タイトル: | 特許公報(B2)_ジエノゲストを有効成分とする血管新生抑制剤 |
出願番号: | 2000526532 |
年次: | 2010 |
IPC分類: | A61K 31/565,A61P 43/00,A61P 27/00,A61P 19/02,A61P 9/10,C07J 41/00 |
二村 芳弘 中村 正樹 JP 4418105 特許公報(B2) 20091204 2000526532 19981225 ジエノゲストを有効成分とする血管新生抑制剤 持田製薬株式会社 000181147 渡辺 望稔 100080159 三和 晴子 100090217 二村 芳弘 中村 正樹 JP 1997369540 19971226 20100217 A61K 31/565 20060101AFI20100128BHJP A61P 43/00 20060101ALI20100128BHJP A61P 27/00 20060101ALI20100128BHJP A61P 19/02 20060101ALI20100128BHJP A61P 9/10 20060101ALI20100128BHJP C07J 41/00 20060101ALN20100128BHJP JPA61K31/565A61P43/00 105A61P27/00A61P19/02A61P9/10C07J41/00 A61K 31/565 CA/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN) JSTPlus(JDreamII) JMEDPlus(JDreamII) 特開平07−188026(JP,A) 特公平01−019400(JP,B2) KATSUKI, Y. et al.,Dienogest, a novel synthetic steroid, overcomes hormone-dependent cancer in a different manner than progestins,Cancer,1997年 1月 1日,Vol.79, No.1,p.169-176 2 JP1998005944 19981225 WO1999033856 19990708 11 20051207 齋藤 恵 技術分野本発明は、ジエノゲストを有効成分として含有する血管新生抑制剤に関する。背景技術ジエノゲストは、下記式(I)で示される構造(17 α−cyanomethyl−17 β−hydroxy−estra−4,9(10)−dien−3−one)を有する既知化合物の国際一般名(INN)である。本化合物の性質および合成方法については、シュバート(Schubert)等、エルゼビアサイエンスパブリッシャーズ(Elsevier Science Publishers)編、ナチュラル・プロダクツ・ケミストリー1984(Natural Products Chemistry 1984)、1985年、143〜158頁に概要が述べられている。ジエノゲストは、黄体ホルモン活性を有することが知られており、ドイツに於いてエチニルエストラジオールとの合剤が製造され、経口避妊薬として発売されている。ジエノゲストはまた、子宮内膜症の治療剤としても臨床開発が進められており(ケーラー(Kohler)ら、アーカイブズ・オブ・ギネコロジー・アンド・オブステットリクス(Arch.Gynecol.Obstet.)、第254巻、594〜595頁、1993年)、また、子宮体癌および乳癌に対する有効性が実験的に報告されている(甲木ら、特開平7−188026号;甲木ら、キャンサー(Cancer)、第79巻、169〜176頁、1997年)。しかしながら、これまでのところ、ジエノゲストの血管新生抑制作用については報告がなされていない。