生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_cdk2キナーゼ活性のpRb2/p130ペプチドインヒビター
出願番号:2000509437
年次:2009
IPC分類:C07K 14/47,A61K 38/55,A61P 35/00,A61P 43/00,C12N 15/09


特許情報キャッシュ

ジオールダノ,アントニオ JP 4323716 特許公報(B2) 20090612 2000509437 19980806 cdk2キナーゼ活性のpRb2/p130ペプチドインヒビター トーマス・ジェファーソン・ユニバーシティ 597177242 Thomas Jefferson University 平木 祐輔 100091096 石井 貞次 100096183 藤田 節 100118773 新井 栄一 100122389 ジオールダノ,アントニオ US 60/056,207 19970821 20090902 C07K 14/47 20060101AFI20090813BHJP A61K 38/55 20060101ALI20090813BHJP A61P 35/00 20060101ALI20090813BHJP A61P 43/00 20060101ALI20090813BHJP C12N 15/09 20060101ALI20090813BHJP JPC07K14/47A61K37/64A61P35/00A61P43/00 111C12N15/00 A C07K 14/47 A61K 38/55 A61P 35/00 A61P 43/00 C12N 15/09 CA/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN) GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq UniProt/GeneSeq 特開平07−316196(JP,A) 特表平09−501568(JP,A) Nature,1993年,Vol.366,p.707-710 Genes & Development,1995年,Vol.9,p.1740-1752 2 US1998016381 19980806 WO1999008700 19990225 2002500160 20020108 9 20050804 佐久 敬 【0001】序論本発明は研究の際にナショナル・インスティテュート・オブ・ヘルスによる援助を受けて成されたものである。米国政府は本発明について一定の権利を所有する。【0002】発明の背景過去何年もの間、良性又は悪性新形成疾患の主だった特徴は無秩序な有系分裂であると考えられていた。癌の発症は細胞周期を調節する細胞性手段の制御不能によるものと信じられている。【0003】哺乳動物細胞の周期は様々なサイクリン/サイクリン特異的キナーゼ(cdk)対の連鎖的活性化及び不活性化により駆動するものと信じられている(MacLachlanら (1995), Crit. Rev. in Eukary. Gene Ex. 5 : 127-56) 。原型的な細胞周期のキナーゼcdc2は最初に酵母において発見され、そしてDNA複製及び有系分裂の双方の調節に関与していることが見い出された。しかしながら、高等生物はこのような現象を誘導する一層複雑なシステムを保有していることが見い出された。【0004】関与するいくつかのキナーゼの一つ、サイクリン特異性キナーゼ2(cdk2)は哺乳動物細胞がその制限時点を通過してDNA複製に至るために必要とされる(Elledge, S.J. and Spottswood, M.R. (1991) EMBO J. 10 : 2653-2659) 。このキナーゼの活性化及び不活性化は、細胞が分裂し始める前のS期の正確な開始時期にとって重要である。サイクリンA又はBとの過渡的な会合はキナーゼがいつ活性し、それ故DNA複製に関与する基質をリン酸化するかを表わす。過去数年の間、cdk活性を制御するサイクリン結合以外のいくつかのメカニズムが発見された。リン酸化状態及び補酵素結合における相違の他に、cdkキナーゼ活性に結合してその活性を阻害することのわかっている低分子量タンパク質の数が増えてきている(Xiong, Y. (1996) Biochim. Biophys. Act. 1288 : 1-5; Sherr, C.J. and Roberts, J.M. (1995) Genes Dev. 9 : 1149-63)。