タイトル: | 特許公報(B2)_ポリケチドとその合成 |
出願番号: | 2000557371 |
年次: | 2010 |
IPC分類: | C12N 15/00,C07K 19/00,C12N 9/10,C12P 17/06,C12P 17/08,C12P 19/62,C12N 1/21 |
リードレイ,ピーター フランシス スタウントン,ハメス コーテス,ジーザス マッカーサー,ハミッシュ アラステア アーバイン JP 4489947 特許公報(B2) 20100409 2000557371 19990629 ポリケチドとその合成 バイオティカ テクノロジー リミティド 501008635 石田 敬 100077517 鶴田 準一 100092624 中村 和広 100108903 西山 雅也 100082898 樋口 外治 100081330 リードレイ,ピーター フランシス スタウントン,ハメス コーテス,ジーザス マッカーサー,ハミッシュ アラステア アーバイン GB 9814006.4 19980629 20100623 C12N 15/00 20060101AFI20100603BHJP C07K 19/00 20060101ALI20100603BHJP C12N 9/10 20060101ALI20100603BHJP C12P 17/06 20060101ALI20100603BHJP C12P 17/08 20060101ALI20100603BHJP C12P 19/62 20060101ALI20100603BHJP C12N 1/21 20060101ALI20100603BHJP JPC12N15/00C07K19/00C12N9/10C12P17/06C12P17/08C12P19/62C12N1/21 C12N 15/00-15/90 BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) PubMed 特表2002−519014(JP,A) Nature, 1999年, vol. 401, p. 502-505 18 GB1999002044 19990629 WO2000000618 20000106 2002519032 20020702 37 20060609 中野 あい 【0001】本発明は遺伝子組み換え型合成による新規ポリケチド、特に12−,14−及び−16員環マクロライドを製造するための方法と(酵素系、核酸、ベクターおよび菌株を含む)材料に、またそのようにして産生される新規のポリケチドに、関する。異種のポリケチド生合成遺伝子群に由来するポリケチド生合成遺伝子またはその部分を操作することにより、予想どおりの構造を備えた特定の新規ポリケチド、たとえば12員環、14員環および16員環のマクロライドの産生が可能になる。本発明は特に、好ましくはアセテート開始ユニット;又はプロピオネート・ユニット;又は異常な開始ユニットをもつマクロライドを産生すると同時に異種開始ユニットをもつ副産物の形成を最小限に抑えることを目的とした、天然開始ユニットをコードする遺伝物質の他遺伝子への置き換えに関する。【0002】ポリケチドは抗生作用または他の薬理作用をもつ多数の化合物、たとえばエリスロマイシン、テトラサイクリン、ラパマイシン、アベルマイシン、モネンシン、エポチロン、FK506 などを含む天然物質の総称であり、数が多く、構造的にも多様である。特に、ポリケチドはストレプトミセス層(Streptomyces)および関連の放線菌により豊富に産生される。その合成はアシルチオエステルの段階的縮合の反復という、脂肪酸の生合成に類似した方法で行われる。天然ポリケチドに見られる、より大きな構造的多様性は、開始ユニットまたは「延長」ユニットとしての(通常は)アセテートまたはプロピオネートの選択に由来し、また各縮合後に観察されるβ−ケト基のプロセッシング度合いの差に由来する。プロセッシング・ステップの例はβ−ヒドロキシアル基への還元、脱水後の2−エノイル基への還元、および飽和アシルチオエステルへの完全な還元などである。こうしたプロセッシング・ステップの立体化学的帰結もまた鎖延長サイクルごとに規定される。【0003】ポリケチドの生合成はポリケチド・シンターゼという一群の鎖形成酵素により開始される。放線菌では2種のポリケチド・シンターゼ(PKS)が説明されてきた。1種はI型PKS と呼ばれ、エリスロマイシン、オレアンドマイシン、アベルマイシン、ラパマイシンなどのマクロライドに対応するPKS によって代表され、各ポリケチド鎖延長サイクルごとに異なる集合または「モジュール」の酵素から成る。たとえば図1を参照(Cortes, J. et al. Nature (1990) 348 : 176-178 ; Donadio, S et al. Science (1991) 2523 : 675-679 ; Swan, D.G. et al. Mol. Gen. Genet. (1994) 242 : 358-362 ; MacNeil, D.J. et al. Gene (1992) 115 : 119-125 ; Schwecke, T. et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1995) 92 : 7839-7843)。【0004】ここで使用する用語「延長モジュール(extension module)」は1サイクルのポリケチド鎖延長を実現する1組の隣接ドメイン、すなわちβ−ケトアシル−ACP シンターゼ(KS)ドメインから次のアシル担体タンパク質(ACP)ドメインに至るまでの隣接ドメインをいう。用語「装入モジュール(loading module)」は、PKS への開始ユニットの装入を実現しそれによって第1延長モジュールのKS(ケトシンターゼ)ドメインで開始ユニットを使用できるようにする任意の隣接ドメイン群をいう。形成されるポリケチドの鎖長は、エリスロマイシン生合成の場合には鎖解離チオエステラーゼ/シクラーゼ活性をもつエリスロマイシン産生PKS の酵素ドメインの、遺伝子工学の利用による特異的転位によって変更されてきた(Cortes, J. et al. Science (1995) 268 : 1487-1489 ; Kao, C.M. et al. J. Am. Chem. Soc. (1995) 117 : 9105-9106)。【0005】エリスロマイシン産生PKS(6−デオキシエリスロノリドBシンターゼ(DEBS)とも呼ばれる)のモジュール5にあるケトレダクターゼ・ドメインの一部をコードするDNA の読み枠内欠失はエリスロマイシン類似体の5,6−ジデオキシ−3−α−ミカロシル−5−オキソエリスロノリドB、5,6−ジデオキシ−5−オキソエリスロノリドBおよび5,6−ジデオキシ−6−β−エポキシ−5−オキソエリスロノリドBの形成につながることが示された(Donadio, S et al. Science (1991) 252 : 675-679)。同様に、DEBSのモジュール4にあるエノイルレダクターゼ・ドメインの活性部位残基の、対応するPKS コード化DNA の遺伝子組み換えによる変更とそれのSaccharopolyspora erythraea への導入は6,7−アンヒドロエリスロマイシンCの産生につながった(Donadio, S. et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1993) 90 : 7119-7123)。【0006】国際特許出願WO93/13663 は変性ポリケチドの産生を可能にするようなDEBS遺伝子に関する別種の遺伝子操作について説明している。しかし、数多くのこうした試みは非生産的であると報告されている(Hutchinson,C.R.and Fujii, I. Ann. Rev. Microbiol. (1995) 49 : 201-238のp. 231)。大環の免疫抑制ポリケチド、ラパマイシンの生合成を支配しているモジュール構造のI型PKS をコードするStreptomyces hygroscopicus由来遺伝子の完全なDNA 配列が明らかにされた(Schwecke, T. et al. (1995) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92 : 7839-7843)。このDNA 配列はEMBL/Genebank Database にX86780の登録番号で預託されている。【0007】もう1種のPKS はII型PKS といい、芳香族化合物に対応するシンターゼによって代表される。II型PKS は鎖延長にかかわる1組の酵素活性を含むだけであり、これらは連続サイクルで適宜再使用される(Bibb, M.J. et al. EMBO J. (1989) 8 : 2727-2736 ; Sherman, D.H. et al. EMBO J. (1989) 8 : 2717-2725 ; Fernandez-Moreno, M.A. et al. J. Biol. Chem. (1992) 267 : 19278-19290)。II型PKS の「延長(extender)」ユニットは通常、アセテート・ユニットであり、特異的サイクラーゼの存在により完成鎖の環化による芳香族化合物生成への好ましい経路が指定される(Hutchinson, C.R. and Fujii, I. Ann. Rev. Microbiol. (1995) 49 : 201-238)。II型PKS 遺伝子を含むDNA のクローンを異種のII型PKS 遺伝子群を含む別の菌株に導入することにより、たとえばStreptomyces coelicolor 起源の青色ポリケチド、アクチノロジンに対応する遺伝子群から取り出したDNA を別種のポリケチド、アントラキノンを産生するStreptomyces galileus 株に導入することにより、ハイブリッド・ポリケチドが得られた(Bartel, P.L. et al. J. Bacteriol. (1990) 172 : 4816-4826)。【0008】II型PKS 上でのポリケチド鎖の延長に必要とされる最小ドメイン数(「ミニマルPKS 」)は、Streptomyces coelicolor 宿主細胞内での発現の場合、たとえば国際特許出願WO95/08548 では、 actI遺伝子の産物である次の3種のポリペプチドを含むと定義されている:第1にKS;第2にCLF と呼ばれるポリペプチドであり、これは末端間アミノ酸配列がKSに類似するが、KSの本質的な活性部位残基、すなわちシステイン残基がグルタミン残基によってか、またはwhiE遺伝子産物などのような胞子色素に対応するPKS の場合には(Chater, K.F. and Davis, N.K. Mol. Microbiol. (1990) 4 : 1679-1691)グルタミン酸残基によって置換されている(図2);そして最後にACP 。CLF については、たとえば国際特許出願WO95/08548 では、最小PKS によって産生されるポリケチド鎖の鎖長を決定する因子であると説明されている。しかし、Streptomyces glaucescens宿主細胞にオクタケチドのアクチノロジンに対応するCLF をデカケチドのテトラセノマイシンに対応するCLF の代わりに使用しても、生成するポリケチドはデカケチドからオクタケチドに変わらないことが判明しているので、CLF の正確な役割は不明のままである。こうした知見の欠如を反映させる意味でKSをKSαと呼び、CLF をKSβと呼ぶ代替命名法が提案されている(Meaurer, G. et al. Chemistry and Biology (1997) 4 : 433-443)。アセテート開始ユニットとアセテート延長ユニットがII型PKS に装入されるメカニズムはわかっていないが、II型PKS では宿主細胞の脂肪酸シンターゼのマロニルCoA : ACP アシルトランスフェラーゼが同じ機能を果たすのではないかと考えられている(Revill, W.P. et al. J. Bacteriol. (1995) 177 : 3946-3952)。【0009】国際特許出願WO95/08548 は、アクチノロジンPKS 遺伝子を他のII型PKS 遺伝子群に由来する異種DNA で置き換えることによりハイブリッド・ポリケチドを得る方法について説明している。国際特許出願WO95/08548 はまた、アクチノロジンに対応する天然遺伝子群を実質的に欠くStreptomyces coelicolor 株の作成、Streptomyces coelicolor から単離した低コピー数ベクターSCP2* に由来するプラスミドベクターpRM5のその菌株への導入(Bibb, M.T. and Hopwood, D.A.J. Gen. Microbiol. (1981) 126 : 427)、そこでの、アクチノロジン遺伝子群の分散型 actI/actIIIプロモーター領域の支配を受けながらの異種PKS コード化DNA の発現(Fernandez-Moreno, M.A. et al. J. Biol. Chem. (1992) 267 : 19278-19290)についても説明している。プラスミドpRM5はまた、特異的活性化因子であるタンパク質ActII-orf4に対応する遺伝子をコードするアクチノロジン生合成遺伝子群由来のDNA を含む。ActII-orf4タンパク質は actI/actII 双方向プロモーターの支配下にある遺伝子の転写に必要とされ、また栄養菌糸の増殖期から静止期への移行時に遺伝子発現を活性化する(Hallam, S.E. et al. Gene (1988) 74 : 305-320)。【0010】StreptomycesのII型PKS 遺伝子群は経路特異的活性化遺伝子により活性化されると判明している(Narva, K.E. and Feitelson, J.S.J. Bacteriol. (1990) 172 : 326-333 ; Stutzman-Engwall, K.J. et al. J. Bacteriol. (1992) 174 : 144-154 ; Fernandez-Moreno, M.A. et al. Cell (1991) 66 : 769-780 ; Takano, E. et al. Mol. Microbiol. (1992) 6 : 2797-2804 ;; Takano, E. et al. Mol. Microbiol. (1992) 7 : 837-845)。 