヒト血清アルブミン(h)IgE:(ヒト)免疫グロブリンEmAb:モノクローナル抗体MNC:単核細胞NIP:3-ニトロ-4-ヒドロキシ-ヨードフェニル酢酸p.c.:ポリクローナルPhab:ファージディスプレイFabフラグメント(Fab発現バクテリオファージ)PBS:リン酸緩衝生理食塩水PCA:受動型皮膚アナフィラキシーPWM:ヤマゴボウマイトジェンr:組換えRT:室温SPR:表面プラスモン共鳴【0038】実施例1:ファージディスプレイライブラリーの構成a)リンパ球の源2人の成人男性供血者を使用して、末梢血から単核細胞(MNC)を調製した。アレルギーの臨床的症状を有する第1の成人男性アトピー性供血者に、ミョウバン-吸着破傷風トキソイド 0.5 mlの筋肉内投与によりブーストした(Te Anatoxal Bern, Swiss Serum and Vaccine Institute, Bern, Switzerland)。MNCを、7日後にフィコール勾配遠心沈殿法を用いて単離し(Lymphoprep, Pharmacia, Milwaukee, WI, USA)、それからRPMI-1640媒質(Seromed, Basel, Switzerland)中で3日間培養した。このRPMI- 1640媒質は、IL-2 (Sigma, St-Louis, MO, USA) 103 U/ml、Pansorbin細胞(Staphylococcus aureus Cowan strain1, Calbiochem, La Jolla, CA, USA) 50 μg/ml、および1:1000で希釈した破傷風トキソイドを含有していた。それから全RNAを、フェノール-クロロホルムグアニジウムイソチオシアネート方法を用いて、これらの細胞から調製した(Chomczynsi, P. and Sacci, N., Anal. Biochem. 162 [1987] 156)。過免疫Rh D供血者である第2の成人男性供血者に、既知の血液型 O RhD+の男性供与者由来の濃縮赤血球 2 mlの静脈注射でブーストした。ブーストから18日後に、フィコール勾配遠心沈殿法でMNCを単離した。最初に、細胞を、RNAを抽出する前に、IL-2 103 U/mlおよびヤマゴボウマイトジェン 10 μg/ml(PWM; Sigma L9379, Buchs, Switzerland)を含有するRPMI- 1640媒質で3日間培養した。【0039】3人の扁桃腺摘出した子供からヒト扁桃腺サンプルを得た。扁桃腺を殺菌したペトリ皿でRPMI- 1640媒質中に漬け込み、そして小片に切り分けた。それから、組織、細胞および媒質を、殺菌した試験管に移し、組織破片を定着させて、MNC をフィコール勾配遠心沈殿法を使用して上澄みから単離した。CDl9-被覆した常磁性ビーズを用いてMNCをインキュベートしてB細胞を精選し、それからRNAを上記のフェノール-クロロホルムグアニジウムイソチオシアネート方法に従って調製した。【0040】全ミモ体について鎖のクローニングに使用されるpComb3ベクターを、Scripps Research Institute La Jolla, CA, USA(Barbas III, C.F. and Lerner, R.A., Companion Methods Enzymol. 2 [1991] 119)から入手した。pComb3ベクターおよびVCSM13ヘルパーファージの形質転換で使用する大腸菌株 XL1-Blueを、Stratacyte(La Jolla, CA, USA)から購入した。【0041】b)バクテリオファージライブラリーの作成3つの別個のライブラリーを作成した:第1のものは第1の男性アトピー性供血者から単離したMNCからのBSと称し、第2のものは第2の男性供血者から静脈注射ブースト18日後に収集したMNCからのLD2と称し、そして第3のものは子供の扁桃腺から単離した、B-細胞豊富化した個体群のMNからCTと称する。全RNAを、フェノールクロロホルムグアニジウムイソチオシアネート方法を用いてこれらの細胞から調製した。