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タイトル:特許公報(B2)_プライマーゼ活性を有する耐熱性酵素
出願番号:2000397161
年次:2005
IPC分類:7,C12N15/09,C12N1/15,C12N1/19,C12N1/21,C12N5/10,C12N9/12


特許情報キャッシュ

松井 郁夫 河原林 裕 菊池 久 JP 3689736 特許公報(B2) 20050624 2000397161 20001227 プライマーゼ活性を有する耐熱性酵素 独立行政法人産業技術総合研究所 301021533 松井 郁夫 河原林 裕 菊池 久 JP 2000165875 20000602 20050831 7 C12N15/09 C12N1/15 C12N1/19 C12N1/21 C12N5/10 C12N9/12 C12N1/21 C12R1:19 JP C12N15/00 A C12N1/15 C12N1/19 C12N1/21 C12N9/12 C12N5/00 A C12N1/21 C12R1:19 1.Nucleic Acids Research,1999,Vol.27,p。4444−4450 2.DNA Research,1998,Vol.5,p.55−76 3.Eur.J.Biochem.,1988 Aug.1;175(2):265−70 4.Eur.J.Biochem.,1991 Jan.1:195(1):157−62 6 2002051788 20020219 30 20001227 2003022653 20031120 特許法第30条第1項適用 2000年3月31日〜4月2日 社団法人日本農芸化学会開催の「日本農芸化学会2000年度大会」において文書をもって発表 佐伯 裕子 河野 直樹 鵜飼 健 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、高温条件下においてプライマーゼ活性を有するタンパク質、該タンパク質をコードする遺伝子に関する。【0002】【従来の技術】プライマーゼは、DNAプライマーゼとも呼ばれており、DNA複製開始のプライマーRNAを合成するRNAポリメラーゼである。すなわち、プライマーゼは、DNA複製機構において、リーディング鎖における複製起点及びラギング鎖における岡崎フラグメントの合成起点に、約10ヌクレオチドの短いRNAプライマーを合成する。したがって、プライマーゼは、DNA複製機構において必須な構成要素である。【0003】現在知られているプライマーゼとしては、大腸菌におけるdnaG遺伝子産物(60kDa)、T7ファージの遺伝子4産物(Gp4、63kDa)、T4ファージの遺伝子41産物(54kDa)並びに遺伝子61産物(40kDa)及び真核生物のDNAポリメラーゼαの2個のサブユニット(約60kDaと約50kDa)が挙げられる。【0004】ところが、これらのプライマーゼは、常温生物由来であるため、室温以上の温度条件下では極めて不安定であり、特に、2本鎖DNA熱変性温度条件下では速やかに熱失活してしまう。このため、例えば、2本鎖DNA熱変性温度と急冷と酵素反応とを繰り返すPCR反応等においては、現在知られているプライマーゼを用いることができない。耐熱性に優れたプライマーゼが発見されれば、PCR法によるDNA増幅反応とプライマー合成反応とを同一チューブ内で行なうことが可能となる。その結果、新規な遺伝子ラべリング法及び遺伝子変異法等を開発することができる。したがって、高温条件下であっても、優れた活性を示すプライマーゼが渇望されている。しかしながら、現在のところ、耐熱性に優れたプライマーゼは知られていない。【0005】【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明は、高温条件下であっても優れた活性を示して核酸プライマーを合成することの可能なプライマーゼ活性を有する耐熱酵素を提供することを目的とする。【0006】【課題を解決するための手段】本発明者は、上記の目的を達成すべく、90〜100℃で生育する超好熱性古細菌に着目し、その遺伝子配列からプライマーゼ活性を示すタンパク質をコードすると推定される遺伝子を見出した。さらに、その遺伝子を大腸菌に組み込んで、この形質転換された大腸菌を使って酵素を産生し、この酵素が高温(80℃以上)で安定に存在し、且つ、プライマーゼ活性を示すことを確認して、本発明を完成するに至った。【0007】 すなわち、本発明は、塩基配列の所定の部位に結合するとともに当該塩基配列に対して相補的な核酸プライマーを合成するプライマーゼにおいて、80℃以上の環境下で生育可能な耐熱性古細菌から精製され、至適温度が80℃以上であることを特徴とするプライマーゼに関するものであり、本発明は以下(1)〜(6)に示されるとおりである。【0008】(1)a)配列番号2で表されるアミノ酸配列を有するか、又は配列番号2で表わされるアミノ酸配列における少なくとも1個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を有する、プライマーゼの大サブユニットからなり、配列番号1で表されるアミノ酸配列を有するか、又はb)配列番号1で表わされるアミノ酸配列における少なくとも1個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を有する、プライマーゼの小サブユニットとの複合蛋白質を形成させるためのサブユニット。