DnrI遺伝子の産物はS. coelicolor のactII-orf4遺伝子の突然変異を補完するが、このことは DnrI、ActII-orf4両タンパク質が類似の標的に作用することを示唆している。マクロライド系ポリケチドのスピラマイシンに対応するI型PKS 遺伝子群の近くに位置するある遺伝子(srmR)については、すでに説明がなされている(EP 0 524 832 A2)。この遺伝子はマクロライド系抗生物質スピラマイシンの産生を特異的に活性化するが、この種の遺伝子についてはそれ以外に例が見つかっていない。また、I型PKS 遺伝子に作用するactII-orf4/ DnrI/RedD系活性化因子の類似体についても説明例はまだない。【0011】きわめて多数の治療上重要なポリケチドがすでに確認されているが、一段と作用の強い、またはまったく新規の生理活性をもつ新規ポリケチドを得ることはなお必要である。I型PKS によって産生される複合ポリケチドは、駆虫剤(anthelminthics)、殺虫剤(insecticides)、免疫抑制剤、抗真菌(antifungal)または抗菌(antibacterial)剤としての既知の効用をもつ化合物が含まれるという意味で、特に貴重である。そうした新規ポリケチドは構造的に複雑なため、化学合成だけでは、または既知ポリケチドの化学修飾では、なかなか得られない。【0012】また、作成されるハイブリッドPKS 遺伝子のすべてまたは大部分が存続能力をもち、所望のポリケチド産物を産生するように個別モジュールを実際に展開する、信頼性の高い具体的な方法を開発する必要もある。係属中の国際特許出願 PCT/GB97/01819 は、少なくとも1個の延長モジュールを後に従えた装入モジュールをコード化しているPKS(特にI型)遺伝子アセンブリーについて開示している。そこで、図1にDEBS遺伝子の構成を示す。最初のORF(翻訳可能領域)は装入モジュール(ery 装入)1個と延長モジュール(モジュール1とモジュール2)2個の都合3モジュールから成る最初の多酵素またはカセット(DEBS1)をコードしている。装入モジュールはアシルトランスフェラーゼとアシル担体タンパク質から成る。これは(前記)WO93/13666 の図1と対照的であろう。そこでは ORF1は2個のモジュールだけで構成されるが、実際は最初のモジュールが装入モジュールと第1延長モジュールを兼ねている。【0013】PCT/GB97/01819 は、装入モジュールと少なくとも1個の延長モジュールから成るハイブリッドPKS 遺伝子アセンブリーの作成について漠然と説明している。 PCT/GB97/01818 はまた、アベルメクチン産生ポリケチド・シンターゼの広特異性装入モジュールを通常の装入モジュールの代わりに、エリスロマイシンPKS の第1多酵素コンポーネント(DEBS1)に接合することによるハイブリッドPKS 遺伝子アセンブリーの作成についても説明している(Marsden, A.F.A. et al. Science (1998) 279 : 199-202 も参照のこと。)。このハイブリッドPKS 遺伝子アセンブリーを使用すれば、たとえば係属中の国際特許出願(PCT/GB97/01810)で説明されているようにある種の新規ポリケチドをつくることができる。国際特許出願 PCT/GB97/01819 はさらに、ラパマイシン産生ポリケチド・シンターゼの装入モジュールを通常の挿入モジュールの代わりに、エリスロマイシンPKS の第1多酵素コンポーネント(DEBS1)に接合することによるハイブリッドPKS 遺伝子アセンブリーの作成についても説明している。ラパマイシンPKS の装入モジュールは、それがCoA リガーゼ・ドメイン、エノイルレダクターゼ(ER)ドメインおよびACP から成り、そのために天然開始ユニットの3,4−ジヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸を含む適当な有機酸がPKS 装入ドメイン上で元の位置のままで活性化され、ERドメインによる還元を受けて、または受けずに、延長モジュール1のKSの分子内装入のためにACP へと転移されるという点で、DEBSやアベルメクチンPKS の装入モジュールとは異なる(Schwecke, T. et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1995) 92 : 7839-7843)。【0014】Streptomyces fradiae 由来のチロシンPKS を含む16員環マクロライド系ポリケチドの産生を支配するI型PKS 遺伝子群、(EP 0 791 655 A2)、Streptomyces caelestis由来のニッダマイシンPKS (Kavakas, S.J. et al. J. Bacteriol. (1998) 179 : 7515-7522)およびStreptomyces ambofaciens由来のスピラマイシンPKS (EP 0 791 655 A2)などについてはDNA 配列がすでに開示されている。これらの遺伝子配列はみな一様に、PKS の装入モジュールが延長モジュールのKSドメインに似たドメイン、ATドメインおよびACP から成るという点でDEBSやアベルメクチンPKS の装入モジュールとは異なることを示している(図3)。追加のN末端KS類似ドメインはKSq と命名された。というのは、それはいずれの場合も、β−ケトアシル−ACP シンターゼ活性に不可欠の活性部位システイン残基がグルタミン(1文字略号はQ)残基に置き換わっている点で延長モジュールのKSとは異なるからである。KSq ドメインの機能はわかっていない(Kavakas, S.J. et al. J. Bacteriol. (1998) 179 : 7515-7522)が、16員環マクロライドに対応するこれらのPKS にそれが存在することは意外である。というのは、チロシン、ニッダマイシンおよびスピラマイシンの開始ユニットはそれぞれプロピオネート、アセテートおよびアセテートである、つまりDEBSの場合と同種の開始ユニットであるように見受けられるからである。KSq ドメインに隣接するATはここではATq ドメインと名づける。【0015】チロシンPKS の装入モジュール全体をS. ambofaciensのスピラマイシンPKS の類似装入モジュールの代用とする実験(Kuhstoss et al. Gene (1996) 183 : 231-236)では、開始ユニットの性質がアセテートからプロピオネートに変わるとされた。KSq ドメインの役割はわかっていなかったので、KSq ドメインの重要性については、また開始ユニットとの関連でポリケチド産物の純度を保証するという点での、まして高レベルのマクロライド産生での、KSq を含むこれらの装入モジュールの潜在的な効用についても、具体的な説明がなかった。この実験結果については次のような解釈がなされた:「したがって、ここで説明した実験は、I型PKS 系のATドメインは合成の各ステップで適当な基質を選択するという仮説への強力な裏付けを与えてくれるように思われる」(Kuhstoss et al. Gene (1996) 183 : 231-236 のp. 235)。これらの筆者は、II型PKS 系のCLF タンパク質との類似に注目し、後者のタンパク質は鎖長の決定にかかわっていると考えられると指摘している。彼らはこう述べている:「KSq も類似の機能を果たすであろう。ただし、そうした機能が、他の複合ポリケチド、たとえば6−DEB やラパマイシンの合成では必要とされないのに、なぜこれらの16員環ポリケチドの合成で必要とされるのかは不明である。いずれにせよ、KSq が各合成ステップで基質の選択にかかわるという可能性は小さい」(Kuhstoss et al. Gene (1996) 183 : 231-236)。【0016】遺伝子工学を用いてSacch. erythraeaのDEBSの装入モジュールを除去すると、得られた短縮DEBSはプロピオネート開始ユニットを含む低レベルのエリスロマイシンを産生し続けることが判明した(Pereda, A. et al. Microbiology (1995) 144 : 543-553)。同論文によれば、この短縮DEBSで延長モジュール1のメチルマロニルCoA 特異的ATをラパマイシンPKS の延長モジュールに由来するマロニルCoA 特異的ATで取って代えても、その産物はやはりプロピオネート開始ユニットを含む低レベルのエリスロマイシンであるが、これはこの開始ユニットが、酵素に装入される(メチル)マロニル基の、モジュール1のATによる脱炭素反応に由来するのではなく、延長モジュール1のKSの、プロピオニルCoA による直接アシル化に由来することを証明する。これは、部分精製DEBS1+TE、DEBS由来の短縮型2モジュールPKS (Kao, C.M. et al. J. Am. Chem. Soc. (1995) 117 : 9105-9106)、およびDEBS1−TEとの機能的等価物(Brown, M.J.B et al. J. Chem. Soc. Chem. Commun. (1995) 1517-1518 ; Cortes, J. et al. Science (1991) 2523 : 675-679)を使用しながら、DEBSの開始ユニットの起源にはモジュール1に装入されモジュール1のKSによって脱炭酸されるメチルマロネート・ユニットが含まれる可能性があると指摘した従来の報告(Pieper, R. et al. Biochemistry (1997) 36 : 1846-1851)とはまったく異なる。今日では、組み換えSacch. erythraeaの抽出物から完全精製したDEBS1−TEタンパク質はこうした特異的脱炭酸酵素活性をまったくもたないと判明しており(Weissmann, K. et al. Biochemistry, (1998) 37 : 11012-11017)、これもまた開始ユニットが実際には延長モジュール1のKSを介した延長ユニットの脱炭酸反応に由来しないことを裏付ける。【0017】DEBSの装入モジュールはプロピオネート単体の場合よりも特異性がやや広いとわかっており、この装入モジュールを含むPKS がエリスロマイシン産生用の天然宿主Sacch. erythraeaで発現するPKS の一部である場合(たとえば、Cortes, J. et al. Science (1995) 268 : 1487-1489を参照)またはS. coelicolor などのような異種宿主で発現するPKS の一部である場合(Kao, C.M. et al. J. Am. Chem. Soc. (1994) 116 : 11612-11613 ; Brown, M.J.B. et al. J. Chem. Soc. Chem Commun. (1995) 1517-1519)には、特にアセテート開始ユニットがin vitro、in vivoの両方で使用される。精製DEBS1−TEを使用するin vitro 実験により、プロピオニルCoA とアセチルCoA は装入モジュールにそれぞれプロピオネート・ユニットとアセテート・ユニットを効率的に供給する二者択一的基質であることが証明されている(Weissmann, K.E.H. et al. Chemistry and Biology (1995) 2 : 583-589 ; Pieper, R. et al. J. Am. Chem. Soc. (1995) 117 : 11373-11374)。アセテート開始ユニットとプロピオネート開始ユニットの間の競合の成り行きは使用宿主細胞内で優勢なプロピオニルCoA 、アセチルCoA それぞれの細胞内濃度によって影響される(たとえば、Kao, C.M. et al. Science (1994) 265 : 509-512 ; Pereda, A. et al. Microbiology (1995) 144 : 543-553 を参照)。それはまた宿主PKS の発現レベルにも左右される。そのため、たとえば係属中の国際特許出願 PCT/GB97/01819 でも開示されているように、組み換え型DEBSまたはDEBS装入モジュールを含む他のハイブリッドPKS がS. eryrthraea 中で過剰発現すると産生物は一般に混合物となるが、その成分の違いはアセテート開始ユニットかプロピオネート開始ユニットのいずれかが存在するという点だけである。【0018】アセテート、プロピオネート両開始ユニットをもつポリケチドの混合物が形成されるのを防ぐための信頼性の高い方法を開発し、また独特の開始ユニットの特異的組み込みを可能にする必要がある。今日すでに、意外にも、16員環マクロライドのチロシン(tyrosin)、ニッダマイシン(niddamycin)およびスピラマイシン(spiramycin)に対応する各PKS の装入ドメインの役割はアベルメクチンPKS とDEBSの装入ドメインの役割とは異なることが判明している。すでに明確に理解されているところによれば、チロシンPKS のKSq ドメインと本書でATq と呼んでいる付随ATドメインは共に、特異性の強い、プロピオネート開始ユニットの産生にかかわっている。というのは、ATq は従来考えられていたようにプロピオニルCoA の装入に対してではなく、メチルマロニルCoA の装入に対して特異的だからである。また、KSq は酵素結合メチルマロネート・ユニットの、特異性の強い脱炭酸反応とそれによるプロピオネート・ユニットの形成にかかわっている。このプロピオネート・ユニットは装入モジュールのACP ドメインに付着し、また延長モジュールのKSへと転移され鎖延長の開始を引き起こせるよう適宜配置される。同様に、スピラマイシンPKS とニッダマイシンPKS のATq および隣接KSq は従来考えられていたようなアセテート・ユニットではなくマロネート・ユニットの特異的装入およびその後の特異的脱炭酸にかかわり、ポリケチド鎖の延長に要するアセテート開始ユニットが提供されるようにする。【0019】また、前述の16員環マクロライドに対応するPKS だけでなく、ある種の14員環マクロライドに対応するPKS 特にStreptomyces antibioticus 由来のオレアンドマイシンPKS(図4)およびある種のポリエーテルイオノフォア・ポリケチドに対応するPKS 、特にStreptomyces cinnamonensis由来の推定モネンシスPKS(図4)もまた、KSq ドメイン、ATq ドメインおよびACP から成る装入ドメインをもつことがすでに判明している。