このRNAから10 μgを使用し、オリゴ(dT)プライマー (400 ng)を用いてcDNAを調製し、そして業者によって指定された状態でM-MuLV逆転写酵素を用いて逆転写した(Boehringer Mannheim, Germany)。PCR増幅をVogel, M. et al., E.J. of Immunol. 24(1994)1200に記載のように行なった。略記すると、PCR反応媒質 100μlは、10 mM MgCl2、cDNA 5μl、適切な5'および3'プライマーそれぞれ 150 ng、200μMのそれぞれで全4つのdNTP、および2U/ml Taqポリメラーゼ(Perkin Elmer, NJ, USA)。を含むPerkin-Elmer緩衝液を含有していた。Fab分子の重鎖および軽鎖のPCR増幅を、Stratacyte由来の1セットのプライマーを別々に用いて行なった(詳細は後記)。重鎖用に、6つの上流プライマーを、それぞれVH遺伝子の6つのファミリーにハイブリダイズするのに使用し、軽鎖では1のカッパーおよび1のラムダ鎖プライマーを使用した。下流プライマーを、重鎖では定常ドメインγ1およびγ3のヒンジ領域に適合するように設計した。軽鎖では、下流プライマーをカッパーおよびラムダ定常ドメインの3'末端に適合させた。重鎖および軽鎖のPCR産物を別々に集め、それぞれ、ゲル精製し、Xhol/SpelおよびSacl/ Xbal 制限酵素(Boehnriger Mannheim, Germany)で切断した。消化後に、このPCR産物をフェノール: クロロホルム:イソアミルアルコールで一旦抽出し、そしてゲル切除法で精製した。Xhol/Spel消化されたFdフラグメントの挿入および続くSacl/Xbal消化された軽鎖のpComb3ベクターへのライゲーション、XLl-Blue細胞への形質転換、そしてファージの産出を、Barbas III, C.F. and Lerner, R.A., Companion Methods Enzymol. 2 [1991] 119に記載のように行なった。XLl-Blue E.coli 細胞の形質転換後に、サンプルを回収し、そしてプレート上で適定して、ライブラリーサイズを測定した。これらの結果は、それぞれBS、LD2およびCTについて 1 x 107、7.7 x 106および3 x 106cfu(コロニー形成ユニット)の発現ライブラリーを示している。【0042】c) PCRプライマー【表1】【0043】実施例2:ファージライブラリーからの組換えBSW17-特異的抗体フラグメント(BSW-17-ミモ体)の選択BSW17-特異的ファージの選択を4ラウンドのパニングで行なった。各ラウンドは、抗-IgE mAb BSW17上の吸収前の、抗-IgE mAb Le27上の2つのプレ吸収を含む。プレ吸収を以下のように行なった:2つの免疫試験管(Maxisorp, Nunc)を、Le27(20μg/ml) 4 mlで、4℃で一晩被覆し、それからPBS/2%スキムミルク 4 mlを用いて37℃で2時間ブロックした。第1試験管を、RTで30分間、アンダー・アンド・オーバーターンテーブル上で、各ファージライブラリー(BS、LD2およびCT) 2 x 1012 cfuを含有するブロック溶液 4 mlを用いてインキュベートした。それからこのファージを第2試験管に移し、そしてこのプロセスをもう一度繰返した。第2のプレ吸収後に、Le27に特異的でないファージを、BSW17 4 ml(20μg/ml)で被覆された試験管に加え、そしてPBS/2% スキムミルクを用いて上記のようにブロックした。アンダー・アンド・オーバーターンテーブル上で室温で2時間インキュベーションした後、この試験管を、PBS/0.1% Tweenで10回、そしてPBSで10回、連続して洗浄した。付着したファージを、最初に0.1 M トリエチルアミン 500μlで、それからPBSで3回すすいだ後、グリシンを含む0.1M HC1 500μ1でpH 2.2に調節し、1mg/ml BSAに含め、連続して溶出した。