タイトル: | 特許公報(B2)_ラネー鉄触媒およびその触媒を用いた有機化合物の水素化方法 |
出願番号: | 2000580745 |
年次: | 2005 |
IPC分類: | 7,B01J25/02,C07B61/00,C07C209/48,C07C211/07,C07C211/12,C07C253/30,C07C255/24 |
マーク ジェイ ハーパー JP 3631141 特許公報(B2) 20041224 2000580745 19991104 ラネー鉄触媒およびその触媒を用いた有機化合物の水素化方法 イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー 390023674 E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY 谷 義一 100077481 阿部 和夫 100088915 マーク ジェイ ハーパー US 09/186,987 19981105 20050323 7 B01J25/02 C07B61/00 C07C209/48 C07C211/07 C07C211/12 C07C253/30 C07C255/24 JP B01J25/02 Z C07B61/00 300 C07C209/48 C07C211/07 C07C211/12 C07C253/30 C07C255/24 7 B01J 21/00〜38/74 EUROPAT(QUESTEL) CAplus(STN) JSTPlus(JOIS) 国際公開第97/037963(WO,A1) 特開2002−529227(JP,A) 11 US1999025951 19991104 WO2000027525 20000518 2002529226 20020910 13 20010501 安齋 美佐子 【0001】本発明は、新規のラネー鉄触媒、その調製、ならびに炭素−炭素多重結合を有する基を含有する不飽和有機基、酸素含有基および還元可能な窒素含有基、特にニトリルの接触水素化におけるその使用方法に関する。さらに、詳細には、限定する意図はないが、本発明は、アジポニトリル(ADN)を6−アミノカプロニトリル(ACN)およびヘキサメチレンジアミン(HMD)に水素化するための改良された触媒および方法を提供する。【0002】(発明の背景)鉄を含有するラネー金属触媒が報告されているが、これらの触媒は、水素化反応において不満足な結果を示した。たとえば、触媒としてのラネー鉄の存在下で、テレフタル酸のジニトリルの水素化を試みたが、単離可能なジアミンを全く与えなかったことが、L.Kh.Freidlin、A.A.Balandin、およびT.A.SladkovaによりDokl.Akad.Nauk SSSR,112,880(1957)に報告されている。その後、「ラネー鉄は低い触媒活性を有する」こと、および「ジニトリルの還元に向けた金属触媒の活性は、Pt、Pd>Ni>Co>Fe、Cuの順で低下する」ことが、L.Kh.FreidlinとT.A.SladkovaによりRuss.Chem.Rev.,33,319(1964)に記述された。R.L.Augustine,Catalytic Hydrogenation,Dekker,New York,1965,32ページには、「ラネー銅およびラネー鉄は、合成有機化学者に多くを提供せず、少数の反応のみが、これらにより影響を受けると報告されているにすぎない。」と記述されている。【0003】米国特許第2,257,814号には、アルミニウム、鉄およびコバルトの合金をアルカリ水溶液でリーチングして、5から10重量%のコバルトおよび95から90重量%の鉄を含有する触媒を提供し、このように調製された穏やかに作用する触媒存在下でのジニトリルの水素化について記述されている。この特許に教示されている触媒組成物への第3の金属の使用は、何ら考えられていない。【0004】米国特許第4,826,799号および第4,895,994号は、それぞれ、ラネー処理により製造され、ポリマーと可塑剤とのマトリクス中でペレット化された触媒を指向し、Al 45〜75重量%と、従来のラネー処理金属、例えば、Ni、Co、Cu、もしくはFe、またはこれらの混合物25〜55重量%からなるラネー処理合金の広範な開示を行っている。