タイトル: | 特許公報(B2)_急性または成人型呼吸窮迫症候群(ARDS)および新生児呼吸窮迫症候群(IRDS)の治療のための、フェニルアミノチオフェン酢酸誘導体を含有する組成物 |
出願番号: | 2000555612 |
年次: | 2010 |
IPC分類: | A61K 31/381,A61K 31/683,A61K 38/00,A61K 45/00,A61P 11/00,A61P 43/00,C07D 333/36 |
パウル−ゲオルク ゲルマン クラウス アイシュテッター ウルリヒ キリアン ディートリヒ ヘフナー JP 4503835 特許公報(B2) 20100430 2000555612 19990619 急性または成人型呼吸窮迫症候群(ARDS)および新生児呼吸窮迫症候群(IRDS)の治療のための、フェニルアミノチオフェン酢酸誘導体を含有する組成物 ニコメッド ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング 507229021 Nycomed GmbH 矢野 敏雄 100061815 山崎 利臣 100094798 久野 琢也 100099483 アインゼル・フェリックス=ラインハルト 100114890 ラインハルト・アインゼル 230100044 パウル−ゲオルク ゲルマン クラウス アイシュテッター ウルリヒ キリアン ディートリヒ ヘフナー DE 198 27 907.8 19980623 20100714 A61K 31/381 20060101AFI20100624BHJP A61K 31/683 20060101ALI20100624BHJP A61K 38/00 20060101ALI20100624BHJP A61K 45/00 20060101ALI20100624BHJP A61P 11/00 20060101ALI20100624BHJP A61P 43/00 20060101ALI20100624BHJP C07D 333/36 20060101ALN20100624BHJP JPA61K31/381A61K31/683A61K37/02A61K45/00A61P11/00A61P43/00C07D333/36 A61K9/00-9/72, A61K31/33-31/80, A61K45/00-45/08, A61K47/00-47/48, A61P1/00-43/00, CAplus(STN), REGISTRY(STN), PubMed 国際公開第83/002672(WO,A1) 欧州特許出願公開第00005559(EP,A1) RINALDO,J.E. et al,Effect of methylprednisolone and of ibuprofen, a nonsteroidal antiinflammatory agent, on bronchoalveolar inflammation following endotoxemia,Circ Shock,1985年,Vol.16, No.2,p.195-203,Abstract 8 EP1999004276 19990619 WO1999066926 19991229 2002518445 20020625 8 20060517 澤田 浩平 【0001】技術分野本発明は、新生児呼吸窮迫症候群(IRDS)および急性または成人型呼吸窮迫症候群(ARDS)と称される病状の治療のための新規組成物に関する。【0002】従来技術成人型呼吸窮迫症候群(ARDS)とは、深刻なガス交換障害(特に動脈低酸素症)に関連する場合に、様々な病因による急性で広汎の浸潤性肺疾患を示す言葉である。新生児呼吸窮迫症候群(IRDS)と多くの共通した臨床的および病理学的特徴を有することから、ARDSという表現を使用する。ただし、IRDSの場合には、早産により誘起される肺表面活性物質障害が主要因であるのに対し、ARDSでは、様々な病因による肺疾患が誘起する肺表面活性物質の機能不全である。【0003】例えばARDSを誘起する引き金となるのは(Harrison's Principles of Internal Medicine 第10版、1983 McGraw-Hill Int. Book Compに従って引用)、広汎性の肺汚染(例えばウイルス、細菌、真菌に起因する)、胃液のようなものの吸引または溺死に近い状態、毒または刺激物(例えば塩素ガス、窒素酸化物、煤煙)の吸入、直接のまたは間接の傷害(例えば多発性骨折または肺挫傷)、肺以外の炎症に対する全身反応(例えば出血性膵炎、グラム陰性菌敗血症)、大量の血液の輸血または場合により心−肺バイパス後の輸血である。【0004】死亡率は50〜60%であり(Schuster Chestの調査1995, 107:1721〜26)、ARDS患者の予後に関しては今もって非常に悪い。