タイトル: | 特許公報(B2)_ポリヒドロキシ酪酸の連続微生物生産方法 |
出願番号: | 2000547251 |
年次: | 2010 |
IPC分類: | C12P 7/62,C12R 1/05 |
バベル、ウォルフガング マスコウ、トーマス JP 4416947 特許公報(B2) 20091204 2000547251 19990426 ポリヒドロキシ酪酸の連続微生物生産方法 ユーエフゼット−ウンヴェルトフォルシュングセントラム ライプチヒ−ハーレ ゲーエムベーハー 500502130 平木 祐輔 100091096 石井 貞次 100096183 バベル、ウォルフガング マスコウ、トーマス DE 198 20 168.0 19980430 20100217 C12P 7/62 20060101AFI20100128BHJP C12R 1/05 20060101ALN20100128BHJP JPC12P7/62C12P7/62C12R1:05 C12P 7/62 PubMed JSTPlus/JST7580(JDreamII) 米国特許第05874291(US,A) 土肥義治 編,生分解性プラスチックハンドブック,1995年 5月26日,p.178−180 武下俊宏、外5名,呼吸阻害剤添加によるAlcaligenes eutrophusのPHB生産性の向上,九州産業大学工学部研究報告,1997年12月25日,Vol.34,p.189−192 辻本欣子、外3名,褐炭の有機酸への変換と微生物を利用したPHAへの変換,社団法人 化学工学会第63年会研究発表講演要旨集,1998年 2月24日,p.208 Applied microbiology and biotechnology. 1995, Vol.43, No.3, p,431-439 FEMS Microbiology letters. 1995, Vol.128, No.3, p.219-228 Journal of bacteriology. 1978, Vol.135, No.3, p.798-804 Journal of bacteriology. 1985, Vol.161, No.1, p.85-90 5 EP1999002803 19990426 WO1999057298 19991111 2002513584 20020514 5 20060124 清水 晋治 【0001】本発明は、潜在的な環境毒性を有するが故に毒性を除去する必要がある基質で、成長および増殖のために微生物によって炭素源およびエネルギー源として利用され得る場合に基質抑制(substrate inhibition)の現象をもたらす該基質からのポリヒドロキシアルカン酸[PHA(B)]の微生物合成に関する。【0002】50を超える属由来の150を超える細菌種が、ポリヒドロキシ酪酸(PHB)を生成することが知られている[Steinbuchel, A. (1996) Biotechnology (H.-J. Rehmら編)、第6巻、Products of Primary Metabolism (M. Roehr編)、VCH Weinheim, 403-464]。PHBの生成は、特定の基質または特定の型の栄養分とは関連せず[Babel, W. (1992) FEMS Microbiology Rev. 103, 141-148]、化学自己栄養的様式(chemolithoautotrophic fasion)でCO2や、また還元した有機炭素化合物を出発物質として進行し得る。糖と同様、メタンなどの炭化水素、メタノールなどのアルコール、ならびに酢酸および乳酸などの酸もまた可能である。50を超える異なる基質が試験されてきた。【0003】PHBの細菌合成のための方法は、公知である[Lee, S.Y. (1996) Biotechnol. Bioeng. 49, 1-14]。最も頻繁に用いられる基質は、いわゆる再生可能原料と呼ばれる炭水化物である。容易に利用でき、費用において比較的好ましいため、メタノールおよびメタンを、ポリヒドロキシアルカン酸の合成のために商業的に採用しようとする試みが、かなりの時間をかけて行われてきた。それにもかかわらず、該製品の価格は依然として高いため、PHBは、大規模で生産され、類似の特性を有するが(微)生物分解性を有さず、従って廃棄物の形態で処分される場合に問題となるポリプロピレンおよびポリエチレンプラスチック材料と競合し得ない。該製品の価格は原料の価格により決定的に左右される[Babel, W. (1997) BIOWORLD 4/97, 16-20]ので、PHB合成のためにより費用効果の高い炭素源を開発する必要がある。【0004】文献に記載されたPHBの生産方法のほとんどは、栄養供給および定常状態でのバッチ培養における不均衡の結果としてPHB(A)を蓄積させるものである。例えば、窒素、酸素またはリン(リン酸塩の形態)の進展する継続的な欠乏の結果として、増殖速度が減少し、PHB生成が始まる。【0005】典型的には、PHBの生成は成長に関係無く進行するので、その合成方法を連続的なものにすることは容易ではない。EP 0,149,744 A1は、連続的方法を記載している。確かに、この方法は、アルカリゲネス・ラタス(Alcaligenes latus)の特別な性質に基づいている。