タイトル: | 特許公報(B2)_組織培養によるマホガニー属樹木の大量増殖法 |
出願番号: | 2000515422 |
年次: | 2007 |
IPC分類: | A01H 4/00,C12N 5/10 |
中村 健太郎 曽田 良 JP 3934874 特許公報(B2) 20070330 2000515422 19971014 組織培養によるマホガニー属樹木の大量増殖法 住友林業株式会社 000183428 浅村 皓 100066692 浅村 肇 100072040 長沼 暉夫 100088926 池田 幸弘 100102897 中村 健太郎 曽田 良 20070620 A01H 4/00 20060101AFI20070531BHJP C12N 5/10 20060101ALI20070531BHJP JPA01H4/00C12N5/00 C A01H 1/00-17/00 JSTPlus(JDream2) BIOSIS(DIALOG) 特開平09−019229(JP,A) 2 JP1997003681 19971014 WO1999018773 19990422 9 20040713 六笠 紀子 技術分野本発明は、マホガニー属樹木、特にマホガニー属に属するSwietenia macrophylla KINGの組織培養による大量増殖法に関する。背景技術マホガニー属樹木は、世界の熱帯地域における主要造林木であるが、虫害による損失が深刻な問題となっている。近年、組織培養技術の発達により、耐病性、耐虫性を付与した新品種が多くの植物で作出されており、マホガニーにおいても耐虫性の付与が期待されている。また、有用老齢木の増殖を試みる際には、挿し木等の既存法を用いることができず、精英樹の増殖は困難とされている。近年、幾つかの研究グループによって、これらの問題点の解決を目的として、組織培養技術を用いた研究がなされているが、成功例は今日まで4例のみである(S,Venketeswaran,M.A.D.L.Dias,F.Sultanbawa,U.V.Weyers(1988)Tissue culture on mahoganytree,Swetenia,Somatic Cell Grenetics of Woody Plants:147−153;S.K.Lee,A.N.Rao(1988)Plantlet production of Swietenia macrophylla King through tissue culture,Gard.Bull.Sing.41(1):11−18;E.Maruyama,K.Ishii,A.Saito,K.Migita(1989)Screening of suitable sterilization of explants and proper media for tissue culture of eleventree species of Peru−Amazon forest,Journal of Agricultural Science 33(4):252−261;及び近藤禎二,岡村政則(1994)オオバマホガニーの組織培養,林木の育種「特別号」’94:4−5)。しかしながら、これらの方法は、無菌幼植物体を材料に用いたり、頂芽を材料に用いた場合にも、シュート再生、多芽体の誘導に止まり、植物の再生には至っておらず、成木からの幼植物体の再生及び大量増殖を達成することはできない。したがって、効率的な培養方法の開発が望まれている。発明の開示本発明の目的は、マホガニー属樹木、特にSwietenia macrophylla KINGの大量生産を可能にする大量増殖法を提供することにある。本発明は、マホガニー属樹木の苗木、あるいは成木の大量生産を可能にする大量増殖法を開発することを目的として鋭意研究した結果、マホガニー属樹木の頂芽又は腋芽を培養して、定芽及び/又は不定芽を有する多芽体を誘導し、更に誘導した多芽体の誘導を効率よく増殖させることに成功した。特に、多芽体を誘導させるために用いる誘導培地と多芽体を増殖させるために用いる培地に、3−インドール酪酸(IBA)とベンジルアミノプリン(BAP)を添加することにより、効率よく多芽体を誘導し、かつ増殖することが可能になり、更には多芽体を増殖させるために、液体旋回培養を用いることにより、多芽体の増殖率を向上させることができることを見出した。また、多芽体からシュートを伸長させるためにIBAとBAPを添加し、液体静置培養を用いることにより、効率よくシュート伸長を促すことができることを見出した。