cdkインヒビターのCIP/KIPファミリー(p21,p27,p57)及びINKファミリー(p15,p16,p18,p19)はサイクリン又は直接cdkに結合し、そして細胞周期の進行が続行しうるまでそのキナーゼ活性を抑制する。INKファミリーはD型サイクリンに複合した早期G1キナーゼcdk4及びcdk6に対する特異性を有し、一方CIPファミリーはサイクリンA又はEのいずれかに結合したcdk2を優先する。様々な細胞タイプの中で過剰発現されると、これらのインヒビターは増殖を停止させ、細胞をG1期にとどめることができる。従って、これらは過渡的調節式タンパク質であり、G1サイクリン−cdk対を潜在的に阻害する傾向を有する。このようないくつかのタンパク質の消失が腫瘍形成の重要な段階であることが見い出された。例えば、p16及びp15遺伝子は共に、全黒色腫症例の75%近くにおいて欠失していることが見い出された領域にある(Kambら (1994) Science 264 : 436-440; Nobori ら (1994) Nature 368 : 753-756) 。cdk阻害は正常細胞周期の進行にとって必須である。【0005】網膜芽腫ファミリーは、そのタンパク質が真核細胞周期ホメオスタシスにも関与する遺伝子の群から成る。このような遺伝子によりコードされるタンパク質は往々にして、その固有な三次元構造を理由に「ポケットタンパク質」と呼ばれている。この構造はかかる分子が関与する特異性及び機能性の関連するタンパク質−タンパク質相互作用のほとんどを司る。現在、このファミリーは、pRbと呼ばれるタンパク質をコードする網膜芽腫(RB)遺伝子、p107と呼ばれるタンパク質をコードするp107、及びpRb2/p130と呼ばれるタンパク質をコードするp130(pRb2/p130とも称される)を含む3つの構成員から成る。【0006】これら3つのポケットタンパク質は全て、主として細胞の核区画に局在する(Lee ら (1987) Nature 329 : 642-645; Ewenら (1991) Cell 66 : 1155-1164; Baldiら (1995) J. Cell. Biochem. 59 : 402-408) 。各タンパク質構造は基本的にN末端部分;ドメインA、スペーサー及びドメインBへと更に分割されるポケット構造;並びにC末端部分(いわゆるドメインC)から成る。このポケット機能ドメインA及びBが最も保存的であり、そして内因性タンパク質又はウィルス性腫瘍タンパク質(oncoprotein)のいずれかが関与する相互作用のほとんどを司るものと教示されている(Paggi ら J. Cell. Biochem. (1996) 62 : 418-430) 。【0007】Rbタンパク質はE2F転写因子との相互作用及びその阻害で最もよく知られる。E2Fはいくつかの遺伝子であってその生成物がDNA複製が起こるのに必要とされるものをトランス作用活性化するものと信じられている。しかしながら、pRbに結合すると、このトランス作用活性化能は失われる(Chellappanら (1991) Cell 65 : 1053-61)。pRbは網膜芽腫等のいくつかのタイプの癌においても失われていることが見い出されている。Rb関連タンパク質p107及びpRb/p130はpRbと似たような、しかしながら異なる性質を有することが見い出されている(Ewenら (1991) Cell 66 : 1155-64; Mayolら (1993) Oncogene 8 : 2561-6; Li ら (1993) Genes Dev. 7 : 2366-77; 及びHannonら (1993) Genes Dev. 7 : 2378-91) 。pRb,p107又はpRb2/p130過剰発現は癌細胞の増殖を阻害又は停止させることができるが(Huang ら (1988) Science 242 : 1563-1566; Booksteinら (1990) Science 247 : 712-715; Antelman ら (1995) Oncogene 10 : 697-704; 及びClaudio ら (1994) Cancer Res. 54 : 5556-5560) 、一定の腫瘍細胞はいずれのポケットタンパク質に対しても同等に応答性ではない。例えば、トランケーション化非機能性pRb分子を保有するSAOS−2ヒト骨癌細胞系はpRb及びp107の増殖抑制特性に対してもっぱら感受性である。