タイトル: | 特許公報(B2)_大豆糖脂質の分画方法 |
出願番号: | 2000369630 |
年次: | 2004 |
IPC分類: | 7,C07H1/08,A23D9/007,A23L1/30,C07H15/06,C07H15/10,C07J9/00,C07J75/00 |
金子 俊之 吉沢 康子 JP 3594553 特許公報(B2) 20040910 2000369630 20001205 大豆糖脂質の分画方法 昭和産業株式会社 000187079 坂口 昇造 100091856 金子 俊之 吉沢 康子 20041202 7 C07H1/08 A23D9/007 A23L1/30 C07H15/06 C07H15/10 C07J9/00 C07J75/00 JP C07H1/08 A23L1/30 B C07H15/06 C07H15/10 C07J9/00 C07J75/00 A23D9/00 516 7 C07H 1/06-1/08 C07H 15/06 C07H 15/10 C07J 9/00 C07J 75/00 WPI(DIALOG) 特開昭60−224628(JP,A) 特開昭62−238299(JP,A) 特開昭62−187404(JP,A) 特開平2−180995(JP,A) 1 1991069006 19910308 2001199992 20010724 10 20001205 關 政立 【0001】【産業上の利用分野】本発明は大豆油さい中に存在する糖脂質の分画方法に関するものである。【0002】【従来の技術】大豆油を精製する際に発生する油さいは、リン脂質、トリグリセリド及び脂肪酸を主要成分とし、食品添加物用のレシチンの原料として利用されている。この油さいには、少量ではあるが各種の糖脂質が含まれており、ステリルアシルグリコシド、ステリルグリコシド、セレブロシド及びジグリコシルジグリセリドがその主な成分である。これらの糖脂質は油さい中での含量が少ないうえリン脂質と極めて類似した挙動を示すため、リン脂質からの分離は困難であり、高純度に分画したものの実用的な利用は全くなされていない。大豆レシチン中に共存する糖脂質の分画ないし濃縮方法としては、シリカゲル・カラムクロマトグラフィーによるセレブロシド(特開昭60−224628)及びステリルグリコシド(特開昭62−238299)の濃縮方法、二酸化炭素超臨界クロマトグラフィーによる糖脂質画分の濃縮方法(特願平1−196864)、等が提案されている。このうちシリカゲル・カラムクロマトグラフィーによる方法では、カラム処理に先立ち、粗製レシチンから共存するトリグリセリドと脂肪酸を除去するため、溶剤として大量のアセトンを用いるのが通例であり、装置や溶剤回収に多大な経済負担を強いるものであった。また、超臨界二酸化炭素抽出では共存するリン脂質の除去が不十分であり、純度の高い糖脂質は得られていない。【0003】一方、糖脂質の有する生理作用についても研究が行われており、大豆由来のセレブロシドの中枢神経系抑制作用(特開昭60−224628)、ツルナエキス由来のセレブロシド類化合物の抗ストレス潰よう剤(特開昭57−122018)、スフィンゴ糖脂質の担子菌類子実体形成促進作用(特開昭57−152883)等が知られている。【0004】【発明が解決しようとする課題】本発明は大豆油さいを原料として、従来得ることが困難であった高純度の糖脂質を簡便かつ効率的に濃縮・分離する方法を提供するとともに、これら糖脂質の新規用途として優れたコレステロール低下効果を有する食素材ないし薬剤を提供することを目的とする。【0005】【課題を解決するための手段】本発明の上記課題は、以下の発明によって達成された。1.水分含量が0.4%以下の大豆油さいをクロロホルムに溶解してシリカゲルに接触させ、次いでクロロホルム及び/またはアセトンを溶出溶媒とし、溶出溶媒中のアセトンの比率を高めつつ溶離することにより、大豆油さい中の糖脂質をステリルアシルグリコシドを主成分とする画分、ステリルグリコシドを主成分とする画分及びセレブロシドとジグリコシルグリセリドを主成分とする画分に、それぞれ分画することを特徴とする大豆糖脂質の分画方法。2.大豆糖脂質セレブロシドを有効成分とする血中コレステロール低下剤。以下、本発明を詳しく説明する。【0006】本発明で原料として使用する大豆油さいは、大豆油の精製工程の一つ、いわゆる脱ガム工程で油脂から分離され、通常、食用ないし工業用レシチンの原料となるものである。