タイトル: | 特許公報(B2)_微生物農薬 |
出願番号: | 2000513931 |
年次: | 2008 |
IPC分類: | C12N 1/20,A01N 63/00,C12N 1/02 |
竪石 秀明 JP 4090197 特許公報(B2) 20080307 2000513931 19980922 微生物農薬 株式会社クレハ 000001100 藤野 清也 100090941 吉見 京子 100113837 竪石 秀明 JP 1997279609 19970926 20080528 C12N 1/20 20060101AFI20080501BHJP A01N 63/00 20060101ALI20080501BHJP C12N 1/02 20060101ALN20080501BHJP JPC12N1/20 EC12N1/20 AA01N63/00 FC12N1/02 C12N 1/02 A01N 63/00 C12N 1/20 BIOSIS(STN) WPI(DIALOG) 特開平4−295407(JP,A) International J.of Systematic Bacteriology (1987) 第37巻,第2号 p.144-152 Ann.Phytopath.Soc.Japan (1985) 第51巻,第3号 p.315-317 Biochimica et Biophysica Acta(1984)第802巻,第3号 p.477-489 J.Pharmacol.Exp.Ther(1979)第208巻,第1号 p.12-18 7 FERM BP-6067 FERM BP-6068 FERM BP-6069 JP1998004257 19980922 WO1999016859 19990408 11 20050908 六笠 紀子 技術分野本発明は、植物体、土壌、種子または種子の浸種液等より、トロポロン耐性、かつ、トロポロン非生産性であることを指標として選抜するイネ科植物育苗中に発生する細菌性病原菌に対する拮抗菌のスクリーニング方法に関する。また、本発明は、トロポロン耐性であり、かつ、トロポロン非生産性であることを特徴とし、イネ科植物育苗中に発生する細菌性病原菌に対して拮抗作用を有する細菌およびその芽胞を有効成分とする微生物農薬に関する。従来の技術イネ科植物育苗中に発生する病害としては、代表的に糸状菌によって起こるばか苗病、ごま葉枯病、いもち病あるいは細菌によって起こるもみ枯細菌病、苗立枯細菌病、褐条病などが挙げられる。これらの病害の防除には種子消毒剤、土壌混和剤、土壌灌注剤、緑化後の茎葉散布剤などが有効であるとされ、これら薬剤を単独あるいは組み合わせによる体系使用が行われている。糸状菌による病害については近年効果の高いEBI剤によって高率で防除が可能になってきている。また、細菌によって起こされる病害については化学農薬の使用によって防除されているが、細菌病が激発した場合には、化学農薬は一般にその効果が低く十分に防除できないという問題が残されている。細菌病が激発した場合には発病苗は廃棄するしかないのが現状である。細菌病の激発を予防・防除できる農薬の開発が望まれている。本発明者等は、上述のような現状に鑑み、イネ科植物の細菌病に対し化学農薬の防除効果に優る生物的な防除資材の探索を課題として研究を重ね、イネ苗立枯細菌病菌の病原毒素であるトロポロンに着目し、トロポロンに耐性の菌でありかつトロポロン非生産性菌をイネ体より検索することにより拮抗微生物のスクリーニング方法を確立するに至り、細菌病防除のために供し得る微生物資材を鋭意探索の結果、病原菌に拮抗作用を有する細菌をイネ苗から分離することに成功し、本発明を完成するに到った。発明の開示本発明は、植物体、土壌、種子または種子の浸種液等より、トロポロン耐性、かつ、トロポロン非生産性であることを指標として選抜するイネ科植物育苗中に発生する細菌性病原菌に対する拮抗菌のスクリーニング方法に関する。また、本発明はトロポロン耐性であり、かつ、トロポロン非生産性であることを特徴とし、イネ科植物育苗中に発生する細菌性病原菌に対して拮抗作用を有する細菌およびその芽胞を有効成分とする微生物農薬に関する。詳しくは、イネ科植物、特にその育苗中に発生する細菌性病害に拮抗作用を有する細菌としてPseudomonas属、Bacillus属、Enterobacter属のいずれかに属する細菌を拮抗菌とする微生物農薬に関する。またはこれらの中から2種類以上を混合して使用する微生物農薬に関する。詳しくは、イネ科植物に発生する細菌性病害の病原性細菌に拮抗作用を有するPseudomonas属、Bacillus属、Enterobacter属のいずれかに属する細菌を、またはこれらの中から2種類以上の混合物を種子に処理、または育苗土壌に含有させること、または当該菌体を浸種液に添加する、あるいは圃場において当該菌液をイネ科植物体に散布することを特徴とするイネ科植物の細菌性病害を防除する微生物農薬関する。