図4はすでに特定されたKSq ドメインおよび隣接する結合ATq ドメインの配列の整列比較であり、KSq ドメイン内の活性部位グルタミン(Q)残基の保存状況、およびすべての延長ATドメイン内のアルギニン残基の保存状況とATq ドメイン内のアルギニン残基の完全保存状況を示している。この残基は特徴的なことにDEBS、アベルメクチンPKS いずれの装入モジュールのATドメインでもアルギニンではない。その場合、ATの基質は非カルボキシル化アシルCoA エステルである(Haydock, S.F. et al. FEBS Letters (1995) 374 : 246-248)。略称のATq をここで使用するのは単にKSq のC末端に隣接して発見されたATドメインを延長ATから区別するためであり、他意はない。【0020】本発明は1態様において、装入モジュールと複数個の延長モジュールから成るPKS 多酵素またはその一部、またはそれをコードする核酸(一般的にはDNA)を提供し、前記多酵素またはその一部において、(a)装入モジュールは、マロニル残基または置換型マロニル残基を装入し、次いで装入された残基に脱炭酸反応を起こさせ、もって延長モジュールへと転移されることになるアセチル残基または置換型アセチル(この用語はプロピオニルを包摂する)残基をもたらすように適合させてあり、そして(b)延長モジュールまたは少なくともそのうちの1個(好ましくは少なくとも装入モジュールに隣接する1個)は、任意置換型マロニル残基に脱炭酸反応を起こさせる装入モジュールと自然会合していない。【0021】一般に、装入モジュールはACP(アシル担体タンパク質)ドメインも含むことになろう。装入モジュールの脱炭酸機能は好ましくは、KS(ケトシンターゼ)型ドメインによってもたらされる。ふさわしくは、これは活性部位に必須のシステイン残基ではなくグルタミン残基をもつことにより、通常延長モジュールのKSとは異なる。このKS型ドメインをKSq と命名する。これは「天然」型でもよいし、遺伝子組み換え型、たとえば延長モジュールのKSなどのような異なるKSをコードする核酸の指定部位突然変異誘発に由来するものでもよい。【0022】あるいは、脱炭酸機能はII型PKS 系に見られる一般タイプのCLF 型ドメインによってもたらされてもよい。装入機能は好ましくは、たとえばDEBSまたはアベルメクチンPKS 系でアセテートまたはプロピオネートを装入する装入モジュールのATドメインと違って活性部位にアルギニン残基をもつという点で通常延長モジュールのATドメインに類似するAT(アシルトランスフェラーゼ)型ドメインによってもたらされる。このAT型ドメインをATq と命名する。これもまた「天然型」でもよいし、遺伝子組み換え型、たとえば延長モジュールのATの突然変異誘発に由来するものでもよい。【0023】通常、装入モジュールは次の形式をとろう:Ksq−ATq −ACP{ここで、ACP はアシル担体タンパク質である。}もう1つの実施態様において、本発明は、所望の開始ユニットを特異的に提供する前記定義の装入モジュールを組み込んだPKS 多酵素を提供することにより、実質的にもっぱら所望の開始ユニットだけをもつポリケチドを合成する方法を提供する。これは、この多酵素をコードする核酸を提供すること、およびそれを菌に導入して発現しうるようにすることより成ろう。【0024】さらなる態様において、本発明は多酵素をコードする核酸を導入したベクターと形質転換菌および菌株を提供する。好ましい実施態様は、所望の開始ユニットをもつことおよび異種開始ユニットをもつポリケチドを実質的に欠くことを特徴とするポリケチドを産生する菌株である。ゆえに、たとえばエリスロマイシンを、プロピオネート開始ユニットに代わるアセテート開始ユニットの組み込みに由来する類似体が実質的に含まれないように生成することが可能になる。【0025】好ましくは、このハイブリッドPKS は1個の装入モジュールと2〜7個の延長モジュール、それに鎖停止酵素(一般的にはチオエステラーゼ)をコードする。 12員環、14員環または16員環マクロライドを産生するPKS 遺伝子アセンブリーには、たとえそのPKS 遺伝子アセンブリーが放線菌宿主細胞内で高レベルに発現する場合でも、もっぱら、またはほとんどもっぱらアセテート開始ユニットだけを含む12員環、14員環または16員環マクロライドを調製しようとするのであれば、KSq-ATq-ACP 型の装入モジュールを提供するのが特に実用的である。この目的のために特に適するPKS はエリスロマイシン、メチマイシン、オレアンドマイシン、チロシン、スピラマイシン、ミデカマイシンおよびニッダマイシンの生合成に対応するPKS コンポーネントである。これらすべての物質については遺伝子およびモジュール構成が少なくとも部分的には判明しているからである。KSq-ATq-ACP 型装入モジュールをコードする遺伝子のソースとして特に適しているのは、後に脱炭酸反応によってアセテート開始ユニットとなるマロネート・ユニットを特異的に装入するオレアンドマイシン、スピラマイシン、ニッダマイシン、メチマイシンおよびモネンシンの装入モジュールである。【0026】リファマイシン、アベルメクチン、ラパマイシン、イムノマイシンおよびFK506 はその装入モジュールが独特の特異性をもつ(また、そのすべてについて遺伝子およびモジュール構成が少なくとも部分的には判明している)マクロライドであるが、これらのマクロライドを産生するPKS 遺伝子アセンブリーにもまた同様に、たとえそうしたPKS 遺伝子アセンブリーが放線菌宿主細胞内で高レベルに発現する場合でも、もっぱら、またはほとんどもっぱらアセテート開始ユニットだけをもつその種のマクロライドを調整しようとするのであれば、KSq-ATq-ACP 型の装入モジュールを提供することが特に実用的である。KSq-ATq-ACP 型装入モジュールをコードする遺伝子のソースとして特に適しているのは、後に脱炭酸反応によってアセテート開始ユニットとなるマロネート・ユニットを特異的に装入するオレアンドマイシン、スピラマイシン、ニッダマイシン、メチマイシンおよびモネンシンの装入モジュールである。【0027】同様に、12員環、14員環または16員環マクロライドを産生するPKS 遺伝子アセンブリーには、たとえそのPKS 遺伝子アセンブリーが放線菌宿主細胞内で高レベルに発現する場合でも、もっぱら、またはほとんどもっぱらプロピオネート開始ユニットだけを含む12員環、14員環または16員環マクロライドを調製しようとするのであれば、KSq-ATq-ACP 型の装入モジュールを提供するのが特に実用的である。この目的のために特に適するPKS はエリスロマイシン、メチマイシン、オレアンドマイシン、チロシン、スピラマイシン、ミデカマイシンおよびニッダマイシンの生合成に対応するPKS コンポーネントである。これらすべての物質については遺伝子およびモジュール構成が少なくとも部分的には判明しているからである。KSq-Atq-ACP 型装入モジュールをコードする遺伝子のソースとして特に適しているのは、後に脱炭酸反応によってプロピオネート開始ユニットとなるメチルマロネート・ユニットを特異的に装入するチロシンの装入モジュールである。【0028】リファマイシン、アベルメクチン、ラバマイシン、イムノマイシンおよびFK506 はその装入モジュールが独特の特異性をもつ(また、そのすべてについて遺伝子およびモジュール構成が少なくとも部分的には判明している)マクロライドであるが、これらのマクロライドを産生するPKS 遺伝子アセンブリーにもまた同様に、たとえそうしたPKS 遺伝子アセンブリーが放線菌宿主細胞内で高レベルに発現する場合でも、もっぱら、またはほとんどもっぱらプロピオネート開始ユニットだけをもつその種のマクロライドを調整しようとするのであれば、KSq-ATq-ACP 型の装入モジュールを提供することが特に実用的である。KSq-ATq-ACP 型装入モジュールをコードする遺伝子のソースとして特に適しているのは、後に脱炭酸反応によってプロピオネート開始ユニットとなるメチルマロネート・ユニットを特異的に装入するチロシンの装入モジュールである。【0029】KSq-ATq-ACP 型装入モジュールでは、個々のドメインまたはその一部はソースが同じでも異なってもよいし、また天然、組み換え型いずれのドメインでもよい。たとえば、ATq ドメインはI型PKS の任意の延長モジュールに由来するマロネート・ユニット装入特異性またはメチルマロネート・ユニット装入特異性をもつATドメインで置換してもよい。ただし、その場合はマロネート・ユニットまたはメチルマロネート・ユニットに対してそれぞれ相応の特異性をもつKSq ドメインが選択されなければならない。【0030】あるいは、提供されたKSq-ATq-ACP 型装入モジュールのKSq ドメインをII型PKS のCLF ポリペプチドで置換してもよい。CLF は鎖長を一意的に決定する因子としての以前の認識とは大違いで、それがもつ可能性のある他の任意の活性に加えて、KSq ドメインの類似体として、結合マロネート・ユニットに対する脱炭酸酵素として作用しうることが今日では明らかである。【0031】II型PKS のCLF ドメインは脱炭酸活性をもつというこの認識がヒントになって、我々はII型系への有用な介入、たとえばある種の発酵法で得られる収量の向上を目的とする介入を考案することができた。高収量工業発酵法の多くは無用の開始ユニットを組み込むために、混合物をもたらす傾向がある。独特の開始ユニットを生成するための補助的遺伝子をもつ系では、特にそうした傾向が強い。CLF 遺伝子は無用のアシル種を生成する働きをし、そのために無用のアシル・ユニットを組み込んだ産物が生じることになる。【0032】たとえば、オキシテトラシクリンの産生には独特のマロンアミド・ユニットが関与する。しかし、CLF ドメインの無用の活性により若干の脱炭酸が起こり、そのためにアセチルが代わりに組み込まれる結果となる。同様にダウノマイシン合成でもCLF ドメインの「寄生的」活性作用を受けやすい独特の開始ユニットが関与する。【0033】CLF ドメインの(脱炭酸)活性部位は一般にグルタミン残基を含む。CLF ドメインの脱炭酸活性はGln 残基を(たとえば)Ala に転換するような突然変異により除去することができることに我々は気づいた。したがって、さらなる態様において本発明は、II型PKS のCLF ドメインのGln 残基を突然変異させて脱炭酸活性が抑制されるようにするII型(芳香族)ポリケチド合成のための系および方法を提供する。これを実現可能にする指定部位突然変異誘発法は今日、当業者には周知技術である。【0034】KSq-ATq-ACP 型装入モジュールは、たとえば PCT/GB97/01819 および PCT/GB97/01810 の場合と同様にして作成されるハイブリッドPKS に結合してもよい。この種の装入モジュールを、たとえば PCT/GB97/01819 および PCT/GB97/01810 で説明されている要領で、14員環マクロライドの新規誘導体を産生するハイブリッドPKS をコードする遺伝子アセンブリーに結合するのが特に実用的である。【0035】本発明はさらに、KSq-ATq-ACP 型装入モジュールを備えたこの種のPKS アセンブリー、そうしたアセンブリーを含むベクター、およびそれらのアセンブリーを発現することのできる形質転換菌を提供する。形質転換菌は遺伝子組み換えプラスミドを取り込むことができる、またはプラスミドは一体化することができる。int 配列を備えたプラスミドは宿主染色体の特異的付着部位(att)に一体化しよう。形質転換菌は初期産物を、たとえばエリスロマイシンの産生で通常見られる(図5に示すような)生合成修飾および他のポリケチドで見られる生合成修飾のすべてまたはいくつかを実行することにより、修飾することができよう。突然変異菌を利用して、通常の経路のいくつかを遮断し、たとえば単数または複数の「天然」水酸基または糖鎖を欠いた産物を生成させることができよう。本発明はさらに、形質転換菌によって直接または間接に産生可能な物質としての新規ポリケチドを提供する。これには、酵素修飾を経たポリケチドも含まれる。【0036】さならる態様において、本発明は過去に得られているポリケチドと新規ポリケチドの両方を、アセテート開始ユニットの性質に関して従来可能であったよりもさらに純粋な形で、提供する。これには「天然」の、または対応する「天然」化合物と次の点で異なる、12員環、14員環および16員環マクロライドが含まれる: a)単数または複数のケチド・ユニットの酸化状態(すなわち次の選択肢群からの選択:-CO-、-CH(OH)-、アルケン-CH-および-CH2- 。ここに、任意の-CH(OH)-の立体構造もまた独立に選択できる)b)「天然」メチル側鎖の欠如、またはc)「天然」メチルおよび/またはメチル以外の環状置換基の立体構造。【0037】また、前記の項目a)ないしc)の2つ以上で特定された天然産物との差異をもつ12員環、14員環および16員環マクロライドの誘導体を調製することも可能である。非PKS 酵素によるさらなるプロセッシング、たとえばヒドロキシル化、エポキシ化、グリコシル化およびメチル化のうち1つ以上のプロセッシングを経た前記ポリケチドの誘導体を調製することもできる。【0038】本発明は、アセテート開始ユニットを備えた既知、新規両方の複合ポリケチドを、それとはアセテートまたはプロピオネート開始ユニットを有する点だけが異なる産物の混合物を形成させることなく得るための新規方法を提供する。さらに本発明は、開始ユニットが天然I型PKS の延長モジュールに由来する独特の特異性をもつATの酵素結合産物に対するKSq ドメインの作用により得られる独特の開始ユニットであることを特徴とする新規ポリケチドを得る方法を提供する。特に、FK506 PKS 遺伝子群の延長モジュール4のATは好ましくはアリル側鎖を組み込み、ニッダマイシンPKS 遺伝子群の延長モジュール6のATは好ましくはHOCH2-構造の側鎖を組み込み、またスピラマイシンの延長モジュール5とモネンシンの延長モジュール5の両ATは好ましくはエチル側鎖を組み込んでいる。いずれの場合でも、KSq ドメインは好ましくは本来プロピオネート特異的であるドメインである。あるいは、I型PKS の延長モジュールの任意のATは、部位指定突然変異誘発法により活性部位システイン残基を別の残基、好ましくはグルタミンに置換することにより、結合カルボキシル化アシルチオエステルに脱炭酸反応を起こさせることができるKSq ドメインへと転換されよう。