タイトル: | 特許公報(B2)_エチルベンゼン/スチレン塔のカスケード再沸 |
出願番号: | 2000554454 |
年次: | 2010 |
IPC分類: | C07C 7/04,C07C 15/46 |
ウエルク,ヴィンセント,エー. JP 4441117 特許公報(B2) 20100115 2000554454 19990614 エチルベンゼン/スチレン塔のカスケード再沸 ストーン アンド ウエブスター,インク. 303050104 岡部 正夫 100064447 加藤 伸晃 100085176 産形 和央 100106703 臼井 伸一 100096943 藤野 育男 100091889 越智 隆夫 100101498 本宮 照久 100096688 高梨 憲通 100102808 朝日 伸光 100104352 高橋 誠一郎 100107401 吉澤 弘司 100106183 松井 孝夫 100120064 ウエルク,ヴィンセント,エー. US 09/100,433 19980619 20100331 C07C 7/04 20060101AFI20100311BHJP C07C 15/46 20060101ALI20100311BHJP JPC07C7/04C07C15/46 C07C 7/04 C07C 15/46 特開昭54−090122(JP,A) 米国特許第03904484(US,A) 特開平06−192141(JP,A) 19 US1999013387 19990614 WO1999065582 19991223 2003503307 20030128 14 20060531 藤森 知郎 【0001】本発明は一般に、エチルベンゼンからスチレンへの脱水素操作に続くスチレン生成物の未反応エチルベンゼンからの分離の改良に関する。【0002】【発明の背景】商業的に一般に使用されている従来のスチレン製造プロセスでは、スチレン生成物の出発材料または直前の前駆物質としてエチルベンゼンが使用されている。これらのプロセスの大多数では、エチルベンゼンを触媒的に脱水素して所望のスチレン生成物を得ている。一般に、これらのプロセスで得られるエチルベンゼンからスチレンへの転化は完全と言うにはほど遠く、一般には、反応器を通過するパスあたり約50〜70%である。したがって通常の操作では、この脱水素反応の生成物が、相当量のスチレンおよびエチルベンゼン、ならびに水素、メタンおよびエチレンを含む軽留分、ベンゼン、トルエン、高沸点留分などの小量の反応副生物および不純物を含む混合物となる。反応しなかったエチルベンゼンは、脱水素反応系へ再循環させる前に回収し、スチレン生成物から分離しなければならない。したがって軽い成分、エチルベンゼン、スチレンと重い成分とから成るこの混合物は一般に、SM生成物の精製およびEBの回収のための蒸留トレインに送られる。一般的な実施方法は、これらの精製を、例えば参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第3,904,484号(King)に教示されているような蒸留によって実施するものである。【0003】軽留分、高沸点留分、ベンゼンおよびトルエンから所望のスチレン生成物を分離することは比較的易しく、従来の逐次蒸留によって達成される。これらのさまざまな成分を分離するため、スチレンプラントの蒸留セクションは一般に少なくとも3つの独立した塔系から成る。第1の塔ではベンゼン、トルエンなどの軽い成分を回収し(B/T塔)、第2の塔では未反応のエチルベンゼンを回収し(EB/SM塔)、最後の塔では仕上がったスチレン生成物から重い成分を蒸留する(仕上げ塔)。しかし蒸留によって未反応エチルベンゼン(EB)からスチレンモノマー(SM)を分離するには、主にそれらの揮発性が類似していることに起因してかなり難しい問題がある。良好な分離を達成するのに必要な理論段数が大きいため、このEB/SM分離は、従来から大型かつ複雑で高価な蒸留塔内での減圧条件下での蒸留によって実施されている。したがって脱水素反応セクションからの未反応エチルベンゼンは、従来から単一の蒸留塔内でスチレンから分離されている。この標準的な設計では、必要な分離を達成するために大きな理論段数(85〜100)が必要である。この単一の単位操作で、蒸留セクションの総入熱の70〜80パーセントを消費する。一般的なプラントでは、未反応エチルベンゼンのスチレン生成物からの分離がプラントの水蒸気消費の約20〜30%を占める。500,000MTAスチレンモノマープラントでスチレンからエチルベンゼンを分離するのに必要なエネルギー消費を50%減らすることができれば、その節減は年間約700,000ドル程度に上るであろう。