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タイトル:特許公報(B2)_クレアチンキナーゼアイソザイム活性測定法および測定試薬
出願番号:2000595158
年次:2010
IPC分類:G01N 33/573


特許情報キャッシュ

白波瀬 泰史 梶田 忠宏 星野 忠 JP 4455767 特許公報(B2) 20100212 2000595158 20000118 クレアチンキナーゼアイソザイム活性測定法および測定試薬 シスメックス株式会社 390014960 庄司 隆 100088904 白波瀬 泰史 梶田 忠宏 星野 忠 JP 1999010624 19990119 20100421 G01N 33/573 20060101AFI20100401BHJP JPG01N33/573 B G01N 33/573 PubMed JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) 特開昭52−57887(JP,A) KANG X et al.,第44回日本臨床病理学会総会(V) 臨床酵素蛋白の免疫測定法と酵素活性測定法および臨床応用 ,臨床病理,1998年,Vol.46 No.7 ,p.713-717 星野忠 他,抗ミトコンドリアCK活性阻害抗体を用いた新規CK-MB活性測定法の臨床評価 ,臨床化学,2009年,Vol.38 No.3 ,p.299-307 星野忠,CK-MB測定における課題解決への第一歩-抗ミトコンドリアCK活性阻害抗体を組み込んだ,新規CK-MB活性測定試薬の開発経緯と試薬性能について- ,臨床化学,2008年,Vol.37 補冊1 ,p.171-172 星野忠 他,抗ミトコンドリアCK活性阻害抗体を組み込んだCK-MB活性測定法の検討 ,生物試料分析,2004年,Vol.27 No.1 ,p.79 星野忠 ,健常人のミトコンドリアCK ,検査と技術 ,1999年11月,Vol.27 No.12 ,p.1444-1446 8 JP2000000195 20000118 WO2000043788 20000727 16 20070109 白形 由美子 【0001】技術分野本発明はクレアチンキナーゼ(CK)アイソザイムの活性測定方法および測定試薬に関する。さらに詳しくは、本発明はクレアチンキナーゼMBアイソザイム(CK−MB)および/またはミトコンドリア局在クレアチンキナーゼアイソザイム(mCK)の活性測定方法および測定試薬に関する。【0002】背景技術ヒトのCKは遺伝子を異にする4つの蛋白質が存在する。それらは、細胞質に由来する2種類の蛋白質〔局在により筋肉型(M型)と脳型(B型)〕と、ミトコンドリアに由来する2つの蛋白質Sarcomeric CK(smCK)とubiquitous CK(umCK)である。smCKは心筋および骨格筋に、umCKは小腸、脳および胃に存在する。細胞質由来のCKアイソザイムはM型とB型の2量体から構成され、CK−MM、CK−MB、CK−BBの3種類に分類される〔高木康、鵜澤龍一、五味邦英:臨床検査、32巻、1309−1315(1988)〕。またmCKは組織中では8量体で存在するが、血液中では経時的に2量体になる。以下、mCKとは、smCKおよび/またはumCKを含む。【0003】これらアイソザイムの電気泳動の移動度は陰極側からmCK(8量体)、mCK(2量体)=CK−MM、CK−MB、CK−BBの順になる。smCKとumCKの移動度は同じである。mCK(2量体)はCK−MMと同じ移動度を示すため保存血液では電気泳動的にCK−MMとして測定されてしまう。その他にアイソザイムではないが、免疫グロブリンが結合したマクロCKも存在する。これらは移動度、免疫対向流法などによりザイモグラムから確認することができる。これらCKのアイソザイムの諸性質を表1にまとめた。【0004】【表1】【0005】臨床検査において総CK、CK−MBの定量が広く行われている。