発明の実施のための最良の形態本発明のスクリーニング方法は、イネ等の植物の断片、磨砕抽出液、土壌、種子、種子の浸種液等をトロポロンを添加した適当な固形培地に塗沫または置床し、得られたトロポロン耐性菌のコロニーを鉄イオン添加の適当な固形培地に植菌し、この鉄添加培地で赤色を呈さないコロニーを釣り菌して適当な培地で培養して増殖させ、集菌して得られた菌体を製剤化するか、あるいは直接生菌懸濁液で罹病籾を処理した後、育苗し防除効果を調査して有効菌株を選抜することにより行う。なお、本発明のスクリーニングにおいてトロポロンの代わりにトロポロン誘導体、も用いることができる。本発明のスクリーニングにより選抜でき、イネ科植物育苗中に発生する細菌性病原菌に対して拮抗作用を有する細菌またはその芽胞を有効成分とする微生物農薬として利用することができる。本発明において用いる生物防除資材は上記スクリーニング方法により得られ、例えばPseudomonas属、Bacillus属、Enterobacter属のいずれかに属する細菌であり、またはこれらの中から2種類以上を混合して使用してもよい。Pseudomonas属に属する細菌としては、例えばPseudomonas aureofaciens種の細菌を挙げることができ、より具体的にはPseudomonas aureofaciens B5を挙げることができる。Bacillus属に属する細菌としては、例えばBacillus polymyxa種の細菌を挙げることができ、より具体的にはBacillus polymyxa B36を挙げることができる。また、Enterobacter属に属する細菌としては、例えばEnterobacter cloacae種の細菌を挙げることができ、より具体的にはEnterobacter cloacae B51を挙げることができる。Pseudomonas aureofaciens B5、Bacillus polymyxa B36およびEnterobacter cloacae B51の細菌学的な諸性質を示す。これら3種の細菌は、イネ苗から本発明者等によって分離されたものであり、以上の性質からBergy’s Manual of Systematic Bacterilogy Vol.1,Vol.2およびBergy’s Manual of Systematic Bacteriology(第9版)を参考にするとそれぞれPseidomonas aureofaciens、Bacillus polymyxa、Enterobacter cloacaeと同定された。各細菌をPseudomonas aureofaciens B5、Bacillus polymyxa B36、Enterobacter cloacae B51と命名した。これら細菌は、通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所にそれぞれFERM BP−6067、FERM BP−6068、FERM BP−6069として寄託されている。これらの細菌はトロポロン耐性であり、かつ、トロポロン非生産性菌であって、イネ科植物に発生する主として細菌性病害の病原細菌に対して拮抗作用を有し、その有効な病害の例としてはイネ植物苗立枯細菌病(Pseudomonas plantarii)、イネもみ枯細菌病(Pseudomonas glumae)、イネ褐条病(Pseudomonas avenae)、イネ白葉枯病(Xanthomonas campestris)、イネかさ枯病(Pseudomonas syringae pv.oryzae)、イネ株腐病(Erwinia chrysanthemi pv.zeae)、イネ内穎褐変病(Erwinia herbcola)、イネ葉鞘褐変病(Pseudomonas fuscovaginae)、イネばか苗病(Gibberella fujikuroi)、イネごま葉枯病(Cochliobolas miyabeanus)、イネいもち病(Pyricularia oryzae)、オオムギ・コムギ黒節病(Pseudomonas syringae pv.japonica)、エンバクかさ枯病(Pseudomonas syringae pv.coronafaciens)、エンバクすじ枯病(Pseudomonas syringae pv.striafaciens)、トウモロコシ褐条病(Pseudomonas avenae)、トウモロコシ倒伏細菌病(Erwinia chrysanthemi pv.zeae)、フェスク・ライグラスかさ枯病(Pseudomonas syringae pv.atropurprea)、ソルガム条斑細菌病(Pseudomonas andropogonis)、シバ葉枯(Rhizoctonia solani)、シバ赤焼病(Rhizoctonia)等を挙げられる。