タイトル: | 特許公報(B2)_メチルメタクリレートの製造方法 |
出願番号: | 2000502011 |
年次: | 2009 |
IPC分類: | C07C 67/343,C07C 67/52,C07C 69/54,C08F 20/14 |
スチュアート,ジョセフ ヤングブラッド マーティン,ジョン スチュアート パーテン,デビット ウィリアム ハリソン,スティーブン パトリック JP 4343423 特許公報(B2) 20090717 2000502011 19980710 メチルメタクリレートの製造方法 ルーサイト インターナショナル ユーケー リミテッド 500021457 石田 敬 100077517 鶴田 準一 100092624 福本 積 100087871 西山 雅也 100082898 樋口 外治 100081330 スチュアート,ジョセフ ヤングブラッド マーティン,ジョン スチュアート パーテン,デビット ウィリアム ハリソン,スティーブン パトリック GB 9714632.8 19970712 20091014 C07C 67/343 20060101AFI20090917BHJP C07C 67/52 20060101ALI20090917BHJP C07C 69/54 20060101ALI20090917BHJP C08F 20/14 20060101ALI20090917BHJP JPC07C67/343C07C67/52C07C69/54 ZC08F20/14 C07C 67/343、67/52、69/54 特開昭52−125117(JP,A) 特開平3−163044(JP,A) 特開平7−82216(JP,A) 特開平5−345743(JP,A) 英国特許出願公開第1107234(GB,A) 5 GB1998002028 19980710 WO1999002481 19990121 2001509499 20010724 7 20050706 神野 将志 【0001】本発明は、メチルメタクリレートの製造方法に関する。従来、メチルメタクリレートは、公知のアセトン−シアノヒドリン経由によって産業上製造されてきた。この方法は費用がかかり、比較的高コストでメチルメタクリレートを製造する。【0002】メチルメタクリレートの他の製造方法は、US-3535371、US-4336403、GB-A-1107234、JP-A-63002951 に記載されており、プロピオン酸もしくはそのメチルエステルをホルムアルデヒドもしくはその誘導体とメタノールの存在下において反応させている。しかし、これらの文献には、メチルメタクリレート生成物を残留反応体及びこの反応の他の副生成物からいかに分離するかについては記載されていない。【0003】この反応からメチルメタクリレート生成物を分離する際に遭遇する1つの問題は、形成した副生成物、例えばメチルイソブチレート及びジエチルケトンが従来の蒸留法によってメチルメタクリレートより分離することが困難であることである。それは、これらの沸点がとても近いからである。大気圧におけるメチルメタクリレートの沸点は100 ℃であり、一方メチルイソブチレートの沸点は92℃であり、ジエチルケトンの沸点は100 ℃である。またこの分子は大きさ及び形状も似ているため、分子ふるいによる分離もほとんど不可能である。従って、メチルメタクリレート生成物をある種の不純物から分離する上記問題点を克服する、メチルメタクリレートの製造方法が必要である。【0004】GB-A-1235208には、分別結晶化及び得られるメチルメタクリレート結晶の対流洗浄による、融点が−50℃以下である不純物を含むアルキルメタクリレートの精製方法が記載されている。しかし、この文献には、融点が−50℃より高い不純物をメチルメタクリレートから除去する好適な方法については示されていない。【0005】ホルムアルデヒドとメチルプロピオネートの縮合反応の冷却した生成物流体には2種の主要な不純物、すなわちジエチルケトン(DEK)及びメチルイソブチレート(MIB)が存在する。MIBの融点は−85℃であるが、DEKの融点は−39℃であり、これはメチルメタクリレートの融点−47℃よりも高い。我々は、MIB、DEK及び他の化合物を分別結晶化によりメチルメタクリレートから除去できることを見出した。【0006】本発明は、以下の工程(i) プロピオン酸もしくはそのエステルをホルムアルデヒドもしくはその前駆体と縮合反応において反応させて、メチルメタクリレート、残留反応体、メタノール及び副生成物を含む気体生成物流体を形成すること、(ii)この気体生成物流体の少なくとも一部を処理して、−50℃より高い温度において溶融する少なくとも1種の不純物とメチルメタクリレートを実質的にすべて含む液体生成物流体を形成すること、そしてこの液体生成物流体に以下の工程を含む分別結晶化工程を少なくとも1回行うこと、(iii) 前記液体生成物流体を約−45℃〜約−95℃に冷却し、母液及び固体メチルメタクリレートの結晶を形成すること、ここで前記結晶は前記液体生成物流体もしくは母液よりも多くのメチルメタクリレートを含む、(iv)前記母液から前記固体メチルメタクリレートの結晶を分離すること、及び(v) 前記結晶を溶融させて、前記液体生成物流体よりも前記不純物の濃度が低い液体メチルメタクリレートを形成すること、を含む、メチルメタクリレートの製造方法が提供される。