他方、pRb2/p130過剰発現はSAOS−2増殖を遅くするが、このタンパク質はT98Gヒトグリア芽腫マルチフォーム及びMCF−7ヒト乳腺癌腫細胞系の増殖を阻害することもでき、一方、pRbもp107も阻害作用を全く示さない。T98G及びMCF−7細胞系は共にcdk4及びcdk6インヒビターであるp16INK4A のホモ接合欠失を示す。従って、ポケットタンパク質Rb及びp107は特異的サイクリン/cdk複合体により相当にリン酸化され始め、かくして細胞周期のブロッキングにおいて機能的に不活性となり始める。しかしながら、cdk2に複合していることの見い出されたpRb2/p130はp16INK4A ホモ接合欠失を解消し、このような細胞系における有効な増殖阻害を及ぼすことができることが見い出された(Paggi らJ. Cell. Biochem. (1996) 62 : 418-430)。【0008】Rb及びp107タンパク質の機能性ドメインは遺伝子的及び生化学的手段の双方を通じてマッピングされている(Huら (1990) EMBO J. 9 : 1147-1155; Ewen ら (1991) Cell 66 : 1155-1164; Ewen ら (1992) Science 255 : 85-87)。Rbポケットと称されるRb及びp107の約400個のアミノ酸フラグメントがこのようなタンパク質と、DNA腫瘍ウィルス性腫瘍タンパク質及び細胞リガンドとの会合を司る。このドメイン内には相当な配列類似性の6つの領域がある。同様に、サイクリンは、「サイクリンボックス」と称される約87個のアミノ酸にわたって広がる大きな配列類似領域を共有している(Pines ら (1989) Cell 58 : 833-846)。このドメインはRb及びp107のタンパク質:タンパク質相互作用において重要であると信じられている。事実、このドメインの一部を含んで成る配列を有するペプチドが細胞増殖及び増殖のインヒビターであると唱えられている(米国特許第5,625,031号)。【0009】関連Rbタンパク質、pRb2/p130の阻害活性はこのサイクリンボックスを介して起こるのではなく、異なる且つ独立のスペーサー領域ドメインを介して起こることがこの度見い出された。更に、様々な細胞プロセスの際のpRb2/p130の発現の増大は、cdk2のキナーゼの低下に伴うものと実証された。例えば、pRb2/p130タンパク質レベルは筋細胞の分化に依存して上昇し、cdk2キナーゼ阻害と一致する。これは関連p107タンパク質であってそのレベルが低下することが示されたものとかなり相違する。従って、pRb2/p130はE2F活性体に結合してそれを改変するだけでなく、その他のRbタンパク質とは異なる態様でp21と協奏してcdk2キナーゼ活性も阻害するものと信じられている。【0010】発明の概要本発明の目的は、cdk2キナーゼ活性を阻害するpRb2/p130のアミノ酸641〜711もしくはそのフラグメントを含んで成るペプチド、又はその突然変異体もしくは相同アミノ酸配列の提供にある。【0011】本発明のその他の目的は、細胞を、cdk2キナーゼ活性を阻害するpRb2/p130のアミノ酸641〜711もしくはそのフラグメントを含んで成るペプチド、又はその突然変異体もしくは相同アミノ酸配列と接触させることを含んで成る、cdk2キナーゼ活性を阻害する方法の提供にある。【0012】発明の詳細な説明癌は細胞が増殖制御不能となり、その結果異常且つ侵襲性の周囲組織が大量に増加する異種病理状態の群である。これは通常、急速且つ無秩序な細胞分裂、増強した細胞生存能力、並びに脱分化及び遺伝子改変の蓄積の付随を特徴とする。無秩序な細胞分裂は細胞数を増やすだけでなく、癌細胞において見い出される一般的な現象である遺伝子改変の蓄積にも寄与する。蓄積する改変は損傷を受けた細胞周期制御機能を更に劣悪にしうる。【0013】cdk2はヒト細胞周期の重要な調節因子であり、染色体12q13上にマッピングされている。この遺伝子座は、限定することなく、子宮平滑筋腫、唾液腺の腺腫及びヒト急性骨髄芽球性白血病等の多数の腫瘍において往々にして改変又は転位していることが示された。腫瘍における12q13座の改変はcdk2遺伝子の調節における変化に関与するものと信じられている。より詳しくは、cdk2タンパク質の活性が増大し、腫瘍細胞が増殖する。従って、cdk2活性を阻害する化合物の同定は癌細胞の増殖の調節及び制御において有用であろう。