本発明の微生物農薬は、これら細菌および/またはその芽胞を有効成分とする。例えば、上記細菌の懸濁液を例えばイネ科植物またはその種子にこれら菌を粉衣、吹き付け、塗沫またはイネ科種子をこれらの細菌の懸濁液に浸漬することにより、あるいはこれらの細菌の懸濁液もしくはこれらの菌体を浸種液に添加、育苗土壌(床土あるいは覆土)に灌注、混和するか、または圃場においてイネ科植物体にこれらの細菌の懸濁液を撒布することにより行うことができる。細菌の懸濁液の適当な濃度は上記した施用法によって異なるが、例えばイネ種籾を浸漬処理する場合には、これらの細菌の濃度としては1×1011〜1×102/ml、好ましくは1×1010〜1×105/mlで、5℃〜40℃、好ましくは15℃〜30℃で、1〜2日程度行う。このとき懸濁液は培養菌液でもよく、また培養菌液より遠心分離などにより培地を除去し、菌体を水または生理食塩水、緩衝液等に再懸濁したものでもよい。また、菌体を直接または適当な分散媒を用いて凍結乾燥などによって安定に保存した細菌を再懸濁した液を用いることもできる。本発明の微生物農薬は、イネ科植物育苗中に発生する細菌性病原菌に対して拮抗作用を有する上記の拮抗細菌および/またはその芽胞をそのまま懸濁液として使用してもよいが、例えば固体担体、液体担体等の各種担体と混合し、必要な場合には添加剤、その他の製剤助剤を加えて、水和剤、懸濁剤、粉剤、粒剤、糊状剤、マイクロカプセル剤に調整した製剤として使用することができる。製剤化の際に用いる固体担体としては、例えばカオリンクレー、パイロフィライト、ベントナイト、モンモリロナイト、珪藻土、酸性白土、バーミキュライト、パーライトなどの鉱物質担体、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、尿素、塩化アンモニウム、炭酸カルシウムなどの無機塩を用いることができる。また、小麦粉、フスマ、米ぬかなどの有機物微粉末も用いることができる。液体担体としては大豆油、綿実油などの植物油、グリセロール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール等が挙げられる。固着剤や分散剤等の製剤としては、カゼイン、ゼラチン、澱粉、アラビアガム、アルギン酸、セルローズ誘導体などの多糖類、リグニン誘導体、糖類、植物油、鉱物油、合成性水溶性高分子が挙げられる。その他、製剤用補助剤として凍結防止剤、消泡剤、増粘剤等を必要に応じて用いるることができる。また、本発明の拮抗細菌は糸状菌病害を対象とした種子消毒剤または散布剤との混用が可能である。例えば、イプコナゾール、ペフラゾエート、トリフルミゾール、プロクロラズ、フルジオキソニル、ベノミル、チオファネートメチル、フサライド、トリシクラゾール、ピロキロン、カルプロパミド、フェリムゾン、イソプロチオラン、EDDP、カルボキシンなどが挙げられる。さらに、殺虫剤、殺線虫剤、殺ダニ剤、殺菌剤、除草剤、植物成長調節剤、共力剤等と、混合し、または混合せずに同時に用いることもできる。本発明微生物農薬の製剤には、本発明の拮抗細菌(湿重量として)を通常約0.1〜95重量%含有させる。また製剤1g当たり約103〜約1010のコロニー形成単位含有させることが好ましい。【実施例】以下、スクリーニング例、試験例、製剤例を挙げて本発明を説明する。【スクリーニング例】(イネ苗からの拮抗細菌の分離)イネ苗立枯細菌病罹病苗の地際部約1cmを切り取り、少量の滅菌水を加えて乳鉢中で磨砕する、この磨砕液を適宜滅菌水で希釈し、トロポロンを100ppm添加したPPGA培地に塗沫後、30℃で5日間インキュベートする。出現したコロニーをFe+++が50ppmとなるように塩化第二鉄を添加したPPGA培地に移植し、30℃で5日間インキュベートする。形成されたコロニーがイネ苗立枯細菌病菌であり、トロポロンを生産していれば培地中のFe+++と錯体を形成して赤色を呈する。トロポロン非生産菌であれば赤色を呈さない。赤色を呈さないコロニーを選抜してPPG培地で30℃で2日間振とう培養し、5000×g、30分遠心分離し培地を除去分離する。得られた菌体を滅菌水に再懸濁し、苗立枯細菌病菌籾を菌体懸濁液に20℃で24時間浸漬する。この処理籾を適当な条件で浸種、催芽後播種し育苗を行う。無処理籾の場合と比較して防除効果が得られた菌株を拮抗細菌として選抜する。