I型PKS と数多くの力学的特徴を共有する動物の脂肪酸シンターゼは、アセチルCoA の不在下で明白なマロニルCoA 脱炭酸酵素活性を示すことが知られている(Kresze, G.B. et al. Eur. J. Biochem. (1977) 79 : 191-199)。この脂肪酸シンターゼはヨードアセトアミドなどのようなアルキル化剤で処理すると、KSの活性部位システインの特異的修飾により不活性化され、その結果として生じるタンパク質はさらに強いマロニルCoA 脱炭酸活性をもつ。脂肪酸KSドメインの脱炭酸酵素への転換はI型PKS のKSドメインとKSq ドメインの間の遺伝子的に決定された交換を反映する。実際、グルタミン側鎖の大きさと極性に関する特徴はカルボックスアミド−システインのそれときわめて近似する。独特のアルキルマロネート・ユニットの脱炭酸に使用されるKSq は好ましくは、独特のATを提供する同じI型PSK の同じ延長モジュールから選択して、独特のアルキルマロネート・ユニットの脱炭酸を最適化するようにし、また使用されるACP も好ましくは同じ延長モジュールのACP とする。【0039】改良型装入モジュールを組み込むPKS 遺伝子の発現に適した適当なプラスミド・ベクターおよび組み換え細胞は PCT/GB97/01819 の中でI型ハイブリッドPKS 遺伝子の発現に適しているとされているものである。有効な宿主の例はSaccharopolyspora erythraea、Streptomyces coelicolor、Streptomyces avermitilis、Streptomyces griseofuscus、Streptomyces cinnamonensis、Streptomyces fradiae、Streptomyces longisporoflauvus、Streptomyces hygroscopicus、Micromonospora griseorubida、Streptomyces lasaliensis、Streptomyces venezuelae、Streptomyces antibioticus、Streptomyces lividans、Streptomyces rimosus、Streptomyces albus、Amycolatopsis mediterranei、およびStreptomyces tsukubanensis である。これらは、その内部でSCP2* 由来プラスミドが自己複製することが知られている、たとえばS. coelicolor、S. avermitilis およびS. griseofuscus などのような宿主;その内部でSCP2* 由来プラスミドがプラスミド・インサート上と染色体上の配列の相同組み換えを通じて染色体と一体化するSaccharopolyspora erythraea などのような他の宿主;および自殺プラスミドベクターにより統合的に形質転換されるようなすべてのベクターを含む。【0040】添付図面との関連で本発明のいくつかの実施態様について説明する。以下、本発明について具体的に説明するが、若干の実施例によって本発明を限定するつもりはない。NMR スペクトルはすべて、特に断らないかぎり、Bruker 500 mHz DMXスペクトロメーターを用いてCDCl3 中で測定し、ピーク位置はppm 単位でテトラメチルシランからダウンフィールドに表示している。NMR 構造で示した原子番号は標準命名法に沿うものではなく、その特定例のNMR データに関連する。HPLC法方法Aカラム Waters Symmetry 5 C18 2.1mm×150mm流量 0.29ml/min移動相 勾配:A:B(22:78)〜A:B(38:62)/12分間、次いで15分までに〜A:B(80:20)。1分間、維持。再平衡後に次の試料に移る。ただし、A=アセトニトリル、B=0.01M酢酸アンモニウム(溶媒は10%アセトニトリルおよび0.02% TFA)方法Bカラム Waters Symmetry 5 C18 2.1mm×150mm流量 0.29ml/min移動相 勾配:28:72(アセトニトリル:10mM NH4OAc)〜50:50/18分間。25分まで50:50。7分間で28:72に戻し再平衡。【0041】測定器 APCI源を備えたHewlett-Packard 1100 LC/MSに付属。水道水培養液グルコース 5g/リッタートリプトン 5g/lイースト・エキス 2.5 g/lEDTA 36mg/l水道水で合計容量を1Lとする。【0042】ERY−P培養液デキストロース 50g/リッターNutrisoy(商標)粉 30g/l(NH4)2SO4 3g/lNaCl 5g/lCaCO3 6g/l水道水で合計容量を1Lとする。【0043】pHは7.0 に調整。実施例1組み換えベクターpPFL43の作成PCT/GB97/01819 の説明に従って、プラスミドpCJR24を作成した。pPFL43はpCJR24ベースのプラスミドであり、推定モネンシンPKS 装入モジュール(S. cinnamonensisから単離)、DEBS延長モジュール1および2、それに鎖停止チオエステラーゼを含むハイブリッド・ポリケチドシンターゼをコードする遺伝子をもつ。プラスミドpPFL43は次のようにして作成した:次の合成オリゴヌクレオチド、すなわち5'-CCATATGGCCGCATCCGCGTCAGCGT-3'および5'-GGCTAGCGGGTCCTCGTCCGTGCCGAGGTCA-3' を使用して、推定モネンシン産生装入モジュールをコードするDNA を、S. cinnamonensis由来の推定モネンシン産生PKS 遺伝子の5’末端を含むコスミドまたはS. cinnamonensisの染色体DNA を鋳型にして増幅した。このPCR 産物(3.3kbp)をゲル電気泳動で精製し、T4ポリヌクレオチドキナーゼで処理し、あらかじめ SmaIで部分消化して直鎖状にしアルカリホスホターゼで処理してあったプラスミドpUC18 に結合した。この結合混合体をE. coli DH10B のエレクトロコンピテント細胞の形質転換に使用し、個々のクローンをチェックし所望のプラスミドpPFL40を得た。プラスミドpPFL40は制限パターンおよび配列分析により同定した。【0044】プラスミドpHD30-His はpNEWAVETE (PCT/GB97/01810)の派生体であり、アベルメクチン装入モジュール、エリスロマイシン延長モジュール1および2、それにery チオエステラーゼ・ドメインを含む。プラスミドpNEWAVETE をEcoRIとHinDIII で切断し、C末端ポリヒスチジン尾部のポリペプチドへの付加をコードする合成オリゴヌクレオチド・リンカーを挿入した。次のオリゴヌクレオチド5'-AATTCACATCACCATCACCATCACTAGTAGGAGGTCTGGCCATCTAGA-3'および5'-AGCTTCTAGATGGCCAGACCTCCTACTAGTGATGGTGATGGTGATGTG-3'をいっしょにアニールして2本鎖とし、EcoRIとHinDIII で切断してあったpNEWAVETE に結合した。得られたプラスミドを NdeIと XbaIで切断し、同じ2つの酵素であらかじめ切断しておいたプラスミドpCJR24に結合してプラスミドpND30Hisを作成した。【0045】プラスミドpPFL40を NdeIと NheIで切断し、得られた3.3kbp断片をゲル電気泳動で精製して、あらかじめ NdeIと NheIで切断しアルカリホスホターゼで処理しておいたpPND30-Hisに結合した。この結合混合体をE. coli DH10B のエレクトロコンピテント細胞の形質転換に使用し、個々のクローンをチェックして目的のプラスミドpPFL43を得た。プラスミドpPFL43は制限分析により同定した。【0046】実施例2S. erythraea JC2/pPFL43 の作成プラスミドpPFL43をS. erythraea JC2プロトプラストの形質転換に使用した。固有のDEBS遺伝子をほぼ取り除いたJC2株の作成については、係属中の国際特許出願 PCT/GB01819 の中で説明されている。チオストレプトン10μg/mlを含むR2T20 培養液でチオストレプトン耐性コロニーを選別した。数コロニーについて染色体と一体化したpPFL43の存在を、そのゲノムDNA と装入モジュールをコードするmon PKS フラグメントを含むDIG 標識DNA とのサザンプロット法ハイブリダイゼーションで調べた。【0047】実施例3S. erythraea JC2/pPFL43 の使用によるポリケチドの産生菌株S. erythraea JC2/pPFL43 の冷凍菌液を、5μg/mlチオストレプトン添加eryP培養液に接種した。接種した菌株を28〜30℃で7日間増殖させた。その後、培養液をろ過して菌糸体を除去し、pHをpH=3.0 に調整した。培養液を2容量の酢酸エチルで2回抽出し、混合した抽出物を等容量の飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄してから、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、酢酸エチルを減圧除去して粗産物を得た。この産物は下図の構造を示し、またMS、GC−MSおよび1H NMRにより真正試料と同じであることが判明した。【0048】【化1】【0049】実施例4S. erythraea NRRL2338/pPFL43 の作成プラスミドpPFL43をS. eryrthraea NRRL2338プロトプラストの形質転換に使用した。チオストレプトン10μg/mlを含むR2T20 培養液でチオストレプトン耐性コロニーを選別した。数コロニーについて染色体と一体化したpPFL43の存在を、そのゲノムDNA と装入モジュールをコードするmon PKS フラグメントを含むDIG 標識DNA とのサザンプロット法ハイブリダイゼーションで調べた。【0050】実施例5aS. erythraea NRRL2338/pPFL43 の使用による13−メチル−エリスロマイシンAおよびBの産生菌株Saccharopolyspora erythraea NRRL2338 (pPFL43)は、野生型装入ドメインをモネンシン装入モジュール−D1TE DNAインサートで置き換えてあり、実施例2の説明どおりにつくった。これを300ml 三角フラスコ中の50μg/mlのチオストレプトンを入れた30ml水道水培養液に接種した。29℃で3日間培養後に、このフラスコから300ml フラスコ中の300ml ERY-P 培養液に接種した。この培養液を29℃、200rpmで6日間保温した。その後、NaOHで培養液全体をpH8.5 に調整し、次いで等容量の酢酸エチルで抽出した。酢酸エチル抽出物を、Zymark TurboVap LV蒸発器を使用して窒素流下、45℃で蒸発乾燥させ、次いで0.0625容量のメタノールで戻し、抽出物を16倍に濃縮した。この産物の構造はLC/MS、方法Aにより確認した。保持時間 4.0分のピークが主成分として、13−メチル−エリスロマイシンAに要求される m/z =720 (M+H)+で観察された。二次ピークは保持時間 6.4分で、13−メチル−エリスロマイシンBに要求される m/z =704 (M+H)+で観察された。【0051】実施例5bS. erythraea NRRL-2338 (pPFL43)の使用による8L規模での13−メチル−エリスロマイシンAおよびBの産生と回収Saccharopolyspora erythraea NRRL2338 (pPFL43)を2.8 l入りFernbachフラスコ中の50μg/mlチオストレプトン添加100ml 水道水培養液に接種した。29℃で3日間培養後、このフラスコから14l Microferm発酵槽(New Brunswick Scientific Co., Inc., Edison, NJ)中の8l ERY-P培養液に接種した。この培養液をばっき率8l/min 、撹拌速度800rpm、NaOHまたはH2SO4(15%)によるpH 6.9〜7.3 の維持という条件で28℃に保温した。24時間後の容量レベルを維持するよう水を足しながら 167時間発酵を続けた。その後、13−メチル−エリスロマイシンAおよびBの存在を確認する作業に移った。発酵槽から取り出した培養液試料をNaOHでpH8.5 に調整し、次いで等容量の酢酸エチルで抽出した。この酢酸エチル抽出物を、Zymark TurboVap LV蒸発器を使用して窒素流下、45℃で蒸発乾燥させ、次いで0.25容量のメタノールで戻し、抽出物を4倍に濃縮した。この産物の構造はLC/MS、方法Aにより確認した。保持時間 4.1分のピークが主成分として、13−メチル−エリスロマイシンAに要求される m/z =720 (M+H)+で観察された。二次ピークは保持時間 6.6分で、13−メチル−エリスロマイシンBに要求される m/z =704 (M+H)+で観察された。【0052】およそ 2.8gの13−メチル−エリスロマイシンAを含む約35lの培養液を処理して産物を回収することにした。培養液を、パイロット規模のセラミックろ過装置でろ過してから、500ml XAD-16樹脂カラムに注入した。産物を 100%メタノールで溶出した。175ml CG-161吸着カラムを準備し、20%エタノール/水と平衡させた。産物溶液の一部分を20%メタノールに調整し、このカラムに注入したが、産物のブレークスルーはまったく観察されなかった。40%メタノール/水でカラムを洗浄しても有意レベルの不純物が除去されることはなかった。50%メタノール/水で溶出すると2大不純物、すなわち13−メチル−エリスロマイシンBと分解産物13−メチル−デヒドロエリスロマイシンAからの産物のクロマトグラフィー分離が実現した。最も高純度の画分を混合してから、メタノール分が10%未満になるまで蒸発させることにより容量を約75%減らした。13−メチル−エリスロマイシンAの抽出を強めるために、250mM の総濃度になるまで固形の重炭酸ナトリウムを加えた。水性産物層を、塩化メチレンで2回、1回に付き総容量の半分ずつ使用して、抽出した。これを蒸発で濃縮し薄黄色の固形物とした。この粗結晶を13−メチル−エリスロマイシンAとして精製するために、周囲温度で塩化メチレンに溶解し、ヘキサンで塩化メチレン濃度が15%になるまで希釈した。