【0004】蒸留による分離を達成するのに必要な時間および温度条件では、スチレン生成物は重合する傾向があるため、減圧条件下でも、この混合物には重合阻害剤が添加される。スチレンは室温であっても測定可能な程度に重合する。スチレン蒸留を商業的に実施するのを可能にする鍵は、重合阻害剤と呼ばれる化学的添加剤の使用である。スチレン重合、関連した装置の汚れ、および粘性の高い生成物ストリームを処理する必要性を最小限に抑えるため、商業的なスチレン蒸留は必ずと言ってよいほど減圧条件下で実施される(例えば、塔頂留出物圧力約40〜120mmHgabsで運転される)。商業スチレンユニットで利用される温度範囲では、阻害剤を用いない場合、スチレンの重合速度は温度が10℃上昇するごとに2倍になる。さらに、分離を達成するのに必要な多段数を達成するため、現在、構造化された、またはランダムダンプの充填材料が内部気/液接触媒体として使用されている。充填材料の圧力降下は、標準的な蒸留棚段に比べて本質的にはるかに小さい。充填を用いた場合のより小さい圧力降下は、比較的低いかん出液温度で塔を運転することを可能にする。しかし、これらさまざまなプロセスの難しさ、コストおよび限界の結果、この分離を達成するための、経済的見地および/または使いやすさの見地から見てより実行可能な代替手段の開発に対する大きな要求が長年の間存在している。いくつかの特許がこれらの問題に対処しようとさまざまな方法を試みている。【0005】米国特許第3,515,647号(Van Tassell他)は、ワイプトウォール薄膜型蒸発缶と関連付けられた蒸留方式を介してスチレンを精製し、残留物質からのスチレンの回収を最大化するプロセスを教示している。少なくとも、99重量パーセントのスチレンが別の製品ストリームとして回収される。【0006】米国特許第3,702,346号(Kellar)のエチルベンゼンのスチレンへの水蒸気脱水素プロセスでは、凝縮させた反応器生成物を分離させる反応器生成物セトラを大気圧よりも低い圧力に維持することによって脱水素反応の選択性が改善される。この選択性の改善によって、次段のスチレン分離のコストおよび困難がいくらか低減する。【0007】米国特許第3,776,970号(Strazik他)には、スチレンおよびエチルベンゼンを含む有機混合物を浸透気化法透過条件下でポリウレタンエラストマー膜の一面に接触させ、他方の面で高スチレン濃度の蒸気混合物を回収することによって、この有機混合物からスチレンを分離するプロセスが記載されている。このポリウレタンエラストマーは、ポリエーテルまたはポリエステルグルーピングを含む。【0008】米国特許第3,801,664号(Blytas)には、高い収率および純度でエチルベンゼンからスチレンを分離する別のプロセスが教示されている。このプロセスは、(a)抽出相が濃縮無水硝酸第一銅/プロピオニトリル溶液であって、その中でスチレンが第一銅イオンと選択的に錯体を形成し、エチルベンゼンのカウンターソルベントがC5〜C18のパラフィンである2相溶媒系を用いた抽出工程、および(b)スチレン−第一銅イオン錯体を含むプロピオニトリル溶液相を分離し、そこからスチレンを回収する工程を含む。【0009】米国特許第3,904,484号(King)には、複数の蒸留段を備える多段蒸留ユニット内で大気圧よりも低い圧力で脱水素反応排出液を分別蒸留して、スチレンモノマー、未反応エチルベンゼン、ならびにスチレンポリマー、C9+芳香族炭化水素および重合阻害剤を含む副生物スチレンタール残留物を個別に回収する工程を含む多段蒸留が記載されている。このプロセスについて特許請求された改良は、予め回収したスチレンタール残留物をスチレンモノマーとエチルベンゼンの分離の上流で脱水素反応排出液に再循環させ、再循環されたスチレンタール残留物の存在下で脱水素反応排出液を蒸留することを含む。再循環の際には、液体容積比を反応排出液20〜1容積に対してスチレンタール残留物1〜20容積に維持する。【0010】その他、例えば米国特許第4,628,136号(Sardina)などで、塔頂留出物凝縮デューティ(熱エネルギー)を使用してエチルベンゼン/水共沸混合物を沸騰させることによって、塔頂留出物凝縮デューティがエチルベンゼン/スチレン蒸留塔から回収されている。このような方法には、高額の設備投資を必要とし、保守に費用がかかる大きな熱伝達領域および流下薄膜型蒸発缶の使用が必要である。この方法は、この操作の脱水素反応セクションをエチルベンゼン/スチレン分流器に直接に連結するが、これが望ましくない場合がある。その理由は、蒸留セクションのアップセットがこの系の反応セクションの制御を困難にし、さらに脱水素触媒を損傷する可能性があるためである。