タイトル: | 特許公報(B2)_睡眠誘発剤 |
出願番号: | 2000550489 |
年次: | 2010 |
IPC分類: | A61K 31/5575,A61P 25/20 |
佐藤 史衛 田名見 亨 亀尾 一弥 山田 憲司 奥山 茂 小野 直哉 JP 4409767 特許公報(B2) 20091120 2000550489 19990525 睡眠誘発剤 大正製薬株式会社 000002819 佐藤 史衛 000172282 北川 富造 100074114 佐藤 史衛 田名見 亨 亀尾 一弥 山田 憲司 奥山 茂 小野 直哉 JP 1998142622 19980525 20100203 A61K 31/5575 20060101AFI20100114BHJP A61P 25/20 20060101ALI20100114BHJP JPA61K31/5575A61P25/20 A61K 31/5575 C07C 405/00 CA/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN) 特開平07−233144(JP,A) 特開平07−255929(JP,A) 国際公開第94/002457(WO,A1) 米国特許第00599838(US,A) 5 JP1999002723 19990525 WO1999061029 19991202 11 20060517 鶴見 秀紀 技術分野本発明はプロスタグランジン誘導体を有効成分として配合する睡眠誘発剤に関する。背景技術プロスタグランジン(以下PGと称する)は微量で種々の重要な生理作用を発揮することから、医薬への応用を意図して天然PGの誘導体の合成と生物活性の検討が行われ、多数の文献などで報告されている。その中で、PGの様々な中枢作用が報告されるとともに、脳内含量、生合成、代謝経路およびそれらの脳内局在や発達、加齢に伴う変化等が明らかとなり、PGによる睡眠、覚醒等との関連などに興味が持たれている。中でもPGD2は脳内における睡眠の発現や維持を調節する液性因子であることは既に知られており、サルでPGD2によって誘発された睡眠は、脳波や行動上において自発性の自然な睡眠と区別がつかないことが明らかとなり(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,第85巻、第4082〜4086頁(1988年))、新しい睡眠誘発作用を有する化合物として期待された。しかしながら、PGD2を含めPGD2誘導体はその効果や薬剤の安定性などの問題のため実用化されていない。発明の開示本発明者らは鋭意研究を進めた結果、13、14位に三重結合を有する下記式(I)で表されるプロスタグランジン誘導体が、特徴的に睡眠誘発作用を有することを見出し、本発明を完成した。すなわち、本発明は、式(I)(式中、Xはハロゲン原子を示し、Yは(CH2)mで表される基、シスビニレン基又はフェニレン基を示し、Zはエチレン基、トランスビニレン基、OCH2又はS(O)nCH2を示し、R1はC3−10のシクロアルキル基、C1−4のアルキル基で置換されたC3−10のシクロアルキル基、C4−13のシクロアルキルアルキル基、C5−10のアルキル基、C5−10のアルケニル基、C5−10のアルキニル基又は架橋環式炭化水素基を示し、R2は水素原子、C1−10のアルキル基又はC3−10のシクロアルキル基を示し、mは1〜3の整数を示し、nは0、1又は2を示す。)で表されるプロスタグランジン誘導体又はその薬理学的に許容される塩を有効成分とする睡眠誘発剤である。更に、本発明は、式(I)においてXが塩素原子又は臭素原子であり、Yが(CH2)mで表される基又はシスビニレン基であり、Zがエチレン基、トランスビニレン基、OCH2又はS(O)nCH2であり、R1はC3−10のシクロアルキル基又はC4−13のシクロアルキルアルキル基であり、R2は水素原子、C1−10のアルキル基であり、mが1〜3の整数であり、nは0、1又は2であるプロスタグランジン誘導体又はその薬理学的に許容される塩を有効成分とする睡眠誘発剤に関する。更に、本発明は、式(I)においてXが塩素原子又は臭素原子であり、Yが(CH2)mで表される基又はシスビニレン基であり、ZがOCH2であり、R1はC1−10のシクロアルキル基又はC4−13のシクロアルキルアルキル基であり、R2は水素原子、C1−10のアルキル基であり、mが1〜3の整数であるプロスタグランジン誘導体又はその薬理学的に許容される塩を有効成分とする睡眠誘発剤に関する。