(2) 配列番号2で表されるアミノ酸配列を有するか、又は配列番号2で表わされるアミノ酸配列における少なくとも1個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を有する、プライマーゼの大サブユニットと、配列番号1で表されるアミノ酸配列を有するか、又は配列番号1で表わされるアミノ酸配列における少なくとも1個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を有する、プライマーゼの小サブユニットとが、ヘテロダイマーを形成してなり、プライマーゼ活性を有する複合蛋白質。(3) 配列番号2で表されるアミノ酸配列を有するか、又は配列番号2で表わされるアミノ酸配列における少なくとも1個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を有する、プライマーゼの大サブユニットをコードするDNAと、配列番号1で表されるアミノ酸配列を有するか、又は配列番号1で表わされるアミノ酸配列における少なくとも1個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を有する、プライマーゼの小サブユニットをコードするDNAとの組み合わせ。(4)プライマーゼの大サブユニットをコードするDNAが、配列番号4で表わされる塩基配列を有するか、又は配列番号4で表わされる塩基配列における少なくとも1個の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列を有するDNAである、上記(3)に記載の組み合わせ。(5) 上記(3)に記載の、プライマーゼの大サブユニットをコードするDNAとプライマーゼの小サブユニットをコードするDNA をそれぞれ含有する組換えベクターの組み合わせ。(6) 上記(5)に記載の組換えベクターをそれぞれ含む形質転換体の組み合わせ。 配列番号1は、超好熱性古細菌から採取されたプライマーゼの小サブユニットのアミノ酸配列である。したがって、(1)のb)のタンパク質は、高温条件下で核酸プライマーを合成するプライマーゼの構成要素になるといった機能を有する。また、配列番号2は、超好熱性古細菌から採取されたプライマーゼの大サブユニットのアミノ酸配列である。したがって、同a)のタンパク質は、高温条件下で核酸プライマーを合成するプライマーゼの構成要素になり、上記小サブユニットとの複合蛋白質を形成する。 配列番号4は、超好熱性古細菌から採取されたプライマーゼの大サブユニットをコードする塩基配列であり、該塩基配列を有するDNAは、高温条件下で核酸プライマーを合成するプライマーゼの構成要素である大サブユニットをコードするといった機能を有する。 なお、上記(3)のプライマーゼの小サブユニットをコードするDNAの具体的な塩基配列は、配列番号3に示され、該塩基配列を有するDNAは超好熱古細菌から採取され、高温条件下で核酸プライマーを合成するプライマーゼの構成要素である小サブユニットをコードするといった機能を有する。 また上記(6)の形質転換体をそれぞれ培養し、得られる培養物から小サブユニット及び大サブユニットを採取し、これら小サブユニット及び大サブユニットからヘテロダイマーを形成させることにより、プライマーゼを製造できる。【0018】【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。本発明のプライマーゼは、80℃以上の環化下で生育可能な耐熱性古細菌から精製されたものであり、至適温度が80℃以上であることを特徴とするものである。言い換えると、このプライマーゼは、80℃以上の温度で、塩基配列の所定の部位に結合するとともに、当該塩基配列に対して相補的な核酸プライマーを合成するプライマーゼ活性を有するものである。【0019】ここで、80℃以上の環化下で生育可能な耐熱性古細菌としては、超好熱菌を使用でき、好ましくは好熱性古細菌を使用でき、より好ましくは硫黄代謝好熱性古細菌を使用できる。好熱性古細菌としては、例えば、パイロコッカス・ホリコシ(Pyrococcus horikosii)、パイロコッカス・フリオサス(Pyrococcus furiosus)及びパイロコッカス・ウォーセイ(Pyrococcus woesei)等のパイロコッカス属、サーモコッカス・リトラリス(Thermococcus litoralis)、サーモコッカス・セラー(Thermococcus celer)、サーモコッカス・プロファンダス(Thermococcus profundus)及びサーモコッカス・ペプトノフィラス(Thermococcus peptonopjilus)等のサーモコッカス属、或いはメタノバクテリウム属等を挙げることができる。【0020】また、ここで核酸プライマーとは、DNAプライマー及びRNAプライマーの両方を意味する。すなわち、本発明のプライマーゼは、DNAプライマー及びRNAプライマーのいずれも合成することができる。本発明のプライマーゼは、上記の性質を有するものであれば、組換えDNA技術を用いて人工的に得ることも可能である。【0021】以下では、本発明の一例として、パイロコッカス・ホリコシ(Pyrococcus horikosii)を用いた耐熱性プライマーゼについて説明するが、上述したような耐熱性古細菌からも同様な手法により本発明のプライマーゼを得ることは可能である。【0022】1.耐熱性プライマーゼ遺伝子の単離耐熱性プライマーゼ遺伝子は、硫黄代謝好熱性古細菌であるパイロコッカス・ホリコシ(Pyrococcus horikoshii,登録番号JCM9974)の染色体DNAから単離する。すなわち、先ず、パイロコッカス・ホリコシを培養し、染色体DNAを抽出する。パイロコッカス・ホリコシの培養に際しては、通常用いられる培地を使用することができる。【0023】次に、培養したパイロコッカス・ホリコシを集菌し、そこから染色体DNAを調製する。