これらのラネー触媒は、典型的には、全金属の約2重量%で、たとえばCr、Mo、Pt、Rh、Ru、OsおよびPdにより活性化することが可能である。【0005】米国特許第5,151,543号には、ラネーニッケル、ラネーコバルト、および周期律表第VIB族から選択される金属または金属酸化物で促進されるか、または、周期律表第VIII族の第一鉄金属で促進されるラネーニッケルからなる群から選択されるラネー型触媒を使用して、低圧下において、高収率で脂肪族ジニトリルをアミノニトリルに選択的に水素化する方法が報告されている。従って、この触媒では、鉄は、使用するとしても、低濃度でのみ存在するであろう。【0006】本発明の目的は、様々な有機化合物の低圧における接触水素化に有効なラネー鉄触媒、特に、脂肪族有機ニトリルを有機一級アミンに水素化するのに有効な触媒を提供することである。【0007】(発明の概要)本発明は、鉄、コバルトおよび第3の金属を含むラネー鉄触媒であって、第3の金属が、ニッケル、ロジウム、ルテニウム、パラジウム、白金、オスミウム、イリジウムおよびこの群のいずれかの金属の混合物からなる群から選択され、触媒中の鉄の濃度が乾燥基準で少なくとも30重量%であるが、約70重量%以下であり、触媒中のコバルトの濃度が乾燥基準で少なくとも10重量%から40重量%であり、触媒中の第3の金属の含有量が乾燥基準で約1重量%から6重量%以下であるラネー鉄触媒を提供する。ニッケルが好ましい第3の金属であり、好ましい触媒は、以下の金属濃度を有する:鉄約50重量%、コバルト約15重量%、ニッケル約2重量%。【0008】本発明は、水素の存在下、50から2000psig(13.78MPa)の反応圧力、および25℃から150℃の反応温度において、本発明のラネー鉄触媒と、不飽和有機化合物を接触させることを含む、不飽和有機化合物の水素化のための方法を包含する。【0009】この方法は、オレフィン類、アセチレン類、ケトン類、アルデヒド類、アミド類、カルボン酸類、カルボン酸のエステル類、ニトロ化合物、ニトリル類、およびイミノ化合物からなる群から選択される不飽和有機化合物を水素化するのに有用である。この方法は、ニトリル類、特にアジポニトリルの水素化に特に有用である。【0010】本方法は、穏やかな条件:約50から約1000psig(6.89MPa)の反応圧力および約25から約80℃の反応温度で、有用である。【0011】本方法は、連続法、半回分法、または回分法として実施することができる。【0012】本発明の触媒は、金属の合金をアルカリで処理することにより調製され、その合金は、鉄20から50重量%、コバルト3から30重量%、0.5から3重量%の第3の金属であって、この第3の金属がニッケル、ロジウム、ルテニウム、パラジウム、白金、オスミウム、イリジウムおよびこの群の金属のいずれかの混合物からなる群から選択される第3の金属を含み、残りが、アルミニウム、亜鉛、マグネシウムおよびケイ素からなる群から選択されるアルカリ可溶性金属である。ニッケルが好ましい第3の金属であり、ニッケルの好ましい濃度範囲は0.5から1.5%の範囲である。ニッケルの最も好ましい濃度は約1%以下である。合金の好ましい組成は、鉄約24から34%、コバルト約5から15%およびニッケル約0.5から1%である。【0013】(詳細な説明)本発明のラネー鉄触媒は、合金粉末をアルカリで処理することにより調製され、合金の組成は、鉄20から50重量%、コバルト3から30重量、および、0.5から3重量%の第3の金属であって、該第3の金属がニッケル、ロジウム、ルテニウム、パラジウム、白金、オスミウム、イリジウムおよびこれらの金属のいずれかの混合物からなる群から選択されるものである。触媒組成物の残りは、アルカリに可溶な金属である。アルカリ可溶性金属には、アルミニウム、亜鉛、マグネシウムおよびケイ素が含まれる。アルミニウムが好ましいアルカリ可溶性金属であり、ニッケルが触媒に好ましい第3の金属である。【0014】この合金は、合金インゴットを製造する通常の冶金学的手順によって調製される。所望の粉末形状の合金を得るために、インゴットを粉砕かつ麾砕する。30メッシュのスクリーンを通過する粒径を有するふるい分けられた合金粉末を使用することが好ましい。【0015】合金は、50〜110℃において、10〜30重量%のアルカリ金属水酸化物、好ましくは水酸化ナトリウムの水溶液でこれを処理することにより、活性な触媒に変換される。