【0005】ARDSの治療には、主に、体外膜型酸素化装置(ECMO:Zapol and Lemaire Adult Respiratory Distress Syndrome, Marcel Dekker Inc. 1991)のような早期に可能な種々の形態の換気処置が含まれる(例えばPEEP(終末呼気陽圧)、呼吸気の酸素濃度の増加、SIMV(患者の自発呼吸に一致させた間欠的強制換気;(Harrison's Principles of Internal Medicine 第10版、1983 McGraw-Hill Int. Book Comp))。【0006】標的を絞って様々な換気技術を使用しても死亡率は僅かに低下するにすぎず、悪循環を引き起こす危険性を孕んでいる。加圧および高FiO2(Fraction of Inspired Oxygen=吸酸素分画;呼吸器中の酸素の割合)での換気により、肺自体が損傷を受け、その結果、血液を十分に酸素化するにはより高い圧力およびより高いFiO2が必要となる。【0007】前記の問題点の解決には様々な取り組み方法がある。これらの方法には、肺表面活性物質の代理形成(調査、例えばB. Lachmann, D. GommersおよびE.P. Eijking: Exogenous surfactant therapy in adults, Atemw- Lungenkrkh, 1993, 19:581〜91;T.J. Gregory等:Bovine Surfactant Therapy for Patients with Acute Respiratory Distress Syndrome, Am. J. Respir. Crit. Care Med. 1997 Vol 155, 1309〜1315)ならびにプロスタグランジンE1(PGE1:Abraham等、Crit Care Med 1996, 24:10〜15)またはグルココルチコステロイド(Bernard等、N Engl J Med 1987、317:1565〜70)のような単なる抗炎症性の治療までが含まれる。肺表面活性物質の投与はある程度の成功を収めたが(例えばWalmrath等、Am J Resp Crit Care Med 1996, 154:57〜62)、単なる抗炎症性の治療は、今のところほとんど成功していない。このことは、ARDSに関する病理学的または組織病理学的所見に対し、相当の対照を成している。すなわち、広範の多形核白血球浸潤(調査、例えばThiel等、Anaesthesist 1996、45:113〜130)がARDS患者の肺および洗浄液にみられ、多くの炎症メディエーターが検出できる。リポソーム静脈投与形のPGE1(Abaham等、Crit Care Med 1996, 10〜15)およびホスファチジル酸の阻害を目的とした物質(例えばイソフィリン;Rice等、Proc Natl Acad Sci 1994, 91:3857〜61)または組み換えヒトインターロイキン1(IL−1)受容体拮抗剤(Fisher等、JAMA 1994, 271:1836〜43)は、なお研究中である。しかし、PGE1およびIL−1受容体拮抗剤はいずれも、その副作用のために臨床での利用を制限されており、臨床研究は終了されているかまたは成功を収めていない。【0008】WO96/09831には、グルココルチコステロイドおよび肺表面活性物質を含む、ARDSおよびIRDSの治療用組成物が記載されている。【0009】EP−B−0451215には、薬理学的に活性な化合物を肺を経由して投与するための組成物が記載されている。これらの組成物には、薬理学的に活性な化合物および肺表面活性タンパク質を含有するリポソームが含まれる。これらの系は同様に、ARDSおよびIRDSの治療を目的としている。EP−B−0055041には、呼吸組織の疾患に対して活性な化合物および天然の肺表面活性物質を含有する、呼吸組織の疾患を治療するための吸入剤または輸液の製造が記載されている。ARDSまたはIRDSの治療のための製造については開示されていない。【0010】発明の説明意外にも、式I:【0011】【化2】【0012】[式中、R1は、水素または2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルである]の化合物と肺表面活性物質とを組み合わせて投与することにより、IRDSおよびARDSの治療に相乗的な効果をもたらすことができる。【0013】従って、本発明は、式Iの化合物(R1は前記の定義である)および/または該化合物の薬理学的に認容性の塩ならびに肺表面活性物質を含有する、IRDSまたはARDSの治療のための組成物を提供する。【0014】本発明の更なる実施態様は、請求項に従う。【0015】式Iの化合物の製造および、その抗炎症薬としての使用については、EP−B1−0005559に記載されている。【0016】式Iの化合物の薬理学的に認容性の塩で好適なものは、特にR1が水素であり、塩基を有する塩である。