染色体DNAを調製するには、通常用いられる手法を適用することができる。また、染色体DNAを調製するには、市販のキット(例えば、ISOPLANT(ニッポンジーン社製))を使用することもできる。【0024】次に、調製された染色体DNAを制限酵素により断片化し、断片化された染色体DNAを所定のプラスミドベクターやファージベクターに連結し、染色体DNAライブラリーを調製する。このとき、パイロコッカス・ホリコシの全染色体をカバーするようにクローンを選択して、この染色体DNAライブラリーを整列化する。【0025】次に、整列化した染色体DNAライブラリーの全塩基配列を決定する。具体的に、塩基配列の決定に際しては、いわゆるショットガンクローンを1個の染色体DNAライブラリークローンに対して500個程度作製し、これらショットガンクローンの塩基配列を順次決定した。そして、ショットガンクローンの塩基配列を市販のソフトウェアで連結編集することによって、染色体DNAライブラリーの全塩基配列を決定することができる。【0026】次に、決定された塩基配列と公知のプライマーゼ遺伝子との相同性を、大型計算機により解析する。解析の結果、公知のプライマーゼ遺伝子と相同性の高い塩基配列が同定され、パイロコッカス・ホリコシにおけるプライマーゼをコードする小サブユニット遺伝子(配列番号3)及び大サブユニット遺伝子(配列番号4)を同定することができる。【0027】2.発現プラスミドの構築発現プラスミドを構築するには、先ず、染色体DNAの塩基配列と小サブユニット遺伝子の塩基配列及び大サブユニット遺伝子の塩基配列とから設計されたプライマーを用いたPCR反応により、小サブユニット遺伝子及び大サブユニット遺伝子を増幅する。【0028】プライマーは、増幅する対象の構造遺伝子の3’末端側及び5’末端側に、発現用プラスミドベクターに組み込むための制限酵素サイトをそれぞれ付加するように設計することが好ましい。さらに好ましくは、3’末端及び5’末端にそれぞれ異なる制限酵素サイトを付加するように、プライマーを設計することが好ましい。これにより、増幅された構造遺伝子を、発現用プラスミドベクターに対して正確な方向に組み込むことができる。【0029】さらに、小サブユニット用の発現ベクターを構築する際には、発現した小サブユニットのN末端にヒスチジンタグ(His−Tag)を付加するようなプライマーを設計することが好ましい。これにより、得られた小サブユニットは、N末端にヒスチジンタグが付加された融合タンパク質となり、ヒスチジンタグの有無に応じて分画することができる。【0030】具体的に、小サブユニット遺伝子を増幅するための上流プライマーとしては、例えば、NedIサイトを付加した5'-CTTTAAGAAGGAGATATACATATGCTGCTGCGTGAGGTAACCCGTGAGGAAAGAAAGAACTTTTAC-3'(配列番号5)を使用することができ、また、下流プライマーとしては、例えば、BamHIサイトを付加した5'-TTTTGAGCTCTTTGGATCCTTAGGCCATCTTTTAAGTTCCGAGACTTTC-3'(配列番号6)を使用することができる。【0031】なお、小サブユニット遺伝子を増幅するための上流プライマー及び下流プライマーとしては、上記の塩基配列を有するものに限定されず、染色体DNAライブラリーの塩基配列から設計され、且つ、小サブユニット遺伝子全体を挟み込むように設計されれば如何なる塩基配列であっても良い。【0032】また、具体的に、大サブユニット遺伝子を増幅するための上流プライマーとしては、例えば、NedIサイトを付加した5'-TTTTGTCGACTTACATATGGCGATCATGCTCGACCCA-3'(配列番号7)を使用することができ、また、下流プライマーとしては、例えば、BamHIサイトを付加した5'-TTTTAAGCTTTTTGGATCCTTATTCCATTCATTGGTGTAA-3'(配列番号8)を使用することができる。【0033】なお、大サブユニット遺伝子を増幅するための上流プライマー及び下流プライマーとしては、上記の塩基配列を有するものに限定されず、染色体DNAライブラリーの塩基配列から設計され、且つ、大サブユニット遺伝子全体を挟み込むように設計されれば如何なる塩基配列であっても良い。【0034】次に、これらプライマーにより増幅された小サブユニット遺伝子及び大サブユニット遺伝子を所定の発現用プラスミドベクターにそれぞれ組み込むことにより、小サブユニットを発現することができる小サブユニット用の発現プラスミド及び大サブユニットを発現することができる大サブユニット用の発現ベクターを構築することができる。【0035】ここで、発現用プラスミドベクターとしては、通常用いられているものを使用することができる。使用可能な発現用プラスミドベクターとしては、pET11a又はpET15bを挙げることができる。【0036】具体的に、上記プライマーを使用した場合には、先ず、増幅した小サブユニット遺伝子及び大サブユニット遺伝子をNedI及びBamHIにより消化するとともに、発現用プラスミドベクターをNedI及びBamHIにより消化する。その後、小サブユニット遺伝子又は大サブユニット遺伝子と発現用プラスミドベクターとを、T4リガーゼ等の連結酵素により連結させる。【0037】その後、反応液の一部をコンピテントセルに導入し、形質転換体のコロニーを得る。ここで、使用可能なコンピテントセルとしては、通常形質転換に使用するものであればよく、例えば、大腸菌、枯草菌等を例示することができる。そして、形質転換体のコロニーを純粋培養し、いわゆるアルカリ法等の手法により、小サブユニット用の発現ベクター及び大サブユニット用の発現ベクターを得る。【0038】3.