【0014】細胞周期制御機構と相互作用するその能力及びその増殖抑制効果を理由に、ポケットタンパク質は腫瘍増殖の制御において有用であると考えられている(Paggi らJ. Cell. Biochem. (1996) 62 : 418-430)。pRb2/p130遺伝子生成物は核タンパク質であり、そのリン酸化は細胞周期調節されている(Baldi ら (1995) Journal of Cellular Biochemistry 59 : 402-408)。G0特異的転写因子E2F5との会合及び分化又は休止細胞における高い発現率に基づき、pRb2/p130は主に早期G1期において作用すると考えられている。E2Fタンパク質機能の潜在的な修飾に加えて、pRb2/p130は、細胞のS期への移行を可能にするcdk2の如きキナーゼの活性を低下させることによりG0/G1停止に寄与することがこの度見い出された。【0015】高度に相同性のp107タンパク質もcdk2に対してこの効果を有することが示されたが、cdk2に対するpRb2/p130の効果はいくつかの点で相違する。例えば、cdk2キナーゼアッセイに加えるp107の量を増やすと、pRb及びヒストンH1基質のリン酸化は低下し、p107自体のリン酸化が高まり始める。このことは、p107がインヒビターというよりは基質として作用することを示唆する。対照的に、pRb2/p130はin vitroアッセイではリン酸化されず、それ故択一的な基質として作用せず、むしろ阻害特性を有する結合タンパク質として作用する。更に、p107はcdkインヒビターほどには作用せず、むしろcdk2/サイクリンAをその基質E2F4からマスキングする。対照的に、in vitro系のモデルでは、pRb2/p130タンパク質の増加はcdk2阻害と一致し、pRb2/p130がE2F活性を調節するように作用するだけでなく、キナーゼ活性を調節するようにも作用しうることを示唆する。【0016】最大の阻害効果を発揮するpRb2/p130の領域は2種類のタンパク質の間でほとんど保存されていないものである。相同性の低いこの領域はRbファミリーのタンパク質の機能的多彩性を担っているものと信じられている。pRb2/p130タンパク質の固有のドメインはこの度cdk2キナーゼ活性をin vitroで阻害できるものと同定された。このドメインは推定E2F結合部位及びC末端に非常に近い。【0017】pRb2/p130タンパク質濃度とcdk活性との間には反比例の関係があることをいくつかのモデルが示唆している。例えば、ML1ミエローマ細胞は、in vitroで分化すると、末端分化によりpRb2/p130タンパク質の著しい増大を示し、一方、関連のcdk2キナーゼ活性は基底レベルにまで低下する。ネズミ造血始祖細胞系FDC−P1も早期G1期において大量のpRb2/p130を示し、それには関連のcdk2ヒストンH1キナーゼ活性の低下が伴う。タンパク質レベルが後期G1において低下すると、キナーゼ活性体はcdk2に回復する。【0018】pRb2/p130タンパク質濃度とcdk2活性との関係を筋芽細胞系C2C12において調べた。2%のウマ血清を含む培地の中で培養すると、C2C12細胞は細胞周期の休止となり、隣りの細胞と融合し、そして完全に分化した多核筋繊維へと伸長する。この分化培地の中で5日経過した後、細胞は完全な筋管状の形態を帯びるに至った。従来の研究はp107タンパク質が筋肉分化の間に減少することを示していた(Kiess ら (1995) Cell Growth Diff. 6 : 1287-1298)。対照的に、これらの細胞の24時間の時点でのタンパク質抽出物のイムノブロッティングはpRb2/p130タンパク質の量が2倍以上に増加していることを示した。pRb2/p130複合体もこれらの抽出物から免疫沈殿させ、そして基質としてヒストンH1を利用するキナーゼアッセイにかけて関連のcdk2活性を評価した。cdk2キナーゼ活性は分化経路の終了時には半分以下に減少していた。cdk2のタンパク質レベルはキナーゼ分析を行ったサンプル全てにおいて等しいことが確認された。これらの結果をまとめると、一致して、pRb2/p130タンパク質レベルが上昇すると、関連のcdk2活性が低下し、pRb2/p130がこのキナーゼの活性の阻害に一役担っていることがあることを示唆する。更に、pRb2/p130は結合性細胞周期機構に関し、p107との機能的類似性において異なるようである。【0019】pRb2/p130タンパク質レベルとcdk2キナーゼ活性との間に関係があるため、cdk2を直接阻害するpRb2/p130の能力を調べた。