濁った溶液を−10℃で〜30分間放置してから、上澄みを2番目のフラスコに移し、大部分の不純物は油として残した。このフラスコは−10℃で一晩放置し、翌日ろ過してオフホワイトの13−メチル−エリスロマイシンA結晶を得た。培養液容量35lの部分的ワークアップから約300mg の13−メチル−エリスロマイシンAが単離された。【0053】蒸発処理後の母液およそ100mg をさらに利用して、13−メチル−エリスロマイシンBを単離することにした。残留13−メチル−エリスロマイシンAは酢酸水溶液(pH5)による初期試料の反復抽出により除去した。その結果生じた塩化メチレン層を塩化メチレンの20%メタノール溶液を使用して 700gシリカゲル・カラムによりクロマトグラフ分離した。LC/MSにより測定された13−メチル−エリスロマイシンB濃厚画分を混合、蒸発させて〜11.0gの暗色油を得た。この油を最小量のメタノールに溶解し、500ml のAmberchrom CG-161 樹脂カラムに注入した。13−メチル−エリスロマイシンBを40%メタノール/純水に2ベッド容量毎時で溶出した。1ベッド容量画分を収集し、LC/MSで分析した。画分42〜62を混合し、純水で〜20%メタノールへと希釈し、さらに重炭酸ナトリウムでpH7.5 に中和した。得られた溶液を4lの塩化メチレンで再び抽出し、〜500ml に濃縮し、無水硫酸マグネシウム上で乾燥させた。MgSO4 をろ過除去後、ろ液を蒸発させて〜110mg の薄茶色の固形物を得た。この110mg の未精製13−メチル−エリスロマイシンBを〜3.0ml のHPLC用アセトニトリルに溶解し、20cm×20cm、2mm厚のシリカゲル分取薄層クロマトグラフィー(PTLC)プレートにつけた。プレートは60メタノール:60アセトニトリルで展開した。PTLCプレートから所望部分のシリカを除去し、HPLC用アセトンで抽出した。このアセトン抽出物を蒸発させて12.1mgの透明な固形物を得た。【0054】13−メチル−エリスロマイシンAと13−メチル−エリスロマイシンBの同定は、マススペクトロスコピー(LC/MS方法B)とNMR スペクトロスコピーによって確認された。13−メチル−エリスロマイシンA試料のピークは保持時間が 4.7分、 m/z 値=720 (M+H)+で、13−メチル−エリスロマイシンAに要求されるとおりであった。13−メチル−エリスロマイシンB試料のピークは保持時間が 7.6分、 m/z =704 (M+H)+で、13−メチル−エリスロマイシンBに要求されるとおりであった。NMR 、13−メチル−エリスロマイシンA:【0055】【化2】【0056】NMR 、13−メチル−エリスロマイシンB:【0057】【化3】【0058】【化4】【0059】実施例6組み換えベクターpPFL42の作成プラスミドpPFL42はpCJR24ベースのプラスミドであり、チロシン産生PKS 装入モジュール、エリスロマイシン延長モジュール1および2、それに鎖停止チオエステラーゼから成るハイブリッド・ポリケチドシンターゼをコードする遺伝子を含む。プラスミドpPFL42は次のようにして作成した:次の合成オリゴヌクレオチド:5'-CCATATGACCTCGAACACCGCTGCACAGAA-3'および5'-GGCTAGCGGCTCCTGGGCTTCGAAGCTCTTCT-3'を使用して、チロシン産生装入モジュールをコードするDNA をPCR 法で増幅した。鋳型にはcos6T (S. fradiae 由来のチロシン産生PKS 遺伝子を含むコスミド)またはS. fradiae由来の染色体DNA を使用した。3.3kbpのPCR 産物はT4ポリヌクレオチド・キナーゼで処理し、あらかじめ SmaIで部分消化して直鎖状にしアルカリホスホターゼで処理してあったプラスミドpUC18 に結合した。この結合混合体をE. coli DH10B のエレクトロコンピテント細胞の形質転換に使用し、個々のクローンをチェックして所望のプラスミドpPFL39を得た。プラスミドpPFL39は制限パターンおよび配列分析により同定した。【0060】プラスミドpPFL39を NdeIと NheIで切断し、3.3kbpの断片をゲル電気泳動で精製し、あらかじめ NdeIと NheIで切断しアルカリホスホターゼで処理しておいたプラスミドpND30 に結合した。この結合混合体をE. Coli DH10B のエレクトロコンピテント細胞の形質転換に使用し、個々のクローンをチェックして所望のプラスミドpPFL42を得た。プラスミドpPFL42の同定は制限パターン分析によった。【0061】実施例7S. erythraea JC2/pPFL42 の作成プラスミドpPFL42を S. erythraea JC2プロトプラストの形質転換に使用した。10μg/mlのチオストレプトンを添加したR2T20 培養液でチオストレプトン耐性コロニーを選別した。いくつかのコロニーについて染色体と一体化したpPFL42の存在を、そのゲノムDNA と装入モジュールをコードするtyl PKS フラグメントをもつDIG 標識DNA とのサザンプロット法ハイブリダイゼーションにより調べた。pPFL42の一体化コピーをもつクローンをこのようにして同定した。【0062】実施例8S. erythraea JC2/pPFL42 の使用によるポリケチドの産生菌株S. erythraea JC2/pPFL42 の冷凍菌液を5μg/mlチオストレプトン添加eryP培養液に接種し、28〜30℃で7日間増殖させた後、培養液をろ過して菌糸体を除去し、pHをpH=3に調整した。培養液は2容量の酢酸エチルで2回抽出し、混合抽出物を等容量の飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、酢酸エチルを減圧除去して粗産物を得た。この産物は下図の構造を示し、またMS、GC−MSおよび1H NMR法によれば真正試料と同じであった。【0063】【化5】【0064】実施例9S. erythraea NRRL2338/pPFL42 の作成プラスミドpPFL42をS. erythraea NRRL2338 プロトプラストの形質転換に使用した。チオストレプトンを10μg/ml添加したR2T20 培養液でチオストレプトン耐性コロニーを選別した。いくつかのコロニーについて染色体と一体化したpPFL42の存在を、そのゲノムDNA と装入モジュールをコードするtyl PKS フラグメントを含むDIG 標識DNA とのサザンプロット法ハイブリダイゼーションより調べた。pPFL42の一体化コピーをもつクローンをこのようにして同定した。【0065】実施例10S. erythraea NRRL-2338/pPFL42の使用によるポリケチドの産生菌株S. erythraea NRRL2338/pPFL42 の冷凍菌液を5μg/mlチオストレプトン添加eryP培養液に接種した。28〜30℃で7日間増殖させた後、培養液をろ過して菌糸体を除去し、pHをpH=9に調整した。次いで上清を等容量の酢酸エチルで3回抽出し、溶剤を蒸発除去した。産物をHPLC/MSで分析し、真正エリスロマイシンAと同一である次の構造のマクロライドが特定された(他の産物も随伴したが、それらは不完全なポストPKS プロセッシングの結果であるエリスロマイシンAおよびBと同定された):実施例11プラスミドpPFL35の作成プラスミドpPFL35はpCJR24ベースのプラスミドであり、装入モジュール、DEBSの第1および第2延長モジュール、それに鎖停止チオエステラーゼから成るPKS 遺伝子をもつ。この装入モジュールはオレアンドマイシンPKS の装入モジュールに由来するKSq ドメインDNA 、それに結合したラパマイシンPKS のモジュール2のマロニルCoA 特異的AT、さらにそれに結合したDEBSの装入ドメインACP から成る。プラスミドpPFL35は次のように数種の中間プラスミドを経由して作成した: S. erythraea由来eryAI遺伝子の、ヌクレオチド1279からヌクレオチド1690に至る411bp のDNA 断片(Donadio, S. et al., Science (1991) 2523 : 675-679)を、次の合成オリゴヌクレオチドを使用してPCR 法で増幅した:5'-TGGACCGCCGCCAATTGCCTAGGCGGGCCGAACCCGGCT-3'および5'-CCTGCAGGCCATCGCGACGACCGCGACCGGTTCGCC-3'鋳型にはpT7-7 とDEBS1−TEに由来するpKSWというプラスミドのDNA を使用した。これには、新しい PstIおよびHindIII 部位を第1延長モジュールのKS1を挟むように導入してある。441bp のPCR 産物はT4ポリヌクレオチド・キナーゼで処理し、あらかじめ SmaIで部分消化して直鎖状にしアルカリホスホターゼで処理してあったプラスミドpUC18 に結合した。この結合混合体をE. coli DH10B のエレクトロコンピテント細胞の形質転換に使用し、個々のクローンをチェックして所望のプラスミドpPFL26を得た。このインサートに接する新しい MfeI/AvrII 部位はpUC18 のポリリンカー内のEcoRI部位に隣接する。プラスミドpPFL26は制限パターンおよび配列分析により同定した。【0066】MfeI制限酵素認識部位はDEBS装入モジュールのプロピオニルCoA : ACP トランスフェラーゼをコードするDNA の5’末端から112bp の位置にある。プラスミpKSWを MfeIと PstIで切断し、プラスミドpPFL26の MfeIと PstIによる切断で得られた411bp インサートに結合した。この結合混合体をE. Coli DH10B のエレクトロコンピテント細胞の形質転換に使用し、個々のクローンをチェックして所望のプラスミドpPFL27を得た。プラスミドpPFL27は、DEBS装入モジュール、DEBSの第1および第2延長モジュール、それにDEBS鎖停止チオエステラーゼから成るPKS 遺伝子をもつ。プラスミドpPFL27の同定は制限パターン分析によった。【0067】プラスミドpPFL27を NdeIとAvrII で切断し、プラスミドpMO6(PCT/GB97/01819)の NdeIとAvrII による切断で得られた4.6kbpインサートに結合した。プラスミドpM06は、DEBS装入モジュール、DEBSの第1および第2延長モジュール、それにDEBS鎖停止チオエステラーゼから成るPKS 遺伝子をもつが、ただし第1延長モジュール内のメチルマロネート特異的ATをコードするDNA セグメントはrap PKS のモジュール2のマロネート特異的ATをコードするDNA に特別に置換してある。前記の結合で得られた混合体をE. Coli DH10B のエレクトロコンピテント細胞の形質転換に使用し、個々のクローンをチェックして所望のプラスミドpPFL28を得た。プラスミドpPFL28は、DEBS装入モジュール、rap PKS のモジュール2のマロネート特異的AT、DEBS装入モジュールのACP 、それに続くDEBSの第1および第2延長モジュール、さらにDEBS鎖停止チオエステラーゼから成るハイブリッドPKS 遺伝子をもつ。プラスミドpPFL28の同定は制限パターン分析によった。【0068】S. antibioticus のoleAI遺伝子に由来する、ヌクレオチド1671からヌクレオチド3385に至るまでの、KSq ドメインをコードするDNA 断片を、次の合成オリゴヌクレオチドを使用してPCR 法で増幅した:5'-CCACATATGCATGTCCCCGGCGAGGAA-3'および5'-CCCTGTCCGGAGAAGAGGAAGGCGAGGCCG-3'鋳型にはStreptomyces antibioticus 由来の染色体DNA を使用した。得られたPCR 産物をT4ポリヌクレオチド・キナーゼで処理し、あらかじめ SmaIで切断して直鎖状にし次いでアルカリホスホターゼで処理しておいたプラスミドpUC18 にインサートとして結合した。この結合混合体をE. coli DH10B のエレクトロコンピテント細胞の形質転換に使用し、個々のクローンをチェックして所望のプラスミドpPFL31を得た。インサートに接する新しい NdeI部位はpUC18 ポリリンカーのEcoRI部位に隣接し、新しいBspEI部位はリンカー領域のHindIII 部位に接する。プラスミドpPFL31の同定は制限および配列分析によった。【0069】プラスミドpPFL31を NdeIとAveII で切断し、得られたインサートをあらかじめ NdeIとAvrII で切断してあったプラスミドpPFL28に結合した。結合混合体をE. coli DH10B のエレクトロコンピテント細胞の形質転換に使用し、個々のクローンをチェックして所望のプラスミドpPFL32を得た。プラスミドpPFL32の同定は制限分析によった。【0070】プラスミドpPFL32を NdeIと XbaIで切断し、得られたインサートを、あらかじめ NdeIと XbaIで切断しゲル電気泳動で精製してあったプラスミドpCJR24に結合した。結合混合体をE. coli DH10B のエレクトロコンピテント細胞の形質転換に使用し、個々のクローンをチェックして目的のプラスミドpPFL35を得た。pPFL35の同定は制限分析によった。【0071】実施例12S. erythraea JC2/pPFL35 の作成プラスミドpPFL35を S. erythraea JC2プロトプラストの形質転換に使用した。10μg/mlのチオストレプトンを添加したR2T20 培養液でチオストレプトン耐性コロニーを選別した。いくつかのコロニーについて染色体と一体化したpPFL35の存在を、そのゲノムDNA とモジュール2アシルトランスフェラーゼをコードするrap PKS フラグメントをもつDIG 標識DNA とのサザンプロット法ハイブリダイゼーションにより調べた。pPFL35の一体化コピーをもつクローンをこのようにして同定した。【0072】実施例13S. erythraea JC2/pPFL35 の使用によるポリケチドの産生菌株S. erythraea JC2/pPFL35 の冷凍菌液を5μg/mlチオストレプトン添加eryP培養液に接種し、28〜30℃で7日間増殖させた。その後、培養液をろ過して菌糸体を除去し、pHをpH=3に調整した。培養液は2容量の酢酸エチルで2回抽出し、混合抽出物を等容量の飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、酢酸エチルを減圧除去して粗産物を得た。