なかでもCK−MBは心筋梗塞のマーカーとして重要である。CK−MBの定量はEIA法、免疫阻害法、電気泳動法等がある。【0006】EIA法はCK−MBだけを特異性高く測定できる反面、専用の機器が必要で迅速性に欠ける。電気泳動法は操作が煩雑で熟練を要する。また、結果を出すまでにデンシトメーターでCK−MBの存在比率を出す必要があり迅速性に欠ける。免疫阻害法は自動分析装置により迅速簡便に測定ができる利点があるが、特異性に欠ける欠点を有していた。【0007】しかし現状では、急性心筋梗塞(以下、AMIと略称することがある)の早期診断が求められるため、免疫阻害法が広く使用されている。この方法は、ヒトCK−Mサブユニットに対する阻害抗体を用いて、Mサブユニットを失活させ、残存するBサブユニット活性を測定するものである。この方法を用いると、CK−MBの他にCK−BB、mCK(2量体+8量体)を測定してしまう。この内CK−BBは、血中にほとんど存在しないため無視できるし、またこれが逸脱する(組織破壊等により、組織から血中に放出される)疾患が少ない。しかし、mCKは健常者の血清中でもCK−MBとほぼ同じ活性量含まれており〔豊田陽子他、生物物理化学、42、175−179(1998)〕〔(星野忠他:生物物理化学、42補冊2、21(1998)〕、さらに肝疾患などの細胞壊死、悪性腫瘍などでmCKの逸脱が起こり、結果の判定を混乱させる。最近では、ロタウイルスによる腸炎、新生児仮死などでもmCKの逸脱が起こることが報告されている〔( 星野忠他:臨床病理、46、総会号、57(1998)〕〔( 金光房江他:臨床病理、46、総会号、56(1998)〕。しかも、この測定方法ではCK−MB活性も約半分阻害されるため、その活性は測定値に2を乗じて算出される。このため、mCK活性の影響は2倍になってしまう。すなわち、従前の免疫阻害法によりCKアイソザイムの酵素活性を選択的に測定する方法は、抗ヒトCK−M阻害抗体を用いてCK−MB活性を測定するものであり、簡便で迅速に測定できるが、この方法ではmCK活性も同時に測定してしまい、正確なCK−MB活性の測定は期待できない。【0008】発明の開示本発明の目的は、mCKの酵素反応作用を選択的に免疫的に排除することにより、mCKの影響を回避して正確で特異性の高い簡便な、所望により自動化も可能なCK−MB活性測定方法を提供することにある。また、本発明の別の目的は、該測定方法に用いる測定試薬を提供することにある。【0009】CK−MB活性を感度よく、簡便に、迅速に、自動化により検出するための測定系を提供することを目的として鋭意研究を重ねた結果、CK−MサブユニットおよびmCKの酵素作用を選択的、免疫的に排除する処理をした後に、CK活性を測定することにより前記の目的を達成できることを見いだし、本発明を完成した。【0010】 すなわち本発明は、以下よりなる。1.免疫阻害法によりクレアチンキナーゼ(CK)アイソザイムの酵素活性を測定する方法であって、クレアチンキナーゼM(CK−M)サブユニットに対する阻害抗体およびミトコンドリア局在クレアチンキナーゼアイソザイム(mCK)に対する阻害抗体を用いて検体を処理し、処理された検体中の残存するCK活性を測定し、測定されたCK活性に基づいてクレアチンキナーゼMBアイソザイム(CK−MB)の活性を求めることを特徴とするクレアチンキナーゼMBアイソザイム(CK−MB)活性測定法。2.CK−Mサブユニットに対する阻害抗体およびmCKに対する阻害抗体を含むCK活性測定用試薬を検体に添加することによって、検体を処理する前項1のCK−MB活性測定法。3.CK−Mサブユニットに対する阻害抗体およびmCKに対する阻害抗体を一つの工程中で同時に作用させる前項1のCK−MB活性測定法。4.mCKに対する阻害抗体とCK−Mサブユニットに対する阻害抗体とを、別々の工程において作用させる前項1のCK−MB活性測定法。5.CK−Mサブユニットに対する阻害抗体を用いて検体に第一の処理を施し、mCKに対する阻害抗体を用いて第一処理された検体に第二の処理を施し、第二処理された検体中の残存するCK活性を測定する前項4のCK−MB活性測定法。