pRb2/p130及びp107の様々な領域を代表する突然変異体のパネル、並びにコントロールとしてのpRbを開発し、そしてGST融合タンパク質として発現させた(図1参照)。cdk2複合体を対数増殖中のML1ミエローマ細胞のリゼートから免疫沈殿させた。次いで20μgのGST−融合タンパク質をこの沈殿物に加え、そしてその混合物を基質としてヒストンH1を利用するキナーゼアッセイにかけた。ポケットのA及びBドメイン並びにpRb2/p130のC末端領域は、GSTのみで処理した沈殿物と比べcdk2のキナーゼ活性に対してほとんど又は全く影響を及ぼさず、一方N末端は中程度の阻害活性を有していた。しかしながら、アミノ酸配列がpRb2/p130に特異的であるスペーサー領域はcdk2特異的ヒストンリン酸化を著しく低下させた。更に、cdk2活性に対するスペーサー領域の阻害効果は用量依存性であることが見い出された。【0020】このスペーサー領域の阻害活性もpRb2/p130にとって固有である。全てのRbタンパク質ファミリー構成員由来のスペーサー領域をGST融合タンパク質として発現させ、そしてcdk2のキナーゼアッセイに大過剰量で加える実験を実施した。しかしながら、pRb2/p130のみがこの領域を介して有意にcdk2キナーゼ活性を阻害できた。【0021】cdk2に対するこのスペーサー領域の特異性を確認した。これらの実験において、cdc2,cdk2,cdk4及びcdk5等のcdc2ファミリー構成員をML1細胞から免疫沈殿させ、そして基質としてヒストンH1又はRbのいずれかを用いるキナーゼアッセイにかけた。pRb2/p130のスペーサー領域はcdk2キナーゼ活性のみ低下させることができ、pRb2/p130に関連する阻害活性が、細胞内で安定的に結合できるキナーゼ、cdk2に対して特異的であることが実証された。【0022】 cdk2の活性を阻害するものと実証された領域はアミノ酸616〜828(SEQ ID NO:1)に対応するpRb2/p130のスペーサー領域の一部を含んで成る。更なる実験は、アミノ酸616〜711(SEQ ID NO:2)及びアミノ酸641〜711(SEQ ID NO:3)を含んで成るペプチドがこの阻害効果を保持していることを特定した。アミノ酸616〜642,641〜666,663〜711、及び616〜666から成るペプチドは阻害効果を保持できなかった。従って、本発明の課題に関し、「ペプチド」とはSEQ ID NO:1,SEQ ID NO:2もしくはSEQ ID NO:3又はそのフラグメントもしくはその突然変異体を含んで成るペプチド、又は類似のcdk2阻害活性を有する相同アミノ酸配列を意味する。相同アミノ酸配列とは、cdk2阻害活性を有するものと決定されたペプチドの規定の長さにわたって少なくとも約85%、そして好ましくは90〜95%のアミノ酸一致を有する配列である。「ペプチド」とは、アクセプター分子との相互作用においてペプチドの代替物として機能する構造であるペプチド擬似体を含むことも意味する(ペプチド擬似体についてはMorganら (1989) Ann. Reports Med. Chem. 24 : 243-252を参照のこと) 。ペプチド擬似体には、限定することなく、アミノ酸及び/又はペプチド結合を含む又は含まないが、ペプチドリガンドの構造及び機能的特徴を保持する合成構造体が含まれる。この用語の中に更に含まれるのは、N−置換化アミノ酸のペプチド又はオリゴマーであるペプトイド及びオリゴペプトイドである。ペプチド擬似体とは、特定のアミノ酸の長さとなるようにデザインされ、且つ考えられる全ての対応のアミノ酸配列であるペプチドの集団であるペプチドライブラリーを含むことも意味する。ペプチドライブラリーを作製する方法は当業者に周知である。【0023】この阻害活性を発揮できる本発明のペプチドは全長タンパク質のCOOH末端から始まって欠失突然変異体を作製することにより決定できる。このような突然変異配列に対応するキメラ融合ペプチドを次にPGEX−2T発現ベクター系を利用して実施例1及び2に従って作製する。阻害活性を保持するpRb2/p130のペプチド配列はかくして固相又は液相ペプチド合成の如き周知の方法に従って合成的に調製できる。他に、本発明のペプチドは組換合成できうる。本発明のペプチドを特性決定するのに利用されるアッセイを実施例4において記載した。【0024】cdk2活性を阻害する本発明のペプチドは、cdk2の活性化を物理的に妨害することにより細胞周期のG1/S期の細胞増殖進行を阻害するうえで有用であろう。