耐熱性プライマーゼの精製耐熱性プライマーゼを精製するには、先ず、上記小サブユニット用の発現ベクターと上記大サブユニット用の発現ベクターを別個に発現させ、小サブユニット(配列番号1)及び大サブユニット(配列番号2)をそれぞれ得る。その後、得られた小サブユニット及び大サブユニットからヘテロダイマーを形成することにより、耐熱性プライマーゼを得ることができる。【0039】具体的に、小サブユニット又は大サブユニットを単離精製する際には、発現させた菌体を融解して懸濁液を調製し、得られた懸濁液に、一般的な生化学的方法、例えば硫酸アンモニウム沈殿、ゲルクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー等を単独で又は適宜組み合わせて用いることにより、上記懸濁液中から目的の小サブユニット及び大サブユニットを単離精製することができる。【0040】4.耐熱性プライマーゼの評価上記のようにして得られた耐熱性プライマーゼは、至適温度が80℃付近であり、80℃近傍におけるプライマーゼ活性を有している。このため、上記耐熱性プライマーゼは、以下に示すような用途に利用することができる。・PCR法鋳型となるDNA、本発明のプライマーゼ、dNTPミックス及び耐熱性DNAポリメラーゼ等を同一チューブ内に混合し、鋳型DNAの熱変性工程と核酸プライマーの合成工程とDNA鎖の伸長工程とを複数回繰り返すことによって、PCR反応を行うことができる。すなわち、このPCR反応においては、合成オリゴプライマーを必要とせず、上記チューブ内でプライマーの合成が可能となる。したがって、本発明のプライマーを使用することによって、PCR反応を迅速に且つ低コストで行うことができる。【0041】・遺伝子ラベリング法本発明のプライマーゼと公知の耐熱性DNAポリメラーゼとを、鋳型DNA及びラベル化したヌクレオチドの存在下でカップリングし、DNA伸長反応を起こすと、5’末端がRNA分子或いはDNA分子からなる一本鎖DNAを得ることができる。得られた一本鎖DNAは、鋳型DNAにおけるランダムな位置から複製されたものであり、また、ラベル化されたものである。すなわち、本発明のプライマーゼを使用することによって、新規な遺伝子ラベリング法を確立することができる。【0042】・遺伝子変異法上記遺伝子ラベリング法で合成された一本鎖DNAを鋳型DNAプラスミドと再アニールさせ、再アニールした一本鎖DNA間のギャップをDNAポリメラーゼで埋めた後にリガーゼで連結する。その後、宿主に形質転換し、宿主細胞内の修復系を作用させることによって、ラベル化されたヌクレオチドの位置に変異が導入される。このように、本発明のプライマーゼを使用することによって、新規な遺伝子変異法を確立することができる。【0043】【実施例】以下、本発明を実施例により説明するが、本発明の技術範囲は、この実施例に限定されるものではない。[実施例1](1).パイロコッカス・ホリコシ(JCM9974)の培養パイロコッカス・ホリコシJCM9974(理化学研究所微生物系統保存施設より入手)は次の方法で培養した。13.5gの食塩、4gのNa2SO4、0.7 g のKCl 、 0.2g のNaHCO3、0.1gのKBr、30 mg のH3BO3、10gのMgCl2・6H2O、1.5gのCaCl2、25mgのSrCl2、1.0mlのレザスリン溶液(0.2g/L)、1.0g の酵母エキス、5gのバクトペプトンを1Lに溶かし、この溶液のpHを6.8に調整し加圧殺菌した。ついで、乾熱滅菌した元素硫黄を0.2%となるように加え、この培地をアルゴンで飽和して嫌気性とした後、JCM9974を植菌した。培地が嫌気性となったか否かはNa2S溶液を加えて、培養液中でNa2Sによるレザスリン溶液のピンク色が着色しないことにより確認した。この培養液を95℃で2〜4日培養し、その後遠心分離し集菌した。【0044】(2).染色体DNAの調整 JCM9974の染色体DNAは以下の方法により調製した。培養終了後5000rpm、10分間の遠心分離により菌体を集菌する。菌体を10mM Tris(pH 7.5) 1mM EDTA溶液で2回洗浄後InCert Agarose(FMC社製)ブロック中に封入する。このブロックを1%N-lauroylsarcosine、 1mg/ml プロテアーゼK溶液中で処理することにより、染色体DNAはアガロースブロック中に分離調製された。【0045】(3).染色体DNAを含むライブラリークローンの作製(2)で得られた染色体DNAを制限酵素HindIIIにより部分分解後アガロースゲル電気泳動により約40kb長の断片を調製した。このDNA断片と制限酵素HindIIIによって完全分解したBacベクターpBAC108L及びpFOS1とをT4リガーゼを用いて結合させた。前者のベクターを用いた場合には結合終了後のDNAをただちに大腸菌内へ電気孔窄法により導入した。後者のベクターpFOS1を用いた場合には結合終了後のDNAをGIGA Pack Gold(ストラタジーン社製)により試験管内でλファージ粒子内に詰め込み、この粒子を大腸菌に感染させることによりDNAを大腸菌内に導入した。これらの方法により得られた抗生物質クロラムフェニコール耐性の大腸菌集団をBAC及びFosmidライブラリーとした。ライブラリーからJCM9974の染色体をカバーするのに適したクローンを選択して、クローンの整列化を行った。【0046】(4).塩基配列の決定整列化されたBAC或いはFosmidクローンについて順次以下の方法で塩基配列を決定していった。大腸菌より回収した各BAC或いはFosmidクローンのDNAを超音波処理することにより断片化し、アガロースゲル電気泳動により1kb及び2kb長のDNA断片を回収した。この断片をプラスミドベクターpUC118のHincII制限酵素部位に挿入したショットガンクローンを各BAC或いはFosmidクローン当たり500クローン作製した。