合金とアルカリ溶液とを混合し、水素の発生が停止した後(通常、2時間以内)、触媒を、脱イオン水で2回または3回、完全に洗浄する。得られた触媒は、これが確実に空気と接触しないように、通常、水中に保存される。本発明の活性な触媒の金属含有量は、乾燥基準で、鉄約30から約70重量%、コバルト約5から約40重量%、ニッケル約1から約6重量%である。触媒組成の残りは、促進剤が添加されたか否か、およびリーチング工程の完全性に依存する。一般に、ある少量のアルミニウムが触媒中に残存する。また、乾燥触媒に対して分析が実施されるため、若干の酸化物が存在する。上記の数値は、酸化物を含まないデータに標準化されている。【0016】鉄およびニッケルからなる触媒と同様に、鉄およびコバルトからなるラネー触媒が報告されている。本発明の発明者は、コバルトと鉄との組み合せは安定な触媒をもたらすが、鉄とニッケルとの組み合せは、活性な触媒をもたらすことを発見した。鉄/ニッケル組み合せの活性がはるかに望ましいが、この組み合せも、短命であり、工業的方法には速すぎる速度にて失活する。本発明者は、正確な濃度範囲内の3金属の組み合せは、活性な触媒および安定な触媒の両者をもたらすことを発見した。本発明の触媒は、この正確な濃度範囲で配合され、意外なことに、鉄/コバルト組み合せに等しいか、それよりもよい安定性と共に鉄/ニッケル組み合せの活性を有する。本発明の触媒の利点を実現するためには、合金中のコバルト濃度は15%程度に、および、ニッケル濃度は3%程度になりうる。本発明では、合金中のコバルトの濃度は、少なくとも5%でなければならず、少なくとも約9%であることが好ましく、同時に、合金中のニッケルの濃度は0.5%でなければならず、1.5%未満であることが好ましいことが要求される。【0017】本発明者は、本発明の触媒において、ニッケルに代わって他の金属を使用できることを発見した。こうした他の金属は、ロジウム、ルテニウム、白金および白金とルテニウムとの混合物である。白金とルテニウムとの好ましい混合物は、白金90重量%である。鉄およびコバルトと共に最大の活性および安定性を達成する、これらの金属の濃度は、ニッケルの濃度と異なってもよく、また互いに異なってもよく、これらの濃度は、合金中で約0.5〜6%の範囲内に入る。【0018】以前に報告されたラネー触媒と違って、本発明の触媒は3金属の組み合せを必要とする。促進剤も本触媒に組み込んでよい。このような促進剤には、ラネー触媒のための公知の促進剤が含まれる。【0019】水素と、不飽和基を含有する有機化合物との反応を促進するために、本発明の触媒を使用することができる。不飽和基には、オレフィン性の基;アセチレン性の基;ケトン類、アルデヒド類、アミド類、カルボン酸類およびエステル類のカルボニル;ニトロ;イミノ;およびニトリル基などがある。アルコール類の還元、イオウ含有有機化合物の水素化分解およびFischer−Tropsch反応にも、本発明の触媒を使用することができる。【0020】本発明の触媒は、ニトリル類の水素化に特に有用である。ニトリルの水素化では、約50psig(0.345MPa)から約2000psig(13.78MPa)の低圧が使用でき、約25℃から約150℃の温度で水素化が十分に進行するため、本発明の触媒は工程コストを最小限にする。本発明の触媒を使用したニトリル類の水素化に好ましい圧力の範囲は、約200psig(1.38MPa)から約1000psig(6.89MPa)であり、好ましい温度は、約60℃から約80℃である。本発明による水素化は、一般に、苛性ソーダまたは他の強アルカリの存在を必要としない。【0021】本発明による水素化は、液体アンモニア、アンモニア水(実施例2におけるような)、1から4個の炭素原子を有する脂肪族アルコール(実施例3におけるような)または4から10個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素のような溶媒の存在下で、実施することができる。1種または複数種の溶媒が存在することにより、ジニトリル類の水素化において、アミノニトリル類に対する選択性を改善することができる。アジポニトリル(ADN)の水素化では、ジニトリル1モル当たり1モルより多い量の溶媒を使用してもよく、ADN 1モル当たり約1から約5モルの溶媒を使用することが好ましい。