cdk2のキナーゼ活性を阻害することにより細胞周期の進行を制御するこれらのペプチドは腫瘍増殖の停止を招くものと期待できる。悪性腫瘍の進行段階及び/又はタイプは、効果を奏するのに必要なペプチドの投与量及びルートを特定するであろう。【0025】更に、これらのペプチドは細胞周期のG1/S期の調節におけるcdk2の正常な機能の研究において有用であろう。【0026】以下の非限定的な実施例を本発明の更なる説明のために提供する。【0027】実施例実施例1:構築体の調製原核発現ベクターpGEX−2T(Stratagene, La Jolla, CA) 及びポリメラーゼ連鎖反応(PCR)をキメラグルタチオンS−トランスフェラーゼの構築のために用いた。pGEX−2TにサブクローニングしたPCRフラグメントを増幅するのに用いたプライマーはpRb2/p130のNH2 の5′及び3′末端、A、スペーサー、B及びCOOHドメイン、並びにpRb及びp107のスペーサードメインに由来した。作製したpGEX−2T融合タンパク質を図1に示す。【0028】実施例2:GST融合タンパク質の調製pGEX−2Tベクターを担持するXL1−Blue菌を中対数増殖期にまで増殖させ、次いでIPTGを培地に0.25mMの濃度に添加することによりタンパク質の発現を誘導した。この培養物を数時間振盪させた。次いで細菌をペレットにし、そしてNENTバッファー(20mMのトリス、pH8、100mMのNaCl、1mMのEDTA、0.5%のNP40)に再懸濁した。細胞懸濁物を音波処理し、ペレットにし、そして上清液を回収した。次いで残りの細菌をNENT+2%のN−ラウリル−サルコシンに再懸濁し、ペレットにし、そしてその上清液を再び回収した。合わせた上清液をグルタチオンアガロース(Pharmacia, Piscataway, NJ)と4℃で一夜インキュベーションした。次いでアガロースをペレットにし、そしてNENTバッファーの中で3回洗った。【0029】実施例3:イムノブロッティング細胞リゼートはペレットにした細胞を200μlの溶解バッファー(50mMのトリス、5mMのEDTA、250mMのNaCl、50mMのNaF、0.1%のトリトン、0.1mMのNa3 VO4 、プロテアーゼインヒビター)の中に再懸濁することにより調製した。50μgのタンパク質を7%のポリアクリルアミドゲルに泳動させた。ポリアクリルアミドゲル内のタンパク質をCAPSバッファー(10mMのCAPS、20%のメタノール、pH11)中のPVDF膜(Millipore Corp., Bedford, MA) に転写した。この膜をTBS−Tバッファー(2mMのトリス、13.7mMのNaCl、0.1%のTween−20、pH7.6)中の5%のミルクでブロッキングし、次いでTBS−Tで洗った。第一抗体を3%のミルク内でこの膜とインキュベーションし、次いでTBS−Tで洗った。この膜を西洋ワサビペルオキシダーゼ(Amersham, Arlington Hts, IL)に複合した抗ウサギとインキュベーションし、そしてTBS−Tで洗った。膜に結合した第二抗体の存在をECLシステム(Dupont NEN, Boston, MA) を利用して検定した。【0030】実施例4:キナーゼアッセイ細胞リゼートはペレットにした細胞を200μlの溶解バッファー(50mMのトリス、5mMのEDTA、250mMのNaCl、50mMのNaF、0.1%のトリトン、0.1mMのNa3 VO4 、プロテアーゼインヒビター)の中に再懸濁することにより調製した。各フラクションにつき等量のタンパク質を特異的なAbで免疫沈殿させた。ヒストンH1キナーゼ活性の存在の検定の前に、各サンプルを等量の前述のPGEX−27構築体と4℃で30分インキュベーションした。タンパク質キナーゼアッセイはGiordanoら(1991) Science 253 : 1271-5に記載の手順に従って実施した。キナーゼアッセイは少なくとも3回繰り返し、タンパク質量を標準化してアッセイ間標準偏差が10%以内となるようにした。【図面の簡単な説明】【図1】 グルタチオンS−トランスフェラーゼ−pRb,p107及びpRb2/p130融合タンパク質の模式図。 cdk2キナーゼ活性を阻害する、SEQ ID NO:3からなるペプチド。 請求項1記載のペプチドを含む、細胞のcdk2キナーゼ活性を阻害するための医薬。配列表


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