各ショットガンクローンの塩基配列をパーキンエルマー、ABI社製自動塩基配列読み取り装置373または377を用いて決定していった。各ショットガンクローンから得られた塩基配列を塩基配列自動連結ソフトSequencherを用いて連結編集し、各BAC或いはFosmidクローンの全塩基配列を決定していった。【0047】(5).耐熱性プライマーゼ遺伝子の同定(4)で決定した塩基配列と、公知のプライマーゼ遺伝子との相同性を大型計算機を用いて解析した結果、JCM9974におけるプライマーゼをコードする小サブユニット遺伝子(配列番号3)及び大サブユニット遺伝子(配列番号4)を同定した。【0048】[実施例2](1).小サブユニットを発現する発現プラスミドの構築小サブユニット遺伝子領域の前後に制限酵素サイトを導入するとともに、発現した小サブユニットのN末端にヒスチジンタグを付加するために、上流プライマーUpri-S(5'-CTTTAAGAAGGAGATATACATATGCTGCTGCGTGAGGTAACCCGTGAGGAAAGAAAGAACTTTTAC-3':配列番号5)及び下流プライマーLpri-S(5'-TTTTGAGCTCTTTGGATCCTTAGGCCATCTTTTAAGTTCCGAGACTTTC-3':配列番号6)を設計し、合成した。なお、Upri-Sには、5’末端から数えて第19塩基から第24塩基にNdeIサイトが導入されている。Lpri-Sには、5’末端から数えて第14塩基から第19塩基にBamHIサイトが導入されている。【0049】これらUpri-S及びLpri-Sを用いてPCR反応後、制限酵素(NdeIとBamHI)で完全分解(37℃で2時間)した後、その構造遺伝子を精製した。pET15b(Novagen社製)を制限酵素NdeIとBamHIで切断・精製した後、上記の構造遺伝子とT4リガーゼで16℃、2時間反応させ連結した。連結したDNAの一部をE.coli XL1-Blue MRF'のコンピテントセルに導入し形質転換体のコロニーを得た。得られたコロニーから小サブユニットを発現できる発現プラスミド(以下「pET15b/PrimS」という)をアルカリ法で精製した。【0050】(2).大サブユニットを発現する発現プラスミドの構築大サブユニット遺伝子領域の前後に制限酵素サイトを導入するために、上流プライマーUpri-L(5'-TTTTGTCGACTTACATATGGCGATCATGCTCGACCCA-3':配列番号7)及び下流プライマーLpri-L(5'-TTTTAAGCTTTTTGGATCCTTATTCCATTCATTGGTGTAA-3':配列番号8)を設計し、合成した。なお、Upri-Lには、5’末端から数えて第14塩基から第29塩基にNdeIサイトが導入されている。Lpri-Lには、5’末端から数えて第14塩基から第19塩基にBamHIサイトが導入されている。【0051】これらUpri-L及びLpri-Lを用いてPCR反応後、制限酵素(NdeIとBamHI)で完全分解(37℃で2時間)した後、その構造遺伝子を精製した。pET11a(Novagen社製)を制限酵素NdeIとBamHIで切断・精製した後、上記の構造遺伝子とT4リガーゼで16℃、2時間反応させ連結した。連結したDNAの一部をE.coli XL1-Blue MRF'のコンピテントセルに導入し形質転換体のコロニーを得た。得られたコロニーから大サブユニットを発現できる発現プラスミド(以下「pET11a/PrimL」という)をアルカリ法で精製した。【0052】(3).遺伝子の発現大腸菌(E.coli BL21(DE3)、Novagen社製)と大腸菌(E.coli BL21(DE3) Codon Plus-RIL、Novagen社製)のコンピテントセルを融解して、ファルコンチューブにそれぞれ0.1mLづつ移す。前者のファルコンチューブにpET15b/PrimS溶液0.005mLを加え、後者のファルコンチューブにpET11a/PrimL溶液0.005mLを加え、その後、これら2本のファルコンチューブを氷中に30分間放置した後42度でヒートショックを30秒間行い、SOCmedium0.9mLを加え、37度で1時間振とう培養する。その後、これら2本のファルコンチューブ内の培養液を、アンピシリンを含む2枚の2YT寒天プレートそれぞれ別々に適量まき、37度で一晩培養し、2枚のプレートから2種の形質転換体を得た。【0053】なお、pET15b/PrimSを用いた形質転換体をE.coli BL21(DE3)/pET15b/PrimS と命名し、pET11a/PrimLを用いた形質転換体をE.coli BL21(DE3) Codon Plus-RIL/pET11a/PrimL と命名した。また、E.coli BL21(DE3)/pET15b/PrimSは、工業技術院生命工学工業技術研究所にFERM P-17883として寄託されている。さらに、E.coli BL21(DE3) Codon Plus-RIL/pET11a/PrimLは、工業技術院生命工学工業技術研究所にFERM P-17884として寄託されている。【0054】そして、小サブユニット遺伝子及び大サブユニット遺伝子を発現させるため、これら形質転換体を、アンピシリンを含む2YT液体培地(2リットル)で600nmの吸収が1に達するまでそれぞれ別個に培養した後、IPTG(Isopropyl-β-D-thiogalactopyranoside)を加えさらに6時間培養した。培養後遠心分離(6,000rpm,20min)で集菌した。【0055】[実施例3](1).小サブユニットの精製集菌した菌体(E. coli BL21(DE3) pET15b/PrimS)を-20℃で凍結融解し、2倍量の50 mMトリス塩酸緩衝液(pH7.5)と0.5mgのDNaseを加え懸濁液を得た。