この産物は下図の構造を示し、またMS、GC−MSおよび1H NMR法によれば真正試料と同じであった:【0073】【化6】【0074】実施例14S. erythraea NRRL2338/pPFL35 の作成プラスミドpPFL35をS. erythraea NRRL2338 プロトプラストの形質転換に使用した。10μg/mlのチオストレプトンを添加したR2T20 培養液(Yamamoto et al.)でチオストレプトン耐性コロニーを選別した。いくつかのコロニーを試験して、そのゲノムDNA とモジュール2ATをコードするrap PKS フラグメントをもつDIG 標識DNA とのサザンプロット法ハイブリダイゼーションにより染色体と一体化したpPFL35の存在を調べた。pPFL35一体化コピーをもつクローンをこのようにして同定した。【0075】実施例15Sacch. erythraea NRRL-2338(pPFL35)の使用による13−メチル−エリスロマイシンAおよびBの産生菌株Saccharopolyspora erythraea NRRL2338 (pPFL35)は、野生型装入ドメインをオレアンドマイシンKSQ ラパマイシンAT2-D1TE DNAインサートで置き換えてあり、実施例14の説明どおりにつくった。これを300ml 三角フラスコ中の50μg/mlチオストレプトン添加30ml水道水培養液に接種した。29℃で2日間培養後に、このフラスコから300ml フラスコ中の300ml ERY-P 培養液に接種した。この培養液を29℃、200rpmで6日間保温した。その後、NaOHで培養液全体をpH8.5 に調整し、次いで等容量の酢酸エチルで抽出した。酢酸エチル抽出物を、Zymark TurboVap LV蒸発器を使用して窒素流下、45℃で蒸発乾燥させ、次いで0.25容量のメタノールで戻し、抽出物を4倍に濃縮した。この産物の構造はLC/MS、方法Aにより確認した。ピークは保持時間 4.0分で、13−メチル−エリスロマイシンA(C36H65NO13)に要求される m/z =720 (M+H)+で観察された。二次ピークは保持時間 6.4分で、13−メチル−エリスロマイシンB(C36H65NO13)に要求される m/z =704 (M+H)+で観察された。【0076】実施例16組み換えベクターpPFL44の作成プラスミドpPFL44はpCJR24ベースのプラスミドであり、スピラマイシンPKS 装入モジュール、エリスロマイシン延長モジュール1および2、それに鎖停止チオエステラーゼから成るハイブリッド・ポリケチドシンターゼをコードする遺伝子をもつ。プラスミドpPFL44は次のようにして作成した:次の合成オリゴヌクレオチド、すなわち5'-CCATATGTCTGGAGAACTCGCGATTTCCCGCAGT-3'および5'-GGCTAGCGGGTCGTCGTCGTCCCGGCTG-3'を使用して、Hopwood et al. (1985) によって説明された方法に従って作成したスピラマイシン産生菌S. ambofaciens由来の染色体DNA を鋳型に、スピラマイシン産生装入モジュールをコードするDNA を増幅した。得られた3.3kbpのPCR 産物をゲル電気泳動で精製しT4ポリヌクレオチド・キナーゼで処理してから、あらかじめ SmaIで切断し直鎖状にし次いでアルカリホスホターゼで処理してあったプラスミドpUC18 に結合した。結合混合体をE. coli DH10B のエレクトロコンピテント細胞の形質転換に使用し、個々のクローンをチェックして所望のプラスミドpPFL41を得た。プラスミドpPFL41の同定は制限パターンおよび配列分析によった。【0077】プラスミドpPFL41を NdeIと NheIで切断し、3.3kbp断片をゲル電気泳動で精製し、あらかじめ NdeIと NheIで切断しアルカリホスホターゼで処理してあったpND30 (プラスミドpCJR24由来のプラスミドで、ave PKS 装入モジュール、DEBSの延長モジュール1および2、それにDEBS鎖停止チオエステラーゼをインサートとしてもつ)(PCT/GB97/01810)に結合した。結合混合体をE. coli DH10B のエレクトロコンピテント細胞の形質転換に使用し、個々のクローンをチェックして目的のプラスミドpPFL44を得た。プラスミドpPFL44の同定は制限分析によった。【0078】実施例17S. erythraea JC2/pPFL44 の作成プラスミドpPFL44を S. erythraea JC2プロトプラストの形質転換に使用した。チオストレプトンを10μg/ml添加したR2T20 培養液でチオストレプトン耐性コロニーを選別した。いくつかのコロニーについて染色体と一体化したpPFL44の存在を、そのゲノムDNA と装入モジュールをコードするsrm PKS フラグメントを含むDIG 標識DNA とのサザンプロット法ハイブリダイゼーションより調べた。pPFL44の一体化コピーをもつクローンをこのようして同定した。【0079】実施例18S. erythraea JC2/pPFL44 の使用によるポリケチドの産生菌株S. erythraea JC2/pPFL44 の冷凍菌液を5μg/mlチオストレプトン添加eryP培養液に接種した。28〜30℃で7日間増殖させた後、培養液をろ過して菌糸体を除去し、pHをpH=3に調整した。次いで上清を2容量の酢酸エチルで2回抽出し、混合抽出物を等容量の飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、酢酸エチルを減圧除去して粗産物を得た。産物は下図の構造を示し、またGC−MSおよび1H NMR分析によれば真正物質と同じであった:【0080】【化7】【0081】実施例19Sacch. erythraea NRRL2338/pPFL44 の作成プラスミドpPFL44をS. erythraea NRRL2338 プロトプラストの形質転換に使用した。チオストレプトンを10μg/ml添加したR2T20 培養液でチオストレプトン耐性コロニーを選別した。いくつかのコロニーを試験して、そのゲノムDNA と装入モジュールをコードするスピラマイシンPKS フラグメントを含むDIG 標識DNA とのサザンプロット法ハイブリダイゼーションより染色体と一体化したpPFL44の存在を調べた。pPFL44の一体化コピーをもつクローンをこのようして同定した。【0082】実施例20Sacch. erythraea NRRL-2338(pPFL44)の使用による13−メチル−エリスロマイシンAおよびBの産生菌株Saccharopolyspora erythraea NRRL2338 (pPFL44)は、野生型装入ドメインをスピラマイシン装入D1TE DNAインサートで置き換えてあり、これを300ml 三角フラスコ中の50μg/mlチオストレプトン添加30ml水道水培養液に接種した。29℃で3日間培養後、このフラスコから300ml フラスコ中の300ml ERY-P 培養液に接種した。この培養液を29℃、200rpmで6日間保温した。その後、NaOHで培養液全体をpH8.5 に調整し、次いで等容量の酢酸エチルで抽出した。酢酸エチル抽出物を、Zymark TurboVap LV蒸発器を使用して窒素流下、45℃で蒸発乾燥させ、次いで0.0625容量のメタノールで戻し抽出物を16倍に濃縮した。この産物の構造はLC/MS、方法Aにより確認した。保持時間 4.0分のピークが主成分として、13−メチル−エリスロマイシンA(C36H65NO13)に要求される m/z =720 (M+H)+で観察された。二次ピークは保持時間 6.4分で、13−メチル−エリスロマイシンB(C36H65NO12)に要求される m/z =704 (M+H)+で観察された。【0083】実施例21プラスミドpJLK114の作成プラスミドpJLK114はpCJR24 ベースのプラスミドであり、ery 装入モジュール、ery PKS の第1および第2延長モジュール、およびery 鎖停止チオエステラーゼから成るPKS 遺伝子をもつ。ただし、第2ery 延長モジュールのアシルトランスフェラーゼの終点とACP 始点の間のDNA セグメントは、制限酵素 AvrII、 BglII、SnaBI、 PstI、 SpeI、 NsiI、 Bsu36Iおよび HpaIの認識部位をもつ合成オリゴヌクレオチド・リンカーによって置換されている。プラスミドpJLK114 は次のように、いくつかの中間プラスミドを経て作成した(図6):プラスミドpJLK02の作成S. erythraeaのeryAI遺伝子のDNA 断片約1.47kbp をPCR 法で増幅した。PCR では次の合成オリゴヌクレオチド5'-TACCTAGGCCGGGCCGGACTGGTCGACCTGCCGGGTT-3'および5'-ATGTTAACCGGTCGCGCAGGCTCTCCGTCT-3'をプライマーとし、またプラスミドpNTEP2(Oliynyk, M. et al., Chemistry and Biology (1996) 3 : 833-839 ; WO98/01546)を鋳型とした。PCR 産物をT4ポリヌクレオチド・キナーゼで処理し、次いで、あらかじめ SmaIで切断し直鎖状にしてからアルカリホスホターゼで処理しておいたプラスミドpUC18 に結合した。結合混合体をE. coli DH10B のエレクトロコンピテント細胞の形質転換に使用し、個々のコロニーについて含まれるプラスミドを調べた。所望のプラスミドpJLK02をその制限パターンとDNA 配列により同定した。【0084】プラスミドpJLK03の作成S. erythraeaのeryAIのDNA 断片約1.12kbp をPCR 法で増幅した。PCR では次の合成オリゴヌクレオチド5'-ATGTTAACGGGTCTGCCGCGTGCCGAGCGGAC-3'および5'-CTTCTAGACTATGAATTCCCTCCGCCCAGC-3'をプライマーとし、プラスミドpNTEPHを鋳型とした。PCR 産物はT4ポリヌクレオチド・キナーゼで処理し、あらかじめ SmaIで切断し直鎖状にしてからアルカリホスホターゼで処理しておいたプラスミドpUC18 に結合した。結合混合体をE. coli DH10B のエレクトロコンピテント細胞の形質転換に使用し、個々のコロニーについて含まれるプラスミドを調べた。所望のプラスミドpJLK03をその制限パターンとDNA 配列により同定した。【0085】プラスミドpJLK04の作成プラスミドpJLK02を PstIと HpaIで切断し、得られた1.47kbp インサートを、あらかじめ PstIと HpaIで切断しておいたプラスミドpJLK03に結合した。結合混合体をE. coli DH10B のエレクトロコンピテント細胞の形質転換に使用し、個々のクローンについて含まれるプラスミドを調べた。所望のプラスミドpJLK04をその制限パターンによって同定した。【0086】プラスミドpJLK05の作成プラスミドpJLK01(PCT/GB97/01819)を PstIとAvrII で切断し、得られた460bp インサートを、あらかじめ PstIとAvrII で切断しておいたプラスミドpJLK04に結合した。結合混合体をE. coli DH10B のエレクトロコンピテント細胞の形質転換に使用し、個々のコロニーについて含まれるプラスミドを調べた。所望のプラスミドpJLK05をその制限パターンによって同定した。【0087】プラスミドpJLK07の作成プラスミドPJLK05を ScaIと XbaIで切断し、またプラスミドpNTEPHを NdeIと ScaIで切断し、得られた2つの断片を、あらかじめ NdeIと XbaIで切断しておいたプラスミドpCJR24に結合した。結合混合体をE. coli DH10B のエレクトロコンピテント細胞の形質転換に使用し、個々のコロニーについて含まれるプラスミドを調べた。所望のプラスミドpJLK07をその制限パターンによって同定した。【0088】プラスミドpJLK114 の作成2種の合成オリゴヌクレオチドPlf およびPlb(図7)をそれぞれTE緩衝液に溶かした。各溶液(0.5nmol/μl)10μlを混合し、2分間加熱して65℃とし、次いで室温まで徐冷した。プラスミドpJLK07をAvrII と HpaIで切断し、アニーリング済みのオリゴヌクレオチドに結合した。結合混合体をE. coli DH10B のエレクトロコンピテント細胞の形質転換に使用し、個々のコロニーについて含まれるプラスミドを調べた。所望のプラスミドpJLK114 をその制限パターンによって同定した。【0089】プラスミドpJLK117 はpCJR24ベースのプラスミドであり、ery 装入モジュール、ery PKS の第1および第2延長モジュール、およびery 鎖停止チオエステラーゼから成るPKS 遺伝子をもつ。ただし、第2ery 延長モジュールのアシルトランスフェラーゼの終点とACP 始点の間のDNA セグメントは、制限酵素 AvrII、 BglII、SnaBI、 PstI、 SpeI、 NsiI、 Bsu36Iおよび NheIの認識部位をもつ合成オリゴヌクレオチド・リンカーによって置換されている。【0090】プラスミドpJLK117 は次のように、いくつかの中間プラスミドを経て作成した(図6)。プラスミドpJLK115 の作成プラスミドpJLK114 を NdeIと XbaIで切断し、約9.9kbpのインサートを、あらかじめ NdeIと XbaIで切断しておいたプラスミドpUC18 に結合した。結合混合体をE. coli DH10B のエレクトロコンピテント細胞の形質転換に使用し、個々のコロニーについて含まれるプラスミドを調べた。所望のプラスミドpJLK115 をその制限パターンにより同定した。【0091】プラスミドpJLK116 の作成プラスミドpJLK13(PCT/GB97/01819)を Bsu36Iと XbaIで切断し、得られた1.1kbpの断片を、あらかじめ Bsu36Iと XbaIで切断しておいたプラスミドpJLK115 に結合した。結合混合体をE. coli DH10B のエレクトロコンピテント細胞の形質転換に使用し、個々のコロニーについて含まれるプラスミドを調べた。所望のプラスミドpJLK116 をその制限パターンにより同定した。【0092】プラスミドpJLK117 の作成プラスミドpJLK116 を NdeIと XbaIで切断し、得られた9.9kbp断片を、あらかじめ NdeIと XbaIで切断しておいたプラスミドpCJR24に結合した。