血管新生は、胚発生、女性性周期による排卵または胎盤形成など、ヒト又は動物の通常の生理的状態は勿論のこと、創傷治癒、炎症などの修復過程に関与する一方で、毛細血管が急激に増殖、増大して組織に対して重篤な損傷をもたらす多くの病的状態でも関与することが知られている。このような毛細血管の病的増加による疾患は、いわゆる血管新生性疾患(angiogenic disease)と称されている(フォルクマン(Folkman)ら、サイエンス(SCIENCE)、第235巻、442〜447頁、1987年)。血管新生性疾患としては、眼科領域における眼内血管新生性疾患(intraocular angiogemic disease)(石橋達朗、眼内面管新生とは、石橋達朗編、眼内面管新生性疾患、p2.メジカルビュー社、東京、1994)、例えば、糖尿病性網膜症、網膜静脈閉塞症、未熟児網膜症、加齢黄斑変性症、血管新生緑内障、Eales病など、或いは後水晶体線維増殖症、角膜移植に伴う血管新生、緑内障、トラコーマなどが、皮膚科領域における乾癬及び化膿性肉芽腫などが、小児科領域における血管腫及び線維性血管腫などが、外科領域における肥大性はん痕及び肉芽などが、内科領域におけるリュウマチ性関節炎及び浮腫性硬化症などが、心臓疾患における動脈硬化症、心筋梗塞が知られている。また、血管新生性疾患とは通常呼ばれないが、腫瘍の発症、進展に血管新生が関わることはよく知られている。このような血管新生の異常増殖を伴う疾患に対し、さまざまな治療がなされているが、いずれも難治性の疾患であり、予防または治療薬として有用な化合物の開発が望まれる。血管新生抑制活性を示す物質として、硫酸化多糖体、血小板因子−4(PF−4)、ペントサンポリサルフェート、TNP−470(フマギリン誘導体)、イルソグラジン、ミノサイクリン等が知られている。しかし、これらの血管新生抑制作用は十分なものとはいえない。血管新生の異常を伴う疾患について、血管新生抑制剤は合目的な治療剤であり、より優れた血管新生抑制剤の開発が望まれている。酢酸メドロキシプロゲステロン(以下、MPAと記す。)に血管新生抑制作用があることはすでに知られている。しかし、MPAの血管新生抑制作用もまた十分ではなく、通常の臨床用量で効果が発現するかは疑問である。高用量の場合、副作用としてそのホルモン作用ばかりか血栓症も重大な問題となってくる。また、FMPA(9−fluoromedroxyprogesterone acetate)にも血管新生阻害が報告されている(杉野ら、ケミカル・ファーマシューティカル・ブルティン(Chemical Pharmaceutical Bulltien)、第45巻、第2号、421〜423頁、1997年;日比野ら、WO95/26974)。この化合物は、ホルモン作用の解離された、MPAより強力な血管新生抑制剤とされる。しかしながら、まだ臨床開発には至っていないようである。ところで、MPAにおける血管新生抑制作用は、プロゲスチン作用によるものではないと考えられている(山本ら、インターナショナル・ジャーナル・オブ・キャンサー(International Journal of Cancer)、第56巻、393〜399頁、1994年;JIKIHARAら、アメリカン・ジャーナル・オブ・オブステッドリクス・アンド・ゲネコロジー(Am.J.Obstet.Gynecol.)、第167巻、第1号、207〜211頁、1992年)。前述のFMPAはホルモン作用を解離しているし、一方プロゲステロンは、ウサギの角膜アッセイシステムにおいて血管新生抑制活性を持たないと報告されている(山本ら、前述)。構造的観点では、MPA、FMPAはプレグナン骨格を有しており、エストラン骨格を有するジエノゲストとは異なる。また、ヘパリン存在下で血管新生抑制作用を発揮し、グルココルチコイド、ミネラルコルチコイド活性をもたないアンジオスタティック・ステロイドと呼ばれるものがある(クラム(Crum)ら、サイエンス(SCIENCE)、第230巻、1375〜1378頁、1985年)。