【0007】このようにして、融点が純粋なメチルメタクリレートよりも低い不純物及び高い不純物の両者を含む複雑な生成物流体から実質的に純粋なメチルメタクリレートを得ることができる。【0008】この方法より回収されるメチルメタクリレートが含む他の物質は、好ましくは0.5 重量%未満であり、より好ましくは0.2 重量%未満であり、とりわけ望ましくない不純物は0.1 重量%未満である。【0009】好ましくは、メチルメタクリレートはメチルプロピオネートとホルムアルデヒドもしくはその前駆体、例えばメチラールの縮合により、詳細にはメチルプロピオネートとホルムアルデヒドの縮合により製造される。この反応の副生成物は、水、ジエチルケトン(DEK)、プロピオン酸(PA)、メタクリル酸(MAA)及びメチルイソブチレート(MIB)、並びにメタノールを含む。【0010】この縮合反応は好ましくは触媒、例えばシリカ担体上に担持されたセシウム触媒の存在下において行われる。この縮合反応は適当な温度及び圧力において行ってよい。通常、この縮合反応工程は250 〜400 ℃、好ましくは300 〜375 ℃の温度で行われる。通常、この縮合反応工程は104 〜106N.m-2、好ましくは105 〜106N.m-2の圧力において行われる。【0011】この縮合反応からの気体生成物流体は適当な手段、例えば冷却、凝縮等によって液化される。次いで、得られる液体流体を、例えば分別蒸留によって液体生成物流体と残留物質を含む1以上の流体に分離する。回収される残留物質流体は、好ましくは縮合反応に再循環される。【0012】液体生成物流体は、副反応によって形成されるMIB、DEK(3-ペンタノン)、PA又はMAAのような物質を20重量%まで含んでいてもよい。この液体生成物流体が含むこれらの不純物は、好ましくは20%未満、より好ましくは5%未満である。不純物もしくは副生成物のレベルは反応条件又は反応後の分離を調節することによって制御することができる。【0013】この液体生成物流体を約−45℃〜約−95℃に冷却してこの液体生成物流体の一部を凍結させ、固体メチルメタクリレートの結晶と母液もしくは上澄液(これは凍結していない液体生成物流体の一部である)とを形成する。【0014】メチルメタクリレート結晶中の不純物のレベルは、液体生成物流体を冷却する速度によって影響される。液体生成物流体を冷却する速度は、結晶中に含まれる不純物の量を最小にすることによって不純物からメチルメタクリレートの分離を最適にするよう制御される。比較的ゆっくりと冷却すると、より速く冷却した場合に形成する結晶よりも不純物の量が少ないことが見出された。液体生成物流体を冷却する速度は、好ましくは30℃/min 未満、より好ましくは20℃/min 未満、最も好ましくは10℃/min 未満である。冷却速度は遅いほど、例えば5℃/min 未満が好ましい。【0015】液体生成物流体を冷却すると形成するメチルメタクリレートの結晶を、例えば洗浄もしくはスウェッティングによりさらに処理して残留母液を除去してもよい。この結晶を適当な溶剤で洗浄して残留母液を除去し、乾燥してもよい。メチルメタクリレートの結晶を部分溶融させ又は「スウェット」して不純物を現象させてもよい。この結晶を部分溶融させると、結晶の不純な部分は純粋な部分より低温で溶融するため、不純な部分を除去することができる。この方法は、結晶の形成の間に結晶中に封入される又は結晶の表面に残っている少量の母液の放出を促進する。【0016】メチルメタクリレート結晶を除去した後に残っている母液を、例えばさらに結晶化することによって精製し、精製したメチルメタクリレートの収率を高めることもできる。【0017】分別結晶化工程より得られる液体メチルメタクリレートをさらなる分別結晶化工程によってさらに精製することもできる。最終生成物に必要な純度によっては、数回の結晶化工程が必要であろう。好ましくは、この工程は1〜6回の連続的結晶化工程を含む。多くの結晶化工程を含む結晶化法は当業者に周知である。この結晶化工程は、バッチ、掻取り壁及び落下フィルム結晶化器(scraped wall and falling film crystallisers) を含む公知の装置を用いて行うことができ、そのデザインは行おうとする工程のスケール及び特性によってきまる。【0018】結晶化工程は、沸点がメチルメタクリレートの沸点ときわめて近い成分を含む液体流体からメチルメタクリレートを分離する場合に特に適している。特に、MIB及び/又はDEKがメチルメタクリレート流体中に存在していてもよい。