6.免疫阻害法によりクレアチンキナーゼMBアイソザイム(CK−MB)の酵素活性を測定するための試薬であって、クレアチンキナーゼM(CK−M)サブユニットに対する阻害抗体およびミトコンドリア局在クレアチンキナーゼアイソザイム(mCK)に対する阻害抗体を含むことを特徴とするCK−MB活性測定試薬。7.前記mCKに対する阻害抗体が、サルコメリックmCK(smCK)およびユビキタスmCK(umCK)から選択される少なくとも1つである前項6のCK−MB活性測定試薬。8.前記CK−Mサブユニットに対する阻害抗体を含有する第一の試薬と、ミトコンドリア局在クレアチンキナーゼアイソザイム(mCK)に対する阻害抗体を含有する第二の試薬とを含む前項6または7のCK−MB活性測定試薬。【0011】発明を実施するための最良の形態本発明は、CKアイソザイム活性の測定法において、阻害抗体を組み合わせて用いることにより、目的とするCKアイソザイム活性を選択的に測定することが可能になることを見出し、この発見に基づいて完成された。【0012】すなわち、第一の実施の形態に従えば、本発明のCKアイソザイム活性測定法は、免疫阻害法によりCKアイソザイムの酵素活性を選択的に測定する方法であって、ヒトCK−Mサブユニットに対する阻害抗体(抗ヒトCK−M阻害抗体)およびヒトmCKに対する阻害抗体(抗ヒトmCK阻害抗体)で検体を処理し、CK−MサブユニットおよびmCKの酵素作用を選択的、免疫的に排除する処理をほどこした後、残存するCK活性を測定することを特徴とする。【0013】第二の実施の形態に従えば、本発明のCKアイソザイム活性測定法は、免疫阻害法によりCKアイソザイムの酵素活性を選択的に測定する方法であって、別々にCK−MサブユニットおよびmCKの酵素作用を選択的、免疫的に排除し、CK−MB活性およびmCK活性をも測定することを特徴とする。すなわち、抗ヒトCK−M阻害抗体を用いてCK−MMの全ての活性およびCK−MBの約半分の活性をそれぞれ阻害して測定を行い、その後抗ヒトmCK阻害抗体を加えてさらに測定を行うことを特徴とする。【0014】第三の実施の形態に従えば、本発明のCKアイソザイム活性測定法は、免疫阻害法によりCKアイソザイムの酵素活性を選択的に測定する方法であって、mCKの酵素作用を選択的、免疫的に排除し、mCK活性を測定することを特徴とする。すなわち、CK活性を測定し、その後抗ヒトmCK阻害抗体を加えてさらに測定を行うことを特徴とする。【0015】本発明の基本原理は、免疫阻害法によるCKアイソザイムの酵素活性を選択的に測定する方法を利用する。一般に、この方法によるCK−MBの活性測定は次のようにして行われる。すなわち、ヒトCK−Mサブユニットに特異的な活性阻害抗体を使用し、血清CKのMMおよびMB中のMサブユニット活性(MBは約半分の活性が阻害される)を阻害したのち、残存するBサブユニット活性を2倍することによりCK−MB活性を測定する。CK−MB活性の測定は、例えば、ヘキソキナーゼ(HK)、グルコース6リン酸脱水素酵素(G−6−PDH)を用いる酵素反応系を利用した紫外部測定法により行われる。この測定法は、下述の反応式(化1)の左行反応によって生成するATPをヘキソキナーゼ(HK)とG−6−PDHからなる共役反応によってNADPHの340nmにおける吸光度増加として測定する初速度測定法である(化2)。【0016】【化1】【0017】【化2】【0018】抗ヒトCK−M阻害抗体を用いるCK−MB活性の測定は、従来法ではmCK活性も同時に測定してしまうため、正確なCK−MB活性の測定が期待できなかったが、本発明では、抗ヒトmCK阻害抗体を用いてmCKの活性をも阻害することにより、実用上十分に正確なCK−MB活性の測定を簡便迅速にできる。【0019】また、本発明は、抗ヒトCK−M阻害抗体を用いてCK−MMの全ての活性およびCK−MBの約半分の活性をそれぞれ阻害して、まず残存するCKアイソザイムの酵素活性を測定し、ついで抗ヒトmCK阻害抗体を添加し、なおも残存するCKアイソザイム活性を測定することにより、CK−MB活性を簡便迅速に測定することができる。