【0022】本発明の方法は、適切な反応器内で、回分式、半回分式または連続式で運転することが可能である。商業生産には、連続方法が好ましい。ACNおよびHMDを生成するためのADNの水素化では、本発明の触媒は、低い失活速度を有し、上首尾の連続商業プロセスに必要な安定した反応速度および生成物の分布を提供する。【0023】ニトリルの連続水素化における潜在的使用のための触媒の安定性は、回分反応で作成した速度データから評価することができる。したがって、アジポニトリルの水素化では、反応は、一次速度の関係に従う。一次反応パターンからの経時的な負の偏差は、触媒活性の失活(安定性の喪失)を示す。実験的には、実施した方法で収集した最初の2、3のデータポイントに基づく最小二乗法を使用して、一次速度線をプロットする。反応全体にわたる実験データポイントが、この一次速度線によく適合する場合には、図1に例示されるように、触媒は安定であり、失活を示さないが、実験データポイントのプロットが負の偏差(減少勾配)を示すとき、触媒の失活が起きている。触媒失活を図3に示す。以下の実施例に示す通り、本発明の触媒は、顕著な安定性を示す。【0024】本発明による連続水素化を実施するのに有用な反応器には、一般に、従来の何れの水素化反応器も含まれる。かかる反応器の例には、プラグ流れ反応器、連続攪拌タンク反応器、およびバブルカラム反応器などが挙げられるが、これらに限定されない。バブルカラム反応器の例であるが、この反応に限定されないものが米国特許第4,429,159号に記載されている。プラグ流れ反応器および連続攪拌タンク反応器の説明が、Octave Levenspiel著「Chemical Reaction Engineering」と題する本に詳細に記述されている。【0025】実施例3および4において以下に説明されるアジポニトリルの連続水素化は、連続攪拌タンク反応器(CSTR)、すなわちオートクレーブエンジニアーズ(Autoclave Engineers)により設計され、製造された300ccオートクレーブ内で実施された。これは、Hastelloy−Cで組み立てられており、300℃において約1500psig(10.34MPA)のその最大許容作動圧力を有していた。中空軸に据え付けられ、電動機で駆動される、磁気により連結された羽根車を用いて、反応器内での混合を実施した。400ワット外部バンドヒーターで反応器を加熱した。【0026】これらは、連続運転で失活することなく、長期安定性を与えるため、本発明の好ましいラネー金属触媒は、鉄25から45重量%、コバルト5から15重量%、ニッケル0.7から1.5重量%を含み、残りがアルミニウムのようなアルカリ可溶性金属である合金から調製されるものである。ニッケル含量は、特に重要である。これは、安定性が約2%より高いニッケル濃度で低下するためである。ニッケル1%を含有する合金から製造される好ましい触媒組成物の長期安定性が、実施例3の連続運転により証明され、一方、実施例7は、5%のニッケル含有量では、より低い安定性の触媒になることを証明している。【0027】さらに、本発明は、鉄20から50重量%、コバルト3から30重量%、および第3の金属0.5から3重量%を含む金属合金であって、該第3の金属がニッケル、ロジウム、ルテニウム、パラジウム、白金、オスミウム、イリジウムおよびこれらの金属のいずれかの混合物からなる群から選択される金属合金から調製されるラネー鉄触媒の存在下で、ニトリルをガス状水素と接触させ、引き続き、ニトリル、水素、および触媒を攪拌して一級アミンを形成することを含む、有機ニトリルの水素化方法を提供する。【0028】本発明の方法には低圧が好ましいが、本方法はより高圧で実施してもよい。本発明の方法および触媒には、2000psig(13.78MPa)を超える圧力を使用することができるが、このような高圧は費用効果がない可能性がある。【0029】以下の実施例は本発明を例を挙げて説明するものであるが、本発明を限定することを意図するものではない。【0030】(実施例)実施例1この実施例では、第3の金属がニッケルであり、アルカリ可溶性金属がアルミニウムである、本発明の触媒の調製について例を挙げて説明する。【0031】黒鉛るつぼに、アルミニウム52.20gを入れた。次いで、このるつぼを絶縁するためにポップコーン状の石英を部分的に詰めた石英カップに入れた。この内容物が入った石英カップを、誘導炉の誘導コイルの内側に入れた。