しかし、プロゲステロンは、グルココルチコイドやミネラルコルチコイド活性をもたないステロイドであるが、血管新生抑制作用を示さない。一方で、グルココルチコイドであるヒドロコルチゾンがヘパリン非存在下でも血管新生抑制作用を示す(HORIら、ブリティッシュ・ジャーナル・オブ・ファルマコロジー(British Journal of Pharmacology)、第118巻、1584〜1591頁、1996年)。上述に加えて、アンジオスタティック・ステロイドの構造特異性が十分に解明されていないことから、その概念は明確とは言えない。発明の開示かかる状況下において、血管新生の異常増殖を伴う疾患の予防または治療剤として、副作用が少なく、長期連用が可能な、有効性の高い薬剤の開発が望まれる。眼内血管新生性疾患のうち、糖尿病性網膜症、とりわけ増殖性網膜症は、網膜上に生じる新生血管を初発症状とし、ついでこの周囲に線維組織が形成され、やがて増殖した線維組織の瘢痕収縮によって網膜剥離や網膜血管離断による硝子体出血を起こして、早急に視力消失をきたす。加齢性黄斑変性症は、脈絡膜の血管新生をきたす疾患のなかで最も多い疾患であり、現在光凝固術のみが確立されている。しかし、この治療自体による視力低下の可能性があり、理想的な治療法が求められている。悪性腫瘍は放置すれば宿主が生きている限り増大し、ほとんど例外無く浸潤性増殖を示す。放置すれば転移をきたし、やがて宿主を死に至らしめる。リュウマチ性関節炎は、初期には滑膜の炎症のみであるが、進行すると軟骨、骨の破壊が起こり、関節は変形、脱白し、また骨性強直により可動性を失う。動脈硬化症は、アテローム性動脈硬化、最小動脈硬化、メンケベルグ型動脈硬化の三つに分類され、基本的には動脈硬化が原因で起こる、動脈の狭窄、閉塞あるいは拡張破裂によりもたらされる臨床病態をいう。臨床上もっとも多いアテローム性動脈硬化は、大型の弾性型動脈や中型の筋型動脈にみられ、主病変は内膜にあって、脂肪縞、線維性硬斑、複合病変へと進展する。最も進んだ段階の複合病変では、潰瘍形成、カルシウム沈着、出血、血栓形成などがみられる。本発明は、上記の症状の少なくともひとつを解決する。本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、意外にもジエノゲストが強力な血管新生抑制作用を有することを見出した。その作用は、固形癌をはじめ、血管新生の異常増殖を伴う疾患の治療に応用可能なほど強力なものである。しかもジエノゲストは、併用がなくとも、単独使用で強い活性を示すことを見出し、本発明を完成させた。本発明の第一の態様は、ジエノゲストもしくはその溶媒和物を有効成分として含有することを特徴とする血管新生抑制剤である。本発明の第二の態様は、ジエノゲストもしくはその溶媒和物を有効成分として含有することを特徴とする、血管新生性疾患の予防および/または治療剤である。本発明の第三の態様は、ジエノゲストもしくはその溶媒和物を有効成分として含有することを特徴とする血管新生性疾患の予防および/または治療剤で、特に、眼内血管新生性疾患、リュウマチ性関節炎、動脈硬化の予防および/または治療剤である。本発明の第四の態様は、ジエノゲストもしくはその溶媒和物を有効成分として含有することを特徴とする、性ホルモン非依存性腫瘍の予防および/または治療剤である。本発明の第五の態様は、ジエノゲストもしくはその溶媒和物を有効成分として含有することを特徴とする、血管新生の異常増殖を伴う疾患の予防および/または治療剤で、特に、眼内血管新生性疾患、リュウマチ性関節炎、動脈硬化の予防および/または治療剤である。