また、最初に測定したCKアイソザイムの酵素活性からCK−MB活性の値を差し引くことによりmCKの活性を得ることができる。【0020】具体的には、活性測定を目的とするアイソザイムがCK−MBの場合は、抗ヒトCK−M阻害抗体および抗ヒトmCK阻害抗体で検体を処理し、血清CKのMM、MB中のMサブユニット活性(MBは約半分の活性が阻害される)およびmCK活性を阻害し、残存するBサブユニット活性を測定して、測定値を2倍することによりCK−MB活性とする。なお、CK−BBは血中にほとんど存在しないため無視できる。【0021】一方、活性測定を目的とするCKアイソザイムがCK−MBとmCKである場合は、まず抗ヒトCK−M阻害抗体で検体を処理してCK活性を測定する。ついで抗ヒトmCK阻害抗体で処理して、なお残存するCK活性を再度測定し、測定値を2倍することによりCK−MB活性とする。また、最初の測定で得られたCK活性から、二回目の測定で得られたCK活性を差し引くことにより、mCK活性の値が得られる。このように本発明の測定方法により、同一検体中のmCK活性とCK−MB活性の両方を同時に求めることができる。【0022】mCKの活性のみが測定目的である場合は、CK活性を測定し、ついで抗ヒトmCK阻害抗体で処理して、なお残存するCK活性を再度測定し、最初の測定で得られたCK活性から、二回目の測定で得られたCK活性を差し引くことにより、mCK活性の値が得られる【0023】不要なCKアイソザイムまたはCK−Mサブユニットの活性を取り除くため活性阻害処理する際に用いる上述の阻害抗体は、それぞれ別々に用いて検体を処理してもよいが、同時に用いて検体を処理してもよい。抗ヒトCK−M阻害抗体と抗ヒトmCK阻害抗体が異種動物で作製された抗体である場合は混合すると沈殿などを生成する場合がある。このようなときは一方の動物の免疫グロブリンを固定化したアフィニティーカラムで処理して使用する。より好ましくは、異好性抗体の存在のリスクを避けるためには、別々に検体に作用させることが推奨される。【0024】また、これらの阻害抗体は、CK活性を測定するための酵素反応系に使用する酵素試薬および/または基質液とは別々に調製した試薬として検体の処理に用いてもよいし、あるいは酵素試薬および/または基質液に添加して調製した試薬として用いてもよい。【0025】CK活性の測定は、通常のCK活性測定法により、試薬として例えば国際試薬社製CPK試薬L「コクサイ」を用いて行うことができる。【0026】本発明の測定法に使用する抗ヒトCK−M阻害抗体および抗ヒトmCK阻害抗体は、例えばヤギをヒトCK−MサブユニットまたはヒトmCK画分で常法〔J.Schlegel et al.、J.B.C.,Vol.263,No.32,pp.16942−16953(1988)〕に従って免疫・採取・精製することにより得ることができる。【0027】抗ヒトmCK阻害抗体は具体的には、例えば以下のようにして作製することができる。すなわち、抗原としては、目的とする特異性によっても異なるが、ヒトまたは哺乳類のmCKが用いられる。特異性を高めるためには種特異的な抗原を用いることが好ましい。【0028】ヒトmCKに対して特異的に親和性を有し、且つヒトmCKの酵素活性を特異的に阻害する抗体を得る場合には、該抗原は遺伝子工学的手法によっても調製できる。感作抗原としては、精製mCK蛋白質分子あるいは遺伝子工学的に調製した部分的なアミノ酸配列に基づいた発現蛋白質をリン酸緩衝液(PBS)等の適当な緩衝液中に溶解、あるいは懸濁したものが用いられる。抗原液は通常抗原物質として50〜500μg/ml程度の濃度に調製すればよい。また、ペプチド抗原等、それだけでは抗原性が低い場合は、アルブミンやキーホールリンペットヘモシアニン等の適当なキャリアータンパク質に架橋して用いることが好ましい。