【試験例1】(イネ苗立枯細菌病に対する防除効果)イネ苗立枯細菌病菌を開花期に接種したイネ種子(品種:日本晴)および拮抗細菌として上記のようにして得られたトロポロン耐性、かつ、トロポロン非生産菌であるPseudomonas aureofaciens B5、Bacillus polymyxa B36、Enterobacter cloacae B51を用いてイネ苗立枯細菌病に対する種子処理による防除効果を調べた。拮抗細菌としてのPseudomonas aureofaciens B5、Bacillus polymyxa B36、Enterobacter cloacae B51はそれぞれPPGA培地で30℃24時間培養し、遠心分離で培地を除去し、滅菌水に再懸濁したものを用いて試験した。罹病種子を拮抗菌懸濁液(菌濃度1×109/ml))に浴比1:1で24時間浸漬し、ついで30℃、3日間浸種(浴比1:1)を行った後、市販のイネ育苗用粒状培養土(商品名:くみあい粒状培土)を詰めた育苗用箱(10×15cm)に箱当たり乾籾5g播種した(1区3反復)。その後、出芽器中で32℃、4日間保持して出芽させ、以後はガラス温室内で育苗した。播種15日後に各試験区の発病状況を次の指数で評価した。また、比較のため、市販の種子消毒剤であるスポルタックスターナーSE水和剤の200倍希釈溶液を用いて同様の試験をした。結果を表4に示す。0:無発病、1:白化苗の発生が見られるが枯死苗はない、2:枯死苗25%以下、3:枯死苗25〜50%、4:枯死苗50〜80%、5:枯死苗80%以上(殆ど全てが枯死)【表4】【試験例2】(イネもみ枯細菌病に対する防除効果)イネもみ枯細菌病懸濁液を減圧下で接種したイネ種子(品種:日本晴)を、および拮抗細菌としてPseudomonas aureofaciens B5を用いて、拮抗細菌の種子処理による防除効果を調べた。試験は試験例1同様の方法に行った。評価は、播種15日後に無処理区の枯死苗量を5とした達観指数により調査した。結果を表5に示す。【表5】【製剤例】本発明の拮抗細菌を適当な液体培地で振盪培養後、遠心分離して培地成分を除去し、カオリンクレーと水または適度な緩衝液を加え再懸濁し、凍結乾燥する。これを乳鉢中で穏やかに粉砕し、この粉砕物を重量で85%、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル10%、リグニンスルホン酸ナトリウム5%の割合でよく混合し、水和剤形式の製剤を得る。産業上の利用可能性本発明のスクリーニング方法により選抜された細菌およびその芽胞を有効成分とする微生物農薬は、化学農薬より高い防除効果を得ることができ、また特定の化学農薬の耐性菌にも有効であることが期待できる。従って、従来の化学農薬に代わって施用することにより、環境中への化学物質の放出を減少させることができる。本発明により、イネ科植物における細菌性病害の発生により農家が受ける経済的損失を軽減することができる。微生物への言及1)寄託機関:通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所住所: 日本国茨城県つくば市東1丁目1番3号寄託日: 平成9年8月21日受託番号:FERM BP−60672)寄託機関:通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所住所: 日本国茨城県つくば市東1丁目1番3号寄託日: 平成9年8月21日受託番号:FERM BP−60683)寄託機関:通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所住所: 日本国茨城県つくば市東1丁目1番3号寄託日: 平成9年8月21日受託番号:FERM BP−6069 Pseudomonas aureofaciens B5(FERM BP−6067)を有効成分として含有する微生物農薬。 Bacillus polymyxa B36(FERM BP−6068)を有効成分として含有する微生物農薬。 Enterobacter cloacae B51(FERM BP−6069)を有効成分として含有する微生物農薬。 Pseudomonas aureofaciens B5(FERM BP−6067)、Bacillus polymyxa B36(FERM BP−6068)、Enterobacter cloacae B51(FERM BP−6069株)からなる群の2種類以上を有効成分として含有する微生物農薬。 Pseudomonas aureofaciens B5(FERM BP−6067)菌株。 Bacillus polymyxa B36(FERM BP−6068)菌株。 Enterobacter cloacae B51(FERM BP−6069株)菌株。