更に、本発明は、式(I)においてXが塩素原子又は臭素原子であり、Yが(CH2)mで表される基又はシスビニレン基であり、ZがSCH2であり、R1はC3−10のシクロアルキル基又はC4−13のシクロアルキルアルキル基であり、R2は水素原子、C1−10のアルキル基であり、mが1〜3の整数であるプロスタグランジン誘導体又はその薬理学的に許容される塩を有効成分とする睡眠誘発剤に関する。更に、本発明は、式(I)においてYが(CH2)mで表される基であり、ZがSCH2であり、R1はC3−10のシクロアルキル基であり、R2は水素原子、C1−10のアルキル基であり、mが1〜3の整数であるプロスタグランジン誘導体又はその薬理学的に許容される塩を有効成分とする睡眠誘発剤に関する。更に、本発明は、睡眠を誘発する成分として使用するための上記プロスタグランジン誘導体又はその薬学的に許容される塩に関する。更に、本発明は、薬理学的に有効量の上記プロスタグランジン誘導体又はその薬学的に許容される塩をヒトに投与することを特徴とする、睡眠誘発方法に関する。本発明において、ハロゲン原子とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子である。C3−10のシクロアルキル基の例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基などを挙げることができる。C1−4のアルキル基で置換されたC3−10のシクロアルキル基の例としては、メチルシクロプロピル基、メチルシクロヘキシル基、エチルシクロヘキシル基などを挙げることができる。C4−13のシクロアルキルアルキル基の例としては、シクロプロピルメチル基、シクロブチルメチル基、シクロペンチルメチル基、シクロペンチルエチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、シクロヘプチルメチル基などを挙げることができる。C5−10のアルキル基とは、直鎖状又は分枝鎖状のアルキル基を示し、例えばペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、1−メチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、2,4−ジメチルペンチル基、2−エチルペンチル基、2−メチルヘプチル基、2−エチルヘキシル基、2−プロピルペンチル基、2−プロピルヘキシル基、2,6−ジメチルヘプチル基などである。C5−10のアルケニル基とは、直鎖状又は分枝鎖状のアルケニル基を示し、例えば3−ペンテニル基、4−ヘキシニル基、5−ヘプテニル基、4−メチル−3−ペンテニル基、2,4−ジメチルペンテニル基、6−5メチル−5−ヘプテニル基、2,6−ジメチル−5−ヘプテニル基などである。C5−10のアルキニル基とは、直鎖状又は分枝鎖状のアルキニル基を示し、例えば3−ペンチニル基、3−ヘキシニル基、4−ヘキシニル基、1−メチルペンタ−3−イニル基、2−メチルペンタ−3−イニル基、1−メチルヘキサ−3−イニル基、2−メチルヘキサ−3−イニル基などである。架橋環式炭化水素基の例としては、ボルニル基、ノルボルニル基、アダマンチル基、ピナニル基、ツヨイル基、カルイル基、カンファニル基などを挙げることができる。R2のC1−10のアルキル基とは、直鎖状又は分枝鎖状のアルキル基を示し、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、2−エチルプロピル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、1−エチルブチル基、ヘプチル基、イソヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基などである。薬理学的に許容される塩とは、例えば、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属との塩、カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ土類金属との塩、アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、シクロペンチルアミン、ベンジルアミン、ピペリジン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノメチルモノエタノールアミン、トロメタミン、リジン、テトラアルキルアンモニウム、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンなどとの塩である。