増殖したシュートをIBAを添加した培地で培養することにより、更なるシュート伸長及び発根が可能になることを見出した。即ち本発明は、マホガニー属樹木の頂芽又は腋芽を多芽体誘導培地で培養して、定芽及び/又は不定芽を多数有する多芽体を誘導し;得られた多芽体を多芽体増殖培地に移植して増殖し;増殖した多芽体をシュート伸長培地に移植して静置培養することによりシュート伸長を促し;次いで伸長したシュートを発根培地に移植して発根させ、植物体を再生する;ことを特徴とするマホガニー属樹木の大量増殖法である。発明を実施するための最良の形態本発明によれば、苗及び成木の頂芽又は腋芽から多芽体を誘導、増殖させ、次いで得られた多芽体からシュートを伸長させ、これを発根させることにより、大量の幼植物体を効率よく生産することができる。本発明で対象とするマホガニー属樹木としては、より具体的には、Swietenia macrophylla KINGを例示することができる。本発明で用いる培養材料としては、苗木及び成木から採取した頂芽又は腋芽が用いられる。採取した頂芽又は腋芽は、通常の方法に従って、エタノール及び次亜塩素酸ナトリウムあるいは過酸化水素水あるいは塩化水銀(昇汞水)で表面殺菌を行い、滅菌水で洗浄後、培地中で培養する。頂芽又は腋芽から多芽体を誘導するために用いる多芽体誘導培地としては、通常の基本培地が用いられる。基本培地としては、無機成分及び炭素源を必須成分とし、その他植物成長調節物質、ビタミン、アミノ酸を含有する培地が用いられる。無機成分としては、窒素、燐、カリウム、ナトリウム、カルシウム、硫黄、鉄、マンガン、亜鉛、ヨウ素、ホウ素、モリブデン、塩素、コバルト等の元素を含む無機化合物が用いられる。炭素源としては、炭水化物、例えばショ糖又はブドウ糖が用いられる。植物成長調節物質としては、オーキシン、サイトカイニンを用いられる。オーキシンとしては、例えば3−インドール酪酸(IBA)、ナフタレン酢酸(NAA)等が挙げられ、サイトカイニンとしては、例えばベンジルアミノプリン(BAP)、カイネチン、ゼアチン、4−フェニルウレア(4−PU)等が挙げられる。ビタミンとしては、例えばチアミン、ピリドキシン、ニコチン酸等が挙げられる。アミノ酸としては、例えばグリシン、グルタミン酸、リジン等が挙げられる。実際に培養する際に用いられる培地としては、植物組織培養に用いられる培地、例えばMS培地(Murashige,T.(1962),Physiol Plant 15:473−497)、B5培地(Gramborg,O.L.(1968),Exp.Cell Res.50:151−158)、WP培地(Lloyd,G.(1981),Int.Plamt Prop.Soc.30:421−427)、BTM培地(Chalupa,V.(1984)Biologia Plnt.(praha)26:374−377)等が挙げられる。あるいはこれらの改変培地、例えば改変MS培地、改変B5培地、改変WP培地、改変BTM培地などを用いてもよい。ここで改変培地とは、これらの基本培地の各成分の濃度を、例えば1/2、1/4等に変更した培地を指す。特に、B5培地及びその改変培地が好ましい。定芽、不定芽の誘導及び成長を促進するため、BAPを0.02〜1.0mg/l、あるいはBAP0.02〜1.0mg/lとともにIBAを0.02mg/l以下含有する培地を用いることが好ましい。次いで、得られた多芽体を多芽体増殖培地に移植することにより、効率よく増殖させることができる。多芽体増殖培地としては、前記の基本培地を用いることができ、特に無機成分及び炭素源、ビタミン、アミノ酸等を含有し、IBAを0.02〜0.2mg/l及びBAPを0.2〜2.0mg/l含有する培地が好ましい。実際に培養する際には、IBA及びBAPをこのような量で含有するB5培地又はその改変培地を用いるのが好ましい。培養方法としては、固体又は液体培地を用いるのが好ましく、特に、液体旋回培養法を用いることが好ましい。具体的には、液体旋回培養法としては、60〜100rpm、好ましくは70〜80rpmの旋回条件で行う培養法が好ましい。次いで、増殖した多芽体をシュート伸長培地に移植することにより、多芽体から効率よくシュートを伸長させることができる。シュート伸長培地としては、前記の基本培地を用いることができ、特に無機成分及び炭素源、ビタミン、アミノ酸等を含有し、IBAを0.02〜0.2mg/l及びBAP0.2〜2.0mg/l含有する培地が好ましい。