各溶出段階を室温、10分間で行ない、そして溶出されたファージをそれぞれ1M Tris.Cl 250μl(pH 7.4)および2M Tris塩基 30μlで中和した。精選したファージを、3以上のパニングのラウンドで連続的に使用する前に、E. coli XL1-Blue 細胞を使用して、Barbas and Lerner, supra (1991)の記載のように増幅した。パニングの各ラウンドの後、溶出されたファージのタイターをcfu測定でモニターした(表2):表2パニングの連続したラウンドによるBSW17特異的Phabの豊富化【表2】a)パニングの各ラウンドで、6 x 10-2ファージの粒子をLe27 20μg/mlで被覆した試験管中で2度プレ吸収させて、次いでBSW17 20μg/mlで被覆した1つの試験管中でインキュベートした。【0044】実施例3:組換えBSW17-ミモ体のヌクレオチド配列ファージクローンから精選したプラスミドDNAを、Nucleotrapキット(Machery-Nagel, Duren, Germany)を使用して調製し、そして核酸配列決定を、PRISM Ready Reactin DyeDeoxy Terminator Cycle Sequencing Kit(Applied Biosystems, Germany)を使用するABI 373A配列決定システムで行なった。【0045】重鎖配列の配列決定で使用されるプライマーは:【表3】軽鎖配列を得るために下記のプライマーを使用した:【表4】【0046】プライマーをMicrosynth(Balgach, Switzerland)で合成した。様々なファージクローンの選択、BSW17に特異的な2つの異なるアミノ酸配列のDNA配列から、組換え抗体の重鎖および軽鎖を推論した(クローン52、クローン43)。この配列および高頻度可変領域(CDR)およびフレームワーク配列のそれらの配分を、図5aから5dに示す(配列番号1から8)。【0047】ヒトIgEについてクローン52および43によって示された、BSW17-特異的組換え抗体フラグメントのアミノ酸配列のアラインメントは、高親和性レセプターとの結合にかかわるヒトCε3ドメインの伸展と相同関係を明らかにした(図6)(配列番号25から34)。従って、パラトープは、組換え抗体フラグメントによって、ヒトIgE("ミモ体")に存在する、擬態と定義される構造を示す。そのため、これらの組換えミモ体のワクチン接種によって、アレルギー性患者で生じた抗体は、ヒトIgEを認識し、そしてアレルギー性反応をIgE/IgERI結合の抑制によって予防する。【0048】実施例4:組換えBSW17-ミモ体の調製および精製ファージクローン43および52(図5)(配列番号1から8)から誘導された溶性ミモ体が生成した。溶性Fabフラグメントを産生するために、ファージ粒子のpIIIテールタンパク質をコード化する配列gIII を取り除き、ヘキサヒスチジン断片で置換し、Fabフラグメントの精製をNi2+-キレートアフィニティークロマトグラフィーによって促進した。【0049】ファージミドDNAを、Nucleotrapキット(Macherey-Nagel, Duren, Germany)を使用して調製し、そしてSpeIおよびNheIで消化させた。gIII位欠失4.7 kb DNAフラグメントをアルカリホスファターゼで処置し、アガロースゲル電気泳動で精製した。直線化したDNAを、それぞれSpeIおよびNheI制限部位の5'および3'末端で、6つのヒスチジンコード化DNAフラグメントを用いてライゲートした。ライゲーション後に、DNAをE. coli XLl-Blue細胞中へ形質転換し、そして個々のクローンを産生する溶性ミモ体を選出した。これらのクローンの1つを大量スケール精製用に選び、そして50μg/mlカルベニシリンを含有する1 lSB(Super Broth)中で、37℃、1.0のODについて600 nmで成長させた。