本発明の睡眠誘発剤は、その睡眠誘発効果の点から有効成分であるプロスタグランジン誘導体が、式(I)においてYがエチレン基又はシスビニレン基であることが好ましく、ZはOCH2又はSCH2であることが好ましく、R1はシクロアルキル基であることが好ましい。本発明に係る式(I)の化合物の一部は以下の公報に開示された公知化合物である。WO94/02457、WO94/08959、特開平6−192218号、特開平7−242622号、特開平7−242623号、特開平7−233144号、特開平7−285929号、特開平8−208599号、特開平7−233143号、特開平9−286775号、特開昭58−8059号、特表昭60−501813号、特表昭60−500787号なお、ZがS(O)CH2及びS(O)2CH2である化合物は、ZがSCH2である化合物をメタ過ヨウ素酸ナトリウムなどの酸化剤を用い、メタノールなどの溶媒中で反応させることにより得られる。本発明に係る代表的な式(I)の化合物としては下記を挙げることができる。本発明に係る化合物は、経口的に、または静脈内もしくは経鼻投与などの非経口的に投与することができる。これらは、例えば、通常の方法により製造することができる錠剤、粉剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤、液剤、乳剤、懸濁剤等の形で経口投与することができる。静脈内投与の製剤としては、水性または非水性溶液剤、乳剤、懸濁剤、使用直前に注射溶媒に溶解して使用する固形製剤等を用いることができる。経鼻投与としては、一般に薬物を含有した溶液および粉末(硬カプセル)で、専用の点鼻器あるいは噴霧器を用い鼻腔内に定量的にスプレー(噴霧)投与される。また、本発明の化合物は、α、βもしくはγ−シクロデキストリンまたはメチル化シクロデキストリン等と包接化合物を形成させて製剤化することもできる。投与量は、年齢、体重等により異なるが、成人に対し、1ng〜1mg/日である。産業上の利用可能性本発明により十分な効果を有し、安定性に優れた睡眠誘発剤の提供が可能となった。発明を実施するための最良の形態以下、本発明を実施例及び試験例を挙げてより具体的に説明する。実施例1WO94/02457号公報に記載の方法に従い合成した化合物4、1mgに炭酸カルシウム(軽質)30mgを配合し、硬カプセル剤を得た。実施例2WO94/02267号公報に記載の方法に従い合成した化合物32、10mgを等張リン酸緩衝液(pH7.4)1mlに溶解し、点鼻用製剤を得た。実施例3WO94/08959号公報に記載の方法に従い合成した化合物23、10mgを等張リン酸緩衝液(pH7.4)1mlに溶解し、点鼻用製剤を得た。試験例1[経鼻投与による睡眠誘発試験]方法:雄性アカゲザル9頭(体重約6kg)を1群3頭に分け、薬剤を鼻腔内に均一噴霧するために炭酸カルシウムおよびソファルコンを担体として用いた検体1(化合物4、1mgと炭酸カルシウム(軽質)30mgを含有する硬カプセル剤)、検体2(化合物4、1mgと炭酸カルシウム(重質)30mgを含有する硬カプセル剤)および検体3(化合物4、1mgとソファルコン30mgを含有する硬カプセル剤)の各検体を無麻酔下、モンキーチェアーに拘束したアカゲザル3頭ずつに鼻腔用投薬器(Jetlizer:(株)ユニシアジェックス製)を用い経鼻投与し、投与後1時間までの睡眠誘発作用を観察(ビデオ撮影)した。また、1週間後に同一のサルについてコントロール時の行動観察を行った。結果:各検体とも3頭中2頭(9頭中6頭)のサルについて経鼻投与後5〜15分以内に明確な睡眠誘発作用が観察され、以後うたた寝状態となった。なお、コントロール群については、いずれも特に変化は観察されなかった。試験例2[大槽内投与による睡眠誘発試験]方法:雄性アカゲザル3頭(体重3.6kg〜4.4kg)を1頭ずつケージに入れた。薬物投与前1時間および薬物投与後5時間まで、各動物の行動はビデオカメラで記録した。化合物32又はプロスタグランジンD2メチルエステル(PGD2)は生理食塩水に溶解し、ミリポアフィルターで滅菌した。薬物はサルをイソハロセン吸入で麻酔し、大槽内に注入した。