【0011】したがって、脱水素反応に続いて未反応エチルベンゼンからスチレン生成物を分離する上記の従来技術のプロセスは全て、さまざまな不都合および欠点を有する。これらの従来技術のプロセスでは装置に対する要求、保守および運転費のために高コストとなる。従来技術のプロセスのこれらの欠点ならびにその他の欠点および限界は、本発明のカスケード再沸装置およびプロセスによって完全にまたは部分的に克服される。【0012】【発明の目的】したがって本発明の全般的な目的は、スチレンモノマーからエチルベンゼンを分離する改良型の装置および方法を提供することにある。【0013】本発明の主要な目的は、一般にエネルギー集約的な単位操作であるエチルベンゼンとスチレンの蒸留分離に関連した用役費を大幅に削減する装置および方法を提供することにある。【0014】本発明の特定の目的は、エチルベンゼン脱水素に由来する出力ストリームのスチレン生成物を他の成分から分離する効率的かつ経済的な手法を提供することにある。【0015】本発明の他の特定の目的は、エチルベンゼン/スチレンフィードを2つのプロセスストリームに分流し、これらを、第1の蒸留塔からの熱エネルギーを第2の蒸留塔への入熱として効率的に利用することができる統合カスケード操作の下で異なるプロセス条件で別々に蒸留処理する装置および方法を提供することにある。【0016】本発明の他の目的は、既存のスチレンプラントに対し比較的簡単且つ低コストで適合させることで、運転効率を増大させ、エネルギー消費を低減させることにある。【0017】本発明のその他の目的および利点のあるものは自明であり、またあるものは以下で明らかにする。したがって本発明は、以下の説明および添付図面によって例示される複数の工程およびさまざまな構成要素、ならびにこのような1つまたは複数の工程および構成要素の相互の関係および順序を含む方法および関連装置を含む。ただし、これらに限定されるわけではない。本明細書に記載する方法および装置のさまざまな修正および変形が当業者には明白であり、このような修正および変形は全て本発明の範囲に含まれる。【0018】【発明の概要】一般に、本発明は、2つの蒸留塔のカスケード配置およびこれらの塔に導かれる分流フィードストリームを含み、これによって一方の塔の塔頂留出物蒸気ストリームに含まれる熱を利用して第2の塔のかん出液を再沸する。具体的には本発明は、エチルベンゼンおよびスチレンモノマーを含むフィードを2つのプロセスストリームに分流して、異なる圧力で運転中の2つの塔でそれぞれ別々に蒸留する装置および方法であって、これによって高圧塔が、高圧塔からの塔頂留出物を凝縮する工程によって低圧塔に熱を供給することができる装置および方法を対象とする。その結果生じるプロセス統合化と熱効率の相乗作用によって、エネルギーコストは大幅に低減し、これに関係したその他の節減も得られる。【0019】【好ましい実施形態の詳細な説明】図1に示すように、一般にはユニット500として図示した上流のエチルベンゼン脱水素ユニットからの、実質的にスチレンモノマーと未反応エチルベンゼンから成るフィードストリーム100は、T形接合106などの流体分流手段のところで2つのプロセスストリーム102、104に分流される。プロセスストリーム102および104にそれぞれ導かれるフィード100の相対的な割合は、T形接合106に関連した弁またはその他の手段を利用して制御、調整することができる。後述するさまざまなプロセスパラメータに応じて、ストリーム102、104に導かれるフィード100の相対的な容積割合は約90:10〜約10:90の範囲とすることができ、約60:40〜約40:60であることが好ましい。商業利用上の一般的な運転パラメータセットと調和するフィード100の好ましい分流は、プロセスストリーム102に約47%を差し向け、これに対応してプロセスストリーム104に53%を差し向けるものである。【0020】図1に示すとおりプロセスストリーム102は高圧蒸留塔110の中央領域に供給される。高圧塔110は、塔110の下部領域の圧力が約5〜9psia、温度が約110〜130℃、上部領域の圧力が約4〜7psia、温度が約90〜110℃であるようなプロセス条件下で運転される。一般に、蒸留セクション内の各種ストリームの凝縮および沸騰温度は、運転圧およびストリームの組成によって決まる。実際的見地から見れば、生成物組成は多かれ少なかれ固定されており、塔圧が唯一の独立変数となる。主として純度約90〜96%のスチレンモノマーから成る塔110からのかん出液ストリーム112は、(仕上げ操作に送られ、さらに精製される)生成物ストリーム114と再循環ストリーム116とに分割される。再循環ストリーム116は再沸器118を通過し、そこで、一般に水蒸気である再沸器加熱ストリーム124との熱交換によって加熱され、再沸器出力ストリーム120によって塔110の下部領域に戻される。