生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_重合防止剤の抽出回収方法
出願番号:2000361700
年次:2006
IPC分類:C07C 51/44,C07C 51/48,C07C 57/075


特許情報キャッシュ

林 秀生 宮崎 浩 JP 3823721 特許公報(B2) 20060707 2000361700 20001128 重合防止剤の抽出回収方法 東亞合成株式会社 000003034 高畑 靖世 100083688 林 秀生 宮崎 浩 20060920 C07C 51/44 20060101AFI20060831BHJP C07C 51/48 20060101ALI20060831BHJP C07C 57/075 20060101ALI20060831BHJP JPC07C51/44C07C51/48C07C57/075 C07C 51/44- 51/50 C07C 57/07- 57/075 C07C 67/58- 67/62 C07C 69/653 特開昭63−230659(JP,A) 特開昭54−052038(JP,A) 特開昭54−098718(JP,A) 特開昭51−088932(JP,A) 特開平09−020730(JP,A) 特開平06−234699(JP,A) 特開平06−009496(JP,A) 6 2002161067 20020604 7 20030128 柿澤 恵子 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、アクリル酸製造プロセスに於て用いられる重合防止剤の抽出回収方法に関し、更に詳述すればプロピレン、プロパン又はアクロレインを接触気相酸化してアクリル酸を製造するプロセスにおいて、粗アクリル酸の蒸留缶液から重合防止剤を抽出回収する方法に関する。【0002】【従来の技術】通常、アクリル酸は、プロピレン、プロパン(以下これらをプロピレン等と総称する)又はアクロレインを接触気相酸化して生成するアクリル酸を水と共に冷却捕集する工程、次いで捕集液からアクリル酸を抽出溶剤を用いて抽出する工程(または、水と共沸する溶剤を捕集液に加えて水を除去する脱水共沸工程)、抽出したアクリル酸から抽出溶剤を留去する工程、更に副生した酢酸を留去する工程、このようにして得られた粗アクリル酸を複数回の蒸留により精製する工程等を経て工業的に製造される。【0003】アクリル酸は極めて重合性が高く、上記製造工程中においても重合が起り、生じる重合物により、配管、抽出塔、蒸留塔等の各製造設備が閉塞され易い。この問題を避けるため、従来プロピレン等又はアクロレインを接触気相酸化して製造した以後の各工程において重合防止剤を共存させることが通常行われている。【0004】上記重合防止剤は、各製造工程を経由する毎に濃縮され、最終精製工程である蒸留工程の缶液には、一部が重合防止のために消費され、残りの多量の重合防止剤が含まれている。しかし、通常前記缶液は粘度が高いため取扱が困難で、更に缶液から重合防止剤を回収する工程も複雑になるので、缶液から重合防止剤を回収せずに、そのまま焼却処理がなされている。【0005】しかし、この多量の重合防止剤を回収し、再利用することは製造コストの低減、省資源の観点から好ましいものであり、従来も重合防止剤を回収する方法が検討されている。【0006】例えば、特開昭51−91208号公報には、精留塔の缶液を薄膜蒸発器により60〜80%蒸発させて重合防止剤を回収し、再使用する方法が開示されている。しかし、この方法による重合防止剤の回収率は低く、多くが未回収で廃棄されている。【0007】特開昭54−52038号公報には、アクリル酸の精留塔缶液を蒸発処理して得られる蒸発残渣から重合防止剤を水で抽出回収する方法が開示されている。しかし、水を用いる抽出方法においては、非水溶性重合防止剤は回収されず、更に抽出操作に伴い発生する排水を処理する工程が増える等の問題がある。【0008】アクリル酸以外には、スチレンを蒸留して精製する際に生成する蒸留残渣(スチレンタール)中のフェノール系重合防止剤を水溶性のメタノールやアセトン等の含酸素化合物で抽出回収する技術が、特開昭63−230659号公報に記載されている。この抽出回収技術においては、スチレンタール100重量部に対し、メタノール等の含酸素化合物を100〜600重量部使用しないと、重合防止剤の回収率が低下する問題があり、このように多量の溶媒の使用は操作上、及びエネルギーコスト上も問題がある。