投与量は1μgおよび10μg/0.1ml/サルとした。コントロール群は同用量の溶媒を大槽内に注入した。実験スケジュールは以下のスケジュールで行った。第1週目:溶媒投与群第2週目:化合物32 1μg/サル投与群第3週目:化合物32 10μg/サル投与群第4週目:PGD2 10μg/サル投与群睡眠は記録したビデオを再生し、15分間隔でサルが両目を閉じた時間を測定し、以下のスケールでスコアー化した。スコアー 睡眠時間(15分間)0: 0− 60秒1: 60−225秒2: 225−450秒3: 450−675秒4: 675−900秒結果:溶媒投与群は投与90分、135〜150分、210〜240分に弱い睡眠が認められた。化合物32 1μg/サル投与群では投与30〜75分後に溶媒投与群と比較して有意な睡眠作用が認められた(図1)。化合物32 10μg/サル投与群では投与45分〜5時間後まで溶媒投与群と比較して有意な睡眠作用が認められた(図1)。PGD210μg/サル投与群は投与45分後に一過性の睡眠作用が認められた(図2)。試験例3[大槽内投与による睡眠誘発試験]文献記載の方法(H.ONOE.Proc.Natl.Acad.Sci.,1988.Vol85,pp4082)に従って脳波を記録した。方法:雄性カニクイザル4頭(体重3.0kg〜4.7kg)を用いた。慢性的に電極を埋め込むためペントバルビタールナトリウム麻酔下、無菌的に手術を行い、大脳皮質及び後頭葉にステンレス製ネジ電極を、頸筋に筋電図用のステンレス電極を装着し、テレメトリーシステムの送信機(TL10M3−D70−EEE,Data Sciences,Inc.)のリード線をハンダ付けした。送信機を頸背部の皮下に埋め込み、術後手術創が完全に治癒し、脳波が安定した後実験に供した。セボフルラン吸入麻酔下で後頭部より小脳延髄槽にスパイラル針で刺針し、髄液が出てくるのを確認した後、検体(化合物32を生理食塩水に溶解し、ミリポアフィルターで滅菌したもの)を10μg/0.1ml/サル、小脳延髄槽内投与した。脳波(EEG)はテレメトリーシステム(UA−10,DataSciences,Inc.)で連続的にデータレコーダーに、試験物質投与後4時間まで記録し、行動はビデオに録画し観察した。脳波、筋電図及び行動の変化から睡眠−覚醒相(覚醒、ノンレム睡眠、レム睡眠)の経時的変化を観察し、試験物質投与後20分から240分までの覚醒、ノンレム睡眠、レム睡眠時間及びレム睡眠の発現頻度を測定し、表2に示した。【図面の簡単な説明】第1図は、試験例2において化合物32を投与した際の睡眠作用結果を示す図であり、第2図は試験例2においてPGD2を投与した際の睡眠作用結果を示す図である。 式(I)(式中、Xはハロゲン原子を示し、Yは(CH2)mで表される基、シスビニレン基又はフェニレン基を示し、Zはエチレン基、トランスビニレン基、OCH2又はS(O)nCH2を示し、R1はC3-10のシクロアルキル基、C1-4のアルキル基で置換されたC3-10のシクロアルキル基、C4-13のシクロアルキルアルキル基、C5-10のアルキル基、C5-10のアルケニル基、C5-10のアルキニル基又は架橋環式炭化水素基を示し、R2は水素原子、C1-10のアルキル基又はC3-10のシクロアルキル基を示し、mは1〜3の整数を示し、nは0、1又は2を示す。)で表されるプロスタグランジン誘導体又はその薬理学的に許容される塩を有効成分とする睡眠誘発剤。 式(I)においてXが塩素原子又は臭素原子であり、Yが(CH2)mで表される基又はシスビニレン基であり、Zがエチレン基、トランスビニレン基、OCH2又はS(O)nCH2であり、R1はC3-10のシクロアルキル基又はC4-13のシクロアルキルアルキル基であり、R2は水素原子、C1-10のアルキル基であり、mが1〜3の整数であり、nは0、1又は2であるプロスタグランジン誘導体又はその薬理学的に許容される塩を有効成分とする請求項1に記載の睡眠誘発剤。 式(I)において、ZがOCH2であるプロスタグランジン誘導体又はその薬理学的に許容される塩を有効成分とする請求項2に記載の睡眠誘発剤。 式(I)において、ZがSCH2であるプロスタグランジン誘導体又はその薬理学的に許容される塩を有効成分とする請求項2に記載の睡眠誘発剤。 式(I)において、Yが(CH2)mで表される基であり、ZがSCH2であり、R1はC3-10のシクロアルキル基であるプロスタグランジン誘導体又はその薬理学的に許容される塩を有効成分とする請求項2に記載の睡眠誘発剤。