本油さいは水分含量が0.4%以下となるよう適宜の手段を用いて乾燥して使用するが、市販の食品添加物用あるいは飼料用のペースト状レシチン等をそのまま用いることもできる。【0007】シリカゲルは、通常のカラムクロマトグラフィー用に用いられる粒度100〜200メッシュ程度のものやビーズ状シリカゲル等を広く使用することができる。 本発明では、まず上記油さいを固形分濃度が20〜80(w/v)%となるようにクロロホルムに溶解し、必要により不溶解物を除去した後、これを予めクロロホルムを用いて充填したシリカゲル・カラム中を通過させる、等してシリカゲルと接触させる。本シリカゲル処理においては、原料とする油さいの水分含量を0.4%以下とすることが必須であり、油さいの水分含量が0.4%を上回るときは、その水分がシリカゲルに移行して活性度を低下させるためと思われるが、糖脂質各成分の吸着が不十分となり、溶出溶媒による溶離の初期段階で糖脂質の大部分が分画されないまま一時に溶出することがある。油さいとシリカゲルの重量比は、一般に1:1〜10、より好ましくは1:2〜5程度である。カラムに供したクロロホルム溶液の全量がカラムに接触した後、クロロホルム及び/またはアセトンを溶出液とし、溶出液中のアセトンの比率を段階的もしくは連続的に高めつつ、糖脂質を分別溶離、回収する。両溶剤の混合比率は使用するシリカゲルの活性度等により異なるため一概にいうことはできないが、通常、クロロホルム/アセトンが100/0〜80/20で中性脂質、脂肪酸、ステロール及びホスファチジル・イノシトールを主成分とする画分(以下F1ということがある)が、同80/20〜50/50でステリルアシルグリコシドを主成分とする画分(同F2)が、同50/50〜10/90でステリルグリコシドを主成分とする画分(同F3)が、同10/90〜0/100でセレブロシドとジグリコシルグリセリドを主成分とする画分(同F4)の4画分に分画する。糖脂質各画分の溶出順序は、糖脂質の極性の差に基づくため、常に一定しており、溶出溶剤の使用量などについては、適宜予備試験等により適当な条件を選択することができる。【0008】上記各画分中の主成分の糖脂質の含量は、F2のステリルアシルグリコシドは60〜80%、F3のステリルグリコシドは40〜60%、F4のセレブロシドは40〜50%、ジグリコシルグリセリドは30〜50%程度である。これらの糖脂質は、必要に応じ例えば以下の方法により、更に精製することができる。すなわち、ステリルアシルグリコシド、セレブロシド及びジグリコシルグリセリドは、クロロホルム/メタノール溶媒系を用いたシリカゲル・カラムクロマトグラフィーで精密分画することによって、ステリルグリコシドは、本物質がクロロホルムに難溶であることを利用して、これに少量のクロロホルムを加えてろ過することによって、それぞれ純度90%以上のものを得ることができる。【0009】本発明者らは、上記分画により得られる糖脂質の生理作用につき、鋭意研究するなかで、特にセレブロシドを主成分とする糖脂質画分が血中のコレステロールを低下させる効果があることを見出し、大豆糖脂質セレブロシドを有効成分とする血中コレステロール低下剤に関する、本願第2の発明を完成した。本願第2の発明で使用する大豆糖脂質としては、セレブロシドの含量が固形分中20%程度以上であることが望ましく、前記のF3画分をそのまま、あるいはこれを更にシリカゲル・カラムクロマトグラフィー等で精製したものが好適に用いられる。【0010】本発明のコレステロール低下剤は、上記糖脂質画分を常用の医薬用担体を用いて医薬剤とする。例えば、経口用固形剤を得る場合は、賦形剤、結合剤、崩壊剤、増沢剤、矯味剤等を加え、常法によって錠剤、か粒剤、カプセル剤とする。また、適宜の安定剤その他常用の助剤を加え、常法により注射剤などの非経口用製剤とすることもできる。本医薬剤中に含量させる有効成分の配合量は約5〜50%であり、投与量はその適用状態により適宜変更し得るが大体100〜500mg/kg/日程度で十分その効果を奏する。また、本発明のコレステロール低下剤は、上記有効成分をそのまま、あるいはこれを担体に配合して飲食物、動物飼料に添加使用する。この場合、飲食物、飼料に対する有効成分の配合量は0.1〜0.5%程度で十分その効果を奏することができる。なお、本糖脂質画分の急性毒性はLD50(ICR系マウス、経口投与)5g/kg以上である。【0011】【実施例】次に本発明を実施例により説明する。実施例1市販のペースト状大豆レシチン500gをクロロホルム5lに溶解し、これを予めクロロホルムを用いて充填したシリカゲルカラム(和光純薬工業(株)製 Wakogel C−200 1.5kg) に通過させた。