アルミニウムが溶融したとき、鉄チップ26.10g、コバルトチップ7.83gおよびニッケルショット0.87gの混合物を、溶融アルミニウムに注意深く加えた。得られた溶融混合物を、黒鉛棒で攪拌した。炉を閉め、電源を2分間入れた。炉を開け、溶融物を黒鉛棒で再度攪拌し、炉を再度閉じ、さらに2分間、電力を印加した。次いで、炉への電力を止め、炉を開けた。黒鉛るつぼをその溶融内容物とともに石英カップから取り出し、溶融金属合金を、黒鉛るつぼから、炉内に置かれた黒鉛冷却用プレート上に注いだ。この合金を約10分間冷却し、硬化させた後、これを黒鉛冷却用プレートから取り除き、これが室温になるまで水中で冷却した。【0032】冷却された合金を乾燥させ、粉砕し、これらの最長寸法が<5mmの破片を得、そして直径1インチの鋼製の球を使用して遊星ボールミル内で粉砕した。粉砕された粉末を、30メッシュのふるいを使用して選別した。選別された合金粉末は、ラベルを張った容器内で保存され、活性化できる準備が整っていた。【0033】最初に合金粉末5gを水50gと混合し、続いてこの混合物を攪拌しながら約85℃に加熱することにより、この合金を活性化した。50重量%の水酸化ナトリウム水溶液60gを攪拌された合金スラリーに、注意深く加え、90℃で30分間、攪拌を続けた。次いで、攪拌を止め、触媒を沈降させた。液体をデカンテーションし、100mlずつの脱イオン水で3回、触媒を洗浄した。得られた、洗浄された触媒を、5重量%の水酸化ナトリウム溶液100gに加え、この混合物を90℃で30分間攪拌した。液体をデカンテーションすることにより、触媒を液体から分離し、次いで、これを中性(EM ScienceからのColorpHast(登録商標)pH 0〜14試験紙で測定したとき、pH7)になるまで、100mlずつの脱イオン水(通常約5回分)で連続して洗浄した。活性化された触媒を水中で保存した。【0034】得られた触媒は、乾燥したとき、鉄51.1%、コバルト15.4%、ニッケル2.0%およびアルミニウム2.9%を含有していた。【0035】実施例2この実施例では、アジポニトリルの水素化における、実施例1で調製した触媒の使用について、例を挙げて説明する。【0036】100mlの、Parr Instrument Company Hastelloy−c攪拌オートクレーブを水素化に使用した。オートクレーブ反応器カップに、実施例1の手順で調製された湿った触媒2.0gおよび30%水酸化アンモニウム水溶液26.2gを充填した。反応器カップを反応器の頂部に固定し、300psig(2.07MPa)の窒素で反応器を加圧し、次いで水素でパージした。【0037】反応器内容物を200psigの水素圧下で75℃に加熱した後、アジポニトリル10.8g、メタノール5.0gおよび1−メチル−2−ピロリジノン(NMP)0.5gの混合物を、500psig(3.45MPa)の水素圧下で75mlの添加用シリンダーから注入した(NMPをGC分析用内部標準として加えた)。【0038】1000mlの水素供給用貯蔵容器から測定される、水素の取り込みが81psigになるまで、温度75℃および水素圧500psigを維持した。反応時間は312分であった。81psigの水素の取り込みは、反応の終端を表すと考えられた。【0039】主要反応成分の濃度プロフィールを作成するために、水素化の間、反応器から反応混合物の試料(0.5ml)を定期的に採取し、GCで分析した。【0040】反応の終点で、反応混合物を20℃に冷却し、オートクレーブを排気し、生成物を放出させた。【0041】GC分析データは、ADN反応率は150分で95%であることを示した。74%のADN反応率で、ACN53%およびHMD9%が形成されており、ACNへの選択性(Mares等,J.Catal.,112,145−156,1988に定義されている)は72%であった。74%のADN反応率における副生成物濃度は約4%であり、副生成物は、ビス−ヘキサメチレントリアミンおよび微量のヘキサメチレンイミンおよびテトラヒドロアゼピンを含んでいた。【0042】一次反応速度定数は、1.121hr−1であった。図1に示されるように、一次ADN消失に関するデータポイントは一次速度線に当てはまり、良好な触媒安定性を示した。【0043】実施例3この実施例では、ADNの連続水素化について、例を挙げて説明する。