その例は、アルカリ金属(リチウム、ナトリウム、カリウム)またはカルシウム、アルミニウム、マグネシウム、チタン、アンモニウム、メグルミンまたはグルニジウム塩であり、塩の製造時には、等モル比または異なる比の塩基を使用する(一塩基性塩基または多塩基性塩基であるか、ならびにどの塩が所望されるかに依存する)。【0017】天然の肺表面活性物質は、例えば肺胞の表面張力を減少させるという表面−活性特性を有する。肺表面活性物質の表面活性を測定するための簡易で迅速なin vitro試験は;例えば、いわゆるヴィルヘルミーバランス[Goerke, J Biochim Biophys Acta, 344:241〜261(1974), King R. J.およびClements J. A. Am J Physicol 233:715〜726(1972)]である。この方法により、ほぼ0mN/mの表面張力を獲得するための肺表面活性物質の作用として測定される、肺表面活性物質の質が明らかになる。【0018】ヴィルヘルミーバランスの試験では、定義されたリン脂質濃度を有する肺表面活性物質の懸濁液を水溶液に注入する。リン脂質は、気体/液体相境界に分配され、いわゆる単一層を形成する。この単一層は、水の表面張力を低下させる。小さな白金シートを注意深く溶液へ入れる。白金シートを下方向へ引っ張る力を、鋭敏な変圧器を使用して測定する。この力は表面張力と比例しており、白金シートの大きさに依存する。肺表面活性物質の表面活性を測定する別の装置は、“パルセイティング バブル スルファクトメーター(Pulsating Bubble Surefactometer)”(Possmayer F., Yu S.およびWeber M., Prog Resp Res, Ed. v. Wichert, vol 18:112〜120(1984)]である。【0019】肺表面活性物質組成物の活性をin vivo試験でも測定でき、例えば続く“薬理学”の項目に記載される。肺表面活性物質の活性については、例えば肺圧縮率、血液ガス交換または所望の呼吸圧を測定することにより確認できる。【0020】本発明において、肺の表面活性物質は、本来の肺表面活性物質の機能を有する公知の様々な組成物および修飾体として理解される。例えば前記試験において活性である組成物が有利である。天然の、特にヒトの肺表面活性物質と比較して、このような試験で活性の上昇が見られた組成物が非常に有利である。リン脂質を含有する組成物だけでなく、リン脂質に加え、特に肺表面活性タンパク質を有する化合物であってよい。Curosurf (R)(Serono, PharmaGmbH, Unterschleissheim)、均質化したブタの肺に由来する純度の高い天然表面活性物質、Survanta (R)(Abbott GmbH, Wiesbaden)およびAlveofact (R)(Dr. karl Thomae GmbH Biberach)、いずれも牛の肺の抽出物、ならびにExosurf (R)(Deutsche Wellcome GmbH, Burgwedel)、助剤を併用した合成リン脂質のような購入可能な製造物も挙げられる。可能な肺表面活性タンパク質は、天然源から得られるタンパク質、例えば肺洗浄または羊水からの抽出物、ならびに遺伝子操作タンパク質の両方である。本発明において、SP−BおよびSP−Cで示される肺表面活性タンパク質およびその修飾された誘導体は特に興味深い。これらの肺表面活性タンパク質のアミノ酸配列、それらの単離または遺伝子技術による製造は公知である(例えばWO86/03408、EP−A−0251449、WO89/04326、WO87/06943、WO88/03170、WO91/00871、EP−A−0368823およびEP−A−0348967)。幾つかのアミノ酸が交換されている点でヒトのSP−Cと異なっている、SP−Cで示される肺表面活性タンパク質の修飾された誘導体は、例えばWO91/18015およびWO95/32992に記載されている。この明細書では、特にWO95/32992に記載されている組み換えSP−C誘導体、とりわけ4位および5位のシステインがフェニルアラニンに、32位のメチオニンがイソロイシンに置換されている点でヒトSP−Cと異なるものが強調されている(以下rSP−C(FF/I)とする)。EP−B−0100910、EP−A−0110498、EP−B−0145005およびEP−B−0286011には、本発明の成分と同様に好適な肺表面活性タンパク質を有するかまたは有さないリン脂質組成物が記載されている。【0021】本発明はさらに、IRDSまたはARDSの治療および/または予防に使用される医薬品の製造のための、本発明の組成物の使用に関する。【0022】さらに、本発明は前記疾患の治療および/または予防のための医薬品を提供し、これは本発明の組成物を含有する。【0023】本発明の組成物は、気管内または気管支内投与のための液体としても吸入投与のための粉末としても使用可能である。組成物は有利に、当業者に公知の方法で製造され、場合により、さらに好適な製薬助剤を使用する。