タイトル: | 特許公報(B2)_高濃度モノエチレングリコールの製造方法 |
出願番号: | 2000574052 |
年次: | 2010 |
IPC分類: | C07C 29/80,C07C 31/20,C07C 29/10 |
アドリアン,ティル ベスリング,ベルント ハッセ,ハンス ヴァンザント,フランス タイス,ゲールハルト JP 4427189 特許公報(B2) 20091218 2000574052 19990921 高濃度モノエチレングリコールの製造方法 ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア 508020155 BASF SE 江藤 聡明 100100354 アドリアン,ティル ベスリング,ベルント ハッセ,ハンス ヴァンザント,フランス タイス,ゲールハルト DE 198 43 652.1 19980923 20100303 C07C 29/80 20060101AFI20100210BHJP C07C 31/20 20060101ALI20100210BHJP C07C 29/10 20060101ALN20100210BHJP JPC07C29/80C07C31/20 AC07C29/10 C07C 29/80 C07C 31/20 C07C 29/10 特開昭49−094613(JP,A) 特開昭51−125308(JP,A) 特開平02−184644(JP,A) 特開昭56−090029(JP,A) 特開昭57−080335(JP,A) 特表2002−526462(JP,A) 特開2001−031600(JP,A) 4 EP1999006967 19990921 WO2000017140 20000330 2002526462 20020820 11 20060424 近藤 政克 【0001】本発明は、高濃度モノエチレングリコールを製造する方法に関する。【0002】モノエチレングリコールは、エチレンオキシドを加水分解し、脱水し、そして精製蒸留することにより工業的に製造される。エチレンオキシド(以後、「EO」と省略する)加水分解の選択性を改善するために、加水分解反応器は、大過剰の水(水:EO質量比=4:1〜15:1)を使用して運転される。これにより、特にジエチレングリコール、トリエチレングリコール等の高級グリコールの留分を抑制することが可能となる。この加水分解反応器は、通常、120℃〜250℃の範囲の温度及び30〜40バールの範囲の圧力で運転される。加水分解生成物を最初に脱水して100〜200ppmの残留水分含有量とし、その後、各種グリコールに純粋な状態で分離する。【0003】 脱水は、一般的に、圧力漸変塔(pressure-graduated column)のカスケード状装置群で減圧して行われる。熱を集中させるため、一般的に、第1加圧塔の底部リボイラーのみが外部スチームで加熱される一方、他の全ての加圧塔はその手前の塔の蒸気で加熱される。給送材料(feed)は、第1プレートより下側の箇所で各塔に送り込まれる。なぜなら、水及びグリコールを分離するためのストリッピング部を必要としないからである。加水分解反応器の溶出物の水含有量及び第1塔の底部リボイラーで使用される外部スチームの圧力/温度水準に応じて、加圧脱水カスケード状装置群は2〜7個の塔を有する。加圧脱水工程に次いで、ストリッピング部を具備した塔で真空脱水工程が一般的に行われる。脱水により得られた水は、加水分解反応器の上流側に戻される。グリコールの脱水処理溶液は、複数の塔で純粋な物質に分離される。モノエチレングリコール、ジエチレングリコール及びトリエチレングリコールは、それぞれ塔頂生成物として回収されるが、他の全ての高級グリコールは、最終塔の底部生成物として、ポリエチレングリコールとして知られている混合物の状態で得られる。【0004】慣用のグリコールプラントは、生成物流の他に、別の単一の出口、即ち第2加圧脱水塔の底部リボイラーでのアセトアルデヒドパージのみを通常有している。そこで、加熱に使用される第1塔の蒸気の未凝縮留分がこの系から取り除かれる。従って、水/EO流によりグリコールプラントに運搬されるか、又は副反応の結果としてグリコールプラントで形成される副成分(secondary component)を、アルデヒドパージ又は生成物流を経由してのみこの系から取り除くことができる。後者は、生成物の品質を害するので、望ましくない。【0005】ここで、グリコールプラントは、その主機能、特に脱水及び精製蒸留のエネルギー及び資本経費を低減させる観点からのみ最適化されていた。