【0029】この抗原を免疫感作させる動物としては、マウス、ラット、ウマ、ヤギ、ウサギなどが例示される。好ましくはマウス、より好ましくはBALB/cマウスである。このとき、被免疫動物の抗原への応答性を高めるため、上述の溶液をアジュバントと混合して投与することができる。アジュバントとしては、フロイント完全アジュバント(FCA)、フロイント不完全アジュバント(FIA)、Ribi(MPL)、Ribi(TDM)、Ribi(MPL+TDM)、百日咳ワクチン(Bordete11a Pertussis vaccine)、ムラミルジペプチド(MDP)、アルミニウムアジュバント(ALUM)、およびこれらの組合わせが例示されるが、初回免疫時にFCA、追加免疫時にFIAやRibiアジュバントを使用する組合せが特に好ましい。【0030】免疫方法は、使用する抗原の種類やアジュバント混合の有無等により、注射部位、スケジュールなどを適宜変化させることができる。例えば、被免疫動物としてマウスを用いる場合は、アジュバント混合抗原液0.05〜1ml(抗原物質10〜200μg)を腹腔内、皮下、筋肉内または(尾)静脈内に注射し、初回免疫から約4〜21日毎に1〜4回追加免疫を行い、さらに約1〜4週間後に最終免疫を行う。上述の抗原溶液をアジュバントを使用せずに投与する場合には、抗原量を多くして、腹腔内注射してもよい。抗体価は追加免疫の約5〜6日後に採血して調べる。抗体価の測定は、後述の抗体価アッセイに準じ、通常行われる方法で行うことができる。最終免疫より約3〜5日後、該免疫動物から脾細胞を分離して抗体産生細胞を得る。ポリクローナル抗体を利用する場合は、この採血した血液より血漿を得、自体公知の抗体の精製法を用いて、所望により純度を調整して、製造できる。【0031】抗体は単独または組み合わせることにより、試料中のmCK酵素活性を特異的に阻害し、CK−MB活性を特異的に測定することができる。また、本発明において抗体として、抗血清そのもの、または精製したIgG抗体、さらに抗体をパパイン消化して得られるFabフラグメントを使用することができる。【0032】本発明の方法により測定される検体は特に制限はないが、通常当分野で行われているCK−MBを測定されている方法に適用し得る。【0033】また、本発明においては、本発明の測定法に必要な試薬をキット化または単品で構成してなるCKアイソザイム活性測定用試薬を提供する。ここでいう試薬には、急性心筋梗塞マーカーに用いられているCK−MB測定用試薬を、その一部として利用できるが、これに限定されるものではない。【0034】実施例以下の実施例は本発明を具体的に説明するものであるが、これによって本発明の範囲を制限するものではない。【0035】実施例1ポリクローナル抗体の作製方法(1)ウサギNZW/クリーン(ケアリー)ウサギ、雄、入荷時体重1.25〜1.35kg/匹を入手し、動物飼育チェンバーで標準ペレットを使用して飼育し、任意に給水して飼育した。【0036】(2)免疫原の調製ヒトmCKはヒト心筋組織およびヒト胃組織を用い、R.Roberts et al.、J. B. C.、 Vol.255、 pp.2870〜2877(1980)、およびA.M.Grace et al.、 J. B. C.、 Vol.258、 pp.15346〜15354(1983)に記載されている方法により精製した。約300gのヒト心筋より精製smCKが得られた。同様に約150gのヒト胃より精製umCKが得られた。これらを使用するまで凍結保存した。【0037】(3)免疫方法上記(2)で調製した抗原smCKとumCK各々をRiBiアジュバント(MPL+TDM)で100μg/mlに調製し、激しく混和して均一な懸濁液とした後、3羽ウサギの両鼠径部にそれぞれ200μlずつ、また背中2箇所に50μlずつ投与した。さらに4週間毎に、同様に調製した上記抗原を4回同様の方法により繰り返し投与した。【0038】(4)抗体価測定抗体価の測定に当たっては、定期的に兎耳静脈より少量の全血を採取し、血清を分離した後、55℃で60分間処理することによりウサギ血清中のCK活性を失活させ、使用直前まで凍結保存した。