また、上記抽出系はエマルジョン化し易く、この場合は抽出系に水を添加することによりエマルジョンを破壊させる事が記載されている。しかし、水を添加することは、前述のように新たな問題を発生させる。【0009】【発明が解決しようとする課題】本発明者は上記問題を解決するため種々の抽出溶媒、及び抽出条件を検討しているうちに、高粘度の缶液から各種の重合防止剤を同時に、効率よく回収できることを見いだした。本発明は上記知見に基づき完成するに至ったもので、その目的とするところは、缶液と混じり合わない有機溶剤を所定の割合で用いる、缶液中の種々の重合防止剤の抽出回収方法を提供することにある。【0010】【課題を解決するための手段】上記目的を達成する本発明は、以下に記載するものである。【0011】〔1〕 粗アクリル酸の蒸留で生成する、重合防止剤を含み、アクリル酸含有量が15質量%未満でかつアクリル酸及びアクリル酸ダイマーの合計量が60質量%の缶液100質量部あたり、前記缶液と混じり合わない有機溶剤50部以上を加えて両者を混合させた後、静置し2相分離させることにより前記缶液中に含まれる重合防止剤を前記有機溶剤側に抽出する重合防止剤の抽出回収方法。【0012】〔2〕 缶液の粘度が50℃において1800cp以上である〔1〕に記載の重合防止剤の抽出回収方法。【0013】〔3〕 缶液の比重が1.25以上である〔1〕又は〔2〕に記載の重合防止剤の抽出回収方法。【0014】〔4〕 有機溶剤が含酸素化合物である〔1〕乃至〔3〕の何れかに記載の重合防止剤の抽出回収方法。【0015】〔5〕 有機溶剤が酢酸イソプロピル、酢酸メチル、又はメチルイソブチルケトンの何れか若しくはこれらの混合物であるか、又はこれらと他の溶剤との混合物である〔1〕乃至〔4〕の何れかに記載の重合防止剤の抽出回収方法。【0016】〔6〕 他の溶剤がベンゼン、トルエン又はヘプタンである〔5〕に記載の重合防止剤の抽出回収方法。【0017】【発明の実施の形態】本発明は、プロピレン等又はアクロレインを接触気相酸化してアクリル酸を製造するプロセスの中間生成物である粗アクリル酸を、種々の工程を経て精製する際に発生する蒸留塔缶液中の各種重合防止剤の抽出回収方法に関する。粗アクリル酸の精製は、通常精留塔を用いる脱水工程、更に前記脱水工程に続く1以上の蒸留工程(粗アクリル酸精製塔)等を経る事により行う。【0018】その後、粗アクリル酸精製塔缶液を下記式(1)で表されるアクリル酸ダイマーを分解させるための設備に送り、ここで加熱することによりアクリル酸ダイマー以上の高沸点化合物を分解し、アクリル酸を更に回収する。前記ダイマー分解設備の缶液は、以上の工程を経ているため、下記のような成分を含有する高粘度、高比重の缶液であることが多い。【0019】【化1】CH2=CHCOOCH2CH2COOH (1)このため、通常上記缶液から重合防止剤を液−液抽出で回収しようとすると、缶液と抽出溶剤とが混合してしまう。このため従来は液−液抽出は困難と考えられていた。これらの缶液は、比重が1.5以上、50℃における粘度が1800cp以上のものである場合が多い。更に、上記缶液はアクリル酸及びアクリル酸ダイマーの合計量が60質量%未満、より好ましくは45質量%未満であり、アクリル酸は15質量%未満、より好ましくは8%未満である。【0020】本発明の対象とする缶液は、上記組成の缶液であるが、この缶液は缶液生成の経路を問わない。【0021】前記缶液が含有する重合防止剤としては、特に制限がなく、アクリル酸の製造プロセスにおいて通常使用する重合防止剤の何れのものを含有していても良い。具体的には、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル等のキノン系重合防止剤、フェノチアジン等を例示できる。【0022】本発明においては、上記缶液中の重合防止剤を有機溶剤を用いて抽出回収するものである。【0023】有機溶剤としては、缶液と混合しない任意の有機溶剤を使用できる。有機溶剤は単独でも、又は有機溶剤の混合物でもよい。具体的には、ヘキサン、ヘプタン等の飽和炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族化合物、メチルイソブチルケトン(MIBK)等のケトン類、酢酸メチル、酢酸イソプロピル等のエステル類を例示できる。【0024】特に好ましい有機溶剤は酢酸メチル、酢酸イソプロピル、及びメチルイソブチルケトン等の含酸素化合物である。