再循環される割合に対する仕上げ用に引き抜かれるかん出液ストリーム112の割合は、他のプロセスパラメータに応じて約10%〜ほぼ100%とすることができ、一般には20〜30%である。【0021】塔110からの塔頂留出物ストリーム122は、低圧の第2の塔130の運転条件、具体的にはかん出液の温度よりも高温のエチルベンゼンを主に含む。熱力学的に、熱を供給するストリームの温度は、熱を吸収するストリームの温度よりも高くなければならない。商業的実施においては、統合された、これら2つの流体間の温度差は少なくとも8〜10℃でなければならない。この場合、ストリーム122の温度は一般に約90〜110℃の範囲にあり、低圧塔130のかん出液ストリーム132の温度は一般に約70〜95℃の範囲にある。したがってストリーム122を、後述するように低圧蒸留塔を運転するのに必要な再沸器加熱ストリームおよび熱エネルギーの給源として、塔130に関連した再沸器138で効率的に利用することができる。再沸器138での熱交換に続いて、ストリーム122に比べいくぶん低温の主としてエチルベンゼンから成る再沸器出口ストリーム146が、図1に示すように上流の脱水素ユニット500に再循環させることができるエチルベンゼン生成物ストリーム148と塔110の上部領域に戻される還流ストリーム150とに分割される。【0022】分割されたフィード100の第2の部分であるプロセスストリーム104は、低圧蒸留塔130の中央領域に供給される。低圧塔130は、塔130の下部領域の圧力が約1〜3psia、温度が約70〜95℃、塔130の上部領域の圧力が約0.4〜1.5psia、温度が約40〜70℃とあるようなプロセス条件下で運転される。主に純度約90〜96%のスチレンモノマーを含む塔130からのかん出液ストリーム132は、(一般にスチレンストリーム114と結合され、下流の塔600などの仕上げ操作に送られる)生成物ストリーム134と再循環ストリーム136とに分割される。再循環ストリーム136は再沸器138を通過し、そこで、前述のとおりエチルベンゼンストリーム122との熱交換によって加熱される。再沸器ユニット138は凝縮および熱交換部品を含み、そのためエチルベンゼンストリーム122は再沸器138を通過するときに冷却され、少なくとも部分的に液体に凝縮され、再循環ストリーム136には熱を供給する。加熱された再循環ストリーム136は再沸器138を出て、再沸器出力ストリーム140として塔130の下部領域に戻される。再循環される割合に対する仕上げ用に回収されるかん出液ストリーム132の割合は、他のプロセスパラメータに応じて約10%〜ほぼ100%とすることができ、一般には20〜30%である。【0023】塔130からの塔頂留出液ストリーム142は主として約40〜70℃のエチルベンゼンを含む。ストリーム142は、コンデンサ160内で冷却水流162を使用して冷却することができ、その後、図1に示すように上流の脱水素ユニット500へ再循環させることができるエチルベンゼン生成物ストリーム164と塔130の上部領域に戻される還流ストリーム166とに分流される。【0024】以下の例により、本発明の実施および利点をさらに示す。例1この例は、単一の充填蒸留塔を利用してエチルベンゼンをスチレンモノマーから分離する従来技術に基づく(本発明に基づくものではない)。これをここで提示するのは、本発明の実施結果と後に比較するためである。【0025】一般的な商業利用条件下で単一の充填塔を利用すると、必要な分離を達成するのに85〜100段の理論段が必要となる。エチルベンゼンは塔頂留出物として取り出され、スチレンはかん出液生成物として回収される。一般的な設計では、塔頂留出物圧70mmHgabs(絶対)、かん出液圧145mmHgabsが利用される。この圧力プロファイルでは、塔の塔頂留出物およびかん出液の温度はそれぞれ約66℃および約92℃である。熱は、熱サイホン型の再沸器を介して塔に供給される。一般に、約115℃〜130℃で凝縮する低圧水蒸気が熱源として使用される。塔頂留出物からの塔頂留出物蒸気は、冷却水または空気フィン型の熱交換器中で凝縮される。塔の減圧系への炭化水素の損失を最小限に抑えるため、塔頂留出物ストリームは凝縮後に一般に約40℃〜50℃に過冷却(サブクール)される。炭化水素が減圧系に入ることをさらに防ぐため、この塔はさらに、残りの塔頂留出液蒸気ストリームの大部分を約10℃まで冷却/凝縮するベントコンデンサを備える。【0026】上に述べた系では、スチレン生成物50万mta(メートルトン/年)を生産するように設計されたプラントに対して必要な塔への入熱は2850万kcal/hr(113mmBtu/hr)である。