免疫開始よりsmCKとumCKに対する抗体価をmCK酵素活性阻害抗体法により調べた。【0039】すなわち、各兎の血清をPBSで100倍希釈して調製した抗体溶液50μlを96穴マイクロタイタープレートに採取し、50μlのmCK酵素液(PBS緩衝液に0.2U/ml smCKまたはumCKを含む)を加え室温で10分間放置後、100μlのCK発色試薬〔100mMイミダゾール、2mM EDTA、10mM酢酸マグネシウム、2mMアデノシン−5′−二リン酸(ADP)、5mMアデノシン−5′−一リン酸(AMP)、40μM P1,P5−ジ(アデノシン−5′−五リン酸(AP5A)、30mM 1−チオグリセロール、20mM D−グルコース、2mM NADP、3U/mlヘキソキナーゼ、2U/mlグルコース−6−リン酸脱水素酵素、30mMクレアチンリン酸、1mg/mlのニトロブルーテトラゾリウム、3U/mlのダイアフォラーゼ、PH6.6〕を加え、37℃で10分間反応させた。ついで、上記の各穴に50μlの0.2N塩酸を加えて反応を停止させ、波長570nmにおける吸光度を精製水を対照に測定した。さらに、得られた吸光度から、mCKの酵素活性の阻害が認められた場合、基質反応が抑制されるため吸光度の変化量は低く、酵素活性阻害特異抗体の存在を特定することができた。なお、抗体陰性コントロールとしてPBSのみを添加したものを使用し、検体盲検としてmCK酵素液の代りにPBSを使用した。【0040】(5)反応特異性の検討得られた抗ヒトsmCK阻害抗体およびumCK阻害抗体はさらに、ヒトmCKの代りにヒトCK−MBまたはヒトCK−MMを至適濃度に加えた酵素液をそれぞれ調製し、上記と同様の方法によりそれぞれの酵素に対する酵素活性阻害を確認した。【0041】実施例2CK活性測定用試薬として以下の試薬を調製した。酵素試薬:140mMイミダゾール、2.8mM EDTA、14mM酢酸マグネシウム、2.8mMアデノシン−5′−ニリン酸(ADP)、7mMアデノシン−5′−一リン酸(AMP)、14μM P1,P5−ジ(アデノシン−5′)五リン酸(AP5A)、42mM 1−チオグリセロール、28mM D−グルコース、2mM NADP、4.2U/ml ヘキソキナーゼ、2.1U/ml グルコース6リン酸脱水素酵素、pH6.6基質液:150mMクレアチンリン酸二ナトリム分画試薬:酵素試薬に1U/mlの抗ヒトsmCK阻害抗体(ウサギ)またはumCK阻害抗体(ウサギ)を添加して分画液とした。【0042】精製ヒトCK(0.1%BSAを含む生理食塩水)5段階希釈液の20μlに酵素試薬250μlを加え、37℃で恒温とした後、波長340nmにおける吸光度変化量を測定する(A)。さらに基質液100μlを添加2〜3分後より吸光度変化量を測定する(B)。CK活性は以下の計算式(数1)で算出する。【0043】【数1】【0044】次に酵素試薬に代えて分画試薬を用いて同様に操作し、吸光度変化量を測定してCK活性を測定した。CK活性は前述の計算式(数1)で算出する。結果を表2〜表4に示した。この抗体はヒトmCKを阻害し、CK−Mサブユニット、CK−Bサブユニットは阻害しない。【0045】【表2】CK−MM活性(U/L)に与える阻害抗体の影響【0046】【表3】CK−BB活性(U/L)に与える阻害抗体の影響【0047】【表4】smCK活性(U/L)およびumCK活性(U/L)に与える阻害抗体の影響【0048】smCK、umCKのどちらで抗体を作製しても阻害交差性が確認された。従って、以下の実施例は、抗ヒトsmCK阻害抗体を使用して行った。以下の実施例で抗ヒトmCK阻害抗体と表示している抗体は、この阻害交差性を有する抗ヒトsmCK阻害抗体である。【0049】実施例3ヒト健常検体およびヒトmCK陽性検体100μlに生理食塩水、抗ヒトCK−M阻害抗体(ヤギ)、抗ヒトmCK阻害抗体(ウサギ)および2つの阻害抗体を混合したものを各々10μl加えて電気泳動を行った。