より具体的には、IBA及びBAPをこのような量で含有するB5培地又はその改変培地を用いるのが好ましい。培養方法としては、固体又は液体培地を用いるのが好ましく、特に、液体静置培養法を用いることが好ましい。次いで、伸長したシュートを、分割あるいは分割せずに発根培地に移植することにより、シュートを更に伸長させ、かつ発根させることができる。発根培地としては、前記の基本培地を用いることができ、特に無機成分及び炭素源、ビタミン、アミノ酸等を含有し、IBAを1.0〜5.0mg/l含有する培地が好ましい。実際には、IBAをこのような量で含有するB5培地又はその改変培地が好ましい。本発明では、伸長したシュートを、IBAを1.0〜3.0mg/l含有する改変MS培地で培養し、次いでIBAを1.0〜3.0mg/l含有する改変B5培地に移植して更に培養して、発根させ、植物体を再生することが好ましい。ここで用いる改変MS培地及び改変B5培地は、IBAを特に2.5mg/l含有するものが好ましい。またこれら改変MS培地及び改変B5培地での培養期間は、培養条件等によって変動し得るが、通常15日〜1ケ月間であり、特に約1ケ月間が好ましい。培養条件としては、温度23℃〜30℃、湿度60%〜100%、照度3,000ルックス〜9,000ルックスが好ましい。本発明では、上記した改変MS培地及び改変B5培地での培養後に、更にIBAを1.0〜3.0mg/l含有する改変MS培地で15日〜1ケ月間、好ましくは約1ケ月間培養するのが好ましい。特にIBAを2.5mg/l含有する改変MS培地を用いるのが好ましい。改変MS培地での培養条件は上記と同様である。上記した特定の改変培地で培養することによってシュートの発根率を高めかつ枯死率を低くすることができる。本発明の組織培養によるマホガニー属樹木の大量増殖法の好ましい実施の形態の一つとしては、先ずマホガニー属樹木の頂芽又は腋芽を、BAPあるいはBAPとともにIBAを含有するB5培地又はその改変培地で培養して多芽体を誘導する。次いで、この多芽体を、IBA及びBAPを含有する多芽体増殖培地に移植して液体旋回培養法により培養して多芽体を増殖させ、次いで増殖した多芽体を、IBA及びBAPを含有するシュート伸長培地に移植して液体静置培養を行うことによりシュート伸長を促す。次いで得られるシュートを、IBAを含有する発根培地に移植して培養することにより、幼植物体を生産することができる。実施例以下、本発明を実施例により更に詳細に説明する。インドネシアから入手したSwietenia macrophylla苗木(高さ0.2〜2.0m)を温室で成育させ、高さ1.0〜6.0mに成長させた後、材料を採取した。(1)材料の殺菌Swietenia macrophyllaの成木から頂芽を採取し、70%エタノール中で30秒、2%次亜塩素酸ナトリウム中で6分間表面殺菌を行い、滅菌水で数回洗浄後、滅菌濾紙上で風乾した。(2)多芽体の誘導多芽体誘導培地としては、改変B5培地(全培地成分を半分量にしたB5培地)にショ糖30g/l及び植物成長調節物質としてIBAを0〜0.02mg/l、BAPを0.02〜1.0mg/l添加し、pHを5.7に調整後、殺菌して用いた。培養温度は26±2℃とし、1日当たり16時間蛍光灯(3,000〜9,000lux)照明とした。培養1〜3ケ月後に多芽体が誘導された。培地に添加したIBA及びBAPの量と多芽体の形成数との関係を表1に示した。表1に示した結果から、特に、IBA0.02mg/lとBAP1.0mg/lを添加することが効果的であることが判る。(3)多芽体の増殖(2)で得られた多芽体を1個ずつの芽に分割し、多芽体増殖培地に移植した。培地には、IBAを0.02〜0.2mg/l、BAPを0.2〜2.0mg/l添加した改変B5培地(前記(2)と同じ)をpH5.7に調整し、殺菌して用いた。培養温度は、26±2℃とし、1日当たり16時間蛍光灯(3,000〜9,000lux)照明とした。その結果、培養1〜2ケ月後には、約6倍の芽を得ることができた。培地に添加したIBA及びBAPの量と増殖した芽の数との関係を表2に示した。表2に示した結果から、特にIBA0.2mg/lとBAP0.2mg/lを添加することが効果的であることが判る。(4)シュート伸長(3)で増殖した多芽体をそのままシュート伸長培地に移植した。