成長に最適で非制限的な成長条件の下で栄養分を完全に供給した場合、アルカリゲネス・ラタスは糖からPHBを合成することができる。この方法は、安定で周期的な基質の供給(供給‐バッチレジメ)によっても、あるいは培養物に一定流量の新鮮な栄養溶液を供給する一方でバイオマス(biomass)を含有するアリコート量の培地を発酵器から除去する連続法によっても、高いPHB蓄積を可能にする。【0006】同様に、メチロバクテリウム・ロデシアヌム(Methylobacterium rhodesianum)は、連続PHB生産に利用できる特異的な代謝/調節特性を有していなければならない[Ackermann, J.-U., Babel, W. (1997) Appl. Microbiol. Biotechnol. 47, 144-149]。【0007】A. latusの場合、M. rhodesianumと同様、PHB合成のための原料は(他の基質の他に)糖である。【0008】現在、それに代わるものとして、潜在的な環境毒性を有する基質からPHBを生産することもできることが判明しており、化学産業や農業の廃棄物を用いたPHBの合成を可能にする製造レジメが開発されている。このように、本発明による方法は、フェノールまたはベンゾエートなどの費用効果的な炭素源を利用するものであり、有用な材料の同時合成と共に危険物質の処理を可能にする。【0009】本発明によると、基質抑制現象を特徴付け、従って、従来の手段ではPHBも含むオーバーフロー代謝産物の合成に適していない潜在的な環境毒性基質を用いる。それらは、バッチ操作にも、炭素基質に限られる単一ステップの恒成分培養槽を用いる方法にも適していない。何故なら、実際に成長および増殖を妨げ、PHB合成を促進するような条件は実現されないからである。そのような基質としては、フェノール、安息香酸およびベンズアルデヒドなどの芳香族化合物がある。後者は、その殺菌(静菌)効果がよく知られており、しばしば産業廃液中の重要な成分の代表的なものである。【0010】本発明によって、基質が過剰に存在するとき、これらの基質を利用する適当な微生物を、基質の流速に関連する熱生産が最大になるような方法で恒成分培養槽を用いて増殖させる場合に成長抑制をもたらす基質からPHBを製造するのに用いることができる方法が開発された。細胞の成長を熱量計を用いてモニターし、バイオマス中の最大PHB含量に対応する最大熱生産を、基質流速によって制御する。小さな体積変化で基質流速を増大させることによってPHB生成を開始し、制御する。【0011】本発明で用いる微生物株は公知のPHB生産菌であり、コマモナス(Comamonas)属、好ましくはコマモナス・アシドボランス(Comamonas acidovarans)およびコマモナス・テストステロニ(Comamonas testosteroni)、ラルストニア(Ralstonia)属、好ましくはラルストニア・ユートロファ(Ralstonia eutropha)、またはバリオボラックス(Variovorax)属、好ましくはバリオボラックス・パラドクサス(Variovorax paradoxus)に属する。特に、水溶性芳香族化合物、好ましくはフェノール、安息香酸およびベンズアルデヒドが、本発明による方法における基質として適している。【0012】本発明の特に好ましい実施形態においては、速度0.07〜0.4 h-1、流速0.3〜1.0 g/l・hのベンゾエートで、バリオボラックス・パラドクサスJMP 116を増殖する。別の好ましい実施形態においては、速度0.05〜0.2 h-1、流速0.3〜0.6 g/l・hのフェノールで、ラルストニア・ユートロファJMP 134を増殖する。速度0.04〜0.21 h-1、流速0.25〜0.7 g/l・hのベンゾエートで、ラルストニア・ユートロファJMP 134を増殖するのも好ましい。用いる株は、カルチャーコレクションから一般に入手可能である。【0013】本発明によると、らせん状熱交換器によって発酵器から一定量の熱を引き出し、熱量計を用いて熱生産を測定する。この目的のために、熱交換器を介した冷却剤の流量ならびに入口および出口の間の温度差を一定に保ち、反応器の温度が一定に保たれるような方法で電熱器を制御する。現在の電熱力(electric heating power)と接種前の電熱力との差は、微生物の熱生産に対応する。【0014】限定する意図ではないが、以下の具体例を参照して、より詳細に本発明を説明する。【0015】具体例実施例1:ラルストニア・ユートロファJMP 134株を用いる。断熱発酵器2.2 l中、pH 7.0、30℃にて培養を実施する。本実施例および他の実施例で用いる培地は全て、1.14 g/lのNH4Cl、1.7 g/lのKH2PO4、2.18 g/lのK2HPO4、ならびに微量の塩(mg/l)MgSO4・7H2O(712)、CaCl2・2H2O(37)、FeSO4・7H2O(50)、CuSO4・5H2O(7.8)、MnSO4・1H2O(6.1)、ZnSO4・7H2O(4.4)、NaMoO4・2H2O(2.5)を含有する。100 mg/lのフェノールを含有する栄養培地1.7 lを発酵器に入れる。