【0044】熱電対インサート、ラプチュアディスク、および、反応器に液体を添加するため、および生成物を反応器から回収するために、それぞれ設計された、5μmステンレス鋼フリットを取り付けた、2つの1/8インチの浸漬脚部を備えた300ccの連続攪拌タンク反応器を使用した。【0045】この反応器に、120グラムのメタノール、苛性溶液(50%水酸化ナトリウム)0.6ml、および15グラムの実施例1の湿った活性化された触媒(乾燥重量7.5g)を充填した。【0046】反応器を密閉し、窒素を数回フラッシュし、圧力は1000psig(6.89MPa)で試験をした。漏れがないことを確認した後、反応器を75℃に加熱し、攪拌器のスイッチを入れた(1200rpm)。所望の反応温度が達成されるとすぐに、背圧制御装置を調整することにより反応器圧を1000psigに設定し、攪拌器の中空軸を介して水素を給送した。反応器内への水素流量を計量し、ブルックス(BROOKS)マスフロー制御装置でモニタリングした。水素流速を1分あたり、600標準立法センチメートルに設定した。【0047】次いで、ISCOシリンジポンプを使用して、ADNおよびアンモニアを、それぞれ連続的に1時間あたり12グラムの速度で、1時間あたり1グラムの速度の水と共に反応器に加えた。反応器内での生成物のホールドアップ時間は5.0時間であった。【0048】生成物を、下降タンクを介して反応器に接続された1リットル生成物受け器に回収した。反応が進むにつれて、試料を一定間隔で採取し、ACN、HMD、ADNおよび副生成物(BYP)についてGCで分析した。ACN、HMD、およびBYPの生成を示す分析結果を、日にちで表した実施時間の関数として図2に示す。【0049】約166時間および766時間に装置の問題により生じた異常(図2参照)を除き、連続水素化を、安定して937時間(39日)、すなわち実験実施の最後まで続行した。668時間に、温度を75℃から80℃に上昇させ、716時間に、温度を再び90℃まで上昇させ、実験の残りの間、この温度で維持した。80℃および90℃で、反応は75℃のときと本質的に同様に進行しつづけた。この連続的実験の結果を図2にグラフで示す。【0050】実施例4この実施例では、n−ブチロニトリルの水素化について例を挙げて説明する。 実施例1の活性化された触媒を使用した。実施例2に記載の反応器手順を用いて、湿った触媒1.00g、30%水酸化アンモニウム水溶液26.2gを使用し、n−ブチロニトリル10.8g、1−メチル−2−ピロリドン0.50g、およびメタノール5.00gを充填した。水素の取り込みが115psig(0.79MPa)になるまで(355分)、圧力500psig(3.45MPa)下、75℃で、水素化を実施した。【0051】GCによる反応混合物の分析から、73%のn−ブチルアミンと一緒に、2%のジ(n−ブチル)イミンおよび2%のジ(n−ブチル)アミンが副生成物として生じることが示された。一次反応速度定数は0.545hr−1であった。反応速度は、反応の355分間、一次速度線に従い、触媒の失活を全く示さなかった。【0052】例5(比較例)重量で、アルミニウム60部、鉄38部、およびコバルト2部を含有する合金を調製し、水酸化ナトリウム水溶液で処理して、米国特許第2,257,814号の実施例1に記載の、活性化触媒を得た。【0053】実施例2の反応器手順に従って、この活性化された触媒の存在下でADNを水素化した。この反応はACNおよびHMDを生成したが、反応速度は、実施例2で観測されたものよりはるかに遅かった。【0054】一次速度定数は僅か0.088hr−1であったが、本発明の触媒を使用すると、反応速度は1.121hr−1であった。303分の反応時間後、ADN変換率は僅か34%であったが、実施例1の本発明の触媒を使用すると、僅か150分後に、ADN変換率は95%であった。【0055】例6(比較例)実施例1の手順を使用して、アルミニウム60重量部、鉄30重量部、コバルト5重量部、およびニッケル5重量部からなる合金を調製した。次いで、この合金を粉末にし、水酸化ナトリウム水溶液で処理することにより、活性なラネー金属触媒に変換した。【0056】実施例2の手順に従って上記の触媒を使用し、ADNを水素化した。500ml水素供給貯蔵容器から測定される水素取り込みが145psigになるまで、75℃および500psig(3.45MPa)水素圧という反応条件を維持した。