最近、モノエチレングリコール製品の品質に対して、特に副成分の水準に関して、益々強い要求が寄せられている。2種類のモノエチレングリコール製品の特性が存在する:即ち、冷却水としての使用に対する、要求の低い工業銘柄(不凍剤の銘柄)、及び繊維製品に使用するための、要求の厳しい繊維銘柄。繊維銘柄の正確な規格は取引先によって異なるが、青色MBTH錯体として分光光度測定的に分析され、アセトアルデヒドとして見なされる遊離アルデヒドの場合、一般的に、7〜20ppmの範囲で観察され、そして最小UV透過の場合、一般的に、220nmで76%〜80%及び275nmで90%〜95%で観察される。遊離アルデヒド測定値に寄与するものは、特にホルムアルデヒド、アセトアルデヒド及びグリコールアルデヒドである。UVスポイラーして公知の、UV活性物質は広くは知られていないが、1ppm未満の濃度でさえ規格を壊すものである。例としては、アクロレイン及びクロトンアルデヒドが挙げられる。【0006】JP−A60,089439では、不活性ガスを供給して、真空蒸留することによるモノエチレングリコールの精製方法を開示している。この窒素流は、副成分の大部分を取り除き、繊維製品に好適な高濃度グリコールを残す。しかしながら、この方法には、多量の窒素が副成分の効果的な除去に必要であるという不都合を有する。これにより、流出ガス中の望ましくない生成物が低減し、そして蒸留塔に非常に大きな流体力学的応力をもたらす。【0007】DE−A−1942094では、ストリッピング塔でスチーム蒸留によるモノエチレングリコールの精製方法を開示し、その際、このスチームは、モノエチレングリコールに関して、不純物の揮発性を増大させる。【0008】CA−C−133050では、ビスルフィトイオンを添加し、次いでアニオン交換樹脂で処理することによるモノエチレングリコールの精製方法を開示している。【0009】副成分の形成が、装置設計の分野における特別な手段及びこの装置に使用される構成材料により低減すると言われている、モノエチレングリコールの精製方法もある。DE−A−19602116では、表面が還元リン化合物で処理された装置でモノエチレングリコールを精製する方法を開示している。しかしながら、上述の方法では、添加剤か、又は高濃度モノエチレングリコールを回収するための設備に基づいたさらなる手段を必要とする不都合を有する。【0010】従って、本発明は、添加剤又は特定の構成材料を使用することなく、高濃度モノエチレングリコールを回収する簡易な蒸留法を提供することにある。規格を破壊する副成分は、1質量%未満のグリコール含有量を有する、主に水溶性の廃流としてこの系から取り除かれ、そしてこの廃流中の副成分は10〜100倍に濃縮される。なぜなら、さもなければ多量の廃水が形成されるからである。【0011】 本発明者等は、上記目的がエチレンオキシドの加水分解生成物を加圧脱水し、真空脱水し、次いで精製蒸留することによって高濃度モノエチレングリコールを蒸留回収する方法であって、上記加圧脱水のための加圧脱水塔又はカスケード状装置群の内の少なくとも第1加圧脱水塔が、少なくとも1段の分離段、好ましくは2〜10段の分離段、特に好ましくは3〜6段の分離段を備えるストリッピング部を有し、かつストリッピング部を有する加圧脱水塔からの塔頂流の一部が、この回収系から取り除かれることを特徴とする方法により達成されることを見出した。【0012】規格を破壊する副成分は、本発明の方法において所定の箇所で特に効果的に除去されることが確認された。この方法でこれらの箇所を確認することは、とるにたらない事柄でない。なぜなら、複雑な相平衡により、ここでは副成分の挙動を充分に確信して評価できないからである。このような理由から、慣用の大規模工業プロセスでは、極低沸点の副成分、即ち第2加圧脱水塔の底部リボイラーでのアセトアルデヒドパージ用の極めて雑な設計の出口(流出口)のみを有している。副成分の挙動は広く知られておらず、かつプロセス設計段階で考慮に入れられていなかったので、この出口は最適化されていない。【0013】ここで、この成分(副成分)は、その沸点範囲の点で、3種類に細分される:1.水の沸点未満の揮発性を有する低沸点物(特に、アセトアルデヒド、純水中のホルムアルデヒド、アクロレイン);2.水とモノエチレングリコールとの間の揮発性を有する中沸点物(特に、ホルムアルデヒドのグリコール含有水溶液、ホルムアルデヒドの無水モノエチレングリコール、グリコールアルデヒド、クロトンアルデヒド);3.モノエチレングリコールより低い揮発性を有する高沸点物(特に、比較的高分子量のアルデヒド、UVスポイラー)。