それから培養物をlmM イソプロピル β-D-チオガラクトピラノシド(IPTG)(Biofinex, Praroman, Switzerland)で誘導し、そして37℃で4時間成長させた。細菌を6000 rpm、4℃、20分でペレット化し、超音波処理緩衝液(0.1 M NaPO4, 8 M urea, pH 8.0) 30 mlに再懸濁化し、その後氷上で超音波処理した。それから不溶性成分を、15000 rpm、4℃、30分の遠心沈殿法で取り除き、Fabを含有する上澄みを1 mlのニッケル-ニトリロアセテートカラムで精製した。このカラムを音波処理緩衝剤で洗浄して混入物を取り除き、次いでそれぞれpH 5.1および4.9で、音波処理緩衝剤を用いる2種の溶出ステップを行なった。フラクションをOD 280 nmでモニターし、アリコートをSDS-PAGE (12% 非還元)で分析し、ミモ体の純度を確認し、同定した。ミモ体を含有するフラクションを集め、濃縮し、そしてPBSにさらして透析した。【0050】最終のミモ体製剤の純度(図4および12に記載)(配列番号 35. 36, 37, 38)を、SDS-PAGEによるサンプルアッセイで評価した。タンパク質のバンドをクーマシーブルー染色で検出した。濃度を、クーマシーブルーで染色されたミモ体のバンドと、既知量の標準タンパク質(BSA)との比較によって、および分光測光によって測定した。その後これらのミモ体製剤をウサギの免疫化における競争的な結合アッセイに使用した。【0051】実施例5:組換えBSW17-ミモ体による、レセプター結合したIgEのBSW17-介在置換の抑制BSW17は、その高親和性レセプターに結合したIgEを認識し、置換する。抗-id BSW17 rFabフラグメントがこの置換反応を抑制することができるか測定するために、細胞表面に曝露されたIgERIへ結合するIgEを用いる競争的な結合アッセイを行なった。組換えチャイニーズハムスター卵巣株細胞(CHO)であって、ヒト IgERIのα鎖をコード化するDNAによってしっかりトランスフェクトされたものを、アッセイに使用した[CHOα細胞株; Blank, U. et al., Eur.J.Biol.Chem. 266 (1991) 2639]。5 x 104 CHOα細胞を含有する一連の試験サンプルを、IgE Bll ハイブリドーマ(Zurcher, A.W. et al., Immunol.Lett. 46(1995) 49-57] 48 ngを含むFACS緩衝剤(PBS, 0.3% BSA, 0.02% NaN3)中で、室温で15分間インキュベートした。一旦FACS緩衝剤で洗浄した後、各サンプルを、フルオレセインイソチオシアネート-抱合型 BSW17 (BSW17-FITC)の複合体を用いて室温で15分間インキュベートし、そして抗-id BSW17 rFabsの量を増加させた。この複合体を下記のように調製した: BSW17-FITC 50μl(濃度 1.3 nM)を、異なる量の抗-id-BSW17 rFabs(40 nM; 200 nM; 1μM; 4 μM; および40μM)で、室温で30分間インキュベートした。非特異的結合の検定のために、CHOα細胞のみを含有する対照サンプルを、BSW17-FITCを用いて室温で15分間インキュベートした。CHOα細胞をFACS緩衝剤で一旦洗浄し、そしてFACS緩衝剤 100μlを加えた後、細胞を、488nmにあうアルゴンレーザーを備えたFACSCalibur(Becton Dickinson)フロー血球計算器で分析した。前方散乱/側面散乱ドット・ブロットのゲートを単量体細胞の周りにセットし、そして蛍光の量を測定し、平均チャネル蛍光(mcf)として表わした。陽性細胞の割合を、CHOα細胞に対するBSW17結合の割合として計算した。図7に示すように、BSW17のCHOα細胞への結合は、抗-id-BSW17 Fab フラグメントの濃度の増加に伴って減少し、これは2種の抗-id BSW17 Fab クローンは、BSW17のIgEに対する結合を阻害することができることを示している。