得られた懸濁液を37℃で30分保温した後、85℃で30分加熱処理後、遠心分離(11,000rpm、20分)し上澄液を得た。これをNi-カラム(Novagen社製 、 His・Bind metal chelation resin & His・Bind buffer kitを使用)にかけ親和性クロマトグラムを行った。ここで得られた100mMイミダゾール流出画分(20ml)をセントリプレップ10(アミコン社)で2mlまで濃縮した。さらに、これを50mMトリス塩酸緩衝液(pH7.0)で平衡化したHiTrap SP(ファルマシア社製)カラムに吸着させ、同緩衝液を用いたNaCl濃度勾配による溶出を行った。次に、各画分のSDS-電気泳動を行い、含まれるタンパク質の分子量を測定した。遺伝子配列より当該小サブユニットの分子量は40,000 Daと予測されたので、この分子量のタンパク質を含む画分を集め、精製小サブユニットを得た。なお、この小サブユニットは、実施例1(4)で決定した塩基配列から配列番号1に示すアミノ酸配列を有し、40,358Daの分子量を有するものである。【0056】(2).大サブユニットの精製集菌した菌体(E.coli BL21(DE3) Codon Plus-RIL/pET11a/PrimL)を-20℃で凍結融解し、2倍量の50mMトリス塩酸緩衝液(pH7.5)を加え懸濁液を得た。得られた懸濁液を85℃で10分加熱処理し、遠心分離(11,000 rpm、20分)により上清液を得た。この上清液を50mMリン酸緩衝液(pH6.0)で平衡化したHiTrap SP(ファルマシア社製)カラムに吸着させ、同リン酸緩衝液を用いたNaCl濃度勾配により溶出を行った。次に、各画分のSDS-電気泳動を行い、含まれるタンパク質の分子量を測定した。遺伝子配列より当該大サブユニットの分子量は46,000 Daと予測されたので、この分子量のタンパク質を含む画分を集め、三倍量の蒸留水で希釈した。これをさらに50mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)で平衡化したHiTrap ヘパリン(ファルマシア社製)カラムに吸着させ、同緩衝液を用いたNaCl濃度勾配による溶出を行い精製大サブユニットを得た。なお、この大サブユニットは、実施例1(4)で決定した塩基配列から配列番号2に示すアミノ酸配列を有し、46,271Daの分子量を有するものである。【0057】(3).ヘテロダイマー構造の確認耐熱性プライマーゼが小サブユニットと大サブユニットとからなるヘテロダイマー構造を形成していることを、以下のようにして確認した。先ず、ヒスチジンタグを付加した小サブユニット2μgと大サブユニット3μgとを、終濃度20mMのトリス塩酸緩衝液(pH7.9)中に加え全量を180μlとした。この中には0.5M NaCl、5mMイミダゾール、1%Triton X-100、0.04%牛血清アルブミンも含まれる。次に、この溶液を氷中で30分間保持した。これにより、小サブユニットと大サブユニットの複合体を形成させた。【0058】この溶液を用いて、小サブユニットに付加させたヒスチジンタグをニッケルを含むHis・Bindresin (Novagen)、16μlに吸着させ、遠心分離と懸濁を繰り返し、その後、Binding緩衝液(Novagen, His・Bind buffer kitを使用)で3回洗浄した。【0059】この遠心沈渣を50μlのSDSサンプル緩衝液に懸濁させ、100℃、5分間加温処理し、遠心分離により上清を得た。この上清に含まれるサブユニットの種類を確認するために、得られた上清をSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)で分析した。【0060】SDS-PAGEの結果を図1に示す。図1において、レーン1は分子量マーカーであり、レーン2は得られたサンプルであり、レーン3は小サブユニットを加えない以外は上記と同様にして調製したサンプルであり、レーン4はコントロールで、ヒスチジンタグを付加した小サブユニットにSDSサンプル緩衝液を加え、煮沸したサンプルであり、レーン5はコントロールで、大サブユニットにSDSサンプル緩衝液を加え、煮沸したサンプルであり、レーン6はコントロールで、タンパク質が牛血清アルブミンにSDSサンプル緩衝液を加え、煮沸したサンプルである。【0061】図1から判るように、レーン2には、小サブユニット及び大サブユニットのバンドをそれぞれ検出することができる。また、レーン3には、大サブユニットのバンドを検出することができない。このことから、耐熱性プライマーゼは、小サブユニットと大サブユニットとからなるヘテロダイマー構造を有していることが判った。【0062】(4).耐熱性プライマーゼの調整耐熱性プライマーゼを以下の手順に従って調製した。先ず、ヒスチジンタグを付加した小サブユニット16μgと大サブユニット24μgとを、1%Triton X-100及び0.01%の牛血清アルブミンを含有する溶液中に加え、該溶液の全量を200μlとした。この溶液を氷中に10分間保持することにより、ヘテロダイマー構造を形成させた。【0063】その後、溶液をマイクロコンYM-10に添加し、限外濃縮した。これに25%グリセロール、10mM MgCl2、1mMジチオスレートール(DTT)を含む50mMのトリス塩酸緩衝液(pH7.5)(以後A緩衝液と略記する)を500μl加え、限外濃縮操作を3回くり返すことにより、A緩衝液に完全に置換された200μlの耐熱性プライマーゼ酵素液を得た。この耐熱性プライマーゼ酵素液において、耐熱性プライマーゼ濃度は2μMであった。【0064】(5).