本発明の第六の態様は、ジエノゲストもしくはその溶媒和物を有効成分として含有することを特徴とする、血管新生の異常増殖を伴う疾患の予防および/または治療剤で、特に、性ホルモン非依存性腫瘍の予防および/または治療剤である。本発明の第七の態様は、ジエノゲストもしくはその溶媒和物を有効成分として含有することを特徴とする、眼内血管新生性疾患、リュウマチ性関節炎、動脈硬化の予防および/または治療剤である。本発明の第八の態様は、ジエノゲストもしくはその溶媒和物を有効成分として含有することを特徴とする血管新生抑制剤で、この剤は試薬として有用である。本発明の第九の態様は、他の化合物と併用される為の当該血管新生抑制剤である。なお、上記第一から第九の態様は、各々ジエノゲストまたはその溶媒和物を有効成分として含有することを特徴とする医薬組成物により、各々の疾患を予防、治療する方法、或いは、ジエノゲストまたはその溶媒和物を、各々の疾患を予防、治療するための医薬品を製造するための使用にも対応する。発明を実施するための最良の形態以下、発明を詳細に説明する。本発明の血管新生抑制剤の有効成分となるジエノゲストは、すでに示した如く、式(I)の構造を有する化合物であり、水、エタノール、グリセロール、酢酸等の製薬学上許容される種々の溶媒と溶媒和物を形成し得る。ジエノゲストは血管新生抑制作用を有する。従って本発明の剤は、ジエノゲストもしくはその溶媒和物を有効成分として含有することを特徴とする、血管新生の異常増殖を伴う疾患の予防又は治療剤である。ここでいう血管新生の異常増殖を伴う疾患には、先に述べたいわゆる血管新生性疾患と腫瘍とが挙げられる。血管新生性疾患の予防または治療剤として用いられる病態の具体例は、眼内血管新生性疾患、乾癬、化膿性肉芽腫、血管腫、線維性血管腫、肥大性はん痕、肉芽、リュウマチ性関節炎、浮腫性硬化症、動脈硬化症、心筋梗塞、好ましくは、糖尿病性網膜症、加齢性黄斑変性症、リュウマチ性関節炎、動脈硬化症が例示できる。また別途、各種腫瘍の予防又は治療剤として用いることもできる。糖尿病性網膜症では、とりわけ増殖性網膜症があげられる。本疾病では、網膜上に生じる新生血管を初発症状とし、ついでこの周囲に線維組織が形成され、やがて増殖した線維組織の瘢痕収縮によって網膜剥離や網膜血管離断による硝子体出血を起こして、早急に視力消失をきたす。本発明の剤は、これらの各種症状を予防または治療、すなわち改善し、あるいは悪化を防止するのに有効である。加齢性黄斑変性症では、黄斑部の加齢変化に伴った色素上皮細胞−ブルフ膜−脈絡膜の環境変化により発生する脈絡膜新生血管とその増殖変化を特徴とする疾患で、網膜、色素上皮下の出血および浸出性変化とそれに伴う色素上皮剥離、漿液性網膜剥離を呈し、視力予後の不良な疾患である。本発明の剤は、これらの各種症状を予防または治療、改善し、あるいは悪化の防止に有効である。腫瘍は、良性腫瘍と悪性腫瘍とに二大別する。悪性腫瘍は上皮性悪性腫瘍と非上皮性悪性腫瘍に二大別され、前者を癌(または癌腫)、後者を肉腫とする。悪性腫瘍は放置すれば宿主が生きている限り増大し、ほとんど例外無く浸潤性増殖を示す。放置すれば転移をきたすものが大部分である。本発明の血管新生抑制剤は、栄養血管の侵入を防いだり、血行性転移を抑制することにより、腫瘍を縮退し、転移を防止し、抗腫瘍剤や腫瘍転移抑制剤として作用し得る。悪性腫瘍は、性ステロイド(エストロゲンやプロゲステロン)に対する感受性によっても分類でき、性ホルモン依存性腫瘍と性ホルモン非依存性腫瘍に分けられる。性ホルモン依存性腫瘍は、子宮体癌、乳癌、卵巣癌、子宮内膜癌などの婦人科生殖器に発生する腫瘍や前立腺癌、甲状腺癌などのうち、性ホルモンに反応を示す腫瘍をいい、性ホルモン非依存性腫瘍は、性ホルモン依存性腫瘍に属さない腫瘍のことを指し、具体的には胃癌、肺癌、食道癌、脳腫瘍、膵臓癌、眼科の癌などの生殖器以外の癌と、婦人科領域の癌のうち、性ホルモンに反応しない性質を有する子宮体癌、乳癌、卵巣癌、子宮内膜癌などがある。