【0052】実施例6:組換えBSW17ミモ体を有するウサギの免疫化本実施例は、抗-BSW17 rFab(クローン52の重鎖と軽鎖からなる、図4B、併せて図12aおよび12bに示す)(配列番号35および36)、または軽鎖のみからなる組換えミモ体(図4A、併せて図12b)(配列番号 36)の何れかによる免疫化は、ウサギにヒトIgEと交差反応する体液免疫反応を誘発したことを示している。2匹のニュージーランド白雌ウサギに、300μg/ml 抗-BSW17 rFabまたはクローン52の軽鎖フラグメント(Freundの完全アジュバンドで1:1乳化)を皮下投与して第1次免疫化を行ない、そしてそれから、2週間ごとに、Freundの不完全アジュバンドで1:1に乳化した同量のミモ体を、3回ブーストした。血清を0日(ブリード前)で収集し、そして最終投与から7日後に動物をブリードした。【0053】ウサギ免疫血清を、ヒトIgE(SUS-11 IgE)(Sepharose 4Bカラムに化学的に結合)を用いて、免疫アフィニティークロマトグラフィーで精製した。この手順で、抗-hIgE フラクションを、全免疫グロブリンから単離し、抗体タイターおよびアフィニティーについての、治療的に関連した免疫反応の正確な特徴づけをすることができる。【0054】ヒトIgEと交差反応する抗-ミモ体抗体の免疫アフィニティー精製は、2ステップからなる。第1のステップでは、IgGフラクションを、ウサギ抗血清から、硫酸アンモニウム塩析で単離し、第2のステップでは、hIgE-特異的 抗-BSW17 ミモ体抗体を、ヒトIgE(SUS-11 IgE)に結合させて、CH-Sepharose 4Bに共有結合させ、次いで溶出、透析および濃縮した。【0055】溶液中、免疫アフィニティー精製した免疫グロブリンとヒトIgEとの濃度-依存性複合体の形成を、ELISAで確認した:SUS-11 IgEを等モル量の抗-ミモ体 免疫グロブリンで、4℃で一晩インキュベートした。溶液中で作成された複合体を、捕獲抗体としてモノクローナル抗-hIgE 抗体 LE27を被覆した、マイクロタイタープレートウェルに加えた。結合した抗-ミモ体 IgGを、ポリクローナル抗-ウサギ IgG-HRPで検出した。得られた結果を図8に示す。【0056】実施例7:組換えBSW17ミモ体によるマウスの免疫化クローン43およびクローン52の両方から得た組換えミモ体は、抗-ミモ体抗体を誘導することができる。免疫法をマウスで行なった。5つのBalb/cマウスのグループに、E. coli細菌で調製し、ニッケルアフィニティークロマトグラフィーで精製した組換えBSWl7ミモ体を、5μg/マウスで皮下注入した。水酸化アルミニウムをアジュバンド(アジュバント)として使用した:グループ1を、バッチSDS426 = 抗-Id-BSW17.52; 軽鎖で免疫化した。グループ2を、バッチSDS427 = 抗-id-BSW17.52; Fabで免疫化した。グループ3を、バッチSDS463 = 抗-Id-BSW17.43; Fabで免疫化した。【0057】第1次免疫法から21および41日後に、2度のブースト注入(5μg/マウス)を投与した。血液サンプルを、第1次免疫法から 0, 20, 28, 35, 42, 49および56日後に採取した。血清を調製し、抗-ミモ体 抗体の存在下でELISAによってプローブした。【0058】マイクロタイタープレートウェルを、1μg/ml ポリクローナル ヒト IgGで被覆し、そして、第1次免疫法の後に表示時点で採集した血液サンプルから調製した、1:50 希釈したマウス血清でインキュベートした。 結合した抗-ミモ体 抗体(ahIgG、ヒトフレームワークおよび定常ドメイン領域に対する))を、第2インキュベーションにおいて西洋ワサビペルオキシダーゼ抱合型 ヤギ 抗-マウス IgG (gamIgG-HRP)で検出した。着色反応を、色素生産性ABTS基質を使用して発現させた。全てのマウスが、全組換えミモ体製剤を用いた第2ブースト後に、抗-ミモ体 抗体を産生した(図9)。