この分離をサポートするのに必要な用役は、水蒸気およそ54,300kg/hr、冷却水循環流2,970立方メートル/hrである。この例に対応する代表的な選択シミュレーション塔段データを下表Iに示す。【0027】表I*1 段91へのフィードストリーム=6.0kgmol/hr(空気漏れ)*2 段65へのフィードストリーム=994.1kgmol/hr*3 段91からの蒸気ストリーム塔頂留出物=2837.3kgmol/hr*4 段92からの液体ストリーム=379.0kgmol/hr段92からの蒸気ストリームベント=12.4kgmol/hr*5 段93からの蒸気ストリーム=6.7kgmol/hrかん出液ストリーム=614.4kgmol/hr内部還流比=7.1塔への必要な入熱=28,506,000kcal/hr段93 ベントコンデンサ段92 メインコンデンサ段91 塔頂段1 再沸器回収【0028】例2この例は、エチルベンゼンおよびスチレンモノマーを含む混合フィードが2つのプロセスストリームに分流され、異なる圧力および温度条件下で運転される2つのカスケード蒸留塔内でそれぞれ蒸留される図1に示した本発明の代表的実施形態に基づく。これらの塔の圧力は、一方の塔の塔頂留出物凝縮温度が他方の塔のかん出液温度よりも高くなるように設定される。高圧塔からの塔頂留出物蒸気は低圧塔のかん出液温度よりも高い温度で凝縮するため、この蒸気ストリームを低圧塔への熱源として使用することができ、その結果、驚くべきプロセス効率および相乗作用が得られる。【0029】本発明のこの実施例では、低圧塔が、塔頂留出物圧36mmHgabs(0.677psia)、かん出液圧100mmHgabs(1.934psia)で運転される。このかん出液圧でのかん出液混合物の沸点は82.6℃である。高圧塔は、塔頂留出物圧290mmHgabs(5.704psia)、かん出液圧365mmHgabsで運転される。本発明の目的に沿って、高圧塔からの塔頂留出物蒸気はこの運転圧で、低圧塔のかん出液温度(82.6℃)よりも十分に高い101.7℃で凝縮する。十分な熱推進力が得られるため、このより高圧の塔頂留出物を使用して、低圧塔からのかん出液再循環ストリームを再沸することができる。この方式では、一方の塔系から他方の塔系に熱がカスケードされる。この例では、47%のフィードが高圧塔に導かれるように全体フィードフローが分流される。塔間のフィードの分流は、高圧塔頂留出物凝縮デューティが低圧塔の再沸デューティとマッチするように確立される。この2塔系に供給される唯一の熱は、高圧塔の再沸器を介して16.58mmkcal/hr(65.9mmBtu/hr)の割合で供給される。同様に、この2塔系での唯一の重大な除熱工程は低圧塔のコンデンサからである。この統合系の概算用役消費は、入力ストリーム31,600kg/hr、冷却水循環1,500m3/hr である。これは、例1の加熱および冷却要求に比べ、水蒸気消費の40%節減、冷却水循環の約50%節減を表す。【0030】この例に対応する低圧および高圧塔の代表的な選択シミュレーション塔段データを、下表II−A(低圧)およびII−B(高圧)に示す。【0031】表II−A(低圧)*1 段91へのフィードストリーム=3.8kgmol/hr(空気漏れ)*2 段65へのフィードストリーム=524.1kgmol/hr*3 段91からの蒸気ストリーム塔頂留出物=1473.4kgmol/hr*4 段92からの液体ストリーム=200.5kgmol/hr段92からの蒸気ストリームベント=17.8kgmol/hr*5 段93からの蒸気ストリーム=4.8kgmol/hrかん出液ストリーム=322.5kgmol/hr内部還流比=6.6(高圧塔から)低圧塔への必要な入熱=14,270,000kcal/hr【0032】表II−B(高圧)*1 段91へのフィードストリーム=3.8kgmol/hr(空気漏れ)*2 段65へのフィードストリーム=464.8kgmol/hr*3 段91からの蒸気ストリーム塔頂留出物=1787.1kgmol/hr*4 段92からの液体ストリーム=172.8kgmol/hr段92からの蒸気ストリームベント=152.8kgmol/hr*5 段93からの蒸気ストリーム=3.9kgmol/hrかん出液ストリーム=291.9kgmol/hr内部還流比=9.4塔への必要な入熱=16,580,000kcal/hr【0033】例3先に論じたように、エチルベンゼン(EB)を脱水素してスチレンにするスチレンモノマー(SM)プラントでは、反応物エチルベンゼンのフィードが反応器を通過するパスあたり50〜70%の割合で転化される。脱水素反応系へ再循環させる前に未反応のエチルベンゼンは回収し、スチレン生成物から分離しなければならない。