ホルモン非依存性肉腫の例としては、カポジ肉腫、骨肉腫、線維肉腫、リンパ管肉腫などがあげられる。一方、良性腫瘍は一定の大きさになると成長がとまり、大部分のものは浸潤性の増殖はしないし転移もきたさない。良性腫瘍としては、骨腫、線維腫、血管腫、筋腫などがあげられる。良性腫瘍も腫瘍内に性ホルモン受容体が存在するか否か、すなわち性ホルモン感受性によって分類される。性ホルモン依存性腫瘍としては、子宮内膜症、子宮筋腫、子宮腺筋症、子宮内膜増殖症、子宮内膜ポリープなどがあり、性ホルモン非依存性腫瘍は、性ホルモン受容体の認められない子宮内膜ポリープや子宮内膜増殖症、胃、腸、肺などでみられる過形成ポリープなどがある。本発明の剤は、これらの各種症状を予防または治療、すなわち改善し、あるいは悪化を防止するのに有効である。リュウマチ性関節炎は、発病原因は不明であるが、多因子性の遺伝的素因、とくにHLA−D4との関連、およびウイルス感染が注目されている。初期には滑膜の炎症のみであるが、進行すると軟骨、骨の破壊が起こり、関節は変形、脱白し、また骨性強直により可動性を失う。全身症状として貧血、微熱、朝のこわばり、全身倦怠感、易疲労性、体重減少、リンパ節腫大、皮下結節など多彩な症状を呈する。病態生理としては、滑膜への血管新生がみとめられる。本発明の剤は、これらの各種症状を予防または治療、すなわち改善し、あるいは悪化を防止するのに有効である。動脈硬化症は、アテローム性動脈硬化、最小動脈硬化、メンケベルグ型動脈硬化の三つに分類され、基本的には動脈硬化が原因で起こる、動脈の狭窄、閉塞あるいは拡張破裂によりもたらされる臨床病態をいう。臨床上もっとも多いアテローム性動脈硬化は、大型の弾性型動脈や中型の筋型動脈にみられ、主病変は内膜にあって、脂肪縞、線維性硬斑、複合病変へと進展する。一般にまず病変は20歳代で腹部大動脈に始まり、胸部大動脈、総腸骨動脈に及び、さらに冠動脈、腎動脈、腸間膜動脈へと進む。最も進んだ段階の複合病変では、潰瘍形成、カルシウム沈着、出血、血栓形成などがみられる。大動脈の粥状硬化では、大動脈瘤や解離性大動脈瘤が形成され、冠動脈では主として内腔の狭窄ないし閉塞をきたして虚血性心疾患を発症する。脳動脈では、粥腫による高度狭窄、血栓性閉塞などが起こり、臨床的に脳栓塞が発生する。自覚症状としては、脳動脈硬化症の場合は頭痛、めまい、しびれ、言語障害など、冠動脈硬化症の場合は、前胸部痛発作、前胸部圧迫感、息切れなど、腎動脈硬化症の場合は、まれに腰痛、高血圧による症状など、大動脈硬化症の場合は、疼痛、腹部の腫れ、拍動などがみられる。本発明の剤は、これらの各種症状を予防または治療、すなわち改善し、あるいは悪化を防止するのに有効である。なお、本発明の剤において、好ましくは、既にジエノゲストの有効性が公知となっている適応症は除かれる。本発明は、好ましくは、それらを対象とするものではなく、血管新生抑制が有効と考えられる、これまでにジエノゲストが対象とは考えられていなかった新しい疾患の治療剤である。さらに、発症後の治療剤として用いる他、それぞれの疾患の危険因子が亢進している者に対して、発症前に予防的に投与し得る。具体的には、糖尿病性網膜症の場合は、糖尿病に羅患した患者や、単純性網膜症や前増殖性網膜症の確認できる者に対して、予防的に投与し得る。癌の場合は、癌転移や再発癌の予防として投与し得る。加齢性黄斑変性症では、例えばマクロファージの浸潤など動脈硬化病変の初期に類似した炎症様変化が確認できた患者に対して予防的に投与し得る。リュウマチ性関節炎の場合には、朝のこわばり、手指関節のはれ、対称性関節のはれ、皮下結節などの症状がみられはじめた患者に対して、予防的に投与し得る。動脈硬化の場合には、高脂血症、高血圧、糖尿病、または生活習慣として喫煙、飲酒などの危険因子をもった人に対して予防的に投与し得る。