冷却液はそこから一定のエネルギーを連続的に引き出し、反応器の温度を電熱器を用いて維持する。100 Nl/hの湿り空気を用いてガスを発酵器に供給し、900 rpmで攪拌して均一化を実施する。pH値および空気を維持するための流入培地、すなわち、1N NaOHを、熱交換器によって反応器温度にする。バイオマスを供給‐バッチ培養により約500 mg/lにした初期培養物のうちの100 mlを用いて、発酵器に接種する。一定の反応器温度を維持するために必要な熱エネルギーは、微生物がフェノールを利用し始めるとすぐに、微生物によって生産される熱により減少する。熱生産が再び0 W/lに落ち込むと、それはフェノールが消費されたことを示し、1 g/lのフェノールを含有する培地のうちの200 mlを用いると、成長が再び開始する。この方法を繰り返すことにより、バイオマスは約0.7 g/lにまで上昇し、2 lの反応器充填レベルを調整し、続いて、1 g/lのフェノールを含有する培地を200 ml/hで連続的に添加する。等量の培養液が流出し、それにより0.1 g/(l・h)の基質消費速度が実行される。30時間後、一定の熱生産は、定常状態に到達したことを示す。培養液はこの時点で、残留濃度<0.1 mg/lのフェノール、検出可能な量のPHBを有さない0.7 g/lの濃度のバイオマスを有する。その後、1 g/lのフェノールを含む培地を含有する完全に攪拌した混合容器(200 rpm)からの200 ml/hを発酵器に供給する。10 g/lのフェノールを含む培地を、100 ml/hで混合容器中に流入する。熱生産は、ベンド(bend)がPHB生産の開始を示すまで、直線的に増大する。その後、約0.69 g/(l・h)の基質流速で起こる熱生産が最大2.7 W/lに到達するまで、PHB含量は増大する。安定化するために、発酵器への流入を停止させ、続いて、基質流速を、熱生産が96%に到達する値まで減少させる。これらの条件下では、培養液は<0.1 mg/lの残留フェノールおよび細菌乾燥量のうちの17%のPHB含量を有する2.9 g/lの濃度のバイオマスを含む。【0016】実施例2:ラルストニア・ユートロファJMP 134株を、実施例1と類似した方法で恒成分培養槽を用いて培養する。ただし、培地は、混合容器中に0.88 g/lの安息香酸ナトリウム、および貯蔵ボトル中に12 g/lの安息香酸ナトリウムを含有し、発酵器への流入量は100 ml/hである。0.5 Nの塩酸を滴定することにより、pH値を一定に保つ。熱生産の測定、培地、酸、および湿り空気の予熱を、実施例1に記載したように実施する。最大熱生産は、約0.94 W/lであり、約0.353 g/(l・h)の基質流速で達成される。この場合の培養液は、残留濃度25 mg/lの安息香酸ナトリウムと25%のPHB含量を有する4.2 g/lのバイオマスとを含有する。【0017】実施例3:バリオボラックス・パラドクサスDSM 4065株を、実施例1で詳述したように連続的に増殖させる。ただし、培地は、混合容器中に1.2 g/lの安息香酸ナトリウムおよび実施例1と同じ等しい組成の培地を有する貯蔵ボトル中に9.5 g/lの安息香酸ナトリウムを含有する。また、熱流量の測定、培地の加熱、湿り空気および滴定剤は、実施例1と同様にする。発酵器への流入量は、240 ml/hであり、0.5 N HClを添加することによりpH値を一定に保つ。約3.9 W/lの最大熱生産は、1.14 g/(l・h)の基質流速で達成され、その場合、培養液は残留濃度45 mg/lの安息香酸ナトリウムと21%のPHB含量を有する3.6 g/lのバイオマスとを含有する。 ポリヒドロキシ酪酸(PHB)生産菌であることが知られているラルストニア・ユートロファ(Ralstonia eutropha)JMP 134またはバリオボラックス・パラドクサス(Variovorax paradoxus)DSM 4065を、一定の反応容積およびメタノール以外の基質が過剰である場合に成長を抑制する基質にて最大熱生産で連続的に増殖させ、前記最大熱生産が、バイオマス中の最大PHB含量に対応し、基質の流速によって調整され、且つ前記基質がフェノール、安息香酸およびベンズアルデヒドから成る群より選択されることを特徴とする、PHBの連続微生物生産方法。 前記連続生産を、25〜40℃の温度範囲、pH値6〜8で、換気および均一化しながら実施することを特徴とする、請求項1に記載の方法。 バリオボラックス・パラドクサスDSM 4065を、速度0.07〜0.4h-1、流速0.3〜1.0 g/l・hのベンゾエートで増殖することを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。 ラルストニア・ユートロファJMP 134を、速度0.05〜0.2 h-1、流速0.3〜0.6 g/l・hのフェノールで増殖することを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。 ラルストニア・ユートロファJMP 134を、速度0.04〜0.21 h-1、流速0.25〜0.7 g/l・hのベンゾエートで増殖することを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。