【0059】実施例8:ウサギ中で、ヒトIgEに高親和性で結合する組換えBSW17ミモ体に対して産生される免疫グロブリンヒトIgEに対して高親和性で応答する体液免疫反応を誘発する目的の、組換えBSW17ミモ体のワクチン接種をここで示す。免疫アフィニティー精製した抗-ミモ体免疫グロブリンのヒトIgEに対する結合を代表する動的パラメーターを、表面プラスモン共鳴法(SPR)で分析した。【0060】SPR測定をBIAcore機器(Biacore, Uppsala, Sweden)で行なった。特異的結合表面を、ヒトIgEまたはマウスのIgG3のCM5センサーチップに対するカップリング(製造者の指示によるアミンカップリング)で調製した。この手順を使用して、バイオ分子を、一級アミノ基を介して、センサーチップのカルボキシメチル化されたデキストラン表面に付着させた。ヒト骨髄腫 IgE またはSUS-ll IgE 10 pmolを、チップの異なるフローセルに結合させた。マウス IgG3 mAb、ABL 364(ATCC HB 9324)を、同じセンサーチップの異なるトラックに固定化した。ABL 364を抗-ミモ体抗体の非hIgE 免疫グロブリン構造への結合の測定に参照として使用し、そして緩衝剤の変化によって引き起こされる屈折インデックスの起こり得る変化を修正した。カップリング濃度は〜13000 RUであった。【0061】BIAcore機器で測定される全てのバイオ分子相互作用を、25℃で、連続フロー緩衝剤としてHBS(lOmM Hepes, pH = 7.4, 150 mM NaCl, 3.4 mM EDTA, および0.005 % v/v 界面活性剤P-20)を使用して行なった。動的分析のセンサーチップ表面を通過する、各検体の濃度範囲は、33 nMから499 nMであった。このフロー速度は5μ1/分であった。検体を1200 sで注入し、次いでHBSをおよそ1800 sで注入して、結合した検体の解離をモニターした。このチップを、10 mM HC1 120 s パルスで再生利用した。非特異的結合を、ABL 364 対照トラック上の検体の通過でモニターし、動的分析より前に、特異的結合から減じた。SPR測定で得られた結合曲線を、BIAevaluation 3.0 分析パッケージを使用して分析した。抗-ミモ体/IgE相互作用の相対比較で、単相モデルを使用した。会合速度定数 ka、解離定数 kd、および平衡解離定数 KD = 1/KA (KA = アフィニティー定数)を全ての曲線で計算した。表3に略記する:【0062】表3ポリクローナル(p.c.)ウサギ 抗-ミモ体 Ig 製剤と hIgEとの相互作用の動的定数(SPR/BIAcore)【表5】【0063】ヒトIgEに対する高親和性の抗体を、ウサギにおける組換えBSW17-ミモ体の免疫化(ナノモル範囲のKD値)で誘発することができる。クローン43-誘導化Fab(SDS463; 図4C; 抗-id-BSW17.43)は、ヒトIgEについて非常に高親和性である(KD < 1 nM)免疫反応を誘発する能力がある。従って、モノクローナルの抗イディオタイプの抗体を使用し、ヒトワクチン接種ストラテジーで、IgEに対して強力なポリクローナル反応を目的どおり誘発し得る。【0064】実施例9: ウサギにおいて組換えBSW17-ミモ体に対して産生された免疫グロブリンは、ヒトIgEのその高親和性レセプターへの結合を抑制する抗-アレルギーワクチンと同様の活性について、抗-ミモ体抗体とhIgEとの複合体構成から、IgEがその高親和性レセプターへの結合を予防することが予期される。BSW17-ミモ体 CDRとのアミノ酸配列相同性を示す、伸展Val(370-Asn(383)中のCε3エピトープ領域 Val(370)-Gly(379) (図6)(配列番号25)は、高親和性レセプター結合にかかわっている。そのため、組換えBSW17ミモ体に対して産生されるIgE-特異的抗体は、結合ドメインをブロックすることによってIgEの高親和性レセプターへの結合を抑制するという治療的効果が予期される。 