結合混合体をE. coli DH10B のエレクトロコンピテント細胞の形質転換に使用し、個々のコロニーについて含まれプラスミドを調べた。目的のプラスミドpJLK117 をその制限パターンにより同定した。【0093】実施例11プラスミドpJLK29の作成プラスミドpJLK29はpJLK117 ベースのプラスミドであるが、rap PKS のモジュール10の還元的ループをコードするDNA フラグメントがmcs に挿入されている。これは、次のようにいくつかの中間プラスミドを介して作成した(図5):プラスミドpJLK121.1 の作成モジュール10の還元的ループをコードするS. hygrpscopicusのrapB遺伝子の、約2.2kbpのDNA 断片をPCR 法で増幅した。プライマーには合成オリゴヌクレオチド5'-TAAGATCTTCCGACGTACGCGTTCCAGC-3'および5'-ATGCTAGCCACTGCGCCGACGAATCACCGGTGG-3' を使用し鋳型にはコスミドcos 26 (Schwecke, T. et al. (1995) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92 : 7839-7843)を ScaIと SphIで切断して得られた約7kbp の断片を使用した。PCR 産物をT4ポリヌクレオチド・キナーゼで処理し、あらかじめ SmaIで切断し直鎖状にしてからアルカリホスホターゼで処理しておいたプラスミドpUC18 に結合した。結合混合体をE. coli DH10B のエレクトロコンピテント細胞の形質転換に使用し、個々のコロニーについて含まれるプラスミドを調べた。所望のプラスミドpJLK121.1 をその制限パターンとDNA 配列により同定した。【0094】プラスミドpJLK29の作成プラスミドpJLK121.1 を BglIIと NheIで切断し、得られた2.2kbp断片を、あらかじめ BglIIと NheIで切断しておいたプラスミドpJLK117 に結合した。結合混合体をE. coli DH10B のエレクトロコンピテント細胞の形質転換に使用し、個々のコロニーについて含まれるプラスミドを調べた。目的のプラスミドpJLK29をその制限パターンにより同定した。【0095】実施例24プラスミドpJLK50の作成S. erythraeaのエリスロマイシンPKS 遺伝子群の、モジュール2のACP 始点からモジュール3のACP 始点までのDNA フラグメントをコードする約6.1kbpのDNA 断片をPCR 法で増幅した。プライマーには合成オリゴヌクレオチド5'-TACCTGAGGGACCGGCTAGCGGGTCTGCCGCGTG-3'および5'-ATGCTAGCCGTTGTGCCGGCTCGCCGGTCGGTCC-3'を使用し鋳型にはプラスミドpBAM25 (Best, D.J et al., Eur. J. Biochem. (1992) 204 : 39-49 によりpBK25 として公表された)を使用した。PCR 産物をT4ポリヌクレオチド・キナーゼで処理し、あらかじめ SmaIで切断し直鎖状にしてからアルカリホスホターゼで処理しておいたプラスミドpUC18 に結合した。結合混合体をE. coli DH10B のエレクトロコンピテント細胞の形質転換に使用し、個々のコロニーについて含まれるプラスミドを調べた。目的のプラスミドpJLK50をその制限パターンとDNA 配列により同定した。【0096】実施例25S. erythraea株JLK10 の作成JLK10 株はNRRL2338株の変種であり、ery モジュール2の還元的ループ(=KRドメイン)をラパマイシン・モジュール10の還元的ループで置換してある。その作成にはプラスミドpJLK54を使用したが、pJLK54は次のようにして作成した:プラスミドpJLK54の作成プラスミドpJLK54はpJLK29ベースのプラスミドであり、ery 装入モジュール、ery 群の第1、第2および第3延長モジュール、それにery 鎖停止チオエステラーゼから成るPKS 遺伝子群をもつが、第2ery 延長モジュールのアシルトランスフェラーゼ始点とACP 始点の間のDNA セグメントをラパマイシンPKS のモジュール10の同等セグメントで置換してある。作成方法は次のとおり。【0097】プラスミドpJLK50を NheIで切断し、得られた6.1kbpインサートを、あらかじめ NheIで切断しておいたプラスミドpJLK29に結合した。結合混合体をE. coli DH10B のエレクトロコンピテント細胞の形質転換に使用し、個々のコロニーについて含まれるプラスミドを調べた。目的のプラスミドpJLK54をその制限パターンにより同定した。【0098】S. erythraea NRRL2338/pJLK54 の作成へのプラスミドpJLK54の使用とTKL 誘導体の産生約5μgのプラスミドpJLK54をS. erythraea NRRL2338 のプロトプラストの形質転換に使用し、安定的なチオストレプトン耐性コロニーを単離した。いくつかのコロニーから全DNA を獲得し、サザンブロット法で分析して、このプラスミドがTEと一体化していることを確認した。【0099】S. erythraea株JLK10の作成と13−メチル−10,11−デヒドロ−エリスロマイシンAの産生への使用S. erythraea株JLK10 はS. erythraea NRRL2338 の突然変異種であり、ery モジュール2の「還元的ループ」、すなわちケトレダクターゼ・ドメインをラパマイシン・モジュール10の「還元的ループ」で置換してある。その作成はプラスミドPJLK54を組み込んだS. erythraea NRRL2338 から始まった。S. erythraea NRRL2338 /pJLK54を数次にわたって非選択的に増殖させると結果的に、組み込んだプラスミドの消失に伴い二次乗り換えが起こる。DEBS1に対応するエリスロマイシン遺伝子コーディングに突然変異版が取って代わったクローンをサザンブロット法で特定した。そのうちの1つをS. erythraea株JLK10 と命名した。これをSM3培養液に接種し(eryP培養液でも同様の結果が得られた)、28〜30℃で7〜10日間増殖させた。その後、培養液を遠心分離にかけ、上清のpHをpH9に調整した。次いで、上清を等容量の酢酸エチルで3回抽出し、溶媒を蒸発除去した。得られた産物をHPLC/MS、MS/MSおよび1H-NMRにより分析した。次のようなマクロライドC−13メチルエリスロマイシンAが同定された(ポストPKS 酵素による不完全プロセッシングの産物が随伴)。【0100】【化8】【0101】実施例26プラスミドpPFL50の作成プラスミドpPFL50はpPFL43ベースのプラスミドであり、エリスロマイシンPKS のKR1(一部分)、ACP1およびモジュール2、それにエリスロマイシンETをコードするDNA フラグメントを除去してある。その作成方法は次のとおり。プラスミドpPFL43を SfuIと XbaIで切断し、6.5kbpフラグメントを除去した。5’の突出型末端をKlenowフラグメントDNA ポリメラーゼIで埋めもどしプラスミドを再環状化した。この結合混合体をE. coli DH10B のエレクトロコンピテント細胞の形質転換に使用し、個々のコロニーについて含まれるプラスミドを調べた。目的のプラスミドpPFL50をその制限パターンにより同定した。【0102】S. erythraea JLK10/pPFL50の作成約5μgのプラスミドpPFL50をS. erythraea株JLK10 のプロトプラストの形質転換に使用し、安定的なチオストレプトン耐性コロニーを単離した。いくつかのコロニーから全DNA を獲得し、サザンブロット法で分析して、このプラスミドが相同染色体DNA 領域に組み込まれていることを確認した。S. erythraea株JLK10 /pPFL50を、5μg/mlのチオストレプトンを含むSM3培養液(5μg/mlのチオストレプトンを含むeryP培養液でも同様の結果が得られた)に接種し、28〜30℃で7〜10日間増殖させた。その後、培養液を遠心分離にかけ、上清のpHをpH9に調整した。次いで、上清を等容量の酢酸エチルで3回抽出し、溶媒を蒸発除去した。得られた産物をHPLC/MS、MS/MSおよび1H-NMRにより分析した。マクロライドC−13−メチル−10,11−デヒドロ−エリスロマイシンAが同定された(ポストPKS 酵素による不完全プロセッシングの産物を随伴)。【0103】S. erythraea NRRL2338 /pPFL50の作成約5μgのプラスミドpPFL50をS. erythraea NRRL2338 のプロトプラストの形質転換に使用し、安定的なチオストレプトン耐性コロニーを単離した。いくつかのコロニーから全DNA を獲得し、サザンブロット法で分析して、このプラスミドが相同染色体DNA 領域に組み込まれていることを確認した。S. erythraea NRRL2338 /pPFL50を、5μg/mlのチオストレプトンを含むSM3培養液(5μg/mlのチオストレプトンを含むeryP培養液でも同様の結果が得られた)に接種し、28〜30℃で7〜10日間増殖させた。その後、培養液を遠心分離にかけ、上清のpHをpH9.5 に調整した。次いで、上清を等容量の酢酸エチルで3回抽出し、溶媒を蒸発除去した。得られた産物をHPLC/MS、MS/MSおよび1H-NMRにより分析した。マクロライドC−13メチル−エリスロマイシンAが同定された(ポストPKS 酵素による不完全プロセッシングの産物を随伴)。【0104】プラスミドpCB121の作成プラスミドpCB121は、モネンシン装入モジュールとモネンシン・モジュール1のKS、それに続くエリスロマイシン・モジュール1ATとエリスロマイシン・モジュールKRの一部を含むプラスミドである。これは次のように、いくつかの中間プラスミドを介して作成した。【0105】プラスミドpPFL45の作成Streptomyces cinnamonensisのモネンシンPKS 遺伝子群の、装入モジュールとモジュール1のKSをコードする約1.8kbp DNA断片をPCR 法で増幅した。プライマーには次の合成オリゴヌクレオチド5'-CGTTCCTGAGGTCGCTGGCCCAGGCGTA-3'および5'-CGAAGCTTGACACCGCGGCGCGGCGCGG-5'を、また鋳型にはS. cinnamonensis由来のモネンシンPKS 遺伝子群の5’末端を含むコスミドまたはS. cinnamonensisの染色体DNA を、それぞれ使用した。PCR 産物はT4ポリヌクレオチド・キナーゼで処理し、あらかじめ SmaIで切断し直鎖状にしてからアルカリホスホターゼで処理しておいたプラスミドpUC18 に結合した。結合混合体をE. coli DH10B のエレクトロコンピテント細胞の形質転換に使用し、個々のコロニーについて含まれるプラスミドを調べた。所望のプラスミドpPFL45をその制限パターンにより同定した。【0106】プラスミドpPFL47の作成プラスミドpPFL45を NdeIと Bsu36Iで切断し、得られた約2.6kbpの断片を、 NdeIと Bsu36Iで切断しておいたプラスミドpPFL43に結合した。結合混合体をE. coli DH10B のエレクトロコンピテント細胞の形質転換に使用し、個々のコロニーについて含まれるプラスミドを調べた。所望のプラスミドpPFL47をその制限パターンにより同定した。【0107】プラスミドpCB135の作成プラスミドpCJR24をHindIII で切断し、5’の突出型末端をKlenowフラグメントDNA ポリメラーゼIで埋めもどし再結合した。結合混合体をE. coli DH10B のエレクトロコンピテント細胞の形質転換に使用し、個々のコロニーについて含まれるプラスミドを調べた。所望のプラスミドpCB135を、HindIII の認識部位を欠くその制限パターンにより同定した。【0108】プラスミドpKSW1 の作成プラスミドpKS1W はpNTEP2 (GB97/01810)由来のベクターであり、DEBS1TE 由来のトリケチド・シンターゼを含む。このシンターゼはKS1 の境界に独特の制限酵素認識部位が導入されている。プラスミドpKS1W は次のように、いくつかの中間プラスミドを介して作成した。【0109】プラスミドpM009 、pM010 およびpM013 の作成プラスミドpM009 のPCR 法による増幅には次の合成オリゴヌクレオチドを突然変異誘発プライマーとして使用したが、1つは MunI認識部位を、もう1つは PstI認識部位をそれぞれ含む:5'-GCGCGCCAATTGCGTGCACATCTCGAT-3'および5'-CCTGCAGGCCATCGCGACGACCGCGACCGGTTCGCCG-3'プラスミドpM010 のPCR 法による増幅には次の合成オリゴヌクレオチドを突然変異誘発プライマーとして使用したが、1つはHindIII 部位を、もう1つはEcoRV部位をそれぞれ含む:5'-GTCTCAAGCTTCGGCATCAGCGGCACCAA-3'および5'-CGTGCGATATCCCTGCTCGGCGAGCGCA-3'プラスミドpM013 のPCR 法による増幅には次の合成オリゴヌクレオチドを突然変異誘発プライマーとして使用したが、1つは PstI部位を、もう1つはHindIII 部位をそれぞれ含む:5'-GATGGCCTGCAGGCTGCCCGGCGGTGTGAGCA-3'および5'-GCCGAAGCTTGAGACCCCCGCCCGGCGCGGTCGC-3'PCR はpNTEP2 (GB97/01810)を鋳型とし、Pwo DNA ポリメラーゼを使用して、10%(vol/vol)ジメチルスルホキシドの存在下で、96℃(1分);50℃でのアニーリング(3分);72℃での延長(1分)を1サイクル、また96℃(1分);50℃でのアニーリング(1分);72℃での延長(1分)を25サイクル、実施した。得られた産物は末端を修復し、 SmaIで切断したpUC18 に導入し、この結合混合体によりE. coli DH10B を形質転換させた。個々のコロニーからプラスミドDNA を得た。所望のプラスミドpM009 (3.8kbp)、pM010 (3.9kbp)およびpM013 (4.3kbp)をそれぞれの制限パターンとDNA 配列により同定した。【0110】プラスミドpM0011の作成プラスミドpM013 をHindIII で切断し、1.2kbpインサートをあらかじめHindIII で切断しておいたpM010 に導入した。