培地には、IBAを0.02mg/l、BAPを0.2〜2.0mg/l添加した改変B5培地(前記(2)と同じ)をpH5.7に調整し、殺菌して用いた。培養温度は、26±2℃とし、1日当たり16時間蛍光灯(3,000〜9,000lux)照明とした。その結果、培養1ケ月後には、すべての芽を長さ約5〜10mmに伸長することができ、特に、IBA0.2mg/lとBAP0.2mg/lを添加することが効果的であった。(5)発根(4)で得られた大量のシュートを一本ずつに切り分け、発根培地に移植した。培地には、IBAを1.0〜5.0mg/l、ゲルライトを2.8g/l添加した改変B5培地(前記(2)と同じ)をpH5.7に調整し、殺菌して用いた。培養温度は、26±2℃とし、1日当たり16時間蛍光灯(3,000〜9,000lux)照明とした。その結果、培養1〜2ケ月後には、18.5%の個体で発根が観察され、同時に3〜5cmのシュートを伸長、2〜5枚の新葉を展開させることができた。培地に添加したIBAの量と発根個体数との関係を表3に示した。表3に示した結果から、IBA2.5mg/lを添加することが効果的であることが判る。(6)発根(4)で得られた大量のシュートを一本ずつに切り分け、以下の方法で培養した。▲1▼ IBA0〜10.0mg/lを添加した改変B5培地で、3ケ月間培養した。シュートは、1ケ月毎に、同組成の新しい培地に移植した。▲2▼ IBA0〜10.0mg/lを添加した改変MS培地で3ケ月間培養した。シュートは、1ケ月毎に、同組成の新しい培地に移植した。▲3▼ IBA0〜10.0mg/lを添加した改変MS培地で1ケ月間培養し、次いでIBA0〜10.0mg/lを添加した改変B5培地で1ケ月間培養し、更にIBA0〜10.0mg/lを添加した改変MS培地で1ケ月間培養した。▲4▼ IBA0〜10.0mg/lを添加した改変B5培地で1ケ月間培養し、次いでIBA0〜10.0mg/lを添加した改変MS培地で1ケ月間培養し、更にIBA0〜10.0mg/lを添加した改変B5培地で1ケ月間培養した。上記▲1▼〜▲4▼の培地には、ゲルライト2.8g/lを添加した。上記▲1▼〜▲4▼の培養は、いずれも培養温度26±2℃、培養照度1日当たり16時間蛍光灯(3,000〜9,000lux)、培養湿度60〜90%の条件で実施した。上記▲1▼〜▲4▼の条件で培養した結果(発根率及び枯死率)を、それぞれ表4〜表7に示した。表4〜表7の結果から、▲3▼の方法で培養を行った場合、3ケ月後には70.0%の個体で発根が観察され、同時に3〜10cmのシュートを伸長、2〜5枚の新葉を展開させることができ、特に、IBA2.5mg/lを添加することが効果的であることが判る。従って、IBA2.5mg/lを添加した改変MS培地で1ケ月間培養した後、IBA2.5mg/lを添加した改変B5培地で1ケ月間培養し、更にIBA2.5mg/lを添加した改変MS培地で培養することが、1種類の培地を継続的に使用するよりも、効果的であることが判る。産業上の利用可能性本発明によれば、マホガニー属樹木の組織培養用に供する無菌幼植物体、挿し木用に供する苗及び挿し穂を、試験管内で短期間に大量に生産することができ、マホガニー属樹木の苗の大量生産の可能性が高くなる。 マホガニー属樹木の頂芽又は腋芽を多芽体誘導培地で培養して、定芽及び/又は不定芽を多数有する多芽体を誘導し; 得られた多芽体を多芽体増殖培地に移植して増殖し; 増殖した多芽体をシュート伸長培地に移植して静置培養することによりシュート伸長を促し; 次いで伸長したシュートを、3−インドール酪酸(IBA)を1.0〜3.0mg/l含有する改変MS培地で培養し、次いでIBAを1.0〜3.0mg/l含有する改変B5培地に移植して更に培養して、発根させ、植物体を再生する; ことを特徴とするマホガニー属樹木の大量増殖法。 マホガニー属樹木の頂芽又は腋芽を多芽体誘導培地で培養して、定芽及び/又は不定芽を多数有する多芽体を誘導し; 得られた多芽体を多芽体増殖培地に移植して増殖し; 増殖した多芽体をシュート伸長培地に移植して静置培養することによりシュート伸長を促し; 次いで伸長したシュートを、3−インドール酪酸(IBA)を1.0〜3.0mg/l含有する改変MS培地で培養し、次いでIBAを1.0〜3.0mg/l含有する改変B5培地に移植して更に培養し、更に、IBAを1.0〜3.0mg/l含有する改変MS培地で培養して、発根させ、植物体を再生する; ことを特徴とするマホガニー属樹木の大量増殖法。