電気泳動はポルEフィルムシステム(アガロース電気泳動)を使用し、40分間泳動した。泳動後、実施例1で調製したCK発色試薬を泳動したゲルに染み込ませて37℃で30分間インキュベートした。5%酢酸水溶液で反応を停止し、精製水で洗浄後、ゲルを乾燥させてコピーした結果を図1に示す。抗ヒトCK−M阻害抗体だけではmCKを阻害できないためCK−MBとして測定されてしまう。また抗ヒトCK−M阻害抗体と抗ヒトmCK阻害抗体を併用して使用することによりCK−MBが初めて特異的に測定されることが示唆された。【0050】実施例4実施例2の酵素試薬に抗ヒトCK−M阻害抗体(ヤギ)1.0U/ml添加したもの(対照法)とさらに1U/mlの抗ヒトmCK阻害抗体(ウサギ)を添加したもの(本発明)を調製した。CK活性が300U/L以下の検体19例、GPT活性が80U/L以上の肝疾患検体26例についてCK−MB活性を実施例2の操作方法に従って測定して比較検討を行った。CK−MB活性は以下の計算式(数2)により算出する。【0051】【数2】【0052】結果を表5および6に示す。表5の結果よりCK−MB活性の平均値は対照法が13U/Lに対して本発明は7U/Lと約半分になることが分かった。従来、CK−MB活性のカットオフ値は約25U/Lといわれているが、本発明では非特異的反応をするmCK活性を阻害できるため、約10U/Lに設定できる。表6に示すように、肝疾患患者検体は対照法では急性心筋梗塞患者検体でないにもかかわらず7検体が25U/L以上の活性を示した。しかしながら、本発明においてはすべての検体が10U/L以下となった。以上の結果より、本発明はCK−MB活性のカットオフ値が下がることにより急性心筋梗塞に対する早期マーカーとして従来よりも感度および特異性が高くなることが期待される。【0053】実施例5抗ヒトmCK阻害抗体の添加は酵素試薬または、基質液に添加することもできる。さらに基質液および酵素試薬とは別の試薬として抗ヒトmCK阻害抗体液を調製し、抗CK−M阻害抗体を含む酵素試薬と基質液で従来のCK−MB活性測定を行った後、抗ヒトmCK阻害抗体液を添加してmCK活性を差し引いて測定することもできる。この場合の利点として、CK−MB活性以外にmCK活性を求めることがきる。以下にその実施例を示した。【0054】急性心筋梗塞発症後、予後がよかった患者と予後が悪く死亡に至った患者から経時的に採血した検体を用いてCK−MB活性とmCK活性の同時定量を行った。検体20μlに、実施例2の酵素試薬に抗ヒトCK−M阻害抗体を添加した試薬250μlを加え、37℃で恒温とした後、波長340nmにおける吸光度変化量を測定する(A)。次に基質液100μlを添加し、2〜3分後より吸光度変化量を測定する(B)。次に抗ヒトmCK阻害抗体(5.7U/mlを含む100mMイミダゾール緩衝液pH6.6)50μlを加え、2〜3分後より吸光度変化量を測定する(C)。CK−MB活性とmCK活性は以下の計算式(数3)より算出する。また、対照法を用いて求めたCK−MB活性と比較し、結果を表7、8、図2、3に示した。【0055】この結果より予後がよいケースでは急性心筋梗塞発作後ピークに達するまでは対照法と本発明の測定方法に差がみられないが、CK−MB活性値が低下する回復期においては本発明の測定方法の方がより低値になり、正常に復帰するのが早いことが分かる。この原因は、早期においては細胞質由来のCK−MBが逸脱し、その後細胞壊死を伴ってミトコンドリア由来のmCKが逸脱してくるためであると考えられ、予後の経過観察にも有用性が高まることが分かった。また、予後がよい場合はmCK活性値は低く推移するが、予後の悪い場合はmCK活性値が高く推移した。ミトコンドリア酵素は細胞壊死が起こってから血中に逸脱するため、現在はmGOT(ミトコンドリア・グルタミン酸−オキザロ酢酸トランスアミナーゼ)活性が測定されている。しかし、本発明を用いるとCK−MB活性の精密測定を行うと同時に細胞壊死程度を類推して急性心筋梗塞の重篤度および予後の情報を得ることもできる。