試薬としては、試験や検査に用いることができる。具体的には、対象とする系中で本試薬の血管新生抑制作用を検出し、これによって特定の疾病の有無や、体液、組織あるいは排泄物中に、ある物質があるかないかを決定する方法として、本発明の剤は有用である。次に、本発明の血管新生抑制剤の効果を、下記の実験例によって具体的に示す。実験例1:CAM(Chick embryo chorioallantoic membrane;鶏漿尿膜)法による血管新生抑制作用林らの方法(血管新生のメカニズムと疾患、医薬ジャーナル社、255〜266頁、1996年)に従って、鶏受精卵の漿尿膜を用いるCAM法により血管新生抑制作用を試験した。すなわち、37℃にて4又は5日間孵卵器内で培養した鶏受精卵に穴をあけ、外径5mm、内径3mmのシリコンリングを漿尿膜の中央にのせ、ジエノゲストまたはMPAを含むEV(エチレンビニルアセテートコポリマー)ペレットをこのリングの内側に静置した。検体を含まないEVペレットを置いた漿尿膜を対照群とした。これらを37℃にて2日間培養後、漿尿膜上の血管網を見やすくするために、漿尿膜に脂肪乳剤を注入し、観察した。漿尿膜上に径3mm以上の無血管領域が形成された場合を血管新生抑制作用有りと判定した。その結果を表1に示す。表1に示す結果より、ジエノゲストは、CAM法による検討において、0.01μg/egg以上の用量で対照群の値に比べて有意に、かつ用量依存的に無血管領域を示す漿尿膜数を増加させた。コントロールでは漿尿膜上の血管網に無血管領域はみられなかったが、ジエノゲスト1μg/eggでは無血管領域が認められた。また、MPA100μg/egg処理の無血管領域を示す漿尿膜数も、対照群の値に比べて有意に増加した。この結果から、ジエノゲストが血管新生抑制作用においてMPAより10〜100倍高い有効性を示すことがわかった。実験例2:マウス背部皮下法における血管新生抑制作用岩花らの方法(がんの浸潤・転移研究マニュアル、金芳堂、172〜176頁、1995年)に従って、マウス背部皮下法により血管新生抑制作用を試験した。ミリポアチャンバーに、リン酸緩衝生理食塩液(PBS)に懸濁したS−180腫瘍細胞(マウス由来ザルコーマ)を注入し、注入孔をナイロン栓で塞いだ。ネンブタール麻酔したマウスの背部皮下に注射器で空気を10ml注入して作製したエアザック(air sac)に前記ミリポアチャンバーを移植した。動物はあらかじめ4群に分け、非処理対照群(A群)として、S−180腫瘍細胞の代わりにPBSを注入したミリポアチャンバーを移植した動物に、0.5%CMCカルボキシメチルセルロースナトリウム(0.5%CMC、和光純薬)を5日間、経口投与して用いた。薬効評価のため、0.5%CMCを5日間、経口投与する群を溶媒対照群(B群)とし、0.5%CMCに超音波処理により懸濁したジエノゲスト懸濁液を0.1mg/kg7日又は1mg/kg7日の用量で移植日より5日間、経口投与する群をそれぞれC群、D群とした。薬物最終投与の翌日にチャンバー移植部位の皮膚を切除後、チャンバーを回収した。チャンバーの位置にチャンバーと同径の黒色のリングを置いた後、実体顕微鏡下、リングの内側に形成された長さ3mm以上の新生血管の数を計数した。その数をアンジオゲネシス インデックス(angiogenesis index)として0〜5までの6段階に分類した。特に、腫瘍により新生した血管は、蛇行する性質を有することから、チャンバー移植前から存在した既存血管と区別して判定した。2群間の比較をウィルコクソン(Wilcoxon)の順位和検定により、多群間の比較をダネット(Dunnett)の多重比較により解析した。その結果は、図1に示す。図1の結果からS−180腫瘍細胞を含むミリポアチャンバーを移植した溶媒対照群(B群)は、非処理対照群(A群)に比べて有意(p<0.001)に血管新生を誘導した。