カラムに供した溶液の全量がカラムに接触した後、クロロホルム8l(画分F1)、クロロホルム/アセトン=8/5 10l(同F2)、クロロホルム/アセトン=5/8 6l及びクロロホルム/アセトン=1/8 2l(同F3)、クロロホルム/アセトン=1/8 7l及びアセトン6l(同F4)を順次流下させ、溶出液をそれぞれ別個に回収した。各画分は溶媒を留去して収量を測定するとともに、薄層クロマトグラフィーによりその成分を調べた。結果は表1に示すとおりであった。【0012】【0013】実施例2米国産大豆からn−ヘキサンで抽出した粗原油の脱ガム工程で得られた大豆油さいを、ロータリーエバポレーターを用いて水分を0.24%まで乾燥した。本乾燥油さい500gをクロロホルム5lに溶解し、不溶物を濾別した後、実施例1と同様にしてシリカゲル・カラムクロマトグラフィーに供した。各画分の収量と主要な糖脂質の種類と含量は表2の通りであった。【0014】参考例1実施例1の操作を複数回繰り返し各画分を集め、合わせたF3及びF4画分からの以下の方法により、ステリルグリコシド、セレブロシド及びジグリコシルジグリセリドの分画・精製を行った。F3画分25gをクロロホルム500mlに分散させ、東洋濾紙No.5Bを用い減圧濾過を行う。濾紙上の残渣をクロロホルムで洗浄し、風乾する。このもののステリルグリコシド含量は90%以上であり、収量は8.5gであった。F4画分はその17gをクロロホルム300mlに溶解し、シリカゲル(Wako−gel C−200)300gをクロロホルムで充填して平衡化させたカラム(4.5φ x 40cm)に供した。次いでクロロホルム600ml及びクロロホルム/メタノール=95/5 2200ml、クロロホルム/メタノール=90/10 400ml、クロロホルム/メタノール=85/15 600ml、クロロホルム/メタノール=85/15 400ml、クロロホルム/メタノール=80/20 1500mlを順次流下させ、それぞれの画分をF4−1、F4−2、F4−3、F4−4及びF4−5として分取した。それぞれの画分から溶剤を留去して収量を計るとともに、薄層クロマトグラフィーにより成分とその含量を調べた。結果は表3のとおりであった。【0015】実施例34週令の Wistar系雄性ラット7匹を1群とし、表4に記載のように通常飼料、これに実施例1で得られたセレブロシド38%を含むF3画分を1%添加、及び対照として市販の食品用レシチン(昭和産業(株)製)を5%添加、の計3試験区を設定し、34日間の飼育試験を行った。飼育中、飼料と水は自由に摂取させた。経時後、ラットの体重を測定し、採血及び開腹を行い、常法により肝機能検査及び血液検査を行った。結果は表5に示すように、セレブロシドを38%含有するF3画分を 1%添加飼料を給与した区では顕著なコレステロール低下効果が見られ、その程度はレシチンを 5%添加した区と同等もしくはそれを上回るものであった。【0016】【0017】【0018】実施例4参考例1により得られたセレブロシドを主成分とする画分F−4−3(以下、CE画分と略記することがある)について、コレステロール負荷食(表6)を給与したラットでのコレステロール低下作用を調べた。試験は5週令のWistar系雄性ラット6匹を1群とし、コレステロール負荷飼料、これに前記CE画分を1%もしくは市販食用レシチンを5%添加した飼料で6日間飼育した。飼育法及び試験法は実施例3に準じた。試験結果は表7に示すように、CE画分を1%添加飼料を給与した区では顕著な血中コレステロール低下作用が見られた。【0019】【0020】【0021】【発明の効果】本発明の方法により、市販のレシチン等を原料としてステリルアシルグリコシド、ステリルグリコシド、セレブロシド及びジグリコシルグリコシド等の糖脂質を高純度で取得することが可能となった。そして、これにより得られるセレブロシドを主成分とする画分は優れたコレステロール低下作用を有し、医薬品または機能性食品用の素材として有用なものである。 水分含量が0.4%以下の大豆油さいをクロロホルムに溶解してシリカゲルに接触させ、次いでクロロホルム及び/またはアセトンを溶出溶媒とし、溶出溶媒中のアセトンの比率を高めつつ溶離することにより、大豆油さい中の糖脂質をステリルアシルグリコシドを主成分とする画分、ステリルグリコシドを主成分とする画分及びセレブロシドとジグリコシルグリセリドを主成分とする画分に、それぞれ分画することを特徴とする大豆糖脂質の分画方法。