耐熱性プライマーゼの活性評価(4)で調製した耐熱性プライマーゼ酵素液を用いて、高温条件下におけるRNAプライミング反応を以下の手順で行ない、耐熱性プライマーゼの活性を評価した。先ず、20μlの耐熱性プライマーゼ酵素液中に、12.5mMのトリス塩酸(pH7.5)、6.25%グリセロール、0.5μgの鋳型一本鎖DNA(ssM13 DNA)、10mM MgCl2、4mM DTT、250μMのATP、GTP、UTP、20μMのCTP、5μCiの[α-32P]CTPを加え、反応液を調製した。なお、この反応液中には0.5μMの耐熱性プライマーゼが含まれる。【0065】また、耐熱性プライマーゼ酵素液を用いて、高温条件下におけるDNAプライミング反応を以下の手順で行なった。20μlの耐熱性プライマーゼ酵素液中に、12.5mMのトリス塩酸(pH7.5)、6.25%グリセロール、0.5μgの鋳型一本鎖DNA(ssM13 DNA)、10mM MgCl2、4mM DTT、250μMのdCTP、dGTP、dTTP、20μMのdATP、5μCiの[α-32P]dATPを加え、反応液を調製した。なお、この反応液中には0.5μMの耐熱性プライマーゼが含まれる。【0066】次に、これら反応液を80℃、30分間加温して反応を進行させ、EDTAを終濃度10mM加えることにより反応停止させた。反応産物はエタノール沈澱操作により未反応のヌクレオチドを除去し、沈澱を10μlのホルムアミド溶液に溶解し、7M尿素を含む15%PAGEで分析した。このとき、分子量マーカーとしては10mer、26mer、50merの合成DNAオリゴマーを、各々T4 polynucleotide kinaseと[γ-32P]ATPとを用いて5'末端にラベル化して用いた。また、比較のために、反応液中の酵素を小サブユニットのみとしたサンプルと、反応液中の酵素を大サブユニットのみとしたサンプルとを用意し、これらについても、同様に活性を評価した。【0067】7M尿素を含む15%PAGEの電気泳動パターンをPhosphoImager(Bio-Rad社製)でオートラジオグラフィー化し、合成反応物の長さと量を測定した結果を図2A,Bに示す。図2Aは、RNAプライミング合成反応物を示す電気泳動パターンである。図2Aにおいて、レーン1は10merの合成DNAオリゴマーを流した分子量マーカーであり、レーン2は26merの合成DNAオリゴマーを流した分子量マーカーであり、レーン3は50merの合成DNAオリゴマーを流した分子量マーカーであり、レーン4はヘテロダイマーを形成した耐熱性プライマーゼを使用したサンプルであり、レーン5は小サブユニットのみを使用したサンプルであり、レーン6は大サブユニットのみを使用したサンプルである。【0068】また、図2Bは、当該ヘテロダイマー耐熱性プライマーゼのDNAプライマー合成活性とRNAプライマー合成活性と比較した電気泳動パターンである。図2Bにおいて、レーン1はDNAプライミング合成反応物であり、レーン2はRNAプライミング合成反応物であり、レーン3はDNAプライミング反応において鋳型一本鎖DNA(ssM13 DNA)を加えないときの反応産物であり、レーン4はRNAプライミング反応において鋳型一本鎖DNA(ssM13 DNA)を加えないときの反応産物であり、レーン5はDNAプライミング反応において耐熱性プライマーゼを加えないときの反応産物であり、レーン6はRNAプライミング反応において耐熱性プライマーゼを加えないときの反応産物である。【0069】図2Aから判るように、小サブユニット又は大サブユニットを単独で使用した場合には、合成されたRNAオリゴマーを検出することができず、RNAプライミング反応が殆ど起っていない。これに対して、小サブユニット及び大サブユニットからなるヘテロダイマー構造をとるものを使用した場合には、鋳型DNAの複製起点に相当する長さのRNAオリゴマーを検出することができ、RNAプライミング活性を認めることができる。【0070】また、図2Bから判るように、耐熱性プライマーゼは、DNAプライマー及びRNAプライマーを合成する活性を有している。また、図2Bから判るように、耐熱性プライマーゼの活性は、鋳型DNA及び当該耐熱性プライマーゼの存在に依存している。さらに、図2Bに示すように、耐熱性プライマーゼにおけるDNAプライミング活性は、RNAプライミング活性と比較して約10倍程度高いことが判った。【0071】(6).耐熱性プライマーゼの特性評価・至適温度耐熱性プライマーゼの至適温度を、(5)で行なったRNAプライミング反応における温度を50℃〜95℃まで変化させたときの反応産物を定量することによって評価した。具体的には、各温度における反応産物を(5)と同様の電気泳動で分離し、PhosphoImagerで定量することによって、所定の温度における比活性を算出し、至適温度を求めた。結果を図3に示す。この図3より、耐熱性プライマーゼの至適温度は80℃であることが判った。【0072】・至適pH耐熱性プライマーゼの至適pHを、(5)で行なったRNAプライミング反応におけるpHを6.5〜9.6まで変化させたときの反応産物を定量することによって評価した。具体的には、終濃度20mMのリン酸緩衝液(pH6.5から8.0まで)とNa2B4O7-HCl緩衝液(pH8.0から9.6まで)を用いてpHを変化させ、各pHにおける反応産物を(5)と同様の電気泳動で分離し、PhosphoImagerで定量することによって、所定のpHにおける比活性を算出し、至適pHを求めた。結果を図4に示す。この図4より、耐熱性プライマーゼの至適pHは8.0であることが判った。【0073】・至適Mg2+濃度耐熱性プライマーゼの至適Mg2+濃度を、(5)で行なったRNAプライミング反応におけるMgSO4濃度を0〜30mMまで変化させたときの反応産物を定量することによって評価した。