【0014】 本発明によると、加圧脱水工程における副成分、特に低沸点物の除去が改善されている。このために、加圧脱水のための加圧脱水塔又はカスケード状装置群の内の少なくとも第1加圧脱水塔が、少なくとも1段の分離段、好ましくは2〜10段の分離段、特に好ましくは3〜6段の分離段を備えるストリッピング部を有し、そしてストリッピング部を有する加圧脱水塔の塔頂流の一部をこの(回収)系から取り除く。【0015】 慣用の大規模プロセスは、第2加圧脱水塔の底部リボイラーでアセトアルデヒドパージを用いて行われる:即ち、ここでは、第1加圧脱水塔の蒸気が実質上凝縮され、その際、全蒸気に対して約1〜5質量%の未凝縮留分がこの系から取り除かれる。残った蒸気を、必要により別の熱交換器で後凝縮し、そして凝縮熱を処理全体において適当な箇所で利用しても良い。しかしながら、この慣用溶液は、アセトアルデヒドパージを介して、蒸気の一部として第1加圧脱水塔を離れた副成分のみを取り除くであろう。これは、特にホルムアルデヒドの場合に適当でない。なぜなら、グリコール水溶液中のホルムアルデヒドの揮発性は、グリコール含有量を増大させて、特にホルムアルデヒドと水及びグリコールとの化学反応の結果、低下するからである。ホルムアルデヒドを加圧脱水塔のグリコール含有底部生成物から分離するために、加圧脱水塔又はカスケード状装置群の少なくとも第1加圧脱水塔は、少なくとも1段の分離段、好ましくは2〜10段の分離段、特に好ましくは3〜6段の分離段のストリッピング部を必要とする。ホルムアルデヒドを第1塔の純粋な水溶性蒸気に移した場合のみ、アセトアルデヒドと共にこの設備からパージ処理することができる。ストリッピング部におけるホルムアルデヒドの効果的な除去は、加圧脱水塔、又はカスケード状装置群の第1加圧脱水塔の温度及び対応する圧力、及び反応器溶出物の水分含有量と共に改善される。底部リボイラーがDE−C3338488に開示されているような「分割ベース」(divided base)として設計される場合、ストリッピング部においてさらに2段のプレートを節約することができる。【0016】この系から取り除かれる副成分、特にアセトアルデヒド又はホルムアルデヒドの量は、取り除かれる廃水の量の応じて異なる。しかしながら、第2脱水塔の底部リボイラーで凝縮されない蒸気の量を、エネルギー系を集中させる理由から及び制御工学の抑制を考慮して、無限に増大させるべきではないということを考慮しなければならない。本発明者等は、本発明の方法の特に好ましい様式を見出し、これにより、凝縮蒸気からの副成分のさらなる除去が、スチームストリッピングにより可能となる。次いで、副成分で充填されたストリッピング流を、この方法の適当な箇所でそのエネルギー含有量を利用することができる。従って、スチームストリッピングは、さらなるエネルギーを必要とせず、さらなる装置でのみ必要とする。この系からの副成分の除去は、ストリッパーからの溶出物を第1脱水塔に還流する場合に特に効果的である。なぜなら、この循環により、第1加圧脱水塔の頂部及びストリッパーにおいてアルデヒド含有量を増大させるので、さらに除去速度も増大するからである。【0017】給送点より下側の温度は80℃を超えるのが有効であり、100〜250℃の範囲が好ましく、115〜230℃の範囲が特に好ましい。ストリッピング部の圧力は、1バールを超え、2〜30バールの範囲が好ましい。【0018】ストリッピング部を有する脱水塔の頂部流は、部分凝縮器及び/又はストリッパー、特にスチームストリッパーに導入され、そして副成分の豊富な気相流がこの系から取り除かれるのが有効である。【0019】部分凝縮器及び/又はストリッパーは、90℃を超える温度で運転されるのが適当であり、120℃〜250℃の範囲が好ましい。【0020】本発明の態様を、図面を例示、参照することによって、詳述する:図1は、従来技術におけるグリコールを回収する大規模工業処理用スキームを示し、図2は、本発明に従うグリコールを回収する特に好ましい処理スキームを示し、図3は、ストリッピング部を有する加圧脱水塔、及び塔頂流としての副成分用の出口それぞれの特徴、さらに続く部分凝縮器及びストリッパーでの濃縮を示す、本発明の方法の例示である。【0021】 図1は、従来技術によりグリコールを大規模工業的に回収するスキームを示している。水:エチレンオキシドの質量比4:1〜15:1を有する水/エチレンオキシド混合物が加水分解反応器1に、その後、ここで3つの圧力漸変(漸増)塔2、3及び4のカスケード状装置群として描かれる加圧脱水工程に給送される。塔2、3及び4の給送点は、それぞれ底部領域にある。