ここで、aはウィルコクソンによる比較、bはダネットによる比較である。ジエノゲスト0.1mg/kgを5日間投与したC群では、S−180細胞により誘導された血管新生に対する抑制は弱かったが、ジエノゲスト1mg/kgを5日間投与したD群では溶媒対照群(B群)に比べて有意(p<0.001)に血管新生が抑制された。各群のチャンバーの実体顕微鏡図(倍率3.6倍)の代表例を図2に示した。BおよびC群(それぞれ図2、BおよびC)では腫瘍血管新生に特有の蛇行する血管がみられたが、AおよびD群(それぞれ図2、AおよびD)では蛇行する血管はほとんど認められなかった。また、本発明の剤の、毒性(安全性)については、本実験例に於いて示されたジエノゲストの血管新生抑制に対する有効用量が、ドイツにおいて経口避妊薬としてすでに使用されている本薬物の臨床用量(1日投与量2mg)にほぼ匹敵する用量であり、且つ、単剤の子宮内膜症治療薬としての臨床治験(1日投与量1〜4mg)においても安全性が確認されていることから、何ら問題ないと考えられる。以上の結果より、ジエノゲストはCAM法においても、S−180腫瘍細胞による腫瘍血管新生に対しても著明な血管新生抑制作用を有することが示された。また、ジエノゲストの血管新生抑制作用は、既知の血管新生抑制物資であるMPAよりも10〜100倍強力なものであることが判明した。次に本発明の剤の投与形態について述べる。本発明の血管新生抑制剤は、有効成分として少なくともジエノゲストを有効量含有していればよく、通常製薬上許される担体とともに製造される。すなわち、本発明の剤は、医薬、獣医学上の組成物であり、少なくともジエノゲストと製薬上許容される担体とを含有している。適当な添加剤(製剤原料)、例えば乳糖やりん酸水素カルシウムなどの賦形剤、粉末セルロースやデキストリンやポリビニルアルコールおよびポリビニルピロリドンなどの結合剤、カルボキシメチルセルロースやカルボキシメチルスターチなどの崩壊剤、ショ糖脂肪酸エステルやステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤、顔料などの着色剤、植物性香料などの矯味剤、安定化剤などが含まれていても良い。投与の形態としての具体例は、例えば錠剤、カプセル剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、液体状の溶液または懸濁剤、乳濁剤、脂肪乳剤、軟膏剤、坐剤、さらにパッチ剤、テープ剤、皮肉埋め込み型等の徐放性製剤等の形態である。投与方法としては、経口的あるいは直腸内投与、膣内投与、経皮吸収、経粘膜吸収、静脈内投与、関節腔内、筋肉内投与または皮下投与等の非経口投与が挙げられる。また、注射剤、点眼剤による投与も例示される。投与量は、成人一日当り、約0.5〜10mg、好ましくは1〜5mgで一日当り1〜5回に分けて投与されるが、患者の年齢、体重、健康状態および投与経路により、投与量、投与回数ともに調節できる。点眼の場合は、患者の状態により日に1〜4回の頻度で眼に滴下することができる。或いは眼軟膏としての使用も挙げられる。また、本発明の剤は、有効成分としてジエノゲストの他に、他の有効成分を含有することが可能である。他の有効成分としては、血管新生抑制作用を有する化合物とそれ以外の薬理作用をもつ化合物とに分けられる。血管新生抑制作用を有する化合物としては、塩基性線維芽細胞増殖因子(basic fibroblast growth factor:bFGF)や血管内皮細胞増殖因子(vascular endothelial growth factor:VEGF)の受容体結合阻害または産生阻害剤、血管内皮細胞増殖阻害剤、メタロプロテアーゼ阻害剤などがある。