【0057】反応時間は320分であり、その時点でADN変換率は90%であった。73%のADN変換率では、ACN54%およびHMD12%が形成していた。しかし、触媒失活が、約100分の反応時間で始まることが記録されたこの失活は、一次速度線と比較して、反応時間に対するln(A/A−X)のプロットの減少勾配により示され、これを図3に示す。ln(A/A−X)の表現において、Xは、時刻tにおける変換されたADNの重量%であり、Aは、時刻0におけるADNの重量%(通常100)であり、lnは自然対数を表す。【0058】例7(比較例)実施例6の活性化された触媒を使用して、実施例2の実験の連続操作を繰返した。この2つ目の実験結果を図4にグラフで示す。この結果から、触媒の安定性が不十分であることが示された。【0059】実施例8アルミニウム60重量部、鉄24重量部、コバルト15重量部、およびニッケル1重量部を含有する合金を調製し、実施例1に記載の通りに水酸化ナトリウム水溶液で処理することにより、活性なラネー金属型触媒に変換した。【0060】実施例2の手順に従って、この触媒の存在下で、ADNを水素化した。500ml水素供給貯蔵容器から測定される水素取り込みが115psigになるまで、75℃および500psig(3.78MPa)水素圧という反応条件を維持した。総反応時間は303分であり、その時点でADN変換率は91%であった。62%ADN変換率では、ACN42%およびHMD4%が6%の副生成物と共に形成していた。ADN消失に関する一次速度線に従う安定した反応速度によって示される通り、触媒失活は全く認められなかった。これは、反応時間に対するln(A/A−X)の直線プロットにより示される。一次反応速度定数は0.473hr−1であった。【0061】実施例9以下の表は、ADNの水素化における本発明の触媒の使用を表す。全ての反応をl00℃で実施し、試料Aを除き、総圧力は2000psig(13.78MPa)であった(アンモニア分圧と水素分圧の和)。試料Aは、総圧力1000psig(6.89MPa)で実施した。【0062】【表1】【0063】表1のデータは、2000psigまでの圧力での触媒の使用を示す。上記反応の生成物混合物中に生じた不純物を、ポーラログラフィで測定した。本発明の触媒の場合、これらの不純物は、市販のラネーニッケル触媒、ラネーニッケル2400によって生じる不純物より、平均して、約5倍少なく、ラネーコバルト2724によって生じる不純物のレベルより、平均して、約8倍少なかった。これらの市販の触媒は両者共に、W.R.Grace,Davison Chemical Division,Chattanooga,TNから入手可能である。【0064】以下の実施例は、本発明の触媒組成物中の第3の金属としてニッケル以外の金属の使用および活性について例を挙げて説明する。周期律表のVIII族の全ての金属が、本発明で使用でき、且つ本発明の利益を提供するが、以下の実施例が示すとおり、鉄およびコバルトと組み合わされたとき公知のラネー触媒用促進剤全てが、許容し得る活性を示すとは限らない。【0065】例10(参考例)アルミニウム60重量部、鉄30重量部、コバルト9重量部およびロジウム1重量部を含有する合金を作製し、実施例1に記載の通りに水酸化ナトリウム水溶液で処理することにより、活性なラネー鉄触媒に変換した。【0066】実施例2の手順に従って、この触媒の存在下で、ADNを水素化した。500ml水素供給貯蔵容器から測定される水素取り込みが128psigになるまで、75℃および512psig(3.53MPa)水素圧という反応条件を維持した。総反応時間は78分であり、その時点でADN変換率は96%であった。82%ADNの変換率で、ACN55%およびHMD8%が11%の副生成物と共に形成していた。ADNの消失に関する一次速度線に従う安定した反応速度によって示される通り、触媒の失活は全く認められなかった。一次速度定数は2.813hr−1であった。【0067】例11(参考例)アルミニウム60重量部、鉄30重量部、コバルト9重量部およびルテニウム1重量部を含有する合金を調製し、実施例1に記載の通りに水酸化ナトリウム水溶液で処理することにより、活性なラネー鉄触媒に変換した。【0068】実施例2の回分式手順に従って、この触媒の存在下で、ADNを水素化した。