これを確認するために、免疫化されたウサギから得られた精製された抗-ミモ体抗体を、hIgE/FcεRIα結合の抑制について、ELISA競合法で試験した。疾患に関連した読出しとして、遊離IgEを、組換えFcεRIαへの結合能力によって測定した(RIα-HSA-RIα 2重融合タンパク質; DFP) (図10)。【0065】hIgE(SUS-ll; 1μg/ml(図lOA)およびO.1μg/ml(図lOB))を、参照のとおり、増加量の抗-ミモ体免疫グロブリンまたはmAb BSW17と共に、+4℃で16時間プレインキュベートした。SDS410製剤の免疫アフィニティーカラム貫流中に存在する大量の免疫グロブリンを、ネガティブコントロールとして含めた。形成した複合体を、抗体の捕獲として1μg/mlの抗-IgE 抗体 Le27で被覆されたマイクロタイター プレートウェルに加え、そして西洋ワサビペルオキシダーゼ標識化FcεRIα-HSA- FcεRIα2重融合タンパク質(DFP)と、37℃で1時間インキュベートした。結合したDFPを色素生産性基質で検出した。O.D. 値を%結合で表わした。競争相手のないSUS-ll IgEへの結合を100%とした。2度の測定の平均値を示した。変動は一般的に2%を下まわった。【0066】結果は、BSW17ミモ体との免疫化は、齧歯動物に、特異的高親和性抗-hIgE抗体の産生をもたらすことを示している。これらの抗-ミモ体抗体は、IgEのその高親和性レセプターへの結合をインビトロで抑制し、抗-アレルギーワクチン開発を目的とするBSW17-ミモ体ワクチン接種ストラテジーの価値を示す。【0067】実施例10:組換えBSW17ミモ体を用いる赤毛サルのワクチン接種による、受動型皮膚アナフィラキシーの抑制サルの受動型皮膚アナフィラキシー(PCA)の抑制を使用して、化合物の抗-アレルギー性活性をインビボで試験した。ミモ体のワクチン接種は、赤毛サルのアナフィラキシー性皮膚反応の抑制をもたらした。サルの2つのグループに、組換え抗-BSW17ミモ体を、動物毎に500μgづつ皮下投与した。第1次免疫法の後、2つのブースト注入を投与した。各ブーストから約10日後、PCA試験を行なった。サル VI91、VI92、VI93、およびVI95を、最後のブースト注入からさらに3ヶ月後に、PCA反応について試験した。免疫化スキームを以下の表1に略記する:【0068】表1【表6】【0069】赤毛サルを少量のケタミン塩酸塩(10-15 mg/kg, i.m.)(Ketalar(登録商標), Parke Davis, GB)でプレ処置し、固定し、様々な投与量のIgE(JW8)(Serotec, Oxford, U.K.)を腹部の皮膚からi.c.注入した。IgE(JW8)は、ハプテンNIPおよびヒトFcε重鎖に部分特異的に結合するマウス抗原からなるキメラ抗体である。増加量(0, 2, 10, 50, 250 ng/ml 食塩水)のIgE(JW8)を、30ゲージ針の頭尾シリーズで100μlの量で注入した。2時間後、BSA抱合型NIP 25 mgを、動物毎に静脈注射で投与した。NIP-BSA抱合体の静脈内処置後に、動物らを再び落ち着かせた。皮膚反応の可視化で、エバンスブルー染色(1%、0.5 ml/kg)を、抗原処置後すぐに静脈内注入した。皮膚反応を、抗原注入から20分後に青色スポットの2つの直径を測定し、そしてそれらの平均をmmで計算して読んだ。第1次免疫化後、そしてブースト後の指示時点で、PCAを試験した。PCA強度を、注入したIgE(Jay8)濃度に対して、青色皮膚面積の直径のプロットによって生じた濃度曲線下面積(AUC)から算出した。表4に示す各単一のサルについてのPCAスコアは、算出したAUC値を示す:表4赤毛サルにおける、受動型皮膚アナフィラキシーのBSW17-ミモ体ワクチン接種の効果【表7】【表8】1)前記(77)のIgE(JW8)濃度の注入に対する、青色皮膚面積の直径のプロットによって生じた濃度曲線下面積(AUC)から算出したPCAスコア。2)プレ免疫化値と比較したPCA強度。