得られた結合混合体をE. coli DH10B の形質転換に使用した。所望のプラスミド(5.0kbp)をその制限パターンとDNA 配列により同定しpM011 と命名した。【0111】プラスミドpM012の作成プラスミドpM009 を PstIで切断し、1.6kbpインサートをあらかじめ PstIで切断しておいたpM011 に導入した。得られた結合混合体をE. coli DH10B の形質転換に使用した。所望のプラスミド(6.6kbp)をその制限パターンにより同定し、pM012 と命名した。【0112】pKS1W の作成プラスミドpM012 を MunIとEcoRVで切断し、3.9kbp断片をあらかじめ MunIとEcoRVで切断しておいたpNTEPH(以下を参照)に導入した。この結合混合体をE. coli DH10B の形質転換に使用した。所望のプラスミド(13.0kbp)をその制限パターンにより同定し、pKS1W と命名した。【0113】pNTEPHの作成プラスミドpNTEPHはpNTEP2から、HindIII 部位を除去することにより得られた。pNTEP2をHindIII により切断し、5’の突出型末端をKlenowフラグメントDNA ポリメラーゼで埋めもどし再結合した。所望のプラスミド(13.6kbp)をその制限パターンにより同定した。【0114】プラスミドpCB136の作成pKSW1 を NdeIと XbaIで切断し、約11.2kbp の断片をあらかじめ NdeIと XbaIで切断しておいたプラスミドpCB135に結合した。結合混合体をE. coli DH10B のエレクトロコンピテント細胞の形質転換に使用し、個々のコロニーについて含まれるプラスミドを調べた。所望のプラスミドpCB136をその制限パターンにより同定した。【0115】プラスミドpCB137の作成プラスミドpCB136を SfuIと XbaIで切断し、6.5kbp断片を除去し、5’の突出型末端をKlenowフラグメントDNA ポリメラーゼIで埋めもどし再結合した。この結合混合体をE. coli DH10B のエレクトロコンピテント細胞の形質転換に使用し、個々のコロニーについて含まれるプラスミドを調べた。所望のプラスミドpCB137をその制限パターンにより同定した。【0116】プラスミドpCB121の作成プラスミドpPFL47を NdeIとHindIII で切断し、約4.4kbpのインサートをあらかじめ NdeIとHindIII で切断しておいたプラスミドpCB137に結合した。結合混合体をE. coli DH10B のエレクトロコンピテント細胞の形質転換に使用し、個々のコロニーについて含まれるプラスミドを調べた。目的のプラスミドpCB121をその制限パターンにより同定した。【0117】実施例S. erythraea JLK10 /pCB121の作成約5μgのプラスミドpCB121をS. erythraea株JLK10 のプロトプラストの形質転換に使用し、安定的なチオストレプトン耐性コロニーを単離した。いくつかのコロニーから全DNA を獲得し、サザンブロット法で分析して、このプラスミドが相同染色体DNA 領域に組み込まれていることを確認した。S. erythraea株JLK10 /pCB121を、5μg/mlのチオストレプトンを含むSM3培養液(5μg/mlのチオストレプトンを含むeryP培養液でも同様の結果が得られた)に接種し、28〜30℃で7〜10日間増殖させた。その後、培養液を遠心分離にかけ、上清のpHをpH9に調整した。次いで、上清を等容量の酢酸エチルで3回抽出し、溶媒を蒸発除去した。得られた産物をHPLC/MS、MS/MSおよび1H-NMRにより分析した。マクロライドC−13−メチル−10,11−デヒドロ−エリスロマイシンAが同定された(ポストPKS 酵素による不完全プロセッシングの産物を随伴)。【0118】実施例S. erythraea NRRL2338 /pCB121の作成約5μgのプラスミドpCB121をS. erythraea NRRL2338 のプロトプラストの形質転換に使用し、安定的なチオストレプトン耐性コロニーを単離した。いくつかのコロニーから全DNA を獲得し、サザンブロット法で分析して、このプラスミドが相同染色体DNA 領域に組み込まれていることを確認した。S. erythraea NRRL2338 /pCB121を、5μg/mlのチオストレプトンを含むSM3培養液(5μg/mlのチオストレプトンを含むeryP培養液でも同様の結果が得られた)に接種し、28〜30℃で7〜10日間増殖させた。その後、培養液を遠心分離にかけ、上清のpHをpH=9に調整した。次いで、上清を等容量の酢酸エチルで3回抽出し溶媒を蒸発除去した。得られた産物をHPLC/MS、MS/MSおよび1H-NMRにより分析した。マクロライドC13−エリスロマイシンAが同定された(ポストPKS 酵素による不完全プロセッシングの産物を随伴)。【0119】本発明は以上の実施例により具体的に説明されるが、以上の実施例をもって本発明の範囲を制限するものとみなすべきではない。以上の記述は、全面的または部分的に異種のKSq を含む装入モジュールをもつI型PKS 遺伝子アセンブリーの作成およびその、有用ポリケチド産物、たとえば合成中間体または抗生物質などのような生理活性物質を得ることを目的とした使用について初めて具体的に説明している。他のPKS 遺伝子群に由来する、全面的または部分的に異種のKSq を含む装入モジュールをもってこのDEBS装入モジュールの代用とすることが、またはまったく別種のPKS 遺伝子アセンブリーを作成することさえも可能であることは、当業者には容易に思い浮かぶであろう。また、ATq によるメチルマロニルCoA とマロニルCoA の間のもっと効果的な弁別とそれに続くKsq による特異的脱炭酸作用によって特異性を強めるほうが、開始ユニットの性質が互いに異なる混合物ではなく単一産物の産生を最大化するという意味で、DEBS装入モジュールおよび他の多数のPKS 装入モジュールの特徴となっているプロピオニルCoA とアセチルCoA の間の不完全な弁別より好ましいことも当業者には容易に思い浮かぶであろう。そうした混合物の産生を防ぐようにすれば、収量が増すうえに煩わしく困難な分離作業も不要になる。【図面の簡単な説明】【図1】 図1はエリスロマイシンAの前駆体である6−デオキシエリスロノリドB(6−DEB)を産生するモジュール構造のPKS 、6−デオキシエリスロノリドBシンターゼ(DEBS)の機能を図解している。【図2】 図2は代表的なII型PKS 遺伝子群のKSドメインとCLF ドメインのアミノ酸配列比較である。図ではKSドメインの活性部位システイン(C)を矢印で示し、CLF ドメインのグルタミン(Q)またはグルタミン酸(E)と整列させてある。使用した略号と関連の Genbank/EMBL登録番号は次のとおり:GRA :グラナチシン−Streptomyces violaceoruber由来(X63449);HIR :未知ポリケチド−Saccharopolyspora hirsuta 由来(M98258):ACT :アクチノロジン−Streptomyces coelicolor由来(X63449);CIN :未知ポリケチド−Streptomyces cinnamonensis由来(Z11511);VNZ :ジャドマイシン−Streptomyces venezuelae由来(L33245);NOG :アントラサイクリン−Streptomyces nogalater 由来(Z48262);TCM :テトラセノマイシン−S. glaucescens 由来(M80674);DAU :ダウノマイシン−Streptomyces sp. C5由来(L34880);PEU :ドキソルビシン−Streptomyces peucetius由来(L35560);WHI :WhiE胞子色素−Streptomyces coelicolor由来(X55942)。【図3A】 図3は16員環マクロライドのチロシン、スピラマイシンおよびニッダマイシンに対応するPKS の遺伝子構成を示す。【図3B】 図3は16員環マクロライドのチロシン、スピラマイシンおよびニッダマイシンに対応するPKS の遺伝子構成を示す。【図4A】 図4はニッダマイシン、プラテノリド(スピラマイシン)、モネンシン、オレアンドマイシンおよびチロシンに対応するPKS のKSq-ATq 装入ジドメインのアミノ酸配列を整列比較している。モネンシンおよびオレアンドマイシン装入ジドメインの配列はこれまで開示されたことがない。【図4B】 図4はニッダマイシン、プラテノリド(スピラマイシン)、モネンシン、オレアンドマイシンおよびチロシンに対応するPKS のKSq-ATq 装入ジドメインのアミノ酸配列を整列比較している。モネンシンおよびオレアンドマイシン装入ジドメインの配列はこれまで開示されたことがない。【図4C】 図4はニッダマイシン、プラテノリド(スピラマイシン)、モネンシン、オレアンドマイシンおよびチロシンに対応するPKS のKSq-ATq 装入ジドメインのアミノ酸配列を整列比較している。モネンシンおよびオレアンドマイシン装入ジドメインの配列はこれまで開示されたことがない。【図5】 図5は、Saccharopolyspora erythraeaで6−デオキシエリスロノリドBをエリスロマイシンAに転換する酵素ステップである。【図6】 図6はプラスミドpJLK117の構築手順の図解である。【図7】 図7は2個のオリゴヌクレオチドの構造を示す。 装入モジュールと複数個の延長モジュールを含むポリケチド合成酵素であって、 a)前記装入モジュールは、マロニル及び置換マロニルから選ばれる残基を装入し、次いで装入された残基に脱炭酸反応を起こさせて、前記延長モジュールの1番目に転移されることになる、対応のアセチル又は置換アセチル残基をもたらし、かつ、前記装入モジュールは、以下の: (デカルボキシ)−(AT)−(ACP){ここで、(ACP)は、アシル担体タンパク質ドメインであり、 (AT)は、マロニル又は置換マロニルを装入するアシルトランスフェラーゼ・ドメインであり、そして (デカルボキシ)は、装入されたマロニル又は置換マロニルの脱炭酸を引き起こすドメインであり、かつ、以下の: (i)前記延長モジュールのKSドメインとは、その活性部位内のシステインの代わりにグルタミン残基をもつことにより、相違するKSqというケトシンターゼ型ドメイン、及び (ii)鎖長因子(CLF)、から選ばれる。}の形態を有し、そして b)前記延長モジュールの少なくとも1番目は、天然では、マロニル又は置換マロニルの脱炭酸を引き起こす装入モジュールには、結合していない、 但し、(1)前記合成酵素は、スピラマイシン・ポリケチド合成酵素に結合したチロシン・ポリケチド合成酵素の装入モジュールからその天然装入モジュールを欠いたものから構成されておらず、かつ、(2)前記ポリケチド合成酵素により生産されるポリケチドは、非置換アセテート開始物質の取り込みに因り13−メチル基をもつ14−員マクロライドではない、前記ポリケチド合成酵素。 前記(カルボキシ)ドメインは、KSqドメインである、請求項1に記載のポリケチド合成酵素。 前記KSqドメインは、活性部位のシステイン残基がグルタミン残基に変異されている延長モジュールからのKSドメインに、由来する、請求項2に記載のポリケチド合成酵素。 前記(カルボキシ)ドメインは、CLFドメインである、請求項1に記載のポリケチド合成酵素。 前記装入モジュールのATドメインは、その活性部位内にアルギニン残基をもつ、請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリケチド合成酵素。 前記ATドメインは、天然の延長モジュールのATドメインである、請求項5に記載のポリケチド合成酵素。 前記KSqドメインは、KSドメインの活性部位のシステイン残基のグルタミン残基への変異により、延長モジュールからのKSドメインから、誘導され、ここで、前記KSドメインとATドメインは、天然では、前記延長モジュール内で一緒に存在する、請求項6に記載のポリケチド合成酵素。 前記ATドメインは、マロニルの装入に特異的である、請求項1〜7のいずれか1項に記載のポリケチド合成酵素。 前記ATドメインは、メチルマロニルの装入に特異的である、請求項1〜7のいずれか1項に記載のポリケチド合成酵素。 前記ATドメインは、モネンシン・ポリケチド合成酵素の第5モジュールのATドメイン、及びスピラマイシン・ポリケチド合成酵素の第5モジュールのATドメインから選ばれる、請求項1〜7のいずれか1項に記載のポリケチド合成酵素。 少なくとも前記KSqドメインは、オレアンドマイシン、スピラマイシン、ニッダマイシン、メチマイシン、及びモネンシンから選ばれるポリケチド合成多酵素の装入モジュールに由来する、請求項1〜3、又は5〜9のいずれか1項に記載のポリケチド合成酵素。 請求項1〜11のいずれか1項に記載のポリケチド合成酵素をコードする核酸。 請求項12に記載の核酸を含むベクター。 請求項12に記載の核酸を含む非ヒト形質転換体生物。 請求項14に記載の生物を培養することおよびポリケチドを回収することを含む、ポリケチドの製法。 前記ポリケチド合成酵素は、以下の: (a)アセテート開始ユニットをもつ12員環マクロライド及び16員環のマクロライド、 (b)プロピオネート開始ユニットをもつ12員環マクロライド、14員環マクロライド、及び16員環マクロライド、 (c)アセテート開始ユニット又はプロピオネート開始ユニットを取り込んだ、その天然化合物とは相違する、リファマイシン、アベルメクチン、ラパマイシン、イムノマイシン、及びFK506の変種、及び (d)前記開始ユニットが、アリル及びヒドロキシメチルから選ばれる側鎖を生じさせるポリケチド、から選ばれるポリケチドを合成することができる、請求項1〜11のいずれか1項に記載のポリケチド合成酵素。 前記装入モジュールのATドメインは、以下の: (a)ニッダマイシン・ポリケチド合成酵素の第6延長モジュールのAT、及び (b)FK506ポリケチド合成酵素の第4延長モジュールのAT、から選ばれる、請求項16に記載のポリケチド合成酵素。 II型ポリケチド合成酵素(PKS)を含有する生物を培養することを含む、II型ポリケチドの製法であって、 (a)野生型PKSが、不所望の開始ユニットを生成する脱炭酸反応を引き起こすCLFドメインを含み、かつ、 (b)前記野生型PKSが、活性部位のグルタミン残基をアラニン残基に変異させることにより、前記CLFの脱炭酸活性を抑制するように遺伝子操作されている、前記製法。