500ml水素供給貯蔵容器から測定される水素取り込みが155psigになるまで、75℃および509psig(3.51MPa)水素圧という反応条件を維持した。総反応時間は231分であった。87%のADN変換率で、ACN52%、HMD8%および9%の副生成物が形成していた。ADN消失に関する一次速度線に従う安定した反応速度によって示される通り、触媒の失活は全く認められなかった。一次速度定数は1.165hr−1であった。【0069】例12(参考例)アルミニウム60重量部、鉄30重量部、コバルト9重量部、白金0.9重量部およびロジウム0.1重量部を含有する合金を調製し、実施例1に記載の通りに水酸化ナトリウム水溶液で処理することにより、活性なラネー鉄触媒に変換した。【0070】実施例2の手順に従って、この触媒の存在下で、ADNを水素化した。500ml水素供給貯蔵容器から測定される水素取り込みが139psig(0.96MPa)になるまで、75℃および507psig(3.49MPa)水素圧という反応条件を維持した。総反応時間は305分であり、その時点で、ADN変換率は99%であった。84%のADN変換率で、ACN46%およびHMD8%が、10%の副生成物と共に形成していた。ADN消失に関する一次速度線に従う安定した反応速度によって示される通り、触媒の失活は全く認められなかった。一次速度定数は0.794hr−1であった。【0071】例13(比較例)以下の合金を作製し、実施例1に記載の通りに水酸化ナトリウム水溶液で処理することにより、ラネー鉄触媒に変換した:【0072】【表2】【0073】上記の合金から得られた活性化された各ラネー触媒を用いて、75℃から90℃、および500psig(3.45MPa)水素圧で、ADNを水素で処理した。これらの触媒のいずれを用いても、水素の取り込みは全く起こらなかった。【図面の簡単な説明】【図1】実施例2の触媒の理論上の一次速度線と比較した、実施例2の安定な触媒に関するADNの消失を示す図である。【図2】実施例3に記載の連続作業の生成物分布を示す図である。【図3】触媒の理論上の一次速度線と比較した、実施例6の不安定な触媒に関するADNの消失を示す図である。【図4】実施例7の不安定な触媒の生成物分布を示す図である。 鉄、コバルト、およびニッケルを含む不飽和有機化合物の水素化用のラネー金属触媒であって、触媒中の鉄の濃度が乾燥基準で51.1重量%であり、触媒中のコバルトの濃度が乾燥基準で5から15.4重量%であり、触媒中のニッケルの濃度が乾燥基準で4重量%以下であることを特徴とする、不飽和有機化合物の水素化用のラネー金属触媒。 コバルトの濃度が9から15.4重量%であることを特徴とする請求項1に記載の触媒。 前記ニッケルの濃度が2重量%であることを特徴とする請求項1に記載の触媒。 不飽和有機化合物を水素化する方法であって、水素の存在下、50から2000psig(0.345〜13.78MPa)の反応圧力および25から150℃の反応温度で、不飽和有機化合物を、請求項1に記載のラネー金属触媒と接触させることを含むことを特徴とする方法。 前記不飽和有機化合物がオレフィン類、アセチレン類、ケトン類、アルデヒド類、アミド類、カルボン酸類、カルボン酸のエステル類、ニトロ化合物、ニトリル類、およびイミノ化合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項4に記載の方法。 前記不飽和有機化合物がニトリル基を含む化合物であることを特徴とする請求項4に記載の方法。 反応圧力が50から2000psig(0.345〜13.78MPa)であり、反応温度が60から80℃であることを特徴とする請求項6に記載の方法。 前記方法が連続式であることを特徴とする請求項4に記載の方法。 前記方法が回分式または半回分式であることを特徴とする請求項4に記載の方法。 前記ニトリルを含む化合物がアジポニトリルであることを特徴とする請求項6に記載の方法。 金属の合金をアルカリで処理することにより調製される不飽和有機化合物の水素化用のラネー金属触媒であって、前記合金が、鉄24から34重量%、コバルト5から15重量%、および0.5から1重量%のニッケルを含み、混合物の残りが、アルミニウム、亜鉛、マグネシウムおよびケイ素からなる群から選択されるアルカリ可溶性金属であることを特徴とする、不飽和有機化合物の水素化用のラネー金属触媒。