粉末形は、例えば水性懸濁液のような液体の肺表面活性物質と4−(2,6−ジクロロアニリノ)−3−チオフェン酢酸または2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル4−(2,6−ジクロロアニリノ)−3−チオフェンアセテートの水性懸濁液とを混合し、次いでこれを凍結乾燥させ、微粉にすることにより獲得される。場合により、肺表面活性物質と4−(2,6−ジクロロアニリノ)−3−チオフェン酢酸または2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル4−(2,6−ジクロロアニリノ)−3−チオフェンアセテートの溶液とを好適な溶剤、例えばtert−ブタノール中で凍結乾燥させ、次いで微粉化することもできる。肺表面活性物質の水性懸濁液と4−(2,6−ジクロロアニリノ)−3−チオフェン酢酸水性懸濁液または2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル4−(2,6−ジクロロアニリノ)−3−チオフェンアセテート懸濁液との混合物あるいは好適な溶剤、例えばアルコール(例えばメタノール、エタノール、2−プロパノール)、クロロホルム、ジクロロメタン、アセトンおよび付加的に少量の水を含有するそれらの混合物中の肺表面活性物質水性懸濁液と4−(2,6−ジクロロアニリノ)−3−チオフェン酢酸または2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル4−(2,6−ジクロロアニリノ)−3−チオフェンアセテートとの溶液の噴霧乾燥によっても粉末製品が得られる。吸入による投与も、本発明の組成物を含有する溶液または懸濁液を噴霧することにより実施する。本発明の組成物は、有利に、4−(2,6−ジクロロアニリノ)−3−チオフェン酢酸または2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル4−(2,6−ジクロロアニリノ)−3−チオフェンアセテートを1〜30%含有する。【0024】以下の実施例において、粉末製品の噴霧乾燥による製造について記載する。【0025】例1:1,2−ジパルミトイル−3−sn−ホスファチジルコリン5.46g、1−パルミトイル−2−オレオイル−3−sn−ホスファチジルグリセロールアンモニウム2.31g、4−(2,6−ジクロロアニリノ)−3−チオフェン酢酸0.9g、パルミチン酸0.38g、塩化カルシウム0.21gおよびrSP−C[組み換え肺表面活性タンパク質SP−C(FF/I)]0.15gを2−プロパノール/水(90:10)500ml中に溶解し、実験室用噴霧乾燥器(Buechi B 191)中で噴霧乾燥した。噴霧条件:乾燥用気体は窒素であり、吸込温度は110℃であり、吐出し温度は58〜62℃である。これにより細かい白色の粉末が得られる。【0026】例2:1,2−ジパルミトイル−3−sn−ホスファチジルコリン5.46g、1−パルミトイル−2−オレオイル−3−sn−ホスファチジルグリセロールアンモニウム2.31g、4−(2,6−ジクロロアニリノ)−3−チオフェン酢酸0.09g、パルミチン酸0.38g、塩化カルシウム0.21gおよびrSP−C[組み換え肺表面活性タンパク質SP−C(FF/I)]0.15gを2−プロパノール/水(90:10)500ml中に溶解し、実験室用噴霧乾燥器(Buechi B 191)中で噴霧乾燥した。噴霧条件:乾燥用気体は窒素であり、吸込温度は110℃であり、吐出し温度は58〜62℃である。これにより細かい白色の粉末が得られる。【0027】本発明はまた、IRDSまたはARDSに苦しむヒトを含むほ乳類の治療方法を提供する。該方法は、本発明の組成物の1つを治療的に有効かつ薬理学的に許容される量で、罹患ほ乳類に投与することから成る。【0028】さらに本発明は、IRDSまたはARDSの治療に使用する、本発明の組成物を提供する。【0029】本発明の製造物を、例えば日に3〜4回で2〜4日間投与する。例えば、4−(2,6−ジクロロアニリノ)−3−チオフェン酢酸6mgおよびリン脂質50mgを含有する製造物を吸入または気管内あるいは気管支内投与により6時間間隔で6回投与する。【0030】薬理学麻酔SDラット純粋な酸素および終末呼気陽圧(PEEP;ラットの酸素化を保証するため)により、人工的に換気し、内在性の肺表面活性物質が洗い出されるまで洗浄する[D. Haefner, R. Beume, U. Kilian, G. KraznaiおよびBurkhard Lachmann:Dose- response comparison of five lung surfactant (LSF) preparations in an animal model of adult respiratory distress syndrome (ARDS;D. Haefner, P. -G. Germann, D. Hauschke, Pulmonary Pharmacology (1994) 7, 319〜332]。