具体的には、各MgSO4濃度における反応産物を(5)と同様の電気泳動で分離し、PhosphoImagerで定量することによって、所定のMgSO4濃度における比活性を算出し、至適Mg2+濃度を求めた。結果を図5に示す。この図5より、耐熱性プライマーゼの至適Mg2+濃度は10mMであることが判った。【0074】・至適塩濃度耐熱性プライマーゼの至適塩濃度を、(5)で行なったRNAプライミング反応におけるNaCl濃度又はKCl濃度をそれぞれ2.5〜100mMまで変化させたときの反応産物を定量することによって評価した。具体的には、各塩濃度における反応産物を(5)と同様の電気泳動で分離し、PhosphoImagerで定量することによって、所定の塩濃度における比活性を算出し、至適塩濃度を求めた。結果を図6に示す。この図6より、耐熱性プライマーゼの至適塩濃度は、NaClの場合2.5mMであり、NaCl及びKClともに40mMでは強い活性阻害を引き起こしていることが判った。したがって、塩濃度は、20mM以下であることが好ましいことが判った。【0075】・熱安定性耐熱性プライマーゼの熱安定性を、(4)で調製した耐熱性プライマーゼ酵素液を80℃で0〜60分間加熱処理し、加熱処理時間の異なる耐熱性プライマーゼを使用して(5)と同様にRNAプライミング反応を行ない、反応産物を定量することによって評価した。具体的には、各加熱処理時間における反応産物を(5)と同様の電気泳動で分離し、PhosphoImagerで定量することによって、所定の加熱処理時間における残存活性を算出し、熱安定性を評価した。結果を図7に示す。この図7より、耐熱性プライマーゼの半減期は、80℃で30分であることが判った。【0076】【発明の効果】以上、詳細に説明したように、本発明により、新規な耐熱性プライマーゼが提供された。この耐熱性プライマーゼは、高温環境下で正確な核酸プライミングが行えるので、遺伝子増幅反応(PCR反応)等に有用である。また、この耐熱性プライマーゼは、遺伝子ラベリング法や遺伝子変異法にも利用できるので、当該酵素を用いた遺伝子配列解析に関する新手法の開発が可能になる。【0077】【配列表】【図面の簡単な説明】【図1】耐熱性プライマーゼのヘテロダイマー構造を確認するために行なったSDS-PAGEの電気泳動写真である。【図2】 (A)ヘテロダイマー構造を有する耐熱性プライマーゼのRNAプライミング反応の結果を示す電気泳動写真である。(B)耐熱性プライマーゼのDNAプライミング反応及びRNAプライミング反応の結果を示す電気泳動写真である。【図3】耐熱性プライマーゼにおける温度と比活性との関係を示す特性図である。【図4】耐熱性プライマーゼにおけるpHと比活性との関係を示す特性図である。【図5】耐熱性プライマーゼにおけるMg2+と比活性との関係を示す特性図である。【図6】耐熱性プライマーゼにおける塩濃度と比活性との関係を示す特性図である。【図7】耐熱性プライマーゼにおける加熱時間と残存活性との関係を示す特性図である。 配列番号2で表されるアミノ酸配列を有するか、又は配列番号2で表わされるアミノ酸配列における少なくとも1個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を有する、プライマーゼの大サブユニットからなり、配列番号1で表されるアミノ酸配列を有するか、又は配列番号1で表わされるアミノ酸配列における少なくとも1個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を有する、プライマーゼの小サブユニットとの複合蛋白質を形成させるためのサブユニット。 配列番号2で表されるアミノ酸配列を有するか、又は配列番号2で表わされるアミノ酸配列における少なくとも1個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を有する、プライマーゼの大サブユニットと、配列番号1で表されるアミノ酸配列を有するか、又は配列番号1で表わされるアミノ酸配列における少なくとも1個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を有する、プライマーゼの小サブユニットとが、ヘテロダイマーを形成してなり、プライマーゼ活性を有する複合蛋白質。 配列番号2で表されるアミノ酸配列を有するか、又は配列番号2で表わされるアミノ酸配列における少なくとも1個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を有する、プライマーゼの大サブユニットをコードするDNAと、配列番号1で表されるアミノ酸配列を有するか、又は配列番号1で表わされるアミノ酸配列における少なくとも1個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を有する、プライマーゼの小サブユニットをコードするDNAとの組み合わせ。 プライマーゼの大サブユニットをコードするDNAが、配列番号4で表わされる塩基配列を有するか、又は配列番号4で表わされる塩基配列における少なくとも1個の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列を有するDNAである、請求項3に記載の組み合わせ。 請求項3に記載の、プライマーゼの大サブユニットをコードするDNAとプライマーゼの小サブユニットをコードするDNAをそれぞれ含有する組換えベクターの組み合わせ。 請求項5に記載の組換えベクターをそれぞれ含む形質転換体の組み合わせ。


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