第1加圧脱水塔2からの蒸気流は、第2加圧脱水塔3の底部リボイラーで凝縮され、未凝縮留分はいわゆるアセトアルデヒドパージ(W/ACH、即ち水/アセトアルデヒド)としてこの系から取り除かれる。加圧脱水塔2、3及び4からの凝縮蒸気は、加水分解反応器1の上流側に戻される。最終加圧脱水塔4からの底部流は、真空脱水塔5の中央部に導入される。この真空脱水塔5からの主として水を含有する蒸気も同様に凝縮され、加水分解反応器1の上流側に戻される。真空脱水塔5からの底部溶出物は、モノエチレングリコール精製蒸留塔6に給送され、ここからモノエチレングリコールと副成分、特にホルムアルデヒド、グリコールアルデヒド及びUVスポイラーが頂部生成物として回収される。モノエチレングリコール精製蒸留塔6からの底部溶出物は、ジエチレングリコール精製蒸留塔7に給送され、ここから純粋なジエチレングリコールが頂部生成物として回収され、そしてその底部溶出物が別の塔、即ちトリエチレングリコール精製蒸留塔8に給送される。トリエチレングリコール精製蒸留塔からの頂部生成物は、純粋なトリエチレングリコールであり、塔8からの底部溶出物は、ポリエチレングリコールとして知られている、高級グリコールの混合物を含んでいる。【0022】図2は、対照的に、本発明による高濃度モノエチレングリコールを回収する大規模工業プロセスを示している。図1の処理スキームと比較して、給送材料は、塔2の長さ方向のより高い箇所にて第1加圧脱水塔2に導入され、そしてこの加圧脱水塔2は、2〜6段のプレートから成るストリッピング部を有している。【0023】図1の処理とさらに異なるのは、その後加圧脱水塔3の底部リボイラーにおいて部分凝縮する、第1加圧脱水塔2からの蒸気が、ストリッパー9において副成分を含まないスチームストリップ処理されることである。ストリッパー溶出物は、この設備から取り除く副成分(W/ACH/FA、即ち水/アセトアルデヒド/ホルムアルデヒド)の気相流である。【0024】図3は、ストリッピング部とさらにこの系から取り除かれる前の副成分濃縮用ストリッパー9を備えた加圧脱水塔2の、発明変形の例示である。分離されるグリコール含有流の給送材料21は、20段のバブルキャッププレートを有する加圧脱水塔2の第5番目のプレートに導入される。これの頂部流23は部分凝縮後、流れ26として10段のバブルキャッププレートを有するストリッパー9に導入され、向流の流れ29により副成分を含まないストリップ処理される。副成分を含む気相流25及び27は、この系から取り除かれる。ストリッパー9の底部溶出物の一部24は、脱水塔2への還流を形成する。流れ21〜29の組成が、本発明の方法については、表1aに列挙されている。比較のために、流れ21〜29の組成が、従来技術に従う、即ちストリッピング部及びストリッパーを備えていない加圧脱水塔を用いる方法については、表1bに列挙されている。【0025】【表1】【表2】【表3】【表4】【0026】本発明の方法は、従来技術(0.3g/時間のアセトアルデヒド及び4.6g/時間のホルムアルデヒド)より低い水準の不純物(0.0gのアセトアルデヒド及び2.0g/時間のホルムアルデヒド)を有する、第1加圧脱水塔2から得た生成物流22を提供する。【0027】本発明の方法により系から取り除かれた副成分は、従来技術の方法に従う流れ25においては僅かに1.2g/時間のアセトアルデヒド及び0.6g/時間のホルムアルデヒドと比較して、流れ25においては1.1g/時間のアセトアルデヒド及び0.7g/時間のホルムアルデヒドであり、流れ27において1.6g/時間のアセトアルデヒド及び1.4g/時間のホルムアルデヒドであった。 エチレンオキシドの加水分解生成物を加圧脱水し、真空脱水し、次いで精製蒸留することによって高濃度モノエチレングリコールを蒸留回収する方法であって、 上記加圧脱水のための加圧脱水塔又はカスケード状装置群(2,3,4)の内の少なくとも第1加圧脱水塔が、少なくとも1段の分離段の分離段を備えるストリッピング部を有し、かつストリッピング部を有する加圧脱水塔(2,3,4)からの塔頂流の一部が、この回収系から取り除かれることを特徴とする方法。 加圧脱水塔(2)又はカスケード状装置群(2,3,4)の第1加圧脱水塔への給送点より下側の温度が80℃を超える範囲であり、そしてストリッピング部の圧力が1バールを超える範囲である請求項1に記載の方法。 ストリッピング部を有する加圧脱水塔の塔頂流を、部分凝縮器及び/又はストリッパーに導入し、そして副成分の豊富な気相流をこの系から取り除く請求項1又は2に記載の方法。 部分凝縮器及びストリッパーが、90℃を超える温度の範囲で運転される請求項1〜3のいずれかに記載の方法。