このことは、動物の動脈酸素分圧(PaO2)の初期値500〜550mmHg(純粋な酸素とPEEPの場合)が、50〜110mmHgの値にまで低下する事実により証明される。肺表面活性物質を処理していない対照群の動物は、観察期間中を通してPaO2の低い値を保持している。このような値にまでPaO2が低下して60分後に、肺表面活性物質または肺表面活性物質と4−(2,6−ジクロロアニリノ)−3−チオフェン酢酸とを一緒に気管内へ注入する。注入後30、60、90および120分で、血液ガスを測定する。【0031】下記の表1において、Aは、最終洗浄の1時間後に肺表面活性物質を気管内注入し、120分後(8cmH2Oの一定のPEEP)のPaO2の平均値(±標準偏差)をmmHgで示したものである。表には、4−(2,6−ジクロロアニリノ)−3−チオフェン酢酸(Eltenac)を単独で静脈内投与した際の大凡の値のデータが示され、未処理の対照と比較される。Eltenacの単独投与がPaO2に影響を及ぼさないことは、表より明かである。このことは、未処理の対照動物との比較により理解される。肺表面活性物質(25または100mg/kg)の投与は、PaO2を上昇させる。4−(2,6−ジクロロアニリノ)−3−チオフェン酢酸(Eltenac)と少量の肺表面活性物質(25mg/kg)とを一緒に投与すると、肺表面活性物質100mg/kgまで、有意容量依存的にPaO2の値が改善される。表2において、Aは、肺表面活性物質とEltenacとを、用量を増加させながら一緒に気管内投与(i.tr.)した後のPaO2値を示している。肺表面活性物質量25mg/kgにEltenac0.1〜0.3mg/kgを添加すると、肺表面活性物質量25mg/kgの場合と比べてPaO2値が改善される。このことから、Eltenacと肺表面活性物質とを一緒に投与することが予測し得ない非常に相加的な効果を導くことが分かる。従って、非常に高価な肺表面活性物質の一部を節約でき、あるいは各成分の向上した効果を得ることができる。さらに、静脈投与および気管内投与後のEltenacの効果の比較すると、肺表面活性物と一緒に気管内投与さた後の場合の方が、必要とされるEltenacの量は静脈投与後よりも著しく少量であることが分かる。【0032】表1:最終洗浄の1時間後に肺表面活性物質を気管内(i.tr.)投与して120分後のPaO2値および洗浄直後に肺表面活性物質の気管内投与とEltenacの静脈内投与(i.v.)を行った場合を、未処理の対照群と比較し、対照群は最終洗浄後にEltenacを静脈投与しただけである。【0033】【表1】【0034】表2:最終洗浄の1時間後に肺表面活性物質およびEltenacを一緒に気管内投与(i.tr.)し、120分後のPaO2値を未処理の対照群と比較し、対照群は最終洗浄後にEltenaを気管内投与しただけである。【0035】【表2】【0036】実験後に実施したこれらの動物の肺の経時的調査により、成人型呼吸窮迫症候群の発生を示す、いわゆる硝子膜(HM)の多量な形成および炎症細胞の激しい流入[例えば多形核好中球(PMNL)]が認められる。PaO2値で表される効果も同様に、経時的調査において確認される。【0037】このモデルで、Eltenacおよび肺表面活性物質(リン脂質混合物)から成り、肺表面活性タンパク質を有するまたは有しない本発明の製造物の調査において、酸素化および経時的変化(HM形成の阻害およびPMNL流入の阻害)が、肺表面活性物質またはEltenacの単独投与と比較して、非常に相加的に改善されることが明かとなった。この予想もしない相乗効果は、IRDSおよびARDSの治療期間を短縮し、これらの症候群の高い死亡率を低下させることができる。 式I:[式中、R1は、水素または2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルである]の化合物および/または該化合物の薬理学的に認容性の塩ならびに肺表面活性物質を含有する、IRDSおよびARDSの治療のための組成物。 4−(2,6−ジクロロアニリノ)−3−チオフェン−酢酸および/またはその薬理学的に認容性の塩ならびに肺表面活性物質を含有する、IRDSまたはARDSの治療のための組成物。 肺表面活性物質として、リン脂質の混合物を含有する、請求項1または2記載の組成物。 天然の肺表面活性物質中に存在するリン脂質を含有する、請求項3記載の組成物。 肺表面活性タンパク質を付加的に含有する、請求項3または4記載の組成物。 SP−Bおよび/またはSP−Cおよび/またはそれらの修飾された誘導体を含有する、請求項5記載の組成物。 肺の洗浄により得られる肺表面活性物質を含有する、請求項1記載の組成物。 R1が水素または2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルである式Iの化合物および/または該化合物の薬理学的に認容性の塩ならびに肺表面活性物質の、IRDSおよびARDSの制御を目的とする医薬品を製造するための使用。