また、アクリル酸製造工程において一旦アクリル酸水溶液を得た後、該水溶液からアクリル酸を抽出分離する際に使用される有機溶剤と、重合防止剤の抽出用有機溶剤とが同一であることが好ましい。これらの含酸素化合物は単独で用いても、これらの混合物として用いても効率よく重合防止剤を抽出回収できる。混合物として使用する場合には、各成分を任意の割合で混合することが出来る。【0025】更には前記含酸素化合物又はそれらの混合物と、脂肪族炭化水素や芳香族炭化水素等の他の溶剤との混合物も好ましい抽出溶剤である。他の溶剤としては、前記ヘプタン、ベンゼン、トルエン等が特に好ましい。他の溶剤の混合割合は、20質量%以下が望ましい。20質量%を超える場合は、抽出効率が低下する。【0026】缶液と溶剤との配合割合は、缶液100質量部に対して溶剤50質量部以上が好ましく、缶液100質量部に対して溶剤50〜500質量部がより好ましく、特に缶液100質量部に対して溶剤50〜100質量部が好ましい。缶液100質量部に対して溶剤が50質量部未満の場合は、抽出の際に缶液と有機溶剤とが2相分離しにくくなり、重合防止剤を回収率良く回収できなくなる。【0027】抽出温度は特に制限がないが、一般に使用する有機溶媒の蒸気圧があまり高くならない温度範囲が好ましい。【0028】抽出方法は特に制限がなく、常法に従い、缶液と有機溶剤とを混合撹拌した後、静置して時間の経過と共に2相に分離させる。静置時間は10分間以上が好ましく、特に1〜3時間が望ましい。次いで、分離した2相のうち重合防止剤を含む有機溶剤相を得て、溶剤を留去又は濃縮することにより重合防止剤を回収できる。また、有機溶剤の工程内への混入が問題なければ、有機溶剤相をそのまま工程の重合防止用に循環使用することが出来る。【0029】抽出装置としては、公知のミキサーセトラー等が利用できるが、この抽出系はエマルジョン化し易いので、強力な撹拌混合は好ましくない。好ましい混合方法は、溶剤と缶液とをスタティックミキサーを用いて温和に混合する方法である。【0030】前記回収した重合防止剤はアクリル酸製造プロセスの各工程に循環して再利用できる。【0031】【実施例】実施例1500mlの分液ロートに表1に記載した組成の缶液(粗アクリル酸精製塔の缶液)100gと、酢酸イソプロピル50gとを仕込んだ。この分液ロートを振蕩器を用いて10分間振蕩後15分間静置した。2相に分離した上相(有機溶剤相)を分取し、組成分析を行った。結果を表2に示した。【0032】比較例1比較例1として表1に記載した組成の缶液を用いて、実施例1と同様に操作した。振蕩液を静置したが、2相に分離しなかった。比較例1が2相に分離しなかった理由は、アクリル酸及びアクリル酸ダイマーの合計量に対するその他の成分の割合が異なることにあると推定している。即ち、低分子量の酸(アクリル酸、同ダイマー)が比較的多いと、有機溶剤(抽出溶剤)と良好に混和し、高分子酸(アクリル酸トリマー以上)が多いと有機溶剤に溶解し難くなると考えている。【0033】【表1】【0034】【表2】【0035】【発明の効果】本発明においては、缶液中の重合防止剤の抽出に際し、有機溶剤を缶液に対し特定の割合で加えるようにしたので、缶液と有機溶剤との2相分離がよい。このため、各種の重合防止剤を同時に、効率よく有機溶剤相に抽出し、回収できる。回収した重合防止剤は、アクリル酸製造の各工程に返送して再利用できるので、アクリル酸の製造コストの低減に寄与できる。 粗アクリル酸の蒸留で生成する、重合防止剤を含み、アクリル酸含有量が15質量%未満でかつアクリル酸及びアクリル酸ダイマーの合計量が60質量%未満の缶液100質量部あたり、前記缶液と混じり合わない有機溶剤50部以上を加えて両者を混合させた後、静置し2相分離させることにより前記缶液中に含まれる重合防止剤を前記有機溶剤側に抽出する重合防止剤の抽出回収方法。 缶液の粘度が50℃において1800cp以上である請求項1に記載の重合防止剤の抽出回収方法。 缶液の比重が1.25以上である請求項1又は2に記載の重合防止剤の抽出回収方法。 有機溶剤が含酸素化合物である請求項1乃至3の何れかに記載の重合防止剤の抽出回収方法。 有機溶剤が酢酸イソプロピル、酢酸メチル又はメチルイソブチルケトンの何れか若しくはこれらの混合物であるか、又はこれらと他の溶剤との混合物である請求項1乃至4の何れかに記載の重合防止剤の抽出回収方法。 他の溶剤がベンゼン、トルエン又はヘプタンである請求項5に記載の重合防止剤の抽出回収方法。


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