【0056】【数3】【0057】【表5】CK活性300U/L以下の検体のCK−MB活性測定結果(U/L)【0058】【表6】GPT活性80U/L以上の検体のCK−MB活性測定結果(U/L)【0059】【表7】予後良好例【0060】【表8】予後不良例【0061】産業上の利用の可能性現在、CK−MB活性の測定はCK−MM活性を特異的に阻害する抗体を試薬系に、添加することによりその特異性が改良されているが、mCK活性も測定してしまい、必ずしも心筋由来の特異的なCK−MB活性を測定しているわけではない。本発明では抗ヒトmCK阻害抗体を用い、従来識別することのできなかったmCK活性を特異的に抑制することにより、正確なCK−MB活性の測定が可能となる。本発明の測定法は、抗ヒトmCK阻害抗体を使用し、急性心筋梗塞患者血清中のmCK活性を特異的に阻害することにより真のCK−MB活性値が測定され、より確度の高い急性心筋梗塞の重篤度、病態の把握が可能となり、急性心筋梗塞における早期診断のみならずその治療のモニターが可能となり臨床検査上大きな意義を持つ。【図面の簡単な説明】【図1】 抗ヒトCK−MおよびmCK阻害抗体処理したときの健常人検体およびmCK陽性検体の電気泳動図である。【図2】 急性心筋梗塞(AMI)の予後良好な症例について、対照法(−●−;CK−MB活性+2×mCK活性)で測定したCK活性と、本発明の測定法で測定したCK活性(−○−;CK−MB活性、−△−;mCK活性)とを、AMI発作後の経時的な測定において比較した結果を示す図である。【図3】 急性心筋梗塞(AMI)の予後不良な症例について、対照法(−●−;CK−MB活性+2×mCK活性)で測定したCK活性と、本発明の測定法で測定したCK活性(−○−;CK−MB活性、−△−;mCK活性)とを、AMI発作後の経時的な測定において比較した結果を示す図である。 免疫阻害法によりクレアチンキナーゼ(CK)アイソザイムの酵素活性を測定する方法であって、クレアチンキナーゼM(CK−M)サブユニットに対する阻害抗体およびミトコンドリア局在クレアチンキナーゼアイソザイム(mCK)に対する阻害抗体を用いて検体を処理し、処理された検体中の残存するCK活性を測定し、測定されたCK活性に基づいてクレアチンキナーゼMBアイソザイム(CK−MB)の活性を求めることを特徴とするクレアチンキナーゼMBアイソザイム(CK−MB)活性測定法。 CK−Mサブユニットに対する阻害抗体およびmCKに対する阻害抗体を含むCK活性測定用試薬を検体に添加することによって、検体を処理する請求項1のCK−MB活性測定法。 CK−Mサブユニットに対する阻害抗体およびmCKに対する阻害抗体を一つの工程中で同時に作用させる請求項1のCK−MB活性測定法。 mCKに対する阻害抗体とCK−Mサブユニットに対する阻害抗体とを、別々の工程において作用させる請求項1のCK−MB活性測定法。 CK−Mサブユニットに対する阻害抗体を用いて検体に第一の処理を施し、mCKに対する阻害抗体を用いて第一処理された検体に第二の処理を施し、第二処理された検体中の残存するCK活性を測定する請求項4のCK−MB活性測定法。 免疫阻害法によりクレアチンキナーゼMBアイソザイム(CK−MB)の酵素活性を測定するための試薬であって、クレアチンキナーゼM(CK−M)サブユニットに対する阻害抗体およびミトコンドリア局在クレアチンキナーゼアイソザイム(mCK)に対する阻害抗体を含むことを特徴とするCK−MB活性測定試薬。 前記mCKに対する阻害抗体が、サルコメリックmCK(smCK)およびユビキタスmCK(umCK)から選択される少なくとも1つである請求項6のCK−MB活性測定試薬。 前記CK−Mサブユニットに対する阻害抗体を含有する第一の試薬と、ミトコンドリア局在クレアチンキナーゼアイソザイム(mCK)に対する阻害抗体を含有する第二の試薬とを含む請求項6または7のCK−MB活性測定試薬。


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