【0019】従って、本発明は、メチルメタクリレートと融点が−50℃より高い液体不純物を20%まで含む液体混合物からメチルメタクリレートを分離する方法をも提供し、この方法は以下の工程(i) 前記液体混合物を約−45℃〜約−95℃に冷却し、母液及び固体メチルメタクリレートの結晶を形成すること、ここで前記結晶は前記液体混合物もしくは母液よりも多くのメチルメタクリレートを含む、(ii)前記母液から前記固体メチルメタクリレートの結晶を分離すること、及び(iii) 前記結晶を溶融させて、前記液体混合物よりも前記不純物の濃度が低い液体メチルメタクリレートを形成すること、を含む。【0020】この液体メチルメタクリレート生成物を、上記のようなさらなる結晶化工程を行うことによってさらに精製してもよい。【0021】本発明の方法により製造されるメチルメタクリレートは、多くの用途を有するポリメチルメタクリレート及び様々なアクリルコポリマーの製造に有効である。本発明の実施例を以下に示す。【0022】実施例1〜3連続結晶化工程によるMMAの精製を、MMA/DEK混合物の3種の組成物について調べた。MMA中に20v/v %、1v/v %及び0.25v/v %のDEKを有する混合物を調製した。次いで各混合物を、メタノール/固体二酸化炭素槽に入れた攪拌器を取り付けた沸騰チューブに入れ、結晶が形成するまで2分間急速に冷却した。この時点の温度を記録し、−55℃〜−62℃であった。母液を除去し、結晶をメタノールで3回洗浄し、次いで真空下で乾燥した。この結晶を溶融させ、溶融体のサンプルをガスクロマトグラフィーを用いて分析した。前の段階で形成した溶融体から出発してこの工程を繰り返した。この結果を表1に示す。この結果は、0.25v/v %DEKを含むMMAを連続結晶化すると、DEKレベルが約600ppmまで低下することを示している。【0023】【表1】【0024】実施例4得られるMMA結晶の組成物に対する冷却速度の効果を調べた。1v/v %DEKを含むMMAのサンプルを2つに分けた。第一の部分を実施例1〜3の方法を用いて急速に冷却した。第二の部分はメタノール/アセトン/水/固体二酸化炭素槽を用いて、30分かけて冷却するようにゆっくる冷却した。従って冷却速度は2℃/min であった。この結果を表2に示す。【0025】【表2】【0026】実施例5他の成分を含むMMAの混合物を調製し、温度が約−65℃であるメタノール、水及びDrikold 槽中でゆっくり冷却した。立方形の結晶が−54.8℃の温度において形成した。上澄液を濾過によって除去し、結晶を冷メタノールで洗浄し、再び濾過した。真空によってメタノールを除去し、結晶を解凍した。この結晶に質量は32g であり、上澄液の質量は17g であった。この結晶及び液体の組成を滴定(酸について)及びガスクロマトグラフィー(他の成分について)により測定した。この結果及び当初の組成を表3に示す。【0027】この結果は、メチルメタクリレート混合物中の多くの不純物のレベルが、この混合物がメチルメタクリレートよりも沸点の高い不純物を含む場合であっても分別結晶化法によって低下することを示している。【0028】【表3】 以下の工程 (i)プロピオン酸もしくはそのエステルをホルムアルデヒドもしくはその前駆体と縮合反応において反応させて、メチルメタクリレート、残留反応体、メタノール及び副生成物を含む気体生成物流体を形成すること、 (ii)この気体生成物流体の少なくとも一部を処理して、−50℃より高い温度において溶融する少なくとも1種の不純物とメチルメタクリレートを実質的にすべて含む液体生成物流体を形成し、この液体生成物流体に以下の工程を含む分別結晶化工程を少なくとも1回行うこと、 (iii)前記液体生成物流体を−45℃〜−95℃に冷却し、母液及び固体メチルメタクリレートの結晶を形成すること、ここで前記結晶は前記液体生成物流体もしくは母液よりも多くの割合のメチルメタクリレートを含む、 (iv)前記母液から前記固体メチルメタクリレートの結晶を分離すること、及び (v)前記結晶を溶融させて、前記液体生成物流体よりも前記不純物の濃度が低い液体メチルメタクリレートを形成すること、を含む、メチルメタクリレートの製造方法。 前記−50℃より高い温度において溶融する少なくとも1種の不純物がジエチルケトン、メタクリル酸及び/又はプロピオン酸を含む、請求項1記載の方法。 前記液体生成物流体が30℃/min未満の速度で冷却される、請求項1又は2記載の方法。 メチルメタクリレートと融点が−50℃より高い液体不純物を20%まで含む液体混合物からメチルメタクリレートを分離する方法であって、以下の工程 (i)前記液体混合物を−45℃〜−95℃に冷却し、母液及び固体メチルメタクリレートの結晶を形成すること、ここで前記結晶は前記液体混合物もしくは母液よりも多くの割合のメチルメタクリレートを含む、 (ii)前記母液から前記固体メチルメタクリレートの結晶を分離すること、及び (iii)前記結晶を溶融させて、前記液体混合物よりも前記不純物の濃度が低い液体メチルメタクリレートを形成すること、を含む方法。 前記結晶化工程を1〜6回連続して用いる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。