好ましくは、スラミン化合物、デキストラン硫酸、β−1,3−グルカン硫酸、フマギリン誘導体、ミノサイタリン、ペントサンポリサルフェート、イルソグラジン、血小板因子−4などの化合物である。その他の化合物としては、上述の血管新生の異常増殖を伴う疾患に対して、従来、血管新生抑制以外の作用機序を有するとの観点から用いられている薬物であり、好ましくは抗糖尿病薬、糖尿病性網膜症治療薬、動脈硬化治療剤、抗炎症剤、抗癌剤、抗リュウマチ薬などである。具体的には、抗糖尿病薬としてはグリベンクラミド、グリクラジドなどのスルホニル尿素薬、ビグアナイド薬、アカルボース、ボグリボーズなどのα−グルコシダーゼ阻害剤、糖尿病性網膜症治療薬としてはエパルレスタットなどのアルトース還元酵素阻害薬がある。動脈硬化治療剤としてはプラバスタチン、シンパスタチンなどのHMG−CoAリダクターゼ阻害薬、コレスチラミンなどの陰イオン交換樹脂、ベザフィブラートなどのフィブラート系製剤、プロブコールなどの抗酸化剤、EPA製剤などの血小板凝集抑制剤がある。抗炎症薬としては副腎皮質ステロイド、アリール酢酸やプロピオン酸、オキシカムなどの非ステロイド剤がある。抗癌剤としてはシクロフォスファミドなどのアルカリ化薬、アメトプテリンなどの代謝拮抗薬、マイトマイシンなどの抗生物質、植物アルカロイドなどがある。抗リュウマチ薬としては、オーラノフィンなどの経口金製剤、ペニシラミンなどがある。投与形態としては、ジエノゲストと他の化合物とを含有する製剤でもよいし、それぞれを別に投与してもよい。また、患者に対して、ジエノゲストと当該化合物を同時に投与するほか、従来の治療剤の漸減、離脱や、従来の治療剤の休薬期間中の使用などが有り得る。以下に、本発明の実施例を示す。なお、本発明は、以下の実施例に何ら限定されるものではない。(実施例1)ジエノゲスト 2.0g乳糖 87.0gコーンスターチ 6.0gステアリン酸マグネシウム 5.0g上記成分を混合し、100mgずつを日本薬局方3号カプセルに封入し、カプセル剤となす。(実施例2)ジエノゲスト 0.4g乳糖 91.6gコーンスターチ 50.0gタルク 3.0gステアリン酸マグネシウム 5.0g上記成分を適宜混合し、湿式顆粒圧縮法により1錠当りジエノゲスト0.40mgを含有する150mgの錠剤となす。(実施例3)ジエノゲスト 1.0gポリソルベート80 1.0gウィテップゾール(S−55) 98.0g上記成分を加温下練合し、プラスチックパッケージに封入して、1個当り重量1.0gの坐剤となす。産業上の利用可能性本発明の血管新生抑制剤は、強力な血管新生抑制活性を有し、性ホルモン非依存性腫瘍や糖尿病性網膜症、リュウマチ、動脈硬化等の血管新生性疾患の治療効果を発揮し得る。また、発症後の治療剤として用いる他、それぞれの疾患のリスクファクターが亢進している者に対して用いることにより、予防的効果も期待し得る。本発明の血管新生抑制剤は、血管新生の異常増殖を伴う疾患の予防および/または治療剤として効果を発揮し得る。本発明の薬剤は、単独で用いられる他に、他の作用杙序をもった公知の薬剤や、他の血管新生抑制剤や血管新生性疾患予防または治療剤と併用可能である。また、本発明の薬剤は、試薬としても有用である。さらに、本発明の薬剤は、副作用が少なく、長期間投与することができる。【図面の簡単な説明】図1は、実験例2の結果をインデックスで示すグラフである。図2は、チャンバーの実体顕微鏡の映像を示す模式図である。A,B,C,DはそれぞれA群、B群、C群、D群の結果を示す。 ジエノゲストまたはその溶媒和物を有効成分として含有することを特徴とする、眼内血管新生性疾患、リュウマチ性関節炎、および動脈硬化症からなる群から選択される少なくとも1つの血管新生性疾患の予防および/または治療剤。 前記ジエノゲストまたはその溶媒和物が、血管新生抑制作用を有する請求項1に記載の血管新生性疾患の予防および/または治療剤。