0日のPCA = 100%【0070】プレ免疫化した個々のPCAスコア(O日値)を参照としてとったところ、全てのサルはBSW17ミモ体ワクチン接種に影響を受け、PCA強度が減少した。最もよい結果が、クローン52軽鎖構成(SDS426)(図4A)で、抑制割合60-83%(PCAスコア 40および17)で得られた。クローン52Fab(バッチ SDS427)(図 4B)で免疫化されたサルは、PCAを55-65%抑制した(PCA スコア 45および35)。クローン43Fab(バッチ SDS463)(図 4C)は、ウサギでのBSW17結合および高親和性抗-hIgE誘導についてクローン52ミモ体より優位であったが、やや低いPCA抑制範囲(18-38%(PCAスコア 82および62))であった。下記のワクチン接種プロトコルで、クローン52ミモ体のワクチン接種は3度目のブースト注入後に効果がでて(サルVI92を除く)、そして部分的なPCA抑制が3ヶ月後までみられた。対照的に、クローン43Fabは2度目のブースト注入後で効果がでて、3度目のミモ体処置は効果なかった。【0071】表4の単一のサルの値から算出した、同一のミモ体製剤で免疫化した2つのサルの各グループの平均PCAスコア特徴を、図11に示す。【0072】ワクチン注射をしたサルの陽性PCAの結果(個々のプレ処置スコアまたは処置していない対照動物と比較)は、ミモ体ワクチン接種の有効性をはっきりと示しており、そしてその機構的なコンセプトの有効性を提供している。組換えBSW17ミモ体の赤毛サルのワクチン接種は、インビボでPCAを抑制する、高親和性抗-ヒトIgE抗体の産生をもたらしている。【図面の簡単な説明】【図1】 IgEとその高親和性レセプターとの相互作用【図2】 モノクローナル抗-hIgE抗体 BSW17の特性【図3】 抗イディオタイプのネットワーク:【図4】 3つの組換えBSW17ミモ体の構造:【図5】 抗-BSW17 Fabクローン:バクテリオファージディスプレイされたヒト免疫グロブリンDNA配列および推定されるアミノ酸配列:高頻度可変領域(相補性決定領域;CDR)は斜体で示す:【図6】 抗-BSW17 rFabとヒトIgEのCε3ドメインとのアミノ酸配列相同性:【図7】 FITC標識化BSW17を有するIgE-準備刺激されたCHOα細胞における、抗-id BSW17 rFabの競争的な結合【図8】 アフィニティー精製したウサギ抗-BSW17ミモ体免疫グロブリンとヒトIgEの結合:【図9】 Balb/cマウスにおける抗-BSW17ミモ体免疫反応:【図10】 免疫アフィニティー精製した抗-ミモ体抗体によるHIgE/FcεRIa結合の抑制:【図11】 様々なミモ体製剤で免疫性を与えられた赤毛サルグループのPCAスコア特徴(n=2):【図12】 3つの組換えBSW17-ミモ体の重鎖および軽鎖の完全なアミノ酸配列:【配列表】 IgEのCε3領域とIgEの高親和性レセプターとの結合を妨げる抗体BSW17に対して抗イディオタイプであって、配列番号36の軽鎖二量体、配列番号35と36のFabフラグメントまたは配列番号37と38のFabフラグメントを含み、その定常領域はアロタイプの変異体で認められる5アミノ酸までの立体構造修飾されていてもよい、組換え、モノクローナル抗体または抗体フラグメント(ミモ体)。 単一分子または免疫原性担体分子に化学的に結合したタンパク質複合体の何れかである、請求項1に記載のミモ体を含む、医薬組成物。 ワクチンとして使用する、請求項2記載の医薬組成物。 請求項1に記載のミモ体を有効成分とする、IgE-介在疾患処置剤。 請求項1に記載のミモ体を有効成分とする、IgE-介在疾患処置用ワクチン。 請求項1に記載のミモ体を有効成分とする、喘息、アトピー性皮膚炎、鼻炎、慢性蕁麻疹または食物アレルギー処置用ワクチン。 非ヒト動物の受動免疫によりポリクローナルまたはモノクローナル抗体を産生させるための、請求項1に記載のミモ体の使用。


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