この反応セクションでは、EBよりも軽い成分およびスチレンよりも重い成分も生成される。この軽い成分、エチルベンゼン、スチレンおよび重い成分の混合物は一般に、SM生成物の精製およびEBの回収のための蒸留トレインに供給される。一般的な実施方法は、これらの精製を3段階蒸留によって達成するものである。【0034】前記成分を分離するため、スチレンプラントの蒸留セクションは一般に、独立した3つの塔系から成る。図1に塔550として図示する第1の塔は、ベンゼン、トルエンなどの軽い成分を回収し(B/T塔)、第2の塔は、未反応のエチルベンゼンを回収し(EB/SM塔)、図1に塔660として図示する最後の塔は仕上がったスチレン生成物から重い成分を蒸留する(仕上げ塔)。【0035】スチレンプラントの蒸留セクションにおけるこの一般的な3塔系列は、表面的には本発明の構成と同じように見えるかもしれないが、非常に異なるコストおよびエネルギー効率へと導く可能な代替カスケード再沸器構成との比較において、本発明の驚くべき全く予想外の利点を証明する追加の機会を与える。【0036】例3および4に、スチレンプラントの蒸留セクションで使用された従来の3塔系列で1つの塔系から他の系へエネルギーをカスケードする一般的な概念は適用するが、EB/SMストリームを2つのプロセスストリームに分流して2つのカスケードEB/SM蒸留塔で別々に蒸留する本発明の新規の概念を適用しない場合の効果を示す。例3の目的上、従来の3塔系列は、エチルベンゼン/スチレン(EB/SM)塔(従来の系列の中央の塔)の塔頂留出物蒸気から重い成分を除去する最終塔(仕上げ塔)へ熱をカスケードするように適合される。【0037】熱は一般に、独立した2つの再沸器を介して仕上げ塔に供給される。塔の入熱の大部分を供給する大型の第1の再沸器は一般に低温で運転され、より小型の第2の再沸器ははるかに高温の熱を供給する。この高温のサービスは、所望のスチレンモノマーから重いポリマーをストリッピングするのに必要である。スチレンから重いポリマーを効果的にストリッピングするため、通常は約130℃の高温ストリッピングが実施される。この高温では、スチレン蒸留内のその他のストリームを用いたこの残留物ストリッピング再沸器のカスケード再沸は実際的でない。しかし、先の仕上げ塔のより大型の低温再沸器はカスケード再沸に対する適合の候補となる。例えば、考慮中の2つの塔(EB/SMおよび仕上げ塔)は普通、以下の運転特性を有することができる。【0038】【0039】この2塔系に必要な総入熱は10.7mmkcal/hr(7.3+3.4)である。仕上げ塔への入熱は高温源と低温源の両方を含む。EB/SM塔の塔頂留出物蒸気を用いて仕上げ塔を再沸するのに十分な熱推進力を得るためには、EB/SM塔の圧を上げ、仕上げ塔の圧を下げなければならない。先の標準的なケースと同じフィード速度および生成物組成を与えた場合に例3のカスケード再沸適合に対して実行可能な運転条件セットを以下に示す。【0040】【0041】このケースでは、EB/SM塔の塔頂留出物蒸気を使用して仕上げ塔のかん出液を再沸する。塔頂留出物蒸気ストリームの一部は、仕上げ塔の塔底に位置する再沸器内で凝縮される。カスケード再沸に使用されないEB/SM塔からの蒸気の残部は冷却水コンデンサに導かれる。上記の運転条件で、カスケード再沸に使用可能な差動温度は約9℃(105−96)である。この方式でこれらの塔に供給される正味熱量は9.4mmkcal/hr(8.9+3.3−2.8)である。【0042】EB/SM塔でより高い運転圧が必要となることによって、キーとなる2つの成分、すなわちエチルベンゼンとスチレンの比揮発度は小さくなり、そのため標準設計と同じ程度の分別を達成するのにエネルギーが20%多く必要となる(7.3mmkcal/hrに対して8.9mmkcal/hr)。このカスケード再沸適合では仕上げ塔にエネルギーをカスケードすることによってEB/SM塔からエネルギーが回収される一方で、より高い圧力でEB/SM塔を運転する必要があるため必要なエネルギー入力が増大する。この例ではカスケード再沸によって全体として約1.3mmkcal/hrのエネルギーが節約される。現在のエネルギー価格に基づくと、これは約100,000ドル/年のエネルギーコスト節減に相当する。【0043】より高い圧力および温度でEB/SM塔を運転するためには、重合阻害剤添加速度をかなり増大させる必要がある。このカスケード再沸適合に必要なより高い温度で、EB/SM塔のスチレン重合速度は標準的な(非カスケード再沸)ケースの7〜8倍となる。例えば、重合阻害剤添加速度を2倍にすると、阻害剤のコスト増は、カスケード再沸から見込まれるエネルギーコストの節減全体にほぼ等しくなる。さらにこの条件下では、重成分およびポリマーへの収量損も増大することが予想される。したがってこの例3の適合を全体として評価すると、阻害剤のコスト増が、この方式で見込まれるエネルギーコストの節減を全て打ち消してしまうと結論される。さらに、カスケード再沸が標準設計に比べ設備投資を生得的に増大させることを考えると、このカスケード再沸適合の支出が、エネルギー回収プログラムを正当化するのに必要な一般に適用されるしきい値を満足しないことは明らかであろう。したがって例3は、カスケード再沸技術を従来のEB/SM蒸留系に組み込むことを試みるべきでないことを当業者に教えるものであろう。【0044】例4従来のEB/SM蒸留系の第2の可能なカスケード再沸適合は、EB/SM塔の塔頂留出物蒸気を用いた蒸留トレインの第1の塔(B/T塔)の再沸を含む。第1の塔(ベンゼン/トルエン除去塔)の熱デューティは、蒸留セクションに供給される全エネルギーの10%を表すに過ぎない。B/T塔の比較的に小さい加熱要求を考えると、このサービスのカスケード再沸をサポートする追加の投資を正当化することは一般にできない。さらに、この最初の塔へのフィードストリームは溶解した軽い気体を含むため、この塔の圧力を下げることは通常実際的でない。この塔の圧力を下げることは、塔の減圧系への炭化水素の損失を大幅に増大させることにつながる。B/T塔のかん出液温度は通常100℃近辺であるため、熱源の温度が108〜110℃程度でない限りカスケード再沸は困難である。この高い塔頂留出物温度でEB/SM塔を運転しなければならないことは、スチレン重合速度をかなり増大させる結果につながる。例3で先に説明した仕上げ塔適合と同様に、重合阻害剤のコスト増が一切のエネルギー節減を打ち消してしまうであろう。経済面に基づくと、EB/SM塔の塔頂留出物を用いたベンゼン/トルエン塔のカスケード再沸を通常の状況下で正当化することはできない。例3と同様に、例4は、カスケード再沸技術を従来のEB/SM蒸留系に組み込むことを試みるべきでないことを当業者に教えるものであろう。【0045】本発明の範囲から逸脱することなく前述の装置およびプロセスにその他の変更および修正を実施することができることは当業者には明白であり、また、以上の説明に含まれる全ての事項は例示のためであると解釈すべきであって、限定的な意味で解釈してはならない。より具体的には、本発明のさまざまな実施形態を、エチルベンゼンの脱水素によってスチレンを作り出すスチレンプラント全体の一部としてのスチレンモノマーからエチルベンゼンの分離に関して説明してきたが、本明細書に記載した装置およびプロセスは、エチルベンゼンとスチレンのその他の混合物に対しても、さらに揮発性が互いに比較的に近く、その結果、蒸留による分離が困難であるその他の炭化水素混合物の分離に対しても同様に有利に適用できるものである。【図面の簡単な説明】【図1】 本発明の代表的な実施形態を示すプロセスフロー図である。 実質的に、スチレンおよびエチルベンゼンから成り、該両化合物の沸点が近似するため分留により分離することが困難である炭化水素混合物からスチレンモノマーを蒸留分離するための装置であって: (a)該炭化水素混合物の第1部分および第2部分をそれぞれ異なる圧力および温度条件下で蒸留する第1および第2の蒸留塔手段であって、該塔手段の一方がより高圧の蒸留塔および関連する熱エネルギー源を有しており、該塔手段の他方がより低圧の蒸留塔および関連する熱エネルギー源を有している塔手段; (b)該炭化水素混合物のストリームを該第1および第2部分に分流するT形接合分流器であって、該第1および第2部分の相対的割合を制御する流量制御手段を有し、該第1および第2部分が実質的に同一の組成および温度を有する分流器; (c)該第1および第2部分をそれぞれ該第1および第2の塔手段の各蒸留塔に運ぶ第1および第2の導管; (d)該より高圧の蒸留塔の上部領域から回収したより高圧の蒸留塔頂留出物ストリームを熱交換場所へ運ぶ第3の導管; (e)該熱交換場所にある熱交換手段であって、該より高圧の蒸留塔頂留出物ストリームを、該より低圧の蒸留塔の下部領域から回収したより低圧の蒸留塔かん出液ストリームと熱交換させて加熱されたより低圧の蒸留塔かん出液ストリームを生成する熱交換手段;および (f)該加熱されたより低圧の蒸留塔かん出液ストリームを該より低圧の蒸留塔に戻す手段を有する装置。 前記熱交換位置にある前記熱交換手段が再沸器を有している請求項1記載の装置。 前記各蒸留塔に関連する熱エネルギー源が再沸器を有している請求項1記載の装置。 前記熱交換位置からの前記のより高圧の蒸留塔頂留出物ストリームの少なくとも一部分を前記のより高圧の蒸留塔に戻す第4の導管をさらに有している請求項1記載の装置。 脱水素とそれに続く分離によってエチルベンゼンフィードから精製されたスチレンモノマーを製造する系であって: (a)脱水素反応器入口および脱水素反応器出口を有し、脱水素触媒が充填された脱水素反応器; (b)該脱水素反応器出口と直列な、該脱水素反応器出口からの流体ストリームを第1の部分および第2の部分に分流するT形接合分流器であって、該第1および第2部分が実質的に同一の組成および温度を有する分流器; (c)該分流器と連絡している、該第1の部分を第1の蒸留塔へ運ぶ第1の導管; (d)該分流器と連絡している、該第2の部分を第2の蒸留塔へ運ぶ第2の導管; (e)該第2の蒸留塔に関連するカスケード再沸手段であって、該第2の蒸留塔の下部領域から第2の塔のかん出液ストリームを回収する手段;該第2の塔のかん出液ストリームをより高温の流体ストリームと熱接触させて加熱された第2の塔のかん出液ストリーム生成する手段;および、その後に該加熱されたかん出液ストリームを該第2の蒸留塔に戻す手段を含むカスケード再沸手段;および (f)該第1の蒸留塔の上部領域からの第1の塔の塔頂留出物ストリームを該カスケード再沸手段に運び、該より高温の流体ストリームとして機能させる第3の導管を有する系。 前記脱水素反応器と前記分流器との間に直列に配置され、前記脱水素反応器の排出液のうちのより軽い成分からスチレンおよびエチルベンゼンを分離する第3の蒸留塔をさらに有している請求項5記載の系。 前記第1および第2の蒸留塔の下流に直列に配置され、より重い炭化水素成分からスチレンモノマーを分離する第4の蒸留塔をさらに有している請求項6記載の系。 前記分流器が、前記第1の部分および第2の部分の相対的割合を制御する流量制御手段を有している請求項5記載の系。 前記カスケード再沸手段からの前記第1の塔の塔頂留出物ストリームの第1の部分を還流ストリームとして前記第1の蒸留塔に戻す第4の導管をさらに有している請求項5記載の系。 前記カスケード再沸手段からの前記第1の塔の塔頂留出物ストリームの第2の部分を再循環ストリームとして前記脱水素反応器に再循環させる第5の導管をさらに有している請求項9記載の系。 実質的にスチレンおよびエチルベンゼンから成る混合炭化水素ストリームからスチレンモノマーを分離する方法であって: (a)該混合炭化水素ストリームを第1の部分および第2の部分に分流する工程; (b)該第1の部分を第1の蒸留塔内で蒸留して部分的に精製されたスチレンを第1の塔のかん出液ストリームとして生成し、実質的にエチルベンゼンから成る第1の塔の塔頂留出物ストリームを生成する工程; (c)該第2の部分を第2の蒸留塔内で蒸留して、部分的に精製されたスチレンを第2の塔のかん出液ストリームとして生成し、実質的にエチルベンゼンから成る第2の塔の塔頂留出物ストリームを生成する工程;および (d)該第1の塔の塔頂留出物ストリームと熱接触させることによって該第2の塔のかん出液ストリームの再循環部分を加熱して、該第1の塔の塔頂留出物ストリームを冷却し、かつ少なくとも部分的に凝縮させ、その後、加熱された第2の塔のかん出液ストリームを該第2の塔の下部領域に戻す工程を有する方法。 前記の冷却され、少なくとも部分的に凝縮された第1の塔の塔頂留出物ストリームの少なくとも一部分を前記第1の蒸留塔に戻す工程をさらに有する請求項11記載の方法。 前記第1の蒸留塔を前記第2の蒸留塔よりも高い圧力および温度で運転する請求項11記載の方法。 前記第1の蒸留塔を、塔の下部領域での5〜9psiaから塔の上部領域での4〜7psiaの圧力範囲で運転し、前記第2の蒸留塔を、塔の下部領域での1〜3psiaから塔の上部領域での0.4〜1.5psiaの圧力範囲で運転する請求項11記載の方法。 (a)前記第1の蒸留塔を、塔の下部領域が圧力5〜9psiaおよび温度110〜130℃にあり、塔の上部領域が圧力4〜7psiaおよび温度90〜110℃にあるようなプロセス条件下で運転し、(b)前記第2の蒸留塔を、塔の下部領域が圧力1〜3psiaおよび温度70〜95℃にあり、塔の上部領域が圧力0.4〜1.5psiaおよび温度40〜70℃にあるようなプロセス条件下で運転する請求項11記載の方法。 前記第1の部分と前記第2の部分との容積比が90:10〜10:90の範囲にある請求項11記載の方法。 前記第1の部分と前記第2の部分との容積比が60:40〜40:60の範囲にある請求項11記載の方法。 前記分流工程の上流側に、前記混合炭化水素ストリームのより軽い成分を実質的に除去する蒸留工程をさらに有する請求項11記載の方法。